JP2016079228A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリエステル系エラストマーを含有し、柔軟性、成形性、融着性及び摺動性に優れ、かつ良好な耐摩耗性及び耐ブルーム性を有する熱可塑性エラストマー組成物、及び該組成物を用いて得られる成形体を提供すること。【解決手段】熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと、該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBを1〜35質量部含有してなる、熱可塑性エラストマー組成物であって、前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーAが、ハードセグメントとソフトセグメントとを10/90〜60/40の質量比(ハードセグメント/ソフトセグメント)で含み、熱可塑性エラストマー組成物の硬度が、A硬度で10以上であり、D硬度で60以下である、熱可塑性エラストマー組成物、及び該組成物を用いて得られる成形体。【選択図】なし

Description

本発明は、様々な材料に優れた接着性を有し、自動車、電子材料、家電、電気機器、医療用具、包装資材、文具・雑貨用品等の各種成形品に有用であり、さらにはグリップ、チューブ、パッキン、ガスケット、クッション体、フィルム、シート等の各種部材に用いられる熱可塑性エラストマー組成物、及び該組成物を用いて得られる成形体に関する。
特許文献1には、熱可塑性重合体、およびポリオルガニシロキサン系重合体に少なくとも一種のビニル系モノマーをグラフト重合して得られるグラフト重合体からなる熱可塑性樹脂組成物に関する発明が開示されている。
特許文献2には、熱可塑性樹脂(I)を主成分とし、特定のポリシロキサン基含有重合体(II)を含有する熱可塑性樹脂組成物に関する発明が開示されている。
特開昭61−235462号公報 特開平7−216240号公報
従来、樹脂組成物の摺動性を向上させるには、樹脂成分自体を硬いものにしたり、滑材として、有機酸エステルや有機酸塩、有機酸アミド等の長鎖有機酸化合物や、シリコーンオイルを添加する方法が知られているが、特に、デュロメータタイプD硬度が60以下であるような柔らかい組成物においては、十分な摺動性を発現させるためには多量の滑剤を配合する必要がある。しかし、滑材を多量に配合すると、滑剤の分散性がそれほど良好なものではないために、いったんは滑剤を分散しても、組成物が溶融したり流動したり、高温に曝されたりした場合に、滑材が分離して表面付近に集まり、ブリードや層間剥離、ブルーム等の問題が起きやすい。また、長鎖有機酸化合物は高温で変質しやすく、溶融成形時にヤケやコゲと呼ばれる変色や異物を発生しやすい問題がある。
一方、シリコーンパウダーやテフロンパウダーのような高温でも溶融しない固体粒子を添加して摺動性を向上させる方法も知られているが、固体粒子がフィラーとして作用するために成形性や表面性に悪影響があるうえ、組成物の樹脂成分との密着性が良くないために、界面から剥離が起きやすく、多量に用いると組成物自体の強度が低下する問題がある。
このような課題に対して、樹脂成分とのなじみの良い構造部分と、摺動性を良くする構造部分とを併せ持つ共重合体が開発され、様々な熱可塑性樹脂に応用を試みられているが、耐熱性や耐候性が上がるという効果が現れる一方で、溶融流動性や成形性は却って悪くなるという欠点が現れることも多い。この理由は、例えば異種の構造を併せ持つグラフト共重合体やブロック共重合体が熱可塑性樹脂の疑似架橋点として作用すること等が考えられる。また、熱可塑性エラストマー組成物に求められる摺動性と類似の特性として、耐摩耗性があるが、必ずしも両者が同じ傾向を示すとは限らない。
本発明の課題は、ポリエステル系エラストマーを含有し、柔軟性、成形性、融着性及び摺動性に優れ、かつ良好な耐摩耗性及び耐ブルーム性を有する熱可塑性エラストマー組成物、及び該組成物を用いて得られる成形体を提供することにある。
本発明者らが検討したところ、ポリエステル系エラストマーを含む熱可塑性エラストマー組成物に、シリコーン変性アクリルポリマーを配合することにより、他の滑材に比べて融着性を損なうことなく組成物の耐摩耗性が格段に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、
〔1〕 熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと、該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBを1〜35質量部含有してなる、熱可塑性エラストマー組成物であって、
前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーAが、ハードセグメントとソフトセグメントとを10/90〜60/40の質量比(ハードセグメント/ソフトセグメント)で含み、
熱可塑性エラストマー組成物の硬度が、A硬度で10以上であり、D硬度で60以下である、
熱可塑性エラストマー組成物、
〔2〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体、並びに
〔3〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着してなる、複合成形体
に関する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ポリエステル系エラストマーを含有し、柔軟性、成形性及び融着性に優れ、かつ良好な耐摩耗性及び耐ブルーム性を有するという効果を奏するものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ハードセグメントとソフトセグメントとを所定比で含む熱可塑性ポリエステル系エラストマーAとシリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBを含有するものであり、このような両者の組み合わせは従来試みられたことがなかったものである。ポリジメチルシロキサンに代表されるような疎水性のポリシロキサン部分は摺動性には優れるもののほとんどの炭素系ポリマーとは相溶性が悪く、ポリ(メタ)アクリル酸エステルに代表されるようなアクリルポリマー部分は、そのSP値から考えて、熱可塑性エラストマー組成物のソフトセグメント部分との親和性に優れる一方でハードセグメント部分には影響しにくいと考えられるため、シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBはポリエステル系エラストマーのソフトセグメント部分に固定されてブリード現象が起きない一方で、ハードセグメント部分には疑似架橋を生じないので、組成物の柔軟性を損なわないという効果を発現するのではないかと考えられる。
このように考えると、本発明において、熱可塑性ポリエステル系エラストマーAにシリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBを用いた場合に、摺動性が向上する一方で、組成物の柔軟性や溶融流動性や成形性に悪影響がないことは理解できるが、本発明で得られた耐摩耗性の効果は、単なる摺動性の向上だけでは説明できない著しいものである。
熱可塑性ポリエステル系エラストマーAは、ハードセグメント(硬い部分)とソフトセグメント(柔らかい部分)とを含み、ハードセグメントとして芳香族ポリエステルブロックを有し、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテルブロックを有するポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体であることが好ましい。
ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体のハードセグメントである芳香族ポリエステルブロックは、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-又は2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルの1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4’-ジヒドロキシジビフェニル、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン等のジオールの1種又は2種以上との重縮合体であることが好ましい。市販品としては、例えば、「ペルプレン」(東洋紡績株式会社製、商品名)、「ハイトレル」(東レ・デュポン株式会社製、商品名)、「フレクマー」(日本合成化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体のソフトセグメントである脂肪族ポリエーテルブロックは主としてポリアルキレンエーテルグリコールからなることが好ましい。脂肪族ポリエーテルブロックの重量平均分子量は、400〜6000が好ましい。
熱可塑性ポリエステル系エラストマーAは、様々な硬度のものがあることが知られているが、融着性の観点から、比較的低硬度であることが好ましい。かかる観点から、熱可塑性ポリエステル系エラストマーAにおけるハードセグメントとソフトセグメントとの質量比(ハードセグメント/ソフトセグメント)は、10/90〜60/40であり、20/80〜55/45が好ましく、30/70〜50/50がより好ましい。
熱可塑性ポリエステル系エラストマーAのA硬度は、50〜98が好ましく、60〜97がより好ましく、70〜94がさらに好ましい。なお、本発明において、A硬度はデュロメータタイプA硬度であり、後述のD硬度はデュロメータタイプD硬度である。
熱可塑性ポリエステル系エラストマーAの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物中、40質量%以上が好ましく、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBは、少なくとも一つのポリシロキサン部分と少なくとも一つの(メタ)アクリル酸ポリマー部分を含む構造を有するものであり、例えば、信越シリコーン社製の(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー(商品名:KP578)、ワックスタイプの(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー(商品名:KP561P)、(アクリレーツ/アクリル酸ベヘニル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー(KP562P)、東亞合成株式会社のサイマック、日信化学工業株式会社のシャリーヌ等、様々な構造や特性を有するものが知られている。
これらのなかでも、ラジカル重合反応性基、SH基又はその両方を側鎖に有するポリアルキルシロキサンと(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの(共)重合物とが重合した、ブロック共重合体及び/又はグラフト共重合体が好ましい。かかる共重合体は、例えば、ラジカル重合反応性基、SH基又はその両方を側鎖に有するポリアルキルシロキサンと、(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの(共)重合物とを、公知の重合触媒の存在下でグラフト重合させることで得られる。また、ポリアルキルシロキサン部分を製造する際に、不飽和基を有するシランモノマーを適宜配合することによって、(メタ)アクリルグラフトの起点数を調節することもでき、ポリシロキサン部分も(メタ)アクリル部分も、直鎖状であっても分枝状であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルは併用しても、どちらか一方のみを用いてもよい。
ポリアルキルシロキサン成分のアルキルとしては、炭素数1〜20のアルキル基、芳香族基等が挙げられ、これらの中では、メチル、ブチル及びフェニルが好ましく、メチルがより好ましい。
より具体的に好ましいポリアルキルシロキサンとしては、式(I):
Figure 2016079228
[式中のR1、R2及びR3はそれぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、Yはラジカル重合反応性基、SH基又はその両方をもつ有機基、X1及びX2はそれぞれ同一又は異なる水素原子、炭素数1〜20の低級アルキル基、又は式(II):
Figure 2016079228
(式中のR4及びR5は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、R6は炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、ラジカル重合反応性基、SH基又はその両方をもつ有機基である)
で表されるトリオルガノシリル基、mは1〜10,000の整数、nは1以上の整数、好ましくは1〜50である]
で表される化合物が挙げられる。
ラジカル重合反応性基としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等が挙げられる。
ラジカル重合反応性基、SH基又はその両方を側鎖に有するポリアルキルシロキサンと(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの(共)重合物との共重合体において、ポリシロキサン部分の比率が高い方が組成物の摺動性が良くなる傾向があるが、一方で(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの(共)重合物の比率が高い方が組成物への分散性が良くなる傾向がある。これらの観点から、該ポリアルキルシロキサンと該(共)重合物との重合比(ポリアルキルシロキサン/(共)重合物)は、質量比で、5/95〜85/15が好ましく、10/90〜80/20がより好ましく、20/80〜75/25がさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの(共)重合物において、メタクリル酸化合物とアクリル酸化合物はどちらか一方でも併用して用いてもよいが、メタクリル酸化合物を多く用いた方が組成物の耐熱性が高くなるため好ましい。エステル成分としては、メチル、エチル、ブチル、2-エチルヘキシル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、ラウリル、ステアリル等の炭素数1〜20のアルキルエステル、メトキシエチル、ブトキシエチル等の炭素数1〜20のアルコキシアルキルエステル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジルエステル等が挙げられる。ヒドロキシアルキルエステル成分としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのエステル成分には1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBの融点は、高いほど耐摩耗性が高くなる傾向があり、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは100℃以上である。また、組成物を溶融混練した際には、シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBも溶融して組成物の成分とより均一に混ざるほうが好ましいため、好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。これらの観点から、シリコーン変性アクリルポリマーBの融点は、50〜220℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。
シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBが常温(23℃)において固体である場合、粒状であることが好ましい。一次粒子の面積基準平均粒子径は、0.5〜150μmが好ましく、1〜120μmがより好ましく、5〜100μmがさらに好ましく、30〜70μmがさらに好ましい。一次粒子の形状は、電子顕微鏡観察によって直接観察することができ、任意の粒子を少なくとも30個選んで長径と短径を測長し、楕円に規格化して断面積を算出することで面積基準の平均粒子径を算出することができる。このような計算は電子顕微鏡観察の画像データから、画像処理プログラムを用いることによって簡単に行うこともできる。シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBがこのような粒子形状であるとき、粉体原料として取り扱いが容易になる一方で、本発明の組成物に練り込まれた際には、分散性が良いので組成物中で速やかに分散し、組成物に良好な摺動性をもたらす。
このような粒子状のシリコーン変性アクリルポリマーDとしては、日信化学工業製のシャリーヌR-170S、R-181S等として知られているものがあり、これらを用いることもできるし、特開平10−182987号公報に記載の方法により製造したものを用いることもできる。
シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBの含有量は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーC 100質量部に対して、1〜35質量部であり、1.5〜20質量部がより好ましい。
シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBとともに、他の滑材を併用してもよい。シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBは、樹脂成分だけでなく、有機系シリコーン系等のいずれの滑剤ともなじみが良いので、他の滑材によるブリードや変色などの問題を抑えることができる。しかしながら、他の滑材が多すぎると、シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBの効果が小さくなるため、他の滑材を併用する際の使用量は、シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーB 100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、5〜60質量部がより好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、さらに安定剤を含有していてもよい。樹脂組成物の安定剤は各種知られているが、本発明においては、耐熱老化性が向上する観点からは酸化防止剤が、また、耐候性が向上する観点からは光安定剤が、それぞれ好ましい。
酸化防止剤としては、効果の高い硫黄系酸化防止剤Cが好ましく、二価硫黄化合物であるチオプロピオン酸エステル系の酸化防止剤がより好ましい。なかでも、ペンタエリスリチルエステルのような分岐構造をもったものよりも、ジラウリル-3,3-チオジプロピオネートのような直鎖構造のものの方が分散性が高く、少量の添加でも組成物に均一に分散するため酸化防止効果が高く表れ、好ましい。
酸化防止剤、好ましくは硫黄系酸化防止剤Cの含有量は、耐熱老化性が著しく向上する観点から、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、0.05〜0.8質量部が好ましく、0.1〜0.7質量部がより好ましい。
光安定剤としては、効果の高いヒンダートアミン系光安定剤Dが好ましい。ヒンダートアミン系光安定剤としては、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)、ビス(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジニル)エステル、ビス(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトニメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトニメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]等が挙げられる。紫外線吸収剤も光安定剤として用いることができる。
光安定剤、好ましくはヒンダートアミン系光安定剤Dの含有量は、耐候性が著しく向上する観点から、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、0.05〜0.8質量部が好ましく、0.1〜0.7質量部がより好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性の観点から、さらに、熱可塑性スチレン系エラストマーEと軟化剤Fを含有していることが好ましい。
熱可塑性スチレン系エラストマーEは、柔軟性と成形性の観点から、スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s1)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b1)とからなるブロック共重合体(Z1)であることが好ましい。
ブロック単位(s1)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
ブロック共重合体(Z1)は、ブロック単位(s1)からなるハードセグメント(硬い部分)と、ブロック単位(b1)とからなるソフトセグメント(柔らかい部分)とからなり、全体の物性を決定する観点から、ブロック共重合体(Z1)におけるスチレン系単量体の含有量は、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、15〜40質量%がさらに好ましい。
ブロック単位(b1)を構成する共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。
ブロック共重合体(Z1)は、水素添加することにより不飽和結合が減少し、耐熱性、耐候性及び機械的特性が向上することから、その一部又は全部が水素添加されていることが好ましい。水素添加率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。本発明において、水素添加率は、ブロック共重合体中の共役ジエン単位に由来する炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、1H-NMRスペクトルなどによって測定し、該測定値から求めることができる。
ブロック共重合体(Z1)の水素添加物の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン−ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリイソプレン−ポリ(α-メチルスチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−クロロプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独であっても、2種以上の混合物であってもよいが、原料調製及び作業性の観点から、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
熱可塑性スチレン系エラストマーEは、さまざまな特性のものが工業的に大量に生産されていて入手しやすい観点から、酸変性されていないことが好ましい。
熱可塑性スチレン系エラストマーEの重量平均分子量は、耐熱性や機械特性の観点から、10,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、100,000以上がさらに好ましく、200,000以上がさらに好ましい。また、加熱時の流れやすさ、つまり製造時における成形性の観点から、500,000以下が好ましく、400,000以下がより好ましく、350,000以下がさらに好ましい。これらの観点から、水添熱可塑性スチレン系エラストマーEの重量平均分子量は、10,000〜500,000が好ましく、50,000〜400,000がより好ましく、100,000〜350,000がさらに好ましく、200,000〜350,000がさらに好ましい。
軟化剤Fとしては、例えば、パラフィンオイル、ナフテンオイル、芳香族系オイル等のゴム用軟化剤が挙げられるが、これらのなかでは、水添熱可塑性エラストマーとの親和性が良好で、ブリードが起きにくいという観点から、パラフィンオイルが好ましい。
軟化剤Fの40℃での動粘度は、高い方が、加熱溶融時の揮発を防ぎ、耐ブリード性も良くなることから、10mm2/s以上が好ましく、20mm2/s以上がより好ましく、25mm2/s以上がさらに好ましく、30mm2/s以上がさらに好ましい。また、低い方が取扱いが容易であることから、1000mm2/s以下が好ましく、700mm2/s以下がより好ましく、500mm2/s以下がさらに好ましい。これらの観点から、軟化点Fの40℃での動粘度は、10〜1000mm2/sが好ましく、25〜700mm2/sがより好ましく、30〜500mm2/sがさらに好ましい。
本発明の組成物における熱可塑性スチレン系エラストマーEと軟化剤Fの質量比(E/F)は、軟化剤の含有量が少なすぎると、各種配合成分の分散性が低下することから、95/5以下が好ましく、67/33以下がより好ましく、65/35以下がさらに好ましく、62.5/37.5以下がさらに好ましい。また、軟化剤の含有量が多すぎると、オイルブリードが生じ、物性等の劣化にもつながることから、25/75以上が好ましく、26/74以上がより好ましい。これらの観点から、本発明の組成物における熱可塑性スチレン系エラストマーEと軟化剤Fの質量比(E/F)は、25/75〜95/5が好ましく、25/75〜67/33がより好ましく、26/74〜65/35がさらに好ましく、26/74〜62.5/37.5がさらに好ましい。
熱可塑性スチレン系エラストマーEと軟化剤Fの合計含有量は、柔軟性の観点から、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、10〜90質量部がより好ましく、15〜75質量部がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、増粘剤G、相溶化剤H、ポリオレフィンI等を含有していてもよい。これらは、それぞれ単独であっても、併用されていてもよい。
増粘剤Gを配合することで、熱可塑性ポリエステル系エラストマーAの粘度が高くなり、原料が十分に混ざり合うことにより、透明性及び成形性が向上する。
増粘剤Gとしては、熱可塑性樹脂の成型加工の際に溶融張力を増大させる効果のあるものであればいずれでも用いることができるが、なかでもエポキシ系増粘剤、アクリル系増粘剤等が好ましい。
エポキシ系増粘剤としては、骨格にスチレン構造を有する重合体であるエポキシ化合物が好ましい。
エポキシ化合物のエポキシ価は、高いものの方が反応性が高くなることから、0.10meq/g以上が好ましく、0.50meq/g以上がより好ましい。また、製造が容易なことから、5.0meq/g以下が好ましく、3.0meq/g以下がより好ましい。これらの観点から、エポキシ化合物のエポキシ価は、0.10〜5.0meq/gが好ましく、0.5〜3.0meq/gがより好ましい。
エポキシ化合物は、(メタ)アクリル酸グリシジルとスチレン及び/又はスチレン誘導体とを含む単量体単位から構成されるものであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸グリシジルは、ポリエステル系エラストマーの末端官能基との反応性が非常に高く、所定量以上の(メタ)アクリル酸グリシジルを含むエポキシ化合物を配合することにより、熱可塑性ポリエステル系エラストマー相が高粘度化され、混練時に、ポリエステル系エラストマー相とスチレン系エラストマー相の両相の粘度比が縮まり、より細かく分散化を図ることができ、磨耗性等の機械強度の改善をすることができる。これらの観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルの含有量は、単量体単位中、15〜70質量%が好ましく、17〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%がさらに好ましい。なお、本発明において、単量体単位中の含有量とは、その重合体を構成する全単量体単位中の当該単位の含有量を意味する。
スチレン誘導体としては、スチレンのアルファ位、オルト位、メタ位又はパラ位が炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子等の置換基で置換された化合物が好ましい。該置換基の分子量(原子量)は60以下が好ましく、50以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。スチレン誘導体の具体例としては、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。
スチレン及び/又はスチレン誘導体の含有量は、単量体単位中、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
(メタ)アクリル酸グリシジル、スチレン及びスチレン誘導体以外の単量体単位としては、共重合しやすく、製造が容易であることから、(メタ)アクリル酸グリシジル以外の(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等が挙げられる。
エポキシ化合物におけるエポキシ基の個数は、ポリエステル系エラストマーとの相溶性の観点から、1分子中に平均2個以上が好ましく、2.5〜20個がより好ましく、3〜10個がさらに好ましい。
エポキシ化合物の重量平均分子量は、大きい方が高温下での揮発を抑えることができることから、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。また、低い方が反応性が高くなることから、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。これらの観点から、エポキシ化合物の重量平均分子量は、1,000〜100,000が好ましく、3,000〜80,000がより好ましく、5,000〜50,000がさらに好ましい。
エポキシ化合物の市販品としては、東亞合成(株)製のアルフォンUGシリーズ、日油(株)製のマープルーフGシリーズ、BASF製のジョンクリルADRシリーズ等が挙げられる。
アクリル系増粘剤としては、アクリル高分子性加工助剤や、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン等が知られているが、本発明においては、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンは、アクリル変性によって熱可塑性樹脂との相溶性を向上させたポリテトラフルオロエチレンが、溶融混練で繊維化(フィブリル化)して繊維状のネットワークを形成するため、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を増大させて成形性を向上させることができる。
増粘剤Gの含有量は、多い方が耐摩耗性に優れることから、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。また、少ない方が成形性が良好になることから、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。これらの観点から、増粘剤Gの含有量は、耐摩耗性と成形性のバランスの観点から、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1〜3質量部がさらに好ましい。
相溶化剤Hは、融着性の観点から、好ましい。
相溶化剤Hとしては、耐摩耗性と融着性に優れることから、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーH1、酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーH2、及びスチレン系エラストマーとウレタン系エラストマーのグラフトポリマーH3からなる群より選ばれた少なくとも1種のエラストマーが好ましい。
酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーH1としては、スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s2)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b2)とからなるブロック共重合体(Z2)の水素添加物を酸変性させたものが好ましい。
ブロック単位(s2)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
ブロック単位(b2)を構成する共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。
ブロック共重合体(Z2)は、ブロック単位(s2)からなるハードセグメント(硬い部分)と、ブロック単位(b2)とからなるソフトセグメント(柔らかい部分)とからなり、全体の物性を決定する観点から、ブロック共重合体(Z2)におけるスチレン系単量体の含有量は、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%がさらに好ましい。
ブロック共重合体(Z2)の水素添加は、一部であっても、全部であってもよいが、水素添加することにより不飽和結合が減少し、耐熱性、耐候性及び機械的特性が得られる。それらの観点から、水素添加率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
ブロック共重合体(Z2)の水素添加物の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン(スチレン制御分布)−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン−ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリイソプレン−ポリ(α-メチルスチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−クロロプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独であっても、2種以上の混合物であってもよいが、原料調製及び作業性の観点から、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−ブチレン(スチレン制御分布)−スチレンブロック共重合体(SEB(S)S)及びスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
ブロック共重合体(Z2)の水素添加物の酸変性は、特に限定されるものではないが、例えば、水素添加物にカルボキシル基又は酸無水物基を導入することによって行うことができる。上記のカルボキシル基又は酸無水物基の導入は、それ自体公知の方法に従って行うことができる。具体的には、例えば、水素添加物と、アクリル酸、メタクリル酸等で例示される不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマール酸、ハイミック酸、イタコン酸等で例示される不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水ハイミック酸、無水イタコン酸等で例示される不飽和ジカルボン酸の無水物とを、有機過酸化物の存在下に、溶媒の存在下又は非存在下に加熱して、グラフト反応させることにより得ることができる。また、商業的に入手することもできる。
酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーH1の酸変性量は、相溶性及び作業性の観点から、0.5〜5質量%が好ましく、0.7〜4.0質量%がより好ましく、1.0〜3.0質量%がさらに好ましい。
酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーH1の重量平均分子量は、耐熱性の観点から、50,000以上が好ましく、溶融物の流動性及びゴム弾性の観点から、400,000以下が好ましい。これらの観点から、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーH1の重量平均分子量は、50,000〜400,000が好ましく、70,000〜350,000がより好ましく、80,000〜300,000がさらに好ましい。酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーH1は、1種のみが用いられていてもよく、重量平均分子量や1,2-ビニル結合量等が異なる2種以上が併用されていてもよい。2種以上が併用されている場合は、それらの加重平均値が上記範囲内であることが好ましく、それぞれが上記範囲内であることがより好ましい。
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーH2としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα−オレフィン共重合体エラストマー、これらと非共役ジエンとの共重合エラストマー、これらの2種以上の混合物等が挙げられ、これらのものの少なくとも一部が酸変性されたものである。これらの中では、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物が好ましい。
酸変性処理は、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーH1と同様に行うことができる。
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーH2の酸変性量は、相溶性及び作業性の観点から、0.5〜5質量%が好ましく、0.7〜4.0質量%がより好ましい。
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーH2のA硬度は、95以下が好ましく、10〜90がより好ましく、20〜90がさらに好ましい。
スチレン系エラストマーとウレタン系エラストマーのグラフトポリマーH3としては、1個のスチレン系エラストマーブロックと1個のポリウレタンエラストマーブロックを有するジブロック共重合体であっても、スチレン系エラストマーとポリウレタンエラストマーブロックが合計で3個又は4個以上結合したポリブロック共重合体であってもよいが、耐熱性に優れ、加熱溶融時に悪臭を放出しない観点から、1個のスチレン系エラストマーと1個のポリウレタンエラストマーブロックが結合したジブロック共重合体が好ましい。市販品としては、(株)クラレ社製のクラミロン(登録商標)TUポリマー等が挙げられる。
相溶化剤Hの含有量は、耐摩耗性と他素材への融着性を良好にする観点から、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、1〜90質量部が好ましく、2〜85質量部がより好ましく、2〜80質量部がさらに好ましい。
ポリオレフィンIは、成形性の観点から、好ましい。
ポリオレフィンIとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。
ポリオレフィンは酸変性されていてもよい。変性に用いられる酸としては、マレイン酸、ハロゲン化マレイン酸、イタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンド−シスービシクロ(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸等のジカルボン酸及び該ジカルボン酸の無水物、エステル、アミド、イミド等、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸及び該モノカルボン酸のエステル、アミド等が挙げられる。
ポリオレフィンIの含有量は、耐摩耗性と他素材への融着性を良好にする観点から、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、0.5〜35質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、1.5〜30質量部がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含有していてもよい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、極性樹脂の改質を目的として、極性エラストマーが含有されていてもよい。極性エラストマーとしては、特に制限されないが、例えばNBR(ニトリルゴム)、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強剤;炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、マイカ等の充填剤;絶縁性熱伝導性フィラー、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、粘着付与剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、香料等の各種添加剤を含有していてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA及びシリコーン変性(メタ)アクリルポリマーB、さらに必要に応じて硫黄系酸化防止剤C、ヒンダート系光安定剤D、熱可塑性スチレン系エラストマーE、軟化剤F、増粘剤G、相溶化剤H、ポリオレフィンI等を含む原料を混合し、冷却により固化させて得られる。
本発明でいう「混合」とは、各種成分が良好に混合される方法であれば特に限定されず、各種成分を溶解可能な有機溶媒中に溶解させて混合してもよいし、溶融混練によって混合してもよいが、増粘剤Gとしてエポキシ化合物を用いる場合は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーAとエポキシ化合物の少なくとも一部を反応させることが好ましく、かかる観点から、原料の混合は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーAが溶融する条件下で行うことが好ましく、熱可塑性ポリエステル系エラストマーAの末端官能基との反応により、熱可塑性ポリエステル系エラストマーAの分子量が増大し、粘度が高くなる。エポキシ化合物以外の増粘剤を用いる場合でも、熱可塑性ポリエステル系エラストマーAの溶融温度で混練することによって増粘作用が発現するので、粘度上昇するまで原料の溶融温度で混練を続けることが好ましい。増粘することによって、組成物を熱融着に用いるときにも圧力がかかりやすくなって融着強度がアップするほか、成形時のヒケの問題も改善される。従って、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、組成物を構成する原料を、熱可塑性ポリエステル系エラストマーAが溶融する条件下で混合して得られる反応生成物からなることが好ましい。
熱可塑性ポリエステル系エラストマーAが溶融する条件下とは、例えば、粘弾性測定によって決定できる熱可塑性ポリエステル系エラストマーAの融点を基に定義することができ、静置状態で融点以上であれば溶融する条件であるが、溶融混練法では必ずしも静置状態で測定された融点ではなく、融点よりも低い温度で溶融することもあり、温度が高いほど溶融粘度が小さくなって混合しやすくなるが、あまり高いと熱分解が起きる恐れがある。これらの観点から、混練を伴うときの好ましい溶融温度範囲は、融点に対して-30℃〜+100℃であり、より好ましくは融点に対して-20℃〜+50℃である。
溶融混練する場合には、一般的な押出機を用いることができ、混練状態の向上のため、二軸の押出機を使用することが好ましい。押出機への供給は、予めヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて各種成分を混合したものを一つのホッパーから供してもよいし、二つのホッパーにそれぞれの成分を仕込みホッパー下のスクリュー等で定量しながら供してもよい。
熱可塑性エラストマー組成物を混合して得られる生成物は、用途に応じて、ペレット、粉体、シート等の形状とすることができる。例えば、押出機によって溶融混練してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状などのペレットに切断される。得られたペレットは、通常、射出成形、押出成形によって所定のシート状成形品や金型成形品とする。また、溶融混練物をルーダー等でペレットにし成形加工原料とすることもできる。シート状の熱可塑性エラストマー組成物に、台紙等を貼付した中間製品としてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物のA硬度は、柔軟性の観点から、10以上であり、20〜98が好ましく、25〜95がより好ましい。また、D硬度は、60以下であり、5〜55が好ましく、5〜50がより好ましい。ただし、熱可塑性エラストマー組成物が、熱可塑性スチレン系エラストマーEと軟化剤Fとを含有する場合、熱可塑性エラストマー組成物のA硬度は、80以下が好ましく、20〜78がより好ましく、20〜75がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の170℃、21.2Nでのメルトマスフローレイトは、接着性及び流動性の観点から、0.1〜30g/10minが好ましく、1.0〜20g/10minがより好ましい。なお、本発明の組成物が熱可塑性スチレン系エラストマーEを含む場合は、230℃、21.2Nでのメルトマスフローレイトが、接着性及び流動性の観点から、0.1〜40g/10minが好ましく、0.1〜30g/10minがより好ましく、1.0〜20g/10minがさらに好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、常法に従って、適宜加熱成形することにより、成形体が得られる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られる成形体の用途は、特に限定されるものではなく一般的なスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマーやポリエステル系エラストマー等が用いられる分野に用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた成形体の製造に用いられる装置は、成形材料を溶融できる任意の成形機を用いることができる。例えば、ニーダー、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、ブロー成形機、ミキシングロール等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、複合成形用材料としても用いることができ、様々な材料に溶着するため、異種材料からなる部材の張り合わせにも好適に用いることができる。例えば、金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材に溶着させるために用いられ、特に極性樹脂等に対して良好な接着性を示す。
金属としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、鉄、銅、亜鉛めっき鋼、マグネシウム、マグネシウム合金等、また各種めっき処理品等が挙げられる。
オレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン樹脂、エチレン−環状オレフィン共重合樹脂等が挙げられ、溶融混練されたものでも、重合機中で混合されたリアクター型熱可塑性オレフィン(TPO)でもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマーが、動的に架橋されたものであってもよい。
極性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリプロピレンオキサイド系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、LCP(液晶ポリマー)、アイオノマー等の極性樹脂、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材に溶着させた場合、該部材からの剥離強度は、接着特性の観点から、90N/25mm以上が好ましい。
本発明において、溶着は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の融点以上の熱を加えて、融液にした後、融点以下の温度にして固化することで、溶着対象の界面に固着する現象をいう。熱を加えるには、熱プレス機、加熱ロール機、熱風発生機、加熱蒸気、超音波ウェルダー、高周波ウェルダー、レーザー等を用いることができる。従って、溶着部の界面が複雑な立体形状であっても、複雑な立体形状にうまくなじみ成形一体化することができる。
従って、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、部材の張り合わせだけでなく、部材と一体となって複合成形体とすることもできる。これにより、複雑な接合面を有する部材や、互いに異なる形状の接合面を有する部材の貼り合わせも可能となる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着した複合成形体は、射出成形、射出圧縮成形、インサート成形、多色成形、真空成形、圧空成形、ブロー成形、熱プレス成形、発泡成形、レーザー溶着成形、押出成形等の方法により、成形加工して得ることができるが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、接着剤のように自身が粘着性を有するものではなく、取り扱いが容易であるため、射出成形にも適用することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着した複合成形体としては、熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体に金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材がインサートされたインサート成形体、熱可塑性エラストマー組成物と、オレフィン樹脂又は極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材とを多色成形して得られる複合成形体等が挙げられる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
1.熱可塑性ポリエステル系エラストマーA
〔脂肪族ポリエーテルブロックの重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
測定装置
・ポンプ:JASCO(日本分光株式会社)製、PU-980
・カラムオーブン:昭和電工株式会社製、AO-50
・検出器:日立製、RI(示差屈折計)検出器 L-3300
・カラム種類:昭和電工株式会社製「K-805L(8.0×300mm)」及び「K-804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K-G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/分
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工株式会社製ポリスチレン
〔ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)〕
ハードセグメントとソフトセグメントの質量比は、核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて、重クロロホルム溶媒中、3〜5vol%濃度、25℃でプロトンNMR測定を行い、分子構造中の各種酸素に隣接するメチレンピークのシグナル強度比から算出する。
〔A硬度〕
JIS K 6253で規定される方法に準拠して測定する。
〔融点〕
示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、JIS K 7121で規定される方法に準拠して10℃/minで昇温して得られる融解ピークの温度を融点とする。融解ピークが複数表れる場合は、より低い温度で表れる融解ピークを融点とする。
2.シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーB
〔平均粒子径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)装置を用い、測定する。
一次粒子の形状は、走査型電子顕微鏡観察によって直接観察することができ、任意の粒子を30個選んで長径と短径を測長し、楕円に規格化して断面積を算出することで面積基準の平均粒子径を算出することができる。
測定装置
・SEM:VE−8800(KEYENCE製)
・加速電圧:1.3kV
〔融点〕
示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、JIS K 7121で規定される方法に準拠して10℃/minで昇温して得られる融解ピークの温度を融点とする。融解ピークが複数表れる場合は、より低い温度で表れる融解ピークを融点とする。
3.熱可塑性スチレン系エラストマーE
〔スチレン系単量体の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔重量平均分子量(Mw)〕
熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
4.軟化剤F
〔動粘度〕
JIS Z 8803に従って、40℃の温度で測定する。
5.増粘剤G
〔エポキシ価〕
エポキシ価は、樹脂100gに含まれるエポキシ基のモル数を意味し、JIS K 7236の方法で測定されるエポキシ当量が、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量と規定されていることに基づき、エポキシ価(meq/g)=1000/エポキシ当量で算出する。
〔エポキシ化合物1分子当たりに含まれるエポキシ基の平均個数(Fn)〕
1分子の数平均分子量にモノマー組成を掛け、GMAにエポキシ基が1個として算出される。
〔(メタ)アクリル酸グリシジル(GMA)の含有量〕
エポキシ化合物に、GMA以外にエポキシ基を有する化合物が含まれない場合は、エポキシ価と同じく、JIS K 7236に規定する方法で測定されるエポキシ基の濃度からGMAの含有量を算出する。GMA以外にエポキシ基を有する化合物が含まれる場合は、核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)によって、プロトンNMR測定を行い、GMAの特性基の定量を行うことによってGMAの含有量を決定する。
〔スチレン及び/又はスチレン誘導体(スチレン系単量体)の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)によって、プロトンNMR測定を行い、スチレンの特性基の定量を行うことによってスチレン及び/又はスチレン誘導体の含有量を決定する。
〔重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)〕
熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量及び数平均分子量を求める。
6.相溶化剤H
〔スチレン系単量体の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
測定装置
・ポンプ:JASCO(日本分光株式会社)製、PU-980
・カラムオーブン:昭和電工株式会社製、AO-50
・検出器:日立製、RI(示差屈折計)検出器 L-3300
・カラム種類:昭和電工株式会社製「K-805L(8.0×300mm)」及び「K-804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K-G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/分
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工株式会社製ポリスチレン
〔A硬度〕
JIS K 6253で規定される方法に準拠して測定する。
〔酸変性量〕
変性する前のベース材料と有機酸のブレンド物を0.1mmのスペーサーを用いてプレスしIRを測定し、特徴的なカルボニル(1600〜1900cm-1)の吸収量と有機酸の仕込量から検量線を作成し、酸変性体のプレス板のIR測定(IR測定器:堀場製作所製FT-210)を行い、変性量を決定する。
シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーAの製造例
メチルアクリレート98質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート2質量部と式(III):
Figure 2016079228
で表されるポリアルキルシロキサン233質量部の混合物を、ラジカル反応性界面活性剤(アクアロンHS-10とRN-20(いずれも第一工業製薬社製))を1/3の質量比(HS-10/RN-20)で併用)4質量部を用いて脱イオン水50質量部中で乳化した。得られた乳化液の1/30を採取し、窒素雰囲気中、60℃で、脱イオン水100質量部と、t-ブチルハイドロパーオキサイド系重合開始剤(t-ブチルハイドロパーオキサイド(純分70質量%)0.3質量部、ロンガリット0.17質量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの1質量%水溶液0.3質量部、及び硫酸第一鉄の1質量%水溶液0.1質量部)を用いて乳化重合させた後、30分後から残りの乳化液を、器内温度を80℃に保持しながら3時間かけて滴下して重合させ、さらに1時間の熟成を行って反応を完結させた。得られたエマルジョンをスプレードライ法で乾燥し、粉末状のシリコーン変性(メタ)アクリルポリマーAを得た。平均1次粒子径は50μm、融点は120℃であった。
シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBの製造例
メチルアクリレート98質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート2質量部と式(III)で表されるポリアルキルシロキサン100質量部を、シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーAの製造例と同様に乳化重合し、スプレードライ法で乾燥して、粉末状のシリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBを得た。平均1次粒子径は55μm、融点は125℃だった。
エポキシ化合物Aの製造例
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、200℃に保った。
一方、スチレン(St)38質量部、アクリル酸ブチル(BA)8質量部、メタクリル酸グリシジル(GMA)25質量部及びメタクリル酸メチル(MMA)29質量部からなる単量体混合液を、キシレン15質量部、ジターシャリーブチルパーオキサイド0.3質量部と混合し、原料タンクに仕込んだ。一定の供給速度(48g/分、反応器内平均滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に単量体混合液を連続供給し、反応器の内容液質量が約580gで一定になるように反応液を反応器の出口から連続的に抜き出した。その時の反応器内温は、約210℃に保たれた。
反応器内部の温度が安定してから36分経過した後から、抜き出した反応液を減圧度30kPa、温度250℃に保った薄膜蒸発機により連続的に揮発成分除去処理して、揮発成分をほとんど含まない共重合体を回収した。180分かけて約7kgの共重合体(エポキシ化合物A)を回収した。
エポキシ化合物Aの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)と、エポキシ化合物1分子当たりに含まれるエポキシ基の平均個数(Fn)を表1に示す。
エポキシ化合物Bの製造例
表1に示す組成からなる単量体混合液を使用し、ジターシャリーブチルパーオキサイドの使用量を0.5質量部に変更した以外は、エポキシ化合物Aと同じ方法により、エポキシ化合物Bを得た。
Figure 2016079228
実施例1〜34及び比較例1〜12
(1) 熱可塑性エラストマー組成物(ペレット)の作製
表2〜7に示す材料をドライブレンドして混合物を作製した。ただし、パラフィンオイルを使用する場合は、パラフィンオイル以外の材料をドライブレンドし、これにパラフィンオイルを含浸させて混合物を作製した。
その後、混合物を下記の条件で、押出機で溶融混練して、ストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって、直径3mm程度、厚さ3mm程度に切断し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。
〔溶融混練条件〕
押出機:KZW32TW-60MG-NH(商品名、(株)テクノベル製)
シリンダー温度:180〜220℃
スクリュー回転数:300r/min
実施例及び比較例で使用した表2〜7に記載の原料の詳細は以下の通り。
〔熱可塑性ポリエステル系エラストマー〕
TPEE-A(ポリエステルポリエーテルブロックコポリマー):テトラメチレングリコール・ポリブチレングリコール・テレフタル酸重縮合物、ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)=19/81、A硬度78、融点160℃
TPEE-B(ポリエステルポリエーテルブロックコポリマー):テレフタル酸・イソフタル酸・テトラメチレングリコール・ポリテトラメチレングリコール共重合体、ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)=39/61、A硬度91、融点155℃
TPEE-C(ポリエステルポリエーテルブロックコポリマー):ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)=55/45、A硬度97、融点210℃
TPAE(ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー):ぺパックス3533(アルケマ社製)、D硬度35
〔滑材〕
シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーA:合成物、平均粒子径50μm、融点120℃
シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーB:合成物、平均粒子径55μm、融点125℃
オレイン酸アミド:ニュートロン(日本精化社製)
シリコーンオイル:SH200オイル(東レ・ダウコーニング社製)、動粘度(25℃)500mm2/s
アクリル外部滑材:メタブレンL-1000(三菱レイヨン)
〔酸化防止剤〕
硫黄系酸化防止剤:SUMILIZER TPL-R(住友化学社製)、ジラウリル-3,3-チオジプロピオネート、Mw:515
〔光安定剤〕
ヒンダードアミン系光安定剤:チヌビン144(BASF社製)
〔熱可塑性スチレン系エラストマー〕
SEBS-A:G1651(クレイトンポリマー社製)、スチレン系単量体の含有量33質量%、Mw29万
SEBS-B:G1641(クレイトンポリマー社製)、スチレン系単量体の含有量32質量%、Mw24万
SEEPS:SEPTON4055(クラレ社製)、スチレン系単量体の含有量30質量%、Mw30万
〔軟化剤〕
パラフィンオイル:PW90(出光興産社製)、動粘度(40℃)95.54mm2/s
〔増粘剤〕
エポキシ化合物A:合成物、エポキシ価1.8meq/g、St-MMA-GMA共重合体、GMA含有量25質量%、スチレン系単量体含有量38質量%、Fn5.1、Mw10,800
エポキシ化合物B:合成物、エポキシ価1.4meq/g、St-GMA共重合体、GMA含有量20質量%、スチレン系単量体含有量74質量%、Fn4.5、Mw9800
エポキシ化合物C:マープルーフG-0250SP(日油社製)、エポキシ価0.32meq/g、St-GMA共重合体、GMA含有量50質量%、スチレン系単量体含有量50質量%、Mw2万
アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):メタブレンA3000(三菱レイヨン株式会社)
〔相溶化剤〕
酸変性SEBS:FG1901X(クレイトンポリマー社製)、無水マレイン酸変性SEBS、スチレン系単量体含有量30質量%、A硬度71、無水マレイン酸含有量1.7質量%
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体:アンプリファイGR216(ダウケミカル社製)、無水マレイン酸変性エチレン−α-オレフィン共重合体、A硬度77、無水マレイン酸含有量0.5〜1.0質量%
〔ポリオレフィン〕
PP(ポリプロピレン):PX600N(サンアロマー社製)、曲げ弾性率1650MPa
酸変性PP:ユーメックス1010(三洋化成工業社製)、マレイン酸変性、Mw3万、酸価52
(2) 熱可塑性エラストマー組成物の成形体の作製
ペレットを、下記の条件で射出成形し、厚さ2mm×幅125mm×長さ125mmのプレートを作製した。
〔射出成形条件〕
射出成形機:100MSIII-10E(商品名、三菱重工業(株)製)
射出成形温度:200℃
射出圧力:30%
射出時間:3sec
金型温度:40℃
実施例及び比較例で得られた組成物について、下記の評価を行った。なお、結果を表2〜7に示す。
(1) 柔軟性
<A硬度>
厚さ2mmの成形体試料を3枚重ね(合計6mm)としたものについて、JIS K 6253に準拠した測定時間1秒のA硬度(試験開始から1秒後の値)を測定した。測定は温度23℃、湿度50%の室内で1日状態調節の後、実施した。
<D硬度>
厚さ2mmの成形体試料を3枚重ね(合計6mm)としたものについて、JIS K 6253に準拠した測定時間1秒のD硬度(試験開始から1秒後の値)を測定した。測定は温度23℃、湿度50%の室内で1日状態調節の後、実施した。
なお、実施例の組成物のD硬度はいずれも60以下である。
(2) 融着性
厚さ4mm×幅25mm×長さ125mmの金型内に下記の極性樹脂をインサートし、下記条件で、実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、短冊状の溶着試験片を作製した。
〔インサート材(極性樹脂)〕
(1) サイズ:厚さ2mm×幅25mm×長さ120mm
(2) 種類
PC(ポリカーボネート):三菱エンジニアリングプラスチック社製、ユーピロンH-3000
〔射出成形条件〕
射出成形機:三菱重工業(株)製、100MSIII-10E
射出成形温度:240℃
射出圧力:30%
射出時間:2sec
金型温度:40℃
JIS K 6854に準拠した方法により、上記溶着試験片を用い、雰囲気温度23℃で熱可塑性エラストマー層と極性樹脂層とを180°方向に50mm/minで引張試験を行い、表皮材層と基材層の剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。
◎:剥離強度が150N/25mm以上
○:剥離強度が90N/25mm以上、150N/25mm未満
△:剥離強度が50N/25mm以上、90N/25mm未満
×:剥離強度が50N/25mm未満
(3) 耐摩耗性(テーバー摩耗試験)
射出成型したプレート(125mm角プレート)を用い、JIS K 7204に準拠し、23℃、摩耗輪;H-22、回転速度;72r/min、回転回数;1,000回、荷重;1000gで摩耗損失量(mg)を測定した。
○:摩耗損失量が100mg未満
×:摩耗損失量が100mg以上
(4) 摺動性
JIS K-7125に準拠した方法により、静摩擦係数を測定した。
・試験片:厚さ2mmの射出成形体試料を、幅80mm×長さ125mmにカットしたもの。
・N数:3
・測定装置:摩擦試験機(東洋精機製作所製)
〔測定条件〕
・試験速度:100mm/min、荷重レンジ:10N、スレッド重量:200N(初期荷重0.4〜0.5N)
・変位量:60mm
・相手材:フェルト
〔測定方法〕
・予め、試験開始時にE-D27Nをブランクとして測定し、動摩擦係数が0.85〜1.10の範囲にあることを確認する。
・試験片の上端と下端に、両面テープを貼付し、金属プレートに試験片を貼り付け、試験片が動かないよう固定し、上記条件で静摩擦係数を測定した。
(5) メルトマスフローレイト(MFR)
ASTM D1238に準拠して、170℃、21.2N又は230℃、21.2Nの条件で測定した。
(6) 成形性
成形性は、射出成形にて極性樹脂との熱融着性用試験片作製時のヒケ・フローマークや離型性問題について評価した。
◎:成形不良無く、さらに離形性も良好
○:成形不良は無いが、離形性が若干悪い
△:成形性に不具合が若干発生
×:成形性に不具合が発生
(7) 耐ブルーム性
射出成型したプレート(125mm角プレート)を温度40℃、相対湿度80%の環境下で1週間放置後、3N(約300g)の荷重をかけた黒画用紙でシート表面を軽くこすり、シート表面に粉吹き、オイル等の付着物の有無を目視により観察した。
(8-1) 対比試験
引張3号ダンベル形状の試験片(厚み2mm)を、光照射なし63℃ギヤオーブン中で500時間放置した。放置前後の引張強度をJIS K 6257に準拠した方法により測定し、下記式により、引張強度保持率を算出した。
Figure 2016079228
(8-2) 耐熱老化性
引張3号ダンベル形状の試験片(厚み2mm)を130℃ギヤオーブン中で500時間放置した。放置前後の引張強度をJIS K 6257に準拠した方法により測定し、対比試験と同じ式により、引張強度保持率を算出した。
(8-3) 耐候性
引張3号ダンベル形状の試験片(厚み2mm)を光照射下63℃で500時間放置した。放置前後の引張強度をJIS K 6257に準拠した方法により測定し、対比試験と同じ式により、引張強度保持率を算出した。
Figure 2016079228
Figure 2016079228
Figure 2016079228
Figure 2016079228
Figure 2016079228
Figure 2016079228
以上の結果より、実施例1〜34の熱可塑性エラストマー組成物は、比較例1〜12と対比して、柔軟性、極性樹脂との熱融着性、耐摩耗性、成形性、及び耐ブルーム性のいずれも良好であり、射出成形による成形材料としても有用であることが分かる。
また、実施例30〜34の結果より、酸化防止剤及び/又は光安定剤を含むものは、さらに、耐熱老化性及び/又は耐候性が向上することが分かる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車、電子材料、家電、電気機器、医療用具、包装資材、文具・雑貨用品等の各種成形品に有用であり、さらにはグリップ、チューブ、パッキン、ガスケット、クッション体、フィルム、シート等の各種部材に用いられる。

Claims (11)

  1. 熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと、該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBを1〜35質量部含有してなる、熱可塑性エラストマー組成物であって、
    前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーAが、ハードセグメントとソフトセグメントとを10/90〜60/40の質量比(ハードセグメント/ソフトセグメント)で含み、
    熱可塑性エラストマー組成物の硬度が、A硬度で10以上であり、D硬度で60以下である、
    熱可塑性エラストマー組成物。
  2. シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBが、ラジカル重合反応性基、SH基又はその両方を側鎖に有するポリアルキルシロキサンと(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの(共)重合物とが5/95〜85/15の質量比(ポリアルキルシロキサン/(共)重合物)で重合した、ブロック共重合体及び/又はグラフト共重合体である、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBの融点が50〜220℃である、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. シリコーン変性(メタ)アクリルポリマーBが、一次粒子の面積基準平均粒子径が0.5〜150μmの粒状固体である、請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、さらに、硫黄系酸化防止剤Cを0.05〜0.8質量部、及び/又はヒンダートアミン系光安定剤Dを0.05〜0.8質量部含有してなる、請求項1〜4いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. さらに、熱可塑性スチレン系エラストマーEと軟化剤Fとを含有してなり、熱可塑性エラストマー組成物のA硬度が80以下である、請求項1〜5いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. さらに、増粘剤Gを、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、0.1〜15質量部含有してなる、請求項1〜6いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. さらに、相溶化剤Hを含有してなる、請求項1〜7いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. さらに、ポリオレフィンIを含有してなる、請求項1〜8いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  10. 請求項1〜9いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体。
  11. 請求項1〜9いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着してなる、複合成形体。
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