JP2016065292A - スパッタリング装置および透明導電膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
Description
タッチパネル用途の透明基材としては、ガラスの他に、PETやPCなどの樹脂系材料も使用されている。
ITOは文献などでも公知のように、成膜温度や後処理の温度が高いほど、低抵抗な膜質が得られやすいためである(たとえば、特許文献1)。
このような構造のタッチパネルにおいても、従来と同様に、パネル面内の均一な視認性が求められることから、高透過率かつ低抵抗な特性を備えるとともに、それらの面内バラツキが小さな透明導電膜の製造技術(製造装置、製造方法)の開発が、継続する課題として挙げられる。
これに加えて、上記の特殊なタイプ(カラーフィルターの上に直接、透明導電膜を堆積するタイプ)においては、カラーフィルターの温度制約のため、低温プロセスによる透明導電膜の製造技術(製造装置、製造方法)の開発が、さらなる課題となっている。
本発明の請求項2に記載のスパッタリング装置は、請求項1において、前記基体を側断面視する方向において、前記開口部の縁をなす前記遮蔽板の端部と、前記基体の一面との離間距離[mm]が、10以下であることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載のスパッタリング装置は、請求項1又は2において、前記遮蔽板が、冷却手段を備えていることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載のスパッタリング装置は、請求項1乃至3のいずれか一項において、前記基体を側断面視する方向において、前記ターゲットを2つ以上備え、各ターゲットごとに有する複数のエロージョン部が、該基板の進行方向に沿って列ぶように、それぞれのターゲットが配されていることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載のスパッタリング装置は、請求項4において、前記基体と前記ターゲットとの間で、かつ、隣接するターゲット間に位置するように、第二の遮蔽板が配されていることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の透明導電膜の形成方法は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスパッタリング装置を用い、長手方向に移動する可撓性基体に透明導電膜を形成する方法であって、スパッタ時において前記エロージョン部から出射される粒子の進行軌跡が前記ターゲット表面の法線となす角度をθ[deg]と定義した場合、前記遮蔽板及び/又は前記第二の遮蔽板の配置を、前記ターゲットと前記基体との間において、何れの前記エロージョン部に対しても、前記θが65以下(θ≦65)を満たすように調整することを特徴とする。
図1は、本発明に係るスパッタリング装置の一例を示す模式的な断面図である。
本発明のスパッタリング装置100は、長手方向に移動する可撓性基体Sに透明導電膜を形成するために、少なくとも、巻出室101、前処理室102、成膜室103、巻取室104、を備えている。ただし、これら4室に加えて、たとえば、成膜室103の後段に成膜後の基体Sを冷却または後加熱するための後処理室102など、他のチャンバがあってもよい。
なお、本発明における可撓性基体Sとしては、たとえば、テープ状やシート状をなす可撓性の被処理体からなる場合、テープ状やシート状をなす可撓性の支持体とその上に配置された可撓性の被処理体との組合せからなる場合(ただし、この場合における「可撓性の被処理体」は、「可撓性の支持体」に載置されていればよく、その形状や配置などについて特に制限はない)、等が挙げられる。
また、P1〜P4は順に、巻出室101、前処理室102、成膜室103、巻取室104の各室内を、所望の減圧雰囲気(真空度)とするための排気手段である。
また、図1の装置における成膜室103には、成膜手段SPが、移動手段111(MR)によって支持された基体Sと対向するように配置されている。
なお、図1には記載していないが、成膜手段が設けられた空間(成膜室とも呼ぶ)内には、スパッタガスとして用いるアルゴンガスと酸素ガスの導入手段が設けられている。
成膜手段SPは、ターゲット10を載置するバッキングプレート11と、その背面に設けられた磁気回路12と、シールド部材13から構成されている。
シールド部材13は、ターゲット10の外周を囲むように配されており、バッキングプレート11のターゲット10の支持部(露呈部)がスパッタされるのを防止する。
ターゲット10の裏面(図2では下面)側には、電力を伝達するバッキングプレート11が配されている。このバッキングプレート11のさらに裏面(図2では下面)側には、ターゲット表面にプラズマをトラップするために機能する磁気回路12が配置されている。本発明における磁気回路12は、固定されており、放電時に揺動しないタイプである。
磁気回路12の回路構成によっては、エロージョン部は3つ以上となる場合もあるが、後述するところの本発明に係る遮蔽部材の配置とその効果は、エロージョン部の数に限定されるものではない。
つまり、基体Sを側断面視する方向(図2)において、基体Sの被成膜面をなす一面に対向して設けられたターゲット10は、ターゲットあたり複数のエロージョン部(図2では、2箇所のエロージョン部a、bを指す)を形成させる磁気回路12を備えている。そして、ターゲット10の複数のエロージョン部a,bは、基板Sの進行方向に沿って列ぶように配されている。
本発明者らは、後述する実験により、何れのエロージョン部a,bに対しても、θ≦65を満たすことにより、比抵抗が低く、かつ、そのバラツキも小さな透明導電膜を形成できることを見出した。
ターゲット10の表面と平行な方向をx軸方向として、x軸に垂直な方向をy軸とした場合、ターゲット10の背面に設ける磁気回路12の構造にもよるが、ターゲット10表面の最もプラズマ密度が高い点(エロージョン部a,bに相当する)は、ターゲット10表面における磁束密度のx軸成分が最大となる点とほぼ同等であるため、ターゲット表面の磁束密度のx成分が最も高い点から基体方向を見たときの最大入射角度θで、遮蔽板15の開口部の配置を規定している。
また、後述する、図4に示すようなターゲットと基体までの間に障害物がある場合においても、前述のとおり、ターゲット10表面上の磁束密度のx成分が最大の点から基体方向を見て、最も入射角度が大きい角度をθと規定する。
図2において、基体S1(S)は、被成膜面が、遮蔽板15の裏面(図2では上面)と面一をなすように配された場合である。一方、基体S2(S)は、被成膜面が、ターゲット10の表面から見て、遮蔽板15の裏面(図2では上面)より奥行き方向(図2では上方、点線矢印の方向)に引っ込んで配された場合である。
前者より後者は、基体Sの長手方向における成膜領域が広がり(DL21<DL22)、1通過あたりの膜厚を稼ぐことができる反面、遮蔽板15の裏面と基体Sの被成膜面との離間距離が広がり、遮蔽板の(ターゲット表面から見て)裏面側、すなわち遮蔽板の基体と対向する面側にスパッタ粒子の回り込みが発生し易くなる。ゆえに、遮蔽板から付着物が離脱し、堆積中の被膜に影響を及ぼすことを勘案すると、後者より前者の構成とした方が好ましいことが分かった。
図3は、図1の装置を構成する成膜手段SPの他の一例を示す断面図であり、符号α2(α)により示す空間は、ターゲットを含む成膜手段SPと、移動する可撓性基体Sとの相対的な位置関係を表している。
図3の基体S3(S)は、基体を側断面視する方向において、回転体MR3に支持された状態にある基体S3(S)の一面(被成膜面)が、遮蔽板15に設けられた開口部から、ターゲット10表面の方向(点線矢印の方向)に突出して配されている場合である。図3の構成によれば、図2に示した基体S1(S)より、更に遮蔽板15の裏面と基体Sの被成膜面との離間距離を狭めることが可能となるので、遮蔽板15の裏側に対するスパッタ粒子の回り込み(15B)を更に低減できる。その結果、遮蔽板15からの付着物の離脱、堆積中の被膜への影響(S3B)を著しく抑制できることが明らかとなった。
上記角度θの条件を満たしつつ、図3の構成を実現するためには、たとえば、ターゲット10表面と遮蔽板15との距離を長く設定すればよい。図3の構成によれば、基体S3(S)の長手方向における成膜領域も拡大する(DL3)ことから、1通過あたりの膜厚を増加させることが可能となる利点もある。
その際に、他方のエロージョン部bから出射される粒子の角度θb2は、遮蔽板15の位置に大きく影響を受ける。
図6は、開口部の縁をなす遮蔽板15の端部と、移動手段MR11(111)に載置された基体Sの一面(被成膜面)との関係を示す断面図である。
図6に示すように、基体Sを側断面視する方向において、開口部の縁をなす遮蔽板15の端部と、基体Sの一面との離間距離[mm]を10以下に設定したとき、遮蔽板15の裏側に対するスパッタ粒子の回り込み(15B)の低減効果が高いことが分かった。この条件を満たすことにより、遮蔽板15からの付着物の離脱、堆積中の被膜への影響(S3B)を著しく抑制できる。
冷却手段C1(C)は遮蔽板15に内在させた構成例であり、たとえば板厚方向に分割された部位15a、15bの間に配設される。これにより、冷却手段C1(C)は着膜から完全に隔離されているので、遮蔽板15の冷却効果は長期に安定したものとなる。
冷却手段C2(C)は遮蔽板15の裏面(基体Sと対向する面)に配された構成例である。これにより、冷却手段C1(C)は遮蔽板15の影に位置するので、着膜からほぼ隔離され、遮蔽板15の冷却効果は安定したものとなる。
このように、遮蔽板15を設けるのみでも基体Sへのスパッタ面からの入熱を抑制する(遮蔽する)効果があるが、さらに冷却手段を設けることで、より一層の基体Sへの入熱の抑制効果を期待することができる。
従来、透明導電膜において、膜形成時の成膜空間に存在する水分の膜中への取り込みにより、透明導電膜の抵抗値が劣化する(増大する、ばらつく)という問題があった。特に、基体としてPET等の樹脂シート体を用いる場合には、成膜時のスパッタ面(ターゲット表面)からの入熱によって基体から放出される水分により、透明導電膜の抵抗値が劣化するという問題が顕著であった(たとえば、特許文献3)。
さらに、基体自体への入熱が減ることにより、加熱により樹脂シート等の基体にシワが生じる問題も解消することができる。
基体Sを側断面視する方向において、図12の構成例は、以下の3点が特に図2の構成例と異なっている。
(A1)ターゲットを含む成膜手段SPが、2セット(SPA、SPB)あり、1つの平面上に並列に配されている。
(A2)2セット(SPA、SPB)ある成膜手段SPの間に、第二の遮蔽板17が配されている。
(A3)遮蔽板15の開口部の縁が、基体Sの近傍に位置するように配されている。
遮蔽板15に加えて、2セット(SPA、SPB)ある成膜手段SPの間に配置された第二の遮蔽板17を配し、この配置条件(ターゲット表面に対する遮蔽板の高さや遮蔽板の幅)を調整することにより、角度θを制御可能とした。第二の遮蔽板17は基体12S(S)の近傍に配置する(二点鎖線の位置より実線で示す位置に第二の遮蔽板17を配置する)ほど、第二の遮蔽板17はコンパクト化が図れるとともに、スパッタ粒子の回り込みを防ぐ能力も高まる。さらに、第二の遮蔽板17に図6に示される冷却手段を備える場合には、成膜領域の間においても、基体への入熱抑制の効果が期待できる。
基体Sを側断面視する方向において、図9の構成例は、以下の3点が特に図2の構成例と異なっている。
(B1)ターゲットを含む成膜手段SPが、2セット(SPA、SPB)あり、各ターゲット表面に対する法線が、移動手段MR10(111)に載置された基体Sの表面に略垂直に入射するように、列んで配されている。
(B2)2セット(SPA、SPB)ある成膜手段SPの間に、第二の遮蔽板17とともに、中間板16も配されている。
(B3)遮蔽板15(15A、15B)および第二の遮蔽板17は、チムニー14(14A、14B)とは別体をなしており、基体Sの近傍に、基体Sに沿うように配されている。
さらに、図9の構成例においては、それぞれのターゲット表面の法線方向が、移動手段MR10(111)の回転中心を向くように、2セット(SPA、SPB)のターゲット10を配置した。これにより、各ターゲットの表面と、移動手段MR10(111)に載置された基体S10(S)の被成膜面とが、各開口部(DL101、DL102)を通過する際に、略平行に対面する構成となる。その結果、前述した図8の構成に比べて、図9の構成は、飛散量の多い、入射角度の浅い(上記θで説明すると角度が小さい)スパッタ成分が多く基体に入射可能となるので、成膜速度および付着効率の更なる増加が図れる。
さらに、図8と同様、2つの成膜手段SPの間に中間板16を配することにより、2つの成膜手段SPのうち一方の成膜手段SPのエロージョン部から、他方の成膜手段SPの遮蔽板の開口部を抜けて基体に達するスパッタ粒子を遮蔽することができる。
また、図9の構成例のように、遮蔽板15および第二の遮蔽板17を、移動手段MR10(および基体S10)の曲面に倣って(曲率に合せて)配することにより、遮蔽板15および第二の遮蔽板17に冷却手段を設けた場合の基体への入熱の抑制効果や、スパッタ粒子の遮蔽板裏側への回り込み低減効果を、さらに高めることができる。このような、移動手段の曲面に倣った遮蔽板の配置は、図8の構成へも展開可能である。
遮蔽板15には開口部15Eが設けられており、開口部15Eの長手方向DLを基体Sが通過する際に、ターゲット10から出射されたスパッタ粒子が着膜することにより、矢印Kの方向に移動する基体Sの被成膜面に透明導電膜が形成される。すなわち、開口部15Eにおいて、ターゲット10のエロージョン部(のストレート部分)a、bを縦断するようにターゲット10の上空を、基体Sは通過する。
したがって、図11に示すような遮蔽板15を有するスパッタリング装置においては、基体Sは、開口部15Eの領域でスパッタ粒子に晒されるが、その側面方向から遮蔽板15が備えた冷却手段により、常時温度制御された状態とすることが可能となる。
なお、遮蔽板15の開口部15Eは、図11に示すように、一体をなす遮蔽板15に作製されても良いし、矩形部材等の組み合わせにより構成されても良い。
以下では、ITOからなる透明導電膜を形成する際のスパッタ粒子の入射角度と、形成されたITOの比抵抗との関係を調べた実験結果について説明する。
予め酸化シリコンが形成された可撓性基体Sを用い、前記酸化シリコン上にITOからなる透明導電膜を形成した。その際、酸化シリコンの膜厚は5〜10nm、透明導電膜の膜厚は20〜25nmとした。基体Sとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる部材を用いた。
移動手段MRの設定温度は、基体Sからの水の放出を低減するために、−10〜+40℃となるように制御した。
スパッタガスとしては、アルゴンと酸素を用いた。放電時に成膜室に導入したアルゴンガスの流量は700sccmであり、成膜室内の圧力は絶対圧力計による測定値で約0.3Paとした。酸素ガスについては、各条件によって最適化を図った。
基体上に成膜された直後のITO膜質はアモルファスだが、大気雰囲気中において熱処理(150℃、60分間)を施した後のITO膜のシート抵抗を評価した。
本実験例では、前述した遮蔽板の開口部を調整することにより、基体へのスパッタ粒子の最大入射角度θ[deg]を、43、65、71、74の4条件として形成したITO膜について評価した。
ここで、「ターゲットからの最大入射角度θ」とは、スパッタ時においてエロージョン部a,bから出射される粒子の進行軌跡が、ターゲット10表面の法線となす角度をθ[deg]と定義した場合、遮蔽板15に設けた開口部の縁との関係から規定される、4つの角度(θa1 、θa2、θb1、θb2)のうち、最大値をとる角度を指す。
(C1)最大入射角度θ[deg]が70を越えると、比抵抗が増大するとともに、そのバラツキも大きくなる。
(C2)最大入射角度θ[deg]を65以下(θ≦65)に設定することにより、70を超える(θ>70)場合より比抵抗の低い(300〜400[μΩ・cm])ITO膜が得られる。また、その比抵抗のバラツキも、極めて小さな範囲に収まることが分かった。
上記(C1)、(C2)の結果から、本発明に係るスパッタリング装置によれば、長手方向に移動する可撓性基体に対して、基体の長手方向における位置に依存することなく、比抵抗の低い透明導電膜を形成できることが確認された。
したがって、本発明によれば、可撓性基体に対して、比抵抗が低く、かつ、そのバラツキも小さな透明導電膜を安定して作製できる、スパッタリング装置の提供が可能となる。
Claims (6)
- 長手方向に移動する可撓性基体に透明導電膜を形成するスパッタリング装置であって、
前記基体を側断面視する方向において、該基体の被成膜面をなす一面に対向して設けられたターゲットは、該ターゲットあたり複数のエロージョン部を形成させる磁気回路を備え、かつ、該ターゲットの複数のエロージョン部が、該基板の進行方向に沿って列ぶように配されており、
スパッタ時において前記エロージョン部から出射される粒子の進行軌跡が、前記ターゲット表面の法線となす角度をθ[deg]と定義した場合、遮蔽板が、前記ターゲットと前記基体との間に配置され、かつ、何れの前記エロージョン部に対しても、前記θが65以下を満たすことを特徴とするスパッタリング装置。 - 前記基体を側断面視する方向において、前記開口部の縁をなす前記遮蔽板の端部と、前記基体の一面との離間距離[mm]が、10以下であることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
- 前記遮蔽板が、冷却手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリング装置。
- 前記基体を側断面視する方向において、前記ターゲットを2つ以上備え、各ターゲットごとに有する複数のエロージョン部が、該基板の進行方向に沿って列ぶように、それぞれのターゲットが配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスパッタリング装置。
- 前記基体と前記ターゲットとの間で、かつ、隣接するターゲット間に位置するように、第二の遮蔽板が配されていることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスパッタリング装置を用い、長手方向に移動する可撓性基体に透明導電膜を形成する方法であって、
スパッタ時において前記エロージョン部から出射される粒子の進行軌跡が、前記ターゲット表面の法線となす角度をθ[deg]と定義した場合、前記遮蔽板及び/又は前記第二の遮蔽板の配置を、前記ターゲットと前記基体との間において、何れの前記エロージョン部に対しても、前記θが65以下を満たすように調整することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
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