JP2016068942A - 乗用装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用者の歩行動作により走行可能で膝関節等の身体への負担が小さくまた着用する衣服等による制約を受けにくく、転向走行時にも安全に所定の速度で走行することが可能な乗用装置を提供する。
【解決手段】走行ベルト60は、前側回転ローラー30および後側回転ローラー40によって無限軌道上を回転可能に支持されており、使用者の歩行動作により周回駆動される。後輪20は走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法の内部に配置されている。走行ベルト60が周回する駆動力を反転変速して内部応力によって後輪20に伝達する駆動力伝達機構70は、走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法の内部で、走行ベルト60から後輪20まで内部応力により駆動力を伝達する。
【選択図】図1

Description

本発明は、使用者の歩行動作により前進駆動される乗用装置に関する。
通常の自転車は、サドルに座位で乗車した使用者が回転ペダルを漕ぐ力によって走行する。自転車は省力で高速に走行できるが、回転ペダルを漕ぐためには膝を大きく上げて回転動作させる必要があるため、膝関節に対する負担が大きく、また着用する衣服や靴によっては乗用しにくいといった欠点がある。一方、片足を車体に乗せた使用者が反対の足で走行面を直接蹴って駆動するキックボードが提供されている。しかしながら、キックボードは足で蹴る力で前進するため、特に平坦路では蹴る動作以上の速度を出すことができない。
これに対し下記の特許文献1から7には、トレッドミル形走行車やウォーキング式スクーターなどと種々の名称で呼称される、使用者の歩行動作により前進駆動される乗用装置が記載されている。
これらの乗用装置は、車体フレームの前方に設けられた一または複数の前輪と、車体フレームの後方の両側に設けられた2個の後輪と、無端状に周回する駆動ベルトおよびこの駆動ベルトを支持する前後の回転ローラーとを備えている。そして、駆動ベルトの上に立位で乗車した使用者が歩行することで駆動ベルトの上面は後方に送られ、駆動ベルトは周回動作する。この駆動ベルトの回転力が前輪または後輪に伝達されて乗用装置は前進力を得る。
また、これらの乗用装置は、車体フレームより上方に突出するハンドルを備え、このハンドルの軸回転により前輪が操舵されて左右に進行方向を転向することができる。そして車体フレームの後方の両側に後輪がそれぞれ設けられている。具体的には、特許文献1および2に記載の乗用装置は車体フレームの前後の両側に2個ずつの前輪と後輪を備える四輪車であり、特許文献3から7に記載の乗用装置は車体フレームの前方の中央に設けられた1個の前輪と後方の両側に設けられた2個の後輪を備える三輪車である。
実用新案登録第3089272号公報 特開2006−205929号公報 実用新案登録第3100834号公報 実用新案登録第3083900号公報 実開昭64−50185号公報 特開2004−34852号公報 実開平2−51993号公報
しかしながら、特許文献1から7に記載された従来の乗用装置は、直線走行時には2個の後輪により車体フレームの姿勢が安定するものの、ハンドルで操舵して左右に転向走行する際に車体フレームの姿勢が安定しないという問題がある。すなわち、乗用装置を所定の速度で走行させながら操舵して前輪を転向させる場合には、自転車で走行する場合と同様に、使用者は遠心力に抗して身体を内側に倒すことにより姿勢を安定させようとする。しかし、上記従来の乗用装置では転向方向の内側に位置する後輪により車体フレームが内側に傾斜することが妨げられるため、転向走行時に使用者は身体を十分に内側に倒すことができない。これにより、使用者は転向走行時に遠心力によって身体が外側に投げ出される恐怖感を感じるため、予め十分に減速してから転向走行せざるをえない。このため、従来の乗用装置では、他の一般歩行者と同程度の前進速度で走行することは困難であり、爽快感や実用性に乏しいため普及には至っていない。
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、使用者の歩行動作により走行可能で膝関節等の身体への負担が小さくまた着用する衣服等による制約を受けにくく、転向走行時にも安全に所定の速度で走行することが可能な乗用装置を提供するものである。
本発明によれば、前輪および後輪と、車体フレームと、前記車体フレームの前方および後方に配置されて前記車体フレームの左右方向に延びる回転軸をそれぞれ有する前側回転ローラーおよび後側回転ローラーと、前記前側回転ローラーおよび前記後側回転ローラーによって無限軌道上を回転可能に支持されて使用者の歩行動作により周回駆動される走行ベルトと、前記走行ベルトが周回する駆動力を反転変速して内部応力によって前記後輪に伝達する駆動力伝達機構と、を備え、前記後輪が前記走行ベルトの設置領域の左右幅寸法の内部に配置されているとともに、前記駆動力伝達機構が前記走行ベルトから前記後輪まで前記左右幅寸法の内部で前記内部応力により前記駆動力を伝達することを特徴とする乗用装置が提供される。
本発明の乗用装置は、使用者の歩行動作により周回駆動される走行ベルトによって後輪が駆動されるため、膝関節等の身体への負担が小さくまた着用する衣服等による制約を受けにくい。そして本発明においては走行ベルトの設置領域の左右幅寸法の内部に後輪が配置されているとともに、駆動力伝達機構が後輪に対して上記左右幅寸法の内部で駆動力を伝達するため、車体フレームを転向方向の内側に傾斜させることを駆動力伝達機構および後輪が妨げない。このため本発明によれば、転向走行時にも安全に所定の速度で走行することが可能である。
本発明の第一実施形態の乗用装置の一例を示す斜視図である。 乗用装置の後輪近傍の分解斜視図である。 乗用装置の前輪近傍および操舵状態を示す斜視図である。 乗用装置の前輪近傍の分解斜視図である。 車体フレームを横傾斜させた乗用装置を示す正面図である。 (a)は乗用装置の走行状態を示す側面図であり、(b)は乗用装置の制動状態を示す側面図である。 貨物収容装置を備える変形例の乗用装置の折畳状態を示す側面図である。 本発明の第二実施形態の乗用装置を示す上方斜視図である。 第二実施形態の乗用装置を示す下方斜視図である。 前後輪バランス機構を示す斜視図である。 前輪ブレーキ構造を示す斜視図である。 後輪ブレーキ構造を示す斜視図である。 本発明の第三実施形態の乗用装置の駆動系を示す下方斜視図である。 第三実施形態の乗用装置のバンク状態を示す立面模式図である。 第三実施形態の乗用装置のシフト機構を示す上方斜視図である。 シフト機構の平面図である。 切換手段の斜視図である。 高速走行用の第一段ギアに駆動力を伝達する状態を示す斜視図である。 低速走行用の第二段ギアに駆動力を伝達する状態を示す斜視図である。 第三実施形態の乗用装置の左右バランス機構を示す下方斜視図である。 第三実施形態の乗用装置の前輪および前輪支持部を示す斜視図である。 第三実施形態の乗用装置の前輪および前輪支持部を示す平面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図面において、対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、本明細書においては前後左右上下の方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対関係を説明するために便宜的に規定するものであり、本発明にかかる乗用装置の製造時や使用時の方向を必ずしも限定するものではない。すなわち、本明細書で説明する上下方向は必ずしも重力方向の上下を意味しない。また、本明細書でいう平面とは、平面を目標として物理的に形成された形状を意味するものであり、幾何学的に完全な平面であることを要しない。
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態の乗用装置100の一例を示す斜視図である。同図は乗用装置100を斜め後方より図示するものである。図2は乗用装置100の後輪20近傍の分解斜視図である。
図1に示すように、本明細書において乗用装置100における後方とは走行ベルト(駆動ベルト)60に対して使用者が搭乗する搭乗面が使用者の歩行動作によって送られる側をいい、前方とはその反対側をいう。乗用装置100における下方とは乗用装置100からみて路面などの走行面の側をいい、上方とはその反対側をいう。乗用装置100における右方とは乗用装置100に搭乗して前方を目視する使用者からみた右方をいい、左方とはその反対側をいう。左右方向を乗用装置100の幅方向と呼称する場合がある。
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
本実施形態の乗用装置100は、前輪10、後輪20、前側回転ローラー30、後側回転ローラー40、車体フレーム50、走行ベルト(駆動ベルト)60および駆動力伝達機構70を備えている。前側回転ローラー30および後側回転ローラー40は、車体フレーム50の前方および後方に配置されており、車体フレーム50の左右方向に延びる回転軸(前側回転軸32、後側回転軸42)をそれぞれ有している。走行ベルト60は、前側回転ローラー30および後側回転ローラー40によって無限軌道上を回転可能に支持されており、使用者の歩行動作により周回駆動される。駆動力伝達機構70は、走行ベルト60が周回する駆動力を反転変速して内部応力によって後輪20に伝達する機構である。本実施形態では、走行ベルト60の駆動力が、周回する走行ベルト60の内側に掛架された後側回転ローラー40に対して回転駆動力として負荷され、かかる回転駆動力が大径ギア72および後輪歯車74を介して後輪20に伝達される態様を例示する。ただし、第三実施形態(図13参照)に示すように、走行ベルト60の駆動力が、周回する走行ベルト60の外側に配置された駆動ローラー44に負荷されるように構成してもよい。
本実施形態の乗用装置100において、後輪20は走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法の内部に配置されている。そして、駆動力伝達機構70は、走行ベルト60から後輪20まで、走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法の内部で、内部応力により駆動力を伝達する。
次に、本実施形態の乗用装置100について詳細に説明する。
乗用装置100は、無端状の走行ベルト60に搭乗した使用者が歩行動作をすることで走行ベルト60を回転させ、かかる回転力を駆動力として前進する、いわゆるトレッドミル式の人力走行車である。
前輪10および後輪20の個数は特に限定されない。本実施形態では2個の前輪10が車体フレーム50の前部の左右両側に配置されているが、本発明はこれに限られず、前輪10は車体フレーム50の前部の中央に1個配置してもよく、または左右両側および中央に合計3個配置してもよい。
本実施形態の乗用装置100は、車体フレーム50の後方の中央に1個の後輪20を備えている。また乗用装置100は、後輪20の最大外径よりも小径に形成されていて走行ベルト60が生じる駆動力を後輪20に反転変速して伝達する後輪歯車(ギア)74を含んでいる。本実施形態の後輪20は、後輪歯車74を挟む左右一対の車輪半体22・23で構成されている。車輪半体22・23は、左右方向の外側に向かって外径が放物線テーパー状に縮径している。より具体的には、後輪20は左右方向の両側に向かって縮径して両端が切り落とされた砲弾状(ラグビーボール状)をなしている。本実施形態の乗用装置100においては、一対の車輪半体22・23が組み合わされて1個の後輪20が構成されている。
車輪半体22・23で構成される本実施形態の後輪20は、走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法の内部に配置されている。走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法とは、走行ベルト60が1本の場合は当該走行ベルト60の幅寸法であり、また本実施形態のように複数本の走行ベルト60が左右方向に並んで配置されている場合は当該複数本の走行ベルト60を包含するひとまとまりの領域の幅寸法である。後輪20が走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法の内部にあるとは、乗用装置100を前方または後方から見て、走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法の内側に後輪20の全体が収まっている状態をいう。すなわち車輪半体22・23は、後方視で右側の走行ベルト60の右端と左側の走行ベルト60の左端との間に設置されている。なお、本実施形態に代えて、後輪20として2個以上の円環状の車輪を配置してもよい。この場合、当該2個以上の車輪の全てが走行ベルト60の設置領域の幅内に配置されているとよい。車体フレーム50は、左右方向に並んで配置された2本の走行ベルト60を取り囲むように、平面視で略矩形状に形成されている。したがって、後輪20(車輪半体22・23)は車体フレーム50の幅内に配置されている。ただし、本実施形態に代えて、車体フレーム50を細幅に形成して左右一対の走行ベルト60の間に配置してもよい。
車輪半体22・23は、後輪歯車74を挟む両側に配置されて後輪歯車74と同軸で回転する。そして駆動力伝達機構70は後輪20に対して、後輪20の幅内で駆動力を伝達する。これにより、走行ベルト60から後輪歯車74に加えられる回転力が車輪半体22・23にバランス良く伝達されるため、乗用装置100の直進走行性が良好である。後輪歯車74は後輪20(車輪半体22・23)よりも小径かつ車輪半体22・23に挟まれているため、乗用装置100の走行中および図5に示すように乗用装置100を横傾斜させたときに、車輪半体22または23の一方が走行面S1に接地し、後輪歯車74は走行面S1に干渉することがない。
ただし、本実施形態のように後輪歯車74を挟む車輪半体22・23で後輪20を構成する態様に代えて、後輪20を一個の車輪で構成し、かかる後輪20を車体フレーム50の外側後方に配置してもよい。この場合、大径ギア72および後輪歯車74を、走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法の内部であってかつ車体フレーム50の幅方向の外側に配置して、走行ベルト60による駆動力を後輪20に伝達してもよい。また、本実施形態よりも後輪20を細幅に形成し、かかる後輪20を一対の走行ベルト60同士の間に配置してもよい。すなわち、後輪20の後輪軸24を、走行ベルト60の後側回転ローラー40と同軸または後側回転ローラー40よりも前方(前側回転ローラー30と後側回転ローラー40との間)に配置してもよい。
走行ベルト60は、車体フレーム50の長尺方向に沿って周回状に取り付けられている。具体的には、左右方向に延在して車体フレーム50に回転可能に軸支された前側回転ローラー30および後側回転ローラー40に亘って走行ベルト60は巻架されている。前側回転ローラー30の中心軸にあたる前側回転軸32は、前側回転ローラー30の両端より突出して車体フレーム50に軸支されている。同様に、後側回転ローラー40の中心軸にあたる後側回転軸42は、後側回転ローラー40の両端より突出して車体フレーム50に軸支されている。これにより走行ベルト60は無限軌道を描く。走行ベルト60の無限軌道の形状は特に限定されない。本実施形態の乗用装置100における無限軌道は、使用者が歩行する上面と、その反対側の下面がともに平坦であるが、これに代えて、第三実施形態(図13参照)のように凹部60bを有する無限軌道としてもよい。車体フレーム50には、左右方向に並んで複数本(本実施形態では2本)の走行ベルト60が設けられている。これにより、使用者の右足と左足を異なる走行ベルト60に載置して、歩行動作により2本の走行ベルト60を順次後方に送ることができる。なお、使用者は走行ベルト60の上で走行してもよい。本明細書では歩行と走行とを区別しない。また、本実施形態に代えて、使用者の右足と左足で共通の1本の走行ベルト60を駆動するように構成してもよい。
無端の環状に形成された走行ベルト60の内側面は前側回転ローラー30および後側回転ローラー40の周面に接している。走行ベルト60の内側面は、少なくとも後側回転ローラー40の周面に対して摩擦的に接触している。周回する走行ベルト60の内周面にラックギア(図13参照)を設け、このラックギアが後側回転ローラー40の外周面と咬合するように構成してもよい。これにより、使用者の歩行動作により走行ベルト60に生じる駆動力を効率的に後側回転ローラー40の回転駆動力に換えることができる。使用者の歩行動作で走行ベルト60の上面が後方に送られると、後側回転ローラー40は後側回転軸42まわりに後方(右側面視における反時計回り)に回転する。後側回転ローラー40には大径ギア72が同軸に設けられている。
大径ギア72および後輪歯車(小径ギア)74は互いに咬合しており、走行ベルト60から伝達される後側回転ローラー40の回転駆動力を後輪20に反転して伝達する駆動力伝達機構70を構成する。駆動力伝達機構70は、走行ベルト60の駆動力を、車輪半体22・23に挟まれた後輪歯車74に伝達することにより後輪20を駆動する。すなわち、駆動力伝達機構70は後輪20に対して、後輪20の幅内で駆動力を伝達する。
大径ギア72に対する後輪歯車74のギア比は1よりも大きく、後側回転ローラー40および大径ギア72が1回転する間に後輪歯車74は1回転よりも多く回転する。これにより、走行ベルト60の駆動力により高速で後輪20を回転させることができる。
図1および図2では大径ギア72が走行ベルト60よりも上方に突出して露出している状態を図示しているが、これに代えて、大径ギア72を覆う被覆カバー73(図8参照)を車体フレーム50の上面側に設けてもよい。これにより、回転する大径ギア72に使用者の足や衣服が過って干渉することがない。
走行ベルト60から、後側回転ローラー40、大径ギア72、後輪歯車74および中空シャフト26を通じて後輪20に至る駆動力の伝達経路のいずれかの位置に、ワンウェイクラッチ76を設けるとよい。これにより、使用者が走行ベルト60の上で歩行することを停止しても、後輪20の回転を継続させて乗用装置100を惰性走行させることができる。
具体的には、図2に示すように、後輪歯車74と中空シャフト26との間にワンウェイクラッチ76が同軸で設けられている。ワンウェイクラッチ76は、後輪歯車74が中空シャフト26に対して相対的に前方(右側面視における時計回り)に回転する場合にこの回転を中空シャフト26や後輪20に伝達し、逆に後輪歯車74が中空シャフト26に対して相対的に後方(右側面視における反時計回り)に回転する場合に中空シャフト26の回転を後輪歯車74に伝達せずに遮断する。ワンウェイクラッチ76の具体的な構造は特に限定されない。ワンウェイクラッチ76を設けることで、使用者が走行ベルト60の上で無限軌道上を歩行して走行ベルト60を後方に送る場合は、ワンウェイクラッチ76が掛止されて大径ギア72および後輪歯車74が回転し、後輪20は反転して前方に回転する。そして、走行している乗用装置100の上で使用者が歩行を停止した場合はワンウェイクラッチ76が解除され、後輪20は惰性で回転を継続することができる。これにより、乗用装置100が十分に加速された状態や下り坂での惰性走行時に、使用者が歩行動作を止めることができる。また、使用者が過って走行ベルト60を前方に送った場合も、ワンウェイクラッチ76が解除されて後側回転ローラー40の回転が大径ギア72に伝達されないため、後輪20が逆回転して乗用装置100が後退することはない。走行ベルト60の駆動力は、乗用装置100が前進する方向にのみ後輪20に伝達される。本実施形態のワンウェイクラッチ76は、駆動力伝達機構70(後輪歯車74または中空シャフト26)と掛合して走行ベルト60の周回方向を一方向に規制する周回方向規制部として機能する。
ワンウェイクラッチ76は、本実施形態のように後輪歯車74と中空シャフト26との間に設けてもよく、または大径ギア72と後側回転ローラー40との間に設けてもよい。惰性走行時には、駆動力の伝達経路においてワンウェイクラッチ76よりも下流側(後輪20を含む側)に位置する部品が回転を継続する。このため、かかる伝達経路においてワンウェイクラッチ76を極力下流側に設置することで、惰性走行時に回転する部品を減らし乗用装置100の動摩擦を低減することができる。本実施形態では大径ギア72および後輪歯車74よりも下流側にあたる、後輪歯車74と中空シャフト26との間にワンウェイクラッチ76を設置している。
駆動力伝達機構70として本実施形態では互いに咬合する複数の固定ギア(大径ギア72、後輪歯車74)を例示したが、本発明はこれに限られない。駆動力伝達機構70は、交差するベルトやチェーンを用いたものでもよい。具体的には、走行ベルト60で回転駆動される後側回転ローラー40と後輪20の中空シャフト26との間にベルトまたはチェーンを掛架してもよい。
駆動力伝達機構70は、走行ベルト60の上面を歩行する使用者が走行ベルト60を後方に蹴る力を、内部応力によって後輪20まで伝達する。本実施形態の乗用装置100では、走行ベルト60は後側回転ローラー40に捩り応力を与え、当該捩り応力は、後側回転ローラー40と同軸に固定設置された大径ギア72およびこの大径ギア72と咬合する後輪歯車74に対して回転力として伝達される。具体的には、後側回転ローラー40のうち、走行ベルト60と係合している長さ領域に捩り応力が発生する。そして、後側回転ローラー40のうち車体フレーム50に軸支されている両端部の近傍には、この捩り応力は実質的に発生しない。更にこの回転力は、ワンウェイクラッチ76を介して中空シャフト26に捩り応力として伝達され、そして中空シャフト26に固定された車輪半体22・23に対して回転力として伝達される。駆動力伝達機構70のうち、走行ベルト60の駆動力を後輪20に伝達するまでに内部応力が発生する部位を、駆動力伝達部と呼称する。
駆動力伝達機構70の駆動力伝達部は、走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法の内部に総て収まっている。このため、図5に示すように車体フレーム50を横傾斜(バンク)させた際に、駆動力伝達部が走行面S1に干渉することが抑制されている。言い換えると、後輪20を走行面S1に接地させて乗用装置100を左右方向に最大に横傾斜させたときに駆動力伝達部が走行面S1と非接触で上方に位置するように、駆動力伝達機構70は車体フレーム50に取り付けられている。
車体フレーム50の内部には、走行ベルト60に搭乗した使用者の自重で走行ベルト60が下方に沈み込むことを防止するため、前側回転ローラー30と後側回転ローラー40との間に他の回転ローラーまたは摺動板(図示せず)が設けられていてもよい。
車体フレーム50は、前後方向に長尺の矩形枠状をなしている。車体フレーム50の後部には、後輪20の両端を軸支する一対の後方支持部51が設けられている。一対の後方支持部51の対向間隔(左右間隔)は、車体フレーム50の全幅寸法よりも小さい。これにより、車体フレーム50の幅内に配置される後輪20を、実質的に左右方向のがたつきなく後方支持部51で回転自在に軸支することができる。
後輪20(車輪半体22・23)の最大直径は、前輪10の直径よりも小さい。後方支持部51は車体フレーム50の後部より斜め下方に突出している。これにより、小径の後輪20を用いても、車体フレーム50を横傾斜させた際に車体フレーム50が走行面S1に干渉することがない(図5参照)。
後輪20の車軸(後輪軸24)は、走行ベルト60よりも後方外側に配置されている。また上記のように、後輪軸24を軸支する後方支持部51は車体フレーム50の後部より斜め下方に突出している。これにより、後輪20は走行ベルト60の無限軌道よりも後方かつ下方に位置するため、走行ベルト60の上を使用者が歩行する際に足が後輪20に干渉することがない。
乗用装置100は、後輪20の車軸(後輪軸24)の周囲に同軸に配置された中空シャフト26と、中空シャフト26および後輪軸24を互いに摺動可能に連結するベアリング構造28と、を備えている。中空シャフト26およびベアリング構造28のそれぞれ少なくとも一部は、車輪半体22・23に埋設されている。
具体的には、車輪半体22・23には、中空シャフト26を埋設するための凹部25が形成されている。凹部25は、中空シャフト26と略同径の円筒状をなしており、中空シャフト26が嵌合して接着固定される。これにより、中空シャフト26およびその内部に設けられたベアリング構造28が凹部25に埋設され、後輪20の回転機構を省スペースで配置することができる。凹部25には、後輪軸24を遊挿するための小径の円孔29が同軸上に連通して形成されている。円孔29を貫通した後輪軸24は、車体フレーム50の後部に形成された後方支持部51によって保持される。後輪軸24は後方支持部51に固定されていてもよく、または後方支持部51に対して回転可能に軸支されていてもよい。本実施形態によれば、ベアリング構造28によって中空シャフト26と後輪軸24とが互いに滑らかに回転するため、後輪歯車74から伝達された走行ベルト60の駆動力によって中空シャフト26および車輪半体22・23が効率的に回転する。また、ベアリング構造28を凹部25に収容することで、ベアリング構造28の潤滑液を車輪半体22・23の内部に封入することができる。
凹部25は円筒状をなしている。図2に示すように、車体フレーム50の中心側における車輪半体22・23の肉厚T1は、左右方向の外側における肉厚T2よりも大きい。車輪半体22・23の肉厚T1、T2とは、凹部25の残余部分の肉厚である。肉厚T1は、乗用装置100の直進走行時に走行面S1(図5参照)と接地する部分の肉厚である。車体フレーム50の中心側における肉厚T1を十分に大きく形成することで後輪20は耐摩耗性に優れる。
車輪半体22・23の左右方向の外形線の曲率半径R1は、車輪半体22・23の最大半径R2よりも大きい。曲率半径R1は、車輪半体22・23を後方視した際の放物線テーパー状の外形線(湾曲線)における平均の曲率半径であり、最大半径R2は、車輪半体22・23を側面視した際の最大径の円形の半径である。このように、車輪半体22・23の左右方向の外形線の曲率半径R1を最大半径R2よりも大きくすることで、後述するように車体フレーム50を横傾斜させた際に広い接地面積で後輪20が走行面S1に接することができ、後輪20を制動する場合の乗用装置100の制動性に優れる(図5参照)。
図3は乗用装置100の前輪10近傍および操舵状態を示す斜視図である。図4は乗用装置100の前輪10近傍の分解斜視図である。図5は車体フレーム50を横傾斜させた乗用装置100を示す正面図である。これらの図面を用いて乗用装置100を操舵および横傾斜(バンク)する方法を説明する。
上述したように、車体フレーム50の前方における左右両側に複数の前輪10が配置されている。ただし、本発明はこれに限られず、単一の前輪10を車体フレーム50の前方の中央に配置してもよい。この場合、後述するバンク機構84は不要である。
本実施形態の乗用装置100は、操舵部80、操舵機構82およびバンク機構84を更に備えている。操舵部80は、車体フレーム50の前部において略上方に突出して軸回転可能に設けられている杆体である。操舵部80は車体フレーム50からまっすぐ上方に立設されていてもよく、または車体フレーム50に対して所定の角度で傾斜して設けられていてもよい。操舵機構82は、操舵部80の軸回転に連動して前輪10の車軸(前輪軸12)を走行面S1と略平行な面内で傾ける機構(平面内リンク)である。そして、バンク機構84は、操舵部80を左右方向に横傾斜させることに連動して、略前後方向を法線とする起立面S2の面内で前輪の車軸(前輪軸12)を傾ける機構(起立面内リンク)である。
操舵機構82およびバンク機構84を設けることで、前輪10を左右に転向させて乗用装置100を操舵することができるとともに、前輪10を横倒しすることで車体フレーム50を全体に横傾斜(バンク)させることができる。これにより、乗用装置100の走行中には、操舵部80を左右に軸回転させることで2つの前輪10が互いに平行を維持しながら左方向あるいは右方向に回転し、使用者は走行方向を転向させることができる。また、乗用装置100が十分な速度で前進走行中に走行方向を転向させる際、使用者がバランスを維持するために車体フレーム50を操舵部80とともに左右に傾けると、2つの前輪10は互いに平行を維持しながら左右に傾く。これにより、前輪10が両輪とも走行面に接地を維持しながら乗用装置100を転向させることが可能である。また、走行面S1が左右に傾斜している状況で使用者が車体フレーム50を鉛直に維持しようとする場合(すなわち図5において操舵部80の延在方向を上方とした場合)でも、同様に2つの前輪10が互いに平行を維持しながら両輪とも接地を維持することができる。
乗用装置100は、複数の前輪10の車軸(前輪軸12)を回転可能にそれぞれ支持する一対の前輪支持部14を備えている。前輪10の中央にはハブ11が設けられ、前輪10とハブ11とはスポークで連結されている。本実施形態では、図4に示すように前輪支持部14の外側面に前輪軸12が突出形成され、この前輪軸12が前輪10のハブ11に保持されて車軸を構成する態様を例示する。
乗用装置100の自然状態および走行状態(図3参照)で、前輪軸12の軸方向は左右方向である。図3および図5では、前輪軸12の軸方向を一点鎖線で図示している。図3には、走行面S1(一部)と、この走行面S1に直交して起立する起立面S2を矩形の一点鎖線でそれぞれ示す。起立面S2の法線方向は乗用装置100の前後方向を向いている。
操舵部80の上部には二叉に分岐するU字部87が設けられ、U字部87の上端にはハンドル86が左右方向の両側に延在して形成されている(図1参照)。操舵部80の下端部は保持筒81に収容されている。使用者は、ハンドル86を把持して走行面S1と略平行な面内でハンドル86を回転させることで、操舵部80は保持筒81の内部で軸回転する。保持筒81は、ヒンジ53を介して車体フレーム50の前部に固定されている。ヒンジ53の回動軸は左右方向である。これにより、後述するように操舵部80を後方に傾斜させることが可能である。
操舵機構82およびバンク機構84について更に詳細に説明する。
操舵機構82は、複数の前輪10を連結する第一リンク構造83を含む。第一リンク構造83は走行面S1と略平行に設けられており、操舵部80の軸回転により駆動される。バンク機構84は、複数の前輪10を連結する第二リンク構造85を含む。第二リンク構造85は、起立面S2(図3参照)と略平行に設けられており、操舵部80の横傾斜により駆動される。
乗用装置100は、一対の前輪支持部14に対して両端がそれぞれ回転自在に接続されて互いに平行に配置された第一から第三のロッド(第一ロッド16、第二ロッド17、第三ロッド18)を備えている。第二ロッド17および第三ロッド18は、互いに略同高さかつ前後方向に異なる位置に配置されている。第一ロッド16は、第二ロッド17および第三ロッド18と異なる高さに配置されている。
本実施形態では第一ロッド16が、第二ロッド17および第三ロッド18よりも上方に配置され、第二ロッド17と第三ロッド18とが同高さに配置されている態様を例示する。第二ロッド17と第三ロッド18とは互いに平行に配置されている。前輪支持部14は略正三角形の板状をなし、各頂点に軸受凹部15がそれぞれ形成されている。前輪支持部14は、一つの頂点が上方に配置されて二つの頂点が下方に配置された正立三角形状にて乗用装置100に設けられている。ただし、本実施形態に代えて、第一ロッド16を、第二ロッド17および第三ロッド18よりも下方に配置してもよい。この場合、前輪支持部14は倒立三角形状にて乗用装置100に設けられる。また、第二ロッド17および第三ロッド18の高さは僅かに相違してもよい。
本実施形態の第一ロッド16は平面視で楕円形状をなしており、左右両端にボールジョイント19が設けられている。ボールジョイント19は回転自在継手である。第二ロッド17および第三ロッド18は同形状の棒状をなし、左右両端および中央部にボールジョイント19がそれぞれ設けられている。第一ロッド16、第二ロッド17および第三ロッド18は互いに平行に配置されている。
三角板状の前輪支持部14の各頂点に形成された軸受凹部15には、第一ロッド16、第二ロッド17および第三ロッド18の端部のボールジョイント19を嵌合させて回転自在に保持する。これにより、左右一対の前輪支持部14と第一ロッド16と第二ロッド17または第三ロッド18と、で四節リンク機構(第二リンク構造85)が構成される。同様に、左右一対の前輪支持部14と第二ロッド17と第三ロッド18とで他の四節リンク機構(第一リンク構造83)が構成される。
第一リンク構造83は、第二ロッド17および第三ロッド18と、一対の前輪支持部14と、を含んで構成されている。操舵機構82は、操舵部80に接続されて当該操舵部80の軸回転により第二ロッド17および第三ロッド18を左右逆方向に駆動する操舵駆動部90を含んでいる。すなわち、本実施形態の操舵機構82は、操舵部80の軸回転に連動して複数の前輪10の前輪軸12の向きを転向させる機構であり、具体的には走行面S1と略平行な面内で複数の前輪軸12を左右に等しく傾けることができる複数前輪用操舵機構である。操舵機構82は、第一リンク構造83と、この第一リンク構造83を駆動する操舵駆動部90と、で構成されている。
第二リンク構造85は、第一ロッド16と、第二ロッド17または第三ロッド18と、一対の前輪支持部14と、を含んで構成されている。バンク機構84は、車体フレーム50に接続されて操舵部80の横傾斜により、第一ロッド16と、第二ロッド17または第三ロッド18と、を左右逆方向に駆動するバンク駆動部92を含んでいる。すなわち、本実施形態のバンク機構84は、操舵部80を左右方向に横傾斜させることに連動して前輪10の前輪軸12の向きを回動させる機構であり、具体的には略前後方向を法線とする起立面S2の面内で、複数の前輪10の前輪軸12を時計回りまたは反時計回りに等しく傾ける。より具体的には、たとえば操舵部80を左方に横傾斜させることで、前輪軸12は左下がりに傾斜する。バンク機構84は、第二リンク構造85と、この第二リンク構造85を駆動するバンク駆動部92と、で構成されている。
操舵駆動部90は、操舵部80の下端部に形成されて操舵部80と一体に軸回転する部位である。操舵駆動部90の下面には、操舵部80の軸心を挟んで前後方向の両側に複数の保持凹部91が形成されており、第二ロッド17および第三ロッド18のそれぞれ中間部に形成されたボールジョイント19を嵌合させて保持する。ボールジョイント19は保持凹部91に対して相対位置が固定されていて互いに回動可能である。操舵部80を軸回転させることで、保持凹部91によってボールジョイント19が保持された第二ロッド17と第三ロッド18とが、走行面S1と平行な面内で左右反対向きに駆動される。図3では、操舵部80を左方(平面視で反時計回り)に軸回転させることで、第三ロッド18が左方に駆動され、第二ロッド17が右方に駆動される状態を図示している。これにより、2個の前輪10の前輪軸12は、互いに平行を維持したまま、図3にて矢印で示すよう左方に転向される。これにより乗用装置100の進行方向は左に曲げられる。
バンク駆動部92は、保持筒81の外周面より前後方向に突出するようにして形成された回転軸である。バンク駆動部92は、楕円形状の第一ロッド16の短径を回転可能に連結しており、乗用装置100の進行方向に延在して第一ロッド16を回転可能に保持する。第一ロッド16の両端のボールジョイント19(可動中心)同士を互いに結ぶ直線と、バンク駆動部92と操舵部80とは互いに1点で交差する。バンク駆動部92と操舵部80とは連結されておらず、操舵部80を軸回転させてもバンク駆動部92は変位しない。
操舵部80を左方または右方(図5に示す左方)に横傾斜させることで、操舵部80の下端に設けられた操舵駆動部90を中心として、バンク駆動部92は当該横傾斜方向(図5に示す左方)に揺動する。これにより、第二リンク構造85が駆動されて前輪支持部14および前輪10は横倒しにバンク駆動される。このとき、第一ロッド16、第二ロッド17および第三ロッド18は互いに平行を維持している。
乗用装置100をバンク駆動すると、後輪20を構成する車輪半体22・23の一方が走行面S1に接地する。図5では、車輪半体22が接地している状態を図示する。上述のように、車輪半体22・23の外径は左右方向の外側に向かって放物線テーパー状に縮径している。このため、車体フレーム50のバンク角度が大きくなると、後輪20のうち走行面S1に接地する領域の周回長さが徐々に短くなる。このため、乗用装置100のバンク角度が大きくなると、後輪20の実質的ギア比(乗用装置100が前進する距離と、走行ベルト60が回転送りされる距離と、の比率)が自動的に低くなり、使用者の歩行速度が一定であるとしても乗用装置100は減速される。走行面S1が傾斜面である場合も同様であり、操舵部80を鉛直上方に向けて使用者が直立して歩行する場合、走行面S1の傾斜角が大きくなると後輪20のうち走行面S1に接地する領域の周回長さが徐々に短くなる。このため、走行面S1の傾斜角が大きくなると、後輪20の実質的ギア比が自動的に低くなり、使用者の歩行速度が一定であるとしても乗用装置100は減速される。このため、高速走行時にバンク駆動させた場合や、走行面S1が急斜面である場合に、乗用装置100が自然に減速するため使用者の安全が図られている。
本実施形態の乗用装置100においては、操舵機構82とバンク機構84を構成する一部の部材が共用されている。すなわち、一対の前輪支持部14ならびに第二ロッド17または第三ロッド18は、操舵機構82およびバンク機構84に共用されている。これにより、部品点数を削減して乗用装置100の操舵およびバンク駆動が可能である。
図6(a)は乗用装置100の走行状態を示す側面図である。図6(b)は乗用装置100の制動状態を示す側面図である。図7は貨物収容装置98を備える変形例の乗用装置100の折畳状態を示す側面図である。
前側回転ローラー30の最上部位置の高さは、後側回転ローラー40の最上部位置の高さよりも高い位置にある。これにより、走行ベルト60は後ろ向きに傾斜し、使用者は緩やかな上り坂を歩行する状態に近い動作で走行できる。このため、使用者の身体の前傾姿勢角度を抑制することができ、乗用装置100の全体の前後方向長さを短くすることができる。
乗用装置100は、カム52、ブレーキ機構54およびバネ体(弾性体)56を備えている。カム52は、操舵部80を後傾させることに連動して回動する。ブレーキ機構54は、この回動するカム52に係合して前進または後退駆動され、前輪10と後輪20との一方または両方を制動する。バネ体(弾性体)56は、駆動されたブレーキ機構54を弾性復元することにより、前輪10または後輪20の制動を解除する。
図3に示すように、カム52は保持筒81に連結されており、左右方向を軸方向とするヒンジ53を介して車体フレーム50に対して回動する。したがって、操舵部80を後傾させることでカム52を回動させることができる。
カム52には、ブレーキ機構54とそれぞれ係合する第一凹部57、凸部58および第二凹部59が順番に形成されている。図6(a)に示すように、操舵部80が起立している走行状態で、ブレーキ機構54はカム52の第一凹部57と係合する。図6(b)に示すように、操舵部80を第一の角度θ1で後傾させた制動状態で、ブレーキ機構54は、カム52の凸部58と係合して駆動されて前輪10と後輪20との一方または両方を制動する。本実施形態では、ブレーキ機構54は後方に駆動されて後輪20を制動する。これにより、使用者は走行中に操舵部80を手前に引く動作によって、乗用装置100の速度を減速または停止させることができる。
ブレーキ機構54は、カム52に駆動されて車体フレーム50に対して前進および/または後退移動可能である。ブレーキ機構54の周囲にバネ体56が装着されており、ブレーキ機構54の前端部はカム52に対して弾性的に常時付勢されている。
ブレーキ機構54の具体的な構造は特に限定されず、操舵部80を手前に引く(横倒しする)動作を、ロッドまたはワイヤなどの部材を単独または組み合わせて用いて後輪20に伝達する種々の構造を採用することができる。ブレーキ機構54は、後輪20と接触してこれを制動してもよく、または走行ベルト60から後輪20に伝達される駆動力の伝達経路のいずれかに対して接触して制動してもよい。本実施形態の乗用装置100のように、駆動力の伝達経路にワンウェイクラッチ76が設置される場合は、ブレーキ機構54は伝達経路のうちワンウェイクラッチ76よりも下流側の部位に接触して制動する。
本実施形態のブレーキ機構54は、ブレーキロッド54aと、その後端に設けられたパッド部55とで構成されている。より具体的には、ブレーキロッド54aの後部には二叉状の分岐部54bが形成されており、パッド部55は分岐部54bの後端にそれぞれ設けられている。ブレーキロッド54aは、前後方向に延在して配置されている。ブレーキ機構54(ブレーキロッド54a)は、カム52により後方に付勢されて後輪20を制動する。図2に示すように、二叉状の分岐部54bは大径ギア72を挟む両側に配置され、たとえば走行ベルト60と大径ギア72との間の空隙を通じて後側回転ローラー40よりも後方まで延びている。これにより、パッド部55は車輪半体22・23の前方の近傍に配置されている。使用者が操舵部80を手前に倒してカム52を駆動させ、ブレーキ機構54(ブレーキロッド54a)を後方に押し出すことにより、パッド部55が車輪半体22・23に直接接触して摩擦力を付与し、後輪20の回転速度を減少させる。これにより、乗用装置100を安全に停止させることができる。
さらに、カム52は、操舵部80を折畳状態まで後傾させることでブレーキ機構54の制動を解除するように形成されている。具体的には、図7に示すように、操舵部80を第一の角度θ1よりも大きな第二の角度θ2で後傾させた折畳状態で、ブレーキ機構54は、カム52の第二凹部59と係合し、バネ体(弾性体)56によりブレーキ機構54が弾性復元されて制動は解除される。これにより、操舵部80を折り畳んだ状態で後輪20および前輪10が回転可能であるため、折り畳んだ後の乗用装置100の搬送や保管が容易である。また、操舵部80のU字部87などにロック用フック(図示せず)を設け、車体フレーム50の後端にはロック用フックが掛止される掛止部(図示せず)を設けてもよい。そして、乗用装置100を折り畳んだ状態で、このロック用フックを掛止部に掛止してもよい。ロック用フックまたは掛止部の少なくとも一方はバネを備え、掛止状態と解除可能とに可換に遷移するように構成してもよい。
このように、操舵部80を更に手前に倒していくことで、車体フレーム50とほぼ重なるように操舵部80を折り畳み収容することができる。これにより、乗用装置100の収納や運搬の際の省スペース化が実現される。また、制動状態から更に操舵部80の後傾角度を増大させることによって操舵部80が折り畳まれる。したがって、乗用装置100を停止させる際には、まず操舵部80を後傾させて乗用装置100を減速および停止させ、その状態から更に操舵部80を後傾させることで、一連の動作によって乗用装置100を折畳状態に遷移させることができる。
折畳状態で、走行ベルト60の上面に突出する大径ギア72は操舵部80のU字部87に収容される。このため、大径ギア72が操舵部80と干渉することはない。
本実施形態では、ブレーキ機構54がブレーキロッド54aにより後輪20のみを制動することを例示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、後述する第二実施形態のように、ブレーキ機構54が、ブレーキロッド54aと連動して作動するワイヤ機構により後輪20を制動するように構成してもよい。また、ブレーキ機構54が、後輪20のみならず前輪10を制動するように構成してもよい。
操舵部80の前側に貨物収容装置98を備えている。図7に示す折畳状態で、ブレーキ機構54とカム52(図3参照)の第二凹部59との係合力によりカム52の回動が規制されて折畳状態が維持されている。このとき、前輪10は非制動状態にある。
使用者は、折畳状態で傾斜して立設された乗用装置100のハンドル86を牽引することで、貨物収容装置98に物品を収容して搬送するキャスター台として乗用装置100を使用することができる。前輪10がキャスター台の車輪となる。このとき、カム52の回動が規制されているため、貨物収容装置98の下方に位置する車体フレーム50が操舵部80から不測に開くことが防止されている。本変形例によれば、乗用装置100と貨物収容装置98とを一体にして運搬することができるため、収容される貨物が相当重量のものであっても容易に移動可能である。また、乗用装置100が省スペースに折り畳まれているため、公共交通機関等に持ち込んで乗車することも容易である。
なお、本実施形態については種々の変形を許容する。たとえば、後輪20の車軸(後輪軸24)を、後側回転ローラー40の後側回転軸42よりも走行方向の前方であって、走行ベルト60の無限軌道の内側に位置するように配置してもよい。これにより、使用者が歩行動作する走行ベルト60の進行方向長さを維持しつつも、乗用装置100全体の前後方向の全長を短くすることができる。
また、上記実施形態では後輪20を走行ベルト60の無限軌道よりも後方に配置することを例示したが、これに代えて、後輪20の後輪軸24を走行ベルト60の無限軌道の内部に配置してもよい。具体的には、後輪20を、左右一対の走行ベルト60の間に配置してもよい。かかる場合、遊星歯車機構を用いて後輪20と後側回転ローラー40とを連結してもよい。具体的には、遊星歯車機構の最外周に設けられる環状の内歯車を走行ベルト60で回転駆動し、後輪20の後輪軸24の周囲に太陽歯車を同軸で形成し、内歯車と太陽歯車との間に3個以上の遊星歯車を配置して互いに咬合させるとよい。この場合、後輪20と後側回転ローラー40とは同軸に設けられ、後輪20の後輪軸24は走行ベルト60の無限軌道の内部に配置される。
また、上記実施形態で操舵部80が車体フレーム50の前部より略上方に突出して設けられている態様を例示したが、これに限られない。すなわち、操舵部80を備えず、車体フレーム50、前輪10および後輪20でスケートボード状に乗用装置100を構成してもよい。
<第二実施形態>
図8から図12を参照して本発明の第二実施形態の乗用装置100について説明する。第一実施形態との共通点については適宜説明を省略する。
図8は、第二実施形態の乗用装置100を示す上方斜視図である。図9は、第二実施形態の乗用装置100を示す下方斜視図である。図10は、前後輪バランス機構94を示す斜視図である。図11は、前輪ブレーキ構造64を示す斜視図である。図12は、後輪ブレーキ構造62を示す斜視図である。
本実施形態のブレーキ機構54は、前輪10および後輪20の両方を制動する点で第一実施形態と相違する。ブレーキ機構54は、カム52の回動と連動して後輪20を制動する後輪ブレーキ構造62と、カム52の当該回動と連動して前輪10を制動する前輪ブレーキ構造64と、を含んでいる。
これにより、操舵部80(図8参照)を後方に横倒ししてカム52を回動させる一度の動作で後輪20および左右一対の前輪10をいずれも制動することができる。
操舵部80の下部を保持する保持筒81には、左右方向に延在するカム駆動筒88が連結されている。カム駆動筒88は車体フレーム50の前方延出部50a(図8参照)に回転可能に保持されており、カム52はカム駆動筒88に固定されている。図8および図9に示す走行状態の乗用装置100において、操舵部80を後方に横倒しすることに連動してカム駆動筒88およびカム52は回動する。カム52の後方には付勢部65が近接して配置されており、付勢部65の後方にはバネ体56(図12参照)が固定されている。付勢部65およびバネ体56は、車体フレーム50の前側に固定された筒状部63に収容されている。操舵部80を後方に横倒ししてカム52が回動させることにより、付勢部65は後方に押し下げられ、バネ体56は圧縮されて付勢部65に弾性復元力を付与する。そして、横倒しされていた操舵部80を起立させることで、カム52は逆向きに回動し、付勢部65はバネ体56の弾性復元力により前方に押し出されて元の位置に復位する。
図12に示すように、後輪ブレーキ構造62は、後輪20を覆うように近接配置された後輪パッド55aと、この後輪パッド55aを駆動する後輪ブレーキワイヤ62aと、後輪ブレーキワイヤ62aを進退駆動するブレーキロッド54aと、を備えている。後輪ブレーキワイヤ62aは、長尺管状のワイヤカバー68に収容されており、両端が露出してそれぞれブレーキロッド54aおよび後輪パッド55aに連結している。ワイヤカバー68は車体フレーム50の下面側に固定されている(図9参照)。ブレーキロッド54aを前方に移動させることで、後輪ブレーキワイヤ62aはワイヤカバー68の内部で前方に摺動して後輪パッド55aを牽引する。さらに後輪ブレーキ構造62は、回動軸62bを中心に回動する第一リンク板62cと、カム52の回動により前後方向に進退駆動される第一駆動片62dと、を備えている。回動軸62bは左右方向に延在し、車体フレーム50の前方延出部50a(図8参照)に固定されている。
図10に示すように、第一駆動片62dは前後輪バランス機構94における上部機構94aに固定されており、カム52が回動して付勢部65を後方に付勢することに連動して上部機構94aおよび第一駆動片62dは後方に平行移動する。操舵部80を後方に横倒しすることでカム52が回動して付勢部65を後方に付勢し、これに連動して第一駆動片62dが後方に移動することで、第一リンク板62cは回動軸62bを中心に回動してブレーキロッド54aを前方に牽引する。これにより、後輪ブレーキワイヤ62aは後輪パッド55aを牽引して後輪20に押し付け、後輪20は摩擦力により制動される。
図11に示すように、前輪ブレーキ構造64は、一対の前輪ブレーキワイヤ64a(破線で図示)と、これらの前輪ブレーキワイヤ64aにそれぞれ駆動されて左右の前輪10に対して摩擦的に接触する一対の前輪パッド55bと、を備えている。前輪ブレーキワイヤ64aは長尺管状のワイヤカバー69に収容されており、両端が露出してそれぞれ第二リンク板64cおよび前輪パッド55bに連結している。ワイヤカバー69の両端は前輪支持部14と車体フレーム50の前方延出部50a(図9参照)とにそれぞれ固定されている。第二リンク板64cを後方に移動させることで、前輪ブレーキワイヤ64aはワイヤカバー69の内部で摺動して前輪パッド55bを前方に牽引する。前輪パッド55bはバネ体55cにより前輪支持部14と接続されており、前輪ブレーキワイヤ64aを牽引することにより前輪パッド55bは前輪10に押圧され、また前輪ブレーキワイヤ64aの牽引を解除することで前輪パッド55bは前輪10から離脱する。さらに前輪ブレーキ構造64は、回動軸64bを中心に回動して前輪ブレーキワイヤ64aを牽引駆動する第二リンク板64cと、カム52の回動により前後方向に進退駆動される第二駆動片64dと、を備えている。回動軸64bは左右方向に延在し、車体フレーム50の前方延出部50a(図8参照)に固定されている。
図10に示すように、本実施形態のブレーキ機構54は、カム52の回動力を、後輪ブレーキ構造62が後輪20を制動する後輪制動力と、前輪ブレーキ構造64が前輪10を制動する前輪制動力と、に少なくとも按分する前後輪バランス機構94を有している。ここで、前輪制動力とは、左右一対の前輪10をそれぞれ制動するための制動力の合計である。
図10に示すように、第二駆動片64dは前後輪バランス機構94における下部機構94bに固定されており、カム52が回動して付勢部65を後方に付勢することに連動して下部機構94bおよび第二駆動片64dは後方に平行移動する。操舵部80を後方に横倒しすることでカム52が回動して付勢部65を後方に付勢し、これに連動して第二駆動片64dが後方に移動することで、第二リンク板64cは回動軸64bを中心に後方に回動して前輪ブレーキワイヤ64aを牽引する。これにより、前輪ブレーキワイヤ64aは前輪パッド55bを牽引して前輪10に押し付け、前輪10は摩擦力により制動される。
ブレーキ機構54は、カム52の回動と連動して走行ベルト60を制動するベルト制動構造96を更に備えている。本実施形態のベルト制動構造96は、図11に示すように、第二リンク板64cの回動と連動して前後方向に駆動されて走行ベルト60の前端部に摩擦的に付勢される。より具体的には、カム52と連動して第二リンク板64cが回動軸64bを中心に後方に回動すると、第二リンク板64cは前輪ブレーキワイヤ64aを牽引するとともに、ベルト制動構造96を後方に押し下げて走行ベルト60を制動する。第二リンク板64cのうち、前輪ブレーキワイヤ64aとベルト制動構造96の各接続位置は、どちらも回動軸64bを基準として第二駆動片64dと同じ側に位置している。このため、カム52により第二駆動片64dが後方に駆動されると、第二リンク板64cは、前輪ブレーキワイヤ64aを後方に牽引し、かつベルト制動構造96を後方に付勢する。これにより、前輪10を制動する動作と連動して走行ベルト60が実質的に同時に制動される。このため、惰性走行中にブレーキ機構54を駆動して乗用装置100を制動させた場合に、走行ベルト60に載せている使用者の足が慣性によって前進することが抑制され、すなわち使用者が不測に後ろ倒しに転倒することが防止される。
すなわち、本実施形態の前後輪バランス機構94は、カム52の回動力を、後輪制動力および前輪制動力に加えて、さらに上述したようにベルト制動構造96による走行ベルト60の制動力(ベルト制動力)に按分する。
前後輪バランス機構94は、上述のように上部機構94aと下部機構94bとを組み合わせてなる。前後輪バランス機構94は、付勢部65と同軸に設けられたピニオンギア66a、66bと、これらのピニオンギア66a、66bをそれぞれ挟んで上下平行に配置されて前後方向に延在するラックギア67a〜67dと、を更に備えている。具体的には、付勢部65の左方にピニオンギア66aが配置され、その上下にラックギア67a、67bが対向して配置されている。そして、付勢部65の右方にピニオンギア66bが配置され、その上下にラックギア67c、67dが対向して配置されている。上方のラックギア67aおよび67cには前後輪バランス機構94の上部機構94aが固定されており、下方のラックギア67bおよび67dには前後輪バランス機構94の下部機構94bが固定されている。
操舵部80を後方に横倒しカム52を回動させることで付勢部65は筒状部63および車体フレーム50(図8参照)に対して後方に真っ直ぐ後退する。これにより、上部機構94aと一体形成されてピニオンギア66a、66bの上方にそれぞれ咬合しているラックギア67aおよび67cは、互いに均等なストロークで後退する。また、下部機構94bと一体形成されてピニオンギア66a、66bの下方にそれぞれ咬合しているラックギア67bおよび67dは、後述する左右バランス機構95が作動していない場合、互いに均等なストロークで後退する。すなわち、上部機構94aと下部機構94bは、カム52が付勢部65を後方に押し下げる動きと連動して後退する。これにより、上部機構94aに設けられた第一駆動片62dと、下部機構94bに設けられた第二駆動片64dとに、カム52による駆動力が按分して負荷される。
上述のように、上部機構94aに設けられた第一駆動片62dは第一リンク板62cを回動させ、後輪ブレーキワイヤ62aを牽引して後輪パッド55aを後輪20に押圧させる(図12参照)。そして、下部機構94bに設けられた第二駆動片64dは第二リンク板64cを回動させ、前輪ブレーキワイヤ64aを牽引して前輪パッド55bを前輪10に押圧させる(図11参照)。すなわち、カム52および付勢部65と連動して同時に駆動される上部機構94aおよび下部機構94bは、カム52による駆動力が按分されて後輪ブレーキ構造62(第一リンク板62c)と前輪ブレーキ構造64(第二リンク板64c)に負荷される前後輪バランス機構94を構成している。
なお、カム52の回動力が後輪ブレーキ構造62と前輪ブレーキ構造64とに按分されるとは、カム52の回動力が所定の比率で後輪ブレーキ構造62と前輪ブレーキ構造64とに分配されていればよく、厳密に二等分されていることは必ずしも要しない。同様に、カム52の回動力が複数の前輪10に按分されるとは、カム52の回動力が所定の比率で分配されて複数の前輪10に制動力として負荷されていればよく、厳密に二等分されていることは必ずしも要しない。
そして、本実施形態の前後輪バランス機構94がカム52の回動力を後輪制動力と前輪制動力とに按分する比率は、ブレーキ機構54による制動動作中に動的に変動する。前後輪バランス機構94は、後輪ブレーキ構造62による後輪制動力と前輪ブレーキ構造64による前輪制動力との比率が所定の範囲内となるよう、一方の制動力が過少である場合に当該制動力を増大させる。
具体的には、前後輪バランス機構94は前後輪差動機構97aを含んでいる。前後輪差動機構97aは、後輪制動力の反力と前輪制動力の反力との差分により駆動されて、これらのうち小さい方の反力にかかる後輪制動力または前輪制動力を増大させる機構である。より具体的には、前後輪差動機構97aは、ラックギア67a〜67dおよびピニオンギア66a、66bで構成されている。
カム52が回動して付勢部65を後方に押し下げたときに、下部機構94bが後退して前輪10が制動されるストロークをL1とし、上部機構94aが後退して後輪20が制動されるストロークをL2とする(図10参照)。ここで、たとえば図9に示す後輪20と後輪パッド55aの間隙幅が、前輪10と前輪パッド55bとの間隙幅よりも大きいとする。図10に示すカム52が回動して付勢部65をストロークL1(<L2)だけ後方に押し下げていくと、左右の前輪10の制動が開始して2本の前輪ブレーキワイヤ64aが前輪10に前輪制動力を与え、この時点で後輪20の制動は開始しておらず後輪ブレーキワイヤ62aは後輪20に後輪制動力を実質的に与えていない。このため、左右一対の第二リンク板64cおよび第二駆動片64d(図11参照)が前輪ブレーキワイヤ64aから受ける前輪制動力の反力は、第一リンク板62cおよび第一駆動片62d(図12参照)が後輪ブレーキワイヤ62aから受ける後輪制動力の反力よりも大きくなる。すると、前後輪差動機構97aを構成するピニオンギア66a、66bは、左側面視で時計回りに角度R1(図10参照)だけ回動して下側のラックギア67bおよび67dに対して相対的に後退し、上側のラックギア67aおよび67cとともに上部機構94aを更に後方に押し下げる。これにより、上部機構94aのストロークが増大してL2(>L1)に至り、後輪20の制動が開始される。
また、上記の例とは逆に、図9に示す後輪20と後輪パッド55aの間隙幅が、前輪10と前輪パッド55bとの間隙幅よりも小さく、下部機構94bが後退して前輪10が制動されるストロークL1よりも上部機構94aが後退して後輪20が制動されるストロークL2が小さい場合について説明する(図10参照)。この場合、カム52が回動して付勢部65をストロークL2(<L1)だけ後方に押し下げていくと、後輪20の制動が開始して後輪ブレーキワイヤ62aが後輪20に後輪制動力を与え、この時点で前輪10の制動は開始しておらず前輪ブレーキワイヤ64aは前輪10に前輪制動力を実質的に与えていない。このため、第一リンク板62cおよび第一駆動片62d(図12参照)が後輪ブレーキワイヤ62aから受ける後輪制動力の反力は、第二リンク板64cおよび第二駆動片64d(図11参照)が前輪ブレーキワイヤ64aから受ける前輪制動力の反力よりも大きくなる。すると、前後輪差動機構97aを構成するピニオンギア66a、66bは、左側面視で反時計回りに回動して上側のラックギア67aおよび67cに対して相対的に後退し、下側のラックギア67bおよび67dとともに下部機構94bを更に後方に押し下げる。これにより、下部機構94bのストロークが増大してL1(>L2)に至り、前輪10の制動が開始される。
すなわち、本実施形態の前後輪バランス機構94によれば、後輪20と後輪パッド55aの間隙幅と、前輪10と前輪パッド55bの間隙幅と、が厳密に調整されていない状況であっても、その誤差が吸収されて、後輪20に対する制動力と前輪10に対する制動力とが所定の比率に按分される。
本実施形態のブレーキ機構54は、上述の前後輪バランス機構94に加えて、カム52の回動力を、複数の前輪10をそれぞれ制動する左前輪制動力と右前輪制動力とに少なくとも按分する左右バランス機構95を有している。すなわちブレーキ機構54は、カム52の回動力を、走行ベルト60のベルト制動力と、後輪20の後輪制動力と、更に左前輪制動力および右前輪制動力と、に按分する。
左右バランス機構95は左右前輪差動機構97bを含む。左右前輪差動機構97bは、左前輪制動力の反力と右前輪制動力の反力との差分により駆動されて、これらのうち小さい方の反力にかかる左前輪制動力または右前輪制動力を増大させる機構である。
図10に示すように、左右前輪差動機構97bは、ラックギア67b・67d、回転軸64eおよび第二駆動片64dで構成されている。ラックギア67b・67dと回転軸64eとは一体に形成されている。左右バランス機構95は、左右前輪差動機構97bに加えて、カム52の回動により駆動されてラックギア67b・67dをそれぞれ後退させるピニオンギア66a、66bを備えている。
回転軸64eは、図9に示すように、第二駆動片64dをラックギア67b・67dに対して回転可能に支持する軸である。本実施形態の回転軸64eは、一対のラックギア67b・67dを互いに連結する連結板64f(図10参照)の下面から下方に垂下して設けられ、第二駆動片64dを貫通して下面側に突出している。回転軸64eは、連結板64fおよび第二駆動片64dの左右方向の略中央に設けられている。連結板64fと第二駆動片64dとは、回転軸64eにより前後方向および左右方向の相対移動が規制されている。ラックギア67b・67dを後退させることで、第二駆動片64dは回転軸64eにより後方に付勢されて後退する。後退する第二駆動片64dは、回転軸64eを中心に、連結板64fやラックギア67b・67dに対して任意の方向に回転することができる。一対の前輪ブレーキワイヤ64aが連結された第二駆動片64d(左右バランス機構95)を回転させながら後退させることにより、カム52の回動力を左前輪制動力と右前輪制動力とに按分する比率を動的に変動させることができる。
上述のように、カム52が回動して付勢部65を押し下げることにより、ピニオンギア66aおよび66bは、下方側のラックギア67bおよび67dを後退させる。このとき、左側と右側の前輪10と前輪パッド55bとの間隙幅が均一ではなく互いに相違する(例えば、左側の前輪10と前輪パッド55bとの間隙幅の方が大きい)場合、右側の前輪10が先に制動されて右前輪制動力が発生する。図11に示すように、右側の前輪パッド55bに接続された前輪ブレーキワイヤ64aは左側の第二リンク板64cに連結され、逆に左側の前輪パッド55bに接続された前輪ブレーキワイヤ64aは右側の第二リンク板64cに連結されている。左側の第二リンク板64cがストロークL3だけ後退すると右前輪制動力が発生して右側の前輪10が制動され、一方、右側の第二リンク板64cがストロークL4だけ後退すると左前輪制動力が発生して左側の前輪10が制動されるものとする。そして、本例のように左側の前輪10と前輪パッド55bとの間隙幅の方が大きい場合にはL4>L3となる。ここで、カム52を回動させて第二駆動片64dをストロークL3だけ後退させると右側の前輪10の制動が開始して右前輪制動力が発生し、左側の第二リンク板64c、ラックギア67bおよびピニオンギア66a(図10参照)は右前輪制動力の反力を受ける。このとき、左側の前輪10に左前輪制動力は実質的に発生しておらず、右側の第二リンク板64c、ラックギア67dおよびピニオンギア66bが受ける反力は小さい。これにより左右前輪差動機構97bは駆動され、具体的には回転軸64eを中心に第二駆動片64dは上面視で時計回りに回転し、右側のラックギア67dおよびピニオンギア66bは更に後方に押し込み可能となる。そして、左前輪制動力の反力と右前輪制動力の反力とが釣り合うと、回転軸64eを中心とする第二駆動片64dの回転は止まり、以降はカム52の更なる回動による付勢部65の後退に伴って第二駆動片64dは真っ直ぐ後方に押し下げられる。これにより、左前輪制動力と右前輪制動力とが略同等にバランスしたまま増大して左右の前輪10を十分に制動する。
なお、上記の例とは逆に、左側の前輪10と前輪パッド55bとの間隙幅よりも右側の前輪10と前輪パッド55bとの間隙幅の方が大きい場合にはL3>L4となり、カム52の回動により左側の前輪10が先に制動されて左前輪制動力が発生する。これにより、回転軸64eを中心に第二駆動片64dは上面視で反時計回りに回転し、左側のラックギア67bおよびピニオンギア66aは更に後方に押し込み可能となる。カム52を更に回動させることで右前輪制動力が発生し、そして左前輪制動力と略同等にバランスする。
本実施形態の左右バランス機構95によれば、右側の前輪10と右側の前輪パッド55bの間隙幅と、左側の前輪10と左側の前輪パッド55bの間隙幅と、が厳密に等しく調整されていない状況であっても、その誤差が吸収されて、右側と左側の前輪10に対し、それぞれ略等しい制動力が按分される。
以上説明した第二実施形態の乗用装置100によれば、起立している操舵部80を後方に横倒ししてカム52を回動させることに連動して、左右の前輪10、後方の後輪20および左右一対の走行ベルト60が略同時に制動される。左右両輪の前輪10が均等にバランスよく制動されるため制動時に乗用装置100の前進方向が曲がることがない。また、操舵部80を横倒しする一つの動作により全ての車輪(前輪10および後輪20)が制動されるため、容易な操作で確実に乗用装置100を静止させることができる。そして、制動時に走行ベルト60の回転が制動されることで、使用者の足が車体フレーム50に対して相対的に前進することが抑制される。これにより、急制動時にも使用者の足が慣性力によって前進することがなく、また操舵部80を後方に横倒しする反力として使用者の足が前進することも防止される。このため、使用者が不測に後ろ倒しに転倒することがない。
また、第二実施形態の乗用装置100によれば、後輪20と後輪パッド55aの間隙幅と、前輪10と前輪パッド55bの間隙幅との差異が前後輪バランス機構94で吸収されるため、これらの車輪とパッドとの間隙幅の調整誤差があっても後輪20および前輪10を確実に制動することができる。さらに、第二実施形態の乗用装置100によれば、左右の前輪10と前輪パッド55bとの間隙幅の差異が左右バランス機構95で吸収されるため、左右の前輪10と前輪パッド55bとの間隙幅の調整誤差があっても左右の前輪10を確実に制動することができる。
<第三実施形態>
図13から図22を参照して本発明の第三実施形態の乗用装置100について説明する。第一または第二実施形態との共通点については適宜説明を省略する。図13は本実施形態の乗用装置100の駆動系を示す下方斜視図である。車体フレーム50および後輪パッド55a(図8参照)は図示省略している。図14は本実施形態の乗用装置100のバンク状態を模式的に示す立面図である。図15はシフト機構110を示す上方斜視図であり、図16はシフト機構110の平面図である。本実施形態の駆動力伝達機構70は、シフト機構110を備えている点で第一および第二実施形態と相違する。すなわち本実施形態の乗用装置100は、変速比を切換可能なシフト機構110を備えることにより、走行ベルト60の周回速度を一定としたまま乗用装置100の走行速度を増減変化させることができる。
本実施形態のシフト機構110は、歯数が互いに異なる複数の変速用歯車112および114と、走行ベルト60の駆動力を複数の変速用歯車112または114のいずれか一つを選択して駆動力を伝達させる切換手段120と、を含む。複数の変速用歯車112、114および切換手段120のうち、駆動力伝達部を構成する部位の全体が、走行ベルト60の設置領域の左右幅寸法Wの内部に配置されている(図16参照)。これにより、乗用装置100の操舵操作によって車体フレーム50を転向方向の内側に傾斜させても、変速用歯車112、114や切換手段120が路面に干渉することが抑制される。本実施形態の乗用装置100における駆動力伝達部、すなわち内部応力を発生させて走行ベルト60の駆動力を後輪20に伝達する部位の詳細については後述する。
図13に示すように、本実施形態の走行ベルト60には、その外周面に、駆動力伝達機構70と掛合して走行ベルト60の駆動力を伝達するラックギア61が周回状に設けられている。後側回転ローラー40および補助ローラー48は走行ベルト60に対して非掛合にて摺動する。周回する走行ベルト60の下方外側には、駆動ローラー44が周囲に形成された第一シャフト140が配置されている。第一シャフト140は車体フレーム50(図8参照)に軸支されている。
駆動ローラー44は走行ベルト60のラックギア61と掛合し、走行ベルト60の周回方向に対して反対向きに軸回転する。第一シャフト140の下部後方には、スプロケット46が形成された第二シャフト150が配置されている。第二シャフト150は車体フレーム50に軸支されている。第一シャフト140と第二シャフト150とに亘って駆動ベルト45が掛架されており、第二シャフト150は駆動ローラー44の軸回転と同方向に回転駆動される。また、スプロケット46と後輪20とに亘って駆動チェーン47が掛架されており、後輪20はスプロケット46と同方向に軸回転する。以上により、走行ベルト60の駆動力が後輪20に反転して伝達される。
走行ベルト60の下方外側には、第一シャフト140と平行にテンションローラー132が配置されて車体フレーム50(図8参照)に軸支されている。テンションローラー132は車体フレーム50に対して軸支位置を微調整可能に取付けられている。テンションローラー132は駆動ベルト45に対して摺接して設けられ、駆動ベルト45の弛みを除去する。
本実施形態は、走行ベルト60の下面側の一部が上方に押し上げられて無限軌道に凹部60bが形成されており、駆動力伝達機構70の少なくとも一部がこの凹部60bに配置されていることを特徴とする。走行ベルト60の上面側は平坦面60aとなっており使用者の歩行動作を妨げることはない。一方、走行ベルト60の下面側に凹部60bを形成して駆動力伝達機構70を収容することで、駆動力伝達機構70の全体を走行ベルト60の上面よりも下方に配置しつつも、走行ベルト60の上面の高さを低く抑えることが可能である。このため、使用者が乗用装置100に乗ることへの恐怖感を抑制し、乗降時の安全が高められている。
具体的には、凹部60bは、互いに隣接する後側回転ローラー40および補助ローラー48の間に形成されている。そして、駆動ローラー44を含む第一シャフト140、駆動ベルト45、スプロケット46、駆動チェーン47のそれぞれ一部または全部が、走行ベルト60の凹部60bに収容されている。また、第一シャフト140、周回方向規制部130およびテンションローラー132の軸心は、いずれも凹部60bの内部に位置している。走行ベルト60の下面側は、第一シャフト140および周回方向規制部130によって上方に押し上げられて張力が付加されている。
本実施形態の乗用装置100は、ラックギア61と掛合するとともに走行ベルト60の周回方向を一方向に規制する周回方向規制部130を備えている。本実施形態の周回方向規制部130は、第一シャフト140およびテンションローラー132とともに走行ベルト60の下方外側に配置されたでローラーであるが、これに限られず、たとえば車体フレーム50の上面側や前方側に配置されてもよい。周回方向規制部130は、走行ベルト60と掛合することに代えて、駆動力伝達機構70の一部の構成要素(たとえば駆動ローラー44)と掛合して、当該構成要素の動作方向を一方向に規制してもよい。これにより間接的に走行ベルト60の周回方向が一方向に規制される。
本実施形態の周回方向規制部130はワンウェイクラッチ(図示せず)を備えており、図13における時計回りに回転し、反時計回りの回転が規制されている。これにより、使用者が走行ベルト60の上で歩行して走行ベルト60の上面を後方に蹴った場合には走行ベルト60は周回し、また走行中の乗用装置100を制動した瞬間など使用者の足が慣性で前進しようとする際には周回方向規制部130によって走行ベルト60の逆方向の周回が規制される。このため、乗用装置100の急制動時にも使用者が姿勢を崩すことが防止されている。
図14は、乗用装置100の後方視にかかる立面模式図であり、操舵部80、前輪10、バンク機構84、走行ベルト60などは図示を省略している。同図は、車体フレーム50が走行面S1に接触するまで乗用装置100を右方に大きくバンクさせた、あくまで仮想的なバンク状態を示しており、実際の使用態様を必ずしも表すものではない。なお、複数の前輪10が車体フレーム50の前方の左右両側に配置されている場合(図5参照)、乗用装置100のバンク角度の最大値は前輪支持部14やバンク機構84における部材干渉によって規定される。図14は、単一の前輪10が車体フレーム50の前方の中央に配置されていて、前輪10やバンク機構84がバンク角度の上限を規定する要因にならない場合を想定した模式図である。
上述したように第一シャフト140は走行ベルト60の無限軌道における凹部60bの内部に収容され、また第一シャフト140および第二シャフト150の各両端は車体フレーム50に軸支されている。駆動ローラー44、駆動ベルト45、後輪歯車74などの駆動力伝達部は、車体フレーム50または後輪20の内側に収容されており、乗用装置100を大きくバンクさせても走行面S1と接触することはない。すなわち、第一シャフト140のうち、駆動ローラー44が設けられた中央近傍は内部応力が発生して駆動力を伝達する駆動力伝達部を構成しており、かかる部位は車体フレーム50に収容されているため乗用装置100をバンクさせても走行面S1と接触することはない。本実施形態の乗用装置100において、後輪20を走行面S1に接地させて乗用装置100を左右方向に最大に横傾斜させたときに駆動力伝達部が走行面S1と非接触で上方に位置するように、駆動力伝達機構70は車体フレーム50に取り付けられている。
一方、第一シャフト140や第二シャフト150の両端部は車体フレーム50に軸支されている部位であり、使用者や乗用装置100の自重を支持する部位ではあるが走行ベルト60の駆動力を伝達する駆動力伝達部ではない。かかる両端部は図示のように車体フレーム50から幅方向の外側に突出して軸支されていて、バンク状態で走行面S1と接触してもよい。
本実施形態のシフト機構110についてより詳細に説明する。図15に示すシフト機構110は、第一シャフト140から駆動ベルト45を介して伝達される駆動力を第二シャフト150に伝える歯車を、変速用歯車112または114を切り換えることによりシフト操作を行う。変速用歯車112または114の切り換えは切換手段120によって行う。
第一シャフト140には、駆動ローラー44と同軸で複数の駆動ギア(第一ギア141および第二ギア142)が形成されている。第一ギア141および第二ギア142は第一シャフト140に固定されており同軸で回転する。第一ギア141と第二ギア142の歯数は互いに同じでもよく、または異なってもよい。本実施形態では第一ギア141と第二ギア142の歯数は等しい。
第二シャフト150には、スプロケット46と同軸で変速用歯車112および114が形成されている。第一シャフト140の駆動ギアと第二シャフト150の変速用歯車に亘って駆動ベルト45(第一駆動ベルト45a、第二駆動ベルト45b)が掛架されている。本実施形態のシフト機構110は、複数の変速用歯車112、114の各々に対して専用に駆動力を伝達する部位を有することを特徴とする。具体的には、第一ギア141と変速用歯車112に亘って第一駆動ベルト45aが掛架され、第二ギア142と変速用歯車114に亘って第二駆動ベルト45bが掛架されている。駆動ベルト45はギアベルトであり、その内周面には駆動ギアと掛合する多数の歯を有している。通常の自転車のように複数のギアに対して1本のチェーンを架け替えてシフト操作を行う方式では安定したシフト動作のための機構を搭載する上下方向のスペースが十分でないという問題が懸念されるところ、本実施形態のように複数の変速用歯車112、114の各々に対して、たとえば第一駆動ベルト45aおよび第二駆動ベルト45bのように専用に駆動力を伝達する部位を設けることで、回転する部材を架け替える必要が無くなり上記の問題の発生が回避される。
また本実施形態に代えて、シフト機構110を、1本の駆動ベルト45を変速用歯車112および114に架け替えてシフト操作する機構としてもよい。この場合、第一ギア141と第二ギア142が、変速用歯車112および114にそれぞれ適切に対応した直径および歯数を備えるように形成して、第一ギア141および変速用歯車112を周回する周長と、第二ギア142および変速用歯車114を周回する周長とを等しい長さに形成するとよい。この場合、シフト操作によって駆動ベルト45は、たわみ量を調整する必要が無いため、駆動ベルト45を1本だけ備えて変速用歯車112および114に架け替える機構とすることができ、またかかるシフト機構110を比較的省スペースで容易に装備することができる。この構成では、専用に駆動力を伝達する部位とは、第一ギア141と第二ギア142が該当する。
第一シャフト140には、複数の駆動ローラー44(44a〜44d)が同径かつ同軸で形成されており、各駆動ローラー44a〜44dが走行ベルト60の下面側においてラックギア61(図13参照)と掛合する。走行ベルト60を周回駆動すると駆動ローラー44a〜44dおよび第一シャフト140は順方向(図15における時計回り)に回転する。第一シャフト140とともに第一ギア141および第二ギア142は回転し、第一駆動ベルト45aおよび第二駆動ベルト45bは周回駆動される。
乗用装置100は、ラックギア61が形成された走行ベルト60の外周面を清掃するブラシなどの清掃部を備えてもよい。これにより、使用者の足裏などから走行ベルト60の外周上面に泥等の汚れが付着しても、この汚れによって走行ベルト60と駆動ローラー44との間に掛止不良が発生することが抑制される。
切換手段120はシフターワイヤ125を備えている。シフターワイヤ125を牽引操作することにより、第二シャフト150に対して変速用歯車112または114の一方が選択的に掛止される。これにより、選択された変速用歯車112または114の一方を介して駆動力が第二シャフト150に伝達される。ここで、変速用歯車112、114の歯数は互いに異なるため、変速用歯車の選択により第二シャフト150の回転速度が変化する。そして、第二シャフト150に付与された回転駆動力は、更にスプロケット46、駆動チェーン47および後輪歯車74を介して後輪20に伝達される。これにより、後輪20の回転速度が切り換えられる。
図17は切換手段120の斜視図である。図18は、高速走行用の第一段ギア112に駆動力を伝達する状態を示す斜視図である。図19は、低速走行用の第二段ギア114に駆動力を伝達する状態を示す斜視図である。便宜上、図18においてスプロケット46は図示省略している。これらの図を用いて切換手段120について更に詳細に説明する。
図17に示すように、切換手段120は、スライドキー121、柱状部121a、キースライダー123、キーベース122およびシフターワイヤ125を備えている。
スライドキー121は、柱状部121aの先端に形成された突起部である。本実施形態では4本の柱状部121aの各先端にスライドキー121が形成されている態様を例示する。キーベース122は円盤状などの所定形状をなし、第二シャフト150を挿通可能なシャフト挿通孔122aが貫通形成されている。各柱状部121aはシャフト挿通孔122aの内周壁面に固定されており、キーベース122および柱状部121aは一体に固定されている。
キースライダー123は、キーベース122よりも大径の円盤状などに形成されており、各柱状部121aおよび第二シャフト150を挿通する摺動孔123a(図18および図19参照)を有している。
シフターワイヤ125の先端はキースライダー123に固定されている。シフターワイヤ125の基端は、操舵部80(図1参照)などに設けられた切換レバー(図示せず)に接続されている。キーベース122とキースライダー123とは互いに分離されている。キースライダー123は第二シャフト150に対して回転自由に装着され、シフターワイヤ125の牽引操作により第二シャフト150の軸方向に駆動される。
以下、説明のため、キースライダー123が図17から図19における右下側に移動することを「前進する」と呼称し、同図における左上側に移動することを「後退する」と呼称する。切換レバーの操作によりシフターワイヤ125が牽引されると、図19に示すようにキースライダー123は第二シャフト150に沿って後退する。キースライダー123が後退すると、キーベース122はキースライダー123に付勢されて共に後退する。
図18に示すように、変速用歯車112の軸心にはシャフト挿通孔112aが貫通形成されている。シャフト挿通孔112aには、4本の柱状部121aがそれぞれ進退移動可能な4本のキー溝115が形成されている。同様に、変速用歯車114にはシャフト挿通孔114aが貫通形成されており、シャフト挿通孔114aには4本の柱状部121aがそれぞれ進退移動可能な4本のキー溝115が形成されている。
第二シャフト150の周面には、4本のガイド溝151が第二シャフト150の軸心方向に沿って90度間隔で彫り込み形成されている。第二シャフト150がシャフト挿通孔122a(図17参照)に挿通された状態で、4本のガイド溝151には柱状部121aが個別に嵌合して第二シャフト150の軸心方向に摺動可能となる。
図18および図19に示すように、第二シャフト150の後端152とキーベース122との間にはスプリング124が装着されている。図19に示す状態でキースライダー123は第二シャフト150に沿って後退し、スプリング124は圧縮されている。このとき、スライドキー121は第二段ギア114のシャフト挿通孔114aに嵌合している。言い換えると、スライドキー121は第二シャフト150のガイド溝151とシャフト挿通孔114aのキー溝115とに亘って収容されており、第二段ギア114と第二シャフト150とを回転方向に連結する。このため、第一駆動ベルト45aの駆動力は第二段ギア114を介して第二シャフト150に回転駆動力として伝達され、かかる回転駆動力により駆動チェーン47および後輪20が駆動されて乗用装置100が走行する。乗用装置100が走行するとき、第二シャフト150および柱状部121aはキースライダー123の摺動孔123aの内部で回転し、キースライダー123やシフターワイヤ125は回転しない。
また、スライドキー121が第二段ギア114と掛合することにより、変速用歯車112は第二シャフト150に対して非掛合となり回転摺動する。このため、第二駆動ベルト45bの駆動力は第二シャフト150に伝達されない。
図19の状態から、切換レバー(図示せず)を元に戻してシフターワイヤ125の牽引を解除すると、スプリング124の弾性復元力によりキーベース122(図17参照)およびキースライダー123は第二シャフト150に対して前進する。これにより、キーベース122と一体形成されているスライドキー121はガイド溝151を摺動しながら前進し、第一段ギア112のシャフト挿通孔112aに嵌合する。これにより、図18に示すように第一段ギア112と第二シャフト150とが第一段ギア112で掛止された状態となり、第二駆動ベルト45b(図15参照)の駆動力が第一段ギア112および第二シャフト150を介して後輪20に伝達される。一方、第二段ギア114は第二シャフト150に対して非掛合となり、周回する第一駆動ベルト45aから駆動力は実質的に第二シャフト150に伝達されないこととなる。
シフト機構110および切換手段120は、第一シャフト140および第二シャフト150のうち車体フレーム50に軸支される両端部ならびにシフターワイヤ125など駆動力を伝達しない部分を除き、走行ベルト60の左右幅寸法の内部、かつ周回する走行ベルト60の下面よりも下方に配置されている。これにより、乗用装置100を横傾斜させたときにシフト機構110や切換手段120が走行面に干渉することが防止されている。本実施形態の駆動力伝達機構70における駆動力伝達部としては、第一シャフト140、第二シャフト150および後輪軸24において捩れ応力が発生する部位、ならびに駆動ローラー44、駆動ベルト45、スプロケット46、駆動チェーン47および後輪歯車74が例示される。このほか、後述する変速用歯車112、114やスライドキー121も駆動力伝達部に含まれる。
一方、駆動力伝達機構70において駆動力を伝達しない部分としては、第一シャフト140においては駆動ローラー44よりも端部側の部位、第二シャフト150においては第一段ギア112およびスプロケット46よりも端部側の部位、後輪軸24においては後輪20よりも外側の部位など、シャフト(軸)であって車体フレーム50に軸支される部位が例示される。このほか、スライドキー121を除く切換手段120(シフターワイヤ125を含む)が例示される。
なお、本実施形態では第一段ギア112および第二段ギア114からなる2段階の変速用歯車を備える態様を例示したが、本発明はこれに限られず、変速用歯車は3段以上に設けられてもよい。
図20は、第三実施形態の乗用装置100の左右バランス機構95を示す下方斜視図である。本実施形態の乗用装置100における前輪10のブレーキ構造について説明する。
本実施形態は、左右一対の前輪支持部14と第一ロッド16と第二ロッド17とで四節リンク機構が構成され、左右一対の前輪支持部14と第一ロッド16と第三ロッド18とで他の四節リンク機構が構成され、左右一対の前輪支持部14と第二ロッド17と第三ロッド18とで更に他の四節リンク機構が構成される点で第一および第二実施形態と共通する。操舵駆動部90は操舵部80に接続されており、操舵部80の軸回転により第二ロッド17および第三ロッド18は左右逆方向に操舵駆動される。
前後輪バランス機構94は、操舵部80を後方に横倒させてカム52(図10参照)を回動させることにより発生する力を、後輪20を制動する後輪制動力と前輪10を制動する前輪制動力とに按分する。前後輪バランス機構94に接続される後輪ブレーキワイヤ62a(図12参照)は、図20では図示省略している。前後輪バランス機構94には前輪ブレーキワイヤ64aの基端が接続されている。前輪ブレーキワイヤ64aの先端は左右バランス機構95に接続されている。本実施形態の左右バランス機構95は、第一摺動体95aと第二摺動体95bとがスプリング95cを介して左右幅方向に互いに摺動可能に組み合わされてなる。前輪ブレーキワイヤ64aは第二摺動体95bに対して接続されている。操舵部80を後傾させ、カム52を駆動して前輪ブレーキワイヤ64aを牽引すると、第二摺動体95bは第一摺動体95aに向かって付勢されてスプリング95cを圧縮させる。スプリング95cは左右前輪差動機構として機能し、第一摺動体95aおよび第二摺動体95bを左右から内向きに均等な力で牽引する。第一摺動体95aおよび第二摺動体95bのそれぞれ幅外側には前輪ブレーキ構造64が連結されている。
図21は、第三実施形態の乗用装置100の前輪10および前輪支持部14を示す斜視図である。図22は、第三実施形態の乗用装置100の前輪10および前輪支持部14を示す平面図である。図21は右側の前輪10および前輪支持部14を示している。同図に示される3個のユニバーサルジョイント19aには、図示のように、第一ロッド16、第二ロッド17および第三ロッド18(図20参照)がそれぞれ連結されている。また、前輪ブレーキ構造64には第二摺動体95b(図20参照)が連結されている。図22に示すように、前輪支持部14は、ブレーキディスク14a、前輪ホルダー突起部14bおよびブレーキシュー14cを備えている。前輪ホルダー突起部14bおよびブレーキシュー14cは、ブレーキディスク14aを挟んで両側に配置されている。ブレーキディスク14aは前輪10に対して回転方向には固定され、前輪軸12の軸方向には可動に取り付けられている。前輪ホルダー突起部14bおよびブレーキシュー14cは、前輪ブレーキ構造64の未作動時には、ブレーキディスク14aに対してそれぞれ僅かに離間して配置されている。そして、上述したように操舵部80を横倒させて前輪ブレーキワイヤ64aを牽引すると、第二摺動体95bにより前輪ブレーキ構造64が、図22における左方に付勢される。これにより、前輪ホルダー突起部14bおよびブレーキシュー14cがブレーキディスク14aの両面にそれぞれ押し当てられ、走行中の乗用装置100におけるブレーキディスク14aおよび前輪10の回転が制動される。
本発明の乗用装置100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
上記第一または第二実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)前輪および後輪と、車体フレームと、前記車体フレームの前方および後方に配置されて前記車体フレームの左右方向に延びる回転軸をそれぞれ有する前側回転ローラーおよび後側回転ローラーと、前記前側回転ローラーおよび前記後側回転ローラーによって無限軌道上を回転可能に支持されて使用者の歩行動作により周回駆動される駆動ベルトと、前記駆動ベルトから伝達される前記後側回転ローラーの回転駆動力を前記後輪に伝達する駆動力伝達機構と、を備え、前記駆動力伝達機構が、前記後輪よりも小径に形成されて前記回転駆動力を前記後輪に反転変速して伝達するギアを含み、前記後輪が前記駆動ベルトの設置領域の幅内に配置されていることを特徴とする乗用装置。
(2)前記後輪が、前記ギアを挟む左右一対の車輪半体で構成されており、前記車輪半体が、左右方向の外側に向かって外径が放物線テーパー状に縮径していることを特徴とする上記(1)に記載の乗用装置。
(3)前記車輪半体の左右方向の外形線の曲率半径が前記車輪半体の最大半径よりも大きい上記(2)に記載の乗用装置。
(4)前記車体フレームの中心側における前記車輪半体の肉厚が、左右方向の外側における前記肉厚よりも大きい上記(2)または(3)に記載の乗用装置。
(5)前記後輪の車軸の周囲に同軸に配置された中空シャフトと、前記中空シャフトおよび前記車軸を互いに摺動可能に連結するベアリング構造と、を更に備え、前記中空シャフトおよび前記ベアリング構造のそれぞれ少なくとも一部が前記車輪半体に埋設されている上記(2)から(4)のいずれか一項に記載の乗用装置。
(6)前記後輪の車軸が、前記駆動ベルトよりも後方外側に配置されている上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の乗用装置。
(7)複数の前記前輪が前記車体フレームの前方における左右両側に配置されており、前記車体フレームより略上方に突出して軸回転可能に設けられた操舵部と、前記操舵部の軸回転に連動して前記前輪の車軸を走行面と略平行な面内で傾ける操舵機構と、前記操舵部を左右方向に横傾斜させることに連動して略前後方向を法線とする起立面の面内で前記前輪の前記車軸を傾けるバンク機構と、を更に備える上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の乗用装置。
(8)前記操舵機構が、複数の前記前輪を連結し前記走行面と略平行に設けられて前記操舵部の前記軸回転により駆動される第一リンク構造を含み、前記バンク機構が、複数の前記前輪を連結し前記起立面と略平行に設けられて前記操舵部の前記横傾斜により駆動される第二リンク構造を含む上記(7)に記載の乗用装置。
(9)複数の前記前輪の前記車軸を回転可能にそれぞれ支持する一対の前輪支持部と、一対の前記前輪支持部に対して両端がそれぞれ回転自在に接続されて互いに平行に配置された第一から第三のロッドと、を更に備え、第二および第三の前記ロッドは互いに略同高さかつ前後方向に異なる位置に配置され、第一の前記ロッドは第二および第三の前記ロッドと異なる高さに配置され、前記第一リンク構造は、第二および第三の前記ロッドと一対の前記前輪支持部とを含んで構成され、前記操舵機構は、前記操舵部に接続されて前記操舵部の前記軸回転により第二および第三の前記ロッドを左右逆方向に駆動する操舵駆動部を含み、前記第二リンク構造は、第一の前記ロッドと第二または第三の前記ロッドと一対の前記前輪支持部とを含んで構成され、前記バンク機構は、前記車体フレームに接続されて前記操舵部の前記横傾斜により第一の前記ロッドと第二または第三の前記ロッドとを左右逆方向に駆動するバンク駆動部を含む、上記(8)に記載の乗用装置。
(10)前記操舵部を後傾させることに連動して回動するカムと、回動する前記カムに係合して前進または後退駆動され前記前輪と前記後輪との一方または両方を制動するブレーキ機構と、駆動された前記ブレーキ機構を弾性復元することにより前記制動を解除する弾性体と、を更に備える上記(7)から(9)のいずれか一項に記載の乗用装置。
(11)前記ブレーキ機構が、前記カムの回動と連動して前記後輪を制動する後輪ブレーキ構造と、前記カムの前記回動と連動して前記前輪を制動する前輪ブレーキ構造と、を含み、前記前輪および前記後輪の両方を制動する上記(10)に記載の乗用装置。
(12)前記ブレーキ機構が、前記カムの回動力を、前記後輪ブレーキ構造が前記後輪を制動する後輪制動力と、前記前輪ブレーキ構造が前記前輪を制動する前輪制動力と、に少なくとも按分する前後輪バランス機構を有する上記(11)に記載の乗用装置。
(13)前記前後輪バランス機構が、前記後輪制動力の反力と前記前輪制動力の反力との差分により駆動されて小さい方の当該反力にかかる前記後輪制動力または前記前輪制動力を増大させる前後輪差動機構を含む上記(12)に記載の乗用装置。
(14)前記ブレーキ機構が、前記カムの回動力を、前記複数の前記前輪をそれぞれ制動する左前輪制動力と右前輪制動力とに少なくとも按分する左右バランス機構を有する上記(11)から(13)のいずれか一項に記載の乗用装置。
(15)前記左右バランス機構が、前記左前輪制動力の反力と前記右前輪制動力の反力との差分により駆動されて小さい方の当該反力にかかる前記左前輪制動力または前記右前輪制動力を増大させる左右前輪差動機構を含む上記(14)に記載の乗用装置。
(16)前記ブレーキ機構が、前記カムの前記回動と連動して前記駆動ベルトを制動するベルト制動構造を更に備える上記(10)から(15)のいずれか一項に記載の乗用装置。
(17)前記カムには、前記ブレーキ機構とそれぞれ係合する第一凹部、凸部および第二凹部が順番に形成されており、前記操舵部が起立している走行状態で前記ブレーキ機構は前記カムの前記第一凹部と係合し、前記操舵部を第一の角度で後傾させた制動状態で前記ブレーキ機構は前記カムの前記凸部と係合して駆動されて前記前輪と前記後輪の一方または両方を制動し、前記操舵部を前記第一の角度よりも大きな第二の角度で後傾させた折畳状態で、前記ブレーキ機構は前記カムの前記第二凹部と係合し、前記弾性体により前記ブレーキ機構が弾性復元されて前記制動が解除されることを特徴とする上記(10)から(16)のいずれか一項に記載の乗用装置。
(18)前記操舵部の前側に貨物収容装置を備え、前記折畳状態で前記ブレーキ機構と前記カムの前記第二凹部との係合力により前記カムの回動が規制されて前記折畳状態が維持されているとともに、前記前輪が非制動状態にあることを特徴とする上記(17)に記載の乗用装置。
さらに、上記第二実施形態の乗用装置100は以下の技術的思想を包含する。
(19)前輪および後輪と、車体フレームと、前記車体フレームの前方および後方に配置されて前記車体フレームの左右方向に延びる回転軸をそれぞれ有する前側回転ローラーおよび後側回転ローラーと、前記前側回転ローラーおよび前記後側回転ローラーによって無限軌道上を回転可能に支持されて使用者の歩行動作により周回駆動される駆動ベルトと、前記駆動ベルトから伝達される前記後側回転ローラーの回転駆動力を前記前輪または前記後輪の少なくとも一方に伝達する駆動力伝達機構と、前記車体フレームより略上方に突出して軸回転可能に設けられた操舵部と、前記操舵部の軸回転に連動して前記前輪または前記後輪の少なくとも一方の車軸を走行面と略平行な面内で傾ける操舵機構と、前記操舵部を後傾させることに連動して回動するカムと、前記カムの回動と連動して前記後輪を制動する後輪ブレーキ構造と、前記カムの前記回動と連動して前記前輪を制動する前輪ブレーキ構造と、を備え、前記操舵部を後傾させることにより前記前輪および前記後輪の両方が制動されることを特徴とする乗用装置。
上記第一から第三実施形態の乗用装置100は以下の技術的思想を包含する。
(i)前輪および後輪と、車体フレームと、前記車体フレームの前方および後方に配置されて前記車体フレームの左右方向に延びる回転軸をそれぞれ有する前側回転ローラーおよび後側回転ローラーと、前記前側回転ローラーおよび前記後側回転ローラーによって無限軌道上を回転可能に支持されて使用者の歩行動作により周回駆動される走行ベルトと、前記走行ベルトが周回する駆動力を反転変速して内部応力によって前記後輪に伝達する駆動力伝達機構と、を備え、前記後輪が前記走行ベルトの設置領域の左右幅寸法の内部に配置されているとともに、前記駆動力伝達機構が前記走行ベルトから前記後輪まで前記左右幅寸法の内部で前記内部応力により前記駆動力を伝達することを特徴とする乗用装置。
(ii)前記駆動力伝達機構が前記後輪に対して前記後輪の幅内で前記駆動力を伝達する上記の乗用装置。
(iii)前記後輪を走行面に接地させて前記乗用装置を左右方向に最大に横傾斜させたときに前記内部応力を発生させる部位が前記走行面と非接触で上方に位置するように前記駆動力伝達機構は前記車体フレームに取り付けられている上記の乗用装置。
(iv)前記カムが、前記操舵部を折畳状態まで後傾させることで前記ブレーキ機構の前記制動を解除するように形成されている上記の乗用装置。
また、上記第三実施形態の乗用装置100は以下の技術的思想を包含する。
(v)前記駆動力伝達機構は、歯数が互いに異なる複数の変速用歯車と、複数の前記変速用歯車のいずれか一つを選択して前記駆動力を伝達させる切換手段と、を含むシフト機構を備え、複数の前記変速用歯車および前記切換手段のうち、前記内部応力を発生させて前記駆動力を伝達する部位の全体が前記走行ベルトの設置領域の左右幅寸法の内部に配置されている上記の乗用装置。
(vi)前記シフト機構が、前記複数の変速用歯車の各々に対して専用に前記駆動力を伝達する部位を有することを特徴とする上記の乗用装置。
(vii)前記走行ベルトの外周面に、前記駆動力伝達機構と掛合して前記駆動力を伝達するラックギアが周回状に設けられている上記の乗用装置。
(viii)前記走行ベルトまたは前記駆動力伝達機構と掛合して前記走行ベルトの周回方向を一方向に規制する周回方向規制部を更に備える上記の乗用装置。
(ix)前記走行ベルトの下面側の一部が上方に押し上げられて前記無限軌道に凹部が形成されており、前記駆動力伝達機構の少なくとも一部が前記凹部に配置されている上記の乗用装置。
10 前輪
11 ハブ
12 前輪軸
14 前輪支持部
14a ブレーキディスク
14b 前輪ホルダー突起部
14c ブレーキシュー
15 軸受凹部
16 第一ロッド
17 第二ロッド
18 第三ロッド
19 ボールジョイント
19a ユニバーサルジョイント
20 後輪
22・23 車輪半体
24 後輪軸
25 凹部
26 中空シャフト
28 ベアリング構造
29 円孔
30 前側回転ローラー
32 前側回転軸
40 後側回転ローラー
42 後側回転軸
44、44a〜44d 駆動ローラー
45 駆動ベルト
45a 第一駆動ベルト
45b 第二駆動ベルト
46 スプロケット
47 駆動チェーン
48 補助ローラー
50 車体フレーム
50a 前方延出部
51 後方支持部
52 カム
53 ヒンジ
54 ブレーキ機構
54a ブレーキロッド
54b 分岐部
55 パッド部
55a 後輪パッド
55b 前輪パッド
55c、56 バネ体
57 第一凹部
58 凸部
59 第二凹部
60 走行ベルト
60a 平坦面
60b 凹部
61 ラックギア
62 後輪ブレーキ構造
62a 後輪ブレーキワイヤ
62b 回動軸
62c 第一リンク板
62d 第一駆動片
63 筒状部
64 前輪ブレーキ構造
64a 前輪ブレーキワイヤ
64b 回動軸
64c 第二リンク板
64d 第二駆動片
64e 回転軸
64f 連結板
65 付勢部
66a、66b ピニオンギア
67a〜67d ラックギア
68、69 ワイヤカバー
70 駆動力伝達機構
72 大径ギア
73 被覆カバー
74 後輪歯車
76 ワンウェイクラッチ
80 操舵部
81 保持筒
82 操舵機構
83 第一リンク構造
84 バンク機構
85 第二リンク構造
86 ハンドル
87 U字部
88 カム駆動筒
90 操舵駆動部
91 保持凹部
92 バンク駆動部
94 前後輪バランス機構
94a 上部機構
94b 下部機構
95 左右バランス機構
95a 第一摺動体
95b 第二摺動体
95c スプリング
96 ベルト制動構造
97a 前後輪差動機構
97b 左右前輪差動機構
98 貨物収容装置
100 乗用装置
110 シフト機構
112 変速用歯車(第一段ギア)
114 変速用歯車(第二段ギア)
112a、114a、122a シャフト挿通孔
115 キー溝
120 切換手段
121 スライドキー
121a 柱状部
122 キーベース
123 キースライダー
123a 摺動孔
124 スプリング
125 シフターワイヤ
130 周回方向規制部
132 テンションローラー
140 第一シャフト
141 第一ギア
142 第二ギア
150 第二シャフト
151 ガイド溝
152 後端
θ1 第一の角度
θ2 第二の角度
L1〜L4 ストローク
R1 曲率半径
R2 最大半径
S1 走行面
S2 起立面
T1、T2 肉厚
W 左右幅寸法

Claims (19)

  1. 前輪および後輪と、車体フレームと、前記車体フレームの前方および後方に配置されて前記車体フレームの左右方向に延びる回転軸をそれぞれ有する前側回転ローラーおよび後側回転ローラーと、前記前側回転ローラーおよび前記後側回転ローラーによって無限軌道上を回転可能に支持されて使用者の歩行動作により周回駆動される走行ベルトと、前記走行ベルトが周回する駆動力を反転変速して内部応力によって前記後輪に伝達する駆動力伝達機構と、を備え、
    前記後輪が前記走行ベルトの設置領域の左右幅寸法の内部に配置されているとともに、
    前記駆動力伝達機構が前記走行ベルトから前記後輪まで前記左右幅寸法の内部で前記内部応力により前記駆動力を伝達することを特徴とする乗用装置。
  2. 前記駆動力伝達機構が前記後輪に対して前記後輪の幅内で前記駆動力を伝達する請求項1記載の乗用装置。
  3. 前記後輪を走行面に接地させて前記乗用装置を左右方向に最大に横傾斜させたときに前記内部応力を発生させる部位が前記走行面と非接触で上方に位置するように前記駆動力伝達機構は前記車体フレームに取り付けられている請求項1または2に記載の乗用装置。
  4. 前記駆動力伝達機構は、歯数が互いに異なる複数の変速用歯車と、複数の前記変速用歯車のいずれか一つを選択して前記駆動力を伝達させる切換手段と、を含むシフト機構を備え、
    複数の前記変速用歯車および前記切換手段のうち、前記内部応力を発生させて前記駆動力を伝達する部位の全体が前記走行ベルトの設置領域の左右幅寸法の内部に配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の乗用装置。
  5. 前記シフト機構が、前記複数の変速用歯車の各々に対して専用に前記駆動力を伝達する部位を有することを特徴とする請求項4に記載の乗用装置。
  6. 前記駆動力伝達機構が、前記後輪の最大外径よりも小径に形成されて前記駆動力を前記後輪に伝達する後輪歯車を含み、
    前記後輪が、前記後輪歯車を挟む左右一対の車輪半体で構成されており、
    前記車輪半体が、左右方向の外側に向かって外径が放物線テーパー状に縮径していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の乗用装置。
  7. 前記車輪半体の左右方向の外形線の曲率半径が前記車輪半体の最大半径よりも大きい請求項6に記載の乗用装置。
  8. 前記車体フレームの中心側における前記車輪半体の肉厚が、左右方向の外側における前記肉厚よりも大きい請求項6または7に記載の乗用装置。
  9. 前記走行ベルトの外周面に、前記駆動力伝達機構と掛合して前記駆動力を伝達するラックギアが周回状に設けられている請求項1から8のいずれか一項に記載の乗用装置。
  10. 前記走行ベルトまたは前記駆動力伝達機構と掛合して前記走行ベルトの周回方向を一方向に規制する周回方向規制部を更に備える請求項1から9のいずれか一項に記載の乗用装置。
  11. 前記走行ベルトの下面側の一部が上方に押し上げられて前記無限軌道に凹部が形成されており、前記駆動力伝達機構の少なくとも一部が前記凹部に配置されている請求項1から10のいずれか一項に記載の乗用装置。
  12. 前記後輪の車軸が、前記走行ベルトよりも後方外側に配置されている請求項1から11のいずれか一項に記載の乗用装置。
  13. 前記前輪が前記車体フレームの前方に配置されており、前記車体フレームより略上方に突出して軸回転可能に設けられた操舵部と、前記操舵部の軸回転に連動して前記前輪の車軸を走行面と略平行な面内で傾ける操舵機構と、を更に備える請求項1から12のいずれか一項に記載の乗用装置。
  14. 複数の前記前輪が前記車体フレームの前方における左右両側に配置されており、
    前記操舵機構は、前記操舵部の軸回転に連動して前記複数の前記前輪の前記車軸を走行面と略平行な面内で等しく傾けることができる複数前輪用操舵機構であって、
    前記操舵部を左右方向に横傾斜させることに連動して、略前後方向を法線とする起立面の面内で前記複数の前記前輪の前記車軸を等しく傾けるバンク機構を更に備える請求項13に記載の乗用装置。
  15. 前記操舵部を後傾させることに連動して回動するカムと、回動する前記カムに係合して前進または後退駆動され前記前輪と前記後輪との一方または両方を制動するブレーキ機構と、駆動された前記ブレーキ機構を弾性復元することにより前記制動を解除する弾性体と、を更に備える請求項13または14に記載の乗用装置。
  16. 前記ブレーキ機構が、前記カムの回動と連動して前記後輪を制動する後輪ブレーキ構造と、前記カムの前記回動と連動して前記前輪を制動する前輪ブレーキ構造と、を含み、前記前輪および前記後輪の両方を制動する請求項15に記載の乗用装置。
  17. 前記ブレーキ機構が、前記カムの回動力を、前記後輪ブレーキ構造が前記後輪を制動する後輪制動力と、前記前輪ブレーキ構造が前記前輪を制動する前輪制動力と、に少なくとも按分する前後輪バランス機構を有する請求項16に記載の乗用装置。
  18. 前記ブレーキ機構が、前記カムの回動力を、前記複数の前記前輪をそれぞれ制動する左前輪制動力と右前輪制動力とに少なくとも按分する左右バランス機構を有する請求項14に従属する請求項15から17のいずれか一項に記載の乗用装置。
  19. 前記カムが、前記操舵部を折畳状態まで後傾させることで前記ブレーキ機構の前記制動を解除するように形成されている請求項15から18のいずれか一項に記載の乗用装置。
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