以下、本発明の電磁波シールド用フィルム、および電子部品搭載基板を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて、詳細に説明する。
本発明の電磁波シールド用フィルムは、基材層と、該基材層に積層された、導電性高分子と金属粉を主材料として含有する電磁波遮断層とを含んで構成されることを特徴する。
このような電磁波シールド用フィルムによれば、電磁波遮断層の軽量化・薄型化を図る
ことができるとともに、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで効果的に遮断す
ることができる。
<電磁波シールド用フィルム>
<第1実施形態>
図1は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第1実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
なお、本実施形態では、本発明の電磁波シールド用フィルムを、基板5上の凹凸6を被覆するために用いる場合を、一例に説明する。
図1に示すように、本実施形態において、電磁波シールド用フィルム100は、基材層1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とを含んで構成され、絶縁層2および電磁波遮断層3は、基材層1の下面(一方の面)側から、絶縁層2が基材層1に接触して、この順で積層されている。
また、基材層1は、第1の層11と、第2の層13と、第3の層12とで構成され、これらが基材層1の上面(他方の面)側から、この順で積層されている。
なお、以下では、基板5上に電子部品4が搭載(載置)され、この電子部品4の搭載により基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成されており、この凹凸6を電磁波シールド用フィルム100で被覆する場合について説明する。なお、基板5上に搭載する電子部品4としては、例えば、フレキシブル回路基板(FPC)上に搭載されているLCDドライバーIC、タッチパネル周辺のIC+コンデンサーまたは電子回路基板(マザーボード)が挙げられる。
<基材層1>
まず、基材層1について説明する。
基材層1は、貼付工程において、電磁波シールド用フィルム100を用いて、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込むことで、この凹凸6を被覆する際に、絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込み(埋め込み)、これら絶縁層2および電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性を向上させるための基材として機能するものである。また、剥離工程において、凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込んだ状態で、これらから剥離するものである。
また、この基材層1の150℃における貯蔵弾性率は、2.0E+05〜2.0E+08Paであるのが好ましく、1.0E+06〜1.0E+08Paであるのがより好ましく、3.0E+06〜6.0E+07Paであるのがさらに好ましい。前記貯蔵弾性率を前記範囲内とすることにより、基板5に設けられた凹凸6における段差が500μm以上、好ましくは1.0〜3.0mmのもののように段差が大きいものであったり、前記凹凸6における凸部61同士の離間距離(ピッチ)が200μm以下、好ましくは100μm〜150μmのもののように離間距離が小さいものであったとしても、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応した状態で確実に押し込むことができる。
また、基材層1は、25℃における貯蔵弾性率が1.0E+07〜1.0E+10Paであるのが好ましく、5.0E+08〜5.0E+09Paであるのがより好ましい。このように、常温(室温)時、すなわち25℃における貯蔵弾性率を前記範囲内に設定することにより、基材層1を、電磁波シールド用フィルム100の加熱前には液状ではなく固形状をなし、電磁波シールド用フィルム100の加熱時には半固形状(ゲル状)をなすものとすることができる。そのため、基材層1(電磁波シールド用フィルム100)の基板5への貼付時には、基材層1を基板5に対してシワ等を生じさせることなく貼付することができ、また規定のサイズにカットする際の作業性も向上するとともに、基板5に設けられた凹凸6への押し込み時には、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6が有する凹部62内に、この基材層1をもって確実に押し込むことができる。なお、かかる貯蔵弾性率の特性を有する基材層1は、少なくとも第1の層11および第3の層12が熱可塑性樹脂で構成され、貼付工程における電磁波シールド用フィルム100の加熱後においても、その25℃における貯蔵弾性率が前記範囲内を維持しているのが好ましい。これにより、剥離工程において、絶縁層2から基材層1を容易に剥離させることができる。
さらに、基材層1の120℃における貯蔵弾性率をA[Pa]とし、基材層1の150℃における貯蔵弾性率をB[Pa]としたとき、0.02≦A/B≦1.00なる関係を満足するのが好ましく、0.02≦A/B≦0.50なる関係を満足するのがより好ましい。かかる関係を満足する基材層1は、その加熱時において、加熱時の温度変化に起因する基材層1の貯蔵弾性率の変化の幅が小さいものと言うことができる。したがって、加熱時の温度条件をたとえ変化させたとしても、この温度変化に起因する基材層1の貯蔵弾性率の変化の幅を必要最小限にとどめることができるため、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6が有する凹部62内に、この基材層1をもってより確実に押し込むことができる。
このように、絶縁層2および電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性を向上させるための基材として機能する基材層1の加熱時における貯蔵弾性率を、前記範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100を用いて、基板5上の凹凸6を被覆する際に、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応した状態で確実に押し込むことができる。その結果、この凹凸6が設けられた基板5を、電磁波遮断層3をもって確実に被覆することができるため、この電磁波遮断層3による凹凸6が設けられた基板5に対する電磁波シールド(遮断)性が向上することとなる。
なお、各層の25℃、120℃および150℃における貯蔵弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメント社製、「DMS6100」)を用いて、測定すべき各層の貯蔵弾性率を、25〜200℃まで、49mNの一定荷重の引張モードで昇温速度5℃/分、周波数1Hzで測定し、25℃、120℃および150℃での貯蔵弾性率を、それぞれ読み取ることにより求めることができる。
本実施形態では、基材層1は、第1の層11と、第2の層13と、第3の層12とで構成され、これらが基材層1の上面(他方の面)側から、この順で積層されたものであり、上述したように、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応して押し込むことができるように、これら各層11〜13の種類、および厚さ等が適宜組み合わされる。
以下、これら各層11〜13について、それぞれ、説明する。
第1の層11は、貼付工程において、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を、例えば、真空加圧式ラミネーター等を用いて押し込む際に、真空加圧式ラミネーター等が有する押圧部との離型性の機能を付与するためのものである。また、第2の層13側に押圧部からの押圧力を伝播するためのものである。
この第1の層(第1離型層)11の構成材料としては、特に限定されず、例えば、シンジオタクチックポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、シリコーンのような樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、シンジオタクチックポリスチレンを用いることが好ましい。このように、ポリスチレンとしてシンジオタクチック構造を有するものを用いることにより、ポリスチレンを、結晶性を備えるものとすることができるため、これに起因して、第1の層11の装置との離型性、さらには耐熱性および形状追従性を優れたものとすることができる。
第1の層11に前記シンジオタクチックポリスチレンを用いる場合、その含有量は、特に制限されないが、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上、95重量%以下であることがより好ましく、さらには80重量%以上、90重量%以下であることが好ましい。シンジオタクチックポリスチレンの含有量が前記下限値未満である場合、第1の層11の離型性が低下するおそれがある。また、シンジオタクチックポリスチレンの含有量が前記上限値を超える場合、第1の層11の形状追従性が不足するおそれがある。
なお、第1の層11は、シンジオタクチックポリスチレンのみで構成されていても構わない。また、第1の層11は、前記シンジオタクチックポリスチレンの他に、さらにスチレン系エラストマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等を含有していてもよい。
第1の層11の厚みT(A)は、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下であることが好ましく、10μm以上、70μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは20μm以上、50μm以下である。第1の層11の厚みが前記下限値未満である場合、第1の層11が破断し、その離型性が低下するおそれがある。また、第1の層11の厚みが前記上限値を超える場合、基材層1の形状追従性が低下し、電磁波遮断層3および絶縁層2の形状追従性が低下するおそれがある。
また、第1の層11の25〜150℃における平均線膨張係数は、50〜1000[ppm/℃]であるのが好ましく、100〜700[ppm/℃]であるのがより好ましい。第1の層11の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100の加熱時において、第1の層11は、優れた伸縮性を有するものとなるため、電磁波遮断層3および絶縁層2の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
なお、各層の平均線膨張係数は、例えば、熱機械分析装置(セイコーインスツルメント社製、「TMASS6100」)を用いて、測定すべき各層の貯蔵弾性率を、25〜200℃まで、49mNの一定荷重の引張モードで昇温速度5℃/分で測定し、25℃〜150℃での平均線膨張係数を、それぞれ読み取ることにより求めることができる。
さらに、第1の層11の表面張力は、20〜40[mN/m]であるのが好ましく、25〜35[mN/m]であるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を有する第1の層11を優れた離型性を備えるものと言うことができ、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、押圧部から第1の層11を剥離させることができる。
第3の層12は、貼付工程において、基板5上の凹凸6に対する絶縁層2および電磁波遮断層3の押し込みを、真空加圧式ラミネーター等を用いて実施した後に、剥離工程において、基材層1を絶縁層2から剥離する際に、基材層1に剥離性の機能を付与するためのものである。また、基板5上の凹凸形状に応じて、第3の層12が追従する追従性の機能を有し、かつ、絶縁層2側に、押圧部からの押圧力を伝播する機能を併せ持つものである。
この第3の層(第2離型層)12の構成材料としては、特に限定されず、例えば、シンジオタクチックポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、シリコーンのような樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、シンジオタクチックポリスチレンを用いることが好ましい。このように、ポリスチレンとしてシンジオタクチック構造を有するものを用いることにより、ポリスチレンを、結晶性を備えるものとすることができるため、これに起因して、第3の層12の絶縁層2との離型性、さらには耐熱性および形状追従性を優れたものとすることができる。
第3の層12における前記シンジオタクチックポリスチレンの含有量は、特に制限されず、シンジオタクチックポリスチレンのみで構成されていても構わないが、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上、95重量%以下であることがより好ましく、さらには80重量%以上、90重量%以下であることが好ましい。シンジオタクチックポリスチレンの含有量が前記下限値未満である場合、第3の層12の離型性が低下するおそれがある。また、シンジオタクチックポリスチレンの含有量が前記上限値を超える場合、第3の層12の形状追従性が不足するおそれがある。
なお、第3の層12は、前記シンジオタクチックポリスチレンの他に、さらにスチレン系エラストマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等を含有していてもよい。また、第3の層12と、前記第1の層11とを構成する樹脂は、同じであっても異なっていても構わない。
第3の層12の厚みT(B)は、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下であることが好ましく、10μm以上、70μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは20μm以上、50μm以下である。第3の層12の厚みが前記下限値未満である場合、耐熱性が不足し、熱圧着工程で基材層の耐熱性が不足し、変形が発生し、電磁波遮断層および絶縁層が変形するおそれがある。また、第3の層12の厚みが前記上限値を超える場合、電磁波シールド用フィルム全体の総厚みが厚くなり、カット等の作業性が低下するおそれがあり、また、コスト面でも経済的ではない。
なお、第3の層12と、第1の層11の厚みは、同じであっても異なっていても構わない。
また、第3の層12の25〜150℃における平均線膨張係数は、50〜1000[ppm/℃]であるのが好ましく、100〜700[ppm/℃]であるのがより好ましい。第3の層12の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100の加熱時において、第3の層12は、優れた伸縮性を有するものとなるため、第3の層12、さらには電磁波遮断層3および絶縁層2の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
さらに、第3の層12の表面張力は、20〜40[mN/m]であるのが好ましく、25〜35[mN/m]であるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を有する第3の層12を優れた離型性を備えるものと言うことができ、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、基材層1を絶縁層2から剥離する際に、第3の層12と絶縁層2との界面において、基材層1を確実に剥離させることができる。
第2の層13は、貼付工程において、基材層1を押し込み用の基材として用いて基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、第3の層12を、凹凸6に対して押し込む(埋め込む)ためのクッション機能を有するものである。また、第2の層13は、この押し込む力を、第3の層12、さらには、この第3の層12を介して絶縁層2および電磁波遮断層3に、均一に作用させる機能を有しており、これにより、電磁波遮断層3と凹凸6との間にボイドを発生させることなく、絶縁層2および電磁波遮断層3を凹凸6に対して優れた密閉性をもって押し込むことができる。
この第2の層(クッション層)13の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロプレン等のαオレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合体成分として有するαオレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂が挙げられ、これらを単独あるいは複数併用してもよい。これらの中でも、αオレフィン系共重合体を用いることが好ましい。具体的には、エチレン等のαオレフィンと、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体(EMMA)、およびそれらの部分イオン架橋物等が挙げられる。αオレフィン系共重合体は、形状追従性に優れ、さらに、第3の層12の構成材料と比較して柔軟性に優れることから、かかる構成材料で構成される第2の層13に、第3の層12を凹凸6に対して押し込む(埋め込む)ためのクッション機能を確実に付与することができる。
第2の層13の厚みT(C)は、特に限定されないが、10μm以上、100μm以下であることが好ましく、20μm以上、80μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは30μm以上、60μm以下である。第2の層13の厚みが前記下限値未満である場合、第2の層13の形状追従性が不足し、熱圧着工程で凹凸6への追従性が不足するというおそれがある。また、第2の層13の厚みが前記上限値を超える場合、熱圧着工程において、第2の層13からの樹脂のシミ出しが多くなり、圧着装置の熱盤に付着し、作業性が低下するというおそれがある。
また、第2の層13の25〜150℃における平均線膨張係数は、500以上[ppm/℃]であるのが好ましく、1000以上[ppm/℃]であるのがより好ましい。第2の層13の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100の加熱時において、第2の層13を、第3の層12と比較してより優れた伸縮性を有するものと容易にすることができる。そのため、第2の層13、さらには電磁波遮断層3および絶縁層2の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
なお、各層11〜13の平均線膨張係数を、それぞれ、前述した範囲内において適宜設定することで、基材層1の150℃における貯蔵弾性率を2.0E+05〜2.0E+08Paの範囲内に容易に設定することができる。
また、第1の層11の厚みT(A)と、第3の層12の厚みT(B)と、第2の層13の厚みT(C)とは、例えば、次の関係式を満たすことが好ましく、
0.05<T(C)/(T(A)+T(B))<10、
次の関係式を満たすことがより好ましく、
0.14<T(C)/(T(A)+T(B))<4、
さらに好ましくは次の関係式を満たすことである、
0.3<T(C)/(T(A)+T(B))<1.5。
第1の層11の厚みT(A)と、第3の層12の厚みT(B)と、第2の層13の厚みT(C)とが、前記関係式を満たすことにより、形状追従性がより向上する。
基材層1の全体の厚みT(F)は、特に限定されないが、20μm以上、300μm以下であることが好ましく、40μm以上、220μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは70μm以上、160μm以下である。基材層1の全体の厚みが前記下限値未満である場合、第1の層11が破断し、基材層1の離型性が低下するというおそれがある。また、基材層1の全体の厚みが前記上限値を超える場合、基材層1の形状追従性が低下し、電磁波遮断層3および絶縁層2の形状追従性が低下するというおそれがある。
<絶縁層2>
次に、絶縁層2について説明する。
絶縁層2は、本実施形態では、基材層1(第3の層12)に接触して設けられ、基材層1側から絶縁層2、電磁波遮断層3の順で積層されている。このように積層された絶縁層2および電磁波遮断層3を備える電磁波シールド用フィルム100を用いて基板5上の凹凸6を被覆することで、基板5および電子部品4に電磁波遮断層3が接触し、基板5側から電磁波遮断層3、絶縁層2の順で被覆することとなる。
このように、本実施形態では、絶縁層2は、基板5および電子部品4を、電磁波遮断層3を介して被覆し、これにより、基板5、電子部品4および電磁波遮断層3を、絶縁層2を介して基板5と反対側に位置する他の部材(電子部品等)から絶縁する。
この絶縁層2としては、例えば、熱硬化性を有する絶縁樹脂または熱可塑性を有する絶縁樹脂(絶縁フィルム)が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性を有する絶縁樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性を有する絶縁樹脂は、屈曲性に優れたフィルムであることから、貼付工程において、基材層1を押し込み用の基材として用いて基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、絶縁層2を、凹凸6の形状に対応して確実に追従させることができる。また、熱可塑性を有する絶縁樹脂は、その軟化点温度に加熱すると、接着対象の基板から再剥離することができるので、基板の修理の際には、特に有用である。
熱可塑性を有する絶縁樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリエステル、α−オレフィン、酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、エチレン酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル、ポリアミド、セルロースが挙げられる。これらの中でも基板との密着性、屈曲性、耐薬品性に優れるという理由から熱可塑性ポリエステル、α−オレフィンを用いることが好ましい。
さらに、熱可塑性を有する絶縁樹脂には、耐熱性や耐屈曲性等の性能を損なわない範囲で、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等を含有させることができる。また、熱可塑性を有する絶縁樹脂には、後述する導電性接着剤層の場合と同様に、接着性、耐ハンダリフロー性を劣化させない範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等を添加してもよい。
絶縁層2の厚みT(D)は、特に限定されないが、3μm以上、50μm以下であることが好ましく、4μm以上、30μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5μm以上、20μm以下である。絶縁層2の厚みが前記下限値未満である場合、耐ハゼ折り性が不足し、凹凸6への熱圧着後に折り曲げ部にてクラックが発生したり、フィルム強度が低下し、導電性接着剤層の絶縁性支持体としての役割を担うことが難しい。前記上限値を超える場合、形状追従性が不足するおそれがある。すなわち、絶縁層2の厚みT(D)を前記範囲内に設定することにより、絶縁層2を屈曲性により優れたものとすることができ、貼付工程において、基材層1を押し込み用の基材として用いて基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に、絶縁層2を、凹凸6の形状に対応してより確実に追従させることができる。
また、絶縁層2の25〜150℃における平均線膨張係数は、50〜1000[ppm/℃]であるのが好ましく、100〜700[ppm/℃]であるのがより好ましい。絶縁層2の平均線膨張係数をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド用フィルム100の加熱時において、絶縁層2は、優れた伸縮性を有するものとなるため、絶縁層2、さらには電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。
なお、この絶縁層2は、図1、2で示したように、1層で構成されるものの他、上述した絶縁フィルムのうち異なるものを積層させた2層以上の積層体であってもよい。
<電磁波遮断層3>
次に、電磁波遮断層(遮断層)3について説明する。
電磁波遮断層3は、基板5上に設けられた電子部品4と、この電磁波遮断層3を介して、基板5(電子部品4)と反対側に位置する他の電子部品等とを、これら少なくとも一方から生じる電磁波を遮断(シールド)する機能を有する。
ここで、一般的に、電磁波を遮断する機能を発揮するには、電磁波遮断層に入射した電磁波を反射することにより遮断(遮蔽)する反射層と、電磁波遮断層に入射した電磁波を吸収することにより遮断(遮蔽)する吸収層とが知られている。
このような反射層と吸収層とでは、これらが、ほぼ同一の電磁波シールド性を有していると仮定した場合、吸収層では、吸収層に入射した電磁波を吸収し、熱エネルギーに変換することで遮断して、この吸収により電磁波を消滅させる。そのため、反射層のように反射した電磁波が電磁波遮断層で被覆されていない他の部材等に対して誤作動等の悪影響をおよぼしてしまうのを確実に防止することができるという観点から、電磁波遮断層を吸収層で構成するのが好ましい。
そこで、本発明者は、電磁波を遮断する電磁波遮断層として知られる導電性高分子を主材料として含有する電磁波遮断層に着目し、かかる電磁波遮断層について、鋭意検討した結果、導電性高分子と金属粉を併用することで、反射層としての機能を電磁波遮蔽層が優位に発揮することなく、吸収層としての機能を電磁波遮蔽層が優位に発揮することがわかってきた。
すなわち、電磁波遮断層が、導電性高分子と金属粉を含むことで、吸収層としての機能を的確に発揮させることができ、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで、電磁波の吸収により電磁波を効果的に遮断し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
次に導電性高分子について説明する。
本発明の導電性高分子は、特に限定されず、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)、PEDOT/PSS(poly−ethylenedioxythiophene/poly−styrenesulfonate)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリアニリンであるのが好ましい。これらによれば、電磁波遮断層3の軽量化・薄型化を図ったとしても、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波までより確実に遮断することができるようになる。
また、導電性高分子として、ポリアニリンを用いる場合、その粒子径の平均値(平均粒径)は、0.5μm以上、10μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上、5.0μm以下であるのがより好ましい。
ポリアニリンの粒子径を、それぞれ、前記範囲内に設定することにより、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで確実に遮断することができるとともに、形成される電磁波遮断層3をより均一な膜厚を有するものとすることができる。
また、電磁波遮断層3における導電性高分子の含有量は、5wt%以上、50wt%以下であるのが好ましく、8wt%以上、40wt%以下であるのがより好ましい。前記範囲内であると電磁波シールド性とフィルム性が保たれるため好ましい。
次に金属粉について説明する。
本発明の金属粉は、特に限定されず、例えば、金、銀、銀コート銅、銅、ニッケル等であり、中でも銀、銀コート銅が導電性の点から好ましい。
金属粉の形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状、樹枝状、鱗片状、フレーク状などが挙げられる。中でも、鱗片状を用いると、粒子同士が接触しやすくなり、導電性が向上するため好ましい。
鱗片状の形状とは、平板な形状であればよく、特に平面形状は限定されない。種々の形状の粒子を押しつぶしたり、叩き潰したりして形成した鱗片状金属粉が、コストや生産性の面で好適に用いられる。
鱗片状金属粉の大きさは、平均厚さが0.01μm以上1μm以下であり、かつ、平均粒径が1μm以上20μm以下であることが好ましい。前記範囲内であると分散性と配向性が良好であり電磁波シールド性が保たれるため好ましい。
なお、金属粉の平均粒径や平均厚さは、レーザー回折散乱法により測定することができる。
電磁波遮断層3における金属粉の含有量は、40wt%以上、80wt%以下であるのが好ましく、45wt%以上、75wt%以下であるのがより好ましい。前記範囲内であると電磁波シールド性が保たれるため好ましい。
上記のような、導電性高分子と、金属粉を併用することで、これらのいずれか一方を単独使用した場合と比較して、高周波帯域の電磁波を遮蔽する効果が格段に向上することが認められる。これは、金属粉粒子間の隙間を導電性高分子が埋めることによって、抵抗値が下がり、電磁波を遮蔽する効果が向上すると考えられる。
電磁波遮断層3は、前述した導電性高分子と金属粉以外の樹脂を用いてもよい。すなわち、導電性高分子を製膜することで、金属粉以外の成分を含有することなく、フィルム化してもよいが、バインダー樹脂を使用して、製膜化してもよい。
バインダー樹脂としては特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を使用することができる。電磁波遮断層3の耐熱性と柔軟性を両立できるポリエステル樹脂を使用することが好ましい。
上記ポリエステル樹脂としては、市販のポリエステル樹脂が利用できる。好ましくは、熱可塑性飽和型共重合ポリエステル樹脂を用いるとよい。その中でも、平均分子量が2000〜40000の範囲に有るものが好ましく使用できる。
電磁波遮断層3の厚みTは、特に限定されないが、1μm以上、100μm以下であることが好ましく、2μm以上、80μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、3μm以上、50μm以下である。電磁波遮断層3の厚みが前記下限値未満である場合、電磁波遮断層3の構成材料等によっては、基板搭載部品の端部で破断するおそれがある。また、電磁波遮断層3の厚みが前記上限値を超える場合、電磁波遮断層3の構成材料等によっては形状追従性が不足するおそれがある。また、かかる範囲内の厚みTとしても、優れた電磁波シールド性を発揮させることができるため、電磁波遮断層3の厚みTの薄膜化を実現すること、ひいては、基板5上において絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆された電子部品4が搭載された電子部品搭載基板の軽量化を実現することができる。
以上のような電磁波遮断層3は、マイクロストリップライン法(MSL法)を用いて測定した、周波数0.2〜1GHzにおける、電磁波を遮断(シールド)する電磁波シールド性(吸収性)が5dB以上であるのが好ましく、6dB以上であるのがより好ましく、7dB以上であるのがさらに好ましい。ここで、MSL法では、電磁波を遮断する電磁波シールド性は、以下で説明する測定方法の特性から、主として電磁波を吸収することにより遮断する吸収性(吸収能)を表す値として測定される。したがって、前記範囲内の電磁波シールド性(吸収性)を有する電磁波遮断層3であれば、電磁波遮断層3に入射した電磁波を吸収することにより遮断(遮蔽)することで優れた電磁波シールド性を発揮する電磁波遮断層(吸収層)3と言うことができ、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで確実に遮断することができる。
なお、MSL法を用いた測定は、例えば、IEC規格62333−2に準拠して、50Ωのインピーダンスを有するマイクロストリップラインと、ネットワークアナライザーとを用いて、反射成分S11と透過成分S21を測定することにより行われ、電磁波シールド性(吸収性)は、下記式(1)および下記式(2)を用いることにより求めることができる。
ロス率(P(loss)/P(in))=1−(S112+S212)/1 (1)
電磁波シールド性(伝送減衰率) = −10・log[10^(S21/10)/{1−10^(S11/10)}](2)
さらに、電磁波遮断層3は、関西電子工業振興センターで開発されたKEC法を用いて測定した周波数0.2〜1GHzにおける、電磁波を遮断(シールド)する電磁波シールド性(吸収性+反射性)が25dB以上であるのが好ましく、35dB以上であるのがより好ましく、40dB以上であるのがさらに好ましい。ここで、KEC法では、電磁波を遮断する電磁波シールド性は、以下で説明する測定方法の特性から、電磁波を吸収することにより遮断する吸収性(吸収能)と電磁波を反射することにより遮断する反射性(反射能)とが加算された値として測定される。したがって、MSL法を用いて測定された電磁波シールド性(吸収性)が前記範囲内であり、かつ、KEC法を用いて測定された電磁波シールド性(吸収性+反射性)が前記範囲内であれば、電磁波遮断層3に入射した電磁波を吸収および反射することにより遮断(遮蔽)することで優れた電磁波シールド性を発揮する電磁波遮断層3と言うことができ、GHzオーダーのように高周波帯域の電磁波まで確実に遮断することができる。
なお、KEC法は、近傍界で発生する電磁波のシールド効果を電界と磁界に分けて評価する方法であり、この方法を用いた測定は、送信アンテナ(送信用の治具)から送信された電磁波を、シート状をなす電磁波遮断層3(測定試料)を介して、受信アンテナ(受信用の治具)で受信することで実施することができ、かかるKEC法では、受信アンテナにおいて、電磁波遮断層3を通過(透過)した電磁波が測定されるすなわち、送信された電磁波(信号)が電磁波遮断層3により受信アンテナ側でどれだけ減衰したかが測定されることから、電磁波を遮断(シールド)する電磁波シールド性は、電磁波を反射する反射性と電磁波を吸収する吸収性との双方を合算した状態で求められる。
また、電磁波遮断層3は、その150℃における貯蔵弾性率が1.0E+05〜1.0E+09Paであるのが好ましく、5.0E+05〜5.0E+08Paであるのがより好ましい。前記貯蔵弾性率をかかる範囲内に設定することにより、貼付工程において、電磁波シールド用フィルム100の加熱の後、基材層1からの押圧力により、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込むことで、この凹凸6を被覆する際に、前記基材層1からの押圧力に応じて、電磁波遮断層3を凹凸6の形状に対応して変形させることができる。すなわち、電磁波遮断層3の凹凸6に対する形状追従性を向上させることができる。
さらに、電磁波シールド用フィルム100は、基板5上に電子部品4を搭載することで形成された凹凸6に温度150℃、圧力2MPa、時間5分の条件で熱圧着した際の形状追従性が、500μm以上であることが好ましく、800μm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは1000μm以上である。すなわち、凸部61の上面と凹部62の上面との高さの差である凹凸6の高さが500μm以上のものを電磁波シールド用フィルム100で被覆できるのが好ましく、800μm以上のものを被覆できるのがより好ましく、1000μm以上のものを被覆できるのがさらに好ましい。このように高さが高い(段差が大きい)凹凸6であっても被覆できる電磁波シールド用フィルム100を、優れた形状追従性を有するものと言うことができ、絶縁層2および電磁波遮断層3により、凹凸6に対して優れた埋め込み率をもって被覆することができる。
なお、前記形状追従性は、以下のようにして求めることができる。
すなわち、まず、縦100mm×横100mm×高さ2mmのプリント配線板(マザーボード)に、幅0.2mm、各必要段差の溝を、0.2mm間隔で碁盤目状に形成するとにより、プリント配線基板を得る。その後、電磁波シールド用フィルムを、真空加圧式ラミネーターを用いて、150℃×2MPa×5分間の条件で、プリント配線板に圧着させ、プリント配線板に貼り付ける。貼付後、電磁波シールド用フィルムから基材層を剥離し、プリント配線板に貼り付けた遮断層および絶縁層とプリント配線板上の溝との間に空隙があるかどうかを判断する。なお、空隙があるかどうかは、マイクロスコープや顕微鏡で観察することにより評価される。
<電子部品の被覆方法>
次に、電子部品の被覆方法について説明する。
本実施形態の電子部品の被覆方法は、前記基板上の凹凸に、前記電磁波シールド用フィルムを前記電磁波遮断層または前記絶縁層と電子部品が接着するように貼付する貼付工程と、前記貼付工程の後、前記基材層を剥離する剥離工程とを有する。
図2は、図1に示す電磁波シールド用フィルムを用いて電子部品の被覆方法を説明するための縦断面図である。
以下、電子部品の被覆方法の各工程について、順次説明する。
(貼付工程)
前記貼付工程とは、例えば、図2(a)に示すように、基板5上に設けられた凹凸6に、電磁波シールド用フィルム100を貼付する工程である。
貼付する方法としては、特に限定されないが、例えば、真空圧空成形が挙げられる。
真空圧空成形とは、例えば、真空加圧式ラミネーターを用いて、電磁波シールド用フィルム100で基板5上の凹凸6を被覆する方法であり、まず、真空雰囲気下とし得る閉空間内に、基板5の凹凸6が形成されている側の面と、電磁波シールド用フィルム100の絶縁層2側の面とが対向するように、基板5と電磁波シールド用フィルム100とを重ね合わせた状態でセットし、その後、これらを加熱下において、電磁波シールド用フィルム100側から均一に電磁波シールド用フィルム100と基板5とが互いに接近するように、前記閉空間を真空雰囲気下にし、その後加圧することにより実施される。
この際、基材層1が上述したような構成のものであることから、基材層1は、真空圧空成形の加熱時に、凹凸6に対して優れた形状追従性を発揮する。
したがって、この状態で、電磁波シールド用フィルム100側から均一に加圧しつつ、前記閉空間を真空雰囲気下とすることで、基材層1が凹凸6の形状に対応して変形し、さらに、この変形に併せて、基材層1よりも基板5側に位置する、絶縁層2および電磁波遮断層3が凹凸6の形状に対応して変形する。これにより、凹凸6の形状に対応して絶縁層2および電磁波遮断層3が押し込まれた状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6が被覆される。
このような貼付工程において、貼付する温度は、特に限定されないが、100℃以上、200℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上、180℃以下である。
また、貼付する圧力は、特に限定されないが、0.5MPa以上、5.0MPa以下であることが好ましく、より好ましくは1.0MPa以上、3.0MPa以下である。
さらに、貼付する時間は、特に限定されないが、1分以上、30分以下であることが好ましく、より好ましくは5分以上、15分以下である。
貼付工程における条件を上記範囲内に設定することにより、基板5上の凹凸6に対して絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込んだ状態で、これら絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を確実に被覆することができる。
(剥離工程)
前記剥離工程とは、例えば、図2(b)に示すように、前記貼付工程の後、基材層1を電磁波シールド用フィルム100から剥離する工程である。
この剥離工程により、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100における基材層1と絶縁層2との界面において、剥離が生じ、その結果、絶縁層2から基材層1が剥離される。これにより、絶縁層2から基材層1を剥離した状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6が被覆される。
なお、このような電磁波シールド用フィルム100を用いた絶縁層2および電磁波遮断層3による凹凸6の被覆では、図2に示したように、貼付する電磁波シールド用フィルム100の形状が対応して、凹凸6を絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆することができる。そのため、被覆すべき凹凸6の形状に対応して電磁波シールド用フィルム100の形状を適宜設定することにより、被覆すべき凹凸6を選択的に絶縁層2および電磁波遮断層3で被覆することができる。すなわち、絶縁層2および電磁波遮断層3による凹凸6の選択的な電磁波シールドが可能となる。
また、基材層1を剥離する方法としては、特に限定されないが、真空圧空成形(上記の貼付工程)後の電磁波シールド用フィルム100が高温の状態では、基材層1が伸びてしまい、樹脂残り等が発生し、剥離作業性が低下する可能性があるので、手作業による剥離が挙げられる。
この手作業による剥離では、例えば、まず、基材層1の一方の端部を把持し、この把持した端部から基材層1を絶縁層2から引き剥がし、次いで、この端部から中央部へさらには他方の端部へと順次基材層1を引き剥がすことにより、絶縁層2から基材層1が剥離される。
剥離する温度は、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
以上のような工程を経ることにより、絶縁層2から基材層1を剥離した状態で、絶縁層2および電磁波遮断層3により凹凸6を被覆することができる。
なお、本実施形態では、図1に示したように、電磁波シールド用フィルム100として、その上面側から、基材層1(第1の層11、第2の層13、第3の層12)、絶縁層2、電磁波遮断層3がこの順で積層されたものを用いて、絶縁層2および電磁波遮断層3で、基板5上の凹凸6を被覆する場合について説明したが、電磁波シールド用フィルム100の層構成は、かかる場合に限定されず、例えば、以下に示すような第2〜第5実施形態のような層構成をなしている電磁波シールド用フィルム100であってもよい。
<第2実施形態>
以下、本発明の電磁波シールド用フィルムの第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第2実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図3に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図3に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第1の層11の形成が省略されていること以外は、図1に示した電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第2の層13、第3の層12からなる基材層1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、貼付工程において、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に用いられる真空加圧式ラミネーター等が有する押圧部が、第2の層13との離型性を備えており、これにより、第1の層11の形成が省略される。
この場合、前記押圧部の第2の層13と接触する接触面の離型性の程度は、前記接触面の表面張力で表すことができ、前記接触面の表面張力は、20〜40mN/mであるのが好ましく、25〜35mN/mであるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を前記接触面が有することにより、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、第2の層13から押圧部を確実に剥離させることができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第3実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第3実施形態について説明する。
図4は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第3実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図4に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その
説明を省略する。
図4に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第3の層12の形成が省略されていること以外は、図1に示した電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第1の層11、第2の層13からなる基材層1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、剥離工程において、基材層1を絶縁層2から剥離する際に、第2の層13と絶縁層2との界面において基材層1が絶縁層2から剥離される。このような剥離では、絶縁層2が第2の層13との離型性を備えており、これにより、第3の層12の形成が省略される。
この場合、絶縁層2の第2の層13と接触する接触面の離型性の程度は、前記接触面の表面張力で表すことができ、前記接触面の表面張力は、20〜40mN/mであるのが好ましく、25〜35mN/mであるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を前記接触面が有することにより、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、絶縁層2から第2の層13を確実に剥離させることができる。
このような、表面張力を有する絶縁層2としては、例えば、熱可塑性ポリエステルやαオレフィン等が挙げられる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第4実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第4実施形態について説明する。
図5は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第4実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図5に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図5に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第1の層11と第3の層12の形成が省略されていること以外は、図1に示した電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第2の層13からなる基材層1と、絶縁層2と、電磁波遮断層3とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、貼付工程において、基板5上の凹凸6に絶縁層2および電磁波遮断層3を押し込む際に用いられる真空加圧式ラミネーター等が有する押圧部が、第2の層13との離型性を備えており、これにより、第1の層11の形成が省略される。剥離工程において、基材層1を絶縁層2から剥離する際に、第2の層13と絶縁層2との界面において基材層1が絶縁層2から剥離される。このような剥離では、絶縁層2が第2の層13との離型性を備えており、これにより、第3の層12の形成が省略される。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、基材層1の第2の層13を構成する樹脂としてポリエチレン、ポリプロプレン等のαオレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合体成分として有するαオレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂が挙げられる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第5実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第5実施形態について説明する。
図6は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第5実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図6に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図6に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第3の層12の形成が省略され、さらに、絶縁層2および電磁波遮断層3の積層順が逆転していること以外は、図1に示した電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第1の層11、第2の層13からなる基材層1と、電磁波遮断層3と、絶縁層2とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、剥離工程において、基材層1を電磁波遮断層3から剥離する際に、第2の層13と電磁波遮断層3との界面において基材層1が電磁波遮断層3から剥離される。このような剥離では、電磁波遮断層3が第2の層13との離型性を備えており、これにより、第3の層12の形成が省略される。
この場合、電磁波遮断層3の第2の層13と接触する接触面の離型性の程度は、前記接触面の表面張力で表すことができ、前記接触面の表面張力は、20〜40mN/mであるのが好ましく、25〜35mN/mであるのがより好ましい。かかる範囲内の表面張力を前記接触面が有することにより、真空加圧式ラミネーター等を用いた押し込みの後に、電磁波遮断層3から第2の層13を確実に剥離させることができる。
このような、表面張力を有する電磁波遮断層3としては、例えば、炭素同素体や導電性高分子をポリウレタン等の熱硬化性樹脂中に分散させたもの等が挙げられる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
<第6実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第6実施形態について説明する。
図7は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第6実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図7に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図1に示す電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図7に示す電磁波シールド用フィルム100では、絶縁層2および電磁波遮断層3の積
層順が逆転していること以外は、図1に示した電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第1の層11、第2の層13、第3の層12からなる基材層1と、電磁波遮断層3と、絶縁層2とが、この順で積層された積層体をなしている。このように積層された電磁波遮断層3および絶縁層2を備える電磁波シールド用フィルム100を用いて基板5上の凹凸6を被覆することで、基板5および電子部品4に絶縁層2が接触し、基板5側から絶縁層2、電磁波遮断層3の順で被覆することとなる。
このように、本実施形態では、絶縁層2は、基板5および電子部品4を、これらに接触した状態で被覆し、これにより、基板5および電子部品4を、絶縁層2を介して基板5と反対側に位置する電磁波遮断層3および他の部材(電子部品等)から絶縁する。
そのため、かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、例えば、電磁波遮断層3が導電性材料を含む構成のものであったとしても、隣接する電子部品4同士を絶縁層2により確実に絶縁することができる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
また、前記実施形態では、絶縁層2は、電磁波遮断層3の上面または下面の何れか一方に1つの層が積層される場合について説明したが、かかる場合に限定されず、例えば、電磁波遮断層3の上面および下面の双方に1層ずつ別層として積層されていてもよいし、その形成を省略するようにしてもよい。
さらに、前記実施形態では、基板への電子部品の搭載により、基板上に凹凸が形成されており、この凹凸を電磁波シールド用フィルムで被覆する場合について説明したが、電磁波シールド用フィルムによる被覆は、このような凹凸に対する被覆に限定されず、例えば筐体等が備える平坦(フラット)な領域に対して施すようにしてもよい。
<第7実施形態>
次に、本発明の電磁波シールド用フィルムの第7実施形態について説明する。
図8は、本発明の電磁波シールド用フィルムの第7実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、図8に示す電磁波シールド用フィルム100について説明するが、図6に示す電磁波シールド用フィルム100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図8に示す電磁波シールド用フィルム100では、基材層1が備える第1の層11と第3の層12の形成が省略されていること以外は、図6に示した電磁波シールド用フィルム100と同様である。
すなわち、本実施形態では、電磁波シールド用フィルム100は、第2の層13からなる基材層1と、電磁波遮断層3と、絶縁層2とが、この順で積層された積層体をなしている。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、貼付工程において、基板5上の凹凸6に電磁波遮断層3および絶縁層2を押し込む際に用いられる真空加圧式ラミネーター等が有する押圧部が、第2の層13との離型性を備えており、これにより、第1の層11の形成が省略される。剥離工程において、基材層1を電磁波遮断層3から剥離する際に、第2の層13と電磁波遮断層3との界面において基材層1が電磁波遮断層3から剥離される。このような剥離では、絶縁層2が第2の層13との離型性を備えており、これにより、第3の層12の形成が省略される。
かかる構成の電磁波シールド用フィルム100では、基材層1の第2の層13を構成する樹脂としてポリエチレン、ポリプロプレン等のαオレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合体成分として有するαオレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂が挙げられる。
このような構成の本実施形態の電磁波シールド用フィルム100も、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様にして使用することができ、前記第1実施形態の電磁波シールド用フィルム100と同様の効果が得られる。
前記、第1実施形態〜第7実施形態では、貼付工程の後、基材層1を電磁波シールド用フィルム100から剥離する工程を有していたが、剥離することなく、基材層1を部品の保護層として使用し、剥離せず用いてもよい。
以上、本発明の電磁波シールド用フィルム、および電子部品搭載基板について説明した
が、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の電磁波シールド用フィルムでは、前記第1〜第6実施形態の任意の構
成を組み合わせることもできる。
また、本発明の電磁波シールド用フィルムおよび本発明の電子部品搭載基板には、同様
の機能を発揮し得る、任意の層が追加されていてもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
<ワニスの調整>
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)20質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)10質量部、鱗片状銀粉(福田金属箔粉工業社製、Ag-XF 平均粒子径5.5μm)70質量部をトルエン20部に分散させ、超音波をあてることで均一化し、ワニスを調整した。
<電磁波シールド性評価用フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック(株)社製、厚み125μm)に前記ワニスをコンマコーターで塗工し、60℃で乾燥させ、電磁波シールド性評価用フィルムを得た。
このとき、電磁波シールド層は20μmとなった。
<電磁波シールド性>
実施例1で作製した電磁波シールド性評価用フィルムについて、前述したマイクロストリップライン法を用いて、周波数1GHzにおける電磁波を遮断する電磁波シールド性を測定した。さらに、前述したKEC法を用いて、周波数1GHzにおける電磁波を遮断する電磁波シールド性を測定した。
<電磁波シールド用フィルムの製造>
電磁波シールド用フィルムを得るために、第1の層(第1離型層)を構成する樹脂としてシンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。第3の層(第2離型層)を構成する樹脂として、シンジオタクチックポリスチレン(出光興産(株)社製、商品名:ザレックS107)を準備した。第2の層(クッション層)を構成する樹脂として、エチレン−メチルアクリレート共重合体(住友化学(株)社製、商品名:アクリフトWD106)を準備した。絶縁層を構成する樹脂として、ポリオレフィン系エマルジョン(ユニチカ(株)社製、商品名:アローベースTC−4010)を準備した。電磁波遮断層を構成する樹脂として、前記で調整したワニスを準備した。
第1の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第3の層として前記シンジオタクチックポリスチレンと、第2の層として前記エチレン−メチルアクリレート共重合体とを、フィードブロックおよびマルチマニホールドダイを用いて共押出により、フィルム化した。電磁波遮断層として前記導電性ワニスを、また、絶縁層として前記ポリオレフィン系エマルジョンを、この順で基材層にコーティングして電磁波シールド用フィルムを作製した。
実施例1の電磁波シールド用フィルムの全体の厚みは、160μmであり、第1の層の厚みは30μm、第3の層の厚みは30μm、第2の層の厚みは60μm、絶縁層の厚みは20μm、電磁波遮断層の厚みは20μmであった。
(実施例2)
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)50質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)10質量部、鱗片状銀粉(福田金属箔粉工業社製、Ag-XF 平均粒子径5.5μm)40質量部とし、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
(実施例3)
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)25質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)5質量部、鱗片状銀粉(福田金属箔粉工業社製、Ag-XF 平均粒子径5.5μm)70質量部とし、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
(実施例4)
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)40質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)10質量部、鱗片状銀粉(福田金属箔粉工業社製、Ag-XF 平均粒子径5.5μm)50質量部とし、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
(実施例5)
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)10質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)10質量部、鱗片状銀粉(福田金属箔粉工業社製、Ag-XF 平均粒子径5.5μm)80質量部とし、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
(実施例6)
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)10質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)10質量部、鱗片状銀粉(福田金属箔粉工業社製、Ag-XF 平均粒子径5.5μm)80質量部とし、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
(実施例7)
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)20質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)5質量部、PEDOT/PSS(中京油脂社製 S-941)5質量部、鱗片状銀粉(福田金属箔粉工業社製、Ag-XF 平均粒子径5.5μm)70質量部とし、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
(実施例8)
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)20質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)10質量部、凝集状銀粉(三井金属社製、ST-M 平均粒子径1.1μm)70質量部とし、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
(実施例9)
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)20質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)10質量部、銀コート銅粉(福田金属箔粉工業社製、FCC-2000 10%コート 平均粒子径10μm)70質量部とし、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
(比較例1)
ポリアニリンを用いず、飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)30質量部、鱗片状銀粉(福田金属箔粉工業社製、Ag-XF 平均粒子径5.5μm)70質量部をトルエン60部に分散させ、超音波をあてることで均一化し、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
(比較例2)
銀粉を用いず、飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)社製)20質量部、ポリアニリン((株)レグルス社製 PANT)80質量部、をトルエン30部に分散させ、超音波をあてることで均一化し、ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性評価用フィルムを製造し、電磁波シールド用フィルムを製造し、電磁波シールド性を測定した。
結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜9では、1GHzのように高周波帯域の電磁波であっても、電磁波を吸収することで効果的に遮断されている結果が得られた。
これに対して、比較例では、実施例1〜9と比較すると、高周波帯域の電磁波が効果的に遮断されているとはいえない結果であった。