以下、本発明の電磁波シールド用フィルム、および電子部品搭載基板を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて、詳細に説明する。
本発明の電磁波シールド用フィルムは、導電性材料を含み、周波数0.1GHz以上3GHz以下の電磁波における、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損が1dB以下であり、かつ、周波数0.01GHz以上1GHz以下の電磁波における、KEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果が3dB以上である電磁波遮断層を含んで構成されることを特徴とする。
このような電磁波シールド用フィルムによれば、電磁波遮断層の軽量化・薄型化を図ることができるとともに、高周波帯域の電磁波(GHzオーダーのように特に高周波帯域のもの)まで効果的に遮断することができる。
<電磁波シールド用フィルム>
図1は、本発明の電磁波シールド用フィルムの実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
電磁波シールド用フィルムは、基板5上の凹凸6を被覆するために用いられる電磁波シールド用フィルムである。
図1に示すように、本実施形態において、電磁波シールド用フィルム10は、保護層(保護シート)1と、電磁波遮断層3と、絶縁層2とを含んで構成され、電磁波遮断層3および絶縁層2は、保護層1の下面(一方の面)側から、電磁波遮断層3が保護層1に接触して、この順で積層されている。
なお、以下では、基板5上に電子部品4が搭載(載置)され、この電子部品4の搭載により基板5上に凸部65と凹部66とからなる凹凸6が形成されており、この凹凸6を電磁波シールド用フィルム10で被覆する場合について説明する。なお、基板5上に搭載する電子部品4としては、例えば、フレキシブル回路基板(FPC)上に搭載されているLCDドライバーIC、タッチパネル周辺のIC+コンデンサーまたは電子回路基板(マザーボード)が挙げられる。
<保護層1>
まず、保護層1について説明する。
保護層(保護シート)1は、電磁波遮断層3の酸化による劣化を防止する機能を有する。さらに、保護層1は、可撓性を備え、後述する電子部品の被覆方法の貼付工程において、電磁波シールド用フィルム10を用いて、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込むことで、この凹凸6を被覆する際に、押し込まれた絶縁層2および電磁波遮断層3が破断するのを防止する保護(緩衝)材として機能するものである。
この保護層1の構成材料としては、特に限定されず、例えば、シンジオタクチックポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、無軸延伸ポリプロピレンおよび二軸延伸ポリプロピレン等のポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、シリコーン、スチレンエラストマー樹脂、スチレンブタジエンゴムのような樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、無軸延伸ポリプロピレンを用いることが好ましい。これにより、保護層1の絶縁層2および電磁波遮断層3に対する保護性、さらには耐熱性を向上させることができる。
また、保護層1の常温(25℃)における貯蔵弾性率は、2.0E+02〜5.0E+10Paであるのが好ましく、2.0E+03〜5.0E+09Paであるのがより好ましく、2.0E+04〜3.0E+09Paであるのがさらに好ましい。このように、保護層1の常温(25℃)における貯蔵弾性率を、前記範囲内に設定することにより、保護層1は可撓性を有するものであると言うことができ、電磁波シールド用フィルム10を用いて、基板5上の凹凸6を被覆する際に、絶縁層2および電磁波遮断層3に破断を生じさせることなく絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応した状態で押し込むことができる。その結果、この凹凸6が設けられた基板5が、破断の発生が防止された電磁波遮断層3をもって確実に被覆されるようになるため、この電磁波遮断層3による凹凸6が設けられた基板5に対する電磁波シールド(遮断)性が向上することとなる。
保護層1の厚みは、特に限定されないが、3μm以上、20μm以下であることが好ましく、5μm以上、15μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは7μm以上、12μm以下である。保護層1の厚みが前記下限値未満である場合、保護層1ひいては絶縁層2および電磁波遮断層3が破断し、その電磁波シールド性が低下するおそれがある。また、保護層1の厚みが前記上限値を超える場合、電磁波シールド用フィルム10を用いて被覆する基板5の設計によっては、基板5を電磁波シールド用フィルム10で被覆した積層体の軽量化・薄型化が実現されないおそれがある。
さらに、保護層1は、その電磁波遮断層3側の面に、粘着剤層を備えるものであってもよい。すなわち、電磁波遮断層3は、粘着剤層を介して保護層1に接合されたものであってもよい。これにより、保護層1と電磁波遮断層3との粘着性(密着性)の向上が図られる。
この粘着剤層は、例えば、主として、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤およびゴム系粘着剤等のうちの少なくとも1種からなる粘着剤で構成される。
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルで構成される樹脂、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルと、それらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリルニトリル等)との共重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂を2種類以上混合したものが挙げられる。
また、これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ブチルからなる群から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび酢酸ビニルの中から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。これにより、粘着層が粘着する電磁波遮断層3との密着性や粘着性の制御が容易になる。
この場合、粘着剤層には、粘着性(接着性)を制御するためにウレタンアクリレート、アクリレートモノマー、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)等のイソシアネート化合物等のモノマーおよびオリゴマーが含まれていてもよい。
また、ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、イソプレンゴム系、スチレン−ブタジエン系、再生ゴム系、ポリイソブチレン系のものや、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン等のゴムを含むブロック共重合体を主とするもの等が挙げられる。
さらに、シリコーン系粘着剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系、ジフェニルシロキサン系のもの等が挙げられる。
なお、粘着剤層に含まれる粘着剤は、硬化型および非硬化型のいずれであってもよいが、硬化型の場合、粘着剤層には、架橋剤が添加されていてもよい。この架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアナート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等が挙げられる。
また、硬化型の場合、粘着剤層には、粘着剤層を紫外線等の光の照射により硬化させる光重合開始剤が添加されていてもよい。この光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾインイソブチルエーテル系化合物、ベンゾイン安息香酸メチル系化合物、ベンゾイン安息香酸系化合物、ベンゾインメチルエーテル系化合物、ベンジルフィニルサルファイド系化合物、ベンジル系化合物、ジベンジル系化合物、ジアセチル系化合物等が挙げられる。
さらに、粘着剤層には、その接着強度およびシェア強度を高める目的で、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族系石油樹脂等の粘着付与材等が添加されていてもよい。
また、粘着剤層には、例えば、可塑剤、粘着付与剤、増粘剤、充填剤、老化防止剤、防腐剤、防カビ剤、染料、顔料等の各種添加剤が必要に応じ添加されていてもよい。
<電磁波遮断層3>
次に、電磁波遮断層(遮断層)3について説明する。
電磁波遮断層3は、基板5上に設けられた電子部品4と、この電磁波遮断層3を介して、基板5(電子部品4)と反対側に位置する他の電子部品等とを、これら少なくとも一方から生じる電磁波を遮断(シールド)する機能を有する。
ここで、一般的に、電磁波を遮断する機能を発揮するには、電磁波遮断層に入射した電磁波を反射することにより遮断(遮蔽)する反射層と、電磁波遮断層に入射した電磁波を吸収することにより遮断(遮蔽)する吸収層とが知られている。
このような反射層と吸収層とでは、これらが、ほぼ同一の電磁波シールド性を有していると仮定した場合、吸収層では、吸収層に入射した電磁波を吸収し、熱エネルギーに変換することで遮断して、この吸収により電磁波を消滅させる。そのため、反射層のように反射した電磁波が電磁波遮断層で被覆されていない他の部材等に対して誤作動等の悪影響をおよぼしてしまうのを確実に防止することができるという観点から、電磁波遮断層を吸収層で構成するのが好ましい。
ところで、電磁波遮断層に入射した電磁波を反射することにより遮断しているのか、または、電磁波を吸収することにより遮断しているのかを評価する方法として、マイクロストリップライン法(MSL法)が知られている。
このMSL法を用いた測定は、例えば、IEC規格62333−2に準拠して、50Ωのインピーダンスを有するマイクロストリップラインと、ネットワークアナライザーとを用いて、反射成分S11と透過成分S21を測定することにより行われる。
これらのうち反射成分S11は、入射波に対する反射波の電圧(振幅)強度をdBで表したものとして測定される。そして、この反射成分S11を用いて、下記式(1)から、入射波に対する反射成分以外の電力強度をdBで表した不整合損を求めることができる。
不整合損 = −10・log{1−10^(2S11/10)}[dB](1)
不整合損における、反射成分以外の成分としては、吸収成分および透過成分が挙げられる。そのため、不整合損の値が大きくなると反射成分が大きく、不整合損の値が小さくなると吸収成分および透過成分が大きくなっていると言うことができる。
したがって、透過成分が小さいと仮定した場合、不整合損の値が小さくなっていれば、吸収成分が大きくなっていると言うことができる。なお、反射成分が小さくなるのは、電磁波遮断層により回路上のインピーダンス変化が小さくなり、これにより、回路内での反射を抑制しているものと推察される。
よって、本発明のように、周波数0.1GHz以上3GHz以下の電磁波における、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損が1dB以下である電磁波遮断層であれば、高周波帯域の電磁波における不整合損の値が小さくなっていると言うことができ、透過成分が小さくなっていれば、吸収成分が大きくなっており、この電磁波遮断層が吸収層で構成されているものであると言える。
さらに、電磁波遮断層に入射した電磁波の遮断を評価する方法として、上述したMSL法の他に、関西電子工業振興センターで開発されたKEC法が知られている。
ここで、KEC法では、電磁波を遮断する電磁波シールド性は、以下で説明する測定方法の特性から、電磁波を吸収することにより遮断する吸収性(吸収成分)と電磁波を反射することにより遮断する反射性(反射成分)とが加算された値として測定される。
すなわち、このKEC法は、近傍界で発生する電磁波のシールド効果を電界と磁界に分けて評価する方法であり、この方法を用いた測定は、送信アンテナ(送信用の治具)から送信された電磁波を、シート状をなす電磁波遮断層3(測定試料)を介して、受信アンテナ(受信用の治具)で受信することで実施することができ、かかるKEC法では、受信アンテナにおいて、電磁波遮断層3を通過(透過)した電磁波が測定されるすなわち、送信された電磁波(信号)が電磁波遮断層3により受信アンテナ側でどれだけ減衰したかが測定されることから、電磁波を遮断(シールド)する電磁波シールド性は、電磁波を反射する反射成分と電磁波を吸収する吸収成分との双方を合算した状態で求められる。
よって、本発明のように、周波数0.01GHz以上1GHz以下の電磁波における、KEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果が3dB以上である電磁波遮断層であれば、高周波帯域の電磁波を高精度に遮断していると言うことができ、この電磁波遮断層を、吸収成分および反射成分を遮断する遮断層であると言える。
したがって、電磁波遮断層が、周波数0.1GHz以上3GHz以下の電磁波における、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損が1dB以下であり、かつ、周波数0.01GHz以上1GHz以下の電磁波における、KEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果が3dB以上であることを満足すれば、すなわち、電磁波遮断層3において、MSL法を用いて測定された不整合損の値が小さく、かつ、KEC法(電界)を用いて測定された電磁波シールド性(吸収成分+反射成分)が大きくなっていれば、電磁波遮断層3を、反射成分および透過成分を小さくした状態で、吸収成分により電磁波を遮断している吸収層であると言うことができる。
なお、周波数0.1GHz以上3GHz以下の電磁波における、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損は、1dB以下であればよいが、0.5dB以下であるのが好ましく、0.3dB以下であるのがより好ましい。さらに、周波数0.01GHz以上1GHz以下の電磁波における、KEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果は、3dB以上であればよいが、周波数0.01GHz以上1GHz以下の電磁波における電磁波シールド効果が10dB以上30dB以下であるのが好ましい。前記関係を満足することにより、より高周波帯域の電磁波であっても、反射成分および透過成分が大きくなるのを防止しつつ、より効果的に吸収成分により遮断していると言える。
このような電磁波遮断層3の構成材料は、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損およびKEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果が前述した関係を満足するものであれば、如何なる導電性材料で構成されるものであってもよいが、例えば、導電性高分子と、金属および金属酸化物のうちの少なくとも1種を含む金属系粒子とを含有するものであることが好ましい。かかる構成材料で電磁波遮断層3を構成することにより、その膜厚(厚み)を比較的薄く設定したとしても、特に優れた吸収性を発揮するため、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損およびKEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果の値を前記範囲内に設定することができる。また、その層中に含まれる材料の粒子径が小さいことやその添加量も少なくできることから、その膜厚を比較的容易に薄く設定することができ、また軽量化も可能である。
なお、導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)、PEDOT/PSS、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリアニリン、PEDOT/PSS、ポリピロールおよびポリチオフェンであるのが好ましい。これらによれば、電磁波遮断層3のマイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損およびKEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果の値を前記範囲内により容易に設定することができるようになる。より具体的には、特に、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損の大きさをより確実に小さくして、1dB以下に設定することができる。
さらに、導電性高分子としてポリアニリンを用いる場合、電磁波遮断層3中に含まれるポリアニリンは、その分子量が大きいものを選択するのが好ましい。これにより、特に、電磁波遮断層3のマイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損の値を前記範囲内に容易に設定することができるようになる。
また、金属系粒子としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケルおよびアルミニウム、またはこれらを含む合金のような金属、および、AFe2O4(式中、Aは、Mn、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるフェライト、ITO、ATO、FTOのような金属酸化物等が挙げられる。これらの中でも、銀、銅、鉄、ニッケルおよびアルミニウム、または、これらを含む合金のうちの少なくとも1種であるであるのが好ましい。これらによれば、電磁波遮断層3のマイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損およびKEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果の値を前記範囲内により容易に設定することができるようになる。より具体的には、特に、KEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果の値をより確実に大きくして、3dB以上に設定することができる。
また、金属系粒子の平均粒径は、1.0μm以上10.0μm以下であるのが好ましく、4.5μm以上7.5μm以下であるのがより好ましい。これにより、金属系粒子を電磁波遮断層3中に均一に分散させることができる。そのため、電磁波遮断層3を、前述した特性を均質に発揮するものとできる。
さらに、電磁波遮断層3は、その構成材料として、導電性高分子および金属系粒子の他に、バインダー樹脂を含有するものであることが好ましい。これにより、金属系粒子を電磁波遮断層3中により均一に分散させることができるため、電磁波遮断層3を、前述した特性を均質に発揮するものとできる。また、導電性高分子と金属系粒子とを、それぞれ、容易に目的する含有量に設定することができるようになるため、電磁波遮断層3のマイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損およびKEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果の値を、目的とする範囲内により容易に設定することができるようになる。
なお、バインダー樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、電磁波遮断層3における金属系粒子の含有量は、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損の値(dB)を小さくするという観点からは、60wt%以下であることが好ましく、30wt%以下であることがより好ましく、0wt%であることがさらに好ましい。さらに、KEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果の値(dB)を大きくするという観点からは、0wt%以上であることが好ましく、20wt%以上であることがより好ましく、40wt%以上であることがさらに好ましい。したがって、電磁波遮断層3における金属系粒子の含有量は、目的とすべき、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損の値、およびKEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果の値に応じて、上記範囲内において適宜設定される。
さらに、電磁波遮断層3における導電性高分子の含有量は、10wt%以上、90wt%以下であるのが好ましく、40wt%以上、80wt%以下であるのがより好ましい。マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損の値(dB)を小さくすることができるとともに、KEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果の値(dB)を前記範囲に設定することができる。
さらに、電磁波遮断層3の厚みTは、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下であることが好ましく、10μm以上、80μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、10μm以上、50μm以下である。電磁波遮断層3の厚みが前記下限値未満である場合、電磁波遮断層3の構成材料等によっては、基板搭載部品の端部で破断するおそれがある。また、電磁波遮断層3の厚みが前記上限値を超える場合、電磁波遮断層3の構成材料等によっては形状追従性が不足するおそれがある。また、かかる範囲内の厚みTとしても、優れた電磁波シールド性を発揮させることができるため、電磁波遮断層3の厚みTの薄膜化を実現すること、ひいては、基板5上において絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆された電子部品4が搭載された電子部品搭載基板の軽量化を実現することができる。
また、電磁波遮断層3は、その150℃における貯蔵弾性率が1.0E+05〜1.0E+09Paであるのが好ましく、5.0E+05〜5.0E+08Paであるのがより好ましい。前記貯蔵弾性率をかかる範囲内に設定することにより、貼付工程において、電磁波シールド用フィルム10の加熱の後、保護層1からの押圧力により、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込むことで、この凹凸6を被覆する際に、前記保護層1からの押圧力に応じて、電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応して変形させることができる。すなわち、電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性を向上させることができる。
<絶縁層2>
次に、絶縁層2について説明する。
絶縁層2は、電磁波遮断層3に接触して設けられ、保護層1側から電磁波遮断層3、絶縁層2の順で積層されている。このように積層された絶縁層2および電磁波遮断層3を備える電磁波シールド用フィルム10を用いて基板5上の凹凸6を被覆することで、基板5および電子部品4に絶縁層2が接触し、基板5側から絶縁層2、電磁波遮断層3の順で被覆することとなる。
このように、本実施形態では、絶縁層2は、基板5および電子部品4を被覆し、これにより、基板5上で隣接する電子部品4同士を絶縁するとともに、基板5および電子部品4を、絶縁層2を介して基板5と反対側に位置する他の部材(電子部品等)から絶縁する。
この絶縁層2としては、例えば、熱硬化性を有する絶縁樹脂または熱可塑性を有する絶縁樹脂(絶縁フィルム)が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性を有する絶縁樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性を有する絶縁樹脂は、屈曲性に優れたフィルムであることから、後述する貼付工程において、基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、絶縁層2を、凹凸6の形状に対応して容易に追従させることができる。また、熱可塑性を有する絶縁樹脂は、その軟化点温度に加熱すると、接着対象の基板から再剥離することができるので、基板の修理の際には、特に有用である。
熱可塑性を有する絶縁樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートのような熱可塑性ポリエステル、α−オレフィン、酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、エチレン酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル、ポリアミド、セルロースが挙げられる。これらの中でも基板との密着性、屈曲性、耐薬品性に優れるという理由から熱可塑性ポリエステル、α−オレフィンを用いることが好ましい。
さらに、熱可塑性を有する絶縁樹脂には、耐熱性や耐屈曲性等の性能を損なわない範囲で、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等を含有させることができる。また、熱可塑性を有する絶縁樹脂には、後述する導電性接着剤層の場合と同様に、接着性、耐ハンダリフロー性を劣化させない範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等を添加してもよい。
絶縁層2の厚みT(D)は、特に限定されないが、3μm以上、50μm以下であることが好ましく、4μm以上、30μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5μm以上、20μm以下である。絶縁層2の厚みが前記下限値未満である場合、耐ハゼ折り性が不足し、凹凸6への熱圧着後に折り曲げ部にてクラックが発生したり、フィルム強度が低下し、電磁波遮断層3の絶縁性支持体としての役割を担うことが難しい。前記上限値を超える場合、形状追従性が不足するおそれがある。すなわち、絶縁層2の厚みT(D)を前記範囲内に設定することにより、絶縁層2に屈曲性を確実に付与することができ、貼付工程において、基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、絶縁層2を、凹凸6の形状に対応して容易に追従させることができる。また、絶縁層2の厚みT(D)の薄膜化を実現すること、ひいては、絶縁層2および遮断層(反射層)3で被覆された電子部品4が搭載された基板5の軽量化および薄型化を実現することができる。
また、絶縁層2の25〜150℃における平均線膨張係数は、50〜1000[ppm/℃]であるのが好ましく、100〜700[ppm/℃]であるのがより好ましい。絶縁層2の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム10の加熱時において、絶縁層2は、優れた伸縮性を有するものとなるため、絶縁層2、さらには電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性が向上することとなる。
なお、この絶縁層2は、図1で示したように、1層で構成されるものの他、上述した絶縁フィルムのうち異なるものを積層させた2層以上の積層体であってもよい。
さらに、絶縁層2は、その電磁波遮断層3側の面、および、電磁波遮断層3と反対側の面の双方または何れか一方に、粘着剤層を備えるものであってもよい。これにより、電磁波遮断層3と絶縁層2との粘着性(密着性)および/または電磁波シールド用フィルム10で被覆する基板5と絶縁層2との粘着性(密着性)の向上が図られる。
この粘着剤層としては、前述した保護層1の説明で記載した粘着剤層と同様のものが挙げられる。
なお、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム10を、絶縁層2を備えるものとすることで、基板5および電子部品4を被覆し、これにより、基板5上で隣接する電子部品4同士を絶縁することとしたが、この絶縁層2による電子部品4同士の絶縁を必要としない場合には、この絶縁層2を省略することもできる。
さらに、後述する電子部品の被覆方法の貼付工程において、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込むことなく凹凸6を被覆することもできるが、この場合、絶縁層2および電磁波遮断層3が破断するのを防止する保護(緩衝)材として機能する保護層1の形成を省略することもできる。
また、電磁波シールド用フィルム10は、波長300nm以上、800nm以下における光線透過率が0.01%以上、30%以下であることが好ましく、0.01%以上、10%以下であることがより好ましい。これにより、光を吸収、遮断し電磁波遮断層3で被覆している内部すなわち電子部品4が見えなくすることができるため、例えば、電磁波遮断層3で被覆された電子部品搭載基板の流通時における電子部品4の秘匿性を担保することができるという利点が得られる。
なお、前記光線透過率は、例えば、紫外可視分光光度計により求めることができる。
<電子部品の被覆方法>
以上のような構成の電磁波シールド用フィルム10を用いて、例えば、以下のようにして、基板5上に搭載された電子部品4が被覆される。
図2は、図1に示す電磁波シールド用フィルムを用いた電子部品の被覆方法を説明するための縦断面図である。
以下の電子部品の被覆方法は、基板5上に、電磁波シールド用フィルム10を絶縁層2と電子部品4が接着するように貼付する貼付工程を有する。
(貼付工程)
前記貼付工程とは、例えば、図2(a)に示すように、基板5上に電子部品4を搭載することで設けられた凹凸6に、電磁波シールド用フィルム10を貼付する工程である。
貼付する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のような方法が挙げられる。
すなわち、まず、基板5の凹凸6が形成されている側の面と、電磁波シールド用フィルム10の絶縁層2側の面とが対向するように、基板5と電磁波シールド用フィルム10とを重ね合わせた状態でセットし、その後、これらを常温下において、電磁波シールド用フィルム10側から均一に電磁波シールド用フィルム10と基板5とが互いに接近するように、加圧することにより実施される。
このように電磁波シールド用フィルム10側から均一に加圧することで、保護層1が凹凸6の形状に追従し、さらに、これに併せて、保護層1よりも基板5側に位置する、絶縁層2および電磁波遮断層3も凹凸6の形状に追従する。これにより、凹凸6の形状に保護層1、絶縁層2および電磁波遮断層3が追従した状態で、保護層1、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6が被覆される。
このような貼付工程において、貼付する温度は、常温であり、具体的には、5℃以上、35℃以下であることが好ましく、20℃以上、30℃以下であることがより好ましく、25℃であることがさらに好ましい。
また、貼付する圧力は、特に限定されないが、0.05MPa以上、0.5MPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.1MPa以上、0.3MPa以下である。
さらに、貼付する時間は、特に限定されないが、1秒以上、60秒以下であることが好ましく、より好ましくは5秒以上、30秒以下である。
貼付工程における条件を上記範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム10側からの加圧による電子部品4の破損を招くことなく、基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3が追従した状態で、これら絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を確実に被覆することができる。
以上のような工程を経ることにより、保護層1、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を被覆することができる。なお、本実施形態のように、被覆した凹凸6に保護層1が残存する被覆方法では、基板5の反対側に位置する他の部材(電子部品等)と電磁波遮断層3とを絶縁する絶縁層としての機能を保護層1が発揮する。
さらに、電子部品4の被覆は、電磁波シールド用フィルム10で被覆する方法、すなわち、保護層1、絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆する上述した方法の他、電磁波シールド用フィルム10から保護層1を剥離して、絶縁層2および電磁波遮断層3により、電子部品4を被覆するようにしてもよい。
図3は、図1に示す電磁波シールド用フィルムを用いた電子部品の被覆方法の他の被覆方法を説明するための縦断面図である。
以下の電子部品の他の被覆方法は、基板5上に、電磁波シールド用フィルム10を絶縁層2と電子部品4が接着するように貼付する貼付工程と、前記貼付工程の後、保護層1を剥離する剥離工程とを有する。
(貼付工程)
貼付工程では、図2で説明した電子部品の被覆方法と同様に、図3(a)に示すように、基板5上に電子部品4を搭載することで設けられた凹凸6に、電磁波シールド用フィルム10を貼付する。
(剥離工程)
剥離工程では、例えば、図3(b)に示すように、前記貼付工程の後、保護層1を電磁波シールド用フィルム10から剥離する。
この剥離工程により、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム10における保護層1と電磁波遮断層3との界面において、剥離が生じ、その結果、電磁波遮断層3から保護層1が剥離される。これにより、電磁波遮断層3から保護層1を剥離した状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6が被覆される。
なお、保護層1を剥離する方法としては、特に限定されないが、例えば、手作業による剥離が挙げられる。
この手作業による剥離では、まず、保護層1の一方の端部を把持し、この把持した端部から保護層1を電磁波遮断層3から引き剥がし、次いで、この端部から中央部へさらには他方の端部へと順次保護層1を引き剥がすことにより、電磁波遮断層3から保護層1が剥離される。
なお、剥離の際には、保護層1を加熱するのが好ましく、その際の加熱温度は、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
以上のような工程を経ることにより、電磁波遮断層3から保護層1を剥離した状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を被覆することができる。
なお、前記実施形態では、図1に示したように、電磁波シールド用フィルム10が備える保護層1が1層で構成される場合について説明したが、かかる構成のものに限定されず、例えば、保護層1は、第1の層、第2の層がこの順で積層された2層の積層体であってもよいし、第1の層、第2の層、第3の層がこの順で積層された3層の積層体であってもよい。
2層の積層体の構成とする場合、第1の層としては、前記実施形態で説明した、保護層1と同様の構成のものを用いることができる。
第2の層は、第1の層と電磁波遮断層3との間に位置して、電磁波シールド用フィルムの製造方法の第1の工程において、電磁波遮断層3に保護層(保護シート)1を貼付する際に、第1の層を電磁波遮断層3に粘着(貼付)させる粘着層として機能するものである。
この第2の層は、特に限定されないが、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリイミド系接着剤およびシアネート系接着剤等の各種接着剤を用いて形成される。
第2の層の厚みT(C)は、特に限定されないが、1μm以上、10μm以下であることが好ましく、3μm以上、8μm以下であることがより好ましい。第2の層の厚みが前記下限値未満である場合、第2の層の構成材料の種類によっては、第2の層による粘着性が十分に発揮されないおそれがある。また、第2の層の厚みが前記上限値を超える場合、電磁波シールド用フィルム10を用いて被覆する基板5の設計によっては、基板5を電磁波シールド用フィルム10で被覆した積層体の軽量化・薄型化が実現されないおそれがある。
さらに、3層の積層体の構成とする場合、第1の層および第3の層としては、前記実施形態で説明した、保護層1と同様の構成のものを用いることができる。
第2の層は、電子部品の被覆方法の貼付工程において、保護層1を押し込み用の保護として用いて基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、第3の層を、凹凸6に対して押し込む(埋め込む)ためのクッション機能を有するものである。また、第2の層は、この押し込む力を、第3の層、さらには、この第3の層を介して絶縁層2および電磁波遮断層3に、均一に作用させる機能を有しており、これにより、電磁波遮断層3と凹凸6との間にボイドを発生させることなく、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6に対して優れた密閉性をもって押し込むことができる。
この第2の層(クッション層)の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロプレン等のαオレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合体成分として有するαオレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂が挙げられ、これらを単独あるいは複数併用してもよい。これらの中でも、αオレフィン系共重合体を用いることが好ましい。具体的には、エチレン等のαオレフィンと、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体(EMMA)、およびそれらの部分イオン架橋物等が挙げられる。αオレフィン系共重合体は、形状追従性に優れ、さらに、第3の層の構成材料と比較して柔軟性に優れることから、かかる構成材料で構成される第2の層に、第3の層を凹凸6に対して押し込む(埋め込む)ためのクッション機能を確実に付与することができる。
第2の層の厚みT(C)は、特に限定されないが、10μm以上、100μm以下であることが好ましく、20μm以上、80μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは30μm以上、60μm以下である。第2の層の厚みが前記下限値未満である場合、第2の層の形状追従性が不足し、熱圧着工程で凹凸6への追従性が不足するというおそれがある。また、第2の層の厚みが前記上限値を超える場合、熱圧着工程において、第2の層からの樹脂のシミ出しが多くなり、圧着装置の熱盤に付着し、作業性が低下するというおそれがある。
また、第2の層の25〜150℃における平均線膨張係数は、500以上[ppm/℃]であるのが好ましく、1000以上[ppm/℃]であるのがより好ましい。第2の層の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム10の加熱時において、第2の層を、第3の層と比較してより優れた伸縮性を有するものと容易にすることができる。そのため、第2の層、さらには電磁波遮断層3および絶縁層2の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
また、前記実施形態では、基板への電子部品の搭載により、基板上に凹凸が形成されており、この凹凸を電磁波シールド用フィルムで被覆する場合について説明したが、電磁波シールド用フィルムによる被覆は、このような凹凸に対する被覆に限定されず、例えば、筐体等が備える平坦(フラット)な領域に対して施すようにしてもよい。
以上、本発明の電磁波シールド用フィルム、および電子部品搭載基板について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の電磁波シールド用フィルムおよび本発明の電子部品搭載基板には、同様の機能を発揮し得る、任意の層が追加されていてもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
<電磁波シールド性評価用フィルムの製造>
まず、電磁波遮断層を構成する樹脂として、ポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANT)と、バインダーとしてのポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン63SS)とを、重量比で20%:80%含むものを準備した。
次いで、ポリエチレンテレフタラートフィルム(帝人デュポン製、A−314、厚み38μm)上に、電磁波遮断層を構成する樹脂をコーティングした後、加熱・乾燥させて、電磁波遮断層を形成することで、電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、実施例1の電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、電磁波遮断層の厚みは10μmであった。
(実施例2−1)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、ポリアニリンと、バインダーとの含有量が、重量比で80wt%:20wt%であるものを準備したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2−1の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、実施例2−1の電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、電磁波遮断層の厚みは10μmであった。
(実施例2−2)
電磁波遮断層の厚みが17.5μmとなるように電磁波遮断層を形成したこと以外は、前記実施例2−1と同様にして、実施例2−2の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
(実施例3−1)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、ポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANT)と、銀粒子(福田金属箔粉工業社製、商品名:Ag−XF301)と、バインダーとしてのポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン63SS)とを、重量比で60%:20%:20%含むものを準備したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例3−1の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、実施例3−1の電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、電磁波遮断層の厚みは11μmであった。
(実施例3−2)
電磁波遮断層の厚みが19μmとなるように電磁波遮断層を形成したこと以外は、前記実施例3−1と同様にして、実施例3−2の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
(実施例4−1)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、ポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANT)と、銀粒子(福田金属箔粉工業社製、商品名:Ag−XF301)と、バインダーとしてのポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン63SS)とを、重量比で40%:40%:20%含むものを準備したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例4−1の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、実施例4−1の電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、電磁波遮断層の厚みは9μmであった。
(実施例4−2)
電磁波遮断層の厚みが20μmとなるように電磁波遮断層を形成したこと以外は、前記実施例4−1と同様にして、実施例4−2の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
(比較例1−1)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、ポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANT)と、銀粒子(福田金属箔粉工業社製、商品名:Ag−XF301)と、バインダーとしてのポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン63SS)とを、重量比で20%:60%:20%含むものを準備したこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1−1の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、比較例1−1の電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、電磁波遮断層の厚みは12μmであった。
(比較例1−2)
電磁波遮断層の厚みが19μmとなるように電磁波遮断層を形成したこと以外は、前記比較例1−1と同様にして、比較例1−2の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
(比較例2−1)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、銀粒子(福田金属箔粉工業社製、商品名:Ag−XF301)と、バインダーとしてのポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン63SS)とを、重量比で80%:20%含むものを準備したこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例2−1の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、比較例2−1の電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、電磁波遮断層の厚みは10μmであった。
(比較例2−2)
電磁波遮断層の厚みが20μmとなるように電磁波遮断層を形成したこと以外は、前記比較例2−1と同様にして、比較例2−2の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
(比較例3)
電磁波遮断層を構成する樹脂として、ポリアニリン(株式会社レグルス社製、商品名:PANT)と、銀粒子(福田金属箔粉工業社製、商品名:Ag−XF301)と、バインダーとしてのポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン63SS)とを、重量比で10%:70%:20%含むものを準備したこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例3の電磁波シールド性評価用フィルムを作製した。
なお、比較例3の電磁波シールド性評価用フィルムにおいて、電磁波遮断層の厚みは20μmであった。
<評価試験>
<<不整合損>>
各実施例および各比較例で作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、前述したマイクロストリップライン法を用いて、周波数0.1〜10GHzの範囲内における不整合損の値を測定し、周波数0.1GHz以上3GHz以下の範囲内における不整合損の最高値を求めた。
<<電磁波シールド性>>
各実施例および各比較例で作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、前述したKEC法(電界)を用いて、周波数0.001〜1GHzの範囲内における電磁波シールド効果の値を測定し、周波数0.01GHz以上1GHz以下の範囲内における電磁波シールド効果の最高値、および周波数0.1GHz以上1GHz以下の範囲内における電磁波シールド効果の最低値を求めた。
以上の各実施例、各比較例の評価試験の結果を表1および図4、5に示す。
表1に示した通り、PANI(導電性高分子)および銀粒子(金属系粒子)の含有量を適宜設定することにより、各実施例のように、周波数0.1GHz以上3GHz以下の電磁波における、マイクロストリップライン法を用いて測定した際の不整合損を1dB以下、かつ、周波数0.01GHz以上1GHz以下の電磁波における、KEC法(電界)を用いて測定した際の電磁波シールド効果を3dB以上に設定することができ、電磁波遮断層を、反射成分および透過成分を小さくした状態で、吸収成分により電磁波を遮断しているものとすることができる。