以下、本発明の電磁波シールド用フィルム、および電子部品搭載基板を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて、詳細に説明する。
本発明の電磁波シールド用フィルムは、基材層と、該基材層に積層された電磁波遮断層とを含み、電磁波遮断層は、導電性材料および磁性吸収材料のうちの少なくとも1種を含む材料で構成され、その表面抵抗値が1×10−3Ω/□以上、1×106Ω/□以下である。
このような電磁波シールド用フィルムによれば、電磁波遮断層の軽量化・薄型化を図ることができるとともに、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで効果的に遮断することができる。
さらに、本発明の電磁波シールド用フィルムは、波長300nm以上、800nm以下における光線透過率が0.01%以上、30%以下である。
この電磁波シールド用フィルムを用いて、基板上に搭載された電子部品を被覆した際に、電磁波シールド用フィルムが、光を吸収、遮断することにより、電磁波遮断層で被覆している内部すなわち電子部品を見えなくすることができる。これにより、例えば、電磁波遮断層で被覆された電子部品搭載基板の流通時における電子部品の秘匿性を担保することができる。
<電磁波シールド用フィルム>
<第1実施形態>
図1は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第1実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
なお、本実施形態では、本発明の電磁波シールド用フィルムを、基板5上の凹凸6を被覆するために用いる場合を、一例に説明する。
図1に示すように、本実施形態において、電磁波シールド用フィルム100は、基材層1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とで構成されている。かかる電磁波シールド用フィルム100は、絶縁層2および電磁波遮断層3が、基材層1の下面(一方の面)側から、絶縁層2が基材層1に接触して、この順で積層されている。
また、基材層1は、第1の層11と、第2の層13と、第3の層12とで構成され、これらが基材層1の上面(他方の面)側から、この順で積層されている。
なお、以下では、基板5上に電子部品4が搭載(載置)されることにより形成される凹凸6を電磁波シールド用フィルム100で被覆する場合について説明する。なお、この凹凸6は、電子部品4の搭載により基板5上に形成される凸部61と凹部62とからなる。なお、基板5上に搭載する電子部品4としては、例えば、フレキシブル回路基板(FPC)上に搭載されているLCDドライバーIC、タッチパネル周辺のIC+コンデンサーまたは電子回路基板(マザーボード)が挙げられる。
<基材層1>
まず、基材層1について説明する。
基材層1は、貼付工程において、電磁波シールド用フィルム100を用いて、基板5上の凹凸6を被覆する際、凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む(埋め込む)ことが行われるが、これら絶縁層2および電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性を向上させるための基材として機能する。また、剥離工程において、凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込んだ状態で、これらから剥離する。
また、この基材層1の150℃における貯蔵弾性率は、2.0E+05〜2.0E+08Paであるのが好ましく、1.0E+06〜1.0E+08Paであるのがより好ましく、3.0E+06〜6.0E+07Paであるのがさらに好ましい。
上述したように、基材層1は、絶縁層2および電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性を向上させるための基材として機能する。この基材層1の加熱時における貯蔵弾性率を、前記範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100を用いて、基板5上の凹凸6を被覆する際に、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応した状態で確実に押し込むことができる。その結果、この凹凸6が設けられた基板5を、電磁波遮断層3をもって確実に被覆することができるため、この電磁波遮断層3による凹凸6が設けられた基板5に対する電磁波シールド(遮断)性が向上することとなる。
さらに、前記貯蔵弾性率を前記範囲内とすることにより、基板5に設けられた凹凸6の段差(凸部の高さ)が500μm以上、特に、1.0〜3.0mmとなるように段差が大きい場合や、前記凹凸6における隣接する凸部61同士の離間距離(ピッチ)が200μm以下、特に、100μm〜150μmとなるように離間距離が小さい場合であったとしても、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応した状態で確実に押し込むことができる。
また、基材層1は、25℃における貯蔵弾性率が1.0E+07〜1.0E+10Paであるのが好ましく、5.0E+08〜5.0E+09Paであるのがより好ましい。このように、常温(室温)時、すなわち25℃における貯蔵弾性率を前記範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100の加熱前には、基材層1を液状ではなく固形状とし、電磁波シールド用フィルム100の加熱時には、基材層1を半固形状(ゲル状)とすることができる。そのため、基材層1(電磁波シールド用フィルム100)の基板5への貼付時には、基材層1を基板5に対してシワ等を生じさせることなく貼付することができる。また、規定のサイズにカットする際の作業性が向上する。さらに、基板5に設けられた凹凸6への押し込み時には、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6が有する凹部62内に、この基材層1をもって確実に押し込むことができる。なお、かかる貯蔵弾性率の特性を有する基材層1は、少なくとも第1の層11および第3の層12が熱可塑性樹脂で構成され、貼付工程における電磁波シールド用フィルム100の加熱後においても、その25℃における貯蔵弾性率が前記範囲内を維持しているのが好ましい。これにより、剥離工程において、絶縁層2から基材層1を容易に剥離させることができる。
さらに、基材層1の120℃における貯蔵弾性率をA[Pa]とし、基材層1の150℃における貯蔵弾性率をB[Pa]としたとき、0.02≦A/B≦1.00なる関係を満足するのが好ましく、0.02≦A/B≦0.50なる関係を満足するのがより好ましい。かかる関係を満足する基材層1は、その加熱時において、加熱時の温度変化に起因する基材層1の貯蔵弾性率の変化の幅が小さいと言うことができる。したがって、加熱時の温度条件をたとえ変化させたとしても、この温度変化に起因する基材層1の貯蔵弾性率の変化の幅を必要最小限にとどめることができるため、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6が有する凹部62内に、この基材層1により確実に押し込むことができる。
なお、各層の25℃、120℃および150℃における貯蔵弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメント社製、「DMS6100」)を用いて、測定すべき各層の貯蔵弾性率を、25〜200℃まで、49mNの一定荷重の引張モードで昇温速度5℃/分、周波数1Hzで測定し、25℃、120℃および150℃での貯蔵弾性率を、それぞれ読み取ることにより求めることができる。
本実施形態では、基材層1は、第1の層11と、第2の層13と、第3の層12とで構成され、これらが基材層1の上面(他方の面)側から、この順で積層されている。上述したように、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応して押し込むことができるように、これら各層11〜13の種類、および厚み等が適宜組み合わされる。
以下、これら各層11〜13について、それぞれ、説明する。
第1の層11は、貼付工程において、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を、例えば、真空加圧式ラミネーター等を用いて押し込む際に、真空加圧式ラミネーター等が有する押圧部との離型性を付与する機能を有する。また、第2の層13側に押圧部からの押圧力を伝播する。
この第1の層(第1離型層)11の構成材料としては、特に限定されず、例えば、シンジオタクチックポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、シリコーンのような樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、シンジオタクチックポリスチレンを用いることが好ましい。このように、ポリスチレンとしてシンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレンを用いることにより、ポリスチレンは、結晶性を備えるため、これに起因して、第1の層11の装置との離型性、さらには耐熱性および形状追従性を向上させることができる。
第1の層11に前記シンジオタクチックポリスチレンを用いる場合、その含有量は、特に制限されないが、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上、95重量%以下であることがより好ましく、80重量%以上、90重量%以下であることがさらに好ましい。シンジオタクチックポリスチレンの含有量が前記下限値未満である場合、第1の層11の離型性が低下するおそれがある。また、シンジオタクチックポリスチレンの含有量が前記上限値を超える場合、第1の層11の形状追従性が不足するおそれがある。
なお、第1の層11は、シンジオタクチックポリスチレンのみで構成されていても構わない。また、第1の層11は、前記シンジオタクチックポリスチレンの他に、さらにスチレン系エラストマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等を含有していてもよい。
第1の層11の厚みT(A)は、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下であることが好ましく、10μm以上、70μm以下であることがより好ましく、20μm以上、50μm以下であることがさらに好ましい。第1の層11の厚みが前記下限値未満である場合、第1の層11が破断し、その離型性が低下するおそれがある。また、第1の層11の厚みが前記上限値を超える場合、基材層1の形状追従性が低下し、電磁波遮断層3および絶縁層2の形状追従性が低下するおそれがある。
また、第1の層11の25〜150℃における平均線膨張係数は、50〜1000[ppm/℃]であるのが好ましく、100〜700[ppm/℃]であるのがより好ましい。第1の層11の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100の加熱時において、第1の層11は、優れた伸縮性を有するため、電磁波遮断層3および絶縁層2の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
なお、各層の平均線膨張係数は、例えば、熱機械分析装置(セイコーインスツルメント社製、「TMASS6100」)を用いて、測定すべき各層の貯蔵弾性率を、25〜200℃まで、49mNの一定荷重の引張モードで昇温速度5℃/分で測定し、25℃〜150℃での平均線膨張係数を、それぞれ読み取ることにより求めることができる。
さらに、第1の層11の表面張力は、20〜40[mN/m]であるのが好ましく、25〜35[mN/m]であるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を有する第1の層11は優れた離型性を備えると言うことができ、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、押圧部から第1の層11を剥離させることができる。
第3の層12は、貼付工程において、基板5上の凹凸6に対する絶縁層2および電磁波遮断層3の押し込みを、真空加圧式ラミネーター等を用いて実施した後に、剥離工程において、基材層1を絶縁層2から剥離する際に、基材層1に剥離性を付与する機能を有する。また、基板5上の凹凸形状に応じて、第3の層12が追従する追従性の機能を有し、かつ、絶縁層2側に、押圧部からの押圧力を伝播する機能を併せ持つ。
この第3の層(第2離型層)12の構成材料としては、特に限定されず、例えば、シンジオタクチックポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、シリコーンのような樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、シンジオタクチックポリスチレンを用いることが好ましい。このように、ポリスチレンとしてシンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレンを用いることにより、ポリスチレンは、結晶性を備えるため、これに起因して、第3の層12の絶縁層2との離型性、さらには耐熱性および形状追従性を向上させることができる。
第3の層12における前記シンジオタクチックポリスチレンの含有量は、特に制限されず、シンジオタクチックポリスチレンのみで構成されていても構わないが、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上、95重量%以下であることがより好ましく、80重量%以上、90重量%以下であることがさらに好ましい。シンジオタクチックポリスチレンの含有量が前記下限値未満である場合、第3の層12の離型性が低下するおそれがある。また、シンジオタクチックポリスチレンの含有量が前記上限値を超える場合、第3の層12の形状追従性が不足するおそれがある。
なお、第3の層12は、前記シンジオタクチックポリスチレンの他に、さらにスチレン系エラストマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等を含有していてもよい。また、第3の層12と、前記第1の層11とを構成する樹脂は、同じであっても異なっていても構わない。
第3の層12の厚みT(B)は、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下であることが好ましく、10μm以上、70μm以下であることがより好ましく、20μm以上、50μm以下であることがさらに好ましい。第3の層12の厚みが前記下限値未満である場合、耐熱性が不足し、熱圧着工程で基材層の耐熱性が不足し、変形が発生し、電磁波遮断層および絶縁層が変形するおそれがある。また、第3の層12の厚みが前記上限値を超える場合、電磁波シールド用フィルム全体の総厚みが厚くなり、カット等の作業性が低下するおそれがあり、また、コスト面でも経済的ではない。
なお、第3の層12と、第1の層11の厚みは、同じであっても異なっていても構わない。
また、第3の層12の25〜150℃における平均線膨張係数は、50〜1000[ppm/℃]であるのが好ましく、100〜700[ppm/℃]であるのがより好ましい。第3の層12の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100の加熱時において、第3の層12は、優れた伸縮性を有するため、第3の層12、さらには電磁波遮断層3および絶縁層2の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
さらに、第3の層12の表面張力は、20〜40[mN/m]であるのが好ましく、25〜35[mN/m]であるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を有する第3の層12は優れた離型性を備えると言うことができ、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、基材層1を絶縁層2から剥離する際に、第3の層12と絶縁層2との界面において、基材層1を確実に剥離させることができる。
第2の層13は、貼付工程において、基材層1を押し込み用の基材として用いて基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、第3の層12を、凹凸6に対して押し込む(埋め込む)ためのクッション機能を有する。また、第2の層13は、この押し込む力を、第3の層12、さらには、この第3の層12を介して絶縁層2および電磁波遮断層3に、均一に作用させる機能を有しており、これにより、電磁波遮断層3と凹凸6との間にボイドを発生させることなく、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6に対して優れた密閉性をもって押し込むことができる。
この第2の層(クッション層)13の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロプレン等のαオレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合体成分として有するαオレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂が挙げられ、これらを単独あるいは複数併用してもよい。これらの中でも、αオレフィン系共重合体を用いることが好ましい。具体的には、エチレン等のαオレフィンと、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体(EMMA)、およびそれらの部分イオン架橋物等が挙げられる。αオレフィン系共重合体は、形状追従性に優れ、さらに、第3の層12の構成材料と比較して柔軟性に優れることから、かかる構成材料で構成される第2の層13に、第3の層12を凹凸6に対して押し込む(埋め込む)ためのクッション機能を確実に付与することができる。
第2の層13の厚みT(C)は、特に限定されないが、10μm以上、100μm以下であることが好ましく、20μm以上、80μm以下であることがより好ましく、30μm以上、60μm以下であることがさらに好ましい。第2の層13の厚みが前記下限値未満である場合、第2の層13の形状追従性が不足し、熱圧着工程で凹凸6への追従性が不足するおそれがある。また、第2の層13の厚みが前記上限値を超える場合、熱圧着工程において、第2の層13からの樹脂のシミ出しが多くなり、圧着装置の熱盤に付着し、作業性が低下するおそれがある。
また、第2の層13の25〜150℃における平均線膨張係数は、500以上[ppm/℃]であるのが好ましく、1000以上[ppm/℃]であるのがより好ましい。第2の層13の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100の加熱時において、第2の層13を、第3の層12と比較してより優れた伸縮性を有する層に容易にすることができる。そのため、第2の層13、さらには電磁波遮断層3および絶縁層2の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
なお、各層11〜13の平均線膨張係数を、それぞれ、前述した範囲内において適宜設定することで、基材層1の150℃における貯蔵弾性率を2.0E+05〜2.0E+08Paの範囲内に容易に設定することができる。
また、第1の層11の厚みT(A)と、第3の層12の厚みT(B)と、第2の層13の厚みT(C)としたとき、T(C)/(T(A)+T(B))の値は、特に限定されないが、例えば、次の条件を満たすことが好ましい。すなわち、T(C)/(T(A)+T(B))の値は、0.05よりも大きく、10よりも小さいのが好ましく、0.14よりも大きく、4よりも小さいのがより好ましく、0.3よりも大きく、1.5よりも小さいのがさらに好ましい。
T(C)/(T(A)+T(B))の値が、上記範囲内であれば、形状追従性がより向上する。
基材層1の全体の厚みT(F)は、特に限定されないが、20μm以上、300μm以下であることが好ましく、40μm以上、220μm以下であることがより好ましく、70μm以上、160μm以下であることがさらに好ましい。基材層1の全体の厚みが前記下限値未満である場合、第1の層11が破断し、基材層1の離型性が低下するというおそれがある。また、基材層1の全体の厚みが前記上限値を超える場合、基材層1の形状追従性が低下し、電磁波遮断層3および絶縁層2の形状追従性が低下するというおそれがある。
<絶縁層2>
次に、絶縁層2について説明する。
絶縁層2は、本実施形態では、基材層1(第3の層12)に接触して設けられ、基材層1側から絶縁層2、電磁波遮断層3の順で積層されている。このように積層された絶縁層2および電磁波遮断層3を備える電磁波シールド用フィルム100を用いて基板5上の凹凸6を被覆することで、基板5および電子部品4に電磁波遮断層3が接触し、基板5側から電磁波遮断層3、絶縁層2の順で被覆することとなる。
このように、本実施形態では、絶縁層2は、基板5および電子部品4を、電磁波遮断層3を介して被覆し、これにより、基板5、電子部品4および電磁波遮断層3を、絶縁層2を介して基板5と反対側に位置する他の部材(電子部品等)から絶縁する。
この絶縁層2としては、例えば、熱硬化性を有する絶縁樹脂または熱可塑性を有する絶縁樹脂(絶縁フィルム)が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性を有する絶縁樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性を有する絶縁樹脂は、屈曲性に優れたフィルムであることから、貼付工程において、基材層1を押し込み用の基材として用いて基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、絶縁層2を、凹凸6の形状に対応して確実に追従させることができる。また、熱可塑性を有する絶縁樹脂は、その軟化点温度に加熱すると、接着対象の基板から再剥離することができるので、基板の修理の際には、特に有用である。
熱可塑性を有する絶縁樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリエステル、α−オレフィン、酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、エチレン酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル、ポリアミド、セルロースが挙げられる。これらの中でも基板との密着性、屈曲性、耐薬品性に優れるという理由から熱可塑性ポリエステル、α−オレフィンを用いることが好ましい。
さらに、熱可塑性を有する絶縁樹脂には、耐熱性や耐屈曲性等の性能を損なわない範囲で、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等を含有させることができる。また、熱可塑性を有する絶縁樹脂には、後述する導電性接着剤層の場合と同様に、接着性、耐ハンダリフロー性を劣化させない範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等を添加してもよい。
絶縁層2の厚みT(D)は、特に限定されないが、3μm以上、50μm以下であることが好ましく、4μm以上、30μm以下であることがより好ましく、5μm以上、20μm以下であることがさらに好ましい。絶縁層2の厚みが前記下限値未満である場合、耐ハゼ折り性が不足し、凹凸6への熱圧着後に折り曲げ部にてクラックが発生したり、フィルム強度が低下し、導電性接着剤層の絶縁性支持体としての役割を担うことが難しい。前記上限値を超える場合、形状追従性が不足するおそれがある。すなわち、絶縁層2の厚みT(D)を前記範囲内に設定することにより、絶縁層2の屈曲性がより向上する。これにより、貼付工程において、基材層1を押し込み用の基材として用いて基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、絶縁層2を、凹凸6の形状に対応してより確実に追従させることができる。
また、絶縁層2の25〜150℃における平均線膨張係数は、50〜1000[ppm/℃]であるのが好ましく、100〜700[ppm/℃]であるのがより好ましい。絶縁層2の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100の加熱時において、絶縁層2の伸縮性をより向上させることができる。これにより、絶縁層2、さらには電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
なお、この絶縁層2は、図1、2で示したように、1層で構成されていてもよいし、上述した絶縁フィルムのうち異なる種類のフィルム同士を積層させた2層以上の積層体であってもよい。
<電磁波遮断層3>
次に、電磁波遮断層(遮断層)3について説明する。
電磁波遮断層3は、基板5上に設けられた電子部品4と、この電磁波遮断層3を介して、基板5(電子部品4)と反対側に位置する他の電子部品等とを、これら少なくとも一方から生じる電磁波を遮断(シールド)する機能を有する。
ここで、一般的に、電磁波を遮断する機能を発揮する電磁波遮断層としては、電磁波遮断層に入射した電磁波を反射することにより遮断(遮蔽)する反射層と、電磁波遮断層に入射した電磁波を吸収することにより遮断(遮蔽)する吸収層とが知られている。
反射層では、入射した電磁波を反射するため、反射された電磁波が電磁波遮断層で被覆されていない他の部材等に対して誤作動等の悪影響をおよぼす。これに対して、吸収層では、吸収層に入射した電磁波を吸収し、熱エネルギーに変換することで遮断して、この吸収により電磁波を消滅させる。そのため、反射層と吸収層とが、ほぼ同一の電磁波シールド性を有している場合には、反射層における上述した悪影響を確実に防止することができるという観点から、電磁波遮断層を吸収層で構成するのが好ましい。
そこで、本発明者は、電磁波を遮断する電磁波遮断層として知られる導電性材料または磁性吸収材料を含有する電磁波遮断層に着目し、かかる電磁波遮断層について、鋭意検討した結果、導電性材料または磁性吸収材料を含有する電磁波遮断層の表面抵抗値が、電磁波遮断層が電磁波を遮断するメカニズムに関与するパラメーターであることが判ってきた。
すなわち、電磁波遮断層の表面抵抗値が、電磁波を反射することにより遮断する反射層としての機能を電磁波遮断層が優位に発揮するか、または、電磁波を吸収することにより遮断する吸収層としての機能を電磁波遮断層が優位に発揮するかを左右するパラメーターであることが判ってきた。そして、本発明者は、この電磁波遮断層の表面抵抗値についてさらに検討を行った結果、電磁波遮断層の表面抵抗値を低くし過ぎる(例えば、1×10−3Ω/□未満)と、電磁波遮断層が反射層としての機能を際立てて発揮することを見出した。これに対して、かかる表面抵抗値を適切な範囲、具体的には電磁波遮断層の表面抵抗値を1×10−3Ω/□以上、1×106Ω/□以下に設定することにより、反射層としての機能を減衰させて、吸収層としての機能を的確に発揮させることができることを見出した。さらに、この場合、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで、電磁波の吸収により電磁波を効果的に遮断し得ることを見出した。
なお、電磁波遮断層3の表面抵抗値は、1×10−3Ω/□以上、1×106Ω/□以下であればよいが、10Ω/□以上、5×105Ω/□以下であるのが好ましく、150Ω/□以上、1×104Ω/□以下であるのがより好ましい。これにより、より高周波帯域の電磁波であってもより効果的に遮断することができる。
電磁波遮断層3を構成する導電性材料および磁性吸収材料は、特に限定されないが、導電性材料としては、導電性高分子、炭素同素体、銀等の金属材料等が挙げられ、磁性吸収材料としては、軟磁性金属、フェライト等が挙げられる。
なお、導電性高分子としては、特に限定されず、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)、PEDOT/PSS(poly−ethylenedioxythiophene/poly−styrenesulfonate)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、PEDOT/PSSまたはポリアニリンであるのが好ましい。これらによれば、その表面抵抗値を前記範囲内に設定した際に、たとえ電磁波遮断層3の軽量化・薄型化を図ったとしても、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波までより確実に遮断することができる。
なお、導電性高分子として、PEDOT/PSSを用いる場合、その粒子径の平均値(平均粒径)は、10nm以上、100nm以下であるのが好ましく、30nm以上、80nm以下であるのがより好ましい。
また、導電性高分子として、ポリアニリンを用いる場合、その粒子径の平均値(平均粒径)は、0.5μm以上、10μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上、5.0μm以下であるのがより好ましい。
PEDOT/PSSおよびポリアニリンの粒子径を、それぞれ、前記範囲内に設定することにより、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで確実に遮断することができるとともに、形成される電磁波遮断層3をより均一な膜厚を持たせることができる。
なお、導電性高分子を主材料として含有する電磁波遮断層3は、導電性高分子で構成される単独層であってもよいが、導電性高分子の他にその他の材料を含有する混合層であってもよい。また、その他の材料としては、特に限定されないが、例えば、増感剤、m−クレゾール、エチレングリコール等が挙げられる。
また、電磁波遮断層3を混合層とした際に、電磁波遮断層3における導電性高分子の含有量は、50wt%以上、100wt%以下であるのが好ましく、80wt%以上、100wt%以下であるのがより好ましい。
また、炭素同素体としては、例えば、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのようなカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、CNナノチューブ、CNナノファイバー、BCNナノチューブ、BCNナノファイバー、グラフェンや、カーボンマイクロコイル、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノウォールのような炭素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、カーボンナノチューブ(特に、多層カーボンナノチューブ)であるのが好ましい。
なお、電磁波遮断層3の構成材料として、炭素同素体を用いる場合、電磁波遮断層3は、炭素同素体で構成される単独層であってもよいが、炭素同素体と樹脂材料とで構成される混合層であるのが好ましい。これにより、電磁波遮断層3の形状安定性を向上させることができる。
このような樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。さらに、電磁波遮断層3を混合層とした際に、電磁波遮断層3における炭素同素体の含有量は、5wt%以上、30wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上、20wt%以下であるのがより好ましい。
さらに、磁性吸収材料としては、例えば、鉄、ケイ素鋼、磁性ステンレス(Fe−Cr−Al−Si合金)、センダスト(Fe−Si−Al合金)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、ケイ素銅(Fe−Cu−Si合金)、Fe−Si合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)合金のような軟磁性金属、フェライト等が挙げられる。
電磁波遮断層3の厚みTは、特に限定されないが、1μm以上、100μm以下であることが好ましく、2μm以上、80μm以下であることがより好ましく、3μm以上、50μm以下であることがさらに好ましい。電磁波遮断層3の厚みが前記下限値未満である場合、電磁波遮断層3の構成材料等によっては、基板搭載部品の端部で破断するおそれがある。また、電磁波遮断層3の厚みが前記上限値を超える場合、電磁波遮断層3の構成材料等によっては形状追従性が不足するおそれがある。また、かかる範囲内の厚みTとしても、優れた電磁波シールド性を発揮させることができるため、電磁波遮断層3の厚みTの薄膜化を実現することができる。結果として、基板5上に絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆された電子部品4が搭載された電子部品搭載基板の軽量化を実現することができる。
以上のような電磁波遮断層3は、マイクロストリップライン法(MSL法)を用いて測定した、周波数0.2〜1GHzにおける、電磁波を遮断(シールド)する電磁波シールド性(吸収性)が3dB以上であるのが好ましく、5dB以上であるのがより好ましく、7dB以上であるのがさらに好ましい。さらに、周波数2〜3GHzにおける、電磁波シールド性が5dB以上であるのが好ましく、10dB以上であるのがより好ましく、20dB以上であるのがさらに好ましい。ここで、MSL法では、電磁波を遮断する電磁波シールド性は、以下で説明する測定方法の特性から、主として電磁波を吸収することにより遮断する吸収性(吸収能)を表す値として測定される。したがって、前記範囲内の電磁波シールド性(吸収性)を有する電磁波遮断層3であれば、電磁波遮断層3に入射した電磁波を吸収することにより遮断(遮蔽)することで優れた電磁波シールド性を発揮する電磁波遮断層(吸収層)3と言うことができ、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで確実に遮断することができる。
なお、MSL法を用いた測定は、例えば、IEC規格62333−2に準拠して、50Ωのインピーダンスを有するマイクロストリップラインと、ネットワークアナライザーとを用いて、反射成分S11と透過成分S21を測定することにより行われ、電磁波シールド性(吸収性)は、下記式(1)および下記式(2)を用いることにより求めることができる。
ロス率(P(loss)/P(in))=1−(S11 2+S21 2)/1 (1)
電磁波シールド性(伝送減衰率) =
−10・log[10^(S21/10)/{1−10^(S11/10)}](2)
さらに、電磁波遮断層3は、関西電子工業振興センターで開発されたKEC法を用いて測定した周波数0.2〜1GHzにおける、電磁波を遮断(シールド)する電磁波シールド性(吸収性+反射性)が10dB以上であるのが好ましく、15dB以上であるのがより好ましく、20dB以上であるのがさらに好ましい。ここで、KEC法では、電磁波を遮断する電磁波シールド性は、以下で説明する測定方法の特性から、電磁波を吸収することにより遮断する吸収性(吸収能)と電磁波を反射することにより遮断する反射性(反射能)とが加算された値として測定される。したがって、MSL法を用いて測定された電磁波シールド性(吸収性)が前記範囲内であり、かつ、KEC法を用いて測定された電磁波シールド性(吸収性+反射性)が前記範囲内であれば、電磁波遮断層3に入射した電磁波を吸収および反射することにより遮断(遮蔽)することで優れた電磁波シールド性を発揮する電磁波遮断層3と言うことができ、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで確実に遮断することができる。
なお、KEC法は、近傍界で発生する電磁波のシールド効果を電界と磁界とに分けて評価する方法である。この方法を用いた測定は、送信アンテナ(送信用の治具)から送信された電磁波を、シート状をなす電磁波遮断層3(測定試料)を介して、受信アンテナ(受信用の治具)で受信することで実施することができ、かかるKEC法では、受信アンテナにおいて、電磁波遮断層3を通過(透過)した電磁波が測定される。すなわち、送信された電磁波(信号)が電磁波遮断層3により受信アンテナ側でどれだけ減衰したかが測定されることから、電磁波を遮断(シールド)する電磁波シールド性は、電磁波を反射する反射性と電磁波を吸収する吸収性との双方を合算した状態で求められる。
また、電磁波遮断層3は、その150℃における貯蔵弾性率が1.0E+05〜1.0E+09Paであるのが好ましく、5.0E+05〜5.0E+08Paであるのがより好ましい。前記貯蔵弾性率をかかる範囲内に設定することにより、貼付工程において、電磁波シールド用フィルム100の加熱の後、基材層1からの押圧力により、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込むことで、この凹凸6を被覆する際に、前記基材層1からの押圧力に応じて、電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応して変形させることができる。すなわち、電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性を向上させることができる。
また、本発明の電磁波シールド用フィルム100は、波長300nm以上、800nm以下における光線透過率が0.01%以上、30%以下である。
この電磁波シールド用フィルム100を用いて、基板5上に搭載された電子部品4を被覆した際に、電磁波シールド用フィルム100が、光を吸収、遮断することにより、電磁波遮断層3で被覆している内部すなわち電子部品4を見えなくすることができる。これにより、例えば、電磁波遮断層3で被覆された電子部品搭載基板の流通時における電子部品4の秘匿性を担保することができる。
なお、電磁波シールド用フィルム100の波長300nm以上、800nm以下における光線透過率は、0.01%以上、30%以下であるが、0.01%以上、10%以下であることがより好ましい。これにより、電磁波遮断層3で被覆された電子部品搭載基板の流通時における電子部品4の秘匿性をより確実に担保することができる。
なお、前記光線透過率は、例えば、紫外可視分光光度計により求めることができる。
さらに、電磁波シールド用フィルム100は、基板5上に電子部品4を搭載することで形成された凹凸6に対して、温度150℃、圧力2MPa、時間5分の条件で熱圧着した際の形状追従性が、500μm以上であることが好ましく、800μm以上であることがより好ましく、1000μm以上であることがさらに好ましい。すなわち、凸部61の上面と凹部62の上面との高さの差である凹凸6の高さが500μm以上の凹凸6を電磁波シールド用フィルム100で被覆できるのが好ましく、800μm以上の凹凸6を被覆できるのがより好ましく、1000μm以上の凹凸6を被覆できるのがさらに好ましい。このように高さが高い(段差が大きい)凹凸6であっても被覆できる電磁波シールド用フィルム100を、優れた形状追従性を有すると言うことができ、絶縁層2および電磁波遮断層3により、凹凸6に対して優れた埋め込み率をもって被覆することができる。
なお、前記形状追従性は、以下のようにして求めることができる。
すなわち、まず、縦100mm×横100mm×高さ(厚み)2mmのプリント配線板(マザーボード)に、幅0.2mm、各必要段差の溝を、0.2mm間隔で碁盤目状に形成することにより、プリント配線基板を得る。その後、電磁波シールド用フィルムを、真空加圧式ラミネーターを用いて、150℃×2MPa×5分間の条件で、プリント配線板に圧着させ、プリント配線板に貼り付ける。貼付後、電磁波シールド用フィルムから基材層を剥離し、プリント配線板に貼り付けた遮断層および絶縁層とプリント配線板上の溝との間に空隙があるかどうかを判断する。なお、空隙があるかどうかは、マイクロスコープや顕微鏡で観察することにより評価される。
<電子部品の被覆方法>
次に、電子部品の被覆方法について説明する。
本実施形態の電子部品の被覆方法は、前記基板上の凹凸に、前記電磁波シールド用フィルムを前記電磁波遮断層または前記絶縁層と電子部品とが接着するように貼付する貼付工程と、前記貼付工程の後、前記基材層を剥離する剥離工程とを有する。
図2は、図1に示す電磁波シールド用フィルムを用いて電子部品の被覆方法を説明するための縦断面図である。
以下、電子部品の被覆方法の各工程について、順次説明する。
(貼付工程)
前記貼付工程とは、例えば、図2(a)に示すように、基板5上に設けられた凹凸6に、電磁波シールド用フィルム100を貼付する工程である。
貼付する方法としては、特に限定されないが、例えば、真空圧空成形が挙げられる。
真空圧空成形とは、例えば、真空加圧式ラミネーターを用いて、電磁波シールド用フィルム100で基板5上の凹凸6を被覆する方法である。かかる方法では、まず、真空雰囲気下として得る閉空間内に、基板5の凹凸6が形成されている側の面と、電磁波シールド用フィルム100の絶縁層2側の面とが対向するように、基板5と電磁波シールド用フィルム100とを重ね合わせた状態でセットする。その後、これらを加熱下において、電磁波シールド用フィルム100側から均一に電磁波シールド用フィルム100と基板5とが互いに接近するように、前記閉空間を真空雰囲気下にし、その後加圧することにより実施される。
この際、基材層1が上述したような構成であることから、基材層1は、真空圧空成形の加熱時に、凹凸6に対して優れた形状追従性を発揮する。
したがって、この状態で、電磁波シールド用フィルム100側から均一に加圧しつつ、前記閉空間を真空雰囲気下とすることで、基材層1が凹凸6の形状に対応して変形し、さらに、この変形に併せて、基材層1よりも基板5側に位置する、絶縁層2および電磁波遮断層3が凹凸6の形状に対応して変形する。これにより、凹凸6の形状に対応して絶縁層2および電磁波遮断層3が基板5側に押し込まれた状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6が被覆される。
このような貼付工程において、貼付する温度は、特に限定されないが、100℃以上、200℃以下であることが好ましく、120℃以上、180℃以下であることがより好ましい。
また、貼付する圧力は、特に限定されないが、0.5MPa以上、5.0MPa以下であることが好ましく、1.0MPa以上、3.0MPa以下であることがより好ましい。
さらに、貼付する時間は、特に限定されないが、1分以上、30分以下であることが好ましく、5分以上、15分以下であることがより好ましい。
貼付工程における条件を上記範囲内に設定することにより、基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込んだ状態で、これら絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を確実に被覆することができる。
(剥離工程)
前記剥離工程とは、例えば、図2(b)に示すように、前記貼付工程の後、基材層1を電磁波シールド用フィルム100から剥離する工程である。
この剥離工程により、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100における基材層1と絶縁層2との界面において、剥離が生じ、その結果、絶縁層2から基材層1が剥離される。これにより、絶縁層2から基材層1を剥離した状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6が被覆される。
なお、このような電磁波シールド用フィルム100を用いた絶縁層2および電磁波遮断層3による凹凸6の被覆では、図2に示したように、貼付する電磁波シールド用フィルム100の形状が対応して、凹凸6を絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆することができる。そのため、被覆すべき凹凸6の形状に対応して電磁波シールド用フィルム100の形状を適宜設定することにより、被覆すべき凹凸6を選択的に絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆することができる。すなわち、絶縁層2および電磁波遮断層3による凹凸6の選択的な電磁波シールドが可能となる。
また、基材層1を剥離する方法としては、特に限定されないが、真空圧空成形(上記の貼付工程)後の電磁波シールド用フィルム100が高温の状態では、基材層1が伸びてしまい、樹脂残り等が発生し、剥離作業性が低下する可能性があるので、手作業による剥離が挙げられる。
この手作業による剥離では、例えば、まず、基材層1の一方の端部を把持し、この把持した端部から基材層1を絶縁層2から引き剥がし、次いで、この端部から中央部へ、さらには他方の端部へと順次基材層1を引き剥がすことにより、絶縁層2から基材層1が剥離される。
剥離する温度は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。
以上のような工程を経ることにより、絶縁層2から基材層1を剥離した状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を被覆することができる。
なお、本実施形態では、図1に示したように、上面側から、基材層1(第1の層11、第2の層13、第3の層12)、絶縁層2、電磁波遮断層3がこの順で積層された電磁波シールド用フィルム100を用いて、絶縁層2および電磁波遮断層3で、基板5上の凹凸6を被覆する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。電磁波シールド用フィルム100の層構成としては、例えば、後述するような第4〜第7実施形態のような層構成をなしている電磁波シールド用フィルム100であってもよい。
<第2実施形態>
以下、本発明の電磁波シールド用フィルムの第2実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、図1に示す第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の電磁波シールド用フィルム100は、電磁波遮断層3の周波数1GHzにおける複素誘電率(ε)の虚数部(ε”)が、30以上であること以外は、前述した第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
本発明者の検討により、電磁波遮断層における複素誘電率(ε)の虚数部(ε”)が、吸収層に入射した電磁波の吸収に対して相関性を示すパラメーターであることが判ってきた。そして、本発明者は、この複素誘電率(ε)の虚数部(ε”)についてさらに検討を行った結果、電磁波遮断層3の周波数1GHzにおける複素誘電率(ε)の虚数部(ε”)を30以上に設定することにより、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで、電磁波の吸収により電磁波をより効果的に遮断し得ることを見出した。
なお、本実施形態において、虚数部(ε”)は、30以上であればよいが、100以上、50000以下であるのが好ましく、200以上、40000以下であるのがより好ましい。これにより、より高周波帯域の電磁波であっても、より効果的に遮断することができる。
また、電磁波遮断層3の複素誘電率(ε)は、その誘電正接(tanδ)が2以上、100以下であるのが好ましく、5以上、30以下であるのがより好ましい。これにより、高周波帯域の電磁波であってもより効果的に遮断することができる。換言すれば、tanδの値が前記範囲内となっている電磁波遮断層3は、高周波帯域の電磁波であってもより確実に吸収する吸収層であると言うことができる。
なお、電磁波遮断層の複素誘電率(ε)は、例えば、JIS C2526に準拠して、空洞共振器法を用いて求めることができる。空洞共振器法によれば、優れた精度でかつ短時間に電磁波遮断層の複素誘電率(ε)を測定することができる。
本実施形態では、電磁波遮断層3の構成材料が、前述した第1実施形態の電磁波遮断層3の構成材料として挙げた材料のうち、周波数1GHzにおける複素誘電率(ε)の虚数部(ε”)が30以上となる材料であれば、如何なる材料であってもよい。特に、電磁波遮断層3の構成材料は、導電性高分子および炭素同素体のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。かかる構成材料で電磁波遮断層3を構成することにより、その膜厚(厚み)を比較的薄く設定したとしても、特に優れた吸収性を発揮する。これにより、電磁波遮断層3の周波数1GHzにおける複素誘電率(ε)の虚数部(ε”)の値を前記範囲内に設定することができる。また、その層中に含まれる材料の粒子径を小さくしたり、その添加量も少なくできることから、その膜厚を比較的容易に薄く設定することができ、また軽量化も可能である。
なお、導電性高分子としては、前述した第1実施形態における導電性高分子を用いることができるが、ポリアニリンまたはPEDOT/PSSであるのが好ましい。これらによれば、電磁波遮断層3の周波数1GHzにおける複素誘電率(ε)の虚数部(ε”)の値を前記範囲内により容易に設定することができる。
また、導電性高分子としてPEDOT/PSSを用いる場合、電磁波遮断層3の表面抵抗値は、1×104Ω/□以上、1×106Ω/□以下であるのが好ましく、5×104Ω/□以上、5×105Ω/□以下であるのがより好ましい。これにより、前記虚数部(ε”)の値を前記範囲内にさらに容易に設定することができる。
なお、PEDOT/PSSを含有する電磁波遮断層3の表面抵抗値は、PEDOTおよびPSSの重量平均分子量、ならびにPEDOTとPSSとの配合比率等を適宜設定することにより調整することができる。
さらに、導電性高分子としてポリアニリンを用いる場合、電磁波遮断層3中に含まれるポリアニリンとして、分子量が大きいポリアニリンを選択するのが好ましい。これにより、前記虚数部(ε”)の値を前記範囲内にさらに容易に設定することができる。
また、炭素同素体としては、前述した第1実施形態における炭素同素体を用いることができるが、カーボンナノチューブ(特に、多層カーボンナノチューブ)であるのが好ましい。これらによれば、電磁波遮断層3の周波数1GHzにおける複素誘電率(ε)の虚数部(ε”)の値を前記範囲内により容易に設定することができる。
また、炭素同素体として多層カーボンナノチューブを用いる場合、多層カーボンナノチューブの比表面積は、20m2/g以上であるのが好ましく、200m2/g以上、300m2/g以下であるのがより好ましい。これにより、前記虚数部(ε”)の値を前記範囲内にさらに容易に設定することができる。
なお、電磁波遮断層3の構成材料として、炭素同素体を用いる場合、電磁波遮断層3は、炭素同素体で構成される単独層であってもよいが、炭素同素体と樹脂材料とで構成される混合層であるのが好ましい。これにより、電磁波遮断層3の形状安定性を向上させることができる。
このような樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。さらに、電磁波遮断層3を混合層とした際に、混合層における炭素同素体の含有量は、5wt%以上、30wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上、20wt%以下であるのがより好ましい。
さらに、磁性吸収材料としては、前述した第1実施形態における磁性吸収材料を用いることができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第3実施形態>
以下、本発明の電磁波シールド用フィルムの第3実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、図1に示す第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の電磁波シールド用フィルム100は、電磁波遮断層3の構成材料として、アスペクト比が10以上、4000以下であるカーボンナノチューブを含有している以外は、前述した第1および第2実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
本発明者は、吸収層としての機能を発揮する電磁波遮断層のうち、カーボンナノチューブ(CNT)を含有する電磁波遮断層に着目し、かかる電磁波遮断層について、鋭意検討した。その結果、主材料であるカーボンナノチューブのアスペクト比(長さ/粒径)が、吸収層に入射した電磁波の吸収に対して相関性を示すパラメーターであることが判ってきた。そして、本発明者は、このカーボンナノチューブのアスペクト比についてさらに検討を行った結果、このアスペクト比を10以上、4000以下に設定することにより、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで、電磁波の吸収により電磁波をより効果的に遮断し得ることを見出した。
なお、本実施形態において、カーボンナノチューブのアスペクト比は、10以上、4000以下であればよいが、50以上、1000以下であるのが好ましく、100以上、500以下であるのがより好ましい。これにより、より高周波帯域の電磁波であってもより効果的に遮断することができる。
このようなカーボンナノチューブの粒径は、その平均値(平均粒径)が1nm以上、100nm以下であるのが好ましく、5nm以上、70nm以下であるのがより好ましい。
また、カーボンナノチューブの長さは、その平均値(平均長さ)が0.1μm以上、100μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上、50μm以下であるのがより好ましい。
カーボンナノチューブの粒径および長さを前記範囲内に設定することにより、カーボンナノチューブのアスペクト比を容易に前記範囲内に設定することができる。
カーボンナノチューブの比表面積は、その平均値(比表面積)が20m2/g以上であるのが好ましく、200m2/g以上、300m2/g以下であるのがより好ましい。これにより、高周波帯域の電磁波であってもより効果的に遮断することができる。換言すれば、比表面積の値が前記範囲内となっているカーボンナノチューブを含有する電磁波遮断層3は、高周波帯域の電磁波であってもより確実に吸収する吸収層であると言うことができる。
このようなカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのうちのいずれであってもよいが、多層カーボンナノチューブであるのが好ましい。電磁波遮断層3が、主として多層カーボンナノチューブで構成される場合、多層カーボンナノチューブのアスペクト比を前記範囲内に設定した際に、たとえ電磁波遮断層3の軽量化・薄型化を図ったとしても、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波までより確実に遮断することができる。
また、カーボンナノチューブを含有する電磁波遮断層3は、カーボンナノチューブで構成される単独層であってもよいが、カーボンナノチューブと樹脂材料とで構成される混合層であるのが好ましい。このような混合層で電磁波遮断層3を構成することにより、電磁波遮断層3の形状安定性を向上させることができる。
このような樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられるが、中でも、ポリウレタン樹脂であるのが好ましい。これにより、電磁波遮断層3の形状安定性を向上させつつ、電磁波遮断層3中にカーボンナノチューブを均一に分散させて、層中における電磁波遮断層3としての機能の均質化(均一化)を図ることができる。
また、電磁波遮断層3を混合層とした際に、混合層におけるカーボンナノチューブの含有量は、5wt%以上、30wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上、20wt%以下であるのがより好ましい。これにより、電磁波遮断層3としての機能を確実に発揮させつつ、電磁波遮断層3の形状安定性を向上させることができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1および第2実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1および第2実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第4実施形態>
以下、本発明の電磁波シールド用フィルムの第4実施形態について説明する。
図3は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第4実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図3に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図3に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第1の層11の形成が省略されていること以外は、前述した第1〜第3実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第2の層13、第3の層12からなる基材層1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、貼付工程において、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に用いられる真空加圧式ラミネーター等が有する押圧部が、第2の層13との離型性を備えている。これにより、第1の層11の形成が省略される。
この場合、前記押圧部の第2の層13と接触する接触面の離型性の程度は、前記接触面の表面張力で表すことができる。かかる前記接触面の表面張力は、20〜40mN/mであるのが好ましく、25〜35mN/mであるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を前記接触面が有することにより、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、第2の層13から押圧部を確実に剥離させることができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第3実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第5実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第5実施形態について説明する。
図4は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第5実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図4に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図4に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第3の層12の形成が省略されていること以外は、前述した第1〜第3実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第1の層11、第2の層13からなる基材層1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、剥離工程において、基材層1を絶縁層2から剥離する際に、第2の層13と絶縁層2との界面において基材層1が絶縁層2から剥離される。このような剥離では、絶縁層2が第2の層13との離型性を備えている。これにより、第3の層12の形成が省略される。
この場合、絶縁層2の第2の層13と接触する接触面の離型性の程度は、前記接触面の表面張力で表すことができる。かかる前記接触面の表面張力は、20〜40mN/mであるのが好ましく、25〜35mN/mであるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を前記接触面が有することにより、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、絶縁層2から第2の層13を確実に剥離させることができる。
このような、表面張力を有する絶縁層2としては、例えば、熱可塑性ポリエステルやαオレフィン等が挙げられる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第4実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第4実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第6実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第6実施形態について説明する。
図5は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第6実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図5に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図5に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第3の層12の形成が省略され、さらに、絶縁層2および電磁波遮断層3の積層順が逆転していること以外は、前述した第1〜第3実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第1の層11、第2の層13からなる基材層1と、電磁波遮断層3と、絶縁層2とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、剥離工程において、基材層1を電磁波遮断層3から剥離する際に、第2の層13と電磁波遮断層3との界面において基材層1が電磁波遮断層3から剥離される。このような剥離では、電磁波遮断層3が第2の層13との離型性を備えており、これにより、第3の層12の形成が省略される。
この場合、電磁波遮断層3の第2の層13と接触する接触面の離型性の程度は、前記接触面の表面張力で表すことができる。かかる前記接触面の表面張力は、20〜40mN/mであるのが好ましく、25〜35mN/mであるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を前記接触面が有することにより、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、電磁波遮断層3から第2の層13を確実に剥離させることができる。
このような、表面張力を有する電磁波遮断層3としては、例えば、炭素同素体や導電性高分子をポリウレタン等の熱硬化性樹脂中に分散させた混合材料等が挙げられる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第5実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第5実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第7実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第7実施形態について説明する。
図6は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第7実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図6に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図6に示す電磁波シールド用フィルム100では、絶縁層2および電磁波遮断層3の積層順が逆転していること以外は、前述した第1〜第3実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第1の層11、第2の層13、第3の層12からなる基材層1と、電磁波遮断層3と、絶縁層2とが、この順で積層された積層体をなしている。このように積層された電磁波遮断層3および絶縁層2を備える電磁波シールド用フィルム100を用いて基板5上の凹凸6を被覆することで、基板5および電子部品4に絶縁層2が接触し、基板5側から絶縁層2、電磁波遮断層3の順で被覆することとなる。
このように、本実施形態では、絶縁層2は、基板5および電子部品4を、これらに接触した状態で被覆し、これにより、基板5および電子部品4を、絶縁層2を介して基板5と反対側に位置する電磁波遮断層3および他の部材(電子部品等)から絶縁する。
そのため、かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、例えば、電磁波遮断層3が導電性材料を含む構成であったとしても、隣接する電子部品4同士を絶縁層2により確実に絶縁することができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第6実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第6実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第8実施形態>
以下、本発明の電磁波シールド用フィルムの第8実施形態について説明する。
図7は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第8実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図7に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の電磁波シールド用フィルム100は、電磁波遮断層3が、複数の層が積層された積層体で構成され、隣接する各層が異なる材料で構成されている以外は、前述した第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
本発明者の検討により、電磁波遮断層を構成する材料(導電性材料または磁性吸収材料)を1種ではなく、2種以上の複数種とすることで、反射層としての機能を電磁波遮断層が優位に発揮することなく、吸収層としての機能を電磁波遮断層が優位に発揮することが判ってきた。そして、本発明者は、複数種の前記材料を含有する電磁波遮断層についてさらに検討を行なった結果、この電磁波遮断層を、複数の層で構成される積層体とし、さらに、複数の層のうち隣接する各層が異なる前記材料を含有する構成とすることにより、反射層としての機能を減衰させて、吸収層としての機能を的確に発揮させることができることを見出した。さらに、この場合、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで、電磁波の吸収により電磁波をより効果的に遮断し得ることを見出した。
なお、本実施形態において、隣接する各層に含まれる材料が異なるとは、各層に含まれる材料の種類の数が異なる場合が、これに該当する。また、その他、各層に含まれる材料の種類の数が同一である際には、各層に含まれる複数の材料のうち1種でも異なる種類の材料が含まれている場合も該当する。
また、かかる構成の電磁波遮断層は、2層以上の積層体で構成され、積層体を構成する層のうち隣接する層同士が異なる材料を含有していればよい。本実施形態では、電磁波遮断層3が、第1の層31と、第2の層32と、第1の層33との3層をなす積層体で構成され、これらが基材層1の上面(他方の面)側から、この順で積層されている積層体を一例に説明する。
このような電磁波遮断層3の各層31〜33に含まれる材料としては、前述した第1実施形態の電磁波遮断層3を構成する各種材料(各種導電性材料または各種磁性吸収材料)を用いることができ、これらのうちの少なくとも2種以上が用いられ、これらを単独または組み合わせて用いることにより、隣接する各層31〜33に異なる材料を含ませることができる。
本実施形態では、第1の層31と第1の層33との組み合わせにおいて同一の材料で構成され、第1の層31、33と第2の層32との組み合わせにおいて異なる材料で構成されている。これにより、隣接する各層31〜33に含まれる材料が異なるようになっている。
すなわち、第1の層31、33には、第1の材料が含まれ、第2の層32には、第2の材料が含まれており、これにより、隣接する各層31〜33に含まれる材料が異なっている。
特に、本実施形態では、第1の材料を含有する第1の層31、33と、第2の材料を含有する第2の層32とが交互に積層された3層をなす積層体となっている。換言すれば、第1の材料を含有する第1の層31、33で、第2の材料を含有する第2の層32を挾持する構成の積層体となっている。かかる構成の積層体では、電磁波遮断層3に吸収層としての機能をより的確に発揮させることができる。特に、2.0〜3.0GHzの高周波帯域の電磁波を、電磁波の吸収によって、より効果的に遮断することができる。
また、かかる構成の電磁波遮断層(積層体)3において、第1の層31、33に含まれる第1の材料は、ポリアニリンおよびPEDOT/PSSのうちの一方であり、第2の層32に含まれる第2の材料は、ポリアニリンおよびPEDOT/PSSのうちの他方であることが好ましい。このような材料(導電性高分子)の組み合わせとすることにより、電磁波遮断層3に吸収層としての機能をより顕著に発揮させることができる。また、たとえ電磁波遮断層3の軽量化・薄型化を図ったとしても、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波までより確実に遮断することができるようになる。
さらに、第1の層31、33および第2の層32の表面抵抗値は、それぞれ、1×10−3Ω/□以上、1×106Ω/□以下であるのが好ましく、10Ω/□以上、5×105Ω/□以下であるのがより好ましく、150Ω/□以上、1×104Ω/□以下であるのがさらに好ましい。これにより、電磁波遮断層3を、反射層としての機能をより減衰させて、吸収層としての機能をより的確に発揮させることができ、特に、より高周波帯域の電磁波であっても効果的に遮断することができる。
なお、第1の層31、33および第2の層32は、換言すれば、電磁波遮断層3を構成する各層31〜33は、それぞれ、上述した材料(各種導電性材料または各種磁性吸収材料)で構成される単独層であってもよいが、かかる材料の他に、その他の材料を含有する混合層であってもよい。その他の材料としては、特に限定されないが、例えば、増感剤、m−クレゾール、エチレングリコール等が挙げられる。
また、第1の層31、33および第2の層32おける導電性材料または磁性吸収材料の含有量は、50wt%以上、100wt%以下であるのが好ましく、80wt%以上、100wt%以下であるのがより好ましい。
さらに、第1の層31、33の厚みT1は、特に限定されないが、1μm以上、30μm以下であることが好ましく、3μm以上、25μm以下であることがより好ましく、5μm以上、15μm以下であることがさらに好ましい。
また、第2の層32の厚みT2は、特に限定されないが、1μm以上、30μm以下であることが好ましく、3μm以上、25μm以下であることがより好ましく、5μm以上、15μm以下であることがさらに好ましい。
第1の層31、33の厚みT1および第2の層32の厚みT2がそれぞれ前記下限値未満である場合、各層31〜33の構成材料等によっては、基板搭載部品の端部で破断するおそれがある。また、第1の層31、33の厚みT1および第2の層32の厚みT2がそれぞれ前記上限値を超える場合、各層31〜33の構成材料等によっては形状追従性が不足するおそれがある。また、かかる範囲内の厚みT1、T2としても、優れた電磁波シールド性を発揮させることができるため、第1の層31、33の厚みT1および第2の層32の厚みT2の薄膜化を実現すること、ひいては、基板5上において絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆された電子部品4が搭載された電子部品搭載基板の軽量化を実現することができる。また、かかる範囲内の厚みT1、T2とすることにより、電磁波遮断層3を、反射層としての機能をより減衰させて、吸収層としての機能をより的確に発揮させることができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第7実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第7実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第9実施形態>
以下、本発明の電磁波シールド用フィルムの第9実施形態について説明する。
図8は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第9実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図8に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図7に示す第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図8に示す電磁波シールド用フィルム100では、電磁波遮断層3が備える第1の層33の形成が省略されていること以外は、前述した第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、基材層1と、絶縁層2と、第1の層31および第2の層32からなる電磁波遮断層3とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、電磁波遮断層3が、異なる材料を含有する第1の層31と第2の層32との2層からなる積層体で構成されていることにより、電磁波遮断層3に吸収層としての機能をより的確に発揮させることができる。特に、2.0〜3.0GHzの高周波帯域の電磁波であっても、電磁波の吸収によって、より効果的に遮断することができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第10実施形態>
以下、本発明の電磁波シールド用フィルムの第10実施形態について説明する。
図9は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第10実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図9に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図7に示す第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図9に示す電磁波シールド用フィルム100では、電磁波遮断層3が、各層31〜33の他に、さらに第2の層34を電磁波遮断層3の基材層1と反対側の面に備えていること以外は、前述した第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、基材層1と;絶縁層2と;第1の層31、第2の層32、第1の層33および第2の層34からなる電磁波遮断層3とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、第1の導電性高分子で構成される第1の層31、33と、第2の導電性高分子で構成される第2の層32、34とが交互に積層された4層をなす積層体で構成されている。換言すれば、第1の層31と、第2の層32と、第1の層33と、第2の層34とが基材層1側からこの順で積層された4層をなす積層体で構成されている。このように、電磁波遮断層3を、第1の層31、33と、第2の層32、34との層数を同一として、第1の導電性高分子で構成される第1の層31、33で、第2の導電性高分子で構成される第2の層32を挾持し、さらに、第2の導電性高分子で構成される第2の層32、34で、第1の導電性高分子で構成される第1の層33を挾持する構成の積層体とする。これにより、電磁波遮断層3に吸収層としての機能を発揮させることができる。なお、本実施形態のように、第1の層31、33と第2の層32、34とで構成される電磁波遮断層3を4層以上の積層体とすることで、吸収層としての機能を維持しつつ、反射層としての機能を顕著に発揮させることができる。そのため、4層以上の積層体は、吸収層および反射層の双方の機能を電磁波遮断層3に発揮させる場合に、電磁波遮断層3として好ましく適用される。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第9実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第9実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第11実施形態>
以下、本発明の電磁波シールド用フィルムの第11実施形態について説明する。
図10は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第11実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図10中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図10に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図7に示す第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図10に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第1の層11の形成が省略されていること以外は、前述した第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第2の層13、第3の層12からなる基材層1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、貼付工程において、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に用いられる真空加圧式ラミネーター等が有する押圧部が、第2の層13との離型性を備えている。これにより、第1の層11の形成が省略される。
この場合、前記押圧部の第2の層13と接触する接触面の離型性の程度は、前記接触面の表面張力で表すことができる。かかる前記接触面の表面張力は、20〜40mN/mであるのが好ましく、25〜35mN/mであるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を前記接触面が有することにより、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、第2の層13から押圧部を確実に剥離させることができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第10実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第10実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第12実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第12実施形態について説明する。
図11は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第12実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図11に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図7に示す第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図11に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第3の層12の形成が省略されていること以外は、前述した第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第1の層11、第2の層13からなる基材層1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、剥離工程において、基材層1を絶縁層2から剥離する際に、第2の層13と絶縁層2との界面において基材層1が絶縁層2から剥離される。このような剥離では、絶縁層2が第2の層13との離型性を備えている。これにより、第3の層12の形成が省略される。
この場合、絶縁層2の第2の層13と接触する接触面の離型性の程度は、前記接触面の表面張力で表すことができる。かかる前記接触面の表面張力は、20〜40mN/mであるのが好ましく、25〜35mN/mであるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を前記接触面が有することにより、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、絶縁層2から第2の層13を確実に剥離させることができる。
このような、表面張力を有する絶縁層2としては、例えば、熱可塑性ポリエステルやαオレフィン等が挙げられる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第11実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第11実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第13実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第13実施形態について説明する。
図12は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第13実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図12に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図7に示す第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図12に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第3の層12の形成が省略され、さらに、絶縁層2および電磁波遮断層3の積層順が逆転していること以外は、前述した第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第1の層11、第2の層13からなる基材層1と、電磁波遮断層3と、絶縁層2とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、剥離工程において、基材層1を電磁波遮断層3から剥離する際に、第2の層13と電磁波遮断層3との界面において基材層1が電磁波遮断層3から剥離される。このような剥離では、電磁波遮断層3が第2の層13との離型性を備えており、これにより、第3の層12の形成が省略される。
この場合、電磁波遮断層3の第2の層13と接触する接触面の離型性の程度は、前記接触面の表面張力で表すことができる。かかる前記接触面の表面張力は、20〜40mN/mであるのが好ましく、25〜35mN/mであるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を前記接触面が有することにより、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、電磁波遮断層3から第2の層13を確実に剥離させることができる。
このような、表面張力を有する電磁波遮断層3としては、例えば、炭素同素体や導電性高分子をポリウレタン等の熱硬化性樹脂中に分散させた混合材料等が挙げられる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第12実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第12実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第14実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第14実施形態について説明する。
図13は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第14実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図13に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図7に示す第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図13に示す電磁波シールド用フィルム100では、絶縁層2および電磁波遮断層3の積層順が逆転していること以外は、前述した第8実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第1の層11、第2の層13、第3の層12からなる基材層1と、電磁波遮断層3と、絶縁層2とが、この順で積層された積層体をなしている。このように積層された電磁波遮断層3および絶縁層2を備える電磁波シールド用フィルム100を用いて基板5上の凹凸6を被覆することで、基板5および電子部品4に絶縁層2が接触し、基板5側から絶縁層2、電磁波遮断層3の順で被覆することとなる。
このように、本実施形態では、絶縁層2は、基板5および電子部品4を、これらに接触した状態で被覆し、これにより、基板5および電子部品4を、絶縁層2を介して基板5と反対側に位置する電磁波遮断層3および他の部材(電子部品等)から絶縁する。
そのため、かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、例えば、電磁波遮断層3が導電性材料を含む構成であったとしても、隣接する電子部品4同士を絶縁層2により確実に絶縁することができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1〜第13実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1〜第13実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
また、前記実施形態では、絶縁層2は、電磁波遮断層3の上面または下面の何れか一方に1つの層が積層される場合について説明したが、本発明は、かかる場合に限定されない。例えば、電磁波遮断層3の上面および下面の双方に1層ずつ別層として積層されていてもよいし、その形成を省略するようにしてもよい。
さらに、前記実施形態では、基板への電子部品の搭載により、基板上に凹凸が形成されており、この凹凸を電磁波シールド用フィルムで被覆する場合について説明したが、電磁波シールド用フィルムによる被覆は、このような凹凸に対する被覆に限定されない。例えば、筐体等が備える平坦(フラット)な領域に対して電磁波シールド用フィルムを被覆するようにしてもよい。
以上、本発明の電磁波シールド用フィルム、および電子部品搭載基板について説明したが、本発明は、これらに限定されない。
例えば、本発明の電磁波シールド用フィルムでは、前記第1〜第14実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
また、本発明の電磁波シールド用フィルムおよび本発明の電子部品搭載基板には、同様の機能を発揮し得る、任意の層が追加されていてもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1A)
<電磁波シールド用フィルムの製造>
電磁波シールド用フィルムを得るために、第1の層(第1離型層)を構成する樹脂としてシンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。第3の層(第2離型層)を構成する樹脂として、シンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。第2の層(クッション層)を構成する樹脂として、エチレン−メチルアクリレート共重合体(住友化学(株)社製、商品名:アクリフトWD106)を準備した。電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂社製)を準備した。
第1の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第3の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第2の層として前記エチレン−メチルアクリレート共重合体とを、フィードブロックおよびマルチマニホールドダイを用いて共押出により、フィルム化した。電磁波遮断層としてPEDOT/PSSを基材層フィルムにコーティングして電磁波シールド用フィルムを作製した。
実施例1Aの電磁波シールド用フィルムの全体の厚みは、140μmであった。なお、第1の層の厚みは30μm、第3の層の厚みは30μm、第2の層の厚みは60μm、電磁波遮断層の厚みは20μmであった。
また、実施例1Aの電磁波シールド用フィルムにおける、第1の層、第2の層および第3の層の線膨張係数を測定したところ、それぞれ、420、2400および420ppm/℃であった。
さらに、基材層および電磁波遮断層の150℃における貯蔵弾性率を測定したところ、それぞれ、1.8E+07Pa、2.88E+07Paであった。
<電磁波シールド性評価用フィルムの製造>
次に、電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂社製、S−801)を準備した。
次いで、ポリエチレンテレフタレートシート上に、電磁波遮断層としてPEDOT/PSSをコーティングすることにより、電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムが備える、PEDOT/PSSで構成される電磁波遮断層の表面抵抗値は、100Ω/□であった。
また、電磁波遮断層の表面抵抗値の測定は、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、「ロレスターGP・MCP−T610」)を用いて、JIS−K7194に準拠して、4端子4探針法(定電流印加方式)により実施した。
(実施例2A)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−801)に代えて、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−985)を用いたこと以外は、実施例1Aと同様に行って、実施例2Aの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムが備える、PEDOT/PSSで構成される電磁波遮断層の表面抵抗値は、300Ω/□であった。
(実施例3A)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−801)に代えて、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−942)を用いたこと以外は、実施例1Aと同様にして、実施例3Aの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムが備える、PEDOT/PSSで構成される電磁波遮断層の表面抵抗値は、1000Ω/□であった。
(実施例4A)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−801)に代えて、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−941)を用いたこと以外は、実施例1Aと同様にして、実施例4Aの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムが備える、PEDOT/PSSで構成される電磁波遮断層の表面抵抗値は、4500Ω/□であった。
(実施例5A)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−801)に代えて、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−986)を用いたこと以外は、実施例1Aと同様に行って、実施例5Aの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムが備える、PEDOT/PSSで構成される電磁波遮断層の表面抵抗値は、8000Ω/□であった。
(実施例6A)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−801)に代えて、ポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANT)を用いたこと以外は、実施例1Aと同様に行って、実施例6Aの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムが備える、PEDOT/PSSで構成される電磁波遮断層の表面抵抗値は、500Ω/□であった。
(実施例7A)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−801)に代えて、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製、S−987)を用いたこと以外は、実施例1Aと同様に行って、実施例7Aの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムが備える、PEDOT/PSSで構成される電磁波遮断層の表面抵抗値は、200000Ω/□であった。
<評価試験>
<<凹凸追従性>>
まず、縦100mm×横100mm×高さ(厚み)3mmのプリント配線板(マザーボード)に、幅0.2mm、各必要段差の溝を、0.2mm間隔で碁盤目状に形成した。
その後、実施例1A〜7Aで作製した電磁波シールド用フィルムを、それぞれ、真空圧空成形装置を用いて、150℃×1MPa×10分間、プリント配線板に圧着させ、プリント配線板に貼付ける。貼付後、基材層を剥離し、プリント配線板に貼り付けた電磁波遮断層とプリント配線板上の溝との間に空隙があるかどうかを判断する。なお、空隙があるかどうかは、マイクロスコープや顕微鏡で観察し、評価した。
各符号は以下のとおりである。Dを不合格とし、それ以外を合格とした。
A:段差2000μm以上
B:段差1000μm以上、2000μm未満
C:段差 500μm以上、1000μm未満
D:段差 500μm未満
<<電磁波シールド性>>
実施例1A〜7Aで作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、前述したマイクロストリップライン法を用いて、周波数1GHzおよび周波数3GHzにおける電磁波を遮断する電磁波シールド性を測定した。さらに、前述したKEC法を用いて、周波数1GHzにおける電磁波を遮断する電磁波シールド性を測定した。
<<光線透過率>>
実施例1A〜7Aで作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、「V−650」)を用いて、波長300nm、500nmおよび800nmにおける光線透過率、ならびに300〜800nmにおける光線透過率の最大値を測定した。
以上の各実施例の評価試験の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、各実施例で得られた電磁波シールド用フィルムでは、電磁波遮断層の表面抵抗値が1×10−3Ω/□以上、1×106Ω/□以下であることにより、1GHzのように高周波帯域の電磁波であっても、電磁波を吸収することで効果的に遮断されている結果が得られた。
また、各実施例で得られた電磁波シールド用フィルムは、いずれも、光線透過率が十分に低いことが分かった。すなわち、これらの実施例で得られた電磁波シールド用フィルムは、優れた光吸収性(光遮蔽性)を有していることが分かった。
また、電磁波遮断層の表面抵抗値が10000Ω/□以下であった実施例1A〜6Aの電磁波シールド用フィルムの電磁波シールド性は、電磁波遮断層の表面抵抗値が200000Ω/□であった実施例7Aの電磁波シールド用フィルムに比べて、優れていた。
また、実施例1A〜5Aのように、PEDOT/PSSを含む電磁波遮断層を備える電磁波シールド用フィルムでは、特に優れた光吸収性(光遮蔽性)を有していることが分かった。
(実施例1B)
<電磁波シールド用フィルムの製造>
電磁波シールド用フィルムを得るために、第1の層(第1離型層)を構成する樹脂としてシンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。第3の層(第2離型層)を構成する樹脂として、シンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。第2の層(クッション層)を構成する樹脂として、エチレン−メチルアクリレート共重合体(住友化学(株)社製、商品名:アクリフトWD106)を準備した。電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂社製)を準備した。
第1の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第3の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第2の層として前記エチレン−メチルアクリレート共重合体とを、フィードブロックおよびマルチマニホールドダイを用いて共押出により、フィルム化した。電磁波遮断層としてPEDOT/PSSを基材層フィルムにコーティングして電磁波シールド用フィルムを作製した。
実施例1Bの電磁波シールド用フィルムの全体の厚みは、140μmであった。なお、第1の層の厚みは30μm、第3の層の厚みは30μm、第2の層の厚みは60μm、電磁波遮断層の厚みは20μmであった。
また、実施例1Bの電磁波シールド用フィルムにおける、第1の層、第2の層および第3の層の線膨張係数を測定したところ、それぞれ、420、2400および420ppm/℃であった。
さらに、基材層および電磁波遮断層の150℃における貯蔵弾性率を測定したところ、それぞれ、1.8E+07Pa、1.2E+07Paであった。
<電磁波シールド性評価用フィルムの製造>
次に、電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂社製)を準備した。
次いで、ポリエチレンテレフタレートシート上に、電磁波遮断層としてPEDOT/PSSをコーティングすることにより、電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
(実施例2B)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製)に代えて、PEDOT/PSS(荒川化学工業株式会社、商品名:アラコート AS625)を用いたこと以外は、実施例1Bと同様にして、実施例2Bの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
(実施例3B)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製)に代えて、PEDOT/PSS(綜件化学株式会社製、商品名:ベラゾールED−0139−M)を用いたこと以外は、実施例1Bと同様にして、実施例3Bの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
(実施例4B)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製)に代えて、ポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANT)を用いたこと以外は、実施例1Bと同様にして、実施例4Bの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
(実施例5B)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製)に代えて、水−CNTウレタン樹脂分散液(保土谷化学工業株式会社製、商品名:5wt%NT−7K含有水分散液)を用いたこと以外は、実施例1Bと同様にして、実施例5Bの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、形成された電磁波遮断層は、CNTとポリウレタン樹脂との混合層であり、層中における、CNTの含有量は12wt%、ポリウレタン樹脂の含有量は88wt%であった。
(実施例6B)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製)に代えて、水−カーボンナノチューブ分散液(宇部興産株式会社製、商品名:AWC水分散液 UW−250)を用いたこと以外は、実施例1Bと同様にして、実施例6Bの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、形成された電磁波遮断層は、CNTとポリウレタン樹脂との混合層であり、層中における、CNTの含有量は12wt%、ポリウレタン樹脂の含有量は88wt%であった。
(実施例7B)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製)に代えて、カーボンナノファイバー/水分散液(エムディーナノテック株式会社製、商品名:MDCNF−D)を用いたこと以外は、実施例1Bと同様にして、実施例7Bの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、形成された電磁波遮断層は、CNTとポリウレタン樹脂との混合層であり、層中における、CNTの含有量は12wt%、ポリウレタン樹脂の含有量は88wt%であった。
(比較例1B)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製)に代えて、高配向CNT分散液(太陽日産株式会社製、商品名:高配向カーボンナノチューブエタノール分散液)を用いたこと以外は、実施例1Bと同様にして、比較例1Bの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、形成された電磁波遮断層は、CNTとポリウレタン樹脂との混合層であり、層中における、CNTの含有量は12wt%、ポリウレタン樹脂の含有量は88wt%であった。
(比較例2B)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(中京油脂株式会社製)に代えてポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANW))を用いたこと以外は、実施例1Bと同様にして、比較例2Bの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
<評価試験>
<<凹凸追従性>>
まず、縦100mm×横100mm×高さ(厚み)3mmのプリント配線板(マザーボード)に、幅0.2mm、各必要段差の溝を、0.2mm間隔で碁盤目状に形成した。
その後、実施例1B〜7B、および比較例1B、2Bで作製した電磁波シールド用フィルムを、それぞれ、真空圧空成形装置を用いて、150℃×1MPa×10分間、プリント配線板に圧着させ、プリント配線板に貼付ける。貼付後、基材層を剥離し、プリント配線板に貼り付けた電磁波遮断層とプリント配線板上の溝との間に空隙があるかどうかを判断する。なお、空隙があるかどうかは、マイクロスコープや顕微鏡で観察し、評価した。
各符号は以下のとおりである。Dを不合格とし、それ以外を合格とした。
A:段差2000μm以上
B:段差1000μm以上、2000μm未満
C:段差 500μm以上、1000μm未満
D:段差 500μm未満
<<電磁波シールド性>>
実施例1B〜7B、および比較例1B、2Bで作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、前述した空洞共振器法を用いて、周波数1GHzにおける複素誘電率(ε)の実数部(ε’)、虚数部(ε”)および誘電正接(tanδ)を測定した。さらに、前述したマイクロストリップライン法を用いて、周波数1GHzおよび周波数3GHzにおける電磁波を遮断する電磁波シールド性を測定した。
<<光線透過率>>
実施例1B〜7B、および比較例1B、2Bで作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、「V−650」)を用いて、波長300nm、500nmおよび800nmにおける光線透過率、ならびに300〜800nmにおける光線透過率の最大値を測定した。
以上の各実施例、比較例の評価試験の結果を表2に示す。
表2から明らかなように、各実施例で得られた電磁波シールド用フィルムでは、電磁波遮断層の表面抵抗値が1×10−3Ω/□以上、1×106Ω/□以下であることにより、1GHzのように高周波帯域の電磁波であっても、電磁波を吸収することで効果的に遮断されている結果が得られた。
特に、実施例1B〜7Bで得られた電磁波シールド用フィルムでは、周波数1GHzにおける複素誘電率(ε)の虚数部(ε”)が30以上であることにより、1GHzのように高周波帯域の電磁波であってもより効果的に遮断することができた。
また、各実施例で得られた電磁波シールド用フィルムは、いずれも、光線透過率が十分に低いことが分かった。すなわち、これらの実施例で得られた電磁波シールド用フィルムは、優れた光吸収性(光遮蔽性)を有していることが分かった。
これに対して、比較例1B、2Bは、各実施例と比較すると、高周波帯域の電磁波が効果的に遮断されているとはいえない結果であった。
さらに、実施例1B〜3Bのように、PEDOT/PSSを含む電磁波遮断層を備える電磁波シールド用フィルムでは、他の実施例および比較例1B、2Bの電磁波シールド用フィルムと比較して、より優れた光吸収性(光遮蔽性)を有していることが分かった。
(実施例1C)
<電磁波シールド用フィルムの製造>
電磁波シールド用フィルムを得るために、第1の層(第1離型層)を構成する樹脂としてシンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。第3の層(第2離型層)を構成する樹脂として、シンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。第2の層(クッション層)を構成する樹脂として、エチレン−メチルアクリレート共重合体(住友化学(株)社製、商品名:アクリフトWD106)を準備した。電磁波遮断層を構成する樹脂として、水−CNTウレタン樹脂分散液(保土谷化学工業株式会社製、商品名:5wt%NT−7K含有水分散液)を準備した。
第1の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第3の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第2の層として前記エチレン−メチルアクリレート共重合体とを、フィードブロックおよびマルチマニホールドダイを用いて共押出により、フィルム化した。電磁波遮断層としてカーボンナノチューブとポリウレタン樹脂との混合層を基材層フィルムにコーティングして電磁波シールド用フィルムを作製した。
実施例1Cの電磁波シールド用フィルムの全体の厚みは、140μmであった。なお、第1の層の厚みは30μm、第3の層の厚みは30μm、第2の層の厚みは60μm、電磁波遮断層の厚みは20μmであった。
また、実施例1Cの電磁波シールド用フィルムにおける、第1の層、第2の層および第3の層の線膨張係数を測定したところ、それぞれ、420、2400および420ppm/℃であった。
さらに、基材層および電磁波遮断層の150℃における貯蔵弾性率を測定したところ、それぞれ、1.8E+07Pa、2.88E+07Paであった。
<電磁波シールド性評価用フィルムの製造>
次に、電磁波遮断層を構成する樹脂として、水−CNTウレタン樹脂分散液(保土谷化学工業株式会社製、商品名:5wt%NT−7K含有水分散液)を準備した。
次いで、ポリエチレンテレフタレートシート上に、電磁波遮断層としてカーボンナノチューブとポリウレタン樹脂との混合層をコーティングすることにより、電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムにおいて形成された電磁波遮断層は、ともに、CNTとポリウレタン樹脂との混合層であり、層中における、CNTの含有量は12wt%、ポリウレタン樹脂の含有量は88wt%であった。
また、電磁波遮断層に含まれるCNTの粒径、長さ、アスペクト比および比表面積は、それぞれ、65nm、6.5μm、100および28m2/gであった。
(実施例2C)
電磁波遮断層を構成する材料(樹脂)として、水−CNTウレタン樹脂分散液(保土谷化学工業株式会社製、商品名:5WT%NT−7K含有水分散液)に代えて、水−カーボンナノチューブ分散液(宇部興産株式会社製、商品名:AWC水分散液 UW−250)を用いたこと以外は、実施例1Cと同様にして、実施例2Cの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、形成された電磁波遮断層は、CNTとポリウレタン樹脂との混合層であり、層中における、CNTの含有量は12wt%、ポリウレタン樹脂の含有量は88wt%であった。
また、電磁波遮断層に含まれるCNTの粒径、長さ、アスペクト比および比表面積は、それぞれ、5〜15nm、0.6〜0.8μm、100および230m2/gであった。
(実施例3C)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、水−CNTウレタン樹脂分散液(保土谷化学工業株式会社製、商品名:5WT%NT−7K含有水分散液)に代えて、カーボンナノファイバー/水分散液(エムディーナノテック株式会社製、商品名:MDCNF−D)を用いたこと以外は、実施例1Cと同様にして、実施例3Cの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、形成された電磁波遮断層は、CNTとポリウレタン樹脂との混合層であり、層中における、CNTの含有量は12wt%、ポリウレタン樹脂の含有量は88wt%であった。
また、電磁波遮断層に含まれるCNTの粒径、長さ、アスペクト比および比表面積は、それぞれ、10〜20nm、0.1〜10μm、500および240m2/gであった。
(比較例1C)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、水−CNTウレタン樹脂分散液(保土谷化学工業株式会社製、商品名:5WT%NT−7K含有水分散液)に代えて、高配向CNT分散液(太陽日産株式会社製、商品名:高配向カーボンナノチューブエタノール分散液)を用いたこと以外は、実施例1Cと同様にして、比較例1Cの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、形成された電磁波遮断層は、CNTとポリウレタン樹脂との混合層であり、層中における、CNTの含有量は12wt%、ポリウレタン樹脂の含有量は88wt%であった。
また、電磁波遮断層に含まれるCNTの粒径、長さ、アスペクト比および比表面積は、それぞれ、5〜20nm、50〜150μm、5000および400m2/gであった。
<評価試験>
<<電磁波シールド性>>
実施例1C〜3C、および比較例1Cで作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、前述したマイクロストリップライン法を用いて、周波数1GHzおよび周波数3GHzにおける電磁波を遮断する電磁波シールド性を測定した。さらに、前述したKEC法を用いて、周波数1GHzにおける電磁波を遮断する電磁波シールド性を測定した。
<<光線透過率>>
実施例1C〜3C、および比較例1Cで作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、「V−650」)を用いて、波長300nm、500nmおよび800nmにおける光線透過率、ならびに300〜800nmにおける光線透過率の最大値を測定した。
以上の各実施例、比較例の評価試験の結果を表3に示す。
表3から明らかなように、各実施例で得られた電磁波シールド用フィルムでは、電磁波遮断層の表面抵抗値が1×10−3Ω/□以上、1×106Ω/□以下であることにより、1GHzのように高周波帯域の電磁波であっても、電磁波を吸収することで効果的に遮断されている結果が得られた。
特に、実施例1C〜3Cで得られた電磁波シールド用フィルムでは、電磁波遮断層に含まれるカーボンナノチューブのアスペクト比が10以上、4000以下であることにより、1GHzのように高周波帯域の電磁波であってもより効果的に遮断することができた。
また、各実施例で得られた電磁波シールド用フィルムは、いずれも、光線透過率が十分に低いことが分かった。すなわち、これらの実施例で得られた電磁波シールド用フィルムは、優れた光吸収性(光遮蔽性)を有していることが分かった。
これに対して、比較例1Cは、実施例1C〜3Cと比較すると、高周波帯域の電磁波が効果的に遮断されているとはいえない結果であった。
また、実施例2C、3Cのように、カーボンナノチューブのアスペクト比が100以上、500以下であり、カーボンナノチューブの比表面積が200m2/g以上、300m2/g以下であることにより、高周波帯域の電磁波がより効果的に遮断されている結果が得られた。
(実施例1D)
<電磁波シールド用フィルムの製造>
<1>まず、電磁波シールド用フィルムを得るために、基材層が備える第1の層(第1離型層)を構成する樹脂としてシンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。基材層が備える第3の層(第2離型層)を構成する樹脂として、シンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。基材層が備える第2の層(クッション層)を構成する樹脂として、エチレン−メチルアクリレート共重合体(住友化学(株)社製、商品名:アクリフトWD106)を準備した。また、電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(S−941中京油脂社製)およびポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANT)を準備した。
<2>次に、第1の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第3の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第2の層として前記エチレン−メチルアクリレート共重合体とを、フィードブロックおよびマルチマニホールドダイを用いて共押出により、フィルム化して基材層フィルムを得た。
<3>次に、基材層フィルムに、PEDOT/PSSをコーティングした後、さらに、ポリアニリンとPEDOT/PSSとをこの順でコーティングすることで、3層構成をなす積層体からなる電磁波遮断層を形成することで、電磁波シールド用フィルムを作製した。
なお、実施例1Dの電磁波シールド用フィルムの全体の厚みは、150μmであった。なお、基材層が備える第1の層の厚みは30μm、第3の層の厚みは30μm、第2の層の厚みは60μmであった。また、3層の積層体で構成される電磁波遮断層の厚みは30μm(各層の厚みはそれぞれ10μm)であった。
また、実施例1Dの電磁波シールド用フィルムの基材層における、第1の層、第2の層および第3の層の線膨張係数を測定したところ、それぞれ、420、2400および420ppm/℃であった。
さらに、基材層の150℃における貯蔵弾性率を測定したところ、それぞれ、1.8E+07Paであった。
<電磁波シールド性評価用フィルムの製造>
<1>まず、電磁波遮断層を構成する樹脂として、PEDOT/PSS(S−941中京油脂社製)およびポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANT)を準備した。
<2>次に、ポリエチレンテレフタレートシート上に、PEDOT/PSSをコーティングした後、さらに、ポリアニリンとPEDOT/PSSとをこの順でコーティングすることで、3層構成をなす積層体からなる電磁波遮断層を形成することで、電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、実施例1Dの電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、3層の積層体で構成される電磁波遮断層の厚みは30μm(各層の厚みはそれぞれ10μm)であった。
(実施例2D)
電磁波シールド用フィルムを製造する際の前記工程<3>および電磁波シールド性評価用フィルムを製造する際の前記工程<2>において、ポリアニリンをコーティングした後、さらに、PEDOT/PSSとポリアニリンとをこの順でコーティングした。このようにして3層構成をなす積層体からなる電磁波遮断層を形成したこと以外は、実施例1Dと同様にして、実施例2Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
(実施例3D)
電磁波シールド用フィルムを製造する際の前記工程<3>および電磁波シールド性評価用フィルムを製造する際の前記工程<2>において、PEDOT/PSSをコーティングした後、さらに、ポリアニリンとPEDOT/PSSとポリアニリンとPEDOT/PSSとポリアニリンとをこの順でコーティングした。このようにして6層構成をなす積層体からなる電磁波遮断層を形成したこと以外は、実施例1Dと同様にして、実施例3Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、実施例3Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、6層の積層体で構成される電磁波遮断層の厚みは30μm(各層の厚みはそれぞれ5μm)であった。
(実施例4D)
電磁波シールド用フィルムを製造する際の前記工程<3>および電磁波シールド性評価用フィルムを製造する際の前記工程<2>において、ポリアニリンをコーティングした後、さらに、PEDOT/PSSとポリアニリンとPEDOT/PSSとポリアニリンとPEDOT/PSSとをこの順でコーティングした。このようにして6層構成をなす積層体からなる電磁波遮断層を形成したこと以外は、実施例1Dと同様にして、実施例4Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、実施例4Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、6層の積層体で構成される電磁波遮断層の厚みは30μm(各層の厚みはそれぞれ5μm)であった。
(実施例5D)
電磁波シールド用フィルムを製造する際の前記工程<3>および電磁波シールド性評価用フィルムを製造する際の前記工程<2>において、PEDOT/PSSをコーティングした後、さらに、ポリアニリンをコーティングした。このようにして2層構成をなす積層体からなる電磁波遮断層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、実施例5Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、2層の積層体で構成される電磁波遮断層の厚みは30μm(各層の厚みはそれぞれ15μm)であった。
(実施例6D)
電磁波シールド用フィルムを製造する際の前記工程<3>および電磁波シールド性評価用フィルムを製造する際の前記工程<2>において、PEDOT/PSSをコーティングした後、さらに、水−CNTウレタン樹脂分散液(保土谷化学工業株式会社製、商品名:5wt%NT−7K含有水分散液)をコーティングした。このようにして2層構成をなす積層体からなる電磁波遮断層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、水−CNTウレタン樹脂分散液から形成された層は、CNTとポリウレタン樹脂との混合層であり、層中における、CNTの含有量は12wt%、ポリウレタン樹脂の含有量は88wt%であった。
また、実施例5Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、2層の積層体で構成される電磁波遮断層の厚みは30μm(各層の厚みはそれぞれ15μm)であった。
(実施例7D)
電磁波シールド用フィルムを製造する際の前記工程<3>および電磁波シールド性評価用フィルムを製造する際の前記工程<2>において、PEDOT/PSSをコーティングすることで、1層構成をなす電磁波遮断層を形成したこと以外は、実施例1Dと同様にして、実施例7Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、実施例7Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、電磁波遮断層の厚みは30μm、また、電磁波遮断層の表面抵抗値は4400Ω/□であった。
なお、電磁波遮断層の表面抵抗値の測定は、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、「ロレスターGP・MCP−T610」)を用いて、JIS−K7194に準拠して、4端子4探針法(定電流印加方式)により実施した。
(実施例8D)
電磁波シールド用フィルムを製造する際の前記工程<3>および電磁波シールド性評価用フィルムを製造する際の前記工程<2>において、ポリアニリンをコーティングすることで、1層構成をなす電磁波遮断層を形成したこと以外は、実施例1Dと同様に行って、実施例8Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
なお、実施例8Dの電磁波シールド用フィルムおよび電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、電磁波遮断層の厚みは19μm、また、電磁波遮断層の表面抵抗値は500Ω/□であった。
<評価試験>
<<凹凸追従性>>
まず、縦100mm×横100mm×高さ(厚み)3mmのプリント配線板(マザーボード)に、幅0.2mm、各必要段差の溝を、0.2mm間隔で碁盤目状に形成した。
その後、実施例1D〜8Dで作製した電磁波シールド用フィルムを、それぞれ、真空圧空成形装置を用いて、150℃×1MPa×10分間、プリント配線板に圧着させ、プリント配線板に貼付ける。貼付後、基材層を剥離し、プリント配線板に貼り付けた電磁波遮断層とプリント配線板上の溝との間に空隙があるかどうかを判断する。なお、空隙があるかどうかは、マイクロスコープや顕微鏡で観察し、評価した。
各符号は以下のとおりである。Dを不合格とし、それ以外を合格とした。
A:段差2000μm以上
B:段差1000μm以上、2000μm未満
C:段差 500μm以上、1000μm未満
D:段差 500μm未満
<<電磁波シールド性>>
実施例1D〜8Dで作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、前述したマイクロストリップライン法を用いて、周波数1GHz、周波数2.4GHzおよび周波数3GHzにおける電磁波を遮断する電磁波シールド性を測定した。さらに、前述したKEC法を用いて、周波数1GHzにおける電磁波を遮断する電磁波シールド性を測定した。
<<光線透過率>>
実施例1D〜8Dで作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、「V−650」)を用いて、波長300nm、500nmおよび800nmにおける光線透過率、ならびに300〜800nmにおける光線透過率の最大値を測定した。
以上の各実施例、比較例の評価試験の結果を表4に示す。
なお、表4中において、実施例1D〜5D、7Dおよび8Dでは、電磁波遮断層が備える、PEDOT/PSSで構成される層を第1の層とし、ポリアニリンで構成される層を第2の層とする。また、実施例6Dでは、電磁波遮断層が備える、PEDOT/PSSで構成される層を第1の層とし、CNTで構成される層を第2の層とする。
また、表4中における電磁波遮断層が備える複数の第1の層および第2の層は、それぞれ、基材層側からの積層順を示している。
表4から明らかなように、各実施例で得られた電磁波シールド用フィルムでは、電磁波遮断層の表面抵抗値が1×10−3Ω/□以上、1×106Ω/□以下であることにより、1GHzのように高周波帯域の電磁波であっても、電磁波を吸収することで効果的に遮断されている結果が得られた。
特に、実施例1D〜5Dで得られた電磁波シールド用フィルムでは、電磁波遮断層を、隣接する各層が異なる導電性高分子を含有する積層体で構成することにより、1GHzのように高周波帯域の電磁波であっても、電磁波を吸収することでより効果的に遮断することができた。
また、各実施例で得られた電磁波シールド用フィルムは、いずれも、光線透過率が十分に低いことが分かった。すなわち、これらの実施例で得られた電磁波シールド用フィルムは、優れた光吸収性(光遮蔽性)を有していることが分かった。
なお、高周波帯域(特に、2.0〜3.0GHz)の電磁波に対しては、実施例7D、8Dよりも、実施例1D〜6Dの方がより効果的に遮断することができた。