以下、本発明の電磁波シールド用フィルムの製造方法を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて、詳細に説明する。
本発明の電磁波シールド用フィルムの製造方法は、保護シートと、該保護シートの一方の面側に積層された絶縁層および電磁波遮断層とを有する電磁波シールド用フィルムの製造方法であり、シート状をなす第1の離型シートの上面に、液状をなす絶縁層形成材料および電磁波遮断層形成材料のうちの一方の液状材料を供給した後、乾燥させることで、前記絶縁層および前記電磁波遮断層のうちの一方の層を形成し、その後、前記一方の層に前記保護シートを貼付することで積層シートを得る第1の工程と、シート状をなす第2の離型シートの上面に、他方の液状材料を供給した後、乾燥させることで、他方の層を形成するとともに、前記積層シートから前記第1の離型シートを剥離させ、その後、前記第2の離型シート上の前記他方の層に、前記保護シート上の前記一方の層を貼付することで前記電磁波シールド用フィルムを得る第2の工程とを有することを特徴する。
かかる製造方法を適用して電磁波シールド用フィルムを製造することで、たとえ保護層としてその厚さが薄く、さらに、弾性率の低いものを用いたとしても、得られる電磁波シールド用フィルムを、保護層にシワを生じることなく優れた歩留まりで製造することができる。そのため、かかる電磁波シールド用フィルムを用いて覆われる基板の設計自由度を高め、かつ軽量化・薄型化を図ることが可能である。
なお、以下では、本発明の電磁波シールド用フィルムの製造方法を説明するのに先立って、まず、かかる製造方法を適用して製造された電磁波シールド用フィルムについて説明する。
<電磁波シールド用フィルム>
まずは、電磁波シールド用フィルムについて説明する。
図1は、本発明の電磁波シールド用フィルムの製造方法を適用して製造された電磁波シールド用フィルムの実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
電磁波シールド用フィルムは、基板5上の凹凸6を被覆するために用いられる電磁波シールド用フィルムである。
図1に示すように、本実施形態において、電磁波シールド用フィルム10は、保護層(保護シート)1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とを含んで構成され、電磁波遮断層3および絶縁層2は、保護層1の下面(一方の面)側から、電磁波遮断層3が保護層1に接触して、この順で積層されている。
なお、以下では、基板5上に電子部品4が搭載(載置)され、この電子部品4の搭載により基板5上に凸部65と凹部66とからなる凹凸6が形成されており、この凹凸6を電磁波シールド用フィルム10で被覆する場合について説明する。なお、基板5上に搭載する電子部品4としては、例えば、フレキシブル回路基板(FPC)上に搭載されているLCDドライバーIC、タッチパネル周辺のIC+コンデンサーまたは電子回路基板(マザーボード)が挙げられる。
<保護層1>
まず、保護層1について説明する。
保護層(保護シート)1は、可撓性を備え、後述する電子部品の被覆方法の貼付工程において、電磁波シールド用フィルム10を用いて、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込むことで、この凹凸6を被覆する際に、絶縁層2および電磁波遮断層3が押し込まれる際に、これらが破断するのを防止する保護(緩衝)材として機能するものである。さらに、保護層1は電磁波遮断層3の酸化による劣化を防止する機能を有する。
この保護層1の構成材料としては、特に限定されず、例えば、シンジオタクチックポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、無軸延伸ポリプロピレンおよび二軸延伸ポリプロピレン等のポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、シリコーン、スチレンエラストマー樹脂、スチレンブタジエンゴムのような樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、無軸延伸ポリプロピレンを用いることが好ましい。これにより、保護層1の絶縁層2および電磁波遮断層3に対する保護性、さらには耐熱性を向上させることができる。
また、保護層1の常温(25℃)における貯蔵弾性率は、2.0E+02〜5.0E+09Paであるのが好ましく、2.0E+03〜5.0E+09Paであるのがより好ましく、2.0E+04〜3.0E+09Paであるのがさらに好ましい。
このように、保護層1の常温(25℃)における貯蔵弾性率を、前記範囲内に設定することにより、保護層1は可撓性を有するものであると言うことができ、電磁波シールド用フィルム10を用いて、基板5上の凹凸6を被覆する際に、絶縁層2および電磁波遮断層3に破断を生じさせることなく絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応した状態で押し込むことができる。その結果、この凹凸6が設けられた基板5を、破断の発生が防止された電磁波遮断層3をもって確実に被覆することができるため、この電磁波遮断層3による凹凸6が設けられた基板5に対する電磁波シールド(遮断)性が向上することとなる。
保護層1の厚みは、特に限定されないが、3μm以上、20μm以下であることが好ましく、5μm以上、15μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは7μm以上、12μm以下である。保護層1の厚みが前記下限値未満である場合、保護層1ひいては絶縁層2および電磁波遮断層3が破断し、その電磁波シールド性が低下するおそれがある。また、保護層1の厚みが前記上限値を超える場合、電磁波シールド用フィルム10を用いて被覆する基板5の設計によっては、基板5を電磁波シールド用フィルム10で被覆した積層体の軽量化・薄型化が実現されないおそれがある。
<電磁波遮断層3>
次に、電磁波遮断層(遮断層)3について説明する。
電磁波遮断層3は、基板5上に設けられた電子部品4と、この電磁波遮断層3を介して、基板5(電子部品4)と反対側に位置する他の電子部品等とを、これら少なくとも一方から生じる電磁波を遮断(シールド)する機能を有する。
この電磁波遮断層3は、特に限定されず、如何なる形態で電磁波を遮断するものであってもよく、例えば、電磁波遮断層3に入射した電磁波を反射させることにより遮断(遮蔽)する反射層と、電磁波遮断層3に入射した電磁波を吸収することにより遮断(遮蔽)する吸収層とが挙げられる。
以下、反射層および吸収層について、それぞれ、説明する。
反射層は、上述のとおり、反射層に入射した電磁波を反射させることにより遮断するものである。
この反射層としては、例えば、導電性接着剤層、金属薄膜層、金属メッシュ、ITOなどの導電性材料の表面処理等が挙げられる。これらを単独あるいは併用してもよい。これらの中でも、導電性接着剤層を用いることが好ましい。導電性接着剤層は、その膜厚(厚み)を比較的薄く設定したとしても、優れた電磁波シールド性を発揮するため、反射層として好ましく用いられる。
前記導電性接着剤層としては、金属粉とバインダー樹脂とを含んで構成され、金属粉は例えば、金、銀、銅または銀コート銅、ニッケル等が挙げられる。これらの中でも、電磁波シールド性に優れているという理由から、銀を用いることが好ましい。
前記導電性接着剤層における金属粉とバインダー樹脂との含有比率は、特に制限されないが、重量比で40:60〜90:10であることが好ましく、50:50〜80:20であることがより好ましく、さらには55:45〜70:30であることが好ましい。金属粉とバインダー樹脂との含有比率が前記下限値未満である場合、導電性の発現が困難になるおそれがある。また、金属粉とバインダー樹脂との含有比率が前記上限値を超える場合、可撓性や電子機器部品との密着性が低下するおそれがある。
前記導電性接着剤層は、前記金属粉とバインダー樹脂との他に、さらに難燃剤、レベリング剤、粘度調整剤等を含有しても良い。
反射層の厚みT(E1)は、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下であることが好ましく、8μm以上、50μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10μm以上、30μm以下である。反射層の厚みが前記下限値未満である場合、反射層の構成材料等によっては耐ハゼ折り性が不足し、搭載部品端部で破断するおそれがあるとともに、電磁波を遮断(シールド)する電磁波シールド性も低下するおそれがある。反射層の厚みが前記上限値を超える場合、反射層の構成材料等によっては形状追従性が不足するおそれがある。また、かかる範囲内の厚みT(E1)としても、優れた電磁波シールド性を発揮させることができるため、反射層の厚みT(E1)の薄膜化を実現すること、ひいては、絶縁層2および遮断層(反射層)3で被覆された電子部品4が搭載された基板5の軽量化および薄型化を実現することができる。
吸収層は、上述のとおり、吸収層に入射した電磁波を吸収し、熱エネルギーに変換することにより遮断するものである。
この吸収層としては、例えば、金属粉および導電性高分子材料等の導電吸収材料を主材料として構成される導電吸収層、炭素系材料および導電性高分子材料等の誘電吸収材料を主材料として構成される誘電吸収層、軟磁性金属等の磁性吸収材料を主材料として構成される磁性吸収層等が挙げられ、これらを単独あるいは併用してもよい。
なお、導電吸収層は、電界を印加した際に材料内部に流れる電流により、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することで、電磁波を吸収し、誘電吸収層は、電磁波を誘電損失により熱エネルギーに変換することで、電磁波を吸収し、磁性吸収層は、過電流損、ヒステレス損、磁気共鳴等の磁性損失により、電波のエネルギーを熱に変換して消費することで、電磁波を吸収する。
これらの中でも、誘電吸収層、導電吸収層を用いることが好ましい。
誘電吸収層および導電吸収層は、その膜厚(厚み)を比較的薄く設定したとしても、特に優れた電磁波シールド性を発揮するため、吸収層として好ましく用いられる。また、その層中に含まれる材料の粒子径が小さいことやその添加量も少なくできることから、その膜厚を比較的容易に薄く設定することができ、また軽量化も可能である。
なお、導電吸収材料としては、例えば、導電性高分子、ATO等の金属酸化物、導電性セラミックスが挙げられる。
また、導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)、PEDOT/PSS、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
誘電吸収材料としては、炭素系材料、導電性高分子等が挙げられる。
また、炭素系材料としては、例えば、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのようなカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、CNナノチューブ、CNナノファイバー、BCNナノチューブ、BCNナノファイバー、グラフェンや、カーボンマイクロコイル、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノウォールのような炭素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、磁性吸収材料としては、例えば、鉄、ケイ素鋼、磁性ステンレス(Fe−Cr−Al−Si合金)、センダスト(Fe−Si−Al合金)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、ケイ素銅(Fe−Cu−Si合金)、Fe−Si合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)合金のような軟磁性金属、フェライト等が挙げられる。
吸収層の厚みT(E2)は、特に限定されないが、1μm以上、100μm以下であることが好ましく、2μm以上、80μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、3μm以上、50μm以下である。吸収層の厚みが前記下限値未満である場合、吸収層の構成材料等によっては、基板搭載部品の端部で破断するおそれがある。また、吸収層の厚みが前記上限値を超える場合、吸収層の構成材料等によっては形状追従性が不足するおそれがある。また、かかる範囲内の厚みT(E2)としても、優れた電磁波シールド性を発揮させることができるため、吸収層の厚みT(E2)の薄膜化を実現すること、ひいては、絶縁層2および遮断層(吸収層)3で被覆された電子部品4が搭載された基板5の軽量化を実現することができる。
以上のような電磁波遮断層3は、電磁波を遮断(シールド)する電磁波シールド性が5dB以上であるのが好ましく、30dB以上であるのがより好ましく、50dB以上であるのがさらに好ましい。このような電磁波シールド性を有する電磁波遮断層3を、優れた電磁波シールド性を有するものと言うことができ、電磁波をより確実に遮断することができる。
また、電磁波遮断層3は、その常温(25℃)における貯蔵弾性率が1.0E+02〜1.0E+09Paであるのが好ましく、5.0E+02〜5.0E+08Paであるのがより好ましい。前記貯蔵弾性率をかかる範囲内に設定することにより、貼付工程において、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込むことで、この凹凸6を被覆する際に、かかる押し込みにより、破断されることなく、電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応して変形させることができる。
なお、前述のとおり、電磁波遮断層3は、反射層と吸収層とのいずれであってもよいが、ほぼ同一の電磁波シールド性を有する場合には、吸収層であるのが好ましい。吸収層では、吸収層に入射した電磁波を吸収し、熱エネルギーに変換することで遮断するため、この吸収により電磁波が消滅することから、反射層のように反射した電磁波が電磁波遮断層3で被覆されていない他の部材等に対して誤作動等の悪影響をおよぼしてしまうのを確実に防止することができる。
<絶縁層2>
次に、絶縁層2について説明する。
絶縁層2は、本実施形態では、電磁波遮断層3に接触して設けられ、保護層1側から電磁波遮断層3、絶縁層2の順で積層されている。このように積層された絶縁層2および電磁波遮断層3を備える電磁波シールド用フィルム10を用いて基板5上の凹凸6を被覆することで、基板5および電子部品4に絶縁層2が接触し、基板5側から絶縁層2、電磁波遮断層3の順で被覆することとなる。
このように、本実施形態では、絶縁層2は、基板5および電子部品4を被覆し、これにより、基板5上で隣接する電子部品4同士を絶縁するとともに、基板5および電子部品4を、絶縁層2を介して基板5と反対側に位置する他の部材(電子部品等)から絶縁する。
この絶縁層2としては、例えば、熱硬化性を有する絶縁樹脂または熱可塑性を有する絶縁樹脂(絶縁フィルム)が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性を有する絶縁樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性を有する絶縁樹脂は、屈曲性に優れたフィルムであることから、貼付工程において、基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、絶縁層2を、凹凸6の形状に対応して確実に追従させることができる。また、熱可塑性を有する絶縁樹脂は、その軟化点温度に加熱すると、接着対象の基板から再剥離することができるので、基板の修理の際には、特に有用である。
熱可塑性を有する絶縁樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリエステル、α−オレフィン、酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、エチレン酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル、ポリアミド、セルロースが挙げられる。これらの中でも基板との密着性、屈曲性、耐薬品性に優れるという理由から熱可塑性ポリエステル、α−オレフィンを用いることが好ましい。
さらに、熱可塑性を有する絶縁樹脂には、耐熱性や耐屈曲性等の性能を損なわない範囲で、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等を含有させることができる。また、熱可塑性を有する絶縁樹脂には、後述する導電性接着剤層の場合と同様に、接着性、耐ハンダリフロー性を劣化させない範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等を添加してもよい。
絶縁層2の厚みT(D)は、特に限定されないが、3μm以上、50μm以下であることが好ましく、4μm以上、30μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5μm以上、20μm以下である。絶縁層2の厚みが前記下限値未満である場合、耐ハゼ折り性が不足し、凹凸6への熱圧着後に折り曲げ部にてクラックが発生したり、フィルム強度が低下し、電磁波遮断層3の絶縁性支持体としての役割を担うことが難しい。前記上限値を超える場合、形状追従性が不足するおそれがある。すなわち、絶縁層2の厚みT(D)を前記範囲内に設定することにより、絶縁層2を屈曲性により優れたものとすることができ、貼付工程において、基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、絶縁層2を、凹凸6の形状に対応してより確実に追従させることができる。また、絶縁層2の厚みT(D)の薄膜化を実現すること、ひいては、絶縁層2および遮断層(反射層)3で被覆された電子部品4が搭載された基板5の軽量化および薄型化を実現することができる。
また、絶縁層2の25〜150℃における平均線膨張係数は、50〜1000[ppm/℃]であるのが好ましく、100〜700[ppm/℃]であるのがより好ましい。絶縁層2の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム10の加熱時において、絶縁層2は、優れた伸縮性を有するものとなるため、絶縁層2、さらには電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
なお、この絶縁層2は、図1で示したように、1層で構成されるものの他、上述した絶縁フィルムのうち異なるものを積層させた2層以上の積層体であってもよい。
なお、前記形状追従性は、以下のようにして求めることができる。
すなわち、まず、縦100mm×横100mm×高さ2mmのプリント配線板(マザーボード)に、幅0.2mm、各必要段差の溝を、0.2mm間隔で碁盤目状に形成することにより、プリント配線基板を得る。その後、電磁波シールド用フィルムを、手または真空加圧式ラミネーターを用いて、温度25℃、圧力0.1MPa、時間20秒の条件で、プリント配線板に圧着させ、プリント配線板に貼り付ける。貼付後、プリント配線板に貼り付けた遮断層および絶縁層とプリント配線板上の溝との間に空隙があるかどうかを判断する。なお、空隙があるかどうかは、例えば、マイクロスコープや顕微鏡およびレーザー変位計で段差を観察し、評価した。
<電子部品の被覆方法>
以上のような構成の電磁波シールド用フィルム10を用いて、例えば、以下のようにして、基板5上に搭載された電子部品4が被覆される。
図2は、図1に示す電磁波シールド用フィルムを用いた電子部品の被覆方法を説明するための縦断面図である。
以下の電子部品の被覆方法は、基板5上に、電磁波シールド用フィルム10を絶縁層2と電子部品4が接着するように貼付する貼付工程を有する。
(貼付工程)
前記貼付工程とは、例えば、図2(a)に示すように、基板5上に電子部品4を搭載することで設けられた凹凸6に、電磁波シールド用フィルム10を貼付する工程である。
貼付する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のような方法が挙げられる。
すなわち、まず、基板5の凹凸6が形成されている側の面と、電磁波シールド用フィルム10の絶縁層2側の面とが対向するように、基板5と電磁波シールド用フィルム10とを重ね合わせた状態でセットし、その後、これらを常温下において、電磁波シールド用フィルム10側から均一に電磁波シールド用フィルム10と基板5とが互いに接近するように、加圧することにより実施される。
このように電磁波シールド用フィルム10側から均一に加圧することで、保護層1が凹凸6の形状に対応して変形し、さらに、この変形に併せて、保護層1よりも基板5側に位置する、絶縁層2および電磁波遮断層3が凹凸6の形状に対応して変形する。これにより、凹凸6の形状に対応して保護層1、絶縁層2および電磁波遮断層3が押し込まれた状態で、保護層1、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6が被覆される。
このような貼付工程において、貼付する温度は、常温であり、具体的には、5℃以上、35℃以下であることが好ましく、20℃以上、30℃以下であることがより好ましく、25℃であることがさらに好ましい。
また、貼付する圧力は、特に限定されないが、0.05MPa以上、0.5MPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.1MPa以上、0.3MPa以下である。
さらに、貼付する時間は、特に限定されないが、1秒以上、60秒以下であることが好ましく、より好ましくは5秒以上、30秒以下である。
貼付工程における条件を上記範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム10側からの加圧による電子部品4の破損を招くことなく、基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込んだ状態で、これら絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を確実に被覆することができる。
以上のような工程を経ることにより、保護層1、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を被覆することができる。なお、本実施形態のように、被覆した凹凸6に保護層1が残存する被覆方法では、基板5の反対側に位置する他の部材(電子部品等)と電磁波遮断層3とを絶縁する絶縁層としての機能を保護層1が発揮する。
さらに、電磁波シールド用フィルム10を用いて、上述した方法の他、電磁波シールド用フィルム10から保護層1を剥離して、絶縁層2および電磁波遮断層3により、基板5上に搭載された電子部品4を被覆するようにしてもよい。
図3は、図1に示す電磁波シールド用フィルムを用いた電子部品の被覆方法の他の被覆方法を説明するための縦断面図である。
以下の電子部品の他の被覆方法は、基板5上に、電磁波シールド用フィルム10を絶縁層2と電子部品4が接着するように貼付する貼付工程と、前記貼付工程の後、保護層1を剥離する剥離工程とを有する。
(貼付工程)
貼付工程では、図2で説明した電子部品の被覆方法と同様に、図3(a)に示すように、基板5上に電子部品4を搭載することで設けられた凹凸6に、電磁波シールド用フィルム10を貼付する。
(剥離工程)
剥離工程では、例えば、図3(b)に示すように、前記貼付工程の後、保護層1を電磁波シールド用フィルム10から剥離する。
この剥離工程により、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム10における保護層1と電磁波遮断層3との界面において、剥離が生じ、その結果、電磁波遮断層3から保護層1が剥離される。これにより、電磁波遮断層3から保護層1を剥離した状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6が被覆される。
なお、このような電磁波シールド用フィルム10を用いた絶縁層2および電磁波遮断層3による凹凸6の被覆では、図3に示したように、貼付する電磁波シールド用フィルム10の形状が対応して、凹凸6を絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆することができる。そのため、被覆すべき凹凸6の形状に対応して電磁波シールド用フィルム10の形状を適宜設定することにより、被覆すべき凹凸6を選択的に絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆することができる。すなわち、絶縁層2および電磁波遮断層3による凹凸6の選択的な電磁波シールドが可能となる。
また、保護層1を剥離する方法としては、特に限定されないが、例えば、手作業による剥離が挙げられる。
この手作業による剥離では、例えば、まず、保護層1の一方の端部を把持し、この把持した端部から保護層1を電磁波遮断層3から引き剥がし、次いで、この端部から中央部へさらには他方の端部へと順次保護層1を引き剥がすことにより、電磁波遮断層3から保護層1が剥離される。
なお、剥離の際には、保護層1を加熱するのが好ましく、その際の加熱温度は、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
以上のような工程を経ることにより、電磁波遮断層3から保護層1を剥離した状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を被覆することができる。
<電磁波シールド用フィルム製造装置>
<<第1実施形態>>
以上のような電磁波シールド用フィルム10は、本発明の電磁波シールド用フィルムの製造方法により製造されるが、まず、この電磁波シールド用フィルムの製造方法に用いられる電磁波シールド用フィルム製造装置(以下、単に「フィルム製造装置」と言うこともある。)100について説明する。
なお、フィルム製造装置100は、巻出しローラ46、47に巻回するフィルムの種類に応じて、第1のモードと第2のモードとを取り得るように構成されるものである。
図4は、図1に示す電磁波シールド用フィルムの製造に用いられる電磁波シールド用フィルム製造装置の第1実施形態の第1のモードを示す斜視図、図5は、図1に示す電磁波シールド用フィルムの製造に用いられる電磁波シールド用フィルム製造装置の第1実施形態の第2のモードを示す斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、図4、5中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」、右側を「右」と言う。
なお、以下では、フィルム製造装置100を、第1のモードとして使用する場合について主として説明し、第2のモードについては、第1のモードとの相違点を中心に説明する。
(第1のモード)
フィルム製造装置100は、第1の離型シート71および保護層(保護シート)1を搬送する搬送手段40と、第1の離型シート71に液状をなす電磁波遮断層形成材料を供給する液状材料供給手段50と、液状をなす電磁波遮断層形成材料を乾燥させて電磁波遮断層3を形成する乾燥手段60とを備えている。
図4に示すように、搬送手段40は、巻出しローラ46に巻回された第1の離型シート71および巻出しローラ47に巻回された保護層1をこれらの長手方向に沿って搬送するとともに、これらから得られる積層シート73を、巻取りローラ48に巻回するものである。
搬送手段40は、第1の離型シート71を巻回する巻出しローラ46と、保護層1を巻回する巻出しローラ47と、積層シート73を巻取る(巻回する)巻取りローラ48と、巻出しローラ46、47と巻取りローラ48との間に配置されたテンショナ(テンションローラ)41、42、43、44、45とを有している。
なお、各ローラは、それぞれ、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料で構成されている。また、これらのローラは、回動軸(中心軸)同士が同じ方向を向いており、互いに離間して配置されている。さらに、各ローラは、例えばフィルム製造装置100全体を支持するフレーム(図示せず)に回動可能に支持されている。
巻出しローラ46は、外形形状が円柱状をなし、第1の離型シート71の搬送方向最上流側に位置して、第1の離型シート71がロール状に巻回されており、この第1の離型シート71を搬送方向に送出すローラである。また、巻出しローラ47は、外形形状が円柱状をなし、第1の離型シート71の搬送方向の途中に位置して、保護層1がロール状に巻回されており、この保護層1を搬送方向に送出すローラである。
テンショナ41〜45は、それぞれ、外形形状が円柱状をなしている。また、これらのうち、テンショナ41〜43は、第1の離型シート71の長手方向の途中が接触して、掛け回されつつ回転するローラである。これにより、第1の離型シート71に張力を掛けつつ、搬送方向を変更して搬送することができる。さらに、テンショナ45は、保護層1の長手方向の途中が接触して、掛け回されつつ回転するローラである。これにより、保護層1に張力を掛けつつ、搬送方向を変更して搬送することができる。なお、テンショナ43、45は、それぞれ、電磁波遮断層3が形成された第1の離型シート71と保護層1とを挾持し得る程度に離間しており、これら同士を圧縮することで電磁波遮断層3に保護層1を貼付する圧縮ローラとしての機能も発揮する。さらに、テンショナ44は、電磁波遮断層3に保護層1が貼付された積層シート73の長手方向の途中が接触して、掛け回されつつ回転するローラである。これにより、積層シート73に張力を掛けつつ、搬送方向を変更して搬送することができる。
さらに、巻取りローラ48は、外形形状が円柱状をなし、第1の離型シート71の搬送方向最下流側に位置して、搬送方向上流側から送り出されてきた積層シート73を巻取るローラである。この巻取りローラ48にモータ(図示せず)が接続されており、このモータの作動により、第1の離型シート71および保護層1が搬送される。また、モータに印加する電圧の大きさを変更することにより、第1の離型シート71および保護層1の搬送速度を変更することができる。
液状材料供給手段50は、図4に示すように、ディスペンサー51を有している。このディスペンサー51は、テンショナ42とテンショナ43との間の、第1の離型シート71の搬送方向の最上流側の位置に、第1の離型シート71に対向して、その上側に配置されており、フィルム製造装置100全体を支持する前記フレームに支持、固定されている。そして、このディスペンサー51から、液状をなす電磁波遮断層形成材料が液滴32として、第1の離型シート71に滴下(供給)され、これにより、第1の離型シート71上に液状被膜31が形成される。
電磁波遮断層形成材料としては、例えば、上述した電磁波遮断層3の構成材料を、溶媒または分散媒に溶解または分解したものが挙げられる。また、溶媒または分散媒としては、特に限定されないが、例えば、メシチレン、デカリン、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン類等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド/ラクタム類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、液状材料を第1の離型シート71上に供給する方法としては、特に限定されず、上述したディスペンサー51を用いて液滴32を供給する方法の他、各種塗布法を用いることができる。この塗布法としては、例えば、キャスティング法、コンマコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スロットダイ法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。
乾燥手段60は、図4に示すように、一対の熱風供給部61を有している。これら熱風供給部61は、テンショナ42にテンショナ43との間の、第1の離型シート71の搬送方向の液状材料供給手段50よりも下流側の位置に、第1の離型シート71に対向して、その上方および下方に1つずつ配置されており、フィルム製造装置100全体を支持する前記フレームに支持、固定されている。そして、各熱風供給部61は、電熱線で構成されたヒータ62が内蔵されており、このヒータ62で加熱された熱風が、図示しない複数の熱風供給孔を介して、第1の離型シート71上に形成された液状被膜31に対して吹き付けられる。これにより、液状被膜(電磁波遮断層形成材料)31が乾燥して、第1の離型シート71上に電磁波遮断層3が形成される。
なお、ヒータ62は、図4に記載の構成とは異なり、各熱風供給部61において、第1の離型シート71の搬送方向に沿って、複数個(例えば、3つ)のものが並んで配設されるものであってもよい。この場合、複数個のヒータ62で加熱される熱風を、それぞれ、異なる温度に設定(例えば、前記搬送方向に沿って段階的に高温となるように設定)することができるため、液状被膜31の乾燥を、より効率よく円滑に行うことができる。
(第2のモード)
第2のモードのフィルム製造装置100において、搬送手段40は、図5に示すように、さらに、巻出しローラ47に対して積層シート73を挿通可能な程度離間して配置された剥離ローラ49を有している。そして、第1のモードにおいて巻取りローラ48に巻き取られた積層シート73が巻出しローラ47には巻回されており、この積層シート73が、巻出しローラ47と剥離ローラ49との間に搬送された際に、剥離ローラ49により第1の離型シート71が積層シート73から剥離され、保護層1と電磁波遮断層3との積層体が搬送方向の上流側に搬送される。
また、巻出しローラ46は、第2の離型シート72が巻回されており、この第2の離型シート72がその長手方向に沿って搬送される。さらに、巻取りローラ48は、第2の離型シート72と、この第2の離型シート72に積層された電磁波シールド用フィルム10とを備える積層シート74を巻回する。
さらに、液状材料供給手段50では、ディスペンサー51は、液状をなす絶縁層形成材料を液滴22として、第2の離型シート72に滴下(供給)するものであり、これにより、第2の離型シート72上に液状被膜21を形成する。なお、絶縁層形成材料としては、例えば、絶縁層2の構成材料を、溶媒または分散媒に溶解または分解したものが挙げられる。また、溶媒または分散媒としては、電磁波遮断層形成材料で説明したのと同様のものを用いることができる。
また、乾燥手段60は、第2の離型シート72上の液状被膜(絶縁層形成材料)21を乾燥させて、これにより、第2の離型シート72上に絶縁層2を形成させる。
以上のような電磁波シールド用フィルムの製造装置を用いた電磁波シールド用フィルムの製造方法(本発明の電磁波シールド用フィルムの製造方法)により、電磁波シールド用フィルム10が製造される。
この電磁波シールド用フィルムの製造方法は、本実施形態では、シート状をなす第1の離型シート71の上面に、液状をなす電磁波遮断層形成材料を供給した後、乾燥させることで、電磁波遮断層3を形成し、その後、電磁波遮断層3に保護層(保護シート)1を貼付することで積層シート73を得る第1の工程と、シート状をなす第2の離型シート72の上面に、液状をなす絶縁層形成材料を供給した後、乾燥させることで、絶縁層を形成するとともに、積層シート73から第1の離型シート71を剥離させ、その後、第2の離型シート72上の絶縁層2に、保護層1上の電磁波遮断層3を貼付することで、第2の離型シート72と、この第2の離型シート72に積層された電磁波シールド用フィルム10とを備える積層シート74を得る第2の工程とを有する。
以下、これらの各工程について、順次説明する。
(第1の工程)
まず、シート状をなす第1の離型シート71の上面に、液状をなす電磁波遮断層形成材料を供給した後、乾燥させることで、電磁波遮断層3を形成し、その後、電磁波遮断層3に保護層(保護シート)1を貼付することで積層シート73を得る(図4参照。)。
(1−1)まず、第1の離型シート71が予め巻回された巻出しローラ46から、第1の離型シート71を、搬送方向に沿ってテンショナ41〜44にその途中が接触するように巻出し、その先端を巻取りローラ48に装着する。また、保護層1が予め巻回された巻出しローラ47から、保護層1を、搬送方向に沿ってテンショナ44、45にその途中が接触するように巻出し、その先端を巻取りローラ48に装着する。
そして、巻取りローラ48に接続されたモータの作動により、第1の離型シート71および保護層1を搬送方向に搬送させる。
この第1の離型シート71は、その平均厚さが5μm以上、60μm以下であることが好ましく、20μm以上、40μm以下であることがより好ましい。
また、第1の離型シート71は、その常温(25℃)における貯蔵弾性率は、5.5E+09Pa〜9.0E+11Paであるのが好ましく、6.0E+09P〜7.0E+10Paであるのがより好ましい。
第1の離型シート71の平均厚さおよび貯蔵弾性率を前記範囲内に設定することにより、第1の離型シート71に液状被膜31さらには電磁波遮断層3を形成する際に、第1の離型シート71にシワが生じるのを的確に抑制または防止することができる。したがって、かかる第1の離型シート71に積層される電磁波遮断層3および保護層1にもシワが生じるのをより的確に抑制または防止することができる。
第1の離型シート71の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンおよびポリエチレン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリプロピレンまたはポリエチレンを主材料として含有することが好ましい。これにより、第1の離型シート71の常温(25℃)における貯蔵弾性率を、容易に前記範囲内に設定することができる。
このように、液状被膜31さらには電磁波遮断層3の形成に適した第1の離型シート71が選択されることから、液状被膜31および電磁波遮断層3の形成の際に、これらにシワが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
(1−2)次いで、テンショナ42とテンショナ43との間の、第1の離型シート71の搬送方向の最上流側の位置で、ディスペンサー51から、液状をなす電磁波遮断層形成材料を液滴32として、巻出しローラ46から巻出された第1の離型シート71に滴下(供給)することで、第1の離型シート71上に液状被膜31を形成する。
なお、本工程において、第1の離型シート71上に形成される液状被膜31は、その幅が、図4に示すように、第1の離型シート71の幅よりも狭く設定されている。これにより、次工程(1−3)で形成される電磁波遮断層3の幅も第1の離型シート71の幅よりも狭く形成することができる。そのため、後工程(1−4)において、第1の離型シート71と保護層1との間から、電磁波遮断層3をはみ出させることなく、電磁波遮断層3に、保護層1を確実に貼付することができる。
(1−3)次いで、テンショナ42とテンショナ43との間の、第1の離型シート71の搬送方向の液状材料供給手段50よりも下流側の位置で、乾燥手段60により、液状被膜(電磁波遮断層形成材料)31を乾燥させることにより、第1の離型シート71上に電磁波遮断層3を形成する。
液状被膜31を乾燥させる際の液状被膜31の温度は、40℃以上、150℃以下であることが好ましく、50℃以上、120℃以下であることがより好ましい。これにより、液状被膜31を乾燥させて電磁波遮断層3を成膜することができるとともに、電磁波遮断層3に保護層1に対する接着性を発現させて、次工程(1−4)において、電磁波遮断層3に保護層1をより強固に接合することができる。また、電磁波遮断層3中に溶媒または分散媒が残存するのを的確に抑制または防止することができるため、溶媒または分散媒が残存することに起因して電磁波遮断層3に不具合が生じるのを確実に低減させることができる。
(1−4)次いで、第1の離型シート71上に形成された電磁波遮断層3に、巻出しローラ47から巻出された保護層1を、テンショナ43、45との間で、電磁波遮断層3が形成された第1の離型シート71と保護層1とを圧縮することで、貼付する。
これにより、電磁波遮断層3に保護層1が接合され、第1の離型シート71上に、電磁波遮断層3と保護層1とが、この順で積層された積層シート73が得られる。
(1−5)次いで、得られた積層シート73を、テンショナ44を介した後、巻取りローラ48で巻き取る(巻回する)。
これにより、巻取りローラ48で巻き取られた状態で、電磁波遮断層3と保護層1とが、この順で積層された積層シート73を連続的に得ることができる。
上記の工程によれば、液状被膜31ひいては電磁波遮断層3の形成に適した第1の離型シート71に、液状被膜31ひいては電磁波遮断層3を形成することができる。そのため、シワの発生が的確に抑制または防止された状態でこの電磁波遮断層3上に保護層1を貼付することができる。その結果、電磁波遮断層3および保護層1においてシワを的確に生じさせることなく、巻取りローラ48で巻き取られた状態で積層シート73が得られる。
なお、第1の工程では、得られた積層シート73において、保護層1と電磁波遮断層3との間の接合強度をA[N/mm]とし、電磁波遮断層3と第1の離型シート71との間の接合強度をC[N/mm]としたとき、A>Cなる関係を満足するように設定されている。これにより、第2の工程において、保護層1と電磁波遮断層3との間で剥離を生じさせることなく、電磁波遮断層3から第1の離型シート71を確実に剥離させることができる。
また、第1の工程では、図4に示すように、巻出しローラ46から巻出される第1の離型シート71の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる第1の離型シート71の巻き方向とが同一の方向となっており、巻出しローラ47から巻出される保護層1の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる保護層1の巻き方向とが逆の方向となっている。これにより、巻取りローラ48に巻き取られる積層シート73に巻グセが生じるのを的確に抑制することができる。
(第2の工程)
次に、シート状をなす第2の離型シート72の上面に、液状をなす絶縁層形成材料を供給した後、乾燥させることで、絶縁層を形成するとともに、積層シート73から第1の離型シート71を剥離させ、その後、第2の離型シート72上の絶縁層2に、保護層1上の電磁波遮断層3を貼付することで、第2の離型シート72と、この第2の離型シート72に積層された電磁波シールド用フィルム10とを備える積層シート74を得る(図5参照。)。
(2−1)まず、第2の離型シート72が予め巻回された巻出しローラ46から、第2の離型シート72を、搬送方向に沿ってテンショナ41〜44にその途中が接触するように巻出し、その先端を巻取りローラ48に装着する。また、前記第1の工程で得られた積層シート73が予め巻回された巻出しローラ47から、第1の離型シート71を剥離させた状態で、保護層1と電磁波遮断層3との積層体を、電磁波遮断層3が上側になるように、搬送方向に沿ってテンショナ44、45にその途中が接触するように巻出し、その先端を巻取りローラ48に装着する。
そして、巻取りローラ48に接続されたモータの作動により、第2の離型シート72および保護層1と電磁波遮断層3との積層体を搬送方向に搬送させる。
なお、第2の離型シート72としては、前述した第1の離型シート71と同様のものを用いることができる。
(2−2)次いで、テンショナ42とテンショナ43との間の、第2の離型シート72の搬送方向の最上流側の位置で、ディスペンサー51から、液状をなす絶縁層形成材料を液滴22として、第2の離型シート72に滴下(供給)することで、第2の離型シート72上に液状被膜21を形成する。
なお、本工程において、第2の離型シート72上に形成される液状被膜21は、その幅が、図5に示すように、第2の離型シート72の幅よりも狭く設定されている。これにより、次工程(2−3)で形成される絶縁層2の幅も第2の離型シート72の幅よりも狭く形成することができる。そのため、後工程(2−4)において、第2の離型シート72と保護層1との間から、絶縁層2をはみ出させることなく、絶縁層2に、電磁波遮断層3を確実に貼付することができる。
(2−3)次いで、テンショナ42とテンショナ43との間の、第2の離型シート72の搬送方向の液状材料供給手段50よりも下流側の位置で、乾燥手段60により、液状被膜(絶縁層形成材料)21を乾燥させることにより、第2の離型シート72上に絶縁層2を形成する。
液状被膜21を乾燥させる際の液状被膜21の温度は、40℃以上、150℃以下であることが好ましく、50℃以上、120℃以下であることがより好ましい。これにより、液状被膜21を乾燥させて絶縁層2を成膜することができるとともに、絶縁層2に電磁波遮断層3に対する接着性を発現させて、次工程(2−4)において、絶縁層2に電磁波遮断層3をより強固に接合することができる。また、絶縁層2中に溶媒または分散媒が残存するのを的確に抑制または防止することができるため、溶媒または分散媒が残存することに起因して絶縁層2に不具合が生じるのを確実に低減させることができる。
(2−4)次いで、巻出しローラ47から巻出された積層シート73から剥離ローラ49を用いて第1の離型シート71を剥離することで、保護層1と電磁波遮断層3との積層体を搬送方向に搬送する(巻出す)。その後、この積層体の電磁波遮断層3を、第2の離型シート72上に形成された絶縁層2に、テンショナ43、45との間で、絶縁層2が形成された第2の離型シート72と前記積層体とを圧縮することで、貼付する。
これにより、絶縁層2に電磁波遮断層3が接合され、その結果、第2の離型シート72上に、絶縁層2と電磁波遮断層3と保護層1とが、この順で積層された電磁波シールド用フィルム10を備える積層シート74が得られる。
(2−5)次いで、得られた積層シート74を、テンショナ44を介した後、巻取りローラ48で巻き取る。
これにより、巻取りローラ48で巻き取られた状態で、第2の離型シート72と電磁波シールド用フィルム10とを備える積層シート74を連続的に得ることができる。
上記の工程によれば、液状被膜21ひいては絶縁層2の形成に適した第2の離型シート72に、液状被膜21ひいては絶縁層2を形成することができる。そのため、シワの発生が的確に抑制または防止された状態でこの絶縁層2上に電磁波遮断層3および保護層1を貼付することができる。その結果、絶縁層2、電磁波遮断層3および保護層1においてシワを的確に生じさせることなく、巻取りローラ48で巻き取られた状態で積層シート74が得られる。そのため、かかる電磁波シールド用フィルム10を用いて覆われる基板5の設計自由度を高め、かつ軽量化・薄型化を図ることが可能である。さらに、基板5に電子部品4を搭載することで形成される凹凸6に対して、形状追従性を電磁波シールド用フィルム10に発揮させて被覆することができる。
なお、第2の工程では、得られた積層シート74において、保護層1と電磁波遮断層3との間の接合強度をA[N/mm]とし、絶縁層2と第2の離型シート72との間の接合強度をB[N/mm]としたとき、A>Bなる関係を満足するように設定されている。これにより、積層シート74から第2の離型シート72を剥離して、電磁波シールド用フィルム10とする際に、保護層1と電磁波遮断層3との間で剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
また、第2の工程では、図5に示すように、巻出しローラ46から巻出される第2の離型シート72の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる第2の離型シート72の巻き方向とが同一の方向となっており、巻出しローラ47から巻出される積層シート73の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる保護層1と電磁波遮断層3との積層体の巻き方向とが逆の方向となっている。これにより、巻取りローラ48に巻き取られる積層シート74に巻グセが生じるのを的確に抑制することができる。
以上のような工程を経ることで、電磁波シールド用フィルム10が製造される。
なお、上記の方法によれば、電磁波シールド用フィルム10は、第2の離型シート72と電磁波シールド用フィルム10とを備える積層シート74として巻取りローラ48に巻回された状態で得られる。このような電磁波シールド用フィルム10を、電子部品の被覆方法に適用する際には、積層シート74から第2の離型シート72を剥離させるともに、電磁波シールド用フィルム10を適切な大きさに切断して、電子部品の被覆方法に用いるようにすればよい。
また、フィルム製造装置100は、前述したような第1実施形態の構成のものの他、以下に示すような第2〜第4実施形態の構成のものとしても、電磁波シールド用フィルム10を製造することができる。
<第2実施形態>
図6は、図1に示す電磁波シールド用フィルムの製造に用いられる電磁波シールド用フィルム製造装置の第2実施形態の第1のモードを示す斜視図、図7は、図1に示す電磁波シールド用フィルムの製造に用いられる電磁波シールド用フィルム製造装置の第2実施形態の第2のモードを示す斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、図6、7中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」、右側を「右」と言う。
以下、図6、7に示すフィルム製造装置100について説明するが、図4、5に示すフィルム製造装置100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図6、7に示すフィルム製造装置100では、それぞれ、巻出しローラ47から巻出される保護層1および積層シート73の巻出し方向が逆であること以外は、図4、5に示した製造装置100と同様である。
すなわち、第1の工程(第1のモード)では、図6に示すように、巻出しローラ46から巻出される第1の離型シート71の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる第1の離型シート71の巻き方向とが同一の方向となっており、巻出しローラ47から巻出される保護層1の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる保護層1の巻き方向とが同一の方向となっている。これにより、電磁波遮断層3に対する保護層1の貼付をより優れた強度で行うことができる。
また、第2の工程(第2のモード)では、図7に示すように、巻出しローラ46から巻出される第2の離型シート72の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる第2の離型シート72の巻き方向とが同一の方向となっており、巻出しローラ47から巻出される積層シート73の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる保護層1と電磁波遮断層3との積層体の巻き方向とが同一の方向となっている。これにより、絶縁層2に対する電磁波遮断層3の貼付をより優れた強度で行うことができる。
このような構成の本実施形態のフィルム製造装置100も、前記第1実施形態のフィルム製造装置100と同様にして電磁波シールド用フィルム10を製造することができ、前記第1実施形態のフィルム製造装置100を用いた電磁波シールド用フィルム10の製造方法と同様の効果が得られる。
<第3実施形態>
図8は、図1に示す電磁波シールド用フィルムの製造に用いられる電磁波シールド用フィルム製造装置の第3実施形態の第1のモードを示す斜視図、図9は、図1に示す電磁波シールド用フィルムの製造に用いられる電磁波シールド用フィルム製造装置の第3実施形態の第2のモードを示す斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、図8、9中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」、右側を「右」と言う。
以下、図8、9に示すフィルム製造装置100について説明するが、図4、5に示すフィルム製造装置100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図8、9に示すフィルム製造装置100では、それぞれ、巻取りローラ48に巻き取られる積層シート73および積層シート74の巻取り方向が逆であること以外は、図4、5に示した製造装置100と同様である。
すなわち、第1の工程(第1のモード)では、図8に示すように、巻出しローラ46から巻出される第1の離型シート71の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる第1の離型シート71の巻き方向とが逆の方向となっており、巻出しローラ47から巻出される保護層1の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる保護層1の巻き方向とが同一の方向となっている。これにより、巻取りローラ48に巻き取られる積層シート73に巻グセが生じるのを的確に抑制することができる。
また、第2の工程(第2のモード)では、図9に示すように、巻出しローラ46から巻出される第2の離型シート72の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる第2の離型シート72の巻き方向とが逆の方向となっており、巻出しローラ47から巻出される積層シート73の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる保護層1と電磁波遮断層3との積層体の巻き方向とが同一の方向となっている。これにより、巻取りローラ48に巻き取られる積層シート74に巻グセが生じるのを的確に抑制することができる。
このような構成の本実施形態のフィルム製造装置100も、前記第1実施形態のフィルム製造装置100と同様にして電磁波シールド用フィルム10を製造することができ、前記第1実施形態のフィルム製造装置100を用いた電磁波シールド用フィルム10の製造方法と同様の効果が得られる。
<第4実施形態>
図10は、図1に示す電磁波シールド用フィルムの製造に用いられる電磁波シールド用フィルム製造装置の第4実施形態の第1のモードを示す斜視図、図11は、図1に示す電磁波シールド用フィルムの製造に用いられる電磁波シールド用フィルム製造装置の第4実施形態の第2のモードを示す斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、図10、11中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」、右側を「右」と言う。
以下、図10、11に示すフィルム製造装置100について説明するが、図4、5に示すフィルム製造装置100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図10、11に示すフィルム製造装置100では、それぞれ、巻出しローラ47から巻出される保護層1および積層シート73の巻き方向、ならびに、巻取りローラ48に巻き取られる保護層1および積層シート73の巻き方向が逆であること以外は、図4、5に示した製造装置100と同様である。
すなわち、第1の工程(第1のモード)では、図10に示すように、巻出しローラ46から巻出される第1の離型シート71の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる第1の離型シート71の巻き方向とが逆の方向となっており、巻出しローラ47から巻出される保護層1の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる保護層1の巻き方向とが逆の方向となっている。これにより、電磁波遮断層3に対する保護層1の貼付をより優れた強度で行うことができるとともに、巻取りローラ48に巻き取られる積層シート73に巻グセが生じるのを的確に抑制することができる。
また、第2の工程(第2のモード)では、図11に示すように、巻出しローラ46から巻出される第2の離型シート72の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる第2の離型シート72の巻き方向とが逆の方向となっており、巻出しローラ47から巻出される積層シート73の巻き方向と、巻取りローラ48に巻き取られる保護層1と電磁波遮断層3との積層体の巻き方向とが逆の方向となっている。これにより、絶縁層2に対する電磁波遮断層3の貼付をより優れた強度で行うことができるとともに、巻取りローラ48に巻き取られる積層シート74に巻グセが生じるのを的確に抑制することができる。
このような構成の本実施形態のフィルム製造装置100も、前記第1実施形態のフィルム製造装置100と同様にして電磁波シールド用フィルム10を製造することができ、前記第1実施形態のフィルム製造装置100を用いた電磁波シールド用フィルム10の製造方法と同様の効果が得られる。
なお、第1〜第4実施形態では、図1に示したように、電磁波シールド用フィルム10が備える保護層1が1層で構成される場合について説明したが、かかる構成のものに限定されず、例えば、保護層1は、第1の層、第2の層がこの順で積層された2層の積層体であってもよいし、第1の層、第2の層、第3の層がこの順で積層された3層の積層体であってもよい。
2層の積層体の構成とする場合、第1の層としては、前記第1〜第4実施形態で説明した、保護層1と同様の構成のものを用いることができる。
第2の層は、第1の層と電磁波遮断層3との間に位置して、電磁波シールド用フィルムの製造方法の第1の工程において、電磁波遮断層3に保護層(保護シート)1を貼付する際に、第1の層を電磁波遮断層3に粘着(貼付)させる粘着層として機能するものである。
この第2の層は、特に限定されないが、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリイミド系接着剤およびシアネート系接着剤等の各種接着剤を用いて形成される。
第2の層の厚みT(C)は、特に限定されないが、1μm以上、10μm以下であることが好ましく、3μm以上、8μm以下であることがより好ましい。第2の層の厚みが前記下限値未満である場合、第2の層の構成材料の種類によっては、第2の層による粘着性が十分に発揮されないおそれがある。また、第2の層の厚みが前記上限値を超える場合、電磁波シールド用フィルム10を用いて被覆する基板5の設計によっては、基板5を電磁波シールド用フィルム10で被覆した積層体の軽量化・薄型化が実現されないおそれがある。
さらに、3層の積層体の構成とする場合、第1の層および第3の層としては、前記第1〜第4実施形態で説明した、保護層1と同様の構成のものを用いることができる。
第2の層は、電子部品の被覆方法の貼付工程において、保護層1を押し込み用の保護として用いて基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、第3の層を、凹凸6に対して押し込む(埋め込む)ためのクッション機能を有するものである。また、第2の層は、この押し込む力を、第3の層、さらには、この第3の層を介して絶縁層2および電磁波遮断層3に、均一に作用させる機能を有しており、これにより、電磁波遮断層3と凹凸6との間にボイドを発生させることなく、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6に対して優れた密閉性をもって押し込むことができる。
この第2の層(クッション層)の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロプレン等のαオレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合体成分として有するαオレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂が挙げられ、これらを単独あるいは複数併用してもよい。これらの中でも、αオレフィン系共重合体を用いることが好ましい。具体的には、エチレン等のαオレフィンと、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体(EMMA)、およびそれらの部分イオン架橋物等が挙げられる。αオレフィン系共重合体は、形状追従性に優れ、さらに、第3の層の構成材料と比較して柔軟性に優れることから、かかる構成材料で構成される第2の層に、第3の層を凹凸6に対して押し込む(埋め込む)ためのクッション機能を確実に付与することができる。
第2の層の厚みT(C)は、特に限定されないが、10μm以上、100μm以下であることが好ましく、20μm以上、80μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは30μm以上、60μm以下である。第2の層の厚みが前記下限値未満である場合、第2の層の形状追従性が不足し、熱圧着工程で凹凸6への追従性が不足するというおそれがある。また、第2の層の厚みが前記上限値を超える場合、熱圧着工程において、第2の層からの樹脂のシミ出しが多くなり、圧着装置の熱盤に付着し、作業性が低下するというおそれがある。
また、第2の層の25〜150℃における平均線膨張係数は、500以上[ppm/℃]であるのが好ましく、1000以上[ppm/℃]であるのがより好ましい。第2の層の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム10の加熱時において、第2の層を、第3の層と比較してより優れた伸縮性を有するものと容易にすることができる。そのため、第2の層、さらには電磁波遮断層3および絶縁層2の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
さらに、保護層1は、このような3層の積層体に限らず、第1の層、第2の層および第3の層のうち、第1の層または第3の層が省略された2層の積層体であってもよい。
以上、本発明の電磁波シールド用フィルムの製造方法について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の電磁波シールド用フィルムの製造方法には、1または2以上の任意の工程が追加されていてもよい。
また、電磁波シールド用フィルムは、前記実施形態で説明した構成のものの他、保護層側から、絶縁層が保護層に接触して、絶縁層と電磁波遮断層とがこの順で積層されたものであってもよい。この場合、第1のモード(第1の工程)において、ディスペンサー51から、液状をなす絶縁層形成材料を液滴22として、第1の離型シート71上に、滴下(供給)して液状被膜21を形成することで絶縁層2を得るようにし、さらに、第2のモード(第2の工程)において、ディスペンサー51から、液状をなす電磁波遮断層形成材料を液滴32として、第2の離型シート72上に、滴下(供給)して液状被膜31を形成することで電磁波遮断層3を得るようにすればよい。
また、前記実施形態では、第2の離型シートを積層シートから剥離して得られたものを電磁波シールド用フィルムとして、電子部品の被覆方法に用いることとしたが、これに限らず、保護層と電磁波遮断層と絶縁層と第2の離型シートとがこの順で積層された積層体、すなわち第2の離型シートの剥離が省略されたものを電磁波シールド用フィルムとして用いることもできる。