JP2016088878A - 歯科用硬化性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 充分な機械的強度を有するとともに、硬化時の収縮応力が小さい歯科用重合性組成物を提供する
【解決手段】 本発明の歯科用光硬化性組成物は、(b)重合性単量体及び(c)重合開始剤とともに、(a)環状分子と、前記環状分子を貫通する直鎖状の軸分子と、前記軸分子の両端に結合した、前記環状分子が前記軸分子から抜けないようにする封鎖基とから構成され、前記環状分子がシクロデキストリンであるポリロタキサンを含んでなる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、重合性単量体及び重合開始剤とともに、ポリロタキサンを含有する歯科用硬化性組成物に関する。本発明に係る歯科用硬化性組成物は、歯科用充填修復材料、歯科用セメント、歯科用接着材、歯科用支台築造材料等として、特に、歯科用充填修復材組成物として使用されるものであり、硬化に伴って生ずる収縮応力が小さいとの特性を発揮する。
歯の齲蝕や、それに伴う欠損の治療に際しては、一般に、歯科用接着材及び歯科用充填材を使用する修復が行われている。修復治療は次の手順で行わる。すなわち、まず、齲蝕部分を削って窩洞を形成した後、歯科用接着材を窩洞に塗布・乾燥し、可視光を照射して硬化させる。続いて、硬化した接着材層の上に歯科用充填材を充填し、可視光を照射して光重合により充填材を硬化させる。
上述の治療では、歯科用充填材の重合による硬化に伴い大きな収縮応力が生じ、この大きな収縮応力のため、歯科用充填材が歯質から剥がれ、最悪の場合、窩洞から脱落するという問題があった。このため、低収縮応力の歯科用充填材が求められていた。
近年、低収縮応力の歯科用重合性組成物を開発するために様々な研究が行われている。例えば、嵩高い樹枝状化合物を配合することにより、歯科用充填材中の重合性基濃度を低減することが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、この方法では、充分な効果を得るためには、樹枝状化合物を多量に配合することが必要であり、樹枝状化合物が多量に配合されることにより、歯科用充填材の架橋密度は小さく、その強度が不充分となるとの課題があった。
この他にも、重合時に開環を伴う重合性単量体を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。しかし、このような重合性単量体の構造は限られており、多様な物性を考慮した歯科用充填材を設計することは難しい。特に、強度の低い骨格を持つ重合性単量体が多く、高強度と低収縮応力との両立は非常に困難である。
特開2006−298919号公報 特開平5−255442号公報
本発明は、充分な機械的強度を有するとともに、硬化時の収縮応力が小さい歯科用重合性組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った。その結果、重合性単量体及び重合開始剤とともに、環状分子と、前記環状分子を貫通する直鎖状の軸分子と、前記軸分子の両端に結合した、前記環状分子が前記軸分子から抜けないようにする封鎖基とから構成され、前記環状分子がシクロデキストリンであるポリロタキサンを含んでなる歯科用重合性組成物が、充分な強度を有していながら、硬化時の収縮応力が低いことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(a)環状分子と、前記環状分子を貫通する直鎖状の軸分子と、前記軸分子の両端に結合した、前記環状分子が前記軸分子から抜けないようにする封鎖基とから構成され、前記環状分子がシクロデキストリンであるポリロタキサン、(b)重合性単量体、及び(c)重合開始剤を含んでなる歯科用硬化性組成物に関する。
本発明によれば、充分な機械的強度を有するとともに、硬化時の収縮応力が低い歯科用重合性組成物が提供される。
本発明に係る歯科用硬化性組成物は、その重合による収縮応力が極めて小さいとの特性を利用して、歯科材料において使用されている種々の硬化性材料として有用に使用できる。具体的には、歯科用充填修復材料、歯科用セメント、歯科用接着材、歯科用支台築造材料等が挙げられるが、特に、歯牙の窩洞に対して充填して硬化させた際に、硬化体と窩洞の内壁との間に間隙が形成され難く、二次的な齲蝕の発生を大きく低減できることから、歯科用充填修復材料として最も有用である。
本発明に係る歯科用硬化性組成物は、(a)環状分子と、前記環状分子を貫通する直鎖状の軸分子と、前記軸分子の両端に結合した、前記環状分子が前記軸分子から抜けないようにする封鎖基とから構成され、前記環状分子がシクロデキストリンであるポリロタキサン、(b)重合性単量体、及び(c)重合開始剤を含んでなる。
以下、本発明の歯科用複合修復材料の各成分について説明する。
(a)ポリロタキサン
ポリロタキサンは、一般に、複数の環状分子と、前記環状分子を貫通する直鎖状の軸分子と、前記軸分子の両端に結合した、前記環状分子が前記軸分子から抜けないようにする封鎖基とから構成された化合物であり、本発明では、特に、環状分子がシクロデキストリンであるポリロタキサンが使用される。
環状分子を構成するシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、又はγ−シクロデキストリンのいずれでもよいが、中でも、α−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンであることが好ましい。
シクロデキストリンは、その水酸基の少なくとも一部が、他の基によって置換されていることが好ましい。置換基は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、メチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基(「DMAE」基と称することもある)、カルボキシル基、一級アミノ基、若しくはポリエチレングリコールなどの水溶性高分子や、ペプチド分子など、又は重合性基等が挙げられる。本発明において好適な置換基としては、重合性基、好ましくは、メタクリル基又はアクリル基が挙げられる。重合性基は、水酸基の部分に直接導入してもよいし、水酸基にスペーサー基を介して導入してもよい。スペーサー基を有するポリロタキサンは、重合性単量体との相溶性が向上するため好ましい。
スペーサーを介して導入された重合性基としては、一般式(I)
−M−Y
[式中、Yは光重合性基であり;Mは、一般式(II)
Figure 2016088878

(ここで、Xは、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和、未置換又は水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1の置換基によって置換された炭素数1〜8の2価の脂肪族炭化水素基(該炭化水素基は、−O−結合又は−NH−結合を含んでいてもよい)であり、及びnは、平均値1〜10である)で表される、シクロデキストリンと前記重合性基Yとの間のスペーサー基である]で表されるものが挙げられる。一般式(I)において、Mは、好ましくは、アルキレンエステル、アルキレンカーボネートであり、前記アルキレンエステルがヘプチレンエステルであることが好ましい。また、一般式(I)における重合性基Yは、好ましくは、メタクリル基又はアクリル基である。
ポリロタキサンを構成する直鎖状の軸分子は、環状分子の開口部に串刺し状に包接され得るものであれば、特に限定されない。
例えば、直鎖状の軸分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、デンプン等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他のオレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン、ポリスルホン、ポリイミン、ポリ無水酢酸、ポリ尿素、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリケトン、ポリフェニレン、ポリハロオレフィン、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、特にポリエチレングリコールが挙げられる
ポリロタキサンを構成する封鎖基は、直鎖状の軸分子の両端に配置され、環状分子が軸分子から抜けないようにする基であれば、特に限定されない。
例えば、封鎖基は、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン、シルセスキオキサン、ピレン、置換ベンゼン(置換基は、好ましくは、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等から選ばれるが、これらに限定されない)、未置換又は置換された多核芳香族基(置換基の例として、上記と同じものを挙げることができるが、これらに限定されない)、及びステロイドからなる群から選ばれる。好ましくは、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン、シルセスキオキサン、及びピレンが使用され、さらに好ましくは、アダマンタン基又はトリチル基が使用される。
このようなポリロタキサンは、例えば、公知の製法(例えば、特開2011−46917号公報、特開2012−25923号公報)に従って合成することができるが、市販されている製品を使用することもできる。
本発明のポリロタキサンの数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2万〜10万程度とすることが好ましい。
また、前記ポリロタキサン1分子あたりの前記環状分子の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均5個〜200個が好ましい。
ポリロタキサンの配合量は、少な過ぎると、その効果を最大限に発揮させることができず、多過ぎると、硬化前の流動性が大きく低下して、ポリロタキサンの収縮応力低減効果を抑制する。従って、この歯科用硬化性組成物に含まれる重合性単量体100質量部当たり、一般的には、0.5〜20質量部、好ましくは、1〜15質量部、最も好ましくは、3〜13質量部の範囲とするのがよい。
(b)重合性単量体
重合性単量体は、公知の化合物から適宜選択して用いることができる。中でも、重合性不飽和基を複数有する多官能重合性単量体が、硬化速度、硬化体の機械的物性、耐水性、及び耐着色性等を良好にする観点から好適に用いられる。また、(メタ)アクリレート系重合性単量体が好適に使用される。多官能性の(メタ)アクリレート系重合性単量体の代表例としては、下記(1)〜(3)に示される二官能重合性単量体、三官能重合性単量、四官能重合性単量体が挙げられる。
(1)二官能重合性単量体
二官能重合性単量体としては、芳香族化合物系の重合性単量体、脂肪族化合物系の重合性単量体が挙げられる。
芳香族化合物系の重合性単量体としては、例えば、2,2’−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2−[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]−2‐[4−(メタ)クリロイルオキシトリエトキシフェニル]プロパン、2−[4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル]−2−[4−(メタ)クリロイルオキシトリエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)クリロイルオキシプロポキシフェニル]プロパン;及びOH基含有ビニルモノマーと脂肪族ジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等が挙げられる。
なお、OH基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート、これらメタクリレートに対応するアクリレート等が挙げられる。また、前記ジイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族化合物系の重合性単量体としては、例えば、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート、1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート等のメタクリレート、これらメタクリレートに対応するアクリレート等;並びにOH基含有ビニルモノマーと脂肪族ジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等が挙げられる。
なお、OH基含有ビニルモノマーとしては、先に例示したものと同様のものを挙げることができ、脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等を挙げることができる。
(2)三官能重合性単量体
前記三官能重合性単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート;及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等が挙げられる。
(3)四官能重合性単量体
前記四官能重合性単量体としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート;及びジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等が挙げられる。
なお、ジイソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等を挙げることができる。
なお、これらの多官能(メタ)アクリレート系重合性単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
さらに、必要に応じて、単官能(メタ)アクリレート系重合性単量体を用いてもよい。
単官能(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、(メタ)アクリレート系重合性単量体以外の重合性単量体を用いてもよい。
このような重合性単量体としては、例えば、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等のスチレン系化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物などが挙げられる。
また、重合性単量体として、疎水性の重合性単量体を多く含む場合には、両親媒性重合性単量体を併用しても良い。
両親媒性重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコール重合度9〜50)、1,2,3,4−ブタンテトラオール−1,4−ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(c)重合開始剤
本発明の歯科用重合組成物には、重合性単量体を重合させるために、重合開始剤が配合される。重合開始剤としては、光重合開始剤、化学重合開始剤、及び熱重合開始剤のいずれも使用できる。また、これらの内の2種類以上の重合開始剤を組み合わせて利用することもできる。なお、重合反応が急速に進行する場合に重合収縮応力が大きくなりやすいことを考慮すると、本発明は、光重合開始剤を使用した場合に最も効果的である。光重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、カンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン等のα−ジケトン類、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン等のα−アミノアセトフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド誘導体などを挙げることができる。
このような光重合開始剤の配合量は、この歯科用硬化性組成物に含まれる重合性単量体を硬化できるだけの有効量であれば特に限定されず、適宜設定すれば良いが、一般的には、(メタ)アクリル系重合性単量体100質量部当り、0.01〜10質量部、特に0.1〜5質量部の範囲とするのがよい。
光重合開始剤の助剤として重合促進剤を配合することができる。重合促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ドデシルメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等のメルカプト化合物が挙げられる。
さらに、前記光重合開始剤、前記重合促進剤に加え、ヨードニウム塩、トリハロメチル置換S−トリアジン、フェナンシルスルホニウム塩化合物等の電子受容体を加えてもよい。
化学重合開始剤としては、2成分以上からなり、使用直前に全成分が混合されることにより、室温近辺で重合活性種を生じる公知のものが制限なく使用できる。例えば、有機過酸化物/アミン類、有機過酸化物/アミン類/有機スルフィン酸類、有機過酸化物/アミン類/アリールボレート類、アリールボレート類/酸性化合物、及びバルビツール酸誘導体/銅化合物/ハロゲン化合物等の各種組み合わせからなるものが挙げられる。この内、高い歯質接着強度が得られ、また、取扱いが容易な理由から、有機過酸化物/アミン類からなるものが特に好適である。この有機過酸化物と該アミン化合物とからなる化学重合開始剤には、さらに、ベンゼンスルフィン酸や、p−トルエンスルフィン酸及びその塩などのスルフィン酸や、5−ブチルバルビツール酸などのバルビツール酸類を配合するのも好適な態様である。
熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラキス(p−フロルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸トリエタノールアミン塩などのホウ素化合物、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸などのバルビツール酸類、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩類などが挙げられる。
本発明の歯科用重合性組成物は、上記の(a)ポリロタキサン、(b)重合性単量体及び(c)重合開始剤に加えて、任意に、(d)充填材を含有できる。
前記(d)充填材としては、特に制限はなく、公知の化合物から適宜選択して用いることができ、無機充填材、有機−無機充填材、有機充填材が挙げられる。
無機充填材としては、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ランタンガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フッ化イッテルビウム等が挙げられる。
前記無機充填材は、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で疎水化することにより重合性単量体とのなじみを良好にし、機械的強度や耐水性を向上させることができる。
疎水化の方法としては、特に制限はなく、公知の方法が挙げられる。すなわち、前記シランカップリング剤として、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等を用いた疎水化が挙げられる。
前記有機−無機複合充填材としては、上述の無機充填材に重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕して得られる粒状物、或いは、無機充填材の凝集粒子に前記重合性単量体を含浸させた後に重合させた粒状物が使用される。
さらに、有機充填材としては、上述の重合性単量体を重合して得られた粒状物が使用される。
これら充填材の平均粒径としては、特に制限はなく、一般的に歯科用材料として使用されている大きさの0.01μm〜100μmでよいが、0.01μm〜5μmが好ましい。また、前記充填材の屈折率としても、特に制限はなく、一般的な歯科用の充填材が有する1.4〜1.7でよい。なお、前記充填材としては、単独で用いてもよいが、粒径範囲や平均粒径、屈折率、材質の異なる複数の充填材を併用してもよい。
これら充填材の形状としては、特に制限はなく、不定形、球状、略球状のいずれであってもよいが、中でも、球状の無機フィラーが好ましい。
前記充填材の配合量としては、特に制限はないが、上述の重合性単量体100質量部に対して、70質量部〜700質量部が好ましい。
本発明の歯科用重合性組成物は、さらに、他の添加剤を含有することもできる。
他の添加剤としては、本発明の効果を妨げない限り、特に制限はなく、目的に応じて選択することができ、公知の歯科用硬化性組成物に含まれる各種成分を適用することができる。例えば、重合禁止剤を配合して保存安定性を高めることができるし、必要に応じて、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物などの有機増粘材を添加することが可能である。また、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料等の各種添加剤を必要に応じて配合することもできる。
以下、本発明を実施例に基づき説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
下記の実施例では、(a)ポリロタキサンとして、市販のポリロタキサン、セルム(登録商標)スーパーポリマーAU2000、セルムスーパーポリマーA1000(いずれもアドバンスト・ソフトマテリアルズ社製)及び新たに合成したポリロタキサンを使用しているが、その合成法を、下記に参考例として詳述する。
[参考例1]
ポリロタキサンc7の合成
i)カルボン酸化ポリエチレングリコールc1の調製
ポリエチレングリコール100g、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)100mg、臭化ナトリウム2.5gを、水250mlに溶解した。得られた溶液に、市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度約5%)25mlを添加し、室温で攪拌しながら反応させた。反応が進行すると、添加直後から系のpHは6以下に急激に減少するが、できる限りpH:10〜11を保つように1N NaOHを添加して調整した。メタノール25mlを添加することにより反応を終了させた。ジクロロメタンでの抽出を繰り返して行い、無機塩以外の成分を抽出した後、エバポレーターでジクロロメタンを留去した。残存物を再沈殿法により精製した後、真空乾燥機で乾燥させて、カルボン酸化ポリエチレングリコールc1を得た。
ii)擬ポリロタキサンc3の調製
上記工程において調製したカルボン酸化ポリエチレングリコール19g及びα―シクロデキストリン67gを、それぞれ別々に用意した70℃の温水300mlに溶解させた後、両溶液を混合し、その後、冷蔵庫(4℃)内で一晩静置した。最後に、クリーム状で析出した擬ポリロタキサンc3を凍結乾燥して回収した。
iii)トリチルアミンを用いた未修飾ポリロタキサンc4の調製
室温において、ジメチルホルムアミド(DMF)200mlに、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム)・ヘキサフルオロホスフェート)0.6g、トリチルアミン3.8g、ジイソプロピルエチルアミン0.25mlを、この順番で溶解させ、得られた溶液に、上記工程で得られた擬ポリロタキサンc3を添加した後、速やかに、よく振り混ぜた。スラリー状になった反応混合物を冷蔵庫内で一晩静置した。その後、溶媒洗浄及び再沈殿法により精製し、最終的に未修飾ポリロタキサンc4を得た。なお、NMR測定から、環状分子の量は最大包摂量の0.30であることがわかった。また、未修飾ポリロタキサンc4は、カルボン酸化ポリエチレングリコールc1の三倍程度の分子量(GPC測定)であることから、擬ポリロタキサンの両末端が封鎖された化合物であることを確認した。
iv)ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンc5の調製
上記工程で得られた未修飾ポリロタキサンc4 3.0gを、1N NaOH水溶液40mlに溶解し、大過剰量のプロピレンオキシド25gを加えた。室温において24時間攪拌した後、塩酸で中和した。この溶液を、透明チューブ(分画分子量:12,000)にて48時間、水道水流水下で透析した。さらに、精製水500ml中で、3時間の透析を2回行った。凍結乾燥を行い、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンc5を得た。
v)ポリカプロラクトン修飾ポリロタキサンc6の調製
温度80℃下で、上記工程で得たヒドロキシプロピル化ポリロタキサンc5gを、ε―カプロラクトン22.5gに溶解させ、混合溶液とした。乾燥窒素流下で、この混合溶液を、110℃において1時間攪拌した後、2−エチルヘキサン錫(II)の50wt%キシレン溶液0.16gを加え、130℃において6時間攪拌した。その後、キシレンを添加し、ポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンc6のキシレン溶液を得た。なお、GC測定により、原料がほぼ完全に消失していることを確認した。
vi)ポリロタキサンc7の調製
室温まで冷却したポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンc6のキシレン溶液に、ジブチルヒドロキシトルエン0.01gを添加した後、2−アクリルオキシエチルイソシアネート7.1gを滴下した。40℃において16時間攪拌し、ポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンに、アクリルオキシエチルカルバモイル基を導入したアクリル化ポリロタキサン(ポリロタキサンc7)のキシレン溶液を得た。なお、GC測定により原料がほぼ完全に消失していることを確認した。また、IR測定により、ウレタン結合に特徴的な1740cm-1のピークが見られたことから、ポリロタキサンc7はアクリル基を含有した化合物であることを確認した。
得られたポリロタキサンc7は、軸分子としてポリエチレングリコール、環状分子としてα−シクロデキストリン、及び封鎖基としてトリチル基を含有するものであり、環状分子が、重合性基として、アクリルオキシエチルカルバモイル基を含有するポリロタキサンである。
[参考例2]
ポリロタキサンd7の合成
フルオレセインアミンを用いた未修飾ポリロタキサンd4の調製
室温において、ジメチルホルムアミド(DMF)200mlに、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム)・ヘキサフルオロホスフェート)0.6g、フルオレセインアミン5.1g、ジイソプロピルエチルアミン0.25mlを、この順番に溶解させ、得られた溶液に、上記参考例1の工程ii)で得られた擬ポリロタキサンc3を添加した後、速やかによく振り混ぜた。スラリー状になった反応混合物を冷蔵庫内で一晩静置した。その後、溶媒洗浄及び再沈殿法により精製し、最終的に未修飾ポリロタキサンd4を得た。なお、上記参考例1と同様の方法で、未修飾ポリロタキサンd4が、擬ポリロタキサンの両末端が封鎖された化合物であることを確認した。
ポリロタキサンd7の調製
上記工程で得られた未修飾ポリロタキサンd4について、参考例1と同様の方法により、ヒドロキシプロピル化、ポリカプロラクトン修飾、アクリル基導入の各処理を行い、ポリロタキサンd7を得た。なお、上記参考例1と同様の方法で、ポリロタキサンd7が所望の化合物であることを確認した。
得られたポリロタキサンd7は、軸分子としてポリエチレングリコール、環状分子としてα−シクロデキストリン、及び封鎖基としてフルオレセイン基を含有するものであり、環状分子は重合性基として、アクリルオキシエチルカルバモイル基を含有するポリロタキサンである。
[参考例3]
ポリロタキサンe7の合成
ピレンアミンを用いた未修飾ポリロタキサンe4の調製
室温において、ジメチルホルムアミド(DMF)200mlに、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム)・ヘキサフルオロホスフェート)0.6g、ピレンアミン3.2g、ジイソプロピルエチルアミン0.25mlを、この順番に溶解させ、得られた溶液に、上記参考例1の工程ii)で得られた擬ポリロタキサンc3を添加した後、速やかによく振り混ぜた。スラリー状になった反応混合物を冷蔵庫内で一晩静置した。その後、溶媒洗浄及び再沈殿法により精製し、最終的に未修飾ポリロタキサンd4を得た。なお、上記参考例1と同様の方法で、未修飾ポリロタキサンe4が、擬ポリロタキサンの両末端が封鎖された化合物であることを確認した。
ポリロタキサンe7の調製
上記工程で得られた未修飾ポリロタキサンe4について、参考例1と同様の方法により、ヒドロキシプロピル化、ポリカプロラクトン修飾、アクリル基導入の各処理を行い、ポリロタキサンe7を得た。なお、上記参考例1と同様の方法で、ポリロタキサンe7が所望の化合物であることを確認した。
得られたポリロタキサンe7は、軸分子としてポリエチレングリコール、環状分子としてα−シクロデキストリン、及び封鎖基としてピレン基を含有するものであり、環状分子は重合性基として、アクリルオキシエチルカルバモイル基を含有するポリロタキサンである。
[参考例4]
ポリロタキサンf7の合成
ニトロフェニルエステル化エチレングリコールの調製
100mlナスフラスコに、参考例1における工程i)で得られたカルボン酸化ポリエチレングリコールc1 5.0gを取り、p−ニトロフェノール60mg及びジシクロヘキシルカルボジアミド90mgの脱水ジクロロメタン(25ml)溶液を添加し、アルゴン雰囲気下、室温において40時間攪拌した。その後、濾過により沈殿物を除去した後、再沈殿法により精製を行い、ニトロフェニルエステル化ポリエチレングリコールf2を得た。なお、IR測定により、p−ニトロフェニルエステルに特徴的な1774cm-1のピークが見られること、カルボン酸に特徴的なピークが見られないことから、エチレングリコールの両末端が、ほぼ定量的に、ニトロフェニルエステル化されたことを確認した。
擬ポリロタキサンf3の調製
100mlナスフラスコに、α−シクロデキストリン3.3gを取り、イオン交換水20mlを加えて溶解させた。別の100mlナスフラスコに、上記の工程で得られたニトロフェニルエステル化ポリエチレングリコールf2 300mgを量り取り、イオン交換水5mlに溶解させた。この溶液を、前記α−シクロデキストリン水溶液に一気に加え、攪拌子を入れて1分間攪拌し、その後、室温において48時間静置した。これにより、白濁したゲルを得た。得られたゲルを乾燥し、擬ポリロタキサンf3を得た。
未修飾ポリロタキサンf4の調製
100mlナスフラスコに、アルゴン雰囲気下で、エチルジイソプロピルアミン0.15mlを入れ、さらに、脱水処理したアセトニトリル25mlを加え、エチルジイソプロピルアミンを溶解させた。この溶液を、上記の工程で得られた擬ポリロタキサンf3を収容するナスフラスコに一気に加え、室温(25℃)において5日間攪拌した。なお、擬ポリロタキサンはアセトニトリルに溶解しないため、反応は不均一系で行われた。反応後、不均一系反応液を遠心分離することによって、上澄み液を取り除き、ついで、DMSO25mlを加え、ほぼ透明な溶液を得た。この溶液の沈殿法による精製、乾燥の後、未修飾ポリロタキサンf4を得た。なお、上記参考例1と同様の方法で、未修飾ポリロタキサンf4が、擬ポリロタキサンの両末端が封鎖された化合物であることを確認した。
ポリロタキサンf7の調製
上記工程で得られた未修飾ポリロタキサンf4について、参考例1と同様の方法により、ヒドロキシプロピル化、ポリカプロラクトン修飾、アクリル基導入の各処理を行い、ポリロタキサンf7を得た。なお、上記参考例1と同様の方法で、ポリロタキサンf7が所望の化合物であることを確認した。
得られたポリロタキサンf7は、軸分子としてポリエチレングリコール、環状分子としてα−シクロデキストリン、及び封鎖基としてα−シクロデキストリンを含有するものであり、環状分子は重合性基として、アクリルオキシエチルカルバモイル基を含有するポリロタキサンである。
[参考例5]
ポリロタキサンg7の合成
ニトロフェニルエステル化ポリブタジエンg2の調製
100mlナスフラスコに、両末端カルボン酸化ポリブタジエン5.0gを取り、p−ニトロフェノール1.91g及びジシクロヘキシルカルボジアミド2.83gの脱水ジクロロメタン(25ml)溶液を添加し、アルゴン雰囲気下、室温において40時間攪拌した。その後、濾過により沈殿物を除去し、濾液を再沈殿法により精製し、ニトロフェニルエステル化ポリブタジエンg2を5.0g得た。なお、上記参考例4と同様の方法で、ポリブタジエンの両末端が、ほぼ定量的に、ニトロフェニルエステル化されていることを確認した。
擬ポリロタキサンg3の調製
500mlナスフラスコに、γ−シクロデキストリン40gを取り、イオン交換水230mlを加えて溶解させた。別の100mlフラスコに、上記工程で得られたニトロフェニルエステル化ポリブタジエンg2 1.93gを量り取り、THF23mlに溶解させた。超音波にて振動させながら、この溶液を前記γ−シクロデキストリン水溶液に加え、超音波振動させながら、さらに1時間撹拌し、続いて、撹拌子を入れて、さらに4日間、室温において撹拌して、白色懸濁液を得た。得られた懸濁液を乾燥後、擬ポリロタキサンg3を得た。
未修飾ポリロタキサンg4の調製
アルゴン雰囲気下で、300mlナスフラスコに、エチルジイソプロピルアミン1mlを入れ、さらに、脱水処理したアセトニトリル200mlを加えて、エチルジイソプロピルアミンを溶解させた。この溶液を、上記工程で得られた擬ロタキサg3を収容するナスフラスコに一気に加え、室温(25℃)において4日間撹拌した。なお、擬ポリロタキサンはアセトニトリルには溶解しないため、反応は不均一系で行われた。反応後、不均一系反応液を遠心分離することにより、上澄み液を取り除き、ついで、DMSO200mlを加え、ほぼ透明な溶液を得た。この溶液の再沈殿法による精製を行い、凍結乾燥後、未修飾ポリロタキサンg4を得た。なお、上記参考例1と同様の方法により、環状分子の量は、最大包摂量の0.20であること、未修飾ポリロタキサンg4が、擬ポリロタキサンの両末端が封鎖された化合物であることを確認した。
ポリロタキサンg7の調製
上記工程で得られた未修飾ポリロタキサンg4について、参考例1と同様の方法により、ヒドロキシプロピル化、ポリカプロラクトン修飾、アクリル基導入の各処理を行い、ポリロタキサンg7を得た。なお、上記参考例1と同様の方法で、ポリロタキサンg7が所望の化合物であることを確認した。
得られたポリロタキサンg7は、軸分子としてポリブタジエン、環状分子としてγ−シクロデキストリン、及び封鎖基としてγ−シクロデキストリン基を含有するものであり、環状分子は重合性基として、アクリルオキシエチルカルバモイル基を含有するポリロタキサンである。
[参考例6]
ポリロタキサンh7の合成
ニトロフェニルエステル化ポリジメチルトリシロキサンh2の調製
100mlナスフラスコに、カルボン酸化ポリジメチルシロキサン3.14gを取り、p−ニトロフェノール400mg及びジシクロヘキシルカルボジアミド620mgの脱水ジクロロメタン(12ml)溶液を添加し、アルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。得られた反応液を再沈殿法により精製した後、真空乾燥して、ニトロフェニルエステル化ポリジメチルシロキサンh2を得た。なお、上記参考例4と同様の方法で、ポリジメチルシロキサンの両末端が、ほぼ定量的に、ニトロフェニルエステル化されていることを確認した。
擬ポリロタキサンh3の調製
100mlナスフラスコに、γ−シクロデキストリン4.3gを取り、イオン交換水25mlを加えて溶解させた。別の100mlフラスコに、上記工程で得られたニトロフェニルエステル化ポリジメチルシロキサンh2 500mgを量り取り、THF2mlにて溶解させた。この溶液を、上記γ―シクロデキストリン水溶液に、攪拌しながら加え、そのまま、4日間、室温において攪拌し、懸濁液を得た。得られた懸濁液を、液体窒素凍結させた後、2日間、凍結乾燥を行い、擬ポリロタキサンh3を得た。
未修飾ポリロタキサンh4の調製
50mlナスフラスコにおいて、アルゴン雰囲気下で、エチルジイソプロピルアミンをアセトニトリルに溶解させた。別の100mlナスフラスコに、上記工程で得られた擬ポリロタキサンh3 1.00gを量り取り、前記のエチルジイソプロピルアミン溶液を一気に加え、室温(25℃)において、4日間、撹拌した。なお、擬ポリロタキサンはアセトニトリルには溶解しないため、反応は不均一系で行われた。反応後、不均一系反応液を遠心分離することにより、上澄み液を取り除き、ついで、DMF(塩化リチウム8wt%を含有する)5mlを加え、ほぼ透明な溶液を得た。この溶液を、再沈殿法により精製し、凍結乾燥した後、未修飾ポリロタキサンh4を得た。なお、上記参考例1と同様の方法により、環状分子の量は最大包摂量の0.10であること、未修飾ポリロタキサンh4が、擬ポリロタキサンの両末端が封鎖された化合物であることを確認した。
ポリロタキサンh7の調製
上記工程で得られた未修飾ポリロタキサンh4について、参考例1と同様の方法により、ヒドロキシプロピル化、ポリカプロラクトン修飾、アクリル基導入の各処理を行い、ポリロタキサンh7を得た。なお、上記参考例1と同様の方法で、ポリロタキサンh7が所望の化合物であることを確認した。
得られたポリロタキサンh7は、軸分子としてポリジメチルシロキサン、環状分子としてγ−シクロデキストリン、及び封鎖基としてγ−シクロデキストリン基を含有するものであり、環状分子は重合性基として、アクリルオキシエチルカルバモイル基を含有するポリロタキサンである。
[実施例1]
歯科用充填材の調製
重合性単量体(b)としてビスフェノールAグリシジルメタクリル酸/トリエチレングリコールジメタクリレート(60wt%/40wt%)混合物を使用し、該混合物100重量部に対して、光重合開始剤(c)としてカンファーキノン(0.3重量部)、重合促進剤としてp−ジメチル安息香酸エチルエステル(0.3重量部)、ポリロタキサン(a)として市販のセルムスーパーポリマーAU2000(軸分子としてポリエチレングリコール、環状分子として重合性基を有するα−シクロデキストリン、及び封鎖基としてアダマンタン基を含有するポリロタキサン;アドバンスト・ソフトマテリアルズ社)(5.0重量部)の酢酸エチル溶液、ジブチルヒドロキシトルエン(0.1重量部)、ヒドロキノンメチルエーテル(0.02重量部)を混合した。各成分が完全に溶解するまで撹拌した後、揮発性有機溶媒をエバポレーターにより留去し、残存物にシリカジルコニアフィラー(235重量部)を混練することによって歯科用充填材を調製した。
なお、市販品のセルムスーパーポリマーAU2000は、表1に示すように、軸分子としてポリエチレングリコール、環状分子として、重合性基を有するα−シクロデキストリン、封鎖基としてアダマンタン基を含有するポリロタキサンである。
[実施例2〜7]、
ポリロタキサンの添加量を、表1に示す量に変更して、実施例1と同様の方法で歯科用充填材を調製した。
[実施例8]
添加するポリロタキサン(a)を、セルムスーパーポリマーAU2000からセルムスーパーポリマーA1000(軸分子としてポリエチレングリコール、環状分子として重合性基を有していないα−シクロデキストリン、及び封鎖基としてアダマンタン基を含有するポリロタキサン;アドバンスト・ソフトマテリアルズ社)に変更して、実施例1と同様に歯科用充填材を調製した。
[実施例9]
ポリロタキサン(a)として、上述の参考例1において調製したポリロタキサンc7を使用して、実施例1と同様の方法で歯科用充填材を調製した。
[実施例10]
ポリロタキサン(a)として、上述の参考例2において調製したポリロタキサンd7を使用して、実施例1と同様の方法で歯科用充填材を調製した。
[実施例11]
ポリロタキサン(a)として、上述の参考例3において調製したポリロタキサンe7を使用して、実施例1と同様の方法で歯科用充填材を調製した。
[実施例12]
ポリロタキサン(a)として、上述の参考例4において調製したポリロタキサンf7を使用して、実施例1と同様の方法で歯科用充填材を調製した。
[実施例13]
ポリロタキサン(a)として、上述の参考例5において調製したポリロタキサンg7を使用して、実施例1と同様の方法で歯科用充填材を調製した。
[実施例14]
ポリロタキサン(a)として、上述の参考例6において調製したポリロタキサンh7を使用して、実施例1と同様の方法で歯科用充填材を調製した。
[比較例1]
実施例1と同様の方法に従って、ただし、ポリロタキサン(a)を添加しないで、歯科用充填材を調製した。
[比較例2]
実施例1と同様の方法に従って、ただし、ポリロタキサンの代わりに、下記のようにして調製したジアダマンタン化ポリエチレングリコールi(ポリロタキサンの軸分子(ポリエチレングリコール)の両端に封鎖基(アダマンタン)を有するが、環状分子を含んでいない化合物に相当する。重合性基を含有しない。)を使用して、歯科用充填材を調製した。
ジアダマンタン化ポリエチレングリコールiの調製
室温において、ジメチルホルムアミド(DMF)200mlに、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム)・ヘキサフルオロホスフェート)0.6g、アダマンタンアミン2.2g、ジイソプロピルエチルアミン0.25mlを、この順番で溶解させ、得られた溶液に、上述の参考例1における工程i)で得られたカルボン酸化ポリエチレングリコールc1 19g添加した後、速やかによく振り混ぜた。抽出及び再沈殿法により精製を行い、ジアダマンタン化ポリエチレングリコールiを得た。
[比較例3]
実施例1と同様の方法に従って、ただし、ポリロタキサンの代わりに、下記のようにして調製したジアダマンタン化ポリエチレングリコールj(軸分子(ポリエチレングリコール)の両端に封鎖基(トリチル)を有するが、環状分子を含んでいない化合物に相当する。重合性基を含有しない。)を使用して、歯科用充填材を調製した。
ジトリチル化ポリエチレングリコールjの調製
室温において、ジメチルホルムアミド(DMF)200mlに、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム)・ヘキサフルオロホスフェート)0.6g、トリチルアミン3.8g、ジイソプロピルエチルアミン0.25mlを、この順番で溶解させ、得られた溶液に、上述の参考例1における工程i)で得られたカルボン酸化ポリエチレングリコールc1 19g添加した後、速やかによく振り混ぜた。抽出及び再沈殿法により精製を行い、ジアダマンタン化ポリエチレングリコールjを得た。
[比較例4]
実施例1と同様の方法に従って、ただし、ポリロタキサンの代わりに、下記のようにして調製した修飾α−シクロデキストリンk(ポリロタキサンの環状分子に相当する。重合性基を含有する。)を使用して、歯科用充填材を調製した。
修飾α−シクロデキストリンkの調製
α−シクロデキストリンについて、上述の参考例1と同様の方法に従い、ヒドロキシプロピル化、ポリカプロラクトン修飾、のアクリル基導入の各処理を行い、修飾α−シクロデキストリンkを得た。
[比較例5]
実施例1と同様の方法に従って、ただし、ポリロタキサンの代わりに、下記のようにして調製した修飾γ−シクロデキストリンl(ポリロタキサンの環状分子に相当する。重合性基を含有する。)を使用して、歯科用充填材を調製した。
修飾γ−シクロデキストリンlの調製
γ−シクロデキストリンについて、上述の参考例1と同様の方法に従い、ヒドロキシプロピル化、ポリカプロラクトン修飾、アクリル基導入の各処理を行い、修飾γ−シクロデキストリンlを得た。
上述の実施例及び比較例で調製した各歯科用充填材について、その特性を、下記の方法で測定して、比較、検討した。
(1)重合収縮応力の測定
直径6mm、深さ2mmの模擬窩洞の窩底部に、歯科用接着剤として、ワンナップボンドFプラス(登録商標:トクヤマデンタル社)を塗布し、歯科用光照射器(トクヤマデンタル社製)を用いて10秒間光照射した。ついで、模擬窩洞中に満たされるように歯科用充填材を填入し、20秒間光照射した。この時の応力を、万能引張試験機オートグラフ(AG−5000D:島津製作所)で測定した。
(2)ビッカース硬さの測定
直径7mm、高さ1mmの孔を有するポリアセタール製の型にペーストを填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接し、推奨光照射時間、光照射した。
微小硬度計(PMT_X7型:松沢精機)を使用し、得られた硬化体をビッカース圧子にて押圧し、荷重100gf、荷重保持時間30秒で、試験片にできたくぼみの対角線長さを測定した。
下式により、ビッカース硬さを求めた。
HV=F/S=2Fsinθ/2d2=1.8544F/d2
(ここで、HV:ビッカース硬さ、F:荷重(Kgf)、S:くぼみの表面積(mm2)、d:くぼみの対角線長さ(mm)、θ:ダイヤモンド圧子の対面角)
試験は5点について行い、その平均を求めた。
(3)窩洞適合性の評価
屠殺後24時間以内に抜去した牛下顎前歯に対し、歯科用のダイヤモンドバーを用いて深さ2mm、直径4mmの円柱状の窩洞を形成した。ついで、この窩洞の内部全体に、歯科用接着剤としてボンドフォース(登録商標:トクヤマデンタル社)を塗布し、圧縮空気を当てて溶媒を除去した後、歯科用光照射器(トクヤマデンタル社)を使用して、10秒間光照射した。続いて、この窩洞内に満たされるように歯科用充填材を填入し、歯科用照射器で20秒間光照射した。このようにして得られた試験片を、37℃の水中に一晩浸漬した後、ダイヤモンドカッターを使用して、窩底部に対して鉛直方向で切断し、試験片を調製した。露出した切断面を、耐水研磨紙(♯3000、♯1500)及びダイヤモンドスラリ−(6μm、3μm、1μm、0.25μm)で研磨して、研磨面を、レーザー顕微鏡(VK9700:KEYENCE社)を使用して観察し、窩洞の観察・窩洞適合性の評価を行った。評価基準は下記の通りである。
◎・・適合している部分が全体の100%である
〇・・適合している部分が全体の90%以上である
△・・適合している部分が全体の80%以上である
×・・適合している部分が全体の80未満である
上述の実施例1〜10及び比較例1〜5において調製した各歯科用充填材について得られた結果を、下記の表に示す。
Figure 2016088878

表1に示すように、ポリロタキサンを含有する実施例1〜14の各歯科用充填材は、ポリロタキサンを含有しない場合(比較例1)と比較して、同等のビッカース硬さを維持しながら、低い収縮応力であることを示した。実施例1〜6の比較から、ポリロタキサンの添加量は、5.0質量部程度が最適であることが確認できる。ポリロタキサンの添加量が多い場合には、歯科用充填材が増粘し、分子が自由に動けず、収縮応力の緩和がしにくくなったと考えられる。一方、添加量が少ない場合には、環状分子の充分な可動距離を確保することができず、収縮応力の低減効果は小さくなると推察される。実施例1と4との比較から、ポリロタキサン分子が重合性基を有している方が、収縮応力の緩和効果、ビッカース硬さが大きいことが確認された。実施例1、9〜12の比較から、ポリロタキサンの封鎖基の種類は、収縮応力の低減効果に殆ど影響しないことが確認された。実施例12〜14の比較から、ポリロタキサンの軸分子が、ポリブタジエン、ポリメチルシロキサンである場合、ポリエチレングリコールである場合よりも、収縮応力の低減効果がやや劣ることが確認された。ポリブタジエン、ポリメチルシロキサンは、ポリエチレングリコールよりも剛直な分子構造であり、分子が自由に動きづらいためであると考えられる。
比較例2、3は、封鎖基の結合した軸分子のみ、比較例4,5は環状分子のみを歯科用充填材に添加したものである。これらは、全て比較例1よりも収縮応力が大きいことがわかった。これらの軸分子や環状分子は、ポリロタキサンのように可動領域を持たないだけでなく、歯科用充填材の増粘に寄与するため、分子が自由に動けなくなり、収縮応力が大きくなったと考えられる。また、比較例2、3の封鎖基の結合した軸分子は、重合性基を有していないため、ビッカース硬さは、比較的大きく低下したと推察される。

Claims (12)

  1. (a)環状分子と、前記環状分子を貫通する直鎖状の軸分子と、前記軸分子の両端に結合した、前記環状分子が前記軸分子から抜けないようにする封鎖基とから構成され、前記環状分子がシクロデキストリンであるポリロタキサン、
    (b)重合性単量体、及び
    (c)重合開始剤
    を含んでなる歯科用硬化性組成物。
  2. ポリロタキサン(a)の環状分子のシクロデキストリンが、シクロデキストリンに直接導入された重合性基及び/又はスペーサー基を介して導入された重合性基を有する請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  3. スペーサー基を介して導入された重合性基が、一般式(I)
    −M−Y
    [式中、Yは重合性基であり;Mは、一般式(II)
    Figure 2016088878

    (ここで、Xは、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和、未置換又は水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1の置換基によって置換された炭素数1〜8の2価の脂肪族炭化水素基(該炭化水素基は、−O−結合又は−NH−結合を含んでいてもよい)であり、及びnは平均値1〜10である)で表される、シクロデキストリンと前記重合性基Yとの間のスペーサー基である]で表される請求項2に記載の歯科用硬化性組成物。
  4. Mが、アルキレンエステル又はアルキレンカーボネートである請求項3に記載の歯科用硬化性組成物。
  5. アルキレンエステルが、ヘプチレンエステルである請求項4に記載の歯科用硬化性組成物。
  6. 重合性基が、メタクリル基又はアクリル基である請求項2記載の歯科用硬化性組成物。
  7. シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、又はγ−シクロデキストリンである請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  8. ポリロタキサン(a)の直鎖状の軸分子が、ポリエチレングリコール、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサンから選ばれる分子である請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  9. ポリロタキサン(a)の封鎖基が、アダマンタン、トリチル、フルオレセン、α−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンから選ばれる基である請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  10. 重合性単量体100質量部当たり、ポリロタキサン0.5〜20質量部を含有してなる請求項1に記載の歯科用光硬化性組成物。
  11. さらに、(d)充填材を含んでなる請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  12. 歯科用充填修復材として使用されるものである請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
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