JP2016091762A - ケイ素黒鉛複合粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池の充放電サイクル特性をさらに向上させることができる複合粒子およびその製造方法を提供することにある。【解決手段】本発明に係るケイ素黒鉛複合粒子は、複数の鱗片状黒鉛粒子およびケイ素粒子を備える。複数の鱗片状黒鉛粒子は、層状に配列する。ケイ素粒子は、複数の鱗片状黒鉛粒子に挟み込まれる。このケイ素粒子の(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下である。そして、このケイ素黒鉛複合粒子から電極密度1.70±0.02g/cm3の電極を作製したとき、その電極のX線回折像において「(004)面に帰属されるピークの強度I(004)」に対する「(110)面に帰属されるピークの強度I(110)」の比が0.0010以上0.0300以下の範囲内であることが好ましい。【選択図】図1
Description
本発明は、ケイ素黒鉛複合粒子およびその製造方法に関する。
従来、リチウムイオン二次電池の負極活物質として一般的に黒鉛、ケイ素、スズの粒子等が用いられている。これらの負極活物質の中でも、高放電容量の負極を作製することができることからケイ素粒子が特に注目されている。しかし、ケイ素粒子は、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積変化が約4倍と極めて大きい。このため、ケイ素粒子を負極活物質とする電池に対して充放電が繰り返されると、ケイ素粒子の導電ネットワークが徐々に崩壊し、その結果、電池の放電容量が低下してしまう。
そこで、近年、リチウムイオン二次電池の負極の「放電容量の向上」および「充放電サイクルによる放電容量低下の抑制」の両立を目的として「黒鉛にケイ素を複合化させたケイ素黒鉛複合粒子」が提案されている。このようなケイ素黒鉛複合粒子としては、例えば、「ケイ素、鱗片状黒鉛および炭素質物を含有し、炭素質物の含有量が20質量%未満であり、アルゴンレーザーを用いたラマン分光法により測定したDバンド1360cm−1ピーク強度IDとGバンド1580cm−1ピーク強度IGの比ID/IG(R値)が0.4未満である複合黒鉛粒子(例えば、特開2005−243508号公報等参照)」、「炭素物質中にシリコンおよびシリコン酸化物が分散された複合体粒子と、その複合体粒子を被覆するハードカーボンとから成る複合粒子(例えば、特開2006−092969号公報)」、「ケイ素粒子、黒鉛質材料および炭素質材料からなり、圧縮力およびせん断力を付与する処理が施されて、炭素質材料からなる被膜を表面の少なくとも一部に有するケイ素粒子と、黒鉛質材料とが密着している構造を有する複合材料(例えば、特開2008−235247号公報等参照)」等が挙げられる。
しかし、上述のケイ素黒鉛複合粒子を負極活物質としたリチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性は十分であるとは言い難い。
本発明の課題は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池の充放電サイクル特性をさらに向上させることができる複合粒子およびその製造方法を提供することにある。
本発明の一局面に係るケイ素黒鉛複合粒子は、複数の鱗片状黒鉛粒子およびケイ素粒子を備える。なお、本願において、ケイ素粒子を「シリコン粒子」と称する場合がある。複数の鱗片状黒鉛粒子は、層状に配列する。なお、複数の鱗片状黒鉛粒子は、同一方向または略同一方向に配向するのが好ましい。ケイ素粒子は、複数の鱗片状黒鉛粒子に挟み込まれる。なお、本願において、ケイ素粒子とは、ケイ素相を含む粒子の総称であり、ケイ素のみから形成される粒子ばかりでなく、一部のケイ素が酸化されているものをも含み得る(すなわち、本願にいうケイ素粒子は、ケイ素相含有粒子とも称される)。ただし、ケイ素粒子は、本願において、ケイ素のみから形成されているのが好ましい。本願において包含し得る酸素原子は、原子数比でケイ素原子に対して0以上1.3以下の範囲内である。そして、ケイ素粒子の(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下である。なお、ケイ素粒子のこの特性値は、ケイ素粒子が板状(扁平状)に近い形状を呈していることを示している。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、上述のようなケイ素黒鉛複合粒子が非水電解質二次電池の充放電サイクル特性をさらに向上させることができることを明らかにした。本願発明者らは、この原因を以下の通りに推測している。
先ず、上述の通り、本願発明に係るケイ素黒鉛複合粒子では、ケイ素粒子として「(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下であるケイ素粒子」が用いられている。この要件を満たすケイ素粒子は、板状に近い形状を呈していると言われている。このため、このようなケイ素粒子を鱗片状黒鉛粒子で挟んで形成されるケイ素黒鉛複合粒子は、球形のケイ素粒子を鱗片状黒鉛粒子で挟んで形成されるケイ素黒鉛複合粒子よりも収縮・膨張の異方性が強く出る。具体的には、ケイ素黒鉛複合粒子の積層方向の膨張率・収縮率が、他の方向の膨張率・収縮率よりも高くなる。そして、このようなケイ素黒鉛複合粒子を含む電極合剤スラリーから電極が形成される際、ケイ素黒鉛複合粒子の積層方向が電極厚み方向に沿うようにケイ素黒鉛複合粒子が積層する。すなわち、電極厚み方向に沿って・・・//黒鉛層/ケイ素粒子層/黒鉛層//黒鉛層/ケイ素粒子層/黒鉛層//・・・の繰り返し層が形成される(前述中、「//」の記号は、粒子間の境界線を示し、「/」はケイ素黒鉛複合粒子内の層の境界線を示す。)。このような電極構造により、電極厚み方向の膨張率・収縮率が他の方向の膨張率・収縮率よりも高くなる。つまり、電極の膨張・収縮方向が電極厚み方向に集中することになる。そして、電池内部では、電極に垂直な方向に沿って電極を圧縮する力が常に付与されている。このため、このケイ素黒鉛複合粒子を電極活物質とする電極は、その圧縮力により崩壊が抑制されることになり、延いては非水電解質二次電池の充放電サイクル特性をさらに向上させる(なお、通常、電極には空隙が存在するため、ケイ素黒鉛複合粒子があらゆる方向に体積変化すると、電極の崩壊を抑制することは難しい。)。
さらに、このケイ素黒鉛複合粒子では、上述の通り、ケイ素粒子が板状に近い形状を呈しているため、鱗片状黒鉛粒子に対するケイ素粒子の接触面積が大きくなると予測される。このため、このケイ素黒鉛複合粒子から形成される電極には、導通経路が形成されやすくなるという副次的な効果も期待される。
上述のケイ素黒鉛複合粒子では、ケイ素粒子が複数の鱗片状黒鉛粒子に挟み込まれると共に、ケイ素粒子が、最外層の鱗片状黒鉛粒子および最外層のケイ素粒子の少なくとも一方の粒子の外表面上に非黒鉛質炭素によって付着されることが好ましい。ケイ素黒鉛複合粒子をこのような構造にすることにより、ケイ素黒鉛複合粒子中のケイ素粒子含有量を増加させることができ、延いてはリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池の放電容量・充電容量の向上に貢献することができるからである。
ちなみに、上述のケイ素黒鉛複合粒子を含む電極合剤スラリーから電極を形成する場合、その電極には、例えば、電極厚み方向に沿って・・・//ケイ素粒子層/黒鉛層/ケイ素粒子層/黒鉛層/ケイ素粒子層//ケイ素粒子層/黒鉛層/ケイ素粒子層/黒鉛層/ケイ素粒子層//・・・の繰り返し層が形成される(前述中、「//」の記号は、粒子間の境界線を示し、「/」はケイ素黒鉛複合粒子内の層の境界線を示す。)。
上述のケイ素黒鉛複合粒子において、鱗片状黒鉛粒子、ケイ素粒子および非黒鉛質炭素の質量比は97〜60:1〜20:2〜20であることが好ましく、97〜70:1〜10:2〜20であることがより好ましい。ここで、「97〜60」との表記は97以下60以上の範囲内であることを意味し、「1〜20」との表記は1以上20以下の範囲内であることを意味する。ケイ素黒鉛複合粒子の配合がこの通りであれば、放電容量、充放電効率および充放電サイクル特性のバランスに優れた電極を形成することができるからである。
上述のケイ素黒鉛複合粒子から電極密度1.70±0.02g/cm3の電極を作製したとき、その電極のX線回折像において「黒鉛(004)面に帰属されるピークの強度I(004)」に対する「黒鉛(110)面に帰属されるピークの強度I(110)」の比が0.0010以上0.0300以下の範囲内であることが好ましい。ケイ素黒鉛複合粒子がこの条件を満たせば、電極内における鱗片状黒鉛粒子の配向度が良好となり、上述の効果をより効率的に享受することができるからである。
上述のケイ素黒鉛複合粒子において、鱗片状黒鉛粒子の積層方向の長さに対する長軸長さの比(いわゆるアスペクト比)が1.5以上10以下の範囲内であることが好ましい。上述のケイ素黒鉛複合粒子がこの条件を満たせば、電極内における鱗片状黒鉛粒子の配向度が良好となり、上述の効果をより効率的に享受することができるからである。
本発明の他の局面に係るケイ素黒鉛複合粒子は、複数の鱗片状黒鉛粒子およびケイ素粒子を備える。なお、このケイ素粒子は、比表面積40m2/g以上の湿式粉砕物であることが好ましい。この比表面積は200m2/g以下であることが好ましい。複数の鱗片状黒鉛粒子は、層状に配列する。なお、複数の鱗片状黒鉛粒子は、同一方向または略同一方向に配向するのが好ましい。ケイ素粒子は、板状または扁平状の形状を呈しており、複数の鱗片状黒鉛粒子に挟み込まれる。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、上述のようなケイ素黒鉛複合粒子が非水電解質二次電池の充放電サイクル特性をさらに向上させることができることを明らかにした。本願発明者らは、この原因を上述の通りに推測している。
本発明の一局面に係るケイ素黒鉛複合粒子の製造方法は、中間複合粒子調製工程および加熱工程を備える。中間複合粒子調製工程では、(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下であるケイ素粒子、鱗片状黒鉛粒子および固体の非黒鉛質炭素原料の混合物に、非黒鉛質炭素原料の軟化点以上の温度で圧縮力およびせん断力が付与されて中間複合粒子が調製される。この中間複合粒子調製工程では、ケイ素粒子、鱗片状黒鉛粒子および固体の非黒鉛質炭素原料の混合物に対してメカノケミカル(登録商標)処理が行われることが好ましい。圧縮力が作用する状況下で、溶融した非黒鉛質炭素原料が接着剤の役割を果たして鱗片状黒鉛粒子とケイ素粒子の積層数を増加させるからである。加熱工程では、中間複合粒子が加熱処理される。その結果、非黒鉛質炭素原料が非黒鉛質炭素に変換される。
このケイ素黒鉛複合粒子の製造方法により、上述のケイ素黒鉛複合粒子が製造される。すなわち、このケイ素黒鉛複合粒子は、上述の効果を発現することができる。
上述のケイ素黒鉛複合粒子の製造方法は、湿式粉砕工程、混合工程および乾燥工程をさらに備えることが好ましい。湿式粉砕工程では、ケイ素粉末が湿式粉砕されて、(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下であるケイ素粒子のスラリーが調製される。混合工程では、上記スラリーに鱗片状黒鉛粒子が混合されて混合スラリーが調製される。乾燥工程では、混合スラリーが乾燥させられて混合粉末が調製される。なお、乾燥は、湿式粉砕に用いた溶媒を完全に蒸発させなくとも、粉末として取り扱うことができる程度に行えばよい。そして、中間複合粒子調製工程では、混合粉末および固体の非黒鉛質炭素原料の混合物に、非黒鉛質炭素原料の軟化点以上の温度で圧縮力およびせん断力が付与されて中間複合粒子が調製される。
上述のケイ素黒鉛複合粒子の製造方法は、導電助剤添加工程をさらに備えることが好ましい。導電助剤添加工程では、100nm以下の平均粒径を有する導電助剤が中間複合粒子に添加される。
上述のケイ素黒鉛複合粒子は、電極、特に非水電解質二次電池の電極を構成する活物質として使用することができる。ここにいう非水電解質二次電池は、リチウムイオン二次電池に代表される。
<ケイ素黒鉛複合粒子の構成>
本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100は、図1および図2に示されるように、主に、ケイ素粒子110、鱗片状黒鉛粒子120および非黒鉛質炭素(図示せず)から構成される。このケイ素黒鉛複合粒子100では、図1および図2に示されるように、複数の鱗片状黒鉛粒子120にケイ素粒子110が挟み込まれると共に、最外層の鱗片状黒鉛粒子120の外表面にケイ素粒子110が付着している(図1参照)。以下、ケイ素黒鉛複合粒子100の各構成要素について詳述する。
本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100は、図1および図2に示されるように、主に、ケイ素粒子110、鱗片状黒鉛粒子120および非黒鉛質炭素(図示せず)から構成される。このケイ素黒鉛複合粒子100では、図1および図2に示されるように、複数の鱗片状黒鉛粒子120にケイ素粒子110が挟み込まれると共に、最外層の鱗片状黒鉛粒子120の外表面にケイ素粒子110が付着している(図1参照)。以下、ケイ素黒鉛複合粒子100の各構成要素について詳述する。
(1)ケイ素粒子
ケイ素粒子110は、複数の鱗片状黒鉛粒子120に挟み込まれると共に、ケイ素黒鉛複合粒子100の最外層の鱗片状黒鉛粒子120の外表面に付着する(図1および図2参照)。なお、本実施の形態において、「ケイ素粒子」とは、ケイ素相を含む粒子の総称であり、ケイ素のみから形成される粒子ばかりでなく、一部のケイ素が酸化されているものをも含み得る。ただし、ケイ素粒子は、本実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100において、ケイ素のみから形成されているのが好ましい。本願において包含し得る酸素原子は、原子数比でケイ素原子に対して0以上1.3以下の範囲内であるが、0以上1.0以下の範囲内であることが好ましく、0以上0.8以下の範囲内であることがより好ましく、0以上0.6以下の範囲内であることがさらに好ましく、0以上0.4以下の範囲内であることが特に好ましく、0以上0.2以下の範囲内であることが最も好ましい。このケイ素粒子110において、(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下であるが、同比は0.40以上0.50以下の範囲内であることが好ましく、0.30以上0.50以下の範囲内であることがより好ましく、0.20以上0.50以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.10以上0.50以下の範囲内であることが特に好ましい。同比が0.50以下であれば、ケイ素粒子が板状(扁平状)に近い形状を呈し、本発明の効果を十分に享受することができるからである。また、同比が0.40以上であれば、板状のケイ素粒子をコスト面で有利に製造することができるからであり、同比が0.30以上であれば、0.30近傍までケイ素粒子の板状化が進むことにより鱗片状黒鉛粒子との接触面積を増加させることができるからである。同比を0.20近傍、さらに同比を0.10近傍にまでケイ素粒子を板状にすることは製造コストの増加につながるが、ケイ素粒子と鱗片状黒鉛粒子との接触面積の一層の増加により、当該ケイ素粒子からなるケイ素黒鉛複合粒子を用いた非水電解質二次電池の充放電サイクル特性の一層の向上を期待することができる。さらに、このケイ素粒子110は、粒子径ができるだけ小さい方が好ましい。リチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積変化によって生じる応力を分散することができるからである。具体的には、体積分率50%時の粒子径(すなわちメジアン径)が2μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。
ケイ素粒子110は、複数の鱗片状黒鉛粒子120に挟み込まれると共に、ケイ素黒鉛複合粒子100の最外層の鱗片状黒鉛粒子120の外表面に付着する(図1および図2参照)。なお、本実施の形態において、「ケイ素粒子」とは、ケイ素相を含む粒子の総称であり、ケイ素のみから形成される粒子ばかりでなく、一部のケイ素が酸化されているものをも含み得る。ただし、ケイ素粒子は、本実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100において、ケイ素のみから形成されているのが好ましい。本願において包含し得る酸素原子は、原子数比でケイ素原子に対して0以上1.3以下の範囲内であるが、0以上1.0以下の範囲内であることが好ましく、0以上0.8以下の範囲内であることがより好ましく、0以上0.6以下の範囲内であることがさらに好ましく、0以上0.4以下の範囲内であることが特に好ましく、0以上0.2以下の範囲内であることが最も好ましい。このケイ素粒子110において、(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下であるが、同比は0.40以上0.50以下の範囲内であることが好ましく、0.30以上0.50以下の範囲内であることがより好ましく、0.20以上0.50以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.10以上0.50以下の範囲内であることが特に好ましい。同比が0.50以下であれば、ケイ素粒子が板状(扁平状)に近い形状を呈し、本発明の効果を十分に享受することができるからである。また、同比が0.40以上であれば、板状のケイ素粒子をコスト面で有利に製造することができるからであり、同比が0.30以上であれば、0.30近傍までケイ素粒子の板状化が進むことにより鱗片状黒鉛粒子との接触面積を増加させることができるからである。同比を0.20近傍、さらに同比を0.10近傍にまでケイ素粒子を板状にすることは製造コストの増加につながるが、ケイ素粒子と鱗片状黒鉛粒子との接触面積の一層の増加により、当該ケイ素粒子からなるケイ素黒鉛複合粒子を用いた非水電解質二次電池の充放電サイクル特性の一層の向上を期待することができる。さらに、このケイ素粒子110は、粒子径ができるだけ小さい方が好ましい。リチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積変化によって生じる応力を分散することができるからである。具体的には、体積分率50%時の粒子径(すなわちメジアン径)が2μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。
(2)鱗片状黒鉛粒子
鱗片状黒鉛粒子120は、層状に配列しており、上述の通り、ケイ素粒子110を挟み込む(図1参照)。この鱗片状黒鉛粒子120は、天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、キッシュ黒鉛粒子のいずれでもよいが、経済性および放電容量確保の観点から天然黒鉛粒子であることが好ましい。鱗片状黒鉛粒子120として、上述の黒鉛粒子の混合物が用いられてもかまわない。鱗片状黒鉛粒子120を予め高温で熱処理したものを鱗片状黒鉛粒子として使用しても差し支えない。鱗片状黒鉛粒子120の体積分率50%時の粒子径(すなわちメジアン径)は5μm以上30μm以下であることが好ましい。この鱗片状黒鉛粒子120は、アスペクト比が3以上50以下であることが好ましい。本発明の実施の形態において、鱗片状黒鉛粒子120は、ケイ素粒子110を挟み込むに当たり、柔軟性に富み、高結晶であり、しかも易変形性を有することが好ましい。このため、本発明の実施の形態において使用される鱗片状黒鉛粒子120の六角網平面間隔d002は0.3354nm以上0.3370nm以下の範囲内であることが好ましく、ペレット密度が1.80g/cm3以上2.00g/cm3以下の範囲内であることが好ましい。
鱗片状黒鉛粒子120は、層状に配列しており、上述の通り、ケイ素粒子110を挟み込む(図1参照)。この鱗片状黒鉛粒子120は、天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、キッシュ黒鉛粒子のいずれでもよいが、経済性および放電容量確保の観点から天然黒鉛粒子であることが好ましい。鱗片状黒鉛粒子120として、上述の黒鉛粒子の混合物が用いられてもかまわない。鱗片状黒鉛粒子120を予め高温で熱処理したものを鱗片状黒鉛粒子として使用しても差し支えない。鱗片状黒鉛粒子120の体積分率50%時の粒子径(すなわちメジアン径)は5μm以上30μm以下であることが好ましい。この鱗片状黒鉛粒子120は、アスペクト比が3以上50以下であることが好ましい。本発明の実施の形態において、鱗片状黒鉛粒子120は、ケイ素粒子110を挟み込むに当たり、柔軟性に富み、高結晶であり、しかも易変形性を有することが好ましい。このため、本発明の実施の形態において使用される鱗片状黒鉛粒子120の六角網平面間隔d002は0.3354nm以上0.3370nm以下の範囲内であることが好ましく、ペレット密度が1.80g/cm3以上2.00g/cm3以下の範囲内であることが好ましい。
(3)非黒鉛質炭素
非黒鉛質炭素は、ケイ素粒子110を鱗片状黒鉛粒子120に付着させたり、ケイ素粒子110同士を付着させたりする。非黒鉛質炭素は、非晶質炭素および乱層構造炭素の少なくともいずれかである。なお、ここで「非晶質炭素」とは、短距離秩序(数原子〜十数個原子オーダー)を有しても、長距離秩序(数百〜数千個の原子オーダー)を有さない炭素をいう。ここで「乱層構造炭素」とは、六角網平面方向に平行な乱層構造を有するが、三次元方向には結晶学的規則性が見られない炭素原子からなる炭素をいう。X線回折図形では101面、103面に対応するhkl回折線は現れない。ただし、本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100は、基材である黒鉛の回折線が強いため、X線回折によって乱層構造炭素の存在を確認することが難しい。このため、乱層構造炭素は、透過型電子顕微鏡(TEM)等で確認されることが好ましい。
非黒鉛質炭素は、ケイ素粒子110を鱗片状黒鉛粒子120に付着させたり、ケイ素粒子110同士を付着させたりする。非黒鉛質炭素は、非晶質炭素および乱層構造炭素の少なくともいずれかである。なお、ここで「非晶質炭素」とは、短距離秩序(数原子〜十数個原子オーダー)を有しても、長距離秩序(数百〜数千個の原子オーダー)を有さない炭素をいう。ここで「乱層構造炭素」とは、六角網平面方向に平行な乱層構造を有するが、三次元方向には結晶学的規則性が見られない炭素原子からなる炭素をいう。X線回折図形では101面、103面に対応するhkl回折線は現れない。ただし、本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100は、基材である黒鉛の回折線が強いため、X線回折によって乱層構造炭素の存在を確認することが難しい。このため、乱層構造炭素は、透過型電子顕微鏡(TEM)等で確認されることが好ましい。
この乱層構造炭素は、非黒鉛質炭素の原料を焼成することによって得られる。本発明の実施の形態において、非黒鉛質炭素の原料は、固体の非黒鉛質炭素の原料であって、例えば、石油系ピッチ粉末、石炭系ピッチ粉末、熱可塑性樹脂粉末等の有機化合物である。非黒鉛質炭素の原料は、上述の粉末の混合物であってもよい。これらの中でも、ピッチ粉末が特に好ましい。ピッチ粉末は、昇温過程で溶融すると共に炭化され、その結果、ケイ素粒子110を鱗片状黒鉛粒子120に好適に固定化することができるからである。ピッチ粉末は、低温焼成されても不可逆容量が小さいという観点から好ましい。焼成における熱処理条件の一例として、熱処理温度を800℃から1200℃の範囲内とすることが挙げられる。この熱処理時間は、熱処理温度および非黒鉛質炭素の原料の特性等を加味して適宜決定され、典型的には1時間程度である。熱処理時の雰囲気は非酸化雰囲気(不活性ガス雰囲気、真空雰囲気)であることが好ましく、経済的観点から窒素雰囲気が好ましい。非晶質炭素は、例えば、真空蒸着法やプラズマCVD法等の気相法により形成することができる。
<ケイ素黒鉛複合粒子の特性>
本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100において、上述のケイ素粒子110、鱗片状黒鉛粒子120および非黒鉛質炭素の質量比は、1〜20:97〜60:2〜20であることが好ましく、1〜10:97〜70:2〜20であることがより好ましい。ケイ素黒鉛複合粒子100をこの組成とすることにより、ケイ素黒鉛複合粒子100の最外層の鱗片状黒鉛粒子120の外表面にケイ素粒子110を強固に固定化することができると共に、電極作製時において放電容量、充放電効率および充放電サイクル特性を好適化することができるからである。
本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100において、上述のケイ素粒子110、鱗片状黒鉛粒子120および非黒鉛質炭素の質量比は、1〜20:97〜60:2〜20であることが好ましく、1〜10:97〜70:2〜20であることがより好ましい。ケイ素黒鉛複合粒子100をこの組成とすることにより、ケイ素黒鉛複合粒子100の最外層の鱗片状黒鉛粒子120の外表面にケイ素粒子110を強固に固定化することができると共に、電極作製時において放電容量、充放電効率および充放電サイクル特性を好適化することができるからである。
本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100の体積分率50%時の粒子径(すなわちメジアン径)は10μm以上35μm以下の範囲内であることが好ましい。粒子径がこの範囲内であると、電極作製時において充放電効率および充放電サイクル特性を好適化することができるからである。
本実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100のアスペクト比、すなわち、鱗片状黒鉛粒子120の積層方向の長さ(図1の「H」に相当)に対する長軸長さ(図1の「W」に相当)の比は1.5以上10以下の範囲内であることが好ましく、1.5以上8以下の範囲内であることがより好ましく、1.5以上6以下の範囲内であることがさらに好ましく、1.5以上5以下の範囲内であることが特に好ましい。アスペクト比がこの範囲であると、充放電サイクル特性を好適化することができると共に、容易に電極を作製することができるからである。
本実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100から電極密度1.70±0.02g/cm3の電極を作製したとき(図2参照)、その電極200のX線回折像において「(004)面に帰属されるピークの強度I(004)」に対する「(110)面に帰属されるピークの強度I(110)」の比が0.0300以下であることが好ましく、0.0200以下であることがより好ましく、0.0150以下であることがさらに好ましく、0.0100以下であることが特に好ましい。このケイ素黒鉛複合粒子100がこの条件を満たすことができれば、電極内における鱗片状黒鉛粒子120の配向度が良好となり、上述の効果をより効率的に享受することができるからである。なお、図2中、符号210は活物質層を示し、符号220は集電体を示す。
<ケイ素黒鉛複合粒子の製造>
本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100は、中間複合粒子調製工程および加熱工程を経て製造される。
本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100は、中間複合粒子調製工程および加熱工程を経て製造される。
中間複合粒子調製工程では、メカノケミカル(登録商標)処理、メカノフュージョン(登録商標)処理等の処理により、ケイ素粒子110、鱗片状黒鉛粒子120および固体の非黒鉛質炭素原料の混合物に、非黒鉛質炭素原料の軟化点以上の温度で圧縮力およびせん断力が付与されて中間複合粒子が調製される。このとき、圧縮力が作用する状況下で、溶融した非黒鉛質炭素原料が接着剤の役割を果たして鱗片状黒鉛粒子120とケイ素粒子110の積層数を増加させる。なお、このとき、ケイ素粒子110、鱗片状黒鉛粒子120および固体の非黒鉛質炭素原料の混合物がメカノケミカル(登録商標)システム、メカノフュージョン(登録商標)システムに投入されてもよいし、ケイ素粒子110、鱗片状黒鉛粒子120および固体の非黒鉛質炭素原料それぞれを順にメカノケミカル(登録商標)システム、メカノフュージョン(登録商標)システムに投入した後に、それら粒子を混合しながらメカノケミカル(登録商標)処理、メカノフュージョン(登録商標)処理等の処理を行ってもよい。
加熱工程では、非酸化雰囲気下(不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下等)で混合物が800℃以上1200℃以下の温度で加熱処理される。この結果、非黒鉛質炭素原料が非黒鉛質炭素に変換され、目的のケイ素黒鉛複合粒子100が得られる。加熱温度を1200℃以下とすることにより、炭化ケイ素(SiC)の生成量を抑制することができるため、放電容量に優れた電極を形成することができる。加熱温度を800℃以上とすることにより、充放電効率に優れた電極を形成することができる。このように、加熱温度が上記範囲であると、放電容量および充放電効率のバランスに優れた電極を形成することができる。
なお、この製造方法では、中間複合粒子調製工程開始前に湿式粉砕工程、混合工程および乾燥工程が設けられるのが好ましい。湿式粉砕工程では、ケイ素粉末が湿式粉砕されてケイ素粒子スラリーが調製される。混合工程では、ケイ素粒子スラリーに鱗片状黒鉛粒子が混合されて混合スラリーが調製される。乾燥工程では、混合スラリーが乾燥させられて混合粉末が調製される。そして、中間複合粒子調製工程では、混合粉末および固体の非黒鉛質炭素原料の混合物に、非黒鉛質炭素原料の軟化点以上の温度で圧縮力およびせん断力が付与されて中間複合粒子が調製される。この場合、乾燥は、湿式粉砕に用いた溶媒を完全に蒸発させなくとも、粉末として取り扱うことができる程度に行えばよい。
<ケイ素黒鉛複合粒子の特徴>
本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100は、非水電解質二次電池の電極活物質として使用されると、その充放電サイクル特性をさらに向上させることができる。
本発明の実施の形態に係るケイ素黒鉛複合粒子100は、非水電解質二次電池の電極活物質として使用されると、その充放電サイクル特性をさらに向上させることができる。
<実施例および比較例>
以下、実施例および比較例を示して、本発明について詳述する。
以下、実施例および比較例を示して、本発明について詳述する。
<ケイ素黒鉛複合粒子の製造>
(1)シリコン粉末の粉砕
高純度シリコン粉末(Si:99.7質量%,O:0.16質量%,平均粒径30μm)をビーズミルで7時間、粉砕して粉砕スラリーを調製した。なお、このとき、溶媒としてエタノールを用い、メディアとして0.03mm径のジルコニアボールを用いた。この粉砕スラリーを大気中で自然乾燥させてシリコン粉末を回収し、ユアサアイオニクス株式会社製カンタソープを用いて、そのシリコン粉末の比表面積をBET1点法により求めたところ、シリコン粉末のBET比表面積は109m2/gであった(表1参照)。X線回折装置(リガク製RINT−1200V)を用いてこのシリコン粉末の(111)面および(220)面のピーク面積を求め、(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比を算出したところ、その比は0.443であった(表1参照)。このようにして得られた粉砕シリコン粉末の走査型電子顕微鏡写真が図3に示されている。図3の写真に映し出されるように、この粉砕シリコン粉末は、板状あるいは扁平状の形状を呈している。
(1)シリコン粉末の粉砕
高純度シリコン粉末(Si:99.7質量%,O:0.16質量%,平均粒径30μm)をビーズミルで7時間、粉砕して粉砕スラリーを調製した。なお、このとき、溶媒としてエタノールを用い、メディアとして0.03mm径のジルコニアボールを用いた。この粉砕スラリーを大気中で自然乾燥させてシリコン粉末を回収し、ユアサアイオニクス株式会社製カンタソープを用いて、そのシリコン粉末の比表面積をBET1点法により求めたところ、シリコン粉末のBET比表面積は109m2/gであった(表1参照)。X線回折装置(リガク製RINT−1200V)を用いてこのシリコン粉末の(111)面および(220)面のピーク面積を求め、(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比を算出したところ、その比は0.443であった(表1参照)。このようにして得られた粉砕シリコン粉末の走査型電子顕微鏡写真が図3に示されている。図3の写真に映し出されるように、この粉砕シリコン粉末は、板状あるいは扁平状の形状を呈している。
(2)混合スラリーの調製
鱗片状天然黒鉛粉末(株式会社中越黒鉛工業所製、平均粒径:10μm、d002:0.3357nm、ペレット密度:1.82g/cm3)を株式会社セイシン企業製ニューグラマシンに投入し、同マシンを回転させながら上述の粉砕スラリーを加えて混合し、混合スラリーを調製した。なお、この際、鱗片状天然黒鉛粉末とシリコン粉末との質量比が79:5となるように鱗片状天然黒鉛粉末と粉砕スラリーとを混合した。
鱗片状天然黒鉛粉末(株式会社中越黒鉛工業所製、平均粒径:10μm、d002:0.3357nm、ペレット密度:1.82g/cm3)を株式会社セイシン企業製ニューグラマシンに投入し、同マシンを回転させながら上述の粉砕スラリーを加えて混合し、混合スラリーを調製した。なお、この際、鱗片状天然黒鉛粉末とシリコン粉末との質量比が79:5となるように鱗片状天然黒鉛粉末と粉砕スラリーとを混合した。
なお、鱗片状天然黒鉛粉末のペレット密度は、次の方法により求められる。
1.00gの鱗片状天然黒鉛粉末を直径15mmの金型に充填し、その金型を一軸プレス機で加圧力8.7kNで5秒間加圧した後、その加圧力を0.15kNまで弱めてそのときの上パンチの変位を読み取る。なお、加圧速度は10mm/秒とする。鱗片状天然黒鉛粉末を上記金型に充填せずに、その金型を同一軸プレス機で加圧力8.7kNまで加圧した後、その加圧力を0.15kNまで弱めてそのときの上パンチの変位を求める。この変位をリファレンスとする。そして、鱗片状天然黒鉛粉末の充填時の上パンチの変位とリファレンス変位との差を試料厚みとして求め、この厚みから圧縮密度すなわちペレット密度を計算する。
1.00gの鱗片状天然黒鉛粉末を直径15mmの金型に充填し、その金型を一軸プレス機で加圧力8.7kNで5秒間加圧した後、その加圧力を0.15kNまで弱めてそのときの上パンチの変位を読み取る。なお、加圧速度は10mm/秒とする。鱗片状天然黒鉛粉末を上記金型に充填せずに、その金型を同一軸プレス機で加圧力8.7kNまで加圧した後、その加圧力を0.15kNまで弱めてそのときの上パンチの変位を求める。この変位をリファレンスとする。そして、鱗片状天然黒鉛粉末の充填時の上パンチの変位とリファレンス変位との差を試料厚みとして求め、この厚みから圧縮密度すなわちペレット密度を計算する。
(3)中間複合粒子の調製
混合スラリーを自然乾燥させて混合粉末を得た後、84質量部の混合粉末と16質量部の石炭系ピッチ粉末(軟化点86℃、平均粒径20μm、1000℃加熱後の残炭率70%)とを、ローターとインナーピースとの隙間を1mmとした循環型メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン株式会社製AMS−mini)に投入した。そして、その循環型メカノフュージョンシステムの温度を90℃〜120℃に調整しながら、その混合粉末を回転数7000rpmで15分間、メカノケミカル処理して、中間複合粒子を調製した。
混合スラリーを自然乾燥させて混合粉末を得た後、84質量部の混合粉末と16質量部の石炭系ピッチ粉末(軟化点86℃、平均粒径20μm、1000℃加熱後の残炭率70%)とを、ローターとインナーピースとの隙間を1mmとした循環型メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン株式会社製AMS−mini)に投入した。そして、その循環型メカノフュージョンシステムの温度を90℃〜120℃に調整しながら、その混合粉末を回転数7000rpmで15分間、メカノケミカル処理して、中間複合粒子を調製した。
(4)石炭系ピッチ粉末の加熱処理
次いで、中間複合粒子を黒鉛るつぼに投入した後、その中間複合粒子を窒素気流中、1000℃の温度で1時間加熱し、石炭系ピッチ粉末を非黒鉛質炭素に変換させた。
次いで、中間複合粒子を黒鉛るつぼに投入した後、その中間複合粒子を窒素気流中、1000℃の温度で1時間加熱し、石炭系ピッチ粉末を非黒鉛質炭素に変換させた。
(5)解砕処理
最後に、加熱処理後の中間複合粒子を、その98質量%以上が目開き75μmの篩を通過するまで解砕して目的のケイ素黒鉛複合粒子を得た。なお、このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、79:5:11であった(表1参照)。ここで焼成前後の重量変化はすべてピッチによるものとした。このようにして得られたケイ素黒鉛複合粒子の走査型電子顕微鏡写真が図4および図5に示されている。図4および図5の写真に映し出されるように、このケイ素黒鉛複合粒子では、鱗片状天然黒鉛粒子に対するシリコン粒子の接触面積が大きくなっている。
最後に、加熱処理後の中間複合粒子を、その98質量%以上が目開き75μmの篩を通過するまで解砕して目的のケイ素黒鉛複合粒子を得た。なお、このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、79:5:11であった(表1参照)。ここで焼成前後の重量変化はすべてピッチによるものとした。このようにして得られたケイ素黒鉛複合粒子の走査型電子顕微鏡写真が図4および図5に示されている。図4および図5の写真に映し出されるように、このケイ素黒鉛複合粒子では、鱗片状天然黒鉛粒子に対するシリコン粒子の接触面積が大きくなっている。
<ケイ素黒鉛複合粒子の特性評価>
(1)シリコン粒子の酸化度の測定
ケイ素黒鉛複合粒子を酸分解した後、その残渣を融解して試料を作製した。そして、発光分光分析装置を用いてその試料の元素分析を行い、ケイ素原子含有量およびジルコニウム原子含有量を求めた。なお、ジルコニウム原子は、ジルコニアボール(二酸化ジルコニウム,ZrO2で形成されている)の摩耗によって混入している。また、別のケイ素黒鉛複合粒子を不活性ガス搬送融解法により融解させて試料を作製した後、赤外線吸収法を用いてその試料の酸素原子含有量を求めた。そして、酸素原子含有量から二酸化ジルコニウムの酸素原子分を差し引いた値と、ケイ素原子含有量とからケイ素原子に対する酸素原子の組成比を求めた。本実施例に係るケイ素黒鉛複合粒子において、同組成比は0.28であった(表1参照)。
(2)粒子径の測定
レーザー回折/散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製LA−910)を用いて光散乱回折法によりケイ素黒鉛複合粒子の体積基準の粒度分布を測定した。その後、得られた粒度分布を用いて体積分率50%時の粒子径(メジアン径)を求めた。その結果、同粒子径は16μmであった(表1参照)。
(1)シリコン粒子の酸化度の測定
ケイ素黒鉛複合粒子を酸分解した後、その残渣を融解して試料を作製した。そして、発光分光分析装置を用いてその試料の元素分析を行い、ケイ素原子含有量およびジルコニウム原子含有量を求めた。なお、ジルコニウム原子は、ジルコニアボール(二酸化ジルコニウム,ZrO2で形成されている)の摩耗によって混入している。また、別のケイ素黒鉛複合粒子を不活性ガス搬送融解法により融解させて試料を作製した後、赤外線吸収法を用いてその試料の酸素原子含有量を求めた。そして、酸素原子含有量から二酸化ジルコニウムの酸素原子分を差し引いた値と、ケイ素原子含有量とからケイ素原子に対する酸素原子の組成比を求めた。本実施例に係るケイ素黒鉛複合粒子において、同組成比は0.28であった(表1参照)。
(2)粒子径の測定
レーザー回折/散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製LA−910)を用いて光散乱回折法によりケイ素黒鉛複合粒子の体積基準の粒度分布を測定した。その後、得られた粒度分布を用いて体積分率50%時の粒子径(メジアン径)を求めた。その結果、同粒子径は16μmであった(表1参照)。
(3)電池特性評価
(3−1)電極作製
上述のケイ素黒鉛複合粒子にAB(アセチレンブラック)と、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)粉末と、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)の水性分散液と、水とを配合して電極合剤スラリーを得た。ここで、ABは導電助剤であり、CMC及びSBRは結着剤である。ケイ素黒鉛複合粒子、AB、CMCおよびSBRの配合比は、質量比で97.0:1.0:1.0:1.0であった。そして、この電極合剤スラリーを、厚み17μmの銅箔(集電体)上にドクターブレード法により塗布した(塗布量は7〜8mg/cm2であった)。塗布液を乾燥させて塗膜を得た後、その塗膜を直径13mmのディスク状に打ち抜いた。そして、そのディスクをプレス成形機により加圧して、1.70±0.02g/cm3の電極密度を有する電極を作製した。なお、得られた電極の電極密度は、マイクロメータにより厚みを測定して体積を算出すると共に、そのディスク(銅箔を除いた部分)の質量を計測することにより得られる。
(3−1)電極作製
上述のケイ素黒鉛複合粒子にAB(アセチレンブラック)と、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)粉末と、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)の水性分散液と、水とを配合して電極合剤スラリーを得た。ここで、ABは導電助剤であり、CMC及びSBRは結着剤である。ケイ素黒鉛複合粒子、AB、CMCおよびSBRの配合比は、質量比で97.0:1.0:1.0:1.0であった。そして、この電極合剤スラリーを、厚み17μmの銅箔(集電体)上にドクターブレード法により塗布した(塗布量は7〜8mg/cm2であった)。塗布液を乾燥させて塗膜を得た後、その塗膜を直径13mmのディスク状に打ち抜いた。そして、そのディスクをプレス成形機により加圧して、1.70±0.02g/cm3の電極密度を有する電極を作製した。なお、得られた電極の電極密度は、マイクロメータにより厚みを測定して体積を算出すると共に、そのディスク(銅箔を除いた部分)の質量を計測することにより得られる。
(3−2)電池作製
ポリオレフィン製セパレーターの両側に上述の電極と対極のLi金属箔とを配置して電極組立体を作製した。そして、その電極組立体の内部に電解液を注入してセルサイズ2016のコイン型非水試験セルを作製した。なお、電解液の組成は、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC):ビニレンカーボネート(VC):フルオロエチレンカーボネート(FEC):LiPF6=23:4:48:1:8:16(質量比)とした。
ポリオレフィン製セパレーターの両側に上述の電極と対極のLi金属箔とを配置して電極組立体を作製した。そして、その電極組立体の内部に電解液を注入してセルサイズ2016のコイン型非水試験セルを作製した。なお、電解液の組成は、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC):ビニレンカーボネート(VC):フルオロエチレンカーボネート(FEC):LiPF6=23:4:48:1:8:16(質量比)とした。
(3−3)放電容量、初回充放電効率、電池劣化度および充放電サイクルの評価
この非水試験セルにおいて、先ず、0.33mAの電流値で、対極に対して電位差0(ゼロ)Vになるまで定電流ドープ(電極へのリチウムイオンの挿入、リチウムイオン二次電池の充電に相当)を行った後、さらに0Vを保持したまま、5μAになるまで定電圧で対極に対してドープを続け、ドープ容量を測定した。次に、0.33mAの定電流で、電位差1.5Vになるまで脱ドープ(電極からのリチウムイオンの離脱、リチウムイオン二次電池の放電に相当)を行い、脱ドープ容量を測定した。このときのドープ容量、脱ドープ容量は、この電極をリチウムイオン二次電池の負極として用いた時の充電容量、放電容量に相当するので、これを充電容量、放電容量とした。本実施例に係る非水試験セルの放電容量は、471mAh/gであった(表1参照)。このときの脱ドープ容量/ドープ容量の比は、初回におけるリチウムイオン二次電池の放電容量/充電容量の比に相当するので、この比を初回充放電効率とした。本実施例に係る非水試験セルの初回充放電効率は、88.2%であった(表1参照)。
この非水試験セルにおいて、先ず、0.33mAの電流値で、対極に対して電位差0(ゼロ)Vになるまで定電流ドープ(電極へのリチウムイオンの挿入、リチウムイオン二次電池の充電に相当)を行った後、さらに0Vを保持したまま、5μAになるまで定電圧で対極に対してドープを続け、ドープ容量を測定した。次に、0.33mAの定電流で、電位差1.5Vになるまで脱ドープ(電極からのリチウムイオンの離脱、リチウムイオン二次電池の放電に相当)を行い、脱ドープ容量を測定した。このときのドープ容量、脱ドープ容量は、この電極をリチウムイオン二次電池の負極として用いた時の充電容量、放電容量に相当するので、これを充電容量、放電容量とした。本実施例に係る非水試験セルの放電容量は、471mAh/gであった(表1参照)。このときの脱ドープ容量/ドープ容量の比は、初回におけるリチウムイオン二次電池の放電容量/充電容量の比に相当するので、この比を初回充放電効率とした。本実施例に係る非水試験セルの初回充放電効率は、88.2%であった(表1参照)。
サイクル特性の測定は、上記と同様に構成されたコイン型の非水試験セルを用いて行った。この試験セルにおいて、2サイクル目以降、1.33mAの定電流で、対極に対して電位差5mVになるまでドープした後(充電に相当)、さらに5mVを保持したまま、50μAになるまで定電圧でドープを続けた。次に、1.33mAの定電流で、電位差1.5Vになるまで脱ドープを行って(放電に相当)、脱ドープ容量を測定した。このときの脱ドープ容量を放電容量とした。
上述と同一条件でドープと脱ドープとを15回繰り返し、10サイクル目から15サイクル目の充放電効率の平均値を求めて電池劣化度を評価すると共に、「2サイクル目の脱ドープ時の放電容量」に対する「15サイクル目の脱ドープ時の放電容量」の比率(容量維持率)を求めてサイクル特性を評価した。なお、容量維持率が90%以上であれば、実用電池として良好であると見なすことができる。本実施例に係る非水試験セルの容量維持率は98.0%であり、劣化率(%)は2.0%であった(表1参照)。なお、ここにいう「劣化率」は、100から容量維持率を差し引いた値である。
(4)ケイ素黒鉛複合粒子中の鱗片状天然黒鉛粒子の配向度の測定
ケイ素黒鉛複合粒子中の鱗片状天然黒鉛粒子の配向度は、反射回折式の粉末X線回折法を利用して求められる。具体的には、上記「(3−1)電極作製」で作製した加圧後のディスク状電極を無反射板に両面テープで固定すると共に、リガク製RINT−1200Vを用いて、銅(Cu)をターゲットとし、管電圧40kV、管電流30mAでCuKα線をディスク状電極に照射して測定する。その後、ピーク分離し、CuKα1線による粉末X線回折スペクトルを得る。2θが52〜57°の範囲内にある(004)面の回折ピークと、2θが75〜80°の範囲内にある(110)面の回折ピークの各々の強度を求める。そして、(110)面の回折ピーク強度を(004)面の回折ピーク強度で除してケイ素黒鉛複合粒子中の鱗片状天然黒鉛粒子の配向度を算出する。本実施例に係るケイ素黒鉛複合粒子中の鱗片状天然黒鉛粒子の配向度は0.0085であった(表1参照)。なお、この配向度が小さい程、ケイ素黒鉛複合粒子中の鱗片状天然黒鉛粒子の配向性が高くなる。
ケイ素黒鉛複合粒子中の鱗片状天然黒鉛粒子の配向度は、反射回折式の粉末X線回折法を利用して求められる。具体的には、上記「(3−1)電極作製」で作製した加圧後のディスク状電極を無反射板に両面テープで固定すると共に、リガク製RINT−1200Vを用いて、銅(Cu)をターゲットとし、管電圧40kV、管電流30mAでCuKα線をディスク状電極に照射して測定する。その後、ピーク分離し、CuKα1線による粉末X線回折スペクトルを得る。2θが52〜57°の範囲内にある(004)面の回折ピークと、2θが75〜80°の範囲内にある(110)面の回折ピークの各々の強度を求める。そして、(110)面の回折ピーク強度を(004)面の回折ピーク強度で除してケイ素黒鉛複合粒子中の鱗片状天然黒鉛粒子の配向度を算出する。本実施例に係るケイ素黒鉛複合粒子中の鱗片状天然黒鉛粒子の配向度は0.0085であった(表1参照)。なお、この配向度が小さい程、ケイ素黒鉛複合粒子中の鱗片状天然黒鉛粒子の配向性が高くなる。
(5)アスペクト比の測定
上記「(3−1)電極作製」で作製した加圧前のディスク状電極を樹脂に埋め込んだ後、その樹脂を切断してその切断面を研磨した。そして、その切断面(電極断面)を光学顕微鏡で観察して、ケイ素黒鉛複合粒子50個の寸法を計測し、各ケイ素黒鉛複合粒子についてアスペクト比(図1における鱗片状黒鉛粒子の積層方向の長さHに対する長軸長さWの比)を算出する。そして、その50個のケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比を平均したものをケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比とした。なお、本実施例に係るケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比は3.1であった。
上記「(3−1)電極作製」で作製した加圧前のディスク状電極を樹脂に埋め込んだ後、その樹脂を切断してその切断面を研磨した。そして、その切断面(電極断面)を光学顕微鏡で観察して、ケイ素黒鉛複合粒子50個の寸法を計測し、各ケイ素黒鉛複合粒子についてアスペクト比(図1における鱗片状黒鉛粒子の積層方向の長さHに対する長軸長さWの比)を算出する。そして、その50個のケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比を平均したものをケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比とした。なお、本実施例に係るケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比は3.1であった。
粉末混合時において鱗片状天然黒鉛粉末とシリコン粉末との質量比を78:6とした以外は、実施例1と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、各特性を評価した。このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、78:6:11であった(表1参照)。
このときのシリコン粒子のケイ素原子に対する酸素原子の組成比は0.28であり、ケイ素粒子のBET比表面積は109m2/gであった。ケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比は3.8であった。このケイ素黒鉛複合粒子の体積分率50%時の粒子径(メジアン径)は18μmであった。このケイ素黒鉛複合粒子の配向度は0.0098であった。非水試験セルの放電容量は520mAh/gであり、初回充放電効率は87.1%であり、容量維持率は97.1%であり、劣化率は2.9%であった(表1参照)。
粉末混合時において鱗片状天然黒鉛粉末とケイ素粉末との質量比を76:8とした以外は、実施例1と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、各特性を評価した。なお、このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、76:8:11であった(表1参照)。
このときのケイ素粒子のケイ素原子に対する酸素原子の組成比は0.28であり、ケイ素粒子のBET比表面積は109m2/gであった。ケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比は3.5であった。このケイ素黒鉛複合粒子の体積分率50%時の粒子径(メジアン径)は18μmであった。このケイ素黒鉛複合粒子の配向度は0.0060であった。非水試験セルの放電容量は545mAh/gであり、初回充放電効率は87.7%であり、容量維持率は95.7%であり、劣化率は4.3%であった(表1参照)。
高純度シリコン粉末の粉砕時においてジルコニアボールの径を0.5μmとし、粉末混合時において鱗片状天然黒鉛粉末とケイ素粉末との質量比を75:9とした以外は、実施例1と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、各特性を評価した。なお、このときのシリコン粉末の(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比は0.497であった(表1参照)。また、このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、75:9:11であった(表1参照)。
このときのケイ素粒子のケイ素原子に対する酸素原子の組成比は0.13であり、ケイ素粒子のBET比表面積は52m2/gであった。ケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比は3.2であった。このケイ素黒鉛複合粒子の体積分率50%時の粒子径(メジアン径)は21μmであった。このケイ素黒鉛複合粒子の配向度は0.0067であった。非水試験セルの放電容量は621mAh/gであり、初回充放電効率は88.3%であり、容量維持率は94.6%であり、劣化率は5.4%であった(表1参照)。
高純度シリコン粉末の粉砕時において粉砕時間を7時間に代え、粉末混合時において鱗片状天然黒鉛粉末とシリコン粉末と石炭系ピッチ粉末の質量比を78:6:11とし、中間複合粒子を調製した後に循環型メカノフュージョンシステムの内部温度を60℃まで冷却してから、最終的に鱗片状黒鉛粉末とシリコン粉末と石炭系ピッチ粉末とアセチレンブラックの質量比が78:6:16:1になるようにアセチレンブラック(導電助剤)と石炭系ピッチを添加し、5分程度メカノケミカル処理した以外は、実施例1と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、各特性を評価した。なお、この追加処理により、中間複合粒子にアセチレンブラックが埋め込まれる。なお、このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、78:6:11であった(表1参照)。
このときのケイ素粒子のケイ素原子に対する酸素原子の組成比は0.28であり、ケイ素粒子のBET比表面積は109m2/gであった。ケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比は4.1であった。このケイ素黒鉛複合粒子の体積分率50%時の粒子径(メジアン径)は21μmであった。このケイ素黒鉛複合粒子の配向度は0.0074であった。非水試験セルの放電容量は510mAh/gであり、初回充放電効率は88.0%であり、容量維持率は98.3%であり、劣化率は1.7%であった(表1参照)。
(比較例1)
高純度シリコン粒子の粉砕時間を4時間に代え、粉末混合時において鱗片状天然黒鉛粉末とシリコン粉末との質量比を75:9とした以外は、実施例1と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、各特性を評価した。このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、75:9:11であった(表1参照)。なお、このときのシリコン粉末の(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比は0.518であった(表1参照)。本比較例で得られた粉砕シリコン粉末の走査型電子顕微鏡写真が図6に示されている。図6の写真に映し出されるように、この粉砕シリコン粉末は、略球形の形状を呈している。本比較例で得られたケイ素黒鉛複合粒子の走査型電子顕微鏡写真が図7および図8に示されている。図7および図8の写真に映し出されるように、このケイ素黒鉛複合粒子では、鱗片状天然黒鉛粒子に対するシリコン粒子の接触面積は、実施例1に記載のものよりも小さくなっているように見受けられる。
高純度シリコン粒子の粉砕時間を4時間に代え、粉末混合時において鱗片状天然黒鉛粉末とシリコン粉末との質量比を75:9とした以外は、実施例1と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、各特性を評価した。このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、75:9:11であった(表1参照)。なお、このときのシリコン粉末の(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比は0.518であった(表1参照)。本比較例で得られた粉砕シリコン粉末の走査型電子顕微鏡写真が図6に示されている。図6の写真に映し出されるように、この粉砕シリコン粉末は、略球形の形状を呈している。本比較例で得られたケイ素黒鉛複合粒子の走査型電子顕微鏡写真が図7および図8に示されている。図7および図8の写真に映し出されるように、このケイ素黒鉛複合粒子では、鱗片状天然黒鉛粒子に対するシリコン粒子の接触面積は、実施例1に記載のものよりも小さくなっているように見受けられる。
このときのシリコン粒子のケイ素原子に対する酸素原子の組成比は0.23であり、ケイ素粒子のBET比表面積は77m2/gであった。ケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比は3.0であった。このケイ素黒鉛複合粒子の体積分率50%時の粒子径(メジアン径)は20μmであった。このケイ素黒鉛複合粒子の配向度は0.0099であった。非水試験セルの放電容量は585mAh/gであり、初回充放電効率は88.1%であり、容量維持率は92.7%であり、劣化率は7.3%であった(表1参照)。
(比較例2)
高純度シリコン粉末をボールミル(株式会社ナガオシステム製Planet M2−3F)で7時間、乾式粉砕した以外は、実施例1と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、各特性を評価した。なお、ボールミル処理時、メディアとして0.5mm径のボールを用いた。このときのシリコン粉末の(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比は0.548であった(表1参照)。このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、78:6:11であった(表1参照)。
高純度シリコン粉末をボールミル(株式会社ナガオシステム製Planet M2−3F)で7時間、乾式粉砕した以外は、実施例1と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、各特性を評価した。なお、ボールミル処理時、メディアとして0.5mm径のボールを用いた。このときのシリコン粉末の(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比は0.548であった(表1参照)。このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、78:6:11であった(表1参照)。
このときのケイ素粒子のケイ素原子に対する酸素原子の組成比は0.21であり、ケイ素粒子のBET比表面積は124m2/gであった。ケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比は2.4であった。このケイ素黒鉛複合粒子の体積分率50%時の粒子径(メジアン径)は20μmであった。このケイ素黒鉛複合粒子の配向度は0.0067であった。非水試験セルの放電容量は505mAh/gであり、初回充放電効率は87.8%であり、容量維持率は93.1%であり、劣化率は6.9%であった(表1参照)。
(比較例3)
粉末混合時において鱗片状天然黒鉛粉末とシリコン粉末との質量比を75:9とした以外は、比較例2と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、実施例1と同様にして各特性を評価した。なお、このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、75:9:11であった(表1参照)。
粉末混合時において鱗片状天然黒鉛粉末とシリコン粉末との質量比を75:9とした以外は、比較例2と同様にしてケイ素黒鉛複合粒子を調製し、実施例1と同様にして各特性を評価した。なお、このケイ素黒鉛複合粒子における鱗片状天然黒鉛粉末、シリコン粉末(ケイ素粉末)およびピッチの熱処理物の質量比は、75:9:11であった(表1参照)。
このときのケイ素粒子のケイ素原子に対する酸素原子の組成比は0.21であり、ケイ素粒子のBET比表面積は124m2/gであった。ケイ素黒鉛複合粒子のアスペクト比は2.6であった。このケイ素黒鉛複合粒子の体積分率50%時の粒子径(メジアン径)は19μmであった。このケイ素黒鉛複合粒子の配向度は0.0138であった。非水試験セルの放電容量は569mAh/gであり、初回充放電効率は87.7%であり、容量維持率は90.8%であり、劣化率は9.2%であった(表1参照)。
上述の結果より、本発明の実施例に係るケイ素黒鉛複合粒子は、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使用されると、そのリチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性を有効に改善することが明らかとなった。
100 ケイ素黒鉛複合粒子
110 ケイ素粒子
120 鱗片状黒鉛粒子
200 電極
210 活物質層
220 集電体
110 ケイ素粒子
120 鱗片状黒鉛粒子
200 電極
210 活物質層
220 集電体
Claims (14)
- 層状に配列する複数の鱗片状黒鉛粒子と、
前記複数の鱗片状黒鉛粒子に挟み込まれるケイ素粒子と
を備え、
前記ケイ素粒子の(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下である
ケイ素黒鉛複合粒子。 - 前記ケイ素粒子は、前記複数の鱗片状黒鉛粒子に挟み込まれると共に、最外層の前記鱗片状黒鉛粒子および最外層の前記ケイ素粒子の少なくとも一方の粒子の外表面上に非黒鉛質炭素によって付着される
請求項1に記載のケイ素黒鉛複合粒子。 - 前記鱗片状黒鉛粒子、前記ケイ素粒子および前記非黒鉛質炭素の質量比が97〜60:1〜20:2〜20である
請求項2に記載のケイ素黒鉛複合粒子。 - 前記ケイ素粒子は、比表面積が40m2/g以上200m2/g以下の範囲内である
請求項1から3のいずれか1項に記載のケイ素黒鉛複合粒子。 - 電極密度1.70±0.02g/cm3の電極を作製したときの前記電極のX線回折像において「(004)面に帰属されるピークの強度I(004)」に対する「(110)面に帰属されるピークの強度I(110)」の比が0.0010以上0.0300以下の範囲内である
請求項1から4のいずれか1項に記載のケイ素黒鉛複合粒子。 - 前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向の長さに対する長軸長さの比が1.5以上10以下の範囲内である
請求項1から5のいずれか1項に記載のケイ素黒鉛複合粒子。 - 層状に配列する複数の鱗片状黒鉛粒子と、
前記複数の鱗片状黒鉛粒子に挟み込まれる板状のケイ素粒子(ただし、ケイ素原子に対する酸素原子の比は0以上1.3未満の範囲内である)と
を備える、ケイ素黒鉛複合粒子。 - (111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下であるケイ素粒子、鱗片状黒鉛粒子および固体の非黒鉛質炭素原料の混合物に、前記非黒鉛質炭素原料の軟化点以上の温度で圧縮力およびせん断力を付与して中間複合粒子を調製する中間複合粒子調製工程と、
前記中間複合粒子を加熱処理する加熱工程と
を備える、ケイ素黒鉛複合粒子の製造方法。 - ケイ素粉末を湿式粉砕して、(111)面のX線回折ピーク面積に対する(220)面のX線回折ピーク面積の比が0.50以下であるケイ素粒子のスラリーを調製する湿式粉砕工程と、
前記スラリーに前記鱗片状黒鉛粒子を混合して混合スラリーを調製する混合工程と、
前記混合スラリーを乾燥させて混合粉末を調製する乾燥工程と
をさらに備え、
前記中間複合粒子調製工程では、前記混合粉末および前記固体の非黒鉛質炭素原料の混合物に、前記非黒鉛質炭素原料の軟化点以上の温度で圧縮力およびせん断力が付与されて中間複合粒子が調製される
請求項8に記載のケイ素黒鉛複合粒子の製造方法。 - 前記中間複合粒子調製工程では、前記混合粉末、前記固体の非黒鉛質炭素原料および100nm以下の平均粒径を有する導電助剤の混合物に、前記非黒鉛質炭素原料の軟化点以上の温度で圧縮力およびせん断力が付与されて中間複合粒子が調製される
請求項8または9に記載のケイ素黒鉛複合粒子の製造方法。 - 100nm以下の平均粒径を有する導電助剤を前記中間複合粒子に添加する導電助剤添加工程をさらに備える
請求項8または9に記載のケイ素黒鉛複合粒子の製造方法。 - 請求項8から11のいずれか1項に記載のケイ素黒鉛複合粒子の製造方法により得られるケイ素黒鉛複合粒子。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7及び12のいずれか1項に記載のケイ素黒鉛複合粒子を活物質とする電極。
- 請求項13に記載の電極を備える非水電解質二次電池。
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