JP2016088861A - 肝斑改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
様々な色素沈着症のなかでも特に肝斑に対して改善効果を発揮するようなグリチルレチン酸ステアリル含有組成物を提供すること。
【解決手段】
リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとが含有される基剤に、グリチルレチン酸ステアリルが含有される、肝斑改善剤。好ましくは、肝斑改善剤の総質量に対して、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとが合計で1〜20質量%の割合で含有される。
【選択図】なし

Description

本発明は、肝斑改善剤に関する。
以前より、有効性と安全性の高い美白薬剤が各種開発検討されてきた(特許文献1〜2)。
美白効果を期待する肌の症状、すなわちいわゆる「色素沈着症」には、肝斑、日光黒子、脂漏性角化症、炎症後の色素沈着や雀卵斑など多様で、病理学的な組織構造も異なり、メラノサイトやケラチノサイトの数や活性化状態の違いに加え、その発生原因も全く異なる(非特許文献1)。
このように、色素沈着症の発症原因や症状は異なるにも関わらず、それぞれの色素沈着症に適応した美白薬剤並びに美白薬剤を含有した製剤の検討は十分に行われていなかったため、色素沈着症の種類によっては十分に有効性が発揮されない場合があった。
ここで、改めてそれぞれの色素沈着症について概説する。
肝斑は、30歳前後から始まる対側性びまん性の境界明瞭な褐色調地図状色素斑である。病理学的には表皮基底層のメラノサイトのメラニン産生が亢進しているが、メラノサイトの数の増加はない。表皮増殖も見られない。原因としては紫外線が挙げられるが、妊娠時、閉経時、月経不順などにより発症増発するため、女性ホルモンの関与が考えられる。
日光黒子は老人性色素斑と呼ばれ、主に50歳以降に見られる。日光曝露部に生じる境界鮮明な円形から類円形の淡褐色から黒褐色斑である。病理学的には、ケラチノサイトの表皮突起が不規則に延長し、突起先端にメラニンの沈着を認める。メラノサイトの数は増加し、表皮増殖も見られる。原因としては、長期の反復性の日光曝露が考えられているが、加齢にともなうケラチノサイトのターンオーバーの低下やケラチノサイト内のメラニン貯留、メラニン消化不良なども原因の一つと推測される。
脂漏性角化症は、20歳代から出現し、加齢とともに増加する。全身に出現するが、顔面、頭部、前胸部、背部に発症しやすい。皮疹は、肌色から黒色まで色々な色調を呈し、軽く隆起するものから、半球状に隆起するものなど様々である。病理学的には種々の組織像を呈し、基底細胞増殖型、有棘細胞増殖型、角質増殖型など、ケラチノサイトが増殖している。また、メラノサイトの数も増加している。原因としては、ET−1、bFGF、SCF、GM−SCF、HGFなどのケラチノサイトの増殖とメラノサイトの活性化の両者に作用するサイトカインが放出されている可能性、あるいはケラチノサイトのメラノソームの受け渡しに関する異常や、増殖ケラチノサイト内でのメラニンの消化能力低下なども可能性がある。
炎症後色素沈着は、2〜6か月で軽快することが多いとされるが、ときに長期にわたり遷延する。東洋人は欧米人に比べて炎症後の色素沈着を発症しやすい。炎症後の色素沈着は炎症が軽度で真皮上層に限局している場合には、表皮メラノサイトのメラニン産生が亢進し、淡褐色ないし褐色の色素沈着を生じるのみであるが、強い炎症が起きた場合には、表皮細胞の崩壊を伴い、表皮ケラチノサイトが含有するメラニンが真皮に滴落して、紫褐色、灰紫褐色の色素沈着を呈する。メラノサイトは増加するが、表皮増殖は見られない。原因としては、アラキドン酸代謝物質、スーパーオキサイドなどが報告されている。これらのうち、PGE2はメラノサイトの樹状突起形成を促進し、結果としてメラノソームの受け渡しが促進され、炎症後色素沈着を増強すると考えられる。LTC4やLTD4についてもメラノサイトを活性化する。
雀卵斑は、いわゆるソバカスで、両頬から鼻にかけての日光暴露部に出現する径5mm以下の淡褐色の点状色素斑である。3歳ごろから始まり、思春期に最も顕著になる。30歳以降、その数は増加することもなく次第に消失傾向を示すが、生涯不変のこともある。発症頻度は人種差があり、白人に多く、その中でも赤毛をもつものが多い。日本人では色の白い人に多い。メラノサイトの数や表皮の増殖は見られないが、メラニン産生が亢進し、長く大型化したメラノソームが認められる。先天性の遺伝要素が強い。
このようにそれぞれの色素沈着症で、症状、病理学観察像や発生要因も異なるにも関わらず、従来、薬剤のみに改善効果を期待する方法が主流であったため、十分な効果が得られなかった。
色素沈着症の改善効果を期待された薬剤の1つとして、例えば、グリチルレチン酸ステアリルがある。グリチルレチン酸ステアリルは美白効果や抗炎症効果を有していることが知られている(特許文献3、特許文献4)。
特許文献3には、γ−アミノ酪酸及びその誘導体の少なくとも一つと、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも一つとを含有することを特徴とする美白化粧料が開示されている。
特許文献3によれば、当該美白化粧料は、炎症による色素沈着抑制効果及び皮膚機能を亢進することによる色黒の皮膚を速やかに淡色化する効果に優れ、かつ皮膚安全性が高いとされている。
特許文献4には、β−グリチルレチン酸ステアリルを有効成分として含有する美白化粧料が開示されている。
特許文献4によれば、β−グリチルレチン酸ステアリルは、エンドセリン−1(色素細胞を活性化するサイトカイン)mRNA発現抑制効果を有し、ソバカスや皮膚色素沈着を予防及び/又は改善する美白作用があるとされている。
特開2010−215574号公報 特開2012−077063号公報 特開平5−229929号公報 特開2004−300048号公報
MB Derma,98:9−15,2005
本発明者らは、ヒトにおいて安全で有効な美白効果を得るためには、色素沈着の症状にあわせた色素沈着症改善剤を開発することが有用であると考えた。
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、有効薬剤と組み合わせる処方因子を工夫することで、初めて個別具体的な色素沈着症に有効な色素沈着改善剤を見出した。
更に言えば、本発明者らは、様々な色素沈着症のなかでも特に肝斑に着目し、有効薬剤の一例としてグリチルレチン酸ステアリルを選択し、その基剤を特定の処方にすることにより、特に肝斑に有効に作用する色素沈着改善剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。
肝斑は、いわゆるレーザー治療において悪化することも多く、外用剤への期待は特に高いものである。
すなわち、本発明は、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとが含有される基剤に、グリチルレチン酸ステアリルが含有される、肝斑改善剤を提供するものである。
本発明の肝斑改善剤には、肝斑改善剤の総質量に対して、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとを、合計で1〜20質量%の割合で含有することができる。
また、本発明の肝斑改善剤は、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルとの割合を、質量比で1:1〜1:10とすることができる。
本発明の肝斑改善剤には、更に、ステロール類を基剤に含有することができる。
また、本発明の肝斑改善剤は、肝斑改善剤の総質量に対して、グリチルレチン酸ステアリルを0.02〜2.0質量%の割合で含有することができる。
本発明の肝斑改善剤は、水中油型乳化組成物の形態であることが好ましい。
本発明によれば、グリチルレチン酸ステアリルを効果的に皮膚に浸透させ、特に肝斑に効果が高い皮膚外用剤を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
(1)肝斑
肝斑は、上述の色素沈着症を示す。
本明細書において、「肝斑改善」とは、色素沈着部の皮膚色が薄くなり、正常な肌色になる、又は近づくことをいう。
(2)基剤
本明細書において、「基剤」とは、本発明の肝斑改善剤から、有効成分であるグリチルレチン酸ステアリルを除いたものをいう。
本発明に用いる基剤は、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとを含有する。すなわち、基剤は、リン脂質とスクワランを含有し、又は、リン脂質とトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを含有し、あるいは、リン脂質とスクワランとトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを含有する。
(a)リン脂質
リン脂質は、乳化滴を形成することができる。リン脂質は、構造中にリン酸エステル部位をもつ脂質の総称であり、通常皮膚外用剤や化粧料などに使用されるものであれば特に限定されない。例えばグリセリンやスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸とリン酸が結合し、更にリン酸にアルコールがエステル結合した構造をもつ。リン脂質は、大きく分けてグリセリンを骨格とするグリセロリン脂質と、スフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質の2つが存在する。グリセリンのC1、C2位に脂肪酸が、C3位にリン酸がそれぞれエステル結合した分子をホスファチジン酸、ホスファチジン酸からC2位の脂肪酸が外れた分子をリゾホスファチジン酸という。C1には飽和脂肪酸が、C2位には不飽和脂肪酸が結合している場合が多い。アルコールの種類としてはコリン、エタノールアミン、イノシトール、セリン、グリセリンなどを取りうる。
具体的には、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴリン脂質などが挙げられる。また、これらを含有する組成物、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、またはこれらの水素添加物が挙げられる。
リン脂質を構成する脂肪酸としては、炭素数7〜22の飽和又は不飽和カルボン酸が挙げられる。
前記リン脂質は、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
(b)スクワラン
スクワランは、低刺激で、優れたエモリエント効果や良好な使用感を付与することができる。スクワランは、皮膚に対する浸透性がよく、鉱物系の炭化水素に比べて油性感が少なく、感触、伸びが良く、酸化安定性も優れている。
スクワランは動物性、植物性、合成されたもののいずれでもよく、通常皮膚外用剤や化粧料などに使用されるものであれば特に限定されない。具体的には、深海ザメの肝油中に存在するスクワレンを水素添加したもの、オリーブ油、コメヌカ油、小麦胚芽油、ゴマ油などの植物油から抽出されたスクワレンを水素添加したものなどが挙げられる。これらのスクワランは、1又は2種以上を選択して用いることができる。
(c)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルは、エステル油の1種である。トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを基剤に用いると、なめらかな使用感、ツヤ感、水分閉塞性による保湿効果を付与できる。
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルは、通常皮膚外用剤や化粧料に使用されるものであれば特に限定されない。具体的には、市販品のNIKKOL Trifat(登録商標)S−308(日光ケミカルズ株式会社)、MYRITOL(登録商標)GTEH(BASF社製)などが挙げられる。
(d)その他の成分
更に、成分(d)としてステロール類を含有すると、乳化安定性が向上すると共にべたつきを低減できるため好ましい。
ここで、ステロール類として、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、セレグロステロール、デヒドロコレステロール、コブロスタノールなどの動物性ステロール類;フィトステロール、βシトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、エルゴステロールなどの植物性ステロール類;ミコステロール、チモステロールなどの微生物由来ステロール類などや、これらステロール類とオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オリーブ油などの天然油脂を分解して得られる脂肪酸などとの脂肪酸エステル、ステロール類の水酸基の水素原子をアルキル基又はアルケニル基で置換したアルキル(アルケニル)エーテル誘導体、アシル基で置換したアルキル(アルケニル)エステル、N−アシルアミノ酸ステロールエステル、糖残基で置換した配糖体などの誘導体が挙げられる。フィトステロールは、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロールなどの植物ステロールの総称であり、その組成は限定されるものではない。
これらのうち、コレステロール、フィトステロール又はこれらの脂肪酸エステル、N−アシルアミノ酸ステロールエステルが好ましい。
脂肪酸エステルにおいて脂肪酸鎖長の長さは特に限定されないが炭素数7〜22であれば好ましく特に好ましくは8〜18である。具体的にはオレイン酸フィトステリル、酪酸コレステリル及びマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルなどが挙げられる。
N−アシルアミノ酸ステロールエステルとしては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル)などが好適に例示でき、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/2−オクチルドデシル)が特に好適に例示できる。これらは、既に化粧料原料などとして市販されており、味の素株式会社より販売されている「エルデュウ(登録商標)PS203」(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル))、「エルデュウCL−301」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル))、「エルデュウCL−202」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/2−オクチルドデシル))、「エルデュウPS−306」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル))などが例示でき、中でも、「エルデュウPS203」が特に好ましい。
前記ステロール類は、1種又は2種以上を選択して用いることができる。
また、成分(a)のリン脂質と成分(d)のステロール類をあらかじめ混合されたものとして用いることも可能であり、例えば市販品としてEXTRASOME(登録商標)MMC(日油株式会社)やPRESOME(登録商標)CS2−101(日本精化株式会社)、PHYTOPRESOME(登録商標)(日本精化株式会社)などが挙げられる。
(e)基剤の含有
基剤におけるリン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルの含有量は、特に限定されないが、より好ましい含有量は、基剤とグリチルレチン酸ステアリルとを含有する肝斑改善剤の総質量に対して、合計で1〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。この範囲であれば、肝斑改善剤を皮膚に塗布したときの使用感がよい。また被験者による肝斑改善の効果も実感される。
リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとの割合は、特に限定されないが、質量比で1:1〜1:20、更に好ましくは1:5〜1:10である。この割合の範囲であれば、肝斑改善剤を皮膚に塗布したときの使用感がよい。また、被験者による肝斑改善の効果も実感される。
なお、基剤には、更に、ステロール類以外の油性成分、アスコルビン酸などの美白成分、水などの分散媒、界面活性剤、アルコール類、保湿剤、増粘剤、防腐剤、抗酸化剤、顔料、色素、紫外線吸収剤、pH調整剤、香料、他の薬効成分などを適宜含めてもよい。
(3)グリチルレチン酸ステアリル
グリチルレチン酸ステアリル(Stearyl glycyrrhetinate)は、甘草などに含まれるグリチルレチン酸の加水分解によって得られるグリチルレチン酸のヒドロキシル基にステアリン酸をエステル結合させることにより得られる化合物である。
体系名は、(20S)−3β−ヒドロキシ−11−オキソ−5α−オレアナ−12−エン−29−酸オクタデシルである。分子式は、C4882である。
グリチルレチン酸の分子構造は平面性を有し、3位及び11位がコルチゾン類似であることから抗炎症作用を有する。グリチルレチン酸ステアリルは、ステアリン酸の付加により安全性が高められているので、安全性が要求される皮膚外用剤や化粧料などの技術分野において、抗炎症成分として広く使用されている。
グリチルレチン酸ステアリルは、ステアリン酸の付加により油溶性が高いので、通常、皮膚外用剤や化粧料中では、油剤中に溶解もしくは懸濁した状態になっている。グリチルレチン酸ステアリルを含有する皮膚外用剤、化粧料などにおいては、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に含有でき、更には経時での乳化安定性にも優れることが求められる。また、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及びみずみずしさなどに優れた使用感を有することが求められる。
グリチルレチン酸ステアリルの含有量は0.02質量%以上、好ましくは0.05質量%上、特に好ましくは0.1質量%であれば抗炎症、美白効果を十分に発揮することができる。経済的な側面からは2質量%以下、好ましくは1質量%以下が好ましい。
本発明に用いられるグリチルレチン酸ステアリルは、抗炎症、美白効果を付与させる成分として含有されるもので、通常の皮膚外用剤や化粧料などに使用されているものであれば製造方法や純度などは特に限定されないが、例えば、医薬部外品原料規格に収載の「グリチルレチン酸ステアリル」に適合するものが好ましい。
(4)肝斑改善剤の剤形
本発明の肝斑改善剤は、皮膚に適用できる形態であれば特に限定されない。例えば、外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤などが挙げられる。
また、みずみずしい感触としっとりした後肌が得られるため、水中油型乳化組成物の形態が好ましい。
(5)肝斑改善剤の製造方法
本発明の肝斑改善剤は、皮膚外用剤や化粧料などの常法に従って製造することができる。例えば、分散媒やpH調整剤などの水性成分を中心に添加剤などを加え、均一に混合し、組成物1を製造する。一方で、リン脂質、スクワラン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ステロール類、グリチルレチン酸ステアリルなどの油性成分を中心に添加剤などを加え、約70℃に加熱して均一に溶解し、組成物2を製造する。組成物2に、約70℃に加熱した精製水を加え、乳化して組成物3を製造する。組成物3を序冷後、組成物1を加えて乳液を得ることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<1>肝斑改善剤の製造
以下の表1の処方で、肝斑改善剤を製造した。また、比較例として、リン脂質、スクワラン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを含まない処方で、グリチルレチン酸ステアリル含有の比較製剤を製造した。
Figure 2016088861
前記表1の原料15〜18を均一に分散、混合した。原料1〜13を70℃に加熱し、均一に溶解した。次に、原料14を70℃に加熱後、原料1〜13の溶解混合物に加え、乳化した。乳化物を序冷後、原料15〜18の混合物を加え、乳液を得た。
<2>肝斑改善剤の試験
被験者の東アジア人女性52名(20〜60歳、平均年齢47.9歳)に、12週間、全顔に1日2回塗布してもらう試験を行った。
被験者52名のうち、半分の26名(肝斑の症状を持つ者14名、日光黒子の症状を持つ者12名)に肝斑改善剤を、もう半分の26名(肝斑の症状を持つ者12名、日光黒子の症状を持つ者14名)に比較製剤を塗布してもらった。
試験時期は、日光の紫外線が弱まった11月からとした。
(i)皮膚科医による目視評価
塗布開始から56日目に、皮膚科医による目視評価を行った。目視評価には、スキンカラースケールを使用した。結果を表2に示す。
Figure 2016088861
肝斑の症状を持つ被験者であって肝斑改善剤を塗布してもらった14名のうち、7名に肝斑の改善が観察された。
一方、肝斑の症状を持つ被験者であって比較製剤を塗布してもらった12名のうち、肝斑の改善が観察されたのは4名であった。
(ii)皮膚色測定による評価
塗布開始前と塗布開始から56日目に、分光測色計CM−2600d(コニカミノルタ社)を用いて被験者の色素沈着部(肝斑部分又は日光黒子部分)の皮膚色測定を行い、L値とIndividual Typology Angle(ITA°)を測定した。56日目と塗布開始前のL値とITA°の差ΔITA°の結果を表3及び表4に示す。
なお、L値は、数値が大きいほど、肌色が白いことを示す。
また、ITA°は、
ITA°=[Arc Tangent((L−50)/b)]180/3.1416
の式から得られる値であり、数値が大きいほど、肌色が白いことを示す(参考文献:Chardonら、International Journal of Cosmetic Science,1991;13:191−208、及びDel Bino Sら,Assessment of skin color types based on the individual typology angle among different geographical areas.Poster WCD 2011 Seoul)。
Figure 2016088861
Figure 2016088861
(iii)アンケートによる評価
肝斑改善剤を塗布してもらった被験者全員に、試験終了時にアンケートを行い、改善効果の実感と使用感について、「とてもよい」、「よい」、「ややよい」、「とくになし」、「悪い」の5段階で評価してもらった。結果を表5に示す。
Figure 2016088861
以上の結果から、本発明の肝斑改善剤は、比較製剤と比べて、皮膚科医による評価でも皮膚色を測定できる装置による評価でも、効果が高いことが示された。また、被験者による評価でも肝斑改善効果が実感され、かつ、皮膚への塗布剤としての伸び広がりやべたつきなどの使用感にも優れていることが示された。肝斑は女性に多い症状であり、使用感のよさが特に重要である。本製剤は改善効果と共に使用感の満足度が非常に高く、この点でも有用であることが示された。
[リン脂質とスクワランを含有する基剤を用いた処方例1]
成分 質量%
1 N−ステアロイル−L−グルタミン酸 0.2
2 1,3−ブチレングリコール 0.8
3 ステアリン酸 0.2
4 ポリソルベート80 0.3
5 セスキオレイン酸ソルビタン 0.2
6 親油型モノステアリン酸グリセリル 0.1
7 ベヘニルアルコール 0.4
8 グリチルレチン酸ステアリル 1.0
9 水素添加大豆リン脂質 0.2
10 スクワラン 4.0
11 メチルポリシロキサン 2.0
12 カルボマー 0.3
13 水酸化ナトリウム 0.15
14 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
15 エタノール 10
16 グリセリン 5.0
17 精製水 残量
(製造方法)
A:1〜11を70℃に加温し、均一に溶解する。
B:12〜17を70℃に加温し、均一に溶解する。
C:AにBを徐々に加えて乳化し、冷却して乳液を得た。
[リン脂質とトリ2−エチルへキサン酸グリセリルを含有する基剤を用いた処方例2]
成分 質量%
1 N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.8
2 水素添加大豆リン脂質 0.5
3 リゾリン脂質 0.1
4 グリセリン 10
5 トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 2.0
6 トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5.0
7 メドウフォーム油 5.0
8 オレイン酸フィトテロール 1.0
9 セトステアリルアルコール 1.5
10 グリチルレチン酸ステアリル 0.3
11 フェノキシエタノール 0.1
12 ペンチレングリコール 0.1
13 カルボマー 0.2
14 水酸化ナトリウム 0.06
15 1,3−ブチレングリコール 10
16 ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
17 精製水 残量
(製造方法)
A:1〜10を70℃に加温し、均一に溶解する。
B:11〜17を70℃に加温し、均一に溶解する。
C:AにBを徐々に加えて乳化し、冷却して乳液を得た。
本発明によれば、肝斑の症状を改善できる医薬品、医薬部外品、化粧料、薬用化粧料などを提供することができる。

Claims (6)

  1. リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとが含有される基剤に、グリチルレチン酸ステアリルが含有される、肝斑改善剤。
  2. 肝斑改善剤の総質量に対して、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとが合計で1〜20質量%の割合で含有される、請求項1に記載の肝斑改善剤。
  3. リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルとの割合が質量比で1:1〜1:10である、請求項1又は2に記載の肝斑改善剤。
  4. 更に、ステロール類が基剤に含有される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の肝斑改善剤。
  5. 肝斑改善剤の総質量に対して、グリチルレチン酸ステアリルが0.02〜2.0質量%の割合で含有される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の肝斑改善剤。
  6. 水中油型乳化組成物の形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の肝斑改善剤。
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