JP2016075553A - グルコースセンサによるグルコース測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】以下の(A)〜(D)のすべての特性を有するグルコースデヒドロゲナーゼを含んでなるグルコースセンサ。(A)フラビンアデニンジヌクレオチドを補酵素とする、(B)D−グルコースをD−グルコノラクトンに変換する反応を触媒する、(C)マルトースに対する反応性が対D−グルコース比5%以下である、(D)D−グルコースに対するミカエリス定数が40mM以下である。
【選択図】なし
Description
D−グルコース + 電子受容体(酸化型) →
D−グルコノ−δ−ラクトン + 電子受容体(還元型)
すなわち、グルコースを酸化することによって生じる電子の流れを測定することにより、グルコースの定量を可能にしている。これまでに血糖測定に用いられているGDHとしては、反応に要する補酵素の違いから、ニコチンアミド依存型、ピロロキノリンキノン(以下PQQとも記載)依存型、フラビンアデニンジヌクレオチド(以下FADとも記載)依存型の3種類が知られている。ニコチンアミド依存型としてはバチルス属由来のものが市販されているが、補酵素を含んだホロ酵素の状態で精製することができないため、センサを作製するにあたって補酵素となるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下NADとも記載)などを加えなければならない。この煩雑さ及び補酵素となるNAD等が高価であることが問題点として挙げられる。一方、PQQ依存型GDHはホロ酵素での提供が可能であり、また比活性が高くグルコースに対する十分な応答シグナルを得られるという利点がある一方で、基質特異性の厳密さに欠け、マルトース等のグルコース以外の糖類にも反応してしまう点が問題視されている。これらの問題点をクリアしうるものとして、FAD依存型GDHが浸透しつつある。
項1.
以下の(A)〜(D)のすべての特性を有するグルコースデヒドロゲナーゼを含んでなるグルコースセンサを用いて、グルコースを測定する方法。
(A)フラビンアデニンジヌクレオチドを補酵素とする。
(B)D−グルコースをD−グルコノラクトンに変換する反応を触媒する。
(C)マルトースに対する反応性が対D−グルコース比5%以下である。
(D)D−グルコースに対するミカエリス定数が40mM以下である。
項2.
少なくとも作用極・対極からなる電極上に、電子伝達物質および以下の(A)〜(D)のすべての特性を有するグルコースデヒドロゲナーゼを含んでなるグルコースセンサを用いて、グルコースを測定する方法。
(A)フラビンアデニンジヌクレオチドを補酵素とする。
(B)D−グルコースをD−グルコノラクトンに変換する反応を触媒する。
(C)マルトースに対する反応性が対D−グルコース比5%以下である。
(D)D−グルコースに対するミカエリス定数が40mM以下である。
項3.
5℃の環境下で得られるシグナル強度が、25℃の環境下で得られるシグナル強度と比して50%以上である、項1または2に記載のグルコース測定方法。
(A)フラビンアデニンジヌクレオチドを補酵素とする。
(B)D−グルコースをD−グルコノラクトンに変換する反応を触媒する。
(C)マルトースに対する反応性が対D−グルコース比5%以下である。
(D)D−グルコースに対するミカエリス定数が40mM以下である。
電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上にGDHを固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどを用いる方法があり、あるいは電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明のGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。使用する電子メディエーターとしては、GDHから電子を受け取り、発色物質や電極に電子を供与しうるものが挙げられ、たとえばフェリシアン化物塩、フェナジンエトサルフェート、フェナジンメトサルフェート、フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルフェニレンジアミン、1−メトキシ−フェナジンメトサルフェート、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、ニトロソアニリン、フェロセン誘導体、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、シトクロム等が例示されるが、これらに限定されない。また、電極上のGDH組成物中には、安定化剤及び/又は活性化剤としてウシ血清アルブミン、セリシン等のタンパク質、TritonX−100、Tween20、コール酸塩、デオキシコール酸塩などの界面活性剤、グリシン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシルグリシン等のアミノ酸、トレハロース、イノシトール、ソルビトール、キシリトール、グリセロール、スクロース等の糖及び/又は糖アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類を適宜添加してもよく、またあるいはプルラン、デキストラン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどに代表される親水性ポリマーを賦形剤として含んでもよい。
本発明において、シグナル強度とは、すなわちグルコースセンサにおいて電圧を印加した際に発生する、GDHによるグルコースの酸化に起因する電流値の高さのことを言う。
本発明において、シグナル強度の比較は、5℃の環境下で得られるシグナル強度と、25℃の環境下で得られるシグナル強度とを比較して行うものとする。
本発明においては、5℃の環境下で得られるシグナル強度が、25℃の環境下で得られるシグナル強度と比して50%以上であれば、シグナル強度変動が低減されていると判断する。
本明細書において、FAD依存型GDH活性測定は特に断りのない限り、以下の方法に従って行われる。
反応液(0.1mol/L HEPES、200mmol/L D−グルコース、0.55mmol/L DCPIP、pH6.5)2.9mLを石英セルにいれ、37℃で5分間予備加温する。そしてGDH溶液0.1mLを加えて混和し、37℃で5分反応させ、この間700nm吸光度を測定する。吸光度変化の直線部分から1分間あたりの吸光度の上昇度(ΔODTEST)を算出する。盲検は、GDH溶液の代わりに緩衝液を加えて混和し、同様に37℃5分インキュベートして700nm吸光度を記録し、1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を算出する。これらの値を以下の式に当てはめて活性値(U/mL)を算出する。なおここでは、基質存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量を1Uと定義する。
GDH活性(U/mL)=[(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率 ]/(4.5×1.0×0.1)
なお、ここで
3.0 :GDH溶液混和後の容量(mL)
4.5 :DCPIPのミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)
1.0 :光路長(cm)
0.1 :添加するGDH溶液の液量(mL)
である。
本発明に述べる基質に対するミカエリス定数(Km)の算出方法は、以下の測定方法により行う。すなわち、測定溶液として上述の活性測定例に記載の反応液組成におけるD−グルコースの濃度を200mmol/L、100mmol/L、50mmol/L、20mmol/L、10mmol/Lとした5種類の反応液を作製し、それぞれの測定溶液を用いて上述の活性測定例の方法に従いGDH溶液(上述の活性測定例における活性値が0.8U/mlとなるよう調整した溶液)のΔOD(ΔODTEST−ΔODBLANK)を測定する。それら測定値をもとにLineweaver−Burkプロット法(両逆数プロット法)に従ってミカエリス定数(Km)を算出する。
ペニシリウム・イタリカム由来FAD依存型GDH(以下PiGDHと称する)、ペニシリウム・リラシノエキヌラタム由来FAD依存型GDH(以下PlGDHと称する)は、特許文献10に記載のとおり、それぞれの精製酵素を調製した。
ムコール・プライニー由来FAD依存型GDH(以下MpGDHと称する)は、特許文献4に記載のアミノ酸配列を参考に配列番号2に記載の配列からなる合成DNAを作製した。また、ムコール・ヒエマリス由来FAD依存型GDH(以下MhGDHと称する)は、特許文献6に記載のアミノ酸配列を参考に配列番号4に記載の配列からなる合成DNAを作製した。これら合成DNAは、既に公開となっている特許文献(WO2013/080881)に記載される宿主(クリプトコッカス・エスピー・S−2.U−5株)に、概特許に記載のとおりのフローで形質転換を行った。なお、形質転換の際にベクターとしてpCsUXを使用し、配列番号2および4の遺伝子はそれぞれ5‘末端側をクリプトコッカス・エスピー・S−2株由来キシラナーゼの分泌シグナルと融合し、かつ3’末端側に終止コドン(TAA)を付加した状態で概ベクターのMluI/SpeIサイトに挿入した。ベクターpCsUXの概要及びキシラナーゼ分泌シグナルの配列も、上記特許文献に記載されている。このようにして作製した形質転換体は、200mL容のバッフル付きフラスコ中のYM培地60mLに植菌し、温度25℃、回転速度180rpmで2日間培養し、培養液全量を6Lの生産培地(5%酵母エキス、2%キシロース、0.02%アデカノール)に加え、30℃で通気攪拌培養した。培養液を高速冷却遠心機(日立ハイテク製CR22型)にセットした連続遠心用ローター(型番:R10C)に通液し、5000rpmで回転させることにより菌体を沈降させ、培養液上清を得た。この溶液を分子量50000カット限外ろ過膜を用いて加水濃縮することにより1000倍以上になるよう加水し、最終的に液量2Lまで濃縮した。この溶液に0.4飽和となるよう硫酸アンモニウムを溶解し、0.4飽和硫酸アンモニウムを含む50mMリン酸カリウムバッファー(pH6.0)で緩衝化したPhenyl−sepharose 6FF HS(GEヘルスケア社製)に吸着させ、硫酸アンモニウム濃度が0となるまでグラジエント溶出を行い、GDH活性を有する画分を集めた。この溶液を分子量50000カット限外ろ過膜を用いて10mLまで濃縮し、0.3M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸カリウムバッファーで緩衝化したSuperdex200に通液し、ゲルろ過を行って精製酵素を得た。上記計4種類のGDHについて、上述のミカエリス定数の算出例に従ってミカエリス定数(Km値)を算出し、これを市販品であるFAD依存型GDH(AoGDH、Aspergillus oryzae由来)のKm値と比較した結果を表1に示す。
グルコース測定用試薬として、以下の組成からなる溶液(pH=7.5)を作製した。
1mM クエン酸
50mM フェリシアン化カリウム
500U/ml FAD依存型GDH
0.5% カルボキシメチルセルロース
上記溶液5μLを、3電極を具備するディスポーサブルチップ(DEP−CHIP、バイオデバイステクノロジーズ社製)の作用極・対極・参照極上に滴下し、50℃10分の加温処理を行うことでセンサチップとした。このセンサチップを専用ソケットを介してポテンショ/ガルバノスタット(HSV−100、北斗電工製)に接続して25℃の環境下に置き、電極上の組成物に25℃でプレインキュベーションを行った10mMの標準グルコース溶液5μLを添加して+0.3Vの電圧を印加して電流値をモニタリングした。また、これらセンサチップを5℃の環境下において同様に5℃にプレインキュベートしたグルコース溶液と反応させて電流値をモニタリングして、5℃における電流値の、25℃での電流値に対する比率を求めた。結果を表2に示す。
Claims (3)
- 以下の(A)〜(D)のすべての特性を有するグルコースデヒドロゲナーゼを含んでなるグルコースセンサを用いて、グルコースを測定する方法。
(A)フラビンアデニンジヌクレオチドを補酵素とする。
(B)D−グルコースをD−グルコノラクトンに変換する反応を触媒する。
(C)マルトースに対する反応性が対D−グルコース比5%以下である。
(D)D−グルコースに対するミカエリス定数が40mM以下である。 - 少なくとも作用極・対極からなる電極上に、電子伝達物質および以下の(A)〜(D)のすべての特性を有するグルコースデヒドロゲナーゼを含んでなるグルコースセンサを用いて、グルコースを測定する方法。
(A)フラビンアデニンジヌクレオチドを補酵素とする。
(B)D−グルコースをD−グルコノラクトンに変換する反応を触媒する。
(C)マルトースに対する反応性が対D−グルコース比5%以下である。
(D)D−グルコースに対するミカエリス定数が40mM以下である。 - 5℃の環境下で得られるシグナル強度が、25℃の環境下で得られるシグナル強度と比して50%以上である、請求項1または2に記載のグルコース測定方法。
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M.N.ZAFAR ET AL.: "Characterization of different FAD-dependent glucose dehydrogenases for possible use in glucose-based", ANAL BIOANAL CHEM, vol. 402, JPN6019007552, 2012, pages 2069 - 2077, XP035012680, ISSN: 0003990416, DOI: 10.1007/s00216-011-5650-7 * |
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