JP2016054173A - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的安いコストで製造でき、発光効率に優れ、長寿命化された有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】陽極と陰極との間に発光層を含む複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、該有機電界発光素子は、陰極と発光層との間にケトン系溶媒を含んで形成された層を有する有機電界発光素子。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機電界発光素子に関する。より詳しくは、電子機器の表示部等の表示装置や照明装置等としての利用可能な有機電界発光素子に関する。
表示用デバイスや照明に適用できる新しい発光素子として有機電界発光素子(有機EL素子)が期待されている。
有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に発光性有機化合物を含んで形成される発光層を含む1種または複数種の層を挟んだ構造を持ち、陽極から注入されたホールと陰極から注入された電子が再結合する時のエネルギーを利用して発光性有機化合物を励起させ、発光を得るものである。有機電界発光素子は電流駆動型の素子であり、流れる電流をより効率的に活用するため、言い換えれば、電子をスムーズに効率よく注入し利用するために、素子構造や、素子を構成する層の材料について種々検討されている。
最も基本的で数多く検討されている有機電界発光素子の構造は、安達らによって提案された3層構造のものであり(非特許文献1参照。)、陽極と陰極との間に正孔輸送層、発光層、電子輸送層をこの順で挟んだ構造をとっている。この提案以降、有機電界発光素子は3層構造を基本とし、より役割を分担することで、効率・寿命等の性能向上を目指して数多くの研究がなされている。
「ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライドフィジクス(Japanese Journal of Applied Physics)」、1988年、第27巻 L269
上記安達らの提案以降、様々な構成の有機電界発光素子が研究されているが、発光効率・寿命等の性能面で更なる向上の余地がある。また、有機電界発光素子の普及のためには製造コストも重要であり、より安価に高い性能を有する有機電界発光素子を製造することが求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、比較的安いコストで製造でき、発光効率に優れ、長寿命化された有機電界発光素子を提供することを目的とする。
本発明者は、有機電界発光素子の発光効率を向上させ、長寿命化させる方法について種々検討したところ、陰極と発光層との間にケトン系溶媒を含んで形成された層を有すると、有機電界発光素子が発光効率に優れ、長寿命化された素子となることを見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、陽極と陰極との間に発光層を含む複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、上記有機電界発光素子は、陰極と発光層との間にケトン系溶媒を含んで形成された層を有することを特徴とする有機電界発光素子である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に発光層を含む複数の層が積層された構造を有し、陰極と発光層との間にケトン系溶媒を含んで形成された層を有することを特徴とする。陰極と発光層との間にケトン系溶媒を含んで形成された層を有すると、ケトン系溶媒の影響により、ケトン系溶媒を含んで形成された層の前後の層の間でのエネルギー準位調整や分子配向の変化などによる移動度の改善が行われ、電子の移動がより円滑に行われるようになり、その結果、素子の発光効率が向上し、同時に長寿命化すると考えられる。
本発明の有機電界発光素子は、ケトン系溶媒を含んで形成された層を1層有していてもよく、2層以上有していてもよい。
上記ケトン系溶媒を含んで形成された層とは、当該層を形成する材料の溶媒としてケトン系溶媒を用いて調製された材料溶液を用いて形成された層、又は、当該層の下地となる層をケトン系溶媒で処理することで形成された層のいずれかを意味する。
これらいずれの形態の場合でも、発光効率に優れ、さらに相対的に長寿命化した素子が得られることになるが、特に、ケトン系溶媒を用いて調製された材料溶液を用いて形成された層を有する場合には、素子がより発光効率に優れたものとなり、更に素子寿命にも優れたものとなるため好ましい。素子がケトン系溶媒を用いて調製された材料溶液を用いて形成された層を有する場合、上述した当該層の前後の層の間のエネルギー準位を調整する作用に加え、当該層を形成している材料中にもケトン系溶媒が含まれることで材料中を流れる電子の速度も向上するためと考えられる。
上記ケトン系溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、3,5,5−トリメチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の1種又は2種以上を用いることができる。
本発明におけるケトン系溶媒は、1atmでの沸点が100℃以上であることが好ましい。溶媒がこのような沸点であると、塗布により層を形成する際に通常用いられる加熱温度で乾燥させることができる。ケトン系溶媒の1atmでの沸点は、より好ましくは、120℃以上であり、更に好ましくは、130℃以上である。
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に発光層を含み、更に、陰極と発光層との間にケトン系溶媒を含んで形成された層を有するものである限り、素子の積層構造は特に制限されない。有機電界発光素子を構成する層には、発光層の他、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層等があり、これらの層が適宜選択されて積層され、有機電界発光素子が構成される。ケトン系溶媒を含んで形成された層は、電子注入層や電子輸送層であってもよく、これらの層や発光層を形成する前に、下地となる層の表面をケトン系溶媒で処理することで形成された層であってもよい。
本発明の有機電界発光素子は、素子の積層構造は特に制限されないが、陰極、電子注入層、必要に応じて電子輸送層、発光層、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、陽極の各層がこの順に隣接して積層され、電子注入層及び/又は電子輸送層がケトン系溶媒を含んで形成された層である素子、又は、陰極、電子注入層、必要に応じて電子輸送層、発光層、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、陽極の各層がこの順に積層され、陰極から発光層までの各層の間の1つ又は2つ以上にケトン系溶媒で処理することで形成された層を有し、ケトン系溶媒で処理することで形成された層を間に有する層以外の陰極から陽極までの各層が隣接して積層されている素子であることが好ましい。ケトン系溶媒で処理することで形成された層を有する有機電界発光素子のより好ましい形態は、陰極と電子注入層との間、電子注入層と電子輸送層との間、若しくは、電子注入層又は電子輸送層と発光層との間の少なくとも1つ以上に、ケトン系溶媒で処理することで形成された層を有することである。
本発明の有機電界発光素子が後述するバッファ層を有する場合であって、電子輸送層を有さない場合、又は、バッファ層が電子輸送層も兼ねる場合には、上記素子の構成において、電子注入層と発光層との間の「必要に応じて電子輸送層」の部分に「バッファ層」を有する素子であることが好ましい。
本発明の有機電界発光素子が後述するバッファ層を有し、バッファ層とは別に独立した層として電子輸送層を有する場合には、上記素子の構成において、電子注入層と発光層との間の「必要に応じて電子輸送層」の部分に、「バッファ層、電子輸送層」をこの順に有する素子であることが好ましい。
バッファ層が後述する有機化合物によって形成される場合、当該有機化合物をケトン系溶媒に溶解した溶液を塗布することでバッファ層を形成することは、本発明の好適な形態の1つである。
なお、これらの有機電界発光素子を構成する各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に陽極が形成された順構造の素子であってもよく、基板上に陰極が形成された逆構造の素子であってもよいが、逆構造の素子であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。その中でも後述する酸化物層を含む逆構造素子は本発明の好適な実施形態の1つである。
逆構造の素子では、順構造の素子に比べて大気安定性の高い材料を陰極に用いることができるため、簡易封止環境下でもより保存安定性の高い素子とすることが可能である。したがって、本発明の素子を逆構造のものとすると、ケトン系溶媒を含んで形成された層を有することとの相乗効果により、簡易封止環境下でも保存安定性が高く、高効率かつ長寿命の素子とすることができる。
以下では、酸化物層を有する逆構造の素子について説明する。順構造では、非特許文献1ならびにそれ以降開示されてきた構造を用いることができる。順構造の素子の各層の材料は、以下に示す逆構造素子に用いられる材料と同じものを使用することができる。
本発明の有機電界発光素子において、陽極及び陰極としては、公知の導電性材料を適宜用いることができるが、光取り出しのために少なくともいずれか一方は透明であることが好ましい。公知の透明導電性材料の例としてはITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)などが上げられる。不透明な導電性材料の例としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、錫、インジウム、銅、銀、金、白金やこれらの合金などが挙げられる。
本発明の有機電界発光素子が順構造の素子である場合、陰極としては、Mg、Ca、又は、Alが好ましく、陽極としては、ITO、IZO、FTOが好ましい。
本発明の有機電界発光素子が逆構造の素子である場合、陰極としては、ITO、IZO、FTOが好ましく、陽極としては、Au、Ag、Alが好ましい。
本発明の有機電界発光素子が逆構造の素子である場合、一般に陽極に用いられる金属を陰極及び陽極に用いる事ができる事から、上部電極からの光の取り出しを想定する場合(トップエミッション構造の場合)も容易に実現でき、上記電極を種々選んでそれぞれの電極に用いる事ができる。例えば、下部電極としてAl、上部電極にITOなどである。
上記陰極の平均厚さは、特に制限されないが、10〜500nmであることが好ましい。より好ましくは、100〜200nmである。陰極の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
上記陽極の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、30〜150nmである。また、不透過な材料を用いる場合でも、例えば平均厚さを10〜30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極として使用することができる。
陽極の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に酸化物層を有することが好ましい。
陽極と陰極との間に酸化物層を有するものであると、有機電界発光素子がより連続駆動寿命に優れたものとなる。
より好ましくは、陰極と発光層との間に第1の金属酸化物層を有し、陽極と発光層との間に第2の金属酸化物層を有することである。
なお、金属酸化物層の重要性は、第1の金属酸化物層の方が高く、第2の金属酸化物層は、最低非占有分子軌道の極端に深い有機材料、例えば、HATCNでも置き換える事ができる。
上記第1の金属酸化物層は、陰極の一部又は電子注入層として機能し、第2の金属酸化物層は、陽極の一部又は正孔注入層として機能する層である。
第1の金属酸化物層は、単体の金属酸化物膜の一層からなる層、もしくは、単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層である半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層である。金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素からなる群から選ばれる。これらのうち、積層又は混合金属酸化物層を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましく、その中でも単体の金属酸化物ならば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物を含むことが好ましい。
上記単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層の例としては、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウムなどの金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものや、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛などの三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものなどが挙げられる。これらの中には、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZOやエレクトライドである12CaO7Alも含まれる。
なお、本発明においては、シート抵抗が100Ω/□より低い物は導電体、シート抵抗が100Ω/□より高い物は半導体または絶縁体として分類される。従って、透明電極として知られているITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等の薄膜は、導電性が高く半導体または絶縁体の範疇に含まれないことから本発明の第1の金属酸化物層を構成する一層に該当しない。
上記第2の金属酸化物層を形成する金属酸化物としては、特に制限されないが、酸化バナジウム(V)、酸化モリブテン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化ルテニウム(RuO)等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものが好ましい。第2の金属酸化物層が酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものにより構成されると、第2の金属酸化物層が陽極から正孔を注入して発光層又は正孔輸送層へ輸送するという正孔注入層としての機能により優れたものとなる。また、酸化バナジウム又は酸化モリブテンは、それ自体の正孔輸送性が高いため、陽極から発光層又は正孔輸送層への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止することもできるという利点がある。より好ましくは、酸化バナジウム及び/又は酸化モリブテンから構成されるものである。第2の酸化物層は、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HATCN)や2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン(FTCNQ)などの有機アクセプター材料を用いることもできる。
上記第1の金属酸化物層の平均厚さは、1nmから数μm程度まで許容できるが、低電圧で駆動できる有機電界発光素子とする点から、1〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、2〜100nmである。
上記第2の金属酸化物層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、5〜50nmである。
第1の金属酸化物層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
第2の金属酸化物層の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
本発明の有機電界発光素子は、酸化物層と発光層との間に、有機化合物を含む溶液を塗布して形成されるバッファ層を有することが好ましい。
有機電界発光素子の酸化物層は、後述するようにスプレー熱分解法、ゾルゲル法、スパッタ法等の方法で成膜され、表面は平滑ではなく凹凸を持つ。この酸化物層の上に、真空蒸着等の方法で発光層を成膜した場合、発光層の原料となる成分の種類によっては、酸化物層の表面の凹凸が結晶核となり、酸化物層に接する発光層を形成する材料の結晶化が促進される。このため、有機電界発光素子を完成させたとしても、大きなリーク電流が流れ、発光面が不均一化して、実用に耐える素子が得られない場合がある。
しかし、溶液を塗布してバッファ層を形成すると、表面の平滑な層を形成することができるため、酸化物層と発光層との間に塗布によりバッファ層を形成すると、発光層を形成する材料の結晶化が抑制され、これによって、酸化物層を有する有機電界発光素子が発光層等として結晶化が起こりやすい材料を用いた場合でも、リーク電流の抑制と、均一な面発光を得ることができることになる。
上記バッファ層は、平均厚さが5〜100nmであることが好ましい。平均厚さがこのような範囲であることで、発光層の結晶化を抑制する効果を充分に発揮することができる。バッファ層の平均厚さが5nmより薄いと、酸化物表面に存在する凹凸を十分に平滑化できず、リーク電流が大きくなってバッファ層を形成することの効果を充分に発揮することができないおそれがある。また、バッファ層の平均厚さが100nmより厚いと、駆動電圧が上昇し実用上好ましくない。また、有機化合物として、後述する本発明における好ましい構造の化合物を用いた場合には、バッファ層は電子輸送層としての機能も充分に発揮することができる。上記バッファ層の平均厚さは、より好ましくは、10〜60nmである。また、本発明の有機電界発光素子の連続駆動寿命の点も考えると、上記バッファ層の平均厚さは、10〜30nmであることが更に好ましい。
バッファ層の平均厚さは触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
本発明の有機電界発光素子において、発光層を形成する材料としては、特に限定されず、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
上記発光層を形成する高分子材料としては、例えば、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;更には特願2010−230995号、特願2011−6457号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
上記発光層を形成する低分子材料としては、りん光発光材料のホスト材料としてビス[2−(o−ヒドロキシフェニルベンゾチアゾール]亜鉛(II)(ZnBTZ)などのホストとして機能する金属錯体、りん光発光するゲストとして機能するトリス[3−メチル−2−フェニルピリジン]イリジウム(III)(Ir(mpy)3)などの金属錯体の他、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)のようなベンゼン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、4,4’−ビス[9−ジカルバゾリル]−2,2’−ビフェニル(CBP)、4、4’−ビス(9−エチルー3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)のようなカルバゾール系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、さらには特開2009−155325号公報および特願2010−28273号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記発光層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、20〜100nmである。
発光層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
上記正孔輸送層の材料としては、正孔輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
またこれらの化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
上記p型の低分子材料としては、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OxZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フルオレンのようなフルオレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、α−NPD、TPTEのようなアリールアミン系化合物が好ましい。
本発明の有機電界発光素子が独立した層として正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、40〜100nmである。
正孔輸送層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
上記電子輸送層の材料としては、電子輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、これらを混合して用いてもよい。
電子輸送層の材料として用いることができる低分子化合物の例としては、後述する式(15)で表されるホウ素含有化合物の他、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3’’−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ))、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、Alqのような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体が好ましい。
本発明の有機電界発光素子が独立した層として電子輸送層を有する場合、電子輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、40〜100nmである。
電子輸送層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
本発明の有機電界発光素子において、ケトン系溶媒で処理することで層を形成する方法としては、当該層の下地となる層の表面にケトン系溶媒を塗布して層を形成する方法が好ましい。下地となる層の表面にケトン系溶媒を塗布する方法は特に制限されず、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、バーコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布方法を用いることができる。
本発明の有機電界発光素子において、ケトン系溶媒を含んで形成された層の材料の溶媒としてケトン系溶媒を用いて調製された材料溶液を用いて当該層を形成する場合、材料溶液の濃度は、0.01〜10.0質量%であることが好ましい。このような濃度であると、形成された層がケトン系溶媒を含むことによる効果をより充分に発揮することができる。材料溶液の濃度は、より好ましくは0.05〜5.0質量%であり、更に好ましくは、0.1〜1.0質量%である。
上記材料溶液を用いて層を形成する場合、当該材料溶液を塗布することで層を形成することが好ましい。材料溶液を塗布する方法としては、上記ケトン系溶媒で処理することで層を形成する場合のケトン系溶媒を塗布する方法と同様の方法を用いることができる。
本発明の有機電界発光素子において、酸化物層、陰極、陽極、発光層、正孔輸送層、電子輸送層を形成する方法は特に制限されず、気相成膜法であるプラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射法、そして液相成膜法である電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、ゾル・ゲル法、MOD法、スプレー熱分解法、微粒子分散液を用いたドクターブレード法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーンプリンティング法等の印刷技術等を用いることができ、材料に応じた適切な方法を選択して用いることができる。
これらの方法は各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作成方法が異なっていても良い。第2の金属酸化物層は、これらの中でも、気相製膜法を用いて形成するのがより好ましい。気相製膜法によれば、有機化合物層の表面を壊すことなく清浄にかつ陽極と接触よく形成することができ、その結果、上述したような第2の金属酸化物層を有することによる効果がより顕著なものとなる。
本発明の有機電界発光素子において、上述したバッファ層は、有機化合物を含む溶液を塗布することで形成される層であることが好ましい。塗布により所定の厚みのバッファ層を形成することでバッファ層上に成膜する層を形成する材料の結晶化を効果的に抑制することが可能となる。
上記有機化合物を含む溶液を塗布する方法としては、上記ケトン系溶媒で処理することで層を形成する場合のケトン系溶媒を塗布する方法を用いることができる。このうち、膜厚をより制御しやすいという点でスピンコート法やスリットコート法が好ましい。
バッファ層を塗布成膜することで、酸化物層表面に存在する凹凸が平滑化されるため、次にバッファ層上に成膜する層を形成する材料の結晶化が抑制される。
上記有機化合物を含む溶液を調製するために使用する溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
これらの中でも、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、3,5,5−トリメチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒が好ましい。
上記有機化合物を含む溶液は、溶媒中の有機化合物の濃度が0.05〜10質量%であることが好ましい。このような濃度であると、塗布した時の塗りムラや凹凸の発生を抑えることができる。溶媒中の有機化合物の濃度はより好ましくは、0.1〜5質量%であり、更に好ましくは0.1〜3質量%である。
本発明の有機電界発光素子は、基板がある側とは反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよく、基板がある側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
本発明の有機電界発光素子に用いられる基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
また、トップエミッション型の場合には、不透明基板も用いることができ、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等も用いることができる。
上記基板の平均厚さは、0.1〜30mmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10mmである。
基板の平均厚さはデジタルマルチメーター、ノギスにより測定することができる。
本発明の有機電界発光素子において、バッファ層を形成する有機化合物は、塗布により有機化合物の層の形成が可能なものであれば特に制限されないが、有機化合物の例としては、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジオクチルフルオレンのようなポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物や、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(TmPyPB)のような低分子化合物も塗布により良好な薄膜が形成できるものに関しては使用できる。下記の式(1)で表されるホウ素含有化合物等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記バッファ層は、還元剤を含むものであることが好ましい。還元剤はn−ドーパントとして働くため、バッファ層が還元剤を含むことで陰極から発光層への電子の供給が充分に行われるため、発光の効率が向上する。
上記バッファ層が含む還元剤は、電子供与性の化合物であれば特に制限されないが、1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1,3−ジメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、1,3,5−トリメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール化合物;ロイコクリスタルバイオレット(=トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン)、ロイコマラカイトグリーン(=ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン)、トリフェニルメタン等のトリフェニルメタン化合物;2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)等のジヒドロピリジン化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物や、ジヒドロピリジン化合物が好ましい。より好ましくは、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、または2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)である。
上記バッファ層が含む還元剤の量は、バッファ層を形成する有機化合物100質量%に対して、0.1〜15質量%であることが好ましい。還元剤をこのような割合で含むと、有機電界発光素子の発光効率を充分に高いものとすることができる。より好ましくは、バッファ層を形成する有機化合物100質量%に対して、0.5〜10質量%であり、更に好ましくは、1〜5質量%である。
本発明の有機電界発光素子において、バッファ層を形成する有機化合物は、ホウ素原子を有する有機化合物であることが好ましい。より好ましくは、ホウ素原子を有する有機化合物が下記式(1)または下記式(7)または下記式(10)で表される構造の化合物である。
すなわち、本発明の有機電界発光素子において、バッファ層を形成するホウ素原子を有する有機化合物は、下記式(1);
Figure 2016054173
(式(1)中、点線の円弧は、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。X、X、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。nは2〜10の整数を表す。Yは直接結合又はn価の連結基であり、n個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所で結合していることを表す。)で表されるホウ素含有化合物であることが好ましい。
上記式(1)において、点線の円弧は、実線で表される骨格部分、すなわちホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部又はホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分の一部、と共に環構造が形成されていることを表している。これは、上記式(1)で表される化合物が構造中に少なくとも4つ環構造を有し、上記式(1)において、ホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分及びホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分が、該環構造の一部として含まれていることを表している。なお、Xの結合する環構造は、その環構造骨格が炭素原子以外の原子を含まず、炭素原子からなるものである。
上記式(1)において、実線で表される骨格部分、すなわちホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分及びホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分、における点線部分は、それぞれの骨格部分において点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。
上記式(1)において、窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。ここで、配位しているとは、窒素原子がホウ素原子に対して配位子と同様に作用して化学的に影響していることを意味し、配位結合(共有結合)となっていてもよく、配位結合を形成していなくてもよい。好ましくは、配位結合となっていることである。
上記式(1)において、Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しているものであって、置換基を有していてもよい。これは、Q及びQがそれぞれ、該環構造の一部として組み込まれていることを表している。
上記式(1)において、X、X、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。すなわち、X、X、X及びXが水素原子である場合には、上記式(1)で表される化合物の構造中、X、X、X及びXを有する4つの環構造は置換基を有していないことを示し、X、X、X及びXのいずれか、又は、全てが、1価の置換基である場合には、該4つの環構造のいずれか、又は、いずれもが置換基を有することとなる。その場合には、1つの環構造の有する置換基の数は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
なお、本明細書中において置換基とは、炭素を含む有機基と、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等の炭素を含まない基とを含めた基を意味している。
上記式(1)において、nは2〜10の整数を表し、Yは、直接結合又はn価の連結基である。すなわち、上記式(1)で表される化合物においては、Yが、直接結合であり、2個存在するY以外の構造部分どうしがそれぞれ独立に、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所で結合しているか、又は、Yがn価の連結基であり、上記式(1)におけるY以外の構造部分が複数存在し、それらが連結基であるYを介して結合することとなる。
上記式(1)において、Yが、直接結合である場合、上記式(1)は、2個存在するY以外の構造部分の一方の、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所と、もう一方の、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所とが直接結合していることを表す。当該結合位置は特に制限されないが、Y以外の構造部分の一方のXが結合している環又はXが結合している環と、もう一方のXが結合している環又はXが結合している環とが直接結合していることが好ましい。より好ましくは、Y以外の構造部分の一方のXが結合している環と、もう一方のXが結合している環とが直接結合していることである。
この場合、2個存在するY以外の構造部分の構造は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記式(1)において、Yが、n価の連結基であり、上記式(1)におけるY以外の構造部分が複数存在し、それらが連結基であるYを介して結合している場合、このように複数存在する上記式(1)におけるY以外の構造部分が連結基であるYを介して結合する構造は、Y以外の構造部分が直接結合している構造よりも、更に酸化に強くなり製膜性も向上することから、より好ましい。
なお、Yが、n価の連結基である場合、Yは、n個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所で結合しているものであるが、これは、Y以外の構造部分が、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所でYと結合していればよく、Y以外の構造部分のYとの結合部位は、n個存在するY以外の構造部分それぞれに独立であって、全て同一部位であってもよいし、一部が同一部位であってもよいし、全て異なる部位であってもよい、ということを意味している。当該結合位置は特に制限されないが、n個存在するY以外の構造部分の全てが、Xが結合している環又はXが結合している環でYと結合していることが好ましい。より好ましくは、n個存在するY以外の構造部分の全てが、Xが結合している環でYと結合していることである。
また、n個存在するY以外の構造部分の構造は、全て同一であってもよいし、一部が同一であってもよいし、全て異なっていてもよい。
上記式(1)におけるYがn価の連結基である場合、該連結基としては、例えば、置換基を有していてもよい鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、置換基を有していてもよいヘテロ元素を含む基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基が挙げられる。これらの中でも、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基といった芳香環を有する基であることが好ましい。すなわち、上記式(1)におけるYは、芳香環を有する基であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
更に、Yは、上述した連結基が複数組み合わさった構造を有する連結基であってもよい。
上記鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基としては、下記式(2−1)〜(2−8)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記式(2−1)、(2−7)がより好ましい。
上記へテロ元素を含む基としては、下記式(2−9)〜(2−13)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記式(2−12)、(2−13)がより好ましい。
上記アリール基としては、下記式(2−14)〜(2−20)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記式(2−14)、(2−20)がより好ましい。
上記複素環基としては、下記式(2−21)〜(2−27)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記式(2−23)、(2−24)がより好ましい。
Figure 2016054173
上記鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、ヘテロ元素を含む基、アリール基、複素環基が有する置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のハロゲン原子;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜10のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基等のジアリールアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、スチリル基等の炭素数2〜30のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基等の炭素数2〜30のアルキニル基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基等で置換されていてもよいアリール基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基で置換されていてもよい複素環基;N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基等のN,N−ジアルキルカルバモイル基;ジオキサボロラニル基、スタニル基、シリル基、エステル基、ホルミル基、チオエーテル基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子やヘテロ元素、アルキル基、芳香環等で置換されていてもよい。
これらの中でも、Yにおける鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、ヘテロ元素を含む基、アリール基、複素環基が有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、ジアリールアミノ基が好ましい。より好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ジアリールアミノ基である。
上記Yにおける鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、ヘテロ元素を含む基、アリール基、複素環基が置換基を有する場合、置換基が結合する位置や数は特に制限されない。
上記式(1)におけるnは、2〜10の整数を表すが、好ましくは、2〜6の整数である。より好ましくは、2〜5の整数であり、更に好ましくは、2〜4の整数であり、特に好ましくは、溶媒への溶解性の観点から、2又は3である。最も好ましくは2である。すなわち、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物は、二量体であることが最も好ましい。
上記式(1)におけるQ及びQとしては、下記式(3−1)〜(3−8);
Figure 2016054173
で表される構造が挙げられる。なお、上記式(3−2)は、炭素原子に水素原子が2つ結合し、更に3つの原子が結合する構造であるが、当該水素原子以外の、炭素原子に結合する3つの原子は、いずれも水素原子以外の原子である。上記式(3−1)〜(3−8)の中でも、(3−1)、(3−7)、(3−8)のいずれかが好ましい。より好ましくは、(3−1)である。すなわち、Q及びQが、同一又は異なって、炭素数1の連結基を表すこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記式(1)において、点線の円弧と、実線で表される骨格部分の一部とによって形成される環構造は、Xの結合する環構造の骨格が炭素原子からなる限り、環状構造であれば特に制限されない。
上記式(1)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、トリフェニレン環、ピレン環、フルオレン環、インデン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インドール環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環が挙げられ、これらはそれぞれ、下記式(4−1)〜(4−33)で表される。
これらの中でも、環構造骨格が炭素原子のみからなるものが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、トリフェニレン環、ピレン環、フルオレン環、インデン環が好ましい。より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、更に好ましくは、ベンゼン環である。
Figure 2016054173
上記式(1)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環としては、例えば、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、フェナントリジン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環が挙げられる。これらはそれぞれ、下記式(5−1)〜(5−17)で表される。なお、下記式(5−1)〜(5−17)中の*印は、Xが結合している環を構成し、かつ、上記式(1)におけるホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分を構成する炭素原子が、*印の付された炭素原子のいずれか1つと結合することを表している。また、*印の付された炭素原子を除く位置で他の環構造と縮環していてもよい。これらの中でも、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、フェナントリジン環が好ましい。より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環である。更に好ましくは、ピリジン環である。
Figure 2016054173
また、上記式(1)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環及びXが結合している環としては、上記式(4−1)〜(4−33)で表される環が挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。より好ましくは、ベンゼン環である。
上記式(1)において、X、X、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表す。該1価の置換基としては特に制限されないが、X、X、X及びXとしては、例えば、水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、チオール基、エポキシ基、アシル基、置換基を有していてもよいオリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アゾ基、スタニル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルフィニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルフィニル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基;メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基等のアルキルスルホネート基;ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基等のアリールスルホネート基;ベンジルスルホネート基等のアリールアルキルスルホネート基、ボリル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アリールスルホネート基、アルデヒド基、アセトニトリル基等が挙げられる。
上記X、X、X及びXにおける置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のハロゲン原子;塩化メチル基、臭化メチル基、ヨウ化メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ヒドロキシ基;チオール基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;アゾ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜40のアルキル基を有するモノ又はジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基などのアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、フェニルアセチニル等の炭素数2〜20のアルキニル基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基;エチニルオキシ基、フェニルアセチルオキシ基等のアルキニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、ピレニルオキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロフェニル基等のパーフルオロ基及び更に長鎖のパーフルオロ基;ジフェニルボリル基、ジメシチルボリル基、ビス(パーフルオロフェニル)ボリル基等のボリル基;アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル基;アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等のスルフィニル基;アルキルスルホニルオキシ基;アリールスルホニルオキシ基;ホスフィノ基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリフェニルシリル基等のシリル基;シリルオキシ基;スタニル基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基等で置換されていてもよいフェニル基、2,6−キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、フェナンスレニル基等のアリール基;チエニル基、フリル基、シラシクロペンタジエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、アクリジニル基、キノリル基、キノキサロイル基、フェナンスロリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基等のヘテロ環基;カルボキシル基;カルボン酸エステル;エポキシ基;イソシアノ基;シアネート基;イソシアネート基;チオシアネート基;イソチオシアネート基;カルバモイル基;N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基等のN,N−ジアルキルカルバモイル基;ホルミル基;ニトロソ基;ホルミルオキシ基;等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子やアルキル基、アリール基等で置換されていてもよく、更に、これらの基がお互いに任意の場所で結合して環を形成していてもよい。
これらの中でも、X、X、X及びXとしては、水素原子;ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオール基、エポキシ基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等の反応性基;炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;アリール基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アリール基;オリゴアリール基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、オリゴアリール基;1価の複素環基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、1価のオリゴ複素環基;アルキルチオ基;アリールオキシ基;アリールチオ基;アリールアルキル基;アリールアルコキシ基;アリールアルキルチオ基;アルケニル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アルケニル基;アルキニル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アルキニル基が好ましい。
より好ましくは、水素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アミノ基、ボリル基、アルキニル基、アルケニル基、ホルミル基、シリル基、スタニル基、ホスフィノ基、該反応性基で置換されたアリール基、該反応性基で置換されたオリゴアリール基、1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基、該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基、アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基、アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基である。中でも、X及びXとして更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、含窒素複素芳香族基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基等の還元に強い官能基である。特に好ましくは、水素原子、アリール基、含窒素複素芳香族基である。また、X及びXとして更に好ましくは、水素原子、カルバゾリル基、トリフェニルアミノ基、チエニル基、フラニル基、アルキル基、アリール基、インドリル基等の酸化に強い官能基である。特に好ましくは、水素原子、カルバゾリル基、トリフェニルアミノ基、チエニル基である。このように、X及びXとして還元に強い官能基を有し、X及びXとして酸化に強い官能基を有するものとすると、ホウ素含有化合物全体として更に還元にも酸化にも強い化合物となるものと考えられる。
なお、上記式(1)において、X、X、X及びXが1価の置換基である場合、環構造に対するX、X、X及びXの結合位置や結合する数は、特に制限されない。
上記式(1)において、Yがn価の連結基であり、nが2〜10である場合、Xが結合している環としては、上記式(1)において、Yが直接結合であり、nが2である場合にXが結合している環と同様である。それらの環の中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。より好ましくは、ベンゼン環である。
上記式(1)において、Yがn価の連結基であり、nが2〜10である場合、Xが結合している環、Xが結合している環、及び、Xが結合している環としては、それぞれ、上記式(1)においてYが直接結合であり、nが2である場合にXが結合している環、Xが結合している環、及びXが結合している環として挙げられた環と同様であり、好ましい構造も同様である。
すなわち、上記式(1)におけるYが直接結合であって、nが2である場合、及び、Yがn価の連結基であり、nが2〜10である場合のいずれの場合においても、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物が、下記式(6);
Figure 2016054173
(式(6)中、窒素原子からホウ素原子への矢印、X、X、X、X、n及びYは式(1)と同様である。)で表されるホウ素含有化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記式(1)で表されるホウ素含有化合物は、Suzukiカップリング反応等の通常用いられる種々の反応を用いることにより合成することができる。また、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of the American Chemical Society)、2009年、第131巻、第40号、14549−14559頁に記載の手法によっても合成可能である。
上記式(1)で表されるホウ素含有化合物の合成スキームの一例を挙げると下記反応式のように表される。下記反応式(I)は、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物であって、Yが直接結合であり、nが2であるものの合成スキームの一例を表し、下記反応式(II)は、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物であって、Yがn価の連結基であり、nが2〜10であるものの合成スキームの一例を表している。ただし、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物の製造方法は、これに制限されない。
なお、下記スキームにおいて、原料となる(a)の化合物は、例えば、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)、2010年、第75巻、第24号、8709−8712頁に記載の手法により合成可能である。また、原料となる(b)の化合物は、(a)の化合物に対して下記反応式(III)で表されるホウ素化反応により合成することができる。
Figure 2016054173
Figure 2016054173
Figure 2016054173
また、本発明の有機電界発光素子のバッファ層を形成する有機化合物としては、下記式(7)で表されるホウ素含有化合物も好ましい。
Figure 2016054173
(式中、点線の円弧は、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。X、Xは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表す。X、Xは、同一又は異なって、環構造の置換基となる電子輸送性の1価の置換基を表す。X、X、X及びXは、それぞれ点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。)
上記式(7)において、点線の円弧は、実線で表される骨格部分、すなわちホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分の一部又は、ホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表している。これは、式(7)で表される化合物が構造中に少なくとも4つ環構造を有し、式(7)において、ホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分及びホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分が、該環構造の一部として含まれていることを表している。
上記式(7)において、実線で表される骨格部分、すなわちホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分、及び、ホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、それぞれの骨格部分において点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。
上記式(7)において、窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。ここで、配位しているとは、窒素原子がホウ素原子に対して配位子と同様に作用して化学的に影響していることを意味する。
上記式(7)において、Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しているものであって、置換基を有していてもよい。これは、Q及びQがそれぞれ、該環構造の一部として組み込まれていることを表している。
上記式(7)におけるQ及びQとしては、上記式(3−1)〜(3−8)で表される構造が挙げられる。なお、一般式(3−2)は、炭素原子に水素原子が2つ結合し、更に3つの原子が結合する構造であるが、当該水素原子以外の、炭素原子に結合する3つの原子は、いずれも水素原子以外の原子である。上記一般式(3−1)〜(3−8)の中でも、(3−1)、(3−7)、(3−8)のいずれかが好ましい。より好ましくは、(3−1)である。すなわち、Q及びQが、同一又は異なって、炭素数1の連結基を表すこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記式(7)において、X〜Xが結合している環としては、上記式(1)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環の具体例と同様の環が挙げられる。それらの中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。より好ましくは、ベンゼン環である。
上記式(7)において、Xが結合している環としては、上記式(1)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環の具体例と同様の環が挙げられ、その中での好ましい環構造も同様である。なお、上記式(5−1)〜(5−17)中の*印は、Xが結合している環を構成し、かつ、式(7)におけるホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分を構成する炭素原子が、*印の付された炭素原子のいずれか1つと結合することを表している。また、*印の付された炭素原子を除く位置で他の環構造と縮環していてもよい。
すなわち、上記式(7)で表されるホウ素含有化合物が、下記式(8);
Figure 2016054173
(式中、窒素原子からホウ素原子への矢印、X、X、X及びXは式(7)と同様である。)で表されるホウ素含有化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。本発明のホウ素含有化合物は上記式(8)で表される構造を有することにより、ホウ素原子に配位している窒素原子を除いて、X、X、X、Xが結合している環が炭素原子のみで構成されることとなるため、Sなどのヘテロ原子を環内に含む化合物の場合に比べて、軌道の広がりが小さくなり、一般論としてHOMO−LUMOのエネルギーギャップが広く保たれるといった特徴を有することとなる。このような特徴から、例えば、有機EL素子のりん光ホスト材料としてより好適に用いることができる。
上記式(7)において、X、Xは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表す。該1価の置換基としては特に制限されないが、上記式(1)におけるX、X、X及びXの1価の置換基の具体例と同様のものが挙げられ、より好ましい置換基にオリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基も含まれる他は、好ましい置換基も同様である。
なお、上記式(7)において、X、X、X及びXが1価の置換基である場合、環構造に対するX、X、X及びXの結合位置や結合する数は、特に制限されない。
上記式(7)において、X、Xは、同一又は異なって、環構造の置換基となる電子輸送性の1価の置換基を表す。X、Xとして電子輸送性の置換基を有することで、上記式(7)で表されるホウ素含有化合物は、電子輸送性に優れた材料となる。
該電子輸送性の1価の置換基としては、例えば、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環等の環内に炭素−窒素二重結合(C=N)を有する窒素原子含有複素環由来1価の基;一つ以上の電子求引性置換基を有するベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環等の環内に炭素−窒素二重結合を有しない芳香族炭化水素環または芳香族複素環由来の1価の基;ジベンゾチオフェンジオキシド環、ジベンゾホスホールオキシド環、シロール環等が挙げられる。
上記電子求引性置換基としては、−CN、−COR、−COOR、−CHO、−CF、−SOPh、−PO(Ph)等が挙げられる。ここで、Rは、水素原子又は1価の炭化水素基を表す。
これらの中でも、電子輸送性の1価の置換基は、環内に炭素−窒素二重結合(C=N)を有する窒素原子含有複素環由来の基であることが好ましい。
電子輸送性の1価の置換基は、環内に炭素−窒素二重結合を有する複素芳香環化合物由来の1価の基のいずれかであることがより好ましい。
上記X、X、X及びXにおける置換基としては、上記式(1)のX、X、X及びXにおける置換基と同様である。
上記式(7)で表されるホウ素含有化合物は、下記式(9)のような合成方法により合成することが好ましい。なお、下記式中、Zは、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
Figure 2016054173
上記式(9)で表される合成方法の第1工程に用いる溶媒は特に制限されないがヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
なお、上記式(9)で表される合成方法の第1工程は、特開2011−184430号公報の記載を参照して行うことができる。
第2工程の反応を行う温度は、0℃〜40℃が好ましく、常圧、減圧、加圧のいずれの条件で反応を行ってもよい。
また、第2工程の反応を行う時間は、3〜48時間が好ましい。
上記式(9)で表される合成方法では、上記第2工程の後に更に、X〜Xのいずれか1つ以上の置換基を別の置換基に交換する1つ又は複数の工程を行ってもよい。例えば、X〜Xのいずれかがハロゲン原子である場合は、Stillクロスカップリング反応や鈴木−宮浦クロスカップリング反応、園頭クロスカップリング反応、Heckクロスカップリング反応、桧山カップリング反応、根岸カップリング反応等を用いることで、ハロゲン原子を置換基Xに交換することができる。
また、上記カップリング反応の反応条件としては、各カップリング反応が通常行われる反応条件を適宜採用することができる。
また、本発明の有機電界発光素子のバッファ層を形成する材料としては、下記式(10);
Figure 2016054173
(式中、点線の円弧は、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。X、X10、X11及びX12は、同一又は異なって、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、又は、直接結合を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。Aは、同一又は異なって、2価の基を表す。nを付した括弧内の構造単位は、X、X10、X11及びX12のいずれか2つで隣の構造単位と結合している。n、nは、それぞれ独立に、同一又は異なって、1以上の数を表す。)で表される繰り返し単位の構造を有する重合体も好ましい。
上記式(10)におけるQ、Qはそれぞれ、上記式(7)におけるQ、Qと同様であり、好ましい形態も同様である。すなわち、Q及びQは、同一又は異なって、炭素数1の連結基を表すことが好ましい。
上記式(10)において、点線の円弧、実線で表される骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印は、上記式(7)と同様の意味であり、点線の円弧の好ましい構造も上記式(7)と同様である。すなわち、本発明のホウ素含有重合体(10)は、下記式(11);
Figure 2016054173
(式中、窒素原子からホウ素原子への矢印、X、X10、X11、X12、A、n及びnは、式(10)と同様である。nを付した括弧内の構造単位の隣の構造単位との結合も式(10)と同様である。)で表される繰り返し単位の構造を有することが好ましい。
上記式(10)において、nは、nを付した括弧内の構造単位の数を表し、1以上の数を表す。nは、nを付した括弧内の構造単位の数を表し、1以上の数を表す。n、nは、それぞれ独立に、同一又は異なって、1以上の数を表すが、これは、以下のような意味である。
、nは、それぞれ独立した数である。このため、n、nは同じ数であっても異なる数であってもよい。
上記式(10)で表されるホウ素含有重合体は、上記式(10)で表される構造を1つ有するものであってもよく、複数有するものであってもよい。ホウ素含有重合体が上記式(10)で表される構造を複数有するものである場合、ある構造におけるn、nと、隣り合う構造におけるn、nとは、同一であっても異なっていてもよい。
したがって、上記式(10)で表されるホウ素含有重合体には、交互共重合体(上記式(10)で表される構造を2つ以上有し、全ての式(10)で表される構造において、nが同じ数であり、nも同じ数である)、ブロック共重合体(上記式(10)で表される構造を1つ有し、n、nの少なくとも1つが2以上)、ランダム共重合体(上記式(26)で表される構造を2つ以上有し、該複数の式(10)で表される構造の中に少なくとも1つ、n、nのいずれか又は両方が他の構造におけるn、nと異なるものがある)のいずれの構造のものも含まれる。
上記式(10)で表されるホウ素含有重合体は、これらの中でも、交互共重合体であることが好ましい。
上記式(10)において、X、X10、X11及びX12は、同一又は異なって、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、又は、直接結合を表す。
上記式(10)では、X、X10、X11及びX12のいずれか2つが、重合体の主鎖の一部として結合を形成することになる。X〜X12のうち、重合体の主鎖の一部として結合を形成するものは、直接結合となる。X、X10、X11及びX12のうち、重合に関与しないものは、水素原子又は1価の置換基となる。
、X10、X11及びX12のうち、重合に関与しない1価の基の具体例及び好ましいものは、上述した式(7)で表されるホウ素含有化合物のX、Xの具体例及び好ましいものと同様である。
上記式(10)で表されるホウ素含有重合体において、X、X10、X11及びX12のうち、直接結合は、X、X10、X11及びX12のいずれのものであってもよいが、XとX10、又は、X11とX12とが直接結合であることが好ましい。この場合、上記式(10)で表されるホウ素含有重合体は、下記式(12−1)、式(12−2)で表される繰り返し単位の構造を有する重合体となる。
Figure 2016054173
(式中、点線の円弧、実線で表される骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印、Q、Q、A、n及びnは、式(10)と同様である。式(12−1)中、X、X10は、直接結合を表し、X11、X12は、水素原子又は1価の置換基を表す。式(12−2)中、X11、X12は、直接結合を表し、X、X10は、水素原子又は1価の置換基を表す。)
上記式(10)で表されるホウ素含有重合体は、下記式(13);
Figure 2016054173
(式中、点線の円弧、実線で表される骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印、Q及びQは、式(10)と同様である。X’、X10’、X11’及びX12’は、同一又は異なって、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、X’、X10’、X11’及びX12’のうち少なくとも2つは、下記式(14)のX13、X14と反応する反応性基である。)で表される反応性基を有するホウ素含有化合物(10’)と、下記式(14);
13−A−X14 (14)
(式中、Aは、式(10)と同様である。X13、X14は、反応性基を表す。)で表される化合物とを反応させることで製造することが好ましい。
このようなホウ素含有化合物(10’)と式(14)で表される化合物とを反応させると、重縮合反応によりホウ素含有重合体(10)が合成されることになる。
’〜X12’のうち、式(14)のX13、X14と反応する反応性基以外の1価の置換基は、上記式(10)におけるX〜X12の1価の置換基と同様である。
重縮合し得る反応性基の組み合わせとしては、以下のいずれかのものが好ましく、ホウ素含有化合物(10’)と式(14)で表される化合物とが、これらのいずれかの重縮合し得る反応性基の組み合わせにより重縮合反応を行うことが好ましい。
ボリル基とハロゲン原子、スタニル基とハロゲン原子、アルデヒド基とホスホニウムメチル基、ビニル基とハロゲン原子、アルデヒド基とホスホネートメチル基、ハロゲン原子とハロゲン化マグネシウム、ハロゲン原子とハロゲン原子、ハロゲン原子とシリル基、ハロゲン原子と水素原子。
上記式(10)におけるAとしては、2価の基であれば、特に制限されないが、アルケニル基、アリーレン基、2価の芳香族複素環基のいずれかが好ましい。
上記アリーレン基とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団であり、環を構成する炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは6〜20である。該芳香族炭化水素としては、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環または縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。
上記アリーレン基としては、例えば、下記式(15−1)〜(15−23)で表される基等が挙げられる。これらの中でもフェニレン基、ビフェニレン基、フルオレン−ジイル基、スチルベン−ジイル基が好ましい。
なお、式(15−1)〜(15−23)において、Rは、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミド基、イミン残基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基またはシアノ基を表す。式(15−1)中においてx−yで示した線のように、環構造に交差して付された線は、環構造が被結合部分における原子と直接結合していることを意味する。すなわち、式(15−1)においては、x−yで示される線が付された環を構成する炭素原子のいずれかと直接結合することを意味し、その環構造における結合位置は限定されない。式(15−10)中においてz−で示した線のように、環構造の頂点に付された線は、その位置において環構造が被結合部分における原子と直接結合していることを意味する。また、環構造に交差して付されたRの付いた線は、Rが、その環構造に対して1つ結合していてもよく、複数結合していてもよいことを意味し、その結合位置も限定されない。
また、式(15−1)〜(15−10)及び(15−15)〜(15−20)において、炭素原子は、窒素原子と置き換えられていてもよく、水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
Figure 2016054173
Figure 2016054173
上記2価の芳香族複素環基とは、芳香族複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、環を構成する炭素数は通常3〜60程度である。該芳香族複素環化合物としては、環式構造をもつ芳香族有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素などのヘテロ原子を環内に含むものも含まれる。
上記2価の複素環基としては、例えば、下記式(16−1)〜(16−38)で表される複素環基等が挙げられる。
なお、式(16−1)〜(16−38)において、Rは、上記アリーレン基の有するRと同様である。Yは、O、S、SO、SO、Se、又は、Teを表す。環構造に交差して付された線、環構造の頂点に付された線、環構造に交差して付されたRの付いた線については、式(15−1)〜(15−23)と同様である。
また、式(16−1)〜(16−38)において、炭素原子は、窒素原子と置き換えられていてもよく、水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
Figure 2016054173
Figure 2016054173
上記式(10)で表されるホウ素含有重合体の塗布による製膜性を向上させる点からは、Aとしては上述したものの中でも、(15−1)、(15−9)、(16−1)、(16−9)、(16−16)、(16−17)が好ましい。より好ましくは、(15−1)、(15−9)である。
上記式(10)で表されるホウ素含有重合体は、重量平均分子量が5,000〜1,000,000であることが好ましい。
重量平均分子量がこのような範囲であると、良好に薄膜化できる。より好ましくは、10,000〜500,000であり、更に好ましくは30,000〜200,000である。
上記重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;クロロホルム)によって以下の装置、及び、測定条件で測定することができる。
高速GPC装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)を用いて測定した。
展開溶媒 クロロホルム
カラム TSK−gel GMHXL ×2本
溶離液流量 1ml/min
カラム温度 40℃
上記式(10)で表されるホウ素含有重合体は、例えば、上述したホウ素含有化合物(10’)と式(14)で表される化合物とを含む単量体成分を反応させることにより製造することができる。
該単量体成分は、ホウ素含有化合物(10’)と式(14)で表される化合物とを含む限り、その他の単量体を含んでいてもよいが、単量体成分全体100モル%に対して、ホウ素含有化合物(10’)と式(14)で表される化合物との合計が90モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、95モル%以上であり、最も好ましくは、100モル%、すなわち、単量体成分がホウ素含有化合物(10’)と式(14)で表される化合物のみを含むことである。
上記その他の単量体としては、ホウ素含有化合物(10’)又は式(14)で表される化合物と反応し得る反応性基を有する化合物が挙げられる。なお、上記単量体成分は、ホウ素含有化合物(10’)、式(14)で表される化合物とも、1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
上記式(10)で表されるホウ素含有重合体の原料となる単量体成分におけるホウ素含有化合物(10’)と式(14)で表される化合物とのモル比は、100/0〜10/90であることが好ましい。より好ましくは、70/30〜30/70であり、最も好ましくは、50/50である。
また、重合反応の際には、単量体成分の固形分濃度は、0.01質量%〜溶解する最大濃度の範囲で適宜設定することができるが、希薄すぎると反応の効率が悪く、濃すぎると反応の制御が難しくなる恐れがあることから、好ましくは、0.05〜10質量%である。
上記式(10)で表されるホウ素含有重合体の製造方法は特に制限されないが、例えば、特開2011−184430号公報に記載の製造方法により製造することができる。
以上まとめると、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物、式(7)で表されるホウ素含有化合物は、塗布による均一な製膜が可能であり、低いHOMO、LUMO準位を持ち、式(7)で表されるホウ素含有化合物に関しては電子輸送性を併せ持ち、上記式(10)で表されるホウ素含有重合体に関しては、低いHOMO、LUMO準位を持ち、より高い塗布製膜性を併せ持つため、本発明の有機電界発光素子の材料として好適に用いることができるものである。
上述した有機化合物の他、本発明の有機電界発光素子のバッファ層を形成する有機化合物としてポリアミン類又はトリアジン環含有化合物を用いることで高い電子注入性が得られる。
ポリアミン類としては、塗布により層を形成することができるものが好ましく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、ジエチレントリアミンのようなポリアルキレンポリアミンが好適に用いられ、高分子化合物では、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が好適に用いられる。特にポリエチレンイミンが好ましい。
なお、ここで低分子化合物とは、高分子化合物(重合体)ではない化合物を意味し、分子量の低い化合物を必ずしも意味するものではない。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体のポリアルキレンイミン構造は、炭素数2〜4のアルキレンイミンにより形成された構造であることが好ましい。より好ましくは、炭素数2又は3のアルキレンイミンにより形成された構造である。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、主鎖骨格にポリアルキレンイミン構造を有するものであればよく、主鎖骨格にポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する共重合体であってもよい。
上記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体がポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する場合、ポリアルキレンイミン構造以外の構造の原料となる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、アクリル酸、スチレン、又は、ビニルカルバゾール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの単量体の炭素原子に結合した水素原子が他の有機基に置換された構造のものも好適に用いることができる。水素原子と置換する他の有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基等が挙げられる。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、重合体の主鎖骨格を形成する単量体成分100質量%のうち、ポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、66質量%以上であり、更に好ましくは、80質量%以上である。最も好ましくは、ポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が100質量%であること、すなわち、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体がポリアルキレンイミンのホモポリマーであることである。
上記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体は、重量平均分子量が100000以下であることが好ましい。このような重量平均分子量のものを用い、重合体が分解する温度での加熱処理を行って層を形成することで、有機電界発光素子をより駆動安定性に優れたものとすることができる。より好ましくは、10000以下であり、更に好ましくは、100〜1000である。
重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:Waters Alliance(2695)(商品名、Waters社製)
分子量カラム:TSKguard column α、TSKgel α−3000、TSKgel α−4000、TSKgel α−5000(いずれも東ソー社製)を直列に接続して使用
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶液
検量線用標準物質:ポリエチレングリコール(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるように溶離液に溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
上記トリアジン環含有化合物としては、メラミンやベンゾグアナミン/アセトグアナミン等のグアナミン類の他、メチロール化されたメラミンやグアナミン類、メラミン/グアナミン樹脂等のメラミン/グアナミン骨格を有する化合物の1種又は2種以上を用いることができるが、これらの中でも、メラミンが好ましい。
本発明の有機電界発光素子のバッファ層を形成する有機化合物としてはまた、下記式(17)〜(25)で表される構造の繰り返し単位を有する重合体や、式(26)のトリエチルアミン、式(27)のエチレンジアミンも好適に用いることができる。
Figure 2016054173
Figure 2016054173
上記バッファ層は、還元剤を含むものであってもよい。還元剤はn−ドーパントとして働くため、バッファ層が還元剤を含むことで陰極から発光層への電子の供給が充分に行われるため、発光の効率が向上する。
上記バッファ層が含む還元剤は、電子供与性の化合物であれば特に制限されないが、1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1,3−ジメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、1,3,5−トリメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール化合物;ロイコクリスタルバイオレット(=トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン)、ロイコマラカイトグリーン(=ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン)、トリフェニルメタン等のトリフェニルメタン化合物;2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)等のジヒドロピリジン化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物や、ジヒドロピリジン化合物が好ましい。より好ましくは、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、または2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)である。
上記バッファ層が含む還元剤の量は、バッファ層を形成する有機化合物100質量%に対して、0.1〜15質量%であることが好ましい。還元剤をこのような割合で含むと、有機電界発光素子の発光効率を充分に高いものとすることができる。より好ましくは、バッファ層を形成する有機化合物100質量%に対して、0.5〜10質量%であり、更に好ましくは、0.5〜5質量%である。
本発明の電界発光素子は、陽極と陰極との間に電圧(通常は15ボルト以下)を印加することによって発光させることができる。通常は直流電圧を印加するが、交流成分が含まれていても良い。
本発明の有機電界発光素子は、有機化合物層の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。このため、表示装置や照明装置の材料として好適に用いることができるものである。
このような、本発明の有機電界発光素子を用いて形成される表示装置もまた、本発明の1つである。更に本発明の有機電界発光素子を用いて形成される照明装置もまた、本発明の1つである。
本発明の有機電界発光素子は、上述の構成よりなり、陰極と発光層との間にケトン系溶媒を含んで形成された層を有することで、発光効率に優れ、長寿命化された有機電界発光素子であり、表示装置や照明装置の材料等に好適に用いることができる。
本発明の有機電界発光素子の構造の一例を示した概略図である。 実施例1で作製した有機電界発光素子1の電圧−電流密度・輝度特性の測定結果を示した図である。 比較例1で作製した比較有機電界発光素子2の電圧−電流密度・輝度特性の測定結果を示した図である。 実施例2及び比較例2で作製した有機電界発光素子3及び4の電圧−輝度特性の測定結果を示した図である。 実施例2及び比較例2で作製した有機電界発光素子3及び4の寿命特性の測定結果を示した図である。 実施例3及び比較例3で作製した有機電界発光素子5及び6の電圧−輝度特性の測定結果を示した図である。 実施例3及び比較例3で作製した有機電界発光素子5及び6の寿命特性の測定結果を示した図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
合成例1(ホウ素化合物1の合成)
アルゴン雰囲気下、5−ブロモ−2−(4−ブロモフェニル)ピリジン(94mg、0.30mmol)を含むジクロロメタン溶液(0.3ml)に、エチルジイソプロピルアミン(39mg、0.30mmol)を加えた後、0℃で三臭化ホウ素(1.0Mジクロロメタン溶液、0.9ml、0.9mmol)を加え、室温で9時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、飽和炭酸カリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、ヘキサンで洗浄することにより、ホウ素化合物1(40mg、0.082mmol)を収率28%で得た。この反応は、下記式(28)の反応である。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl):7.57−7.59(m,2H),7.80(dd,J=8.4,0.6Hz,1H),7.99(s,1H),8.27(dd,J=8.4,2.1Hz,1H),9.01(d,J=1.5Hz,1H).
Figure 2016054173
合成例2(ホウ素化合物2の合成)
50mL2口フラスコにマグネシウム(561mg,23.1mmol)を入れ反応容器内を窒素雰囲気下にした後、シクロペンチルメチルエーテル(10mL)を入れ、ヨウ素をひとかけら投入し、着色がなくなるまで攪拌した。これに2,2’−ジブロモビフェニル(3.0g,9.6mmol)のシクロペンチルメチルエーテル溶液(9mL)を滴下し、室温で12時間、50℃で1時間攪拌しGrignard試薬を調製した。
別の200mL3つ口フラスコにホウ素化合物1(3.71g,7.7mmol)を入れ窒素雰囲気下にした後、トルエン(77mL)を入れた。これを−78℃にて攪拌しながら上記Grignard試薬をキャヌラーで一度に加えた。10分攪拌後、室温まで昇温しさらに12時間攪拌した。この反応溶液に水をくわえ、トルエンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。ろ液を濃縮し残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することによりホウ素化合物2を3.0g(収率82%)得た。この反応は、下記式(29)の反応である。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl):6.85(d,J=7.04Hz,2H),7.05(t,J=7.19Hz,2H),7.32(t,J=7.48Hz,2H), 7.47(s、1H)7.49−7.57(m、1H),7.74−7.84 (m,3H),7.90−8.00(m,2H),8.07−8.20(m,1H).
Figure 2016054173
合成例3(ホウ素含有化合物A(ホウ素含有重合体)の合成)
シュレンクフラスコにホウ素化合物2(474mg,1.00mmol)、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ボロン酸−ビス(プロパンジオール)エステル(568mg,1.02mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした後、THF(6mL)を入れ溶解させた。これに35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム(1.68mL,3.99mmol)、水(2.2mL)、Aliquat(登録商標)(40mg,0.10mmol)のトルエン溶液(6mL)を加えた。90℃に加熱し、Pd(PPh3)4(23mg,0.020mmol)を入れ、90℃で12時間攪拌した。ブロモベンゼン(204mg,1.30mmol)を加えて5時間攪拌後、フェニルボロン酸(572mg,4.69mmol)を加えて終夜攪拌した。室温まで冷却後、反応溶液をトルエンで希釈して有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過して濃縮後残渣をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルショートカラムに通した。この溶液を濃縮し、メタノールに投入して得られる黄色沈澱物ろ取し、ホウ素含有化合物A(ホウ素含有重合体)を386mg得た。この反応は、下記式(30)の反応である。
得られたホウ素含有重合体は、Mn=14,304、Mw=36,646、PDI=2.56であった。
Figure 2016054173
合成例4(ホウ素含有化合物Bの合成)
50mL二口フラスコにホウ素化合物2(2.50g,5.26mmol)、6−トリ(n−ブチルスタニル)−2,2‘−ビピリジン(5.62g,12.6mmol)、Pd(PPh(610mg,0.53mmol)トルエン(26mL)を入れ、窒素雰囲気下、120℃で24時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却し濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することによりホウ素含有化合物Bを2.0g(収率60%)得た。この反応は、下記式(31)の反応である。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl):6.6.96(d,J=6.8Hz,2H),7.04(t,J=7.2Hz,2H),7.29−7.35(m,4H),7.49(d,J=7.8Hz,1H),7.73−7.85(m,7H),8.01(d,J=0.8Hz,1H),8.16(d,J=8.4Hz,1H),8.23(d,J=8.6Hz,1H),8.30−8.42(m,5H),8.60(d,J=8.0Hz,1H),8.66−8.67(m,2H),8.89(d,J=8.0Hz,1H).
Figure 2016054173
実施例1(シクロヘキサノン処理を行った有機電界発光素子)
[1]市販されている平均厚さ0.7mmのITO電極層付き透明ガラス基板を用意した。この時、基板のITO電極(陰極)は幅2mmにパターニングされているものを用いた。この基板をアセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄後、イソプロパノール中で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[2]この基板を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに固定した。約1×10−4Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタし、膜厚約7nmの酸化亜鉛層を作成した。この時にメタルマスクを併用して、電極取り出しのためITO電極の一部は酸化亜鉛が製膜されないようにした。
[3]工程[2]で作製した酸化亜鉛薄膜付き基板をスピンコーターにセットした。この基板上にシクロヘキサノン溶媒を滴下し、毎分3000回転で120秒間回転させた。目視では完全に溶媒は蒸発している状態である。
[4]バッファ層としてホウ素含有化合物Aの1重量%1,2−ジクロロエタン混合溶液を作製した。工程[3]で作製した酸化亜鉛薄膜付き基板をスピンコーターにセットした。この基板上にホウ素含有化合物A溶液を滴下し、毎分3000回転で30秒間回転させ、ホウ素含有有機化合物Aを含むバッファ層を形成した。さらに、これを窒素雰囲気下120℃にセットしたホットプレートで2時間アニール処理を施した。バッファ層の平均厚さは30nmであった。
[5]ホウ素含有化合物の層まで形成した基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、N4,N4‘−ビス(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−N4,N4’−ジフェニルビフェニル−4,4‘−ジアミン(DBTPB)、三酸化モリブデン、Alをそれぞれルツボに入れて蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10−5Paまで減圧し、Alqを発光層として35nm蒸着し、次に、正孔輸送層としてα−NPDを60nm蒸着し製膜した。次に、三酸化モリブデン(第2の金属酸化物層)を膜厚10nmになるように蒸着した。最後に、Al(陽極)を膜厚100nmになるように蒸着し、有機電界発光素子1を作製した。第2の電極を蒸着する時、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅2mmの帯状になるようにした。すなわち、作製した有機電界発光素子の発光面積は、4mmとした。
[6][5]までで作製した素子を、ガラスキャップを封止ガラスとし、UV硬化樹脂をシール材として封止した。
得られた有機電界発光素子1の電圧−電流密度・輝度特性の測定結果を図2に示した。
比較例1(ケトン系溶媒による層を有さない有機電界発光素子)
実施例1の[3]の工程を行わない以外はすべて実施例1と同じ工程で有機電界発光素子2を作製した。
得られた有機電界発光素子2の電圧−電流密度・輝度特性の測定結果を図3に示した。
実施例2(シクロペンタノン溶媒の材料溶液で形成された層を有する有機電界発光素子)
[1]市販されている平均厚さ0.7mmのITO電極層付き透明ガラス基板を用意した。この時、基板のITO電極(陰極)は幅2mmにパターニングされているものを用いた。この基板をアセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄後、イソプロパノール中で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[2]この基板を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに固定した。約1×10−4Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタし、膜厚約7nmの酸化亜鉛層を作成した。この時にメタルマスクを併用して、電極取り出しのためITO電極の一部は酸化亜鉛が製膜されないようにした。
[3]バッファ層としてホウ素含有化合物Bの1重量%シクロペンタノン溶液を作製した。工程[2]で作製した酸化亜鉛薄膜付き基板をスピンコーターにセットした。この基板上にホウ素含有化合物B溶液を滴下し、毎分3000回転で30秒間回転させ、ホウ素含有有機化合物Bを含むバッファ層を形成した。さらに、これを窒素雰囲気下120℃にセットしたホットプレートで2時間アニール処理を施した。バッファ層の平均厚さは30nmであった。
[4]ホウ素含有化合物Bの層まで形成した基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。ビス[2−(o-ヒドロキシフェニルベンゾチアゾール]亜鉛(II)(ZnBTZ)、トリス[3−メチル−2−フェニルピリジン]イリジウム(III)(Ir(mpy))、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、N4,N4’−ビス(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)-N4,N4’−ジフェニルビフェニル−4,4’-ジアミン(DBTPB)、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HATCN)、Alをそれぞれルツボに入れて蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10−5Paまで減圧し、ZnBTZをホスト、(Ir(mpy))をドーパントとして25nm共蒸着し、発光層を製膜した。この時、ドープ濃度は(Ir(mpy))が発光層全体に対して6%となるようにした。次に、DBTPBを10nm、α−NPDを30nm蒸着し、正孔輸送層を製膜した。次に、HATCNを膜厚10nmになるように蒸着した。最後に、Al(陽極)を膜厚100nmになるように蒸着し、有機電界発光素子3を作製した。第2の電極を蒸着する時、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅2mmの帯状になるようにした。すなわち、作製した有機電界発光素子の発光面積は、4mmとした。
[5][4]までで作製した素子を、ガラスキャップを封止ガラスとし、UV硬化樹脂をシール材として封止した。
得られた有機電界発光素子3の電圧−輝度特性を図4に、寿命特性の測定結果を図5に示した。
比較例2(ジクロロエタン溶媒の材料溶液で形成された層を有する有機電界発光素子)
実施例2の[3]の工程において作製し使用する溶媒をホウ素含有化合物Bの0.5重量%ジクロロエタン溶液に変更する以外はすべての工程を同様に行い、有機電界発光素子4を作製した。
得られた有機電界発光素子4の電圧−輝度特性を図4に、寿命特性の測定結果を図5に示した。
実施例3(シクロペンタノン溶媒の材料溶液で形成された層を有する有機電界発光素子)
[1]市販されている平均厚さ0.7mmのITO電極層付き透明ガラス基板を用意した。この時、基板のITO電極(陰極)は幅2mmにパターニングされているものを用いた。この基板をアセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄後、イソプロパノール中で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[2]この基板を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに固定した。約1×10−4Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタし、膜厚約7nmの酸化亜鉛層を作成した。この時にメタルマスクを併用して、電極取り出しのためITO電極の一部は酸化亜鉛が製膜されないようにした。
[3]バッファ層としてホウ素含有有機化合物であるトリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)の1重量%シクロペンタノン溶液を作製した。工程[2]で作製した酸化亜鉛薄膜付き基板をスピンコーターにセットした。この基板上に3TPYMBのシクロペンタノン溶液を滴下し、毎分3000回転で30秒間回転させ、ホウ素含有有機化合物を含むバッファ層を形成した。さらに、これを窒素雰囲気下120℃にセットしたホットプレートで2時間アニール処理を施した。バッファ層の平均厚さは30nmであった。
[4]ホウ素含有化合物の層まで形成した基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。ビス[2−(o−ヒドロキシフェニルベンゾチアゾール]亜鉛(II)(ZnBTZ)、トリス[3−メチル−2−フェニルピリジン]イリジウム(III)(Ir(mpy))、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、N4,N4’−ビス(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−N4,N4’−ジフェニルビフェニル−4,4’−ジアミン(DBTPB)、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HATCN)、Alをそれぞれルツボに入れて蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10−5Paまで減圧し、まず最初にZnBTZを正孔ブロック層として10nm、ZnBTZをホスト、(Ir(mpy))をドーパントとして20nm共蒸着し、発光層を製膜した。この時、ドープ濃度は(Ir(mpy))が発光層全体に対して6%となるようにした。次に、DBTPBを10nm、α−NPDを40nm蒸着し、正孔輸送層を製膜した。次に、HATCNを膜厚10nmになるように蒸着した。最後に、Al(陽極)を膜厚100nmになるように蒸着し、有機電界発光素子5を作製した。第2の電極を蒸着する時、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅2mmの帯状になるようにした。すなわち、作製した有機電界発光素子の発光面積は、4mmとした。
[5][4]までで作製した素子をガラスキャップを封止ガラスとして、UV硬化樹脂をシール材として封止した。
得られた有機電界発光素子5の電圧−輝度特性を図6に、寿命特性の測定結果を図7に示した。
比較例3(ジクロロエタン溶媒の材料溶液で形成された層を有する有機電界発光素子)
実施例3の[3]の工程において作製し使用する溶媒を3TPYMBの0.5重量%ジクロロエタン溶液に変更する以外はすべての工程を同様に行い、有機電界発光素子6を作製した。
得られた有機電界発光素子6の電圧−輝度特性を図6に、寿命特性の測定結果を図7に示した。
実施例2および比較例2の結果(図4および5)より、同一の素子構成において、同一のバッファ材料を用いたにもかかわらず、シクロペンタノン溶媒を用いた方がジクロロエタン溶媒を用いたものより輝度が高く、かつ寿命が長くなっていることがわかる。これは、ケトン溶媒であるシクロペンタノンの効果であると考えられる。
また、同様の検証環境下である実施例3および比較例3の結果(図6および7)より、バッファ層材料を異なる有機材料(市販の材料)に変更しても効果が同じであることがわかる。このことから、使用バッファ層材料に依存しないことがわかり、使用溶媒の効果であることがより明確になった。
さらに、ケトン系溶媒に難溶な場合を検証したものが実施例1および比較例1である。使用したバッファ層材料であるホウ素化合物Aはジクロロエタンには溶解するものの、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒には所望の量を溶解しなかった。そのため、表面処理のみを行った結果が本結果である。残念ながら、寿命は上記実施例2や3に比べ短いものの、実施例1と比較例1との比較では実施例1の方が長かった。また輝度についても、シクロヘキサノン塗布処理を施した方(実施例1)はそうでないもの(比較例1)に比べ高輝度であることが判明した。
以上から、ケトン系溶媒による注入効率向上は明らかとなった。加えて、表面処理では効果が限定的であったことや実施例2および3(塗布溶媒として用いた場合)では、電圧−輝度特性において、一定電圧の輝度上昇が向上していることが観測されている。このことから、溶媒として使用することで、より高い効果が得られていることがわかる。
1:基板
2:陰極
3:第1の金属酸化物層
4:バッファ層
5:有機化合物層
6:第2の金属酸化物層
7:陽極

Claims (3)

  1. 陽極と陰極との間に発光層を含む複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、
    該有機電界発光素子は、陰極と発光層との間にケトン系溶媒を含んで形成された層を有する
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 前記ケトン系溶媒は、1atmでの沸点が100℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 前記有機電界発光素子は、基板上に陰極が形成された構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
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