JP2016088861A - 肝斑改善剤 - Google Patents
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Abstract
様々な色素沈着症のなかでも特に肝斑に対して改善効果を発揮するようなグリチルレチン酸ステアリル含有組成物を提供すること。
【解決手段】
リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとが含有される基剤に、グリチルレチン酸ステアリルが含有される、肝斑改善剤。好ましくは、肝斑改善剤の総質量に対して、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとが合計で1〜20質量%の割合で含有される。
【選択図】なし
Description
美白効果を期待する肌の症状、すなわちいわゆる「色素沈着症」には、肝斑、日光黒子、脂漏性角化症、炎症後の色素沈着や雀卵斑など多様で、病理学的な組織構造も異なり、メラノサイトやケラチノサイトの数や活性化状態の違いに加え、その発生原因も全く異なる(非特許文献1)。
このように、色素沈着症の発症原因や症状は異なるにも関わらず、それぞれの色素沈着症に適応した美白薬剤並びに美白薬剤を含有した製剤の検討は十分に行われていなかったため、色素沈着症の種類によっては十分に有効性が発揮されない場合があった。
特許文献3には、γ−アミノ酪酸及びその誘導体の少なくとも一つと、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも一つとを含有することを特徴とする美白化粧料が開示されている。
特許文献3によれば、当該美白化粧料は、炎症による色素沈着抑制効果及び皮膚機能を亢進することによる色黒の皮膚を速やかに淡色化する効果に優れ、かつ皮膚安全性が高いとされている。
特許文献4には、β−グリチルレチン酸ステアリルを有効成分として含有する美白化粧料が開示されている。
特許文献4によれば、β−グリチルレチン酸ステアリルは、エンドセリン−1(色素細胞を活性化するサイトカイン)mRNA発現抑制効果を有し、ソバカスや皮膚色素沈着を予防及び/又は改善する美白作用があるとされている。
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、有効薬剤と組み合わせる処方因子を工夫することで、初めて個別具体的な色素沈着症に有効な色素沈着改善剤を見出した。
肝斑は、いわゆるレーザー治療において悪化することも多く、外用剤への期待は特に高いものである。
本発明の肝斑改善剤には、肝斑改善剤の総質量に対して、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとを、合計で1〜20質量%の割合で含有することができる。
また、本発明の肝斑改善剤は、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルとの割合を、質量比で1:1〜1:10とすることができる。
本発明の肝斑改善剤には、更に、ステロール類を基剤に含有することができる。
また、本発明の肝斑改善剤は、肝斑改善剤の総質量に対して、グリチルレチン酸ステアリルを0.02〜2.0質量%の割合で含有することができる。
本発明の肝斑改善剤は、水中油型乳化組成物の形態であることが好ましい。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
肝斑は、上述の色素沈着症を示す。
本明細書において、「肝斑改善」とは、色素沈着部の皮膚色が薄くなり、正常な肌色になる、又は近づくことをいう。
本明細書において、「基剤」とは、本発明の肝斑改善剤から、有効成分であるグリチルレチン酸ステアリルを除いたものをいう。
本発明に用いる基剤は、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとを含有する。すなわち、基剤は、リン脂質とスクワランを含有し、又は、リン脂質とトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを含有し、あるいは、リン脂質とスクワランとトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを含有する。
リン脂質は、乳化滴を形成することができる。リン脂質は、構造中にリン酸エステル部位をもつ脂質の総称であり、通常皮膚外用剤や化粧料などに使用されるものであれば特に限定されない。例えばグリセリンやスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸とリン酸が結合し、更にリン酸にアルコールがエステル結合した構造をもつ。リン脂質は、大きく分けてグリセリンを骨格とするグリセロリン脂質と、スフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質の2つが存在する。グリセリンのC1、C2位に脂肪酸が、C3位にリン酸がそれぞれエステル結合した分子をホスファチジン酸、ホスファチジン酸からC2位の脂肪酸が外れた分子をリゾホスファチジン酸という。C1には飽和脂肪酸が、C2位には不飽和脂肪酸が結合している場合が多い。アルコールの種類としてはコリン、エタノールアミン、イノシトール、セリン、グリセリンなどを取りうる。
具体的には、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴリン脂質などが挙げられる。また、これらを含有する組成物、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、またはこれらの水素添加物が挙げられる。
リン脂質を構成する脂肪酸としては、炭素数7〜22の飽和又は不飽和カルボン酸が挙げられる。
前記リン脂質は、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
スクワランは、低刺激で、優れたエモリエント効果や良好な使用感を付与することができる。スクワランは、皮膚に対する浸透性がよく、鉱物系の炭化水素に比べて油性感が少なく、感触、伸びが良く、酸化安定性も優れている。
スクワランは動物性、植物性、合成されたもののいずれでもよく、通常皮膚外用剤や化粧料などに使用されるものであれば特に限定されない。具体的には、深海ザメの肝油中に存在するスクワレンを水素添加したもの、オリーブ油、コメヌカ油、小麦胚芽油、ゴマ油などの植物油から抽出されたスクワレンを水素添加したものなどが挙げられる。これらのスクワランは、1又は2種以上を選択して用いることができる。
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルは、エステル油の1種である。トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを基剤に用いると、なめらかな使用感、ツヤ感、水分閉塞性による保湿効果を付与できる。
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルは、通常皮膚外用剤や化粧料に使用されるものであれば特に限定されない。具体的には、市販品のNIKKOL Trifat(登録商標)S−308(日光ケミカルズ株式会社)、MYRITOL(登録商標)GTEH(BASF社製)などが挙げられる。
更に、成分(d)としてステロール類を含有すると、乳化安定性が向上すると共にべたつきを低減できるため好ましい。
ここで、ステロール類として、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、セレグロステロール、デヒドロコレステロール、コブロスタノールなどの動物性ステロール類;フィトステロール、βシトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、エルゴステロールなどの植物性ステロール類;ミコステロール、チモステロールなどの微生物由来ステロール類などや、これらステロール類とオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オリーブ油などの天然油脂を分解して得られる脂肪酸などとの脂肪酸エステル、ステロール類の水酸基の水素原子をアルキル基又はアルケニル基で置換したアルキル(アルケニル)エーテル誘導体、アシル基で置換したアルキル(アルケニル)エステル、N−アシルアミノ酸ステロールエステル、糖残基で置換した配糖体などの誘導体が挙げられる。フィトステロールは、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロールなどの植物ステロールの総称であり、その組成は限定されるものではない。
これらのうち、コレステロール、フィトステロール又はこれらの脂肪酸エステル、N−アシルアミノ酸ステロールエステルが好ましい。
N−アシルアミノ酸ステロールエステルとしては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル)などが好適に例示でき、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/2−オクチルドデシル)が特に好適に例示できる。これらは、既に化粧料原料などとして市販されており、味の素株式会社より販売されている「エルデュウ(登録商標)PS203」(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル))、「エルデュウCL−301」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル))、「エルデュウCL−202」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/2−オクチルドデシル))、「エルデュウPS−306」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル))などが例示でき、中でも、「エルデュウPS203」が特に好ましい。
前記ステロール類は、1種又は2種以上を選択して用いることができる。
基剤におけるリン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルの含有量は、特に限定されないが、より好ましい含有量は、基剤とグリチルレチン酸ステアリルとを含有する肝斑改善剤の総質量に対して、合計で1〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。この範囲であれば、肝斑改善剤を皮膚に塗布したときの使用感がよい。また被験者による肝斑改善の効果も実感される。
グリチルレチン酸ステアリル(Stearyl glycyrrhetinate)は、甘草などに含まれるグリチルレチン酸の加水分解によって得られるグリチルレチン酸のヒドロキシル基にステアリン酸をエステル結合させることにより得られる化合物である。
体系名は、(20S)−3β−ヒドロキシ−11−オキソ−5α−オレアナ−12−エン−29−酸オクタデシルである。分子式は、C48H82O4である。
グリチルレチン酸の分子構造は平面性を有し、3位及び11位がコルチゾン類似であることから抗炎症作用を有する。グリチルレチン酸ステアリルは、ステアリン酸の付加により安全性が高められているので、安全性が要求される皮膚外用剤や化粧料などの技術分野において、抗炎症成分として広く使用されている。
本発明の肝斑改善剤は、皮膚に適用できる形態であれば特に限定されない。例えば、外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤などが挙げられる。
また、みずみずしい感触としっとりした後肌が得られるため、水中油型乳化組成物の形態が好ましい。
本発明の肝斑改善剤は、皮膚外用剤や化粧料などの常法に従って製造することができる。例えば、分散媒やpH調整剤などの水性成分を中心に添加剤などを加え、均一に混合し、組成物1を製造する。一方で、リン脂質、スクワラン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ステロール類、グリチルレチン酸ステアリルなどの油性成分を中心に添加剤などを加え、約70℃に加熱して均一に溶解し、組成物2を製造する。組成物2に、約70℃に加熱した精製水を加え、乳化して組成物3を製造する。組成物3を序冷後、組成物1を加えて乳液を得ることができる。
以下の表1の処方で、肝斑改善剤を製造した。また、比較例として、リン脂質、スクワラン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを含まない処方で、グリチルレチン酸ステアリル含有の比較製剤を製造した。
被験者の東アジア人女性52名(20〜60歳、平均年齢47.9歳)に、12週間、全顔に1日2回塗布してもらう試験を行った。
被験者52名のうち、半分の26名(肝斑の症状を持つ者14名、日光黒子の症状を持つ者12名)に肝斑改善剤を、もう半分の26名(肝斑の症状を持つ者12名、日光黒子の症状を持つ者14名)に比較製剤を塗布してもらった。
試験時期は、日光の紫外線が弱まった11月からとした。
塗布開始から56日目に、皮膚科医による目視評価を行った。目視評価には、スキンカラースケールを使用した。結果を表2に示す。
一方、肝斑の症状を持つ被験者であって比較製剤を塗布してもらった12名のうち、肝斑の改善が観察されたのは4名であった。
塗布開始前と塗布開始から56日目に、分光測色計CM−2600d(コニカミノルタ社)を用いて被験者の色素沈着部(肝斑部分又は日光黒子部分)の皮膚色測定を行い、L*値とIndividual Typology Angle(ITA°)を測定した。56日目と塗布開始前のL*値とITA°の差ΔITA°の結果を表3及び表4に示す。
なお、L*値は、数値が大きいほど、肌色が白いことを示す。
また、ITA°は、
ITA°=[Arc Tangent((L*−50)/b*)]180/3.1416
の式から得られる値であり、数値が大きいほど、肌色が白いことを示す(参考文献:Chardonら、International Journal of Cosmetic Science,1991;13:191−208、及びDel Bino Sら,Assessment of skin color types based on the individual typology angle among different geographical areas.Poster WCD 2011 Seoul)。
肝斑改善剤を塗布してもらった被験者全員に、試験終了時にアンケートを行い、改善効果の実感と使用感について、「とてもよい」、「よい」、「ややよい」、「とくになし」、「悪い」の5段階で評価してもらった。結果を表5に示す。
成分 質量%
1 N−ステアロイル−L−グルタミン酸 0.2
2 1,3−ブチレングリコール 0.8
3 ステアリン酸 0.2
4 ポリソルベート80 0.3
5 セスキオレイン酸ソルビタン 0.2
6 親油型モノステアリン酸グリセリル 0.1
7 ベヘニルアルコール 0.4
8 グリチルレチン酸ステアリル 1.0
9 水素添加大豆リン脂質 0.2
10 スクワラン 4.0
11 メチルポリシロキサン 2.0
12 カルボマー 0.3
13 水酸化ナトリウム 0.15
14 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
15 エタノール 10
16 グリセリン 5.0
17 精製水 残量
(製造方法)
A:1〜11を70℃に加温し、均一に溶解する。
B:12〜17を70℃に加温し、均一に溶解する。
C:AにBを徐々に加えて乳化し、冷却して乳液を得た。
成分 質量%
1 N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.8
2 水素添加大豆リン脂質 0.5
3 リゾリン脂質 0.1
4 グリセリン 10
5 トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 2.0
6 トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5.0
7 メドウフォーム油 5.0
8 オレイン酸フィトテロール 1.0
9 セトステアリルアルコール 1.5
10 グリチルレチン酸ステアリル 0.3
11 フェノキシエタノール 0.1
12 ペンチレングリコール 0.1
13 カルボマー 0.2
14 水酸化ナトリウム 0.06
15 1,3−ブチレングリコール 10
16 ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
17 精製水 残量
(製造方法)
A:1〜10を70℃に加温し、均一に溶解する。
B:11〜17を70℃に加温し、均一に溶解する。
C:AにBを徐々に加えて乳化し、冷却して乳液を得た。
Claims (6)
- リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとが含有される基剤に、グリチルレチン酸ステアリルが含有される、肝斑改善剤。
- 肝斑改善剤の総質量に対して、リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルへキサン酸グリセリルとが合計で1〜20質量%の割合で含有される、請求項1に記載の肝斑改善剤。
- リン脂質とスクワラン及び/又はトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルとの割合が質量比で1:1〜1:10である、請求項1又は2に記載の肝斑改善剤。
- 更に、ステロール類が基剤に含有される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の肝斑改善剤。
- 肝斑改善剤の総質量に対して、グリチルレチン酸ステアリルが0.02〜2.0質量%の割合で含有される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の肝斑改善剤。
- 水中油型乳化組成物の形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の肝斑改善剤。
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