JP2016060263A - 電子機器の車載構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】本明細書は、電子機器を設置対象部材の上に固定する堅牢な車載構造を提供する。
【解決手段】PCU20は、フロントコンパートメントにて、車両の前後方向に並んでいるフロントブラケットとリアブラケット10によってTAハウジング30の上に固定される。リアブラケット10は、TAハウジング30に固定される基部16と、基部16から上方へ伸びている脚部15で構成される。脚部15の上端がPCU20に連結される。基部16は、TAハウジング30に設けられている上ネジ孔34に下向きに挿入されている基部ボルト14によってTAハウジング30の上に固定される。上ネジ孔34は、脚部15と基部16の連結点15aよりも車両前側に位置している。
【選択図】図3
【解決手段】PCU20は、フロントコンパートメントにて、車両の前後方向に並んでいるフロントブラケットとリアブラケット10によってTAハウジング30の上に固定される。リアブラケット10は、TAハウジング30に固定される基部16と、基部16から上方へ伸びている脚部15で構成される。脚部15の上端がPCU20に連結される。基部16は、TAハウジング30に設けられている上ネジ孔34に下向きに挿入されている基部ボルト14によってTAハウジング30の上に固定される。上ネジ孔34は、脚部15と基部16の連結点15aよりも車両前側に位置している。
【選択図】図3
Description
本発明は、電子機器の車載構造に関する。
近年、車両には様々な電子機器が搭載されるようになってきている。その例として、特許文献1には、フロントコンパートメントにて走行用モータを収容したドライブトレインの上にインバータを固定する技術が開示されている。また、特許文献2には、フロントコンパートメントにて走行用モータを収容したトランスアクスルの上にPCU(パワーコントロールユニット)を固定する技術が開示されている。インバータやPCUは電子機器の一種である。以下では、電子機器を取り付ける対象の構造物を、設置対象部材と称する。また、以下の説明において、「前」と「後」との表現は、車両の前後方向における「前」と「後」を意味する。また、「横」との表現は、車幅方向を意味する。
特許文献1と2に開示された車載構造では、いずれも、車両前後方向に並ぶフロントブラケットとリアブラケットによって電子機器が設置対象部材の上に固定されている。特許文献1、2に開示されているように、フロントブラケット及びリアブラケットは、設置対象部材に固定される部位と、その部位から上方へ伸びる脚部を有し、脚部の先端が電子機器に連結されている。以下では、ブラケットにおいて、設置対象部材に固定される部位を基部と称する。夫々のブラケットの基部は、設置対象物に設けられたネジ孔に下向きに挿入されているボルトにて設置対象部材に固定される。説明の便宜上、以下では、基部を固定するために下向きに挿入されるボルトを基部ボルトと称し、基部ボルトが係合するネジ孔を上ネジ孔と称する。また、「ボルトがネジ孔に挿入されている」という表現は、ボルトがネジ孔に係合していること含む。
特許文献2は、さらに、車両が衝突したときの衝撃から電子機器を保護する技術を開示している。特許文献2に開示された技術では、リアブラケットが変形し易いようにリアブラケットに切欠を設ける。電子機器に前方から衝突荷重が加わると、リアブラケットが変形し、電子機器が後へ動く。電子機器が後へ動くことによって電子機器に加わる衝撃が低減される。
特許文献1、2に開示されたリアブラケットは、その構造に起因して、前方または斜め前方から受ける衝突荷重に対して基部を固定する基部ボルトに偏った力が加わる。偏った力は、基部ボルトに加わるとともに、基部ボルトが係合している上ネジ孔にも加わる。基部ボルトが頑丈であっても、偏った力によって上ネジ孔がダメージを受ける場合がある。上ネジ孔がダメージを受けると基部ボルトが外れる虞がある。即ち、電子機器が外れる虞がある。本明細書は、前方からの衝突に限らず、想定される衝突荷重の方向に対して堅牢な車載構造を提供する。
理解を助けるため、まず、フロントコンパートメントにて電子機器がフロントブラケットとリアブラケットによって設置対象部材の上に固定されるケースを例に本発明を概説する。このケースでは、本発明の一実施形態を、特許文献1と2に開示された車載構造と比較しつつ理解できる。先に述べたように、特許文献1と2に開示された車載構造では、基部を固定するための基部ボルトは、設置対象部材に設けられた上ネジ孔に下向きに挿入される。そして、上ネジ孔が、リアブラケットにおける基部と脚部の連結部よりも車両後側に位置する。本明細書が開示する車載構造では、従来の車載構造とは逆に、リアブラケットを固定するための上ネジ孔を、基部と脚部の連結部よりも車両前側に配置する。そのような配置により、上ネジ孔のダメージが低減される。その理由は以下の通りである。以下では、説明の便宜上、基部と脚部の連結部を脚部連結部と称する場合がある。
従来の構造の場合、上ネジ孔が脚部連結部よりも後側に位置する。この場合、基部を設置対象部材に固定する基部ボルトが脚部連結部よりも後側に位置することになる。前方からの衝突荷重は脚部を後方へ倒すように作用する。衝突荷重は、脚部連結部を通じて基部に及ぶ。そうすると、基部は、基部ボルトより前の部位が上に持ち上げられるように力を受ける。その力は、基部ボルトに集中する。その力は、基部ボルトを上に捩り上げるように作用する。即ち、基部ボルトに偏った力が加わる。基部ボルトに偏った力が加わると、基部ボルトが係合している上ネジ孔にもその偏った力が加わる。偏った力は、上ネジ孔をこじ開けるように作用する。即ち、上ネジ孔は、偏った力によってダメージを受ける。
一方、上ネジ孔が脚部連結部よりも前側に位置する場合、基部ボルトが脚部連結部よりも前に位置することになる。衝突荷重は脚部を後方へ倒すように作用する。脚部に加わる力は、従来の車載構造の場合と同じである。しかし、その力は、脚部連結部を下方へ押すように作用する。基部ボルトには、脚部連結部を支点としたテコの力が作用する。テコの力は、ボルトをほぼ真上へ引き上げるように働く。即ち、基部ボルトには、その長手方向に力が加わる。上ネジ孔には、ネジ孔の長手方向に力が加わる。先のボルトを捩り上げるような力と比較すると、上ネジ孔が受けるダメージは低減される。こうして、想定される衝突荷重の方向に対して堅牢な車載構造が実現する。なお、この事象については、実施例にて図を参照しつつ詳しく説明する。
上ネジ孔が複数存在する場合、車両前後方向の最前の上ネジ孔と脚部連結部の関係が、上記関係を満たしていればよい。
上記説明した理論は、電子機器が、車幅方向の車両中央に近い側に位置するインサイドブラケットと遠い側に位置するアウトサイドブラケットによって設置対象部材の上に固定されている場合にも適用できる。想定される衝突荷重の方向は車幅方向で車両中央に向かう方向である。別言すれば、想定される衝突荷重の方向は、横方向または斜め前方または斜め後方である。以下に示す構造によれば、横方向または斜め前方から受ける衝突荷重に対して上ネジ孔が受けるダメージを低減することができる。インサイドブラケットは、設置対象部材に固定される基部と、脚部を備えている。脚部は、基部から上方へ伸びているとともに電子機器に連結されている。基部は、設置対象部材に設けられた上ネジ孔に下向きに挿入される基部ボルトによって設置対象部材の上に固定される。そして、上ネジ孔が、基部と脚部の連結部よりも車幅方向で車両中央から遠い側に位置している。先に述べたリアブラケットの場合と同様に、上記のインサイドブラケットは、上ネジ孔が受けるダメージを低減する。上記のインサイドブラケットを使った車載構造は、横方向または斜め前方からの衝突荷重に対して堅牢である。
なお、前方または斜め前方からの衝突荷重に対して堅牢なリアブラケットを採用するか、横方向または斜め前方または斜め後方からの衝突荷重に対して堅牢なインサイドブラケットを採用するかは、フロントコンパートメント内における電子機器と他のデバイスのレイアウトに応じて決めればよい。また、本明細書が開示するリアブラケットとインサイドブラケットを一緒に使うことも好適である。
上記した理論は、リアコンパートメントにてフロントブラケットとリアブラケットによって設置対象部材の上に固定される電子機器にも適用することができる。想定される衝突荷重の方向は、車両後方から前方へ向かう方向、または斜め後方から反対の斜め前方へ向かう方向である。その場合は、フロントコンパートメントにてフロントブラケットとリアブラケットによって電子機器が設置対象部材の上に固定される場合の逆である。即ち、フロントコンパートメントの場合とは逆にフロントブラケットが次の構造を有していれば、想定される衝突荷重の方向に対して電子機器を堅牢に搭載できる。フロントブラケットは、設置対象部材の上に固定されている基部と、その基部から上方に伸びているとともに電子機器に連結されている脚部を備える。フロントブラケットの基部は、設置対象部材に設けられている上ネジ孔に下向きに挿入されている基部ボルトによって設置対象部材の上に固定される。そして、フロントブラケットを固定するための上ネジ孔が、基部と脚部の連結部よりも車両後側に位置している。
上記3つの事例には、共通点がある。今、想定される衝突荷重の方向を下流と規定し、反対側を上流と規定する。そうすると、フロントコンパートメントでは、想定される衝突荷重の方向は車両前側から車両後側に向かう方向、または、斜め前方から反対の斜め後方に向かう方向となる。上記の定義に従うと、車両前側が上流側に相当し、車両後側が下流側に相当する。従って、フロントブラケットが上流側ブラケットに相当し、リアブラケットが下流側ブラケットに相当する。
車幅方向の衝突荷重を想定した場合、想定される衝突荷重の方向は車幅方向で車両中央から遠い方から車両中央へ向かう方向となる。その場合、車幅方向の車両中央に近い側が下流側に相当し、遠い側が上流側に相当する。そうすると、アウトサイドブラケットが上流側ブラケットに相当し、インサイドブラケットが下流側ブラケットに相当する。さらにまた、リアコンパートメントでは、想定される衝突荷重の方向は、車両後側から車両前側に向かう方向または斜め後方から反対の斜め前方向かう方向となる。その場合、車両後側が上流側に相当し、車両前側が下流側に相当する。リアコンパートメントにてフロントブラケットとリアブラケットで電子機器を固定する場合、フロントブラケットが下流側ブラケットに相当する。
上記した事例では、いずれも、着目したブラケットは、複数のブラケットのうち、最下流に位置する下流側ブラケットである。そして、「上流」/「下流」という表現を使うと、いずれの事例でも下流側ブラケットの構造は次のように表現することができる。下流側ブラケットは、設置対象部材の上に固定されている基部と、その基部から上方に伸びているとともに電子機器に連結されている脚部を備えている。基部は、設置対象部材に設けられている上ネジ孔に下向きに挿入されている基部ボルトによって設置対象部材の上に固定されている。そして、上ネジ孔が、基部と前記脚部の連結部よりも上流側に位置している。そのような下流側ブラケットを用いた車載構造は、下流側ブラケットが外れ難く、衝突荷重の方向に対して堅牢である。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
(第1実施例)図面を参照して第1実施例の車載構造を説明する。第1実施例の車載構造は、走行用にモータ2とエンジン98の双方を備えたハイブリッド車100に適用されている。第1実施例の車載構造における搭載対象の電子機器は、モータ2に電力を供給するパワーコントロールユニット20である。また、電子機器を搭載する設置対象部材は、トランスアクスルハウジング30である。以下では、説明の便宜上、パワーコントロールユニット20をPCU20と略して表す。また、トランスアクスルハウジング30をTAハウジング30と略して表す
図1に、ハイブリッド車100のフロントコンパートメント90におけるデバイスの配置を示す。なお、図中の座標系は、F軸が車両前方を示しており、V軸が車両上方を示しており、H軸は車幅方向(車両の側方)を示している。座標系の記号の意味は、以降の図でも同じである。
フロントコンパートメント90には、エンジン98のほか、PCU20、TAハウジング30などが配置されている。フロントコンパートメント90には他にも様々なデバイスが配置されているが、それらの図示は省略する。。図1ではTAハウジング30やエンジン98などは模式化して描かれていることに留意されたい。
モータ2は、TAハウジング30に収容されている。従ってTAハウジング30は、別言すれば、モータを収容するハウジング(モータハウジング)である。TAハウジング30は、例えば、アルミニウムのダイキャスト製である。あるいは、TAハウジングは、アルミニウムの削り出しで作られる。TAハウジング30には、さらに、エンジン98の出力トルクとモータ2の出力トルクを合成/分配する動力分配機構3が収容されている。デファレンシャルギア4もTAハウジング30に収容されている。デファレンシャルギア4は、車両がカーブを走行する際、左右の前輪に回転数差を付けつつ、動力を伝達する。動力分配機構3は、エンジン98の出力トルクとモータ2の出力トルクを合成してデファレンシャルギア4へ出力する。動力分配機構3は、状況に応じて、エンジン98の出力トルクを分割してデファレンシャルギア4とモータ2へ伝達する。この場合、ハイブリッド車100は、エンジントルクで走行しながらモータ2によって発電する。ハイブリッド車100は、また、制動時の車両の減速エネルギを使ってモータ2により発電する。発電で得た電力でバッテリを充電する。
エンジン98とTAハウジング30は、両者が車幅方向で隣り合うように連結されている。エンジン98とTAハウジング30は、車両の構造強度を担保するサイドメンバ96に懸架されている。図1では1本のサイドメンバ96のみが描かれているが、図1においてエンジン98の左下にも別のサイドメンバが伸びている。エンジン98とTAハウジング30は、2本のサイドメンバの間に懸架されている。
PCU20は、電力をモータ2へ供給する。より詳しくは、PCU20は、不図示の高圧バッテリの電力を昇圧した後、交流に変換してモータ2へ供給する。即ち、PCU20は、電圧コンバータ回路とインバータ回路を内蔵している。PCU20は、また、モータ2が発電した交流電力を直流電力に変換した後に降圧して高圧バッテリを充電する機能も有する。PCU20は、電力変換器の一種である。PCU20は、TAハウジング30の上に固定されている。
図1とともに図2を参照してTAハウジング30とPCU20の関係を詳しく説明する。図2は、第1実施例の車載構造9の全体図である。また、図2は、TAハウジング30とPCU20の側面図を示している。「側面」とは、車幅方向(図中のH軸方向)から見たときの図に相当する。
先に述べたように、TAハウジング30には、モータ2と動力分配機構3とデファレンシャルギア4が収容されている。TAハウジング30の内部では、モータ2の出力軸2aと動力分配機構3の主軸3aとデファレンシャルギア4の主軸4aが平行に並んでいる。それら3本の軸は車幅方向に伸びている。図2に示すように、3本の軸は、車幅方向からみて三角形をなすように配置されている。3本の軸の配置のため、TAハウジング30の上面30aは、前下がりに傾斜している。それゆえ、上面30aに固定されるPCU20も、前下がりに傾斜して配置される。なお、「PCU20が前下がりである」とは、PCU20の前端の地上高さが後端の地上高さよりも低いことを意味する。
PCU20は、車両前後方向に並んで配置されているフロントブラケット40とリアブラケット10によりTAハウジング30の上に固定されている。PCU20とTAハウジング30の間には、隙間Haが確保されている。この隙間Haは、フロントブラケット40とリアブラケット10によって確保される。また、PCU20とTAハウジング30は、6本のパワーケーブル21で繋がっている。パワーケーブル21は、モータ2へ電力を送るためのワイヤハーネスである。説明を省略したが、TAハウジング30には2個の3相交流モータが収容されており、6本のパワーケーブルは2組の3相交流を伝送する。
フロントブラケット40の一端が基部ボルト44によってTAハウジング30の上面30aに固定され、フロントブラケット40の他端がPCUボルト43によってPCU20の前面20aに連結される。フロントブラケット40とPCU20の前面20aとの間には防振ブッシュ42が挟まれている。フロントブラケット40は、車幅方向に並んだ2個の基部ボルト44によってTAハウジング30に固定される。また、フロントブラケット40は、車幅方向に並んだ2個のPCUボルト43によってPCU20に連結される。2個の基部ボルト44が車幅方向に並んでいることは図1に示されている。また、2個のPCUボルト43が車幅方向に並んでいることも図1に示されている。フロントブラケット40は、金属板(鋼板)のプレス加工で作られている。
リアブラケット10は、TAハウジング30に固定される基部16と、基部16から上方へ伸びている脚部15を備える。なお、リアブラケット10は、一つの金属板(鋼板)で作られるが、便宜上、基部16と脚部15の2つのパーツに分けて説明する。基部16は、下向きに挿入される基部ボルト14によってTAハウジング30の上に固定される。脚部15の上部がPCUボルト13によってPCU20の後面20bに連結される。脚部15とPCU20の後面20bとの間には防振ブッシュ12が挟まれている。防振ブッシュ42、12は、TAハウジング30の振動からPCU20を保護するために備えられている。
なお、フロントブラケット40と同様に、リアブラケット10は、車幅方向に並んだ2個の基部ボルト14によってTAハウジング30に固定されており、車幅方向に並んだ2個のPCUボルト13によりPCU20に連結されている。リアブラケットの車幅方向の構造の一例は、第2実施例にて斜視図を使って説明する。
図3を参照してリアブラケット10のTAハウジング30への取付構造を詳しく説明する。図3は、リアブラケット10の断面図である。なお、図3では、PCU20を仮想線で示していることに留意されたい。また、図2では、脚部15は前傾しており、PCU20は前下がりに傾斜しているが、図3では、理解を助けるため、脚部15は直立するように描いてあり、PCU20は水平に描いてある。さらに、図3では、防振ブッシュ12の図示を省略している。
TAハウジング30の上面30aには、上ネジ孔34が設けられている。基部16には、上ネジ孔34に対向するように貫通孔16aが設けられている。基部ボルト14は、貫通孔16aを通過して下向きに上ネジ孔34に挿入される。下向きに挿入される基部ボルト14により、基部16、即ちリアブラケット10がTAハウジング30の上に固定される。先に述べたように、リアブラケット10の脚部15は、基部16から上方に伸びている。上ネジ孔34は、基部16と脚部15の連結部(脚部連結部15a)よりも車両前側に位置している。
上記した車載構造9の利点を、従来の車載構造と比較して説明する。図4と図5に、従来の車載構造909におけるリアブラケットの側面図を示す。図5は、PCU20が正面から衝突荷重Wsを受けたときのリアブラケット910の変形を示している。また、図5は、PCU20が正面から衝突荷重Wsを受けたときにリアブラケット110が受ける力も示している。この実施例では、想定される衝突荷重の方向は、車両前方から後方へ向かう方向である。先の定義に従うと、車両前側が「上流側」に相当し、車両後側が「下流」に相当する。リアブラケット110が下流側ブラケットに相当する。
リアブラケット910は、TAハウジング930の上面930aに固定されている基部916と、基部916から上方に伸びている脚部915を有している。脚部915の上端がPCU20に連結されている。第1実施例のリアブラケット10と同様に、リアブラケット910は一枚の金属板で作られており、基部916と脚部915という表現は、便宜上の区分である。基部916は、貫通孔916aを有している。TAハウジング930の上面930aには上ネジ孔934が設けられている。リアブラケット910は、基部ボルト914によってTAハウジング930の上に固定されている。基部ボルト914は、基部916の貫通孔916aを通過して上ネジ孔934に下向きに挿入される。上ネジ孔934は、基部916と脚部915の連結部(脚部連結部915a)よりも車両後側(即ち下流側)に位置している。
車両が正面衝突すると、あるいは斜め衝突すると、PCU20は前方から後方に向かう衝突荷重Wsを受ける。リアブラケット910の脚部915も衝突荷重Wsを受ける。衝突荷重Wsは、脚部連結部915aを通じて基部916に伝達される。それゆえ、衝突荷重Wsは、基部916の基部ボルト914よりも前の部位を上に持ち上げるように作用する。その力は基部ボルト914に集中する。図5に示すように、基部916の基部ボルト914よりも前の部位が持ち上がるように変形する。基部916の前端Paが僅かでも上方に持ち上がると、上ネジ孔934の近傍(例えば図のポイントPf)を支点として、基部ボルト914にはテコの力Nsが作用する。ポイントPfと基部ボルト914は極めて近い。このことは、テコの支点と作用点の間の距離が極めて短いことを意味する。支点と作用点の距離が短いほど、テコの力Nsは大きくなる。しかも、基部916の前端Paが上方に持ち上がると、テコの力Nsは上後方を向く。即ち、基部ボルト914と上ネジ孔934に傾いた力Nsが作用する。傾いた力Nsは、上ネジ孔934をこじ開けるように作用する。そうすると、上ネジ孔934の開口が拡げられるとともに、上ネジ孔934のネジ溝が局所的に潰れる。傾いた力Nsにより、上ネジ孔934は、ネジ溝が潰れるようなダメージを受ける。ネジ溝が潰れると基部ボルト914と上ネジ孔934との係合力が弱まる。場合によっては、基部ボルト914が抜ける虞がある。
さらに、例えば基部916の前端Paが上方に長さLn持ち上がると、衝突荷重Wsが基部ボルト914に及ぼすモーメントのアームが長くなる。このことは、衝突荷重Wsによるモーメントが大きくなることを意味する。モーメントの増大も、力Nsを偏らせることに寄与する。
次に、図6と図7を参照して第1実施例の車載構造9の場合を説明する。図6は、リアブラケット10の側面図を示している。図6は、図3において基部ボルト14を上ネジ孔34に挿入した図に相当する。図7は、PCU20が正面から衝突荷重Wsを受けたときのリアブラケット10の変形を示している。また、図7は、PCU20が正面から衝突荷重Wsを受けたときにリアブラケット10が受ける力も示している。前述したように、TAハウジング30の上ネジ孔34は、リアブラケット10の脚部連結部15aよりも車両前方(即ち上流側)に位置する。リアブラケット10が下流側ブラケットに相当する。
車両が正面衝突すると、PCU20は前方から後方に向けて衝突荷重Wsを受ける。リアブラケット10の脚部15も衝突荷重Wsを受ける。衝突荷重Wsは、基部16の後端Peを下げるように作用する。しかし、基部16の後端PeはTAハウジング30に接触している。それゆえ、基部16の後部は、図7の符号Bdが示すように変形する。基部ボルト14と上ネジ孔34には、基部16の後端Peを支点としたテコの力が作用する。テコの力Nsは、図7において右上を向くように作用する。ただし、支点(基部16の後端Pe)と基部ボルト14までの長さLsにより、テコの力Nsの方向と図中のV軸方向とがなす角度は小さい。さらに、図7に示すように、符号Bbが示す箇所の変形により、基部ボルト14には符号Msが示すモーメントが作用する。このモーメントMsは、テコの力Nsの方向を図中の左上にシフトさせる向きに作用する。先に述べたように衝突荷重Wsによるテコの力Nsの方向は、図中で右上方向を向く。モーメントMsは、テコの力Nsの方向を図中のV軸方向に引き戻す。その結果、テコの力Nsは、概ね、基部ボルト14の長手方向に沿って作用するようになる。ボルトのネジ山とネジ孔のネジ溝との係合は、ボルトの長手方向の力に対して極めて強い。基部ボルト14の長手方向に作用するテコの力Nsに対して上ネジ孔34は良く持ちこたえる。基部16の少なくとも一部が、上ネジ孔34よりも車両後側でTAハウジング30の上面30aと接していれば、上記の効果を得ることができる。好ましくは、脚部連結部15aの直下で基部16がTAハウジング30の上面と接しているのがよい。
符号Lsは、後端Peから基部ボルト14までの長さを表している。長さLsが基部ボルト14と上ネジ孔34に作用するモーメントのアームの長さに相当する。従来の車載構造の場合では、基部ボルト914に作用するモーメントのアームの長さは、ポイントPfと基部ボルト914との間の距離であった(図5参照)。図5と図7を対比すると明らかであるとおり、第1実施例において基部ボルト14に作用するモーメントは、従来の車載構造909に比べてはるかに小さい。このことも、第1実施例の車載構造が上ネジ孔34が受けるダメージを低減することに寄与する。
図5は、テコの力Nsにより基部ボルト914のボルトヘッドが浮き上がった状態を示している。図8に、基部ボルト914のボルトヘッドが浮き上がる前の様子を示す。図8は、基部ボルト914よりも前端Paに近い側(図中のポイントPg)を支点として基部916が変形している様子を示している。この場合、基部ボルト914のボルトヘッドには、図に示すモーメントMsが作用する。このモーメントMsは、テコの力Nsの向きを、図中の右上にシフトするように作用する。このモーメントMsは、衝突荷重Wsによるテコの力NsのV軸からの傾きを大きくする方向に作用する。その結果、基部ボルト914に作用するテコの力Nsはボルト長手方向から益々傾くことになる。その結果、上ネジ孔934が被るダメージが大きくなる。
さらにまた、先に述べたように、実施例の車載構造9では、衝突荷重Wsは、基部16の後端Peを下げるように作用する(図7参照)。即ち、衝突荷重Wsは、後端PeとTAハウジング30の上面30aと間の力の相互作用を経て基部ボルト14に作用する。衝突荷重Wsは、後端PeとTAハウジング30の上面30aと間の摩擦などで減衰した後に基部ボルト14に伝達される。一方、図4、図5、図8に示した従来の車載構造909では、そのような衝突荷重Wsの減衰は期待できない。このように、図5の状況であっても図8の状況であっても従来の車載構造909におけるリアブラケット910は、実施例の車載構造9におけるリアブラケット10よりも大きなダメージを受ける可能性がある。
図3−図8を参照して説明したように、第1実施例の車載構造9は、上ネジ孔34が受けるダメージが従来の車載構造909よりも小さくなることが期待できる。正面からの衝突荷重に対してリアブラケット10は従来のリアブラケット910と比較して頑丈である。第1実施例の車載構造9は、想定される衝突荷重の方向に対して、従来の車載構造909と比べて堅牢である。なお、衝突荷重Wsによって基部ボルト14に加わるせん断力は、図5の場合と図7の場合で同じである。基部ボルト14に加わるせん断力は同じであっても、第1実施例における基部ボルト14に作用するテコの力Nsは、従来の車載構造909の場合と比較して遥かに小さくなる。
次に、PCU20とフロントブラケット40との間に防振ブッシュ42を備えるとリアブラケット10に加わる負荷が大きくなることを説明する。前述したように、フロントブラケット40とPCU20の間には防振ブッシュ42が挟まれており、リアブラケット10とPCU20の間には防振ブッシュ12が挟まれている。防振ブッシュ12、42の本体は弾性体である。弾性体は典型的にはゴムである。PCU20が前方から衝突荷重を受けると、前方の防振ブッシュ42は伸び、後方の防振ブッシュ12は縮む。このことは、PCU20が前方から受ける衝突荷重をフロントブラケット40がほとんど支えないことを意味する。PCU20が前方から受ける衝突荷重の大部分はリアブラケット10が支える。従ってリアブラケット10の堅牢性が重要となる。このように、電子機器が防振ブッシュを挟んで2個のブラケットで支持される車載構造において、本明細書が開示する技術は特に有効である。
(第2実施例)図9−図11を参照して第2実施例の車載構造を説明する。第2実施例においても、搭載する電子機器は、パワーコントロールユニット20(PCU20)であり、設置対象部材はトランスアクスルハウジング130(TAハウジング130)である。図9は、第2実施例の車載構造9aの全体を示す図である。また、図9には、TAハウジング130とPCU20の側面が示されている。TAハウジング130は、リアブラケット110の取付部位を除き、第1実施例におけるTAハウジング30と同じ構造を有している。PCU20、フロントブラケット40は、第1実施例の場合と同じである。第2実施例も、第1実施例と同様に、想定される衝突荷重の方向は、車両前方から後方に向かう方向である。従って車両前側が上流側に相当し、車両後側が下流側に相当する。リアブラケット110が下流側ブラケットに相当する。
第2実施例の車載構造9aでは、リアブラケット110の形状が第1実施例とは異なる。リアブラケット110は、補強部材116と、脚部115の2個のパーツで構成されている。補強部材116は、第1実施例における基部16に対応する。補強部材116は、TAハウジング130の上面130aと後面130bに沿って湾曲している。補強部材116は、基部ボルト114と補助ボルト118によってTAハウジング130に固定される。補強部材116とは別のパーツの脚部115は、脚部ボルト117によって補強部材116に連結される。脚部115は、補強部材116から上方に伸びるように、補強部材116に連結される。脚部115の上部がPCUボルト13によってPCU20に連結される。脚部115とPCU20の後面20bの間には防振ブッシュ12が挟まれている。
図10に、リアブラケット110の断面図を示す。図10には、TAハウジング130のリアブラケット付近の断面も描いてある。また、図10では、脚部115の上方の図示は省略している。
補強部材116の前部には貫通孔116aが設けられている。貫通孔116aは、TAハウジング130の上面130aに設けられた上ネジ孔134と対向するように設けられている。補強部材116は、基部ボルト114によって、TAハウジング130の上に固定される。基部ボルト114は、貫通孔116aを通過し、上ネジ孔134に下向きに挿入される。補強部材116の少なくとも一部は、上ネジ孔134よりも車両後側でTAハウジング130の上面130aに接している。より具体的には、脚部連結部に相当する脚部ボルト117の直下で補強部材116がTAハウジング130の上面130aに接している。
補強部材116の後部には貫通孔116bが設けられている。貫通孔116bは、TAハウジング130の後面130bに設けられた後面ネジ孔138に対向するように設けられている。補強部材116は、補助ボルト118によってTAハウジング130の後面130bに固定される。補助ボルト118は、貫通孔116bを通過し、後面ネジ孔138に前向きに挿入される。このように、補強部材116は、TAハウジング130の上面130aと後面130bにて固定される。
補強部材116の貫通孔116aよりも後方には、前方よりも板厚が大きい板厚部116dが設けられている。補強部材116の板厚部116dの上面には、基部ネジ孔116cが設けられている。板厚部116dにより、基部ネジ孔116cは深くなっている。脚部115には、基部ネジ孔116cと対向する位置に貫通孔115cが設けられている。脚部115は、脚部ボルト117によって補強部材116に連結される。脚部ボルト117は、貫通孔115cを通過し、基部ネジ孔116cに下向きに挿入される。
補強部材116は、金属厚板で作られている。補強部材116の強度は、TAハウジング130の強度よりも高い。特に、補強部材116は、靭性に関する強度がTAハウジング130の強度よりも高い。靭性は、物質破壊に対する仕事量(エネルギ)を意味する。靭性の評価方法には、シャルピー衝撃試験、アイゾット衝撃試験などがある。あるいは、靭性に関する強度は、耐力(特に0.2%耐力)で評価されることもある。補強部材116の強度は、上記した1つあるいは複数の評価基準において、TAハウジング130の強度よりも高い。補強部材116は例えば鋼板で作られており、TAハウジング130は例えばアルミニウムで作られている。純アルミニウム(合金番号A1050)の0.2%耐力は約100[Nm2]である。一方、鋼板(合金番号SS400)の0.2%耐力は200[Nm2]を超える。
TAハウジング130の材料は、重量、及び、モータやデファレンシャルギアなどの収容するデバイスを考慮して選定される。即ち、TAハウジングの材料は、PCUの車載構造を考慮して選択することはできない。TAハウジング130は、その大きさと強度の観点から、一般的にはアルミニウムで作られることが多い。一方、リアブラケット110を構成する補強部材116の材料は、PCUの車載構造への要求に応じて選択することができる。先に述べたように、リアブラケットには大きな衝突荷重が加わる。それゆえ、補強部材116には、TAハウジング130の材料よりも強度が高い材料を採用することができる。先に述べたように、補強部材116には、例えば、アルミニウムよりも0.2%耐性が高い鋼板が採用される。補強部材116の比重はTAハウジング130の比重よりも遥かに大きい。しかし、補強部材116はTAハウジング130よりも体格が遥かに小さいので、車両全体の重量に及ぼす影響は小さい。
図10に示されているように、脚部115は、貫通孔115cが設けられた平板部と、平板部の前縁から上方へ立ち上がっている立設部を有する。平板部と立設部の連結部を立ち上がり部115aと称する。基部ネジ孔116cと立ち上がり部115aとの位置関係は、従来のリアブラケットにおける上ネジ孔と脚部連結部との位置関係に似ている。このことは、図10と図4を参照するとよく理解される。しかし、補強部材116には、TAハウジングよりも強度が高い材料を採用することができる。それゆえ、脚部ボルト117と基部ネジ孔116cとの間には充分な係合力を確保することができる。基部ネジ孔116cは、TAハウジング130に設けられた上ネジ孔134よりも車両後方側に位置している。前方から受ける衝突荷重は、脚部ボルト117と基部ネジ孔116cの係合力で受ける。基部ネジ孔116cに係合する脚部ボルト117が、第1実施例の脚部連結部に対応する。脚部連結部(即ち脚部ボルト117)を通じて上ネジ孔134に作用する力は、補強部材116の前端を浮かすようには作用しない。上ネジ孔134と脚部連結部(即ち脚部ボルト117)の関係は、第1実施例の上ネジ孔34と脚部連結部15aとの関係と同じとなる。即ち、上ネジ孔134は、脚部連結部(即ち脚部ボルト117)よりも車両前側(即ち上流側)に位置する。従って、第1実施例と同様に、第2実施例の車載構造9aも、上ネジ孔134が受けるダメージを低減することができる。
また、補強部材116は、前向きに挿入される補助ボルト118によって、TAハウジング130の後面130bと結合される。前向きに挿入される補助ボルト118が、前方から作用する衝突荷重の一部を支える。このことは、上ネジ孔134のダメージ低減に寄与するとともに、基部ボルト114が受けるせん断力の低減にも寄与する。
図11に、リアブラケット110の分解斜視図を示す。図2に示すように、脚部115は、立ち上がり部115aから上方で二股に分かれている。二股の夫々が、PCUボルト13によってPCU20に連結される。別言すれば、リアブラケット110では、2個のPCUボルト13が車幅方向(図中のH軸方向)に並んでいる。この車幅方向に並んでいる複数のPCUボルト13によって、リアブラケット110はPCU20に連結される。また、車幅方向に2個の脚部ボルト117が並んでいる。2個の脚部ボルト117に対向して、補強部材116の上面には2個の基部ネジ孔116cが設けられている。複数の脚部ボルト117と複数の基部ネジ孔116cとの係合により、脚部115が補強部材116に連結される。
4個の基部ボルト114が車幅方向に並んでいる。図示は省略しているが、これら4個の基部ボルト114に対応して、TAハウジング130の上面130aには、車幅方向に並ぶ4個の上ネジ孔134が設けられている。これら4個の基部ボルト114と上ネジ孔134(図11には不図示)が係合し、リアブラケット110がTAハウジング130に強固に固定される。なお、複数の補助ボルト118と後面ネジ孔138との係合も、リアブラケット110のTAハウジング130への強固な固定に寄与する(図10参照)。
4個の補助ボルト118が車幅方向に並んでいる。夫々の補助ボルト118に対応して、補強部材116の後面に貫通孔116bが設けられている。夫々の補助ボルト118は、貫通孔116bを通過し、前向きにTAハウジング130の後面130bの後面ネジ孔138に挿入される。
脚部115は、金属板で作られている。脚部115は、強度を高めるため、車幅方向の両端にリブ115bが設けられている。補強部材116の後面には、上下方向に伸びる2個のリブ116fが設けられている。リブ116fは、補強部材116の強度を高めるために設けられている。
(第1変形例)図12を参照して車載構造の第1の変形例を説明する。第1変形例も、搭載する電子機器はPCUであり、設置対象部材はTAハウジングである。図12は、第1変形例の車載構造9bの全体を示す図である。この車載構造9bは、TAハウジング230の上にPCU20を搭載する構造である。TAハウジング230は、実施例と同様に、モータ2と動力分配機構3とデファレンシャルギア4を収容している。TAハウジング230の上面230aは、前下がりに傾斜している。PCU20は、TAハウジング230の上面230aに沿って、前下がりに傾斜するように支持されている。PCU20は、フロントブラケット40とリアブラケット210でTAハウジング230の上に固定されている。リアブラケット210は、TAハウジング230の上に固定される補強部材216と、補強部材216に連結される脚部215で構成されている。補強部材216は、第2実施例の場合と同じく、TAハウジング230の材料よりも強度が高い材料で作られている。脚部215は、補強部材216に下向きに挿入される脚部ボルト217で補強部材216に連結されている。脚部215は、補強部材216から上方へ伸びている。脚部215の上部がPCU20に連結されている。本変形例は、補強部材216の形状が、第2実施例の車載構造9aにおける補強部材116の形状と異なる。その他は第2実施例の車載構造と同一である。補強部材216は、第1実施例の基部16に対応する。
補強部材216は、TAハウジング230の側面に沿って伸びる側方板216gを備えている。補強部材216は、基部ボルト214と補助ボルト218によってTAハウジング230に固定されている。基部ボルト214は、下向きにTAハウジング230に挿入されている。補助ボルト218は、側方板216gを通過して車幅方向にTAハウジング230に挿入されている。図示は省略するが、車載構造9bにおける上ネジ孔と脚部連結部(即ち脚部ボルト217)との関係は、第2実施例と同じである。第2実施例の車載構造9aと第1変形例の車載構造9bの特徴は、包括的に次のように表すことができる。リアブラケットの基部は、TAハウジングの後面と側面の少なくとも一方に水平方向に挿入される補助ボルトによってTAハウジングに固定される。もちろん基部は、下向きに挿入される基部ボルトによってもTAハウジングに固定される。補強部材116又は補強部材216が基部に相当する。なお、基部(補強部材)は、TAハウジングの上面と後面と側面の両方において補助ボルトで固定されていてもよい。
第2実施例の車載構造9aと第1変形例の車載構造9bの特徴は、包括的に次のように表すこともできる。リアブラケットの基部は、TAハウジングの後面と側面の少なくとも一方に、基部ボルトの挿通方向とは異なる方向で挿入される補助ボルトによってTAハウジングに固定される。即ち、この表現によれば、補助ボルトの挿通方向は基部ボルトの挿通方向と異なっていればよく、水平方向に限られない。基部は、上面以外で補助ボルトによってTAハウジングに固定されていればよい。
(第2変形例)図13を参照して車載構造の第2の変形例を説明する。図13は、第2変形例の車載構造9cの全体を示す図である。この車載構造9cは、上面が水平なTAハウジング230の上にPCU20を搭載する構造である。TAハウジング330の上面330aが水平であるので、その上に固定されるPCU20も水平を保つように、TAハウジング330の上に固定される。その他は第2実施例の車載構造9aと同じである。リアブラケット310は、補強部材316と脚部315で構成されている。脚部315は、下向きに挿入される脚部ボルト317で補強部材316に固定されている。脚部315は、補強部材316から上方へ伸びている。脚部315の上部がPCU20に連結されている。補強部材316は、第2実施例の場合と同じく、TAハウジング330の材料よりも強度が高い材料で作られている。また、第2実施例の場合と同様に、補強部材316は、TAハウジング330に下向きに挿入される基部ボルト314と、前向きに挿入される補助ボルト318によってTAハウジング330に固定される。なお、リアブラケット310の脚部315は、第2実施例の脚部115よりも垂直に近く立ち上がっている。その他の構造は第2実施例の車載構造と同じである。この車載構造9cも、第2実施例の車載構造9aと同じ効果を奏する。
(第3変形例)図14を参照して車載構造の第3の変形例を説明する。図14は、第3変形例の車載構造9dにおけるリアブラケット410の断面を示している。リアブラケット410は、TAハウジング430の上面430aに固定される基部416と、基部416から上方へ伸びている脚部415で構成されている。リアブラケット410は、一枚の金属から作られているが、説明の便宜上、基部416と脚部415に分ける。図14では、PCU20は破線で描いてある。
第3の変形例の車載構造9dは、リアブラケット410の基部416が第1実施例の基部16よりも後方に長い点で第1実施例の車載構造9と異なる。その他は、第1実施例の車載構造9と同じであるので説明を省略する。この変形例でも、想定される衝突荷重の方向は、車両前方から後方に向かう方向である。即ち、車両前側が上流側に相当し、車両後側が下流側に相当する。
基部416は、前後方向に並んだ2個の貫通孔416a、416bを備える。2個の貫通孔416a、416bに対応して、TAハウジング430の上面430aには、前後方向に並んだ2個の上ネジ孔434a、434bが設けられている。上ネジ孔434aに貫通孔416aが対応し、上ネジ孔434bに貫通孔416bが対応する。基部416は、基部ボルト414a、414bによってTAハウジング430の上に固定される。基部ボルト414aは、貫通孔416aを通過して上ネジ孔434aに下向きに挿入される。基部ボルト414bは、貫通孔416bを通過して上ネジ孔434bに下向きに挿入される。基部416と脚部415の連結部(脚部連結部415a)は、上ネジ孔434aと上ネジ孔434bの前後方向の間に位置する。上ネジ孔434aは、脚部連結部415aよりも車両前側に位置しているが、上ネジ孔434bは、脚部連結部415aよりも車両後側に位置している。このような場合、車両前後方向の最前の上ネジ孔434aが、第1実施例と同じ条件を満足していればよい。即ち、上ネジ孔434bの位置に関わらず、上ネジ孔434aが、脚部連結部415aよりも車両前側に位置していればよい。第1実施例と同様に上ネジ孔434aが受けるダメージが低減される。基部ボルト414bと上ネジ孔434bは、基部ボルト414aよりも後方で基部416を固定している。車両前方から衝突荷重を受けたときに上ネジ孔434bよりも前方で基部が浮き上がることはない。それゆえ、後方に位置する上ネジ孔434bは、第1実施例の条件が成立せずとも、大きなダメージを受けることはない。
このように、上ネジ孔が車両前後方向に複数設けられている場合には、車両前後方向の最前の上ネジ孔が、脚部の立ち上がり箇所よりも車両前側に位置していればよい。この変形例では、想定される衝突荷重の方向に対して車両前側が上流側に相当し、車両後側が下流側に相当する。従って、上ネジ孔が、想定される衝突荷重の方向に沿って複数設けられている場合には、最上流の上ネジ孔が、脚部の立ち上がり箇所よりも上流側に位置していればよい。
(第3実施例)次に図15と図16を参照して第3実施例の車載構造を説明する。第3実施例も、電子機器はパワーコントロールユニット(PCU)であり、設置対象部材はトランスアクスルハウジング(TAハウジング)である。第3実施例の車載構造9eは、車幅方向に並ぶインサイドブラケット510とアウトサイドブラケット540によってPCU20をTAハウジング530の上に固定する構造である。この場合に想定される衝突荷重の方向は、車幅方向である。従って、車幅方向で車両中央に近い側が下流側に相当し、車両中央から遠い側が上流側に相当する。
図15は、車載構造9eの全体を示す図である。図15は、ハイブリッド車200を正面から見た図でもある。図15は、フロントコンパートメントに配置されたデバイスを実線で示してあり、ハイブリッド車200の輪郭を二点破線で描いてある。図15は、フロントコンパートメントに配置されている一部のデバイスの図示を省略していることに留意されたい。図16は、図15において符号Aが示す破線の領域を拡大した図である。図16は、図15にて符号Aが示す範囲の拡大図である。図16は、インサイドブラケット510とその付近の拡大図である。
フロントコンパートメントには、エンジン598とTAハウジング530とPCU20が搭載される。エンジン598とTAハウジング530は、車幅方向(図中のH軸方向)で隣り合うように連結されている。エンジン598とTAハウジング530は、車体の構造強度を担保する2本のサイドメンバ96の間に懸架されている。エンジン598とTAハウジング530は、防振マウント99を介して2本のサイドメンバ96の間に懸架されている。PCU20は、インサイドブラケット510とアウトサイドブラケット540によってTAハウジング530の上に固定されている。図15において、破線の直線CLは、車幅方向の車両中央を示している。インサイドブラケット510は、車幅方向にてアウトサイドブラケット540よりも車両中央CLの近くに配置されている。逆にいえば、アウトサイドブラケット540は、車幅方向にてインサイドブラケット510よりも車両中央CLから遠い側に配置されている。従って、インサイドブラケット510が下流側ブラケットに相当する。なお、車両中央CLは、車両を正面からみたときの車両中心に対応する。
図16を参照して、インサイドブラケット510の構造を説明する。インサイドブラケット510は、基部516と脚部515を備えている。インサイドブラケット510は一枚の金属板で作られているが、説明の都合上、基部516と脚部515に分ける。脚部515は、基部516から上方へ伸びている。脚部515は、その上部がPCU20の側面20cに連結している。脚部515とPCU20の側面20cとの間には、防振ブッシュ512が挟まれている。なお、アウトサイドブラケット540とPCU20の側面との間にも防振ブッシュが挟まれている。防振ブッシュは512は、TAハウジング530の振動からPCU20を保護する。
一方、TAハウジング530の上面530aには、上ネジ孔534が設けられている。基部516は、基部ボルト514によって、TAハウジング530の上に固定されている。基部516には貫通孔516aが設けられている。基部ボルト514は、貫通孔516aを通過して上ネジ孔534に下向きに挿入される。上ネジ孔534は、基部516と脚部515の連結部(脚部連結部515a)よりも車幅方向で車両中央CLから遠い側に位置している。即ち、上ネジ孔534は、想定される衝突荷重の方向に対して、基部516と脚部515の連結部(脚部連結部515a)よりも上流側に位置している。
インサイドブラケット510を使った車載構造9eの利点を説明する。図15の右側からハイブリッド車200に障害物がぶつかってきたとき、PCU20は、側方からの衝突荷重Wtを受ける。図16には、衝突荷重Wtを示す矢印が描かれている。図16において右側が上流側に相当し、左側が下流側に相当する。図16における衝突荷重Wtと上ネジ孔534と脚部連結部515aの位置関係は、図6に示した第1実施例における衝突荷重Wsと上ネジ孔34と脚部連結部15aの位置関係を図上で左右逆転させたものに相当する。従って、図6参照した説明と同様に、車載構造9eは、側方からの衝突荷重Wtに対して上ネジ孔534が受けるダメージを低減することができる。上ネジ孔534は、インサイドブラケット510をTAハウジング530に固定するためのネジ孔である。即ち、インサイドブラケット510を使った車載構造9eは、想定される衝突荷重の方向(側方)に対して堅牢である。
第3実施例の変形例として、車幅方向に複数の上ネジ孔が並んでいる場合を説明する。この場合、図14を使った第3変形例と同様に、複数の上ネジ孔のうち、車幅方向の車両中央から最も遠い位置の上ネジ孔が、脚部連結部よりも車幅方向で車両中央から遠い側(即ち上流側)に位置していればよい。
(第4実施例)次に、図17と図18を参照して第4実施例の車載構造を説明する。第4実施例は、車両のリアコンパートメントに電子機器を搭載した例である。図17に、ハイブリッド車300の側面図を示す。但し、図17では、車両の輪郭とシート(フロントシート301とリアシート302)を二点鎖線で表している。ハイブリッド車300は、フロントコンパートメント90にTAハウジング30とPCU20を搭載している。TAハウジング30は、サイドメンバ96に懸架されている。TAハウジング30の上へのPCU20の搭載構造は、第1実施例で説明した車載構造9そのものである。図17における破線CL2は、車両前後方向における車両中央を示している。前後方向の車両中央CL2は、車幅方向からみたときの車両中心に対応する。
また、ハイブリッド車300は、リアシート302の後方に位置するリアコンパートメント303にサブTAハウジング630とサブPCU620を搭載している。サブTAハウジング630には、後輪を駆動するサブモータ602が収容されている。サブモータ602は、ハイブリッド車300を一時的に四輪駆動するために備えられている。例えば、ハイブリッド車300は、滑り易い雪道において四輪駆動で走行する。サブTAハウジング630は、ラゲッジフロアパネル304の上に、マウント305を介して支持されている。
サブTAハウジング630の上にサブPCU620が固定されている。サブPCU620は、サブモータ602に電力を供給する。サブPCU620は、車載構造9fによりサブTAハウジング630の上に固定されている。図18は、サブPCU620の車載構造9fを示す側面図である。図18の図は、図13を図上で左右逆転したものに相当する。
サブPCU630は、フロントブラケット610とリアブラケット640でサブTAハウジング630の上に固定されている。フロントブラケット610は、補強部材616と脚部615で構成されている。脚部615は、下向きに挿入される脚部ボルト617で補強部材616に固定されている。脚部615は、補強部材616から上方へ伸びている。脚部615の上部がサブPCU620の前面に連結されている。補強部材616は、第2実施例の場合と同じく、サブTAハウジング630の材料よりも強度が高い材料で作られている。また、第2実施例の場合と同様に、補強部材616は、サブTAハウジング630に下向きに挿入される基部ボルト614によってサブTAハウジング630に固定されている。補強部材616は、また、後向きに挿入される補助ボルト618によってもサブTAハウジング630に固定されている。
リアコンパートメント303に搭載されるサブPCU620では、想定される衝突荷重Ws重の方向は、車両後方から前方に向かう方向である。即ち、想定される衝突荷重の方向に対して車両後側が上流側に相当し、車両前側が下流側に相当する。図18は、TAハウジングとPCUの位置関係と衝突荷重Wsの方向が、第1実施例と第2実施例の場合とちょうど左右逆転したものである。従って、第1実施例、第2実施例のときのリアブラケットが第4実施例ではフロントブラケット610に相当する。フロントブラケット610は、次の構造を有している。フロントブラケット610は、サブTAハウジング630の上に固定されている基部(補強部材616)と、基部(補強部材616)から上方に伸びているとともにサブPCU620の前面に連結されている脚部615を備える。フロントブラケット610の基部(補強部材616)は、サブTAハウジング630に設けられている上ネジ孔に下向きに挿入されている基部ボルト614によってサブTAハウジング630の上に固定される。そして、フロントブラケット610を固定するための上ネジ孔が、基部(補強部材616)と脚部615の連結部(脚部ボルト617)よりも車両後側に位置している。ここで、車両後側は、想定される衝突荷重の方向に対して上流側に相当する。従って別言すれば、フロントブラケット610を固定するための上ネジ孔は、想定される衝突荷重の方向に対して、基部(補強部材616)と脚部615の連結部(脚部ボルト617)よりも上流側に位置している。
実施例とその変形例について、留意点を述べる。想定される衝突荷重は、車両中心から遠い側から車両中心に近い方に向く。それゆえ、想定される衝突荷重の上流側と下流側は、車両中心から遠い側と近い側と言い換えることができる。即ち、以上の実施例と変形例を考慮すると、結局、実施例とその変形例の車載構造は、PCUが車両中心に近い側に位置するブラケット(近位ブラケット)と遠い側に位置するブラケット(遠位ブラケット)によって固定されている場合であって近位ブラケットに着目していることが解る。
第1実施例は、フロントコンパートメントにてTAハウジング30の上にPCU20を固定する車載構造9を示した。PCU20は、車両前後方向に並ぶフロントブラケット40とリアブラケット10でTAハウジング30の上に固定される。図17に示すように、フロントコンパートメント90においては、リアブラケット10がフロントブラケット40よりも車両前後方向の車両中央CL2(車両中心)に近い。従って、リアブラケット10が近位ブラケットに相当する。そのリアブラケット10の基部16を固定する上ネジ孔34が、脚部連結部15a(基部16と脚部15の連結部)よりも車両前側、即ち、車両中心(図17の車両中央CL2)から遠い側に位置している。図2と図3と図17を参照されたい。第2実施例の場合も同様である。
第3実施例は、フロントコンパートメントにてTAハウジング530の上にPCU20を固定する車載構造9eを示した。PCU20は、車幅方向に並ぶインサイドブラケット510とアウトサイドブラケット540によってTAハウジング530の上に固定される。第3実施例では、図15に示すように、インサイドブラケット510がアウトサイドブラケット540よりも車幅方向の車両中央CL(車両中心)に近い。従って、インサイドブラケット510が近位側ブラケットに相当する。そのインサイドブラケット510の基部516を固定する上ネジ孔534が、脚部連結部515aよりも車両外側に位置している。即ち、上ネジ孔534は、脚部連結部515aよりも車両中心(図15の車両中央CL)から遠い側に位置している。図15、図16を参照されたい。
第4実施例では、リアコンパートメント303にてサブTAハウジング630の上にサブPCU620を固定する車載構造9fを示した。サブECU620は、車両前後方向に並ぶフロントブラケット610とリアブラケット640でサブTAハウジング630の上に固定される。リアコンパートメント303では、フロントブラケット610がリアブラケット640よりも車両中央CL2(車両中央)に近い。第4実施例では、フロントブラケット610が近位ブラケットに相当する。そのフロントブラケット610の基部(補強部材616)を固定する上ネジ孔が、脚部連結部(基部(補強部材616)と脚部615を連結する脚部ボルト617)よりも車両後側に位置している。即ち、フロントブラケット610の基部(補強部材616)を固定する上ネジ孔は、脚部連結部(基部(補強部材616)と脚部615を連結する脚部ボルト617)よりも車両中心(図17の車両中央CL2)から遠い側に位置している。図17と図18を参照されたい。なお、上ネジ孔は、基部ボルト634の位置に存在することは明らかである。
上記の実施例と変形例を考慮すると、本明細書が開始する技術は、次のように表すことができる。電子機器は、少なくとも2個のブラケットによって設置対象部材の上に固定されている。その2個のブラケットは、車両中心に近い側に位置するブラケットと遠い側に位置するブラケットである。車両中心に近い側に位置するブラケットを近位ブラケットと称し、遠い側に位置する遠位ブラケットを遠位ブラケットと称する。近位ブラケットは、設置対象部材の上に固定されている基部と、その基部から上方に伸びているとともに電子機器に連結されている脚部とを備えている。基部は、設置対象部材に設けられている上ネジ孔に下向きに挿入されている基部ボルトによって設置対象部材の上に固定されている。近位ブラケットを固定するための上ネジ孔が、基部と脚部の連結部よりも車両中心から遠い側に位置している。そのような車載構造は、近位ブラケットが外れ難く、衝突荷重に対して堅牢である。
実施例の車載構造では電子機器は(PCU又はサブPCU)はいずれも2個のブラケットによって設置対象部材(TAハウジング、サブTAハウジング)に固定されていた。電子機器が3個以上のブラケットによって固定されている場合、最下流のブラケット、又は、車両中心に最も近いブラケットが、実施例で説明した条件を満足していれば上記説明した利点を享受できることは明らかである。あるいは、最も近位のブラケットが実施例で説明した条件を満足していればよい。
第1実施例、第2実施例、及び、それらの変形例では、リアブラケットの脚部はPCUの後面に連結されている。リアブラケットの脚部は、PCUの下面、上面、側面のいずれに連結されていてもよい。リアブラケットは、PCUの後部に連結されていればよい。なお、フロントブラケットは、PCUの前部に連結される。第2実施例のリアブラケットは図10で斜視を示した。他の実施例と変形例のリアブラケットの脚部も、立ち上がり部から二股に立ち上がっている。しかし、本明細書が開示する技術は、二股に立ち上がっているリアブラケットに限定されない。また、ブラケットは、PCUに一体不可分に設けられているものであってもよい。
リアブラケットがTAハウジングに固定される補強部材と、補強部材から上方に伸びている脚部を備える場合、補強部材が他の実施例の基部に相当する。基部(補強部材)と脚部が別部材であって両者が脚部ボルトで連結されている場合には、次の利点がある。まず、上ネジ孔が脚部ボルトよりも車両前側に位置していれば、第1実施例と同じ効果が得られる。リアブラケットの基部をTAハウジングよりも高い強度を有する補強部材で構成する場合、下向きに挿入される脚部ボルトによって脚部を補強部材に固定できる利点がある。この利点は、脚部を取り付ける作業負荷を軽減する。
リアブラケットが補強部材を備えない場合、基部と脚部は一枚の金属板からプレス加工によって形成されるものであることが好ましい。図10に示した脚部115は、一枚の金属板からプレス加工によって作られている。例えば、第1実施例のリアブラケット10は、図10に示した脚部115の立ち上がり部115aから下の部分が、図10とは逆方向、即ち、F軸の正方向に折れ曲がった形状として実現可能である。
実施例の説明では、「脚部が上方に伸びている」という表現を用いた。「脚部が上方に伸びている」という表現は、鉛直上方に対して傾斜して上方に伸びていている場合を含む。「脚部が上方に伸びている」とは、図2に示すように、脚部15が前上方向に伸びている場合を含む。また、「脚部が上方に伸びている」とは、脚部が後上方向に伸びている場合、及び、横上方に伸びている場合を含む。
また、脚部と基部との連結部(脚部連結部)は、脚部と基部が一つの金属材料で作られている場合は、基部から上方へ折れ曲がっている箇所に相当する。脚部と基部が別々の部材のときは、脚と基部の連結部又は接合点が脚部連結部に相当する。脚部と基部がボルトで連結されているときは、そのボルトの位置が脚部連結部に相当する。脚部と基部は、ボルト以外の手段によって連結されていてもよい。脚部と基部は、例えば溶接によって接合されていてもよい。
第1実施例、第2実施例、及び、それらの変形例は、車両の前後方向に並ぶフロントブラケットとリアブラケットを使ってPCUをTAハウジングの上に固定する。それらの車載構造は、車両前方からの衝突荷重に対して堅牢である。車両の斜め前方からの衝突荷重は車両前後方向の荷重成分を有する。それゆえ、第1実施例、第2実施例、及び、それらの変形例は、車両の斜め前方からの衝突荷重に対しても堅牢である。
第3実施例とその変形例は、車幅方向に並ぶアウトサイドブラケットとインサイドブラケットを使ってPCUをTAハウジングの上に固定する。それらの車載構造は、車両側方からの衝突荷重に対して堅牢である。車両の斜め前方からの衝突荷重は車幅方向の荷重成分を有する。それゆえ、第3実施例とその変形例は、車両の斜め前方からの衝突荷重に対しても堅牢である。本明細書が開示したリアブラケットとインサイドブラケットを一緒に使うことも好適である。
実施例と変形例の基部は貫通孔を有しており、その貫通孔を通過する基部ボルトによりTAハウジングに固定される。基部は、貫通孔の代わりにスリットを備えており、そのスリットを通過する基部ボルトによってTAハウジングに固定されてもよい。同様に、実施例と変形例の補強部材は、貫通孔の代わりにスリットを備えており、そのスリットを通過する基部ボルトによってTAハウジングに固定されていてもよい。
実施例のPCU20(サブPCU620)が本明細書が開示する車載構造の対象の電子機器の一例である。本明細書が開示する技術は、PCUに限られない。リレーボックス、エンジンコントロールユニット、トランスミッションコントロールユニット、バッテリコントロールユニットなど、他の電子機器に適用することも好適である。
実施例のTAハウジング(トランスアクスルハウジング)が、電子機器を搭載する設置対象部材の一例である。本明細書が開示する技術は、TAハウジングに限られない。電子機器を搭載する対象の部材は、エンジン、サイドメンバなど、他の部材であってもよい。
本明細書が開示する車載構造は、エンジン車、電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車など、あらゆる車両に適用できる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2:モータ
3:動力分配機構
4:デファレンシャルギア
9、9a、9b、9c、9d、9e:車載構造
10、110、210、310、410:リアブラケット
12、42:防振ブッシュ
13、43:PCUボルト
14、44、114、214、314、414a、414b、514:基部ボルト
15、115、215、315、415、515:脚部
15a、415a、515a:脚部連結部
16、416、516:基部
20:パワーコントロールユニット(PCU)
30、130、230、330、430、530:トランスアクスルハウジング(TAハウジング)
30a 上面
34:134、434a、434b、534:上ネジ孔
40:フロントブラケット
90:フロントコンパートメント
96:サイドメンバ
98、598:エンジン
99:防振マウント
100、200、300:ハイブリッド車
115a:立ち上がり部
116、216、316:補強部材
116a、116b:貫通孔
116c:基部ネジ孔
116d:板厚部
116f:リブ
117:脚部ボルト
118、218、318:補助ボルト
510:インサイドブラケット
540:アウトサイドブラケット
610:フロントブラケット
640:リアブラケット
909:従来の車載構造
3:動力分配機構
4:デファレンシャルギア
9、9a、9b、9c、9d、9e:車載構造
10、110、210、310、410:リアブラケット
12、42:防振ブッシュ
13、43:PCUボルト
14、44、114、214、314、414a、414b、514:基部ボルト
15、115、215、315、415、515:脚部
15a、415a、515a:脚部連結部
16、416、516:基部
20:パワーコントロールユニット(PCU)
30、130、230、330、430、530:トランスアクスルハウジング(TAハウジング)
30a 上面
34:134、434a、434b、534:上ネジ孔
40:フロントブラケット
90:フロントコンパートメント
96:サイドメンバ
98、598:エンジン
99:防振マウント
100、200、300:ハイブリッド車
115a:立ち上がり部
116、216、316:補強部材
116a、116b:貫通孔
116c:基部ネジ孔
116d:板厚部
116f:リブ
117:脚部ボルト
118、218、318:補助ボルト
510:インサイドブラケット
540:アウトサイドブラケット
610:フロントブラケット
640:リアブラケット
909:従来の車載構造
Claims (12)
- 電子機器の車載構造であり、
前記電子機器が、複数のブラケットによって設置対象部材の上に固定されており、
想定される衝突荷重の方向を下流と規定し、反対側を上流と規定したときに、
前記複数のブラケットのうち、最下流に位置する下流側ブラケットが、前記設置対象部材の上に固定されている基部と、当該基部から上方に伸びているとともに前記電子機器に連結されている脚部と、を備えており、
前記基部は、前記設置対象部材に設けられている上ネジ孔に下向きに挿入されている基部ボルトによって前記設置対象部材の上に固定されており、
前記上ネジ孔が、前記基部と前記脚部の連結部よりも上流側に位置している、
ことを特徴とする電子機器の車載構造。 - 前記上ネジ孔が複数設けられている場合、前記衝突荷重の方向に対して最上流に位置する前記上ネジ孔が、前記連結部よりも上流側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の車載構造。
- 前記基部は、前記基部ボルトによって前記設置対象部材に固定されているとともに、前記基部ボルトの挿通方向とは異なる向きで前記設置対象部材に挿入されている補助ボルトによって前記設置対象部材に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車載構造。
- 前記基部は、前記設置対象部材の上面以外の面で前記補助ボルトで固定されていることを特徴とする請求項3に記載の車載構造。
- 前記基部は、強度が前記設置対象部材の強度よりも高い材料で作られており、
前記脚部は、前記基部とは別部品であり、前記基部に設けられた基部ネジ孔に下向きに挿入されている脚部ボルトによって前記基部に固定されており、
前記上ネジ孔が、前記脚部ボルトよりも衝突荷重の方向に対して上流側に位置していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車載構造。 - 前記荷重方向は車両の前方から後方へ向かう方向であり、
前記電子機器は、フロントコンパートメントにて、車両前後方向に並んでいるフロントブラケットとリアブラケットによって前記設置対象部材の上に固定されており、
前記下流側ブラケットは前記リアブラケットであり、
前記上ネジ孔が、前記基部と前記脚部の連結部よりも車両前側に位置していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車載構造。 - 前記設置対象部材の上面が前下がりに傾斜しているとともに、前記電子機器が前下がりに傾斜して前記設置対象部材の上に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の車載構造。
- 前記設置対象部材は、走行用のモータを収容するハウジングであることを特徴とする請求項6又は7に記載の車載構造。
- 前記設置対象部材は、前記モータとともにデファレンシャルギアを収容するトランスアクスルハウジングであることを特徴とする請求項8に記載の車載構造。
- 前記電子機器は、前記モータに電力を供給するパワーコントロールユニットであることを特徴とする請求項8または9に記載の車載構造。
- 前記荷重方向は、車幅方向で車両中央に向かう方向であり、
前記電子機器は、フロントコンパートメントにて、車幅方向の車両中央に近い側に位置するインサイドブラケットと遠い側に位置するアウトサイドブラケットによって前記設置対象部材の上に固定されており、
前記下流側ブラケットは前記インサイドブラケットであり、
前記上ネジ孔が、前記基部と前記脚部の連結部よりも車幅方向で前記車両中央から遠い側に位置していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車載構造。 - 電子機器の車載構造であり、
前記電子機器が、少なくとも2個のブラケットによって設置対象部材の上に固定されており、
前記2個のブラケットは、車両中心に近い側に位置する近位ブラケットと遠い側に位置する遠位ブラケットであり、
前記近位ブラケットは、前記設置対象部材の上に固定されている基部と、当該基部から上方に伸びているとともに前記電子機器に連結されている脚部と、を備えており、
前記基部は、前記設置対象部材に設けられている上ネジ孔に下向きに挿入されている基部ボルトによって前記設置対象部材の上に固定されており、
前記上ネジ孔が、前記基部と前記脚部の連結部よりも車両中心から遠い側に位置していることを特徴とする電子機器の車載構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014187098A JP2016060263A (ja) | 2014-09-12 | 2014-09-12 | 電子機器の車載構造 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2014187098A JP2016060263A (ja) | 2014-09-12 | 2014-09-12 | 電子機器の車載構造 |
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JP2016060263A true JP2016060263A (ja) | 2016-04-25 |
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ID=55796807
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JP2014187098A Pending JP2016060263A (ja) | 2014-09-12 | 2014-09-12 | 電子機器の車載構造 |
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JP (1) | JP2016060263A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019059263A (ja) * | 2017-09-25 | 2019-04-18 | トヨタ自動車株式会社 | 電気機器の車載構造 |
-
2014
- 2014-09-12 JP JP2014187098A patent/JP2016060263A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019059263A (ja) * | 2017-09-25 | 2019-04-18 | トヨタ自動車株式会社 | 電気機器の車載構造 |
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