JP2016056757A - スクロール圧縮機および空気調和機 - Google Patents

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Abstract

【課題】ラップ歯先歯底面を経由した冷媒の漏れを抑制し、圧縮性能の向上を実現するスクロール圧縮機および該スクロール圧縮機を備える空気調和機を提供する。
【解決手段】圧縮室は、旋回内線側圧縮室及び旋回外線側圧縮室からなり、旋回外線側圧縮室は旋回内線側圧縮室より吸入容積が大きく、背圧弁連通路41の圧縮室側開口部44aは、固定スクロールラップ12aの歯底間に形成され、旋回スクロール11の旋回運動に伴って、圧縮室側開口部44aが、旋回内線側圧縮室との連通と、旋回外線側圧縮室との連通と、を交互に行うように構成され、旋回外線側圧縮室への総給油量を旋回内線側圧縮室への総給油量より多くする。
【選択図】図2

Description

本発明は、固定スクロールと、これに噛み合う旋回スクロールと、を備えるスクロール圧縮機および該スクロール圧縮機を備える空気調和機に関する。
従来のスクロール圧縮機として、特許文献1(特開2009−257287号公報)には、旋回スクロールの背面に吐出空間内の油を導入して吐出圧力と吸込圧力の中間の圧力となる背圧室を形成し、この背圧室の圧力(背圧)を用いて旋回スクロールを固定スクロールへ付勢するスクロール圧縮機が開示されている。
このようなスクロール圧縮機の場合、適切な背圧を生成するために、吐出空間から背圧室へ導入した油を、背圧を制御する背圧弁を備えた連通路(背圧弁連通路)を介して、圧縮室へ排出するようにしている。特許文献1に開示されたスクロール圧縮機では、背圧弁連通路の圧縮室側の開口部が固定スクロール鏡板の圧縮室側に立設する固定スクロールラップに挟まれた溝(固定スクロールラップ歯底)の幅方向中央に設けられており、背圧弁連通路の圧縮室側容積を背圧弁流入穴部の容積より小さく設定している。
このように構成することにより、旋回スクロール鏡板に立設する旋回スクロールラップの内線側と外線側に形成される2系統の圧縮室(旋回内線側圧縮室、旋回外線側圧縮室)に対し、背圧弁連通路での冷媒(作動流体)の再膨張損失を抑えつつ、背圧室の油を均等に供給するようにして、スクロール圧縮機の効率向上を図るようにしている。
特開2009−257287号公報
ところで、特許文献1では考慮されていないラップ歯先歯底面(旋回スクロールラップ歯先と固定スクロールラップ歯底面との摺動部、および、固定スクロールラップ歯先と旋回スクロールラップ歯底面との摺動部)を介した冷媒の漏れに関していえば、旋回外線側圧縮室における漏れは、旋回内線側圧縮室における漏れと比較して多くなる。この理由は、旋回内線側圧縮室の吸入容積よりも旋回外線側圧縮室の吸入容積の方が大きい非対称スクロール圧縮機では、圧縮室のラップ歯先歯底面のシール長さが吸入容積に比例して大きくなるため、ラップ歯先歯底面間が同じ条件ではシール長さが長い旋回外線側圧縮室の方が漏れは多くなるからである。
このため、特許文献1のスクロール圧縮機のように、背圧室の油を均等に2系統の圧縮室に供給する場合、シール長さが長い旋回外線側圧縮室の漏れが多くなる。ラップ歯先歯底面を介した冷媒の漏れは冷媒の再圧縮を引き起こすため、結果として無駄な仕事が派生し、スクロール圧縮機の圧縮性能低下を生じていた。
そこで、本発明は、ラップ歯先歯底面を経由した冷媒の漏れを抑制し、圧縮性能の向上を実現するスクロール圧縮機および該スクロール圧縮機を備える空気調和機を提供することを課題とする。
このような課題を解決するために、本発明は、旋回スクロールラップを有する旋回スクロールと、前記旋回スクロールラップと噛み合って圧縮室を形成する固定スクロールラップを有する固定スクロールと、前記旋回スクロールに前記固定スクロールへの押付力を付与する背圧室と、前記背圧室に油を導入する給油手段と、前記背圧室から閉じ込み開始前後の前記圧縮室に連通し、前記背圧室の油を前記圧縮室に導入する背圧弁連通路と、前記背圧弁連通路に設けられ連通前後の差圧で開閉する背圧弁と、を備え、該圧縮室は、前記旋回スクロールラップの内線と前記固定スクロールラップの外線との間の旋回内線側圧縮室及び前記旋回スクロールラップの外線と前記固定スクロールラップの内線との間の旋回外線側圧縮室からなり、前記旋回外線側圧縮室は前記旋回内線側圧縮室より吸入容積が大きく、前記背圧弁連通路の前記圧縮室側開口部は、前記固定スクロールラップの歯底間に形成され、前記旋回スクロールの旋回運動に伴って、前記圧縮室側開口部が、前記旋回内線側圧縮室との連通と、前記旋回外線側圧縮室との連通と、を交互に行うように構成され、前記旋回外線側圧縮室への総給油量を前記旋回内線側圧縮室への総給油量より多くすることを特徴とするスクロール圧縮機である。
本発明によれば、ラップ歯先歯底面を経由した冷媒の漏れを抑制し、圧縮性能の向上を実現するスクロール圧縮機および該スクロール圧縮機を備える空気調和機を提供することができる。
第1実施形態に係るスクロール圧縮機の断面図である。 第1実施形態に係るスクロール圧縮機における背圧弁および背圧弁連通路付近の部分拡大断面図である。 圧縮開始前の旋回内線側圧縮室を説明する断面図である。 圧縮過程の旋回内線側圧縮室を説明する断面図である。 圧縮開始前の旋回外線側圧縮室を説明する断面図である。 圧縮過程の旋回外線側圧縮室を説明する断面図である。 旋回内線側圧縮室および旋回外線側圧縮室における圧縮開始後の圧力の時間変化を示すグラフである。 旋回内線側圧縮室および旋回外線側圧縮室における給油差圧の時間変化を示すグラフである。 第2実施形態に係るスクロール圧縮機における背圧弁および背圧弁連通路付近の部分拡大断面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
≪第1実施形態≫
第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sについて、図1から図8を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sの断面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、縦型スクロール圧縮機であり、冷媒(作動流体)として例えばR32冷媒を使用するものである。
スクロール圧縮機Sは、主な構成として、密閉容器(チャンバ)1と、密閉容器1の内部に配置される電動機2と、密閉容器1の内部に配置され電動機2により駆動されるスクロール圧縮機構3と、電動機2の回転動力をスクロール圧縮機構3に伝達するクランクシャフト6と、を備えている。
密閉容器1は、円筒状の筒チャンバ1aと、筒チャンバ1aの上部に溶接される蓋チャンバ1bと、筒チャンバ1aの下部に溶接される底チャンバ1cと、で構成され、その内部に密閉されたチャンバ内空間(吐出圧力空間)54を形成している。
また、蓋チャンバ1bには、スクロール圧縮機構3(固定スクロール12)の吸込口4に圧入する吸込パイプ7が溶接またはロウ付けされて固定配置されている。また、スクロール圧縮機構3(固定スクロール12)の吐出口5は、チャンバ内空間(吐出圧力空間)54と連通しており、筒チャンバ1aの側面にチャンバ内空間54と外部とを連通する吐出パイプ8が溶接またはロウ付けされて固定配置される。このように、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、チャンバ内空間54が高圧雰囲気となる、いわゆる高圧チャンバタイプの圧縮機である。
また、密閉容器1の内部には、組み立ての適当な段階で油を封入するようになっている。これにより、密閉容器1の底部に、貯油部9が形成される。
電動機2は、ステータと、ロータと、を備えている。ステータは、密閉容器1に圧入、溶接等により固定されている。ロータは、ステータ内に回転可能に配置されている。また、ロータにはクランクシャフト6が固定されている。
クランクシャフト6は、主軸と、偏心部であるピン部6cと、を備えている。クランクシャフト6の主軸は、上側が後述するフレーム13に設けた主軸受13aに支持され、下側が下軸受10で支持されている。電動機2を駆動してクランクシャフト6を回転させると、ピン部6cは主軸に対して偏心回転運動するようになっている。また、クランクシャフト6には、主軸受13a、下軸受10および後述する旋回軸受へ貯油部9の油を給油するための給油縦穴6aおよび給油横穴6bが設けられている。
スクロール圧縮機構3は、旋回スクロール11と、固定スクロール12と、フレーム13と、オルダムリング14と、リリース弁装置15と、背圧制御弁40と、を備えている。
旋回スクロール11は、渦巻状の旋回スクロールラップ11aと、旋回端板11bと、クランクシャフト6の偏心部であるピン部6cが挿入される旋回軸受部11cと、を有している。
固定スクロール12は、渦巻状の固定スクロールラップ12aと、固定端板12bと、を有している。また、固定スクロールラップ12aの外周部に吸込口4が配置され、固定スクロールラップ12aの中央部に吐出口5が配置されている。
旋回スクロール11は、固定スクロール12と相対向して旋回自在に配置されており、旋回スクロールラップ11aと固定スクロールラップ12aによって、吸込口4と連通する吸込室50(後述する図3から図6参照)と、圧縮室51,52(後述する図3から図6参照)が形成されている。
なお、旋回端板11bの上面である旋回摺動面及びその旋回スクロールラップ11aの表面(固定スクロール12との対向面)には、ある程度の大きな負荷時に摺動が伴うと摩耗するなじみ層(図示せず)が形成されている。なじみ層の厚さは、両スクロール部材を噛み合わせた場合のそれらの形状誤差によって生じる隙間のレベルである。なお、なじみ層は、固定スクロール12の側、即ち、固定端板12bの下面である旋回摺動面及びその固定スクロールラップ12aの表面(旋回スクロール11との対向面)に設けてもよい。また、なじみ層を両スクロール部材に設けてもよい。
フレーム13は、その外周側が溶接によって密閉容器1の内壁面に固定されており、クランクシャフト6の主軸を回転自在に支持する主軸受13aを備えている。固定スクロール12は、ボルトによりフレーム13と締結され固定される。また、旋回スクロール11とフレーム13との間には、背圧室53が形成されている。
オルダムリング14は、旋回スクロール11とフレーム13の間に配置されており、オルダムリング14のキー部(図示せず)が、旋回スクロール11に形成された旋回オルダム溝(図示せず)と、フレーム13に形成されたフレームオルダム溝(図示せず)に挿入されている。オルダムリング14は、旋回スクロール11を固定スクロール12に対して、自転させずに旋回運動をさせる働きをする自転規制部材である。
リリース弁装置15は、圧縮室51,52(後述する図3から図6参照)の圧力が高くなり過ぎないように、圧縮室(51,52)からチャンバ内空間54に圧力を逃がすためのものである。
背圧制御弁40は、背圧室53と、圧縮室51,52(後述する図3から図6参照)と、を連通する背圧弁連通路41に設けられ、圧力差で開弁することにより、背圧室53の圧力(背圧)を制御するようになっている。
このように、旋回スクロール11と固定スクロール12とを噛み合わせ、旋回スクロール11とフレーム13との間にオルダムリング14を配置して、固定スクロール12をフレーム13にネジ固定することにより、スクロール圧縮機構3が形成されている。また、後述する図3から図6で示すように、旋回スクロール11の旋回端板11bの上面側には、固定スクロール12及び旋回スクロール11のラップ間に旋回内線側圧縮室51及び旋回外線側圧縮室52、その吸込側に吸込室50が形成される。一方、図1で示すように、旋回スクロール11の旋回端板11bの下面側には、背圧室53が形成される。
次に、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sの冷媒圧縮動作について説明する。電動機2を駆動してクランクシャフト6を回転させると、クランクシャフト6のピン部6cが偏心回転し、旋回軸受部11cにピン部6cが挿入された旋回スクロール11はオルダムリング14に規制されながら旋回駆動する。この一連の動作により、吸込パイプ7(吸込口4)より吸い込まれた冷媒ガスは、吸込室50(後述する図3から図6参照)に流入し、旋回スクロール11の旋回運動により旋回スクロール11および固定スクロール12の外周側から中央部へ冷媒を移送しつつその容積を減少する圧縮室51,52(後述する図3から図6参照)で圧縮されて、吐出口5から吐出圧力空間であるチャンバ内空間54に吐出され、チャンバ内空間54の冷媒は吐出パイプ8より密閉容器1外部へ吐出される。なお、スクロール圧縮機Sから吐出された冷媒は、冷凍サイクル(図示せず)内を循環して、吸込パイプ7から再びスクロール圧縮機Sへ吸込される。
次に、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sの給油動作について説明する。貯油部9は、密閉容器1のチャンバ内空間(吐出圧力空間)54の下部に形成されており、貯油部9に滞留する油も当然に吐出圧力となっている。一方、背圧室53の圧力は、背圧制御弁40により、吐出圧力と吸込圧力の中間の圧力である背圧に保持されている。このため、貯油部9と背圧室53との間に差圧が発生し、この差圧で貯油部9の油が、クランクシャフト6の下端部に固定配置された給油ピースから給油縦穴6aを通り、クランクシャフト6に設けられた給油横穴6b及びスリット部(図示せず)を経て、旋回軸受部11c及び主軸受13aを潤滑しながら、背圧室53へ流入する。
背圧室53へ流入した油は、背圧室53と圧縮室51,52との差圧により、途中に背圧制御弁40を設けた背圧弁連通路41を通って、吸込室50及び圧縮室51,52へ流入する。そして、圧縮室51,52へ流入した油は、圧縮室51,52のシール性を高めながら、冷媒と共に吐出口5からチャンバ内空間54に吐出される。吐出口5から吐出された油は、チャンバ内空間54で冷媒から分離してチャンバ内空間54の下部に形成された貯油部9に戻る。
背圧制御弁40および背圧弁連通路41の構成について、図2から図6を用いて更に説明する。図2は、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sにおける背圧弁40および背圧弁連通路41付近の部分拡大断面図である。図3から図6は、固定スクロール12に旋回スクロール11を噛み合わせた状態において、固定スクロール12のスラスト支持面の位置で切断した断面図である。このうち、図3は、圧縮開始前の旋回内線側圧縮室51を説明する断面図であり、図4は、圧縮過程の旋回内線側圧縮室51を説明する断面図であり、図5は、圧縮開始前の旋回外線側圧縮室52を説明する断面図であり、図6は、圧縮過程の旋回外線側圧縮室52を説明する断面図である。
図3から図6に示すように、旋回スクロールラップ11aと固定スクロールラップ12aで形成される圧縮室は、2系統の圧縮室が存在する。即ち、旋回スクロールラップ11aの内線側と固定スクロールラップ12aの外線側とで形成される圧縮室である旋回内線側圧縮室51(51a,51b)と、旋回スクロールラップ11aの外線側と固定スクロールラップ12aの内線側とで形成される圧縮室である旋回外線側圧縮室52(52a,52b)と、がある。
また、図3に示すように、旋回スクロール11が旋回運動することにより旋回スクロールラップ11aの内線側先端付近部が固定スクロールラップ12aの外線側と接触して旋回内線側圧縮室51a(図4参照)が形成される前の吸込室50と連通する空間を旋回内線側圧縮室予定吸込空間501と称するものとする。また、図5に示すように、旋回スクロール11が旋回運動することにより旋回スクロールラップ11aの外線側先端付近部が固定スクロールラップ12aの内線側と接触して旋回外線側圧縮室52a(図6参照)が形成される前の吸込室50と連通する空間を旋回外線側圧縮室予定吸込空間502と称するものとする。
図3から図6に示すように、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sは非対称スクロール圧縮機である。そして、図4および図6を対比して示すように、旋回外線側圧縮室52aの吸入容積(図6参照)の方が、旋回内線側圧縮室51aの吸入容積(図4参照)より大きくなっている。
図2に示すように、背圧弁連通路41は、背圧室53と、吸込室50(図3から図6参照)及び圧縮室51,52(図3から図6参照)と、を連通する流路であり、外周逃げ溝12dと、湾状凹部12eと、背圧弁流入穴42と、背圧弁穴43と、背圧弁流出流路44と、を備えて構成されている。
背圧弁流入穴42は、固定スクロール12の固定鏡板12cから上方向に延びる縦穴であり、下側の開口部42aが湾状凹部12eと連通し、上側が背圧弁穴43と連通する。ここで、背圧弁流入穴42の開口部42aは、固定スクロール12に旋回スクロール11を噛み合わせた状態において、旋回運動する旋回スクロール11の旋回端板11bで常に覆われており、背圧室53に直接開口しないようになっている。なお、図2では、旋回スクロール11が最も左側に移動した状態(他の表現を用いれば、背圧弁流入穴42と、クランクシャフト6の偏心部であるピン部6cと、が最も離れた状態)を示しており、この状態においても、背圧弁流入穴42の開口部42aは、旋回スクロール11の旋回端板11bで覆われている、即ち、背圧室53に直接開口しないことを示している。背圧弁流入穴42と背圧室53とは、固定スクロール12の固定鏡板12cに形成された外周逃げ溝12dおよび湾状凹部12eを介して連通するようになっている。
図3から図6に示すように、固定スクロール12のスラスト支持面である固定鏡板12cには、外周逃げ溝12dと、同程度に掘込んだ湾状凹部12eと、が設けられている。
外周逃げ溝12dは、その一部が旋回運動する旋回スクロール11の旋回端板11bで覆われ背圧室53に直接面していないが、図2に示すように、他の一部が背圧室53に直接面するように形成されている。
湾状凹部12eは、環状凹部分12fと、直線溝部分12gと、から構成されている。環状凹部分12fは、背圧弁流入穴42の開口部42aの周囲に設けられた開口部42aよりも大きい外径を有する円環状の凹部分である。直線溝部分12gは、環状凹部分12fと外周逃げ溝12dとを接続する溝である。
このような構成により、旋回スクロール11の旋回位置(換言すれば、クランクシャフト6のクランク角)によらず、背圧弁流入穴42と背圧室53とは、旋回端板11bと外周逃げ溝12d,湾状凹部12eとで挟まれて形成された流路を介して、常に連通している。
また、湾状凹部12eと旋回端板11bで挟まれて形成される流路の流路断面積は、背圧制御弁40から圧縮室51,52までの流路(図2に示す背圧弁流出流路44)の流路断面積より小さくなっている。換言すれば、背圧室53から背圧制御弁40までの流路における流路断面積において、背圧制御弁40から圧縮室51,52までの流路における流路断面積より小さい箇所が設けられている。さらに換言すれば、背圧室53から圧縮室51,52へ連通する背圧弁連通路41において、流路断面積が最も小さくなる部分は、背圧制御弁40よりも上流側(背圧室53の側)に設けられている。
このような構成とすることにより、旋回スクロール11の旋回運動により旋回スクロールラップ11aが開口部42aを開閉しても、背圧室53の圧力(背圧)Pbに与える影響を小さくすることができる。即ち、背圧室53の圧力(背圧)Pbがクランクシャフト6のクランク角によって変動することなく、一定の圧力を保つことができる(後述する図7参照)。
図2に戻り、背圧弁穴43には、圧縮されたコイル状ばね40a、弁板40bを配置した後、背圧弁穴43を弁キャップ40cで圧入により蓋をし、背圧制御弁40が形成される。
背圧弁流出流路44は、外周側から横穴を加工するとともに圧縮室51,52側から縦穴加工を施し、連通するように設けられており、背圧弁穴43より外周側にはシール部材45が圧入固定されている。
図2に示すように、背圧弁流出流路44の圧縮室51,52側の開口部44aは、固定スクロールラップ12a間の固定端板12b(固定スクロールラップ歯底面)に形成されている。そして、図3から図6に示すように、開口部44aは、クランクシャフト6の回転によって(換言すれば、旋回スクロール11の旋回運動によって)、旋回内線側圧縮室51及び旋回外線側圧縮室52の両方に交互に連通するように設けられている。
ここで、旋回スクロールラップ11aで覆われた開口部44aが旋回内線側圧縮室51に連通する際、図3に示すように、旋回スクロール11が旋回運動することにより旋回スクロールラップ11aの内線側先端付近部が固定スクロールラップ12aの外線側と接触して旋回内線側圧縮室51a(図4参照)が形成される前の旋回内線側圧縮室予定吸込空間501において、開口部44aの一部が解放され、旋回内線側圧縮室予定吸込空間501に背圧室53から油を供給するようになっている。
同様に、旋回スクロールラップ11aで覆われた開口部44aが旋回外線側圧縮室52に連通する際、図5に示すように、旋回スクロール11が旋回運動することにより旋回スクロールラップ11aの外線側先端付近部が固定スクロールラップ12aの内線側と接触して旋回外線側圧縮室52a(図6参照)が形成される前の旋回外線側圧縮室予定吸込空間502において、開口部44aの一部が解放され、旋回外線側圧縮室予定吸込空間502に背圧室53から油を供給するようになっている。
このように、圧縮室51,52に開口部44aから油を供給する際、圧縮開始前に油の供給を開始する、即ち、圧縮室51,52が形成される前の段階(旋回内線側圧縮室予定吸込空間501、旋回外線側圧縮室予定吸込空間502)で油の供給を開始する。開口部44aから油を供給して圧縮室51,52のシール部位(ラップ歯先歯底面)に油を行き渡らせるまでの時間が必要となるが、圧縮開始前に油の供給を開始することにより、圧縮開始時において油を圧縮室51,52のシール部位(ラップ歯先歯底面)に行き渡らせることができる。これにより、圧縮時におけるラップ歯先歯底面を介した冷媒の漏れを防止し、冷媒の再圧縮を抑制して、スクロール圧縮機Sの圧縮性能を向上させることができる。
図7は、旋回内線側圧縮室51および旋回外線側圧縮室52における圧縮開始後の圧力の時間変化を示すグラフである。
ここで、図3および図4に示すように、旋回内線側圧縮室51(旋回内線側圧縮室予定吸込空間501)に潤滑油が供給される際、旋回内線側圧縮室51(旋回内線側圧縮室予定吸込空間501)は圧縮開始前(図3参照)または圧縮過程の途中(図4参照)である。このため、図7に示すように、潤滑油が供給される際の旋回内線側圧縮室51の圧力Pi(図7において実線で示す)は、吸込圧力Ps以上となる(Pi≧Ps)。また、図3および図4に示すように、旋回外線側圧縮室52においても同様であり、図7に示すように、潤滑油が供給される際の旋回外線側圧縮室52の圧力Po(図7において破線で示す)は吸込圧力Ps以上となる(Po≧Ps)。
図7に示すように、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、実線で示す旋回内線側圧縮室51の圧力Piの圧力上昇が、破線で示す旋回外線側圧縮室52の圧力Poの圧力上昇よりも高くなるように、圧縮室51,52の設計容積比を設定する(即ち、旋回スクロールラップ11a、固定スクロールラップ12aの形状を設計する)ことにより、Pi>Poとすることができる。図3から図6の例では、旋回外線側圧縮室52の設計容積比を2.2、旋回内線側圧縮室51の設計容積比を2.0としており、このラップ緒元の場合には、Pi>Poの関係が成り立つ。
なお、図7に示すように、一点鎖線で示す背圧室54の背圧Pbは、時間によらず一定である。
図8は、旋回内線側圧縮室51および旋回外線側圧縮室52における給油差圧の時間変化を示すグラフである。
前述のように、背圧弁連通路41による背圧室53から圧縮室51,52への給油は、背圧室53と圧縮室51,52との差圧によって給油される。この給油差圧は、旋回内線側圧縮室51でPb−Piとなり、旋回外線側圧縮室52でPb−Poとなる。図7に示す旋回内線側圧縮室51の圧力Pi、旋回外線側圧縮室52の圧力Po、背圧Pbより、図8に示す給油差圧Pb−Pi(図8において実線で示す)および給油差圧Pb−Po(図8において破線で示す)の関係が得られる。このように、Pb−Po>Pb−Piの関係が成り立つことから、旋回外線側圧縮室52の方が旋回内線側圧縮室51より給油差圧が大きくなる。
このような構成により、旋回内線側圧縮室51より旋回外線側圧縮室52に多く給油される。換言すれば、吸入容積のより大きい圧縮室に、より多く給油することができる。さらに換言すれば、シール長さの長い圧縮室に、より多く給油することができる。これにより、圧縮室51,52のシール部位(ラップ歯先歯底面)におけるシール性が向上し、圧縮時におけるラップ歯先歯底面を経由した冷媒の漏れを抑制し、冷媒の再圧縮を抑制して、スクロール圧縮機Sの圧縮性能を向上させることができる。
また、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sの冷媒として、R32や、R32を50重量%より多く含む混合冷媒を好適に用いることができる。R32のような分子量の小さい漏れ易い特性をもつ冷媒に対しても、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、ラップ歯先歯底面を経由した冷媒の漏れを抑制することができるので、冷媒の再圧縮を抑制して、スクロール圧縮機Sの圧縮性能を向上させることができる。
また、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器と、が環状に順次接続され、冷媒が流れる冷媒回路を備える空気調和機の圧縮機として好適に用いることができる。
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係るスクロール圧縮機について図9を用いて説明する。図9は、第2実施形態に係るスクロール圧縮機における背圧弁46および背圧弁連通路41付近の部分拡大断面図である。なお、第2実施形態に係るスクロール圧縮機は、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sと比較して、背圧弁連通路41および背圧弁46の構成が異なっている。その他の構成は同様であり、説明を省略する。
図2に示すように、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sでは、背圧弁連通路41を構成する背圧弁流入穴42、背圧弁穴43および背圧弁流出流路44は、固定スクロール12に機械加工を施すことで構成されている。なお、固定スクロール12の材料としては、鋳鉄を選定している。このため、背圧弁40の閉弁時に弁板40bが当接する背圧弁座も鋳鉄で構成されている。
これに対し、図9に示すように、第2実施形態に係るスクロール圧縮機では、背圧弁46がコイル状ばね40a、弁板40b、弁キャップ40cおよび背圧弁部材40dからなるモジュールとして構成されている。そして、背圧弁46(背圧弁部材40d)が固定スクロール12の背圧弁穴43Aに圧入されて構成されている。このように、第2実施形態に係るスクロール圧縮機では、背圧弁連通路41の一部が固定スクロール12と異なる材料からなる背圧弁部材40dで構成されている。
背圧弁部材40dは、固定スクロール12の材料(鋳鉄)とは異なる材料を用いており、具体的には、快削鋼や機械構造用炭素鋼を用いている。快削鋼や機械構造用炭素鋼を用いることにより、鋳鉄の場合と比較して、背圧弁座の高精度加工が可能となり、背圧制御弁40の開閉部のシール性を高める効果がある。
また、背圧弁部材40dの材料(異なる材料)は、固定スクロール12の材料(鋳鉄)よりも熱伝導率の小さい材料を選定することが望ましい。圧縮室51,52で冷媒を圧縮する際に発生する熱により、固定スクロール12は高温となるが、背圧弁部材40dに熱伝導率の小さい材料を用いることにより、背圧制御弁40の開閉部への熱影響を抑制することができ、変形抑制効果から耐久性を高めることができる。
また、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sでは、固定スクロールラップ加工と背圧制御弁部(背圧弁座)の加工をマシニングセンタで同時加工する必要があった。これに対し、第2実施形態に係るスクロール圧縮機では、背圧弁部材40dは旋盤加工のみで加工可能であり、予め旋盤加工により製作した背圧弁部材40dを固定スクロール12に圧入して使用することにより、固定スクロールラップ加工と背圧制御弁部(背圧弁座)の加工をマシニングセンタで同時加工する必要がなくなるため、量産加工性が向上する。なお、背圧弁部材40dは固定スクロールラップ加工前に固定スクロール12に圧入固定してもよく、ラップ加工後に圧入固定してもよい。
また、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sでは、背圧弁穴43より固定スクロール12の外周側にシール部材45が圧入固定されている。これに対し、第2実施形態に係るスクロール圧縮機では、背圧弁部材40dが固定スクロール12の外周側とのシールを担うことができるので、シール部材45を不要とすることができる。
≪変形例≫
なお、本実施形態(第1,2実施形態)に係るスクロール圧縮機Sは、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
S スクロール圧縮機
3 スクロール圧縮機構
6 クランクシャフト
6a 給油縦穴
9 貯油部
11 旋回スクロール
11a 旋回スクロールラップ
11b 旋回端板b
12 固定スクロール
12a 固定スクロールラップ
12b 固定端板
12c 固定鏡板
12d 外周逃げ溝(背圧室側連通路)
12e 湾状凹部(背圧室側連通路、断面積縮小連通路部)
12f 環状凹部分(背圧室側連通路、断面積縮小連通路部)
12g 直線溝部分(背圧室側連通路、断面積縮小連通路部)
40,46 背圧制御弁(背圧弁)
40d 背圧弁部材
41 背圧弁連通路
42 背圧弁流入穴(背圧室側連通路)
42a 開口部
43 背圧弁穴
44 背圧弁流出流路(圧縮室側連通路)
44a 開口部(圧縮室側開口部)
50 吸込室
51 旋回内線側圧縮室
52 旋回外線側圧縮室
53 背圧室
54 チャンバ内空間(吐出圧力空間)
501 旋回内線側圧縮室予定吸込空間(吸込空間)
502 旋回外線側圧縮室予定吸込空間(吸込空間)

Claims (7)

  1. 旋回スクロールラップを有する旋回スクロールと、
    前記旋回スクロールラップと噛み合って圧縮室を形成する固定スクロールラップを有する固定スクロールと、
    前記旋回スクロールに前記固定スクロールへの押付力を付与する背圧室と、
    前記背圧室に油を導入する給油手段と、
    前記背圧室から閉じ込み開始前後の前記圧縮室に連通し、前記背圧室の油を前記圧縮室に導入する背圧弁連通路と、
    前記背圧弁連通路に設けられ連通前後の差圧で開閉する背圧弁と、を備え、
    該圧縮室は、前記旋回スクロールラップの内線と前記固定スクロールラップの外線との間の旋回内線側圧縮室及び前記旋回スクロールラップの外線と前記固定スクロールラップの内線との間の旋回外線側圧縮室からなり、
    前記旋回外線側圧縮室は前記旋回内線側圧縮室より吸入容積が大きく、
    前記背圧弁連通路の前記圧縮室側開口部は、前記固定スクロールラップの歯底間に形成され、
    前記旋回スクロールの旋回運動に伴って、前記圧縮室側開口部が、前記旋回内線側圧縮室との連通と、前記旋回外線側圧縮室との連通と、を交互に行うように構成され、
    前記旋回外線側圧縮室への総給油量を前記旋回内線側圧縮室への総給油量より多くする
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
  2. 前記背圧弁連通路の前記背圧室から前記背圧弁までの背圧室側連通路は、
    前記背圧弁連通路の前記圧縮室側開口部から前記背圧弁までの圧縮室側連通路の断面積よりも断面積が小さい断面積縮小連通路部を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
  3. 前記背圧弁連通路の前記圧縮室側開口部は、閉じ込み開始前の前記圧縮室である吸込空間と連通して、前記背圧室の油を前記吸込空間に導入する
    ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
  4. 前記背圧弁連通路の前記背圧室から前記背圧弁までの背圧室側連通路は、
    前記背圧室と常時連通する
    ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
  5. 前記背圧弁の背圧弁座と、前記背圧弁連通路の一部が、前記固定スクロールと異なる部材で構成される
    ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
  6. 前記異なる部材は、前記固定スクロールより熱伝導率が小さい材料で構成される
    ことを特徴とする請求項5に記載のスクロール圧縮機。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のスクロール圧縮機と、凝縮器と、膨張器と、蒸発器と、が環状に順次接続され、冷媒が流れる冷媒回路を備え、
    前記冷媒は、R32、又は、R32を50重量%より多く含む混合冷媒である
    ことを特徴とする空気調和機。
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