JP2016208916A - フラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有する変異型タンパク質 - Google Patents

フラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有する変異型タンパク質 Download PDF

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Abstract

【課題】溶存酸素の影響を受けず、補酵素の添加も必要なく、そして、基質特異性にも優れているというFADGDHの優れた特性を保ちつつ、熱安定性が高く、かつ、基質親和性が高く、酵素活性が高い、FADGDH酵素活性を有するタンパク質を提供すること。【解決手段】フラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有する野生型タンパク質のアミノ酸残基に対してアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、他のアミノ酸残基で置換されているか、または、隣の位置に少なくとも1つのアミノ酸残基が挿入されていることを特徴とする、変異型タンパク質。【選択図】図3

Description

本発明は、フラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有する変異型タンパク質、該変異型タンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含む組換えベクター、該遺伝子を含む形質転換体、上記遺伝子または上記形質転換体を用いたフラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素の製造方法、ならびに、上記変異型タンパク質を用いたグルコースセンサ、グルコース濃度測定方法およびバイオ燃料電池に関する。
血糖自己測定は、糖尿病患者が通常の自分の血糖値を把握し治療に生かすために重要である。血糖自己測定に用いられるセンサには、グルコースを基質とする酵素が利用されている。
グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)は、血糖センサ用の酵素として古くから利用されており、グルコースに対する特異性が高く、熱安定性に優れているという利点を有している。しかし、グルコースオキシダーゼを用いた測定では、血液中の溶存酸素が測定値に影響してしまうという問題があった。
一方、溶存酸素の影響を受けない酵素として、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)依存性のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)(NAD(P)GDH:EC1.1.1.47)や、ピロロキノリンキノン(PQQ)依存性のGDH(PQQGDH:EC1.1.5.2)が、血糖センサ用の酵素として知られている。しかし、NAD(P)GDHは、安定性に乏しく、補酵素の添加が必要であるといった欠点があり、また、PQQGDHは、基質特異性に乏しく、グルコース以外の糖類にも作用するという欠点がある。
このため、溶存酸素の影響を受けず、補酵素の添加も必要なく、基質特異性にも優れた酵素として、フラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素(FADGDH:EC1.1.99.10)が注目されている。FADGDHは、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素としてグルコースからD−グルコノ−1,5−ラクトンへの酸化反応を触媒する酵素であり、Aspergillus oryzaeやAspergillus terreusといった常温性糸状菌から発見されている。
Aspergillus oryzae、または、Aspergillus terreusの野生株から培養・精製して得られたFADGDHは、ある程度の熱安定性を有している。しかし、グルコースセンサ用試薬の作製工程において、酵素に加熱乾燥処理を施す場合や、保管時の環境温度が高温になる場合が考えられるため、グルコースセンサに用いる酵素は高い熱安定性を有していることが望ましい。
このため、特許文献1では、FADGDHの熱安定性を向上させるために、特定の変異を加えたFADGDHの構造遺伝子を用いて大腸菌で組換えFADGDHを発現させることにより、野生株で産生されたFADGDHと同等程度の熱安定性を有する変異型FADGDHが得られることが開示されている。また、特許文献2では、さらに熱安定性に優れたFADGDHとして、Talaromyces emersonii、Thermoascus crustaceusなどの好熱性糸状菌由来のFADGDHを用いることが開示されている。
国際公開第2009/119728号 国際公開第2014/045912号
特許文献2に開示される好熱性糸状菌由来のFADGDHのうち、特にTalaromyces emersonii由来FADGDHは、耐熱性(熱安定性)に優れている。しかし、本発明者らの分析により、Talaromyces emersonii由来FADGDHは、基質親和性が低い(Km値が高い)ため、血液中のグルコース濃度付近における酵素活性が低いという問題があることがわかった。
本発明は、溶存酸素の影響を受けず、補酵素の添加も必要なく、そして、基質特異性にも優れているというFADGDHの優れた特性を保ちつつ、熱安定性が高く、かつ、基質親和性が高く、酵素活性が高い、FADGDH酵素活性を有するタンパク質を提供することを目的とする。
〔1〕
フラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有するTalaromyces emersonii由来野生型タンパク質に変異を導入してなる変異型タンパク質であって、
前記Talaromyces emersonii由来野生型タンパク質のアミノ酸配列と、Aspergillus brunneo−uniseriatus、および、Aspergillus carneus、Aspergillus malignusの各々に由来するフラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有する3種の野生型タンパク質のアミノ酸配列とを対比したときに、前記3種の野生型タンパク質の全てに共通するアミノ酸残基に対して相違する前記Talaromyces emersonii由来野生型タンパク質のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、他のアミノ酸残基で置換されているか、または、隣の位置に少なくとも1つのアミノ酸残基が挿入されていることを特徴とする、変異型タンパク質。
〔2〕
前記Talaromyces emersonii由来野生型タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列、または、配列番号1に記載のアミノ酸配列からシグナルペプチドの少なくとも一部を除いたアミノ酸配列からなる、〔1〕に記載の変異型タンパク質。
〔3〕
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列において、222番目、423番目、425番目および434番目のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、他のアミノ酸残基で置換されているか、または、356番目と357番目の間に1つのアミノ酸残基が挿入されている、〔2〕に記載の変異型タンパク質。
〔4〕
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくとも222番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されており、
前記他のアミノ酸残基が、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)またはアラニン(A)の残基である、〔3〕に記載の変異型タンパク質。
〔5〕
前記他のアミノ酸残基がアルギニン(R)残基である、〔4〕に記載の変異型タンパク質。
〔6〕
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくとも434番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されており、
前記他のアミノ酸残基が、セリン(S)、ヒスチジン(H)、アスパラギン酸(D)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、バリン(V)、システイン(C)、メチオニン(M)またはグルタミン酸(E)の残基である、〔3〕に記載の変異型タンパク質。
〔7〕
前記他のアミノ酸残基がセリン(S)残基である、〔6〕に記載の変異型タンパク質。
〔8〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の変異型タンパク質をコードする遺伝子。
〔9〕
(A) 塩基配列の664〜666番目、1267〜1269番目、1273〜1275番目、および、1300〜1302番目の塩基の少なくともいずれかが他の塩基に置換されているか、または、1066〜1077番目の塩基配列のいずれかの位置に塩基が挿入された、配列番号2に記載の塩基配列からなるDNA、
(B) 上記(A)のDNAの塩基配列からシグナルペプチドをコードする塩基配列の少なくとも一部を除いた塩基配列からなるDNA、および、
(C) 上記(A)または(B)のDNAの塩基配列と、イントロンとを含むDNA
のいずれかのDNAからなる遺伝子。
〔10〕
〔8〕または〔9〕に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
〔11〕
〔8〕または〔9〕に記載の遺伝子を含む形質転換体。
〔12〕
〔8〕または〔9〕に記載の遺伝子を用いたフラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素の製造方法。
〔13〕
〔11〕に記載の形質転換体を用いたフラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素の製造方法。
〔14〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の変異型タンパク質を含むグルコース濃度測定試薬。
〔15〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の変異型タンパク質を用いたグルコースセンサ。
〔16〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の変異型タンパク質を用いたグルコース濃度測定方法。
〔17〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の変異型タンパク質を用いたバイオ燃料電池。
本発明によれば、溶存酸素の影響を受けず、補酵素の添加も必要なく、そして、基質特異性にも優れているというFADGDHの優れた特性を保ちつつ、熱安定性が高く、かつ、基質親和性が高く、酵素活性が高い、FADGDH酵素活性を有するタンパク質を提供することができる。
Ta.emersonii由来FADGDH遺伝子のORFの塩基配列と、その塩基配列から類推されるアミノ酸配列を示す図である。 Ta.emersonii由来FADGDHとKm値の低いFADGDHとのアミノ酸配列を対比して示す図である。 評価試験における実施例1および比較例1のFADGDHについての酵素活性の測定結果を示すグラフである。 評価試験における実施例2および比較例1のFADGDHについての酵素活性の測定結果を示すグラフである。 評価試験における実施例3および比較例1のFADGDHについての酵素活性の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では実施形態1と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
(実施形態1)
本実施形態の発明は、フラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有するTalaromyces emersonii由来野生型タンパク質に変異を導入してなる変異型タンパク質であって、
Talaromyces emersonii由来野生型タンパク質のアミノ酸配列と、Aspergillus bruneo−uniseriatus、および、Aspergillus carneus、Aspergillus malignusの各々に由来するフラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有する3種の野生型タンパク質のアミノ酸配列とを対比したときに、3種の野生型タンパク質の全てに共通するアミノ酸残基に対して相違するTalaromyces emersonii由来野生型タンパク質のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、他のアミノ酸残基で置換されているか、または、隣の位置に少なくとも1つのアミノ酸残基が挿入されていることを特徴とする、変異型タンパク質である。
なお、上記野生型タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列、または、配列番号1に記載のアミノ酸配列からシグナルペプチドの少なくとも一部を除いたアミノ酸配列からなることが好ましい。なお、配列番号1は、「野生型のTalaromyces emersonii由来のFADGDHのアミノ酸配列」であって、シグナルペプチドも含んでいる。
シグナルペプチドは、糸状菌等によるタンパク質分子の生合成の過程において、細胞内で生合成されたタンパク質を、適切な場所に輸送するために不可欠な構造である。シグナルペプチド部分は、例えば配列番号1のような「シグナルペプチドを含むアミノ酸配列」をコードする遺伝子の情報に基づいて、いったんは合成されるが、最終的にはその役割を終えた後、その少なくとも一部が切除される(成熟タンパク質)。
図2に、Ta.emersonii由来FADGDHと、本発明者らによりKm値が特に低いことが分かった糸状菌由来FADGDH、すなわち、Aspergillus bruneo−uniseriatus(NBRC6993)由来FADGDH、Aspergillus carneus(NBRC5861)由来FADGDH、および、Aspergillus malignus(NBRC8132)由来FADGDHとのアミノ酸配列を対比して示す。なお、図2において黒色の背景に白色の文字で示している部分は、全てのFADGDHに共通のアミノ酸配列である。
なお、これらの糸状菌由来のFADGDHは、本発明者らによってその存在やアミノ酸配列等が確認されたものであり、Ta.emersonii由来FADGDH以外は本願の出願時において公知のものではない。また、Ta.emersonii由来FADGDHのKm値(基質親和性)、および、上記3種のAspergillu属糸状菌に由来するFADGDHについてのKm値、酵素活性などの特性も本発明者らの実験により見出された知見であり、本願出願時には公知ではない。
図2(黒色の背景以外の部分)に示される対比から、上記3種のKm値が低い糸状菌由来FADGDHの全てに共通するアミノ酸残基に対して、Talaromyces emersonii由来野生型タンパク質のみアミノ酸残基が異なる位置がいくつか存在することが分かる。
したがって、これらの位置のアミノ酸残基の種類が、基質親和性に与える影響が大きいと考えられ、Ta.emersoniiに由来する野生型FADGDHに対して、これらの位置の少なくともいずれかにおいて変異を導入することで、FADGDH特有の利点と高い耐熱性とを有し、かつ、Km値が低い(基質親和性が高い)変異型FADGDHを得られることが示唆される。
本発明者らは、後述のように、Ta.emersoniiに由来する野生型FADGDHに対して、これらの位置のいくつかにおいて変異を導入した変異型FADGDHを生産し、基質親和性への影響を確認した。その結果、本発明者らは、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、222番目、423番目、425番目および434番目のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基で置換する変異、または、356番目と357番目の間に1つのアミノ酸残基を挿入する変異を導入することで、Km値が大幅に低下することを確認した。
したがって、本実施形態の変異型タンパク質(変異型FADGDH)においては、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、222番目、423番目、425番目および434番目のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、他のアミノ酸残基で置換されているか、または、356番目と357番目の間に1つのアミノ酸残基が挿入されていることが好ましい。この場合、糸状菌由来のFADGDHの中でも特に耐熱性(熱安定性)に優れたTa.emersonii由来FADGDHについて、糸状菌由来のFADGDHの中でも特にKm値が小さいFADGDHと対比することで特定された上記4つのアミノ酸残基の少なくともいずれかに変異を導入することで、極めて高い耐熱性と低いKm値(高い基質親和性)とを有する変異型FADGDHを得ることができる。
ただし、上記3種のKm値が低い糸状菌由来FADGDHの全てに共通するアミノ酸残基に対して、Talaromyces emersonii由来野生型タンパク質のみアミノ酸残基が異なる位置の全てについて検討したわけではないため、222番目、356番目、357番目、423番目、425番目および434番目のアミノ酸残基以外のアミノ酸残基に変異を導入した場合でも、極めて高い耐熱性と低いKm値(高い基質親和性)とを有する変異型FADGDHを得ることができる可能性はある。
また、本発明者らは、後述のように、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、222番目のアミノ酸残基の飽和変異体の各々の酵素活性を調べた。その結果、222番目のアミノ酸残基をアルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)またはアラニン(A)の残基で置換した場合に、変異型FADGDHの酵素活性が野生型FADGDHより高くなることが確認された。なお、これらの中でもアルギニン(R)残基に置換した場合に、変異型FADGDHの酵素活性が最も高くなることが確認された。
したがって、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくとも222番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されている場合、他のアミノ酸残基(置換後の222番目のアミノ酸残基)は、好ましくは、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)またはアラニン(A)の残基であり、最も好ましくはアルギニン(R)残基である。
また、本発明者らは、後述のように、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、434番目のアミノ酸残基の飽和変異体の各々の酵素活性を調べた。その結果、434番目のアミノ酸残基をセリン(S)、ヒスチジン(H)、アスパラギン酸(D)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、バリン(V)、システイン(C)、メチオニン(M)またはグルタミン酸(E)の残基で置換した場合に、変異型FADGDHの酵素活性が野生型FADGDHより高くなることが確認された。なお、これらの中でもセリン(S)残基に置換した場合に、変異型FADGDHの酵素活性が最も高くなることが確認された。
したがって、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくとも434番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されている場合、他のアミノ酸残基(置換後の434番目のアミノ酸残基)は、好ましくは、セリン(S)、ヒスチジン(H)、アスパラギン酸(D)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、バリン(V)、システイン(C)、メチオニン(M)またはグルタミン酸(E)の残基であり、最も好ましくはセリン(S)残基である。
以上説明したとおり、本実施形態の変異型タンパク質(変異型FADGDH)は、溶存酸素の影響を受けず、補酵素の添加も必要なく、そして、基質特異性にも優れているというFADGDHの優れた特性を保ちつつ、熱安定性が高く、かつ、基質親和性が高く、酵素活性が高いという優れた特徴を有している。したがって、本実施形態の変異型タンパク質は、グルコース測定を短時間で実施できる点などにおいて有利である。
(実施形態2)
本実施形態の発明は、上記実施形態1の変異型タンパク質をコードする遺伝子である。具体的には、(A) 塩基配列の664〜666番目、1267〜1269番目、1273〜1275番目、および、1300〜1302番目の塩基の少なくともいずれかが他の塩基に置換されているか、または、1066〜1077番目の塩基配列のいずれかの位置に塩基が挿入された、配列番号2に記載の塩基配列からなるDNA、
(B) 上記(A)のDNAの塩基配列からシグナルペプチドをコードする塩基配列の少なくとも一部を除いた塩基配列からなるDNA、および、
(C) 上記(A)または(B)のDNAの塩基配列と、イントロンとを含むDNA
のいずれかのDNAからなる遺伝子が挙げられる。
配列番号2は、「野生型のTa.emersonii由来のFADGDHをコードする遺伝子の塩基配列」であって、シグナルペプチドをコードする塩基配列を含んでいるが、終止コドンは含んでいない。
「上記(A)または(B)のDNAの塩基配列と、イントロンとを含むDNA」とは、上記(A)または(B)のDNAの塩基配列をエクソンとし、そのエクソン配列の途中にイントロン配列が介在しているDNAである。
本実施形態の遺伝子の塩基配列は、これらの具体例に限定されず、実施形態1のタンパク質(アミノ酸配列)をコードするものであればよく、FADGDHの発現を向上させるように、コドン出現頻度(Codon usage)を変えた塩基配列なども含まれる。
FADGDHを構成するアミノ酸配列を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換または挿入すること等により、改変(変異型)タンパク質の遺伝情報を有するDNAが作製される。DNA中の塩基配列を変換する具体的な方法としては、例えば、市販のキット(PrimeSTAR Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ),QuickChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kit(アジレント・テクノロジー)、GeneArt Site−Directed Mutagenesis PLUS Kit(Life Technologies)を使用する方法、あるいはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を利用する方法が挙げられる。
(実施形態3)
本実施形態の発明は、実施形態2の遺伝子を含む組換えベクターである。実施形態2の遺伝子は、例えば、プラスミドベクターと連結された組換えベクターとして、宿主微生物に導入され、該宿主はFADGDHを生産する形質転換体となる。
宿主に組換えベクターを導入する方法としては、例えば宿主が酵母の場合には、スフェロプラスト法や酢酸リチウム法などが用いられる。また、エレクトロポレーション法などを用いても良い。宿主が糸状菌の場合には、プロトプラスト化された細胞等が用いられる。宿主が大腸菌に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAの導入を行う方法などを採用することができる。また、エレクトロポレーション法を用いても良い。さらに、市販のコンピテントセル(例えば、TaKaRa Competent Cell BL21(タカラバイオ)を用いても良い。
(実施形態4)
本実施形態の発明は、実施形態2の遺伝子を含む形質転換体である。形質転換体の宿主としては、酵母、糸状菌、大腸菌、動物細胞、昆虫細胞など目的に応じて様々な宿主を用いることができる。糖鎖が付加されたタンパク質を生産する場合には、宿主として酵母、糸状菌等の微生物由来の真核生物を用いることが好ましい。真核生物の中でも酵母は産業上多くの利用実績があり、例えば、Pichia pastoris(P.pastoris)、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombeが使用できる。
本実施形態の具体例としては、例えば、実施形態3の組換えベクターで形質転換された大腸菌が挙げられる。
(実施形態5)
本実施形態の発明は、実施形態2の遺伝子を用いたFADGDHの製造方法である。本実施形態では、例えば、実施形態4の形質転換体を用いることにより、FADGDHを製造することができる。具体的には、例えば、以下に示すような手順で製造することが可能である。
所望のFADGDHの遺伝情報を有するDNA(実施形態2の遺伝子)は、プラスミドベクターと連結された組換えベクターとして宿主に導入される。宿主については、上記実施形態4で説明した宿主と同様である。
こうして得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量のFADGDHを安定して生産し得る。形質転換体である宿主微生物の培養形態は宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、通常多くの場合は液体培養で行うが、工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
培地の栄養源としては微生物の培養に通常用いられるものが広く使用される。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ分解物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
培地温度は、微生物が発育しFADGDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、宿主が酵母の場合、好ましくは20℃以上35℃以下であり、宿主が大腸菌の場合、好ましくは20℃以上42℃以下である。培養時間は培養条件によって異なるが、FADGDHが最高収量に達する時期を見計らって適当な時期に培養を終了すればよく、通常、培養時間は6時間以上72時間以下である。培地pHは、菌が発育しFADGDHを生産する範囲で適宜変更しうるが、好ましくはpH5.0以上9.0以下である。
FADGDHを生産する微生物を含む培養液をそのまま採取し利用することもできるが、一般にはFADGDHが培養液中に存在する場合、濾過、遠心分離などにより、タンパク質を含有する溶液と微生物とを分離した後に利用される。一方、FADGDHが微生物の体内に存在する場合は、得られた培養物から濾過または遠心分離などの手法により微生物を採取し、次いで、この微生物を機械的方法、または、リゾチームなどを用いた酵素的方法で破壊する。また必要に応じて、微生物を含む液中にEDTA等のキレート剤、界面活性剤などを添加して、FADGDHを可溶化し、溶液としてFADGDHを分離採取する。
このようにして得られたFADGDH含有溶液からFADGDHを回収する方法としては、例えば、減圧濃縮、膜濃縮、硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムなどを用いた塩析処理、または、親水性有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、アセトン)による分別沈殿法が挙げられる。また、加温処理や等電点処理も有効な精製手段である。また、吸着剤やゲル濾過剤などを用いたゲル濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーにより、FADGDHを精製することもできる。
なお、FADGDHの製造はこのような方法に限定されず、例えば、実施形態2の遺伝子を用いて無細胞タンパク質翻訳系によってFADGDHを製造することも可能である。
(実施形態6)
本実施形態の発明は、実施形態1のタンパク質を含むグルコース濃度測定試薬を用いたグルコースセンサである。
グルコース濃度測定試薬は、実施形態5の方法により製造されたFADGDHを少なくとも1回の測定に十分な量で含む。また、グルコース濃度測定試薬は、該FADGDH以外に、例えば、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液を含み得る。グルコース濃度測定試薬の形態は特に限定されないが、グルコースセンサ用に適した種々の形態(例えば、凍結乾燥された試薬や、適切な保存容器中の溶液)で提供され得る。
グルコースセンサに用いられる電極は、特に限定されないが、カーボン電極、金電極、白金電極などを用いることができる。例えば、この電極上には、本発明のタンパク質(酵素:FADGDH)が固定化される。
固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて、本発明のタンパク質(FADGDH)をカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドを架橋する方法が用いられる。
(実施形態7)
本実施形態の発明は、実施形態1のタンパク質を用いたグルコース濃度測定方法である。グルコース濃度の測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。
恒温セルに緩衝液を入れ、一定温度に維持する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。作用電極として実施形態1のタンパク質(FADGDH)を固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)を用いる。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコース濃度を計算することができる。
(実施形態8)
本実施形態の発明は、実施形態1のタンパク質(FADGDH)を用いたバイオ燃料電池である。FADGDHは、グルコースの脱水素反応を触媒し、この反応により生じた電子が電力として供給される。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(比較例1)
本比較例は、Talaromyces emersonii(Ta.emersonii、NBRC31232)由来の野生型FADGDHであり、特許文献2の実施例2と同様にして大腸菌を用いて製造したFADGDHの精製標品である。
組換え酵素の大腸菌による発現と精製は次に示す方法により行った。シグナル配列(シグナルペプチドをコードする塩基配列)を切除したTa.emersonii由来FADGDH遺伝子を、大腸菌用発現ベクターpET−21b(+)のマルチクローニングサイトであるNdeIおよびHindIIIのサイトで連結することにより、Ta.emersonii由来FADGDH遺伝子発現型プラスミド(pET−21b(+)_31232)を作製した。
pET−21b(+)_31232を大腸菌BLR(DE3)株に導入した。発現型プラスミドを保有 するBLR(DE3)をLB培地(100μg/mLアンピシリン含有)で一晩培養した(前培養)。本培養用LB培地(100μg/mLアンピシリン含有) に前培養液を1%植菌し、4時間ほど37℃で好気的に培養した。その後、培地中に、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度1mMとなるように添加し、25℃で約20時間培養を続けた。
培養後の大腸菌を集菌し、PBS緩衝液に懸濁することにより菌体を洗浄した。遠心分離により、再度集菌した菌体をPBSに懸濁した。PBS緩衝液に懸濁 した菌体は超音波により破砕した。超音波破砕後の破砕液を遠心分離(8000g、10分間、4℃)することにより上清(全菌体画分)と沈殿(未破砕菌体) を分離した。全菌体画分をさらに遠心分離(12000g、20分間、4℃)し、可溶性画分と不溶性画分とに分画した。可溶性画分からMagExtractor―His−tag―(TOYOBO)を用いてFADGDHを精製した。溶出画分をAmicon Ultra−0.5 MWCO10(Merck Millipore)を用いて脱塩処理を施し、Ta.emersonii由来FADGDHを含むFADGDH精製標品を得た。
なお、Ta.emersonii由来FADGDH遺伝子は、4つのエクソン(エクソン1;346bp、エクソン2;598bp、エクソン3;614bp、エクソン4;221bp)から構成される1779bpのORF(593アミノ酸をコード)を含んでいる。図1に、Ta.emersonii由来FADGDH遺伝子のORF(FADGDHコーディング領域)の塩基配列(終止コドンを含めると1782bp)と、その塩基配列から類推されるアミノ酸配列を示す。これらは、そのクローニング方法や解析方法とともに特許文献2に詳細に開示されている。
なお、本比較例のTa.emersonii由来FADGDHは、SDS−PAGEを用いた分析により電気泳動的に純度の高い精製標品であることが確認されている。また、吸収スペクトル分析により、補酵素として酸化型FADを含んだホロ型酵素として精製されていることが確認されている。
[実施例1]
本実施例では、図1に示されるTa.emersonii由来FADGDH遺伝子のコーディング領域の代わりに、Ta.emersonii由来FADGDHの222番目のアミノ酸(図1において枠で囲んだS)をコードする664〜666番目の塩基(図1において枠で囲んだTCG)がCGCに置換されたFADGDH遺伝子のコーディング領域を持つFADGDH発現型プラスミドの作製を行った。それ以外は、比較例1と同様にして、222番目のアミノ酸であるグリシン(S)がアルギニン(R)に置換されたTa.emersonii由来FADGDHを含むFADGDH精製標品を得た。
なお、このようなアミノ酸変異を「S222R」と表記する場合があり、他の変異についても同様に表記する場合がある。
具体的には、シグナル配列を切除したTa.emersonii由来FADGDH遺伝子を、大腸菌用発現ベクターpET−21b(+)のマルチクローニングサイトであるNdeIおよびHindIIIのサイトで連結したTa.emersonii由来FADGDH遺伝子発現型プラスミド(pET−21b(+)_31232)を鋳型にして、PrimeSTAR Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ)および変異導入用プライマーを用いてPCRを行なうことで、S222Rの変異型FADGDH遺伝子を含むプラスミド(pET−21b(+)_31232S222R)を作製した。変異導入用プライマーとしては、31232S222RS(5’−TTCCCGCGCACGGTCGACGATGCAGCAGATGTT−3’)、および31232S222RA(5’−GACCGTGCGCGGGAAGAAGTTGTAGCCACGCAT−3’)を使用した。変異型FADGDHは、比較例1に記載した大腸菌における発現と組換え酵素の精製方法により作製した。
なお、作製した当該変異型FADGDHは、シグナルペプチドが切除された成熟タンパク質であり、アミノ酸配列における変異アミノ酸残基の番号(222番目)は、シグナルペプチドを含めたアミノ酸配列のN末端(アミノ末端)のメチオニン(M)から数えたアミノ酸の番号である。また、変異導入用プライマーは上記変異導入キットのプロトコールに従って設計しており、以下に記載の実施例においても当該プロトコールに従って変異導入プライマーを設計することができる。
なお、本実施例および以下の実施例は、図2を参照して説明した基質親和性に与える影響が大きいと考えられる位置の少なくとも1つに変異を導入した変異型FADGDH(フラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有する変異型タンパク質)である。
[実施例2]
本実施例では、図1に示されるTa.emersonii由来FADGDH遺伝子のコーディング領域の代わりに、実施例1と同様にして、Ta.emersonii由来FADGDHの356〜359番目のアミノ酸(図1において枠で囲んだSと、その次のV、AおよびY)をコードする1066〜1077番目の塩基(図1において枠で囲んだTCTがACCに置換され、かつその次にTATが挿入され、さらにGTCGCCTATがCTGGGCCATに置換されたFADGDH遺伝子のコーディング領域を持つFADGDH発現型プラスミドの作製を行った。変異導入用プライマーとしては、31232S356TY/V357L/A358G/Y359HS(5’−ACCTATCTGGGCCATCCATCTGTGACGGACCTC−3’)、および31232S356TY/V357L/A358G/Y359HA(5’−TGGCCCAGATAGGTCTTGGTACCGGCGATGGCC−3’)を使用した。それ以外は、比較例1と同様にして、356番目のアミノ酸であるセリン(S)がトレオニン(T)に置換され、かつその次にチロシン(Y)が挿入され、さらに357番目のアミノ酸であるバリン(V)がロイシン(L)に、358番目のアミノ酸であるアラニン(A)がグリシン(G)に、359番目のアミノ酸であるチロシン(Y)がヒスチジン(H)に置換された(S356TY/V357L/A358G/Y359H)Ta.emersonii由来FADGDHを含むFADGDH精製標品を得た。
なお、本実施例および次の実施例3では、基質親和性に与える影響が大きいと考えられる複数の位置が隣接していたため、連続する複数のアミノ酸残基に同時に変異を導入した。このように、まずは複数の変異を導入した変異型タンパク質を分析し、目的とする効果(活性の上昇)が確認された場合においてのみ、その複数の変異を個々に分析することで、有用な変異体を効率的にスクリーニングすることができる。
[実施例3]
本実施例では、図1に示されるTa.emersonii由来FADGDH遺伝子のコーディング領域の代わりに、実施例1と同様にして、Ta.emersonii由来FADGDHの423〜425番目のアミノ酸(図1において枠で囲んだYと、その前のIおよびT)をコードする1267〜1275番目の塩基(図1において枠で囲んだTATと、その前のATCACT)がCTGGTGACCに置換されたFADGDH遺伝子のコーディング領域を持つFADGDH発現型プラスミドの作製を行った。変異導入用プライマーには、31232I423L/T424V/Y425TS(5’−ATC CTGGTGACCCCCACCGGGAACACCCTGGCG−3’)、および31232I423L/T424V/Y425TA(5’−GGGGGTCACCAGGATCTCGGCAATGGGAACCTC−3’)を使用した。それ以外は、比較例1と同様にして、423番目のアミノ酸であるイソロイシン(I)がロイシン(L)に置換され、424番目のアミノ酸であるトレオニン(T)がバリン(V)に置換され、425番目のアミノ酸であるチロシン(Y)がトレオニン(T)に置換された(I423L/T424V/Y425T)Ta.emersonii由来FADGDHを含むFADGDH精製標品を得た。
[実施例4]
本実施例では、図1に示されるTa.emersonii由来FADGDH遺伝子のコーディング領域の代わりに、実施例1と同様にして、Ta.emersonii由来FADGDHの434番目のアミノ酸(図1において枠で囲んだG)をコードする1300〜1302番目の塩基(図1において枠で囲んだGGG)のうち、1301番目と1302番目の塩基であるGがともにAに置換されたFADGDH遺伝子のコーディング領域を持つFADGDH発現型プラスミドの作製を行った。変異導入用プライマーには、31232G434ES(5’−GCGGCCGAATACTGGGGTCTCCTTCCCTTTGCT−3’)、および31232G434EA(5’−CCAGTATTCGGCCGCCAGGGTGTTCCCGGTGGG−3’)を使用した。それ以外は、比較例1と同様にして、434番目のアミノ酸であるグリシン(G)がグルタミン酸(E)に置換された(G434E)Ta.emersonii由来FADGDHを含むFADGDH精製標品を得た。
[参考例]
本参考例では、上記実施例と同様にして、表1に示す比較例1および実施例1〜4以外の変異を有するTa.emersonii由来の変異型FADGDHを含むFADGDH精製標品を得た。
[評価試験]
実施例1〜実施例4および比較例1(野生型)で得られたFADGDH精製標品について、FADGDHの酵素活性に関する以下の各種特性(Km値、酵素活性、基質特異性、温度安定性)に関する評価試験を行った。なお、本評価試験における酵素活性測定原理、酵素活性の定義、活性測定方法は次のとおりである。
(酵素活性測定原理)
D−グルコース + 1−methoxyPMS + FADGDH
→ D−グルコノ−1,5−ラクトン + 1−methoxyPMS(還元型)
+ FADGDH(酸化型)
1−methoxyPMS(還元型) + DCPIP
→ 1−methoxyPMS + DCPIP(還元型)
還元型1−メトキシフェナジンメトサルフェート(1−methoxyPMS)による2,6−ジクロロフェノリンドフェノール(DCPIP)の還元により生じた還元型DCPIP量は、分光光度計を用いて600nmの吸光度を測定することにより計測した。また、基質特異性の検討においては、D−グルコースを他の糖類に変更し、それぞれの糖類(基質)に対する酵素活性を測定した。
(酵素活性の定義)
酵素の活性(FADGDH活性)は、37℃、pH7.0の条件下において還元型DCPIPを1分あたりに1マイクロモル形成させるFADGDH量を1ユニットとして定義する。
具体的に、FADGDH活性は、後述の吸光度変化(ΔODTEST、ΔODBLANK)から以下の式により求められる。

FADGDH活性(U/mL)
=[(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.1]/(16.3×0.1×希釈率)

なお、式中の各定数は、
3.1 : FADGDH溶液混和後の反応液の容量(mL)
16.3 : DCPIPのミリモル分子吸光係数(mM−1・cm−1
0.1 : FADGDH溶液の容量(mL)
である。
(活性測定方法)
(1)キュベット内で以下の組成で反応液を混合する。
0.1M リン酸カリウムバッファー(pH7.0) 1.5mL
1M グルコース溶液 0.9mL
1.75mM 2,6-Dichlorophenolindophenol(DCPIP) 0.12mL
20mM 1-Methoxy-5-methylphenazium methylsulfate(1-mPMS) 0.021mL
10% TritonX−100 0.06mL
O 0.399mL
(2) 37℃で10分間プレインキュベートする。
(3) FADGDH溶液を0.1mL加えて転倒混和し、37℃で反応させる。この間、吸光光度計を用いて600nmでの吸光度を記録し、1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を算出する。
(4) 対照として、酵素液(上述の反応液にFADGDH溶液を加えた液)の代わりに等量の酵素希釈用液(50mMのリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に0.01%のTritonX−100を添加した液)について、(3)と同様に吸光度変化を記録し、1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を算出する。
<酵素活性、Km>
ここでは、酵素活性(反応速度)について検討した。具体的には、上記活性測定方法と同様にして、グルコース溶液の濃度を0〜2Mの範囲で変化させて、FADGDH精製標品の酵素活性を測定した。
さらに、上記測定結果に基づいて、FADGDH精製標品の各々について、ミカエリスメンテンの式に基づいたイーディー−ホフステープロット(Eadie−Hofstee plot)を作成した。イーディー−ホフステープロットにおいて、直線の傾きが−Kmとなるため、グラフからKmを求めることができる。なお、Kmはラインウィーバーバークプロット(Lineweaver−Burke plot)により求めることもできる。ラインウィーバーバークプロットにおいて、直線のX切片が−1/Kmとなるため、グラフからKmを求めることができる。本評価試験では上記2つのプロットを行なった結果、イーディー−ホフステープロットの方が比較的精度の良いKm値が得られたため、イーディー−ホフステープロットにより求めたKm値を記載した。
イーディー−ホフステープロットから求めた実施例1〜4、比較例1および参考例のFADGDH精製標品のKm値を表1に示す。また、グルコース溶液の濃度(基質濃度)が300mMであるときの酵素活性を併せて表1に示す。なお、表1において、活性(U/mg)は酵素1mgあたりの活性であり、活性(U/μmol−FAD)は、酵素に結合しているFAD(ホロ化酵素)1μmolあたりの活性である。
<温度安定性>
ここでは、酵素活性の温度安定性の評価を行った。まず、実施例で得られたFADGDH精製標品について、上記活性測定方法により酵素活性を測定した。それらの測定値に基づいて、終濃度50mMクエン酸バッファーを含有し、pH5.0であり、1×10−3重量%TritonX−100を含有し、酵素活性が10U/mLとなるように、酵素溶液(FADGDH溶液)を調製した。
このFADGDH溶液をマイクロチューブに分注し、PCRマシーンを用いて5℃〜70℃の範囲内の所定の温度で15分間加熱した。加熱前後の酵素活性を測定し、加熱前の酵素活性に対する加熱後の酵素活性の比率(残活性率)を求めた。実施例1〜4、比較例1および参考例のFADGDH精製標品において変性の中点の温度の(Tm)を算出した結果を表1に併せて示す。
表1のKmの測定結果から、実施例1〜4の変異型タンパク質(変異型FADGDH)のKm値は、比較例1の野生型FADGDHよりも著しく低下していることが分かる。なお、酵素のKm値が小さいほど、酵素の基質親和性が高いことを意味する。
さらに、グルコース溶液の濃度(基質濃度)が30mMであるときの相対活性(FAD1μmolあたりの酵素活性について、野生型FADGDHを100%としたときの比率)を図3に示す。
図3に示す結果から、実施例1〜4の変異型FADGDHの相対活性は、実際に測定される血中のグルコース濃度に近い30mMの基質濃度において、比較例1の野生型FADGDHよりも優位に上昇していることが分かる。さらに、Tmの測定結果から、実施例1〜4の変異型FADGDHは、比較例1の野生型FADGDHと同程度の耐熱性を維持していることが分かる。
次に、実施例2および実施例3は、上記のとおり複数の位置に同時に変異を導入したものであるため、個々の位置について上記と同様の評価試験を行った。すなわち、表2に示される個々のアミノ酸変異を導入した変異型FADGDHを上記実施例と同様にして生産し、その各々の変異型FADGDHについてKm、Tm等の測定を行った。測定結果を表2に示す。
表2に示される結果から、実施例2で導入した複数の変異のうち、「S356SY」変異356番目のセリン(S)残基と357番目のロイシン(L)残基との間にチロシン(Y)残基を挿入する変異がKm値の低下(基質親和性の向上)に最も寄与することが分かる。また、この場合でも比較例1の野生型と同程度の高い耐熱性を維持していることが分かる。したがって、356番目のセリン(S)残基と357番目のロイシン(L)残基との間にチロシン(Y)残基を挿入する変異を導入することで、耐熱性が高く、かつKm値が低い変異型FADGDHを得ることができると考えられる。
また、表2に示される結果から、実施例3で導入した複数の変異のうち、「Y425T」変異(425番目のチロシン(Y)残基をトレオニン(T)に置換する変異)がKm値の低下(基質親和性の向上)に最も寄与することが分かる。また、この場合でも比較例1の野生型と同程度の高い耐熱性を維持していることが分かる。また、「I423L」変異(423番目のイソロイシン(I)残基をロイシン(L)残基に置換する変異)においては、Km値が改善しただけでなく、酵素1mgあたりの活性とFAD1μmolあたりの活性が大幅に上昇した。したがって、423番目のロイシン(L)残基、または425番目のチロシン(Y)残基に変異を導入することで、耐熱性が高く、かつKm値が低い変異型FADGDHを得ることができると考えられる。
次に、セリン(S)残基をアルギニン(R)残基に置換した変異においてKm値が低下した222番目のアミノ酸残基において、セリン(S)残基とアルギニン(R)残基以外のアミノ酸残基に置換した変異体の中からKm値や活性などがより優れている変異体の探索を行なうために、222番目のセリン(S)残基をランダムに他のアミノ酸残基に置換する部位特異的飽和変異導入を行なった。この方法は、エラープローンPCRによるタンパク質全体へのランダムな変異導入と比較して、タンパク質の機能に関わる重要な特定のアミノ酸残基へランダムに変異を導入できるという利点がある。
具体的には、実施例1と同様の方法を用いており、Ta.emersonii由来FADGDH遺伝子発現型プラスミド(pET−21b(+)_31232)を鋳型にして、飽和変異導入用プライマーを用いてPCRを行なうことで、222番目のセリン(S)残基を他のアミノ酸残基にランダムに変異が導入されたプラスミドのライブラリー(pET−21b(+)_31232S222X)を作製した。飽和変異導入用プライマーには、31232S222XS(5’−TTCCCGNNKACGGTCGACGATGCAGCAGATGTT−3’)、および31232S222XA(5’−GACCGTMNNCGGGAAGAAGTTGTAGCCACGCAT−3’)を使用した。なお、当該プライマーの配列中にあるNはアデニン(A)塩基、グアニン(G)塩基、シトシン(C)塩基、チミン(T)塩基のいずれかで構成される。また、Kはグアニン(G)塩基またはチミン(T)塩基で構成され、Mはシトシン(C)塩基またはアデニン(A)塩基で構成される。
また、グリシン(G)残基をグルタミン酸(E)残基に置換した変異においてKm値が低下した434番目のアミノ酸残基において、グリシン(G)残基とグルタミン酸(E)残基以外のアミノ酸残基に置換した変異体の中からKm値や活性などがより優れている変異体の探索を行なうために、434番目のグリシン(G)残基をランダムに他のアミノ酸残基に置換する部位特異的飽和変異導入を行なった。
具体的には、上記と同様の方法で434番目のグリシン(G)残基を他のアミノ酸残基にランダムに変異が導入されたプラスミドのライブラリー(pET−21b(+)_31232G434X)を作製した。飽和変異導入用プライマーには、31232G434XS(5’−GCGGCCNNKTACTGGGGTCTCCTTCCCTTTGCT−3’)、および31232G434XA(5’−CCAGTAMNNGGCCGCCAGGGTGTTCCCGGTGGG−3’)を使用した。
当該方法で作製したプラスミドのライブラリー(pET−21b(+)_31232S222XまたはpET−21b(+)_31232G434X)を大腸菌JM109(DE3)(Promega)に導入し、LB寒天培地(100μg/mLアンピシリン含有)で一晩培養した。形成された無数のコロニーの中から、無作為にコロニーを選択し、96ウェルプレートの各ウェルに100μLずつ分注したLB液体培地(100μg/mLアンピシリン含有)に植菌し、振とう撹拌しながら一晩培養した。また、96ウェルプレートの各ウェルに植菌した同コロニーは、LB寒天培地(100μg/mLアンピシリン含有)に再度植菌し、この大腸菌(大腸菌クローン)からプラスミドを単離精製するためのマスタープレートとした。96ウェルプレートによる培養後、96ウェルプレート中の培養液を遠心分離(2500g、10分間、室温)により上清画分と沈殿画分(大腸菌)に分け、上清画分を取り除いた。96ウェルプレートの各ウェル中の沈殿画分を、リコンビナントリゾチーム(rLysozyme、Merck Millipre)を終濃度1KU/mLで添加したBugBuster Protein Extraction Reagent(Merck Millipre)50μLに懸濁し、25℃で20分間振とう撹拌を行なうことで大腸菌を溶菌した。振とう後、遠心分離(2500g、10分間、室温)により上清画分(粗抽出液)を回収し、粗抽出液のグルコース脱水素酵素活性を50mMグルコース存在下で測定した。活性を測定した粗抽出液のうち、上記と同条件で調製したTa.emersonii由来の野生型FADGDHが含まれる粗抽出液の150%程度以上の活性が得られたものにおいて、マスタープレートに形成された該当する大腸菌クローンのコロニーをLB液体培地(100μg/mLアンピシリン含有)に植菌し、振とう撹拌による培養を一晩行なった。培養後、菌体からPlasmid DNA Extraction Mini Kit(FAVORGEN)を用いてプラスミドを精製した。得られたプラスミドのFADGDH遺伝子に対してDNAシークエンス解析を行ない、222番目または434番目に変異が導入されたアミノ酸残基をコードする塩基配列を確認した。
上記により作製したTa.emersoniiFADGDHの変異体が含まれる粗抽出液のグルコース脱水素酵素活性の測定結果を、野生型(S222、G434)の活性を100%としたときの相対活性として図4および図5にそれぞれ示す。なお、図4中のS222Xは、実施した大腸菌クローンの各粗抽出液の活性の平均値(310クローン)を示す。図5中のG434Xは、実施した大腸菌クローンの各粗抽出液の活性の平均値(320クローン)を示す。
その結果、222番目のアミノ酸残基をアルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)またはアラニン(A)の残基で置換した場合に、変異型FADGDHの酵素活性が野生型FADGDHより高くなることが示唆された。
また、434番目のアミノ酸残基をセリン(S)、ヒスチジン(H)、アスパラギン酸(D)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、バリン(V)、システイン(C)、メチオニン(M)またはグルタミン酸(E)の残基で置換した場合に、変異型FADGDHの酵素活性が野生型FADGDHより高くなることが示唆された。
次に、上記により得られた222番目および434番目に変異が導入されたFADGDHを比較例1に記載した方法で大腸菌発現および精製を行ない、Km、Tm等の測定を行ない、その結果を表3および表4にそれぞれ示す。
表3に示されるKm値の結果は、10種類の変異体すべてでKm値が低下したことを示している。なお、表3に示されるTmの結果から、実施例1の置換後のアミノ酸残基を変更した場合でも、比較例1の野生型と同程度の高い耐熱性を維持していることが分かる。
表4に示されるKm値の結果は、8種類の変異体のうち7種類でKm値が低下したことを示している。また、G434S、G434H、G434A、G434Cなどにおいては、300mMグルコース存在下における活性が大きく上昇した。なお、表4に示されるTmの結果から、実施例2の置換後のアミノ酸残基を変更した場合でも、比較例1の野生型と同程度の高い耐熱性を維持していることが分かる。
<基質特異性>
ここでは、比較例1の野生型FADGDH、実施例1〜4の変異型FADGDH、および、上記表2〜表4に示されるアミノ酸変異が導入された変異型FADGDHについて、基質特異性(グルコースおよびグルコース以外の糖類を基質とするかどうか)を確認した。
具体的には、まず、グルコース濃度が40mMの場合に十分な酵素活性が得られる酵素濃度に、それぞれの酵素溶液(FADGDH溶液)を調製した。これらのFADGDH溶液について、上記活性測定方法を上記反応液中の糖類の濃度が40mMとなるように調製し、酵素活性を測定した。測定は、表5に示す4種類の糖類について行った。なお、酵素が含まれない場合を対照とし、それぞれの糖に対して対照をとった。グルコースについて酵素活性の測定値を100(%)としたときの他の各糖類の相対活性を算出し、表5〜表8にまとめた。なお、DCPIP吸光度の変化量が対照と比較して有意差がないものに関しては活性がないと判断し、「N.D.」(Not detected)と表記した。また、各表ごとに野生型の評価実験を行なったため、比較例1の結果は各表の間で必ずしも一致していない。
表5〜表9に示される結果から、一部でD−キシロースに対する反応性が高いものがあるものの、それ以外の変異型FADGDHは、比較例1の野生型FADGDHと同様に、グルコースに対する基質特異性が最も高く、ガラクトースやマンノースと反応しないことが分かる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (17)

  1. フラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有するTalaromyces emersonii由来野生型タンパク質に変異を導入してなる変異型タンパク質であって、
    前記Talaromyces emersonii由来野生型タンパク質のアミノ酸配列と、Aspergillus bruneo−uniseriatus、および、Aspergillus carneus、Aspergillus malignusの各々に由来するフラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素活性を有する3種の野生型タンパク質のアミノ酸配列とを対比したときに、前記3種の野生型タンパク質の全てに共通するアミノ酸残基に対して相違する前記Talaromyces emersonii由来野生型タンパク質のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、他のアミノ酸残基で置換されているか、または、隣の位置に少なくとも1つのアミノ酸残基が挿入されていることを特徴とする、変異型タンパク質。
  2. 前記Talaromyces emersonii由来野生型タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列、または、配列番号1に記載のアミノ酸配列からシグナルペプチドの少なくとも一部を除いたアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の変異型タンパク質。
  3. 前記配列番号1に記載のアミノ酸配列において、222番目、423番目、425番目および434番目のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、他のアミノ酸残基で置換されているか、または、356番目と357番目の間に1つのアミノ酸残基が挿入されている、請求項2に記載の変異型タンパク質。
  4. 前記配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくとも222番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されており、
    前記他のアミノ酸残基が、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)またはアラニン(A)の残基である、請求項3に記載の変異型タンパク質。
  5. 前記他のアミノ酸残基がアルギニン(R)残基である、請求項4に記載の変異型タンパク質。
  6. 前記配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくとも434番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されており、
    前記他のアミノ酸残基が、セリン(S)、ヒスチジン(H)、アスパラギン酸(D)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、バリン(V)、システイン(C)、メチオニン(M)またはグルタミン酸(E)の残基である、請求項3に記載の変異型タンパク質。
  7. 前記他のアミノ酸残基がセリン(S)残基である、請求項6に記載の変異型タンパク質。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の変異型タンパク質をコードする遺伝子。
  9. (A) 塩基配列の664〜666番目、1267〜1269番目、1273〜1275番目、および、1300〜1302番目の塩基の少なくともいずれかが他の塩基に置換されているか、または、1066〜1077番目の塩基配列のいずれかの位置に塩基が挿入された、配列番号2に記載の塩基配列からなるDNA、
    (B) 上記(A)のDNAの塩基配列からシグナルペプチドをコードする塩基配列を除いた塩基配列からなるDNA、および、
    (C) 上記(A)または(B)のDNAの塩基配列と、イントロンとを含むDNA
    のいずれかのDNAからなる遺伝子。
  10. 請求項8または9に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
  11. 請求項8または9に記載の遺伝子を含む形質転換体。
  12. 請求項8または9に記載の遺伝子を用いたフラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素の製造方法。
  13. 請求項11に記載の形質転換体を用いたフラビンアデニンジヌクレオチド依存型グルコース脱水素酵素の製造方法。
  14. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の変異型タンパク質を含むグルコース濃度測定試薬。
  15. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の変異型タンパク質を用いたグルコースセンサ。
  16. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の変異型タンパク質を用いたグルコース濃度測定方法。
  17. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の変異型タンパク質を用いたバイオ燃料電池。
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