JP6402887B2 - グルコースデヒドロゲナーゼ組成物 - Google Patents

グルコースデヒドロゲナーゼ組成物 Download PDF

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Description

本発明は、グルコース定量用組成物の安定化方法、および、安定なグルコース定量用組成物などに関する。
血中グルコース濃度の測定は、糖尿病患者が適当な血糖コントロールを行うにあたって必要不可欠である。日常的に血糖値をチェックするために使われるのは簡易型自己血糖測定キットであり、グルコースオキシダーゼ(以下GODとも記載)もしくはグルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)を利用したものが知られている。GODは血糖測定用酵素として古くから用いられているが、溶存酸素が測定値に影響を与えることから、近年ではGDHを用いたものが主流となってきている。GDHを原料としたグルコースセンサは、GDHの以下の反応を利用して血液中のグルコース濃度を測定するものである。

D−グルコース + 電子伝達体(酸化型) →
D−グルコノ−δ−ラクトン + 電子伝達体(還元型)

すなわち、グルコースを酸化することによって生じる電子の流れを測定することにより、グルコースの定量を可能にしている。これまでに血糖測定に用いられているGDHとしては、反応に要する補酵素の違いから、ニコチンアミド依存型、ピロロキノリンキノン(以下PQQとも記載)依存型、フラビンアデニンジヌクレオチド(以下FADとも記載)依存型の3種類が知られている。ニコチンアミド依存型としてはバチルス属由来のものが市販されているが、補酵素を含んだホロ酵素の状態で精製することができないため、センサを作製するにあたって補酵素となるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下NADとも記載)などを加えなければならない。この煩雑さ及び補酵素となるNAD等が高価であることが問題点として挙げられる。一方、PQQ依存型GDHはホロ酵素での提供が可能であり、また比活性が高くグルコースに対する十分な応答シグナルを得られるという利点がある一方で、基質特異性の厳密さに欠け、マルトース等のグルコース以外の糖類にも反応してしまう点が問題視されている。これらの問題点をクリアしうるものとして、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存型GDH(以下FAD−GDHと記載)が浸透しつつある。
またさらに、アスペルギルス属由来GDH(特許文献1、2)やペニシリウム属由来GDH(特許文献3)などに見られる、キシロース作用性を解消したケカビ科糸状菌由来FAD−GDHも近年見出され、特許出願がなされている(特許文献4〜6)。こうしたGDHを使用した血糖センサも鋭意検討・開発されているものと推察される。
血糖センサの特性としてグルコース以外の糖類に反応しない高い基質特異性を持たせることは、正確な血糖値を得るために重要な事柄であるが、作成したセンサの保存安定性もまたセンサの開発にあたって重視される事柄である。酵素は蛋白質であることから、低温で保存されることが好ましいが、製造されたセンサストリップは製造後の流通・販売並びに購入者による保管の間冷蔵されるケースは少なく、さらには夏場の高温や多湿にさらされる可能性も高い。こうした環境に耐えうるセンサストリップを作製するための試みとして、例えば酵素自身の熱安定性を向上させる試みがなされている。またさらに、添加剤としてウシ血清アルブミンなどの蛋白質、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどの無機塩、トレハロースなどの糖類を共存させることによるグルコース測定用酵素の安定化についても検討がなされている。
一方、血糖センサにおいて重要な事柄の一つとして、サンプル溶液によるセンサストリップ上の組成物の溶解性が高いことが挙げられる。現在市販されている血糖センサの多くは5秒程度のごく短い時間にサンプル中グルコース濃度の定量を完了する。この間にサンプル溶液はセンサストリップに設けられた流路を通って電極部に到達し、電極上に固定化された酵素を含む組成物を溶解させ、酵素がサンプル中のグルコースを酸化して得られた電子がメディエーターを介して電極へと渡るという一連の工程が完了しなければならない。この際、組成物の溶解速度はこれら一連の工程の中でボトルネックとなりうる部分であり、酵素を含む組成物の溶解しやすさは重要である。またさらに、仮に溶解後の溶け残り(不溶物)が発生すれば、溶液の速やかな混合や電子の電極までの到達を妨げる要因ともなり極めて不都合である。
上記のような問題を解消する方策として、たとえばウシ血清アルブミンなどのタンパク質、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、トレハロースといった物質を添加することにより、センサにおけるFAD−GDHの安定性を向上させる方法が見出され、特許出願がなされている(特許文献7)。しかし、上記はキシロースに対する作用性を有するアスペルギルス属由来GDHに対して効果を認められたものであり、あらゆるFAD−GDHに対して効果を有するとは考えがたい。特許文献7において使用されているGDHは、特許文献4〜6に記載されるようなキシロース作用性のないケカビ科糸状菌由来FAD−GDHとはアミノ酸配列の同一性が低く、その構造や表面の電荷など化学的性質が異なっているものと推察される。
特許4494978 特許4292486 米国特許7494494 特許4648893 特開2013−90621 特開2013−116102 特開2008−154573
したがって、本発明の目的は、基質特異性に優れたケカビ科糸状菌由来FAD−GDHを用いた血糖センサの安定性を高めることである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、センサ上のケカビ科糸状菌由来FAD−GDHおよび電子伝達体を含む組成物中に特定の添加剤を加えることでセンサの保存安定性を高めることに成功し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
項1.
以下の(A)〜(D)を含むグルコース定量用組成物。
(A)ケカビ科糸状菌由来FAD依存型グルコースデヒドロゲナーゼ
(B)電子伝達体
(C)増粘剤
(D)グリシルグシリン、ソルビトールおよびアドニトールからなる群より選ばれる1以上の物質。
項2.
ケカビ科由来糸状菌が、ムコール属に属する糸状菌である、項1に記載の組成物。
項3.
増粘剤がスメクタイトである、項1または2に記載の組成物。
項4.
電子伝達体がフェリシアン化カリウムである、項1〜3のいずれかに記載の組成物。
項5.
項1〜4のいずれかに記載の組成物を反応層に備えるグルコース測定用センサ。
項6.
項4に記載の組成物または項5に記載のセンサを用いてグルコースを定量する方法。
項7.
ケカビ科由来糸状菌由来FAD依存型グルコースデヒドロゲナーゼ、電子伝達体、増粘剤を少なくとも含む組成物に、グリシルグリシン、ソルビトールおよびアドニトールからなる群より選ばれる1以上の物質を添加することを特徴とする、前記組成物の安定性向上方法。
項8.
ケカビ科由来糸状菌がムコール属に属する糸状菌である、項7に記載の方法。
項9.
増粘剤がスメクタイトである、項7または8に記載の方法。
項10.
電子伝達体がフェリシアン化カリウムである、項7〜9のいずれかに記載の方法。
本発明により、ケカビ科糸状菌由来FAD−GDHを用いたグルコースセンサの安定性を向上させることができ、結果として十分な保存安定性を有し、かつグルコース以外の糖類の存在による測定値への影響を受けないグルコースセンサを作製することが可能となる。
(グルコース定量用組成物)
本発明の実施形態の一つは、以下の(A)〜(D)を含むことを特徴とする、グルコース測定用組成物である。
(A)ケカビ科糸状菌由来FAD−GDH
(B)電子伝達体
(C)増粘剤
(D)グリシルグシリン、ソルビトールおよびアドニトールからなる群より選ばれる1以上の物質。
本発明に用いるFAD−GDHとしては、ケカビ科糸状菌に由来し、かつFADを補酵素とし、かつグルコースを酸化してD−グルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する酵素であれば特に限定しない。ケカビ科糸状菌の好適な例としてはムコール(Mucor)属、アクチノムコール属(Actinomucor)属、シルシネラ(Circinella)属、パラシテラ(Parasitella)属、ザイゴリンカス(Zygorhynchus)属、ディクラノフォラ(Dicranophora)属、スピネラス(Spinellus)属、スポロディニエラ(Sporodiniella)属、リゾパス(Rhyzopus)属、アブシジア(Absidia)属、クラミドアブシジア(Chlamidoabsidia)属およびサーモムコール(Thermomucor)属に属する糸状菌などが挙げられる。より好適には、ムコール(Mucor)属、アクチノムコール属(Actinomucor)属、シルシネラ(Circinella)属に属する糸状菌であり、さらに好適にはムコール(Mucor)属に属する糸状菌であり、最も好適にはムコール・プライニー(Mucorprainii)もしくはムコール・ヒエマリス(Mucor hiemalis)である。
また別の観点から、本発明に用いるFAD−GDHの好適な例としては、配列番号1もしくは配列番号3に示すアミノ酸配列からなるGDHであり、もしくは配列番号1もしくは配列番号3に示すアミノ酸配列と80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するGDHである。
本発明に用いる電子伝達体としては、GDHの補酵素であるFADから電子を受け取り、場合によっては発色物質や電極に電子を供与しうるものが挙げられ、たとえばフェリシアン化物塩、フェナジンエトサルフェート、フェナジンメトサルフェート、フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルフェニレンジアミン、1−メトキシ−フェナジンメトサルフェート、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、ニトロソアニリン、9,10−フェナントレンキノン、フェロセン誘導体、オスミウム錯体、ルテニウム錯体等が例示されるが、これらに限定されない。
好ましくは、フェリシアン化物塩由来であり、さらに好ましくは、フェリシアン化カリウムである。
本発明に用いる増粘剤としては、塗布した組成物をグルコースセンサの反応層上に保持するに必要な粘性を担保できる物質であれば特に限定しないが、例えばプルラン、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリ−γ−グルタミン酸、カルボシキメチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよび粘土が好適な例として挙げられる。粘土としては、カオリナイト構造やパイロフィライト構造を持つもの、たとえば、パイロフィライト(Pyrophyllite)、マイカ(Mica)、スメクタイト(Smectite)、バーミキュライト(Vermiculite)、クロライト(Chlorite)、カオリナイト(Kaolinite)、ハロイサイト(Halloysite)などが挙げられる。これらの中でも、スメクタイトが好適な増粘剤の例として挙げられる。スメクタイトはさらにモンモリロナイト(Montmorillonite)、バイデライト(Beidelite)、ノントロナイト(Nontronite)、サポナイト(Saponite)、ヘクトライト(Hectorite)などに分類される。なお、スメクタイトは合成スメクタイトであってもよく、例えば、「ルーセンタイト」シリーズ(コープケミカル株式会社製)などの市販品を入手できる。
増粘剤の組成中への添加量は、上記組成物の安定性を高める効果の認められる範囲であれば特に限定しないが、液状での濃度として好ましくは0.01%以上5%以下であり、より好ましくは0.1%以上1%以下である。また、加温または凍結乾燥等を経ることによる固体状の組成においては、好ましい添加量は0.5%以上70%以下であり、より好ましくは4.5%以上30%以下である。
グリシルグリシン、ソルビトールおよびアドニトール(adonitol)からなる群より選ばれる1以上の物質の組成中への添加量は、上記組成物の安定性を高める効果の認められる範囲であれば特に限定しないが、液状での濃度として好ましくは0.1%以上10%以下であり、より好ましくは0.2%以上2%以下である。また、加温または凍結乾燥等を経ることによる固体状の組成においては、好ましい添加量は1%以上80%以下であり、より好ましくは2%以上50%以下である。
本発明の組成物において、グリシルグリシン、ソルビトールまたはアドニトールと、増粘剤との組合せは特に限定されないが、好ましくはグリシルグリシンとカルボキシメチルセルロール、グリシルグリシンとスメクタイト、グリシルグリシンとポリビニルピロリドン、ソルビトールとカルボキシメチルセルロール、ソルビトールとスメクタイト、ソルビトールとポリビニルピロリドン、アドニトールとカルボキシメチルセルロール、アドニトールとスメクタイト、アドニトールとポリビニルピロリドンである。これら組合せの中で、より好適にはグリシルグリシンとスメクタイト、ソルビトールとスメクタイト、またはアドニトールとスメクタイトである。
上記の組成物の中には、さらに緩衝剤成分、界面活性剤等を含んでいてもよく、あるいはGDHを保持するための担体を含んでもよい。該担体にはGDHを吸着させるための官能基および該官能基と該担体とを繋ぐスペーサーを有していてもよい。
上記の組成物に緩衝能を持たせる場合においては、バッファー成分を使用してもよい。バッファー成分としてはリン酸塩、ホウ酸塩、酢酸や各種ジカルボン酸等の有機酸塩、アミノ酸、トリス塩酸塩、GOODのバッファー等が挙げられるがこれらに限定されない。
また、上記の組成物は、TritonX−100、Tween20、デオキシコール酸ナトリウム、エマルゲン430等に代表される界面活性剤をさらに含んでもよい。
上記組成物は液状であってもよく、また乾燥し固体化した状態であってもよい。固体化の方法は、加温により水分を蒸発させる方法、常温以上の温度で風乾する方法、真空状態に置くことで水分を蒸発させる方法、凍結した状態で真空に置いて水分を除去する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
(グルコース測定用センサ)
本発明の別の実施形態は、以下の(A)〜(D)を含む上記のグルコース測定用組成物がグルコースセンサ上の反応層中に存在する、グルコース測定用センサである。
(A)ケカビ科糸状菌由来FAD−GDH
(B)電子伝達体
(C)増粘剤
(D)グリシルグシリン、ソルビトールおよびアドニトールからなる群より選ばれる1以上の物質。
本発明のグルコース測定用センサは、比色式であってもよく、また電気化学式であってもよい。また該グルコース測定用センサにはグルコースに応答して得られたシグナル強度から血糖値を算出するための演算装置並びに算出された血糖値を表示するためのディスプレイを具備していてもよい。さらに該グルコース測定用センサは、反応層上に検体となる血液もしくは血液の希釈液を滴下するタイプであってもよいが、被検者の皮膚を窄孔し血液を採取するための針及び/または血液を移送させる流路を具備するかまたは装着可能であってもよい。比色式センサの場合はさらに吸光度を測定するための光源ランプおよび光度計を具備していてもよい。電気化学式センサの場合は作用極と対極を有しているかこれら電極上にGDHおよび電子伝達体を保持したチップを装着できるタイプであってもよい。電極としては、カーボン電極、金電極、銀電極、白金電極などを用い、この電極上にGDHを固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどを用いる方法があり、電子伝達体とともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いてGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
本発明の方法によるグルコース濃度の測定は、比色式グルコースセンサの場合にあっては例えば以下のようにして行うことができる。すなわち安定化剤としてのグルコースセンサ上の反応層にはグリシルグシリン、ソルビトールおよびアドニトールからなる群より選ばれる1以上の物質に加え、FAD−GDH、電子伝達体、そして反応促進剤としてポリグルタミン酸を含む液状もしくは固体状の組成物を保持させておく。ここで、必要に応じてpH緩衝剤、発色試薬を組成物中に含有させる。ここにグルコースを含む試料を加え、一定時間反応させる。この間、還元により退色する電子伝達体もしくは電子伝達体より電子を受け取ることで重合し生成する色素の最大吸収波長に相当する吸光度をモニタリングする。レート法であれば吸光度の時間あたりの変化率から、エンドポイント法であれば試料中のグルコースがすべて酸化された時点までの吸光度変化より、あらかじめ標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブを元に試料中のグルコース濃度を算出することができる。この方法において使用できるメディエーター及び発色試薬としては、たとえば2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)を電子伝達体として添加し、600nmにおける吸光度の減少をモニタリングすることでグルコースの定量が可能である。また、電子伝達体としてフェナジンメトサルフェート(PMS)を、さらに発色試薬としてニトロテトラゾリウムブルー(NTB)を加え、570nm吸光度を測定することにより生成するジホルマザンの量を決定し、グルコース濃度を算出することが可能である。いうまでもなく使用する電子伝達体および発色試薬はこれらに限定されない。
また、本発明の方法によるグルコース濃度の測定は、電気化学式センサの場合にあっては以下のようにして行うことができる。グルコースセンサ上の電極に接続された反応層にはすなわち安定化剤としてのグルコースセンサ上の反応層にはグリシルグシリン、ソルビトールおよびアドニトールからなる群より選ばれる1以上の物質に加え、FAD−GDH、電子伝達体、そして反応促進剤としてポリグルタミン酸を含む液状もしくは固体状の組成物を保持させておく。この組成物にはさらにpH緩衝剤等を含んでいてもよい。ここにグルコースを含む試料を加えて反応させ、さらに電極に一定の電圧を印加する。電流をモニタリングし、電圧印加開始から一定時間に蓄積される電流を積算するかあるいは電圧印加開始から一定時間を経過したある時点での電流値を測定する。この値を元に、標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い試料中のグルコース濃度を計算することができる。
(グルコース定量用組成物の安定化方法)
本発明の別の実施形態は、ケカビ科糸状菌由来FAD−GDH、電子伝達体、増粘剤を少なくとも含んでなる組成物に、グリシルグリシン、ソルビトールおよびアドニトールからなる群より選ばれる1以上の物質を添加することを特徴とする、前記組成物の安定性向上方法である。
安定性の評価方法
本発明に述べる組成物は、40℃ないし50℃という高温状態における安定性に優れている。本明細書において、組成物の安定性は、組成物を50℃に1時間置いた後に維持される、前記組成物をグルコースと反応させて得られるシグナル強度の割合で評価する。ここでシグナル強度とはGDHがグルコースを酸化させることにより発生する電子の量に比例して発生する計測可能な発色・退色もしくは電流の数値である。すなわち組成物の安定性の向上とは、加温処理後に維持されるシグナル強度の割合が増大することを意味する。
FAD−GDH活性測定例
本明細書において、FAD−GDH活性測定は特に断りのない限り、以下の方法に従って行われる。
反応液(0.1mol/L HEPES、200mmol/L D−グルコース、0.55mmol/L DCPIP、pH6.5)2.9mLを石英セルにいれ、37℃で5分間予備加温する。そしてGDH溶液0.1mLを加えて混和し、37℃で5分反応させ、この間700nm吸光度を測定する。吸光度変化の直線部分から1分間あたりの吸光度の上昇度(ΔODTEST)を算出する。盲検は、GDH溶液の代わりに緩衝液を加えて混和し、同様に37℃5分インキュベートして700nm吸光度を記録し、1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を算出する。これらの値を以下の式に当てはめて活性値(U/mL)を算出する。なおここでは、基質存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量を1Uと定義する。

GDH活性(U/mL)=[(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率 ]/(4.5×1.0×0.1)

なお、ここで
3.0 :GDH溶液混和後の容量(mL)
4.5 :DCPIPのミリモル分子吸光係数(cm/マイクロモル)
1.0 :光路長(cm)
0.1 :添加するGDH溶液の液量(mL)
である。
タンパク質の定量および比活性の算出例
本発明に述べるタンパク質量は280nmの吸光度を測定することにより測定したものである。すなわち、280nmにおける吸光度が0.1〜1.0の範囲となるように酵素溶液を蒸留水で希釈し、蒸留水を用いてゼロ点補正を行った吸光度計を用いて280nmの吸光度(Abs)を測定する。本発明に述べるタンパク質濃度は、1Abs≒1mg/mlと近似し、吸光度の測定と測定した溶液の希釈倍率とを乗じた値で示したものである。また、本発明に述べる比活性とは、本測定方法によるタンパク質量として1mgあたりのGDHの活性(U/mg)であり、この際のGDH活性は、上記活性測定例に従って測定することにより得られる値である。
以下、本発明を具体的に実施例として示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
ケカビ科糸状菌由来FAD−GDHの調製
ムコール・プライニー由来FAD−GDHとして、特許文献4に記載のアミノ酸配列を参考に配列番号2に記載の配列からなる合成DNAを作製した。また、ムコール・ヒエマリス由来FAD−GDHとして、特許文献6に記載のアミノ酸配列を参考に配列番号4に記載の配列からなる合成DNAを作製した。これら合成DNAは、既に公開となっている特許文献(WO2013/080881)に記載される宿主(クリプトコッカス・エスピー・S−2.U−5株)に、概特許に記載のとおりのフローで形質転換を行った。なお、形質転換の際にベクターとしてpCsUXを使用し、配列番号2および4の遺伝子はそれぞれ5‘末端側をクリプトコッカス・エスピー・S−2株由来キシラナーゼの分泌シグナルと融合し、かつ3’末端側に終止コドン(TAA)を付加した状態で概ベクターのMluI/SpeIサイトに挿入した。ベクターpCsUXの概要及びキシラナーゼ分泌シグナルの配列も、上記特許文献に記載されている。このようにして作製した形質転換体は、200mL容のバッフル付きフラスコ中のYM培地60mLに植菌し、温度25℃、回転速度180rpmで2日間培養し、培養液全量を6Lの生産培地(5%酵母エキス、2%キシロース、0.02%アデカノール)に加え、30℃で通気攪拌培養した。培養液を高速冷却遠心機(日立ハイテク製CR22型)にセットした連続遠心用ローター(型番:R10C)に通液し、5000rpmで回転させることにより菌体を沈降させ、培養液上清を得た。この溶液を分子量50000カット限外ろ過膜を用いて加水濃縮することにより1000倍以上になるよう加水し、最終的に液量2Lまで濃縮した。この溶液に0.4飽和となるよう硫酸アンモニウムを溶解し、0.4飽和硫酸アンモニウムを含む50mMリン酸カリウムバッファー(pH6.0)で緩衝化したPhenyl−sepharose 6FF HS(GEヘルスケア社製)に吸着させ、硫酸アンモニウム濃度が0となるまでグラジエント溶出を行い、GDH活性を有する画分を集めた。この溶液を分子量50000カット限外ろ過膜を用いて10mLまで濃縮し、0.3M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸カリウムバッファーで緩衝化したSuperdex200に通液し、ゲルろ過を行った。得られた精製酵素の比活性は、ムコール・プライニー由来が186U/mg、ムコール・ヒエマリス由来が150U/mgであった。
<実施例2>
電気化学式センサにおけるシグナル強度の残存率向上(1)
まず、グルコース測定用試薬として、以下の組成からなる溶液(pH=7.5)を作製した(対照組成)。
5mM ACES
5mM コハク酸ナトリウム
25mM フェリシアン化カリウム
500U/ml ケカビ科糸状菌由来FAD−GDH(実施例1で作製したもの)
0.25% 合成スメクタイト(商標名:ルーセンタイトSWN(コープケミカル株式会社製))
さらに上記組成に0.5%のグリシルグリシン、ソルビトール、もしくはアドニトールのいずれか1つを加えた溶液を作製した。
上記溶液5μLを、3電極を具備するディスポーサブルチップ(DEP−CHIP、バイオデバイステクノロジーズ社製)の作用極・対極・参照極上に滴下し、室温(25℃)で十分乾燥させてセンサチップとした。このセンサチップを専用ソケットを介してポテンショ/ガルバノスタットに接続し、電極上の組成物に10mMの標準グルコース溶液5μLを添加して+0.3Vの電圧を印加して電流値をモニタリングした。また、これらセンサチップを50℃で1時間加温した後に同様に反応し電流値をモニタリングして、加温前の電流値との比率(シグナル残存率)を求めた。結果を表1に示す。
対照組成に対し、グリシルグリシン、ソルビトール、もしくはアドニトールを加えて作製したセンサチップではいずれもシグナル残存率が向上した。
電気化学式センサにおけるシグナル強度の残存率向上(2)
まず、グルコース測定用試薬として、以下の組成からなる溶液(pH=7.5)を作製した(対照組成)。
5mM ACES
5mM コハク酸ナトリウム
25mM フェリシアン化カリウム
500U/ml ケカビ科糸状菌由来FAD−GDH(実施例1で作製したもの)
0.25% 合成スメクタイト(商標名:ルーセンタイトSWN(コープケミカル株式会社製))
さらに上記組成にソルビトール、もしくはアドニトールを0.05%、0.5%、2%含む溶液を作製した。
上記溶液5μLを、3電極を具備するディスポーサブルチップ(DEP−CHIP、バイオデバイステクノロジーズ社製)の作用極・対極・参照極上に滴下し、室温(25℃)で十分乾燥させてセンサチップとした。このセンサチップを専用ソケットを介してポテンショ/ガルバノスタットに接続し、電極上の組成物に10mMの標準グルコース溶液5μLを添加して+0.3Vの電圧を印加して電流値をモニタリングした。また、これらセンサチップを50℃で1時間加温した後に同様に反応し電流値をモニタリングして、加温前の電流値との比率(シグナル残存率)を求めた。結果を表2に示す。
対照組成に対し、グリシルグリシン、ソルビトール、もしくはアドニトールを加えて作製したセンサチップではいずれも上記濃度範囲でシグナル残存率が向上した。
本発明は、血糖値測定用試薬、血糖センサ並びにグルコース濃度定量キットとしての供給が可能である。特に、ケカビ科糸状菌に由来する基質特異性の高いGDHを原料としたグルコースセンサの安定性を高める方法として有効である。

Claims (8)

  1. 以下の(A)〜(D)を含むグルコース定量用組成物。
    (A)ケカビ科糸状菌由来FAD依存型グルコースデヒドロゲナーゼ
    (B)電子伝達体
    (C)スメクタイト
    (D)グリシルグリシン、ソルビトールおよびアドニトールからなる群より選ばれる1以上の物質。
  2. ケカビ科由来糸状菌が、ムコール属に属する糸状菌である、請求項1に記載のグルコース定量用組成物。
  3. 電子伝達体がフェリシアン化カリウムである、請求項1または2に記載のグルコース定量用組成物。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のグルコース定量用組成物を反応層に備えるグルコース測定用センサ。
  5. 請求項に記載のグルコース定量用組成物または請求項に記載のグルコース測定用センサを用いてグルコースを定量する方法。
  6. ケカビ科由来糸状菌由来FAD依存型グルコースデヒドロゲナーゼ、電子伝達体、スメクタイトを少なくとも含むグルコース定量用組成物に、グリシルグリシン、ソルビトールおよびアドニトールからなる群より選ばれる1以上の物質を添加することを特徴とする、グルコース定量用組成物の安定性向上方法。
  7. ケカビ科由来糸状菌がムコール属に属する糸状菌である、請求項に記載のグルコース定量用組成物の安定性向上方法。
  8. 電子伝達体がフェリシアン化カリウムである、請求項6または7に記載のグルコース定量用組成物の安定性向上方法。
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