以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。実施の形態中の用語について簡単に説明すると、以下のとおりである。
フィードとは、ラベル連続体(印字媒体)を印字のために搬送する動作を言い、フィード方向(印字搬送方向)とは、ラベル連続体を印字のために搬送する方向、具体的にはラベル連続体を用紙供給部からサーマルヘッドに送る方向を言う。バックフィードとは、ラベル連続体の所望のラベルに所望の情報を印字した後、ラベル連続体をフィード方向とは逆方向に送り、後続の他のラベルを印字開始位置に戻す動作を言い、バックフィード方向とは、ラベル連続体をバックフィードのために搬送する方向、具体的にはラベル連続体をサーマルヘッド側から用紙供給部側に送る方向を言う。
剥離発行とは、ラベル連続体として、複数枚のラベルが長尺帯状の台紙に所定間隔で仮着された連続状のラベル(台紙付きラベル)を用いた場合に、ラベルを1枚毎に台紙から剥がしてプリンタから発行する方式を言い、通常発行とは、ラベルを剥がさないでプリンタから発行する方式を言う。通常発行には、連続発行とノンセパ(登録商標)発行とがある。台紙付きラベルに対しては、複数枚のラベルを台紙から剥がさずに連続して発行する連続発行が適用される。台紙が無く片面の粘着剤層が剥き出しにされ状態で搬送される連続状のラベル(台紙無しラベル)に対しては、ラベルを1枚毎に発行するノンセパ発行が適用される。
図1(a)は本実施の形態に係るプリンタの通常発行状態の全体斜視図、図1(b)は図1(a)のプリンタの剥離発行状態の全体斜視図、図2は開閉カバー部の開放状態における図1のプリンタおよびラベル連続体の外観を示す全体斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態のプリンタ1は、例えば、扁平な直方体形状に形成された携帯型のラベルプリンタであり、ラベルを1枚ずつ剥離して発行する剥離発行と、ラベルを剥がさないで発行する通常発行とを1台で切り換え可能な兼用型の構成を備えている。なお、プリンタ1は、発行口側を上に向けた状態で使用(横使用)することもできるが、プリンタ1の外周一面に設けられたベルトフック(図示せず)を作業者のベルトに引っかけたり、ショルダーベルト(図示せず)を装着して作業者の肩に掛けたりすることにより発行口側を横に向けた状態で使用(縦使用)することもできる。
プリンタ1の印字媒体としては、図2に示すように、例えば、台紙が無く粘着剤層が剥き出しにされた状態で搬送されるラベル連続体P(台紙無しラベル)が使用されている。このラベル連続体Pにはミシン目が無く、ラベル片のピッチ方向(ラベル連続体Pの長手方向)の長さは不特定とされている。ラベル連続体Pの表面(粘着剤層が形成された面の裏面、印字面)には、予め決められた温度領域に達すると特定の色(黒や赤等)に発色する感熱発色層が形成されている。
プリンタ1は、外部ケース2と、開閉カバー部3と、剥離ユニット部4と、用紙収容部(印字媒体収容部)6(図2参照)と、用紙ガイド機構部7(図2参照)とを備えている。
外部ケース2は、プリンタ1の外形の一部を形成する外部筐体であり、本体ケース2aと、フロントカバー部2bとを備えている。本体ケース2aは、例えば、一面に開口部が形成されたプラスチック製の箱状体により形成されている。本体ケース2aの一側面には、バッテリカバー部Cbが開閉可能な状態で軸支されている。一方、フロントカバー部2bは、例えば、本体ケース2aの開口部を部分的に覆うように形成されたプラスチック製の蓋状体により形成されており、本体ケース2aにネジ止めされている。フロントカバー部2bの表面には、表示部Dpと、操作ボタンBcと、電源ボタンBvと、カバーオープンボタン(解除部材)Bpと、一対の解除レバー部Lc,Lcと、カッタCtとが装着されている。表示部Dpは、例えば、操作コマンドやメッセージ等を表示するLCD(Liquid Crystal Display)である。操作ボタンBcはプリンタ1の動作や設定を操作するボタンであり、電源ボタンBvはプリンタ1の電源をオンオフするボタンである。フロントカバー部2bと開閉カバー部3との間に印字後のラベル連続体Pの発行口が形成されている。
開閉カバー部3は、用紙収容部6の開閉カバーであり、開閉カバー部3の長手方向一端部(開放端部:外部ケース2の長手方向中央側)が外部ケース2に対して離間および接近する方向に移動可能な状態で、開閉カバー部3の長手方向他端部が開閉支持軸により軸支されている。また、開閉カバー部3は、その長手方向他端部の開閉支持軸3aに配置されたトーションバネにより開方向(開閉カバー部3の開放端部が外部ケース2から離間する方向)に付勢されている。
図2に示すように、開閉カバー部3の開放端部には、プラテンローラ(搬送ローラ)10が正逆方向に回動自在の状態で軸支されている。このプラテンローラ10は、ラベル連続体Pを搬送する搬送手段であり、ラベル連続体Pの幅方向(短方向)に沿って延在した状態で設置されている。プラテンローラ10は、例えば、シリコーンを含有させた樹脂やシリコーンゴムにより形成されている。プラテンローラ10のプラテン軸10aの一端部には、ギア10bが接続されている。このギア10bは、開閉カバー部3の閉止時にギアユニット部(図示せず)に係合され、そのギアユニット部を介して駆動モータM(図9参照)に機械的に接続される。ギアユニット部は、複数個のギアが互いに係合されることで構成されている。また、駆動モータMは、例えば、ステッピングモータにより構成されている。
開閉カバー部3の開放端部側においてプラテンローラ10の近傍には剥離ピン11がプラテンローラ10に沿って延在した状態で設置されている。この剥離ピン11は、ラベル連続体Pとして台紙付きラベルを使用する場合に、ラベルを台紙から剥離する剥離部材であり、その長手方向両端部側は開閉カバー部3に軸支されている。
開閉カバー部3の開放端部側においてラベル連続体Pの対向面には、センサ12(12a,12b)が設置されている。センサ12aは、例えば、ラベルの位置(上記台紙の位置検出マークや隣り合うラベル間の台紙の部分等)を検出するセンサであり、反射型の光センサ等により構成されている。一方、センサ12bは、例えば、ラベル連続体Pの有無を検出するセンサであり、透過型の光センサ等により構成されている。
剥離ユニット部4は、ラベル連続体として台紙付きラベルを使用する場合に、剥離発行に際してラベル連続体Pの台紙からラベルを剥がす部材である。剥離ユニット部4には、ニップローラ4aが回転可能な状態で軸支されている。図1(a)に示すように、通常発行時には、ニップローラ4aはプリンタ1の内部に収容される。図1(b)に示すように、剥離発行時には、ニップローラ4aはプラテンローラ10の対向位置に配置される。この剥離発行時に、ラベル連続体Pの台紙をプラテンローラ10とニップローラ4aとで挟み込んだ状態でプラテンローラ10を回転すると、ニップローラ4aが従動回転して台紙が搬送されるとともに、台紙からラベルが剥離されるようになっている。
図2に示すように、用紙収容部6は、ロール状に巻回されたラベル連続体Pを収容する空間であり、その内部には用紙ガイド機構部7の一対のガイド板7aが設置されている。用紙ガイド機構部7は、ラベル連続体Pをその幅に合わせて支持しガイドする機構部である。ガイド板7aは、ロール状のラベル連続体Pの幅方向(軸方向)両端面に接触した状態でロール状のラベル連続体Pを回転自在の状態で支持してラベル連続体Pの搬送をガイドする部材であり、ラベル連続体Pの幅に応じて位置を変えられるようにラベル連続体Pの幅方向に沿って移動可能な状態で設置されている。
次に、プリンタ1の内部構造について図3〜図8を参照して説明する。図3(a)は図1(a)の通常発行時のプリンタの幅方向中央位置の切断面を見た概略構成図、図3(b)は図1(a)の通常発行時のプリンタの幅方向片端位置の切断面を見た概略構成図、図4(a)は図1(b)の剥離発行時のプリンタの幅方向中央位置の切断面を見た概略構成図、図4(b)は図1(b)の剥離発行時のプリンタの幅方向片端位置の切断面を見た概略構成図、図5は図1のプリンタの要部を抜き出して示した要部斜視図、図6は図5のプリンタの剥離ユニット部等の一部を取り外して示した要部斜視図、図7(a)は図5のI−I線の断面図、図7(b)は図6のII−II線の断面図、図8(a),(b)は図1のプリンタの開閉カバー部の開放動作時の要部断面図である。
図3および図4に示すように、プリンタ1の内部においてプラテンローラ10の対向側には、サーマルヘッド(印字部)25と、配線基板26と、ヘッドブラケット(ヘッド保持部材)27と、コイルバネ29と、カッタCtと、センサ部Sと、カバーオープンボタンBpとが設置されている。
図3(a)、図4(a)および図7(a)に示すように、サーマルヘッド25は、例えば、文字、記号、図形またはバーコード等のような情報をラベル連続体Pに印字する印字手段であり、開閉カバー部3の閉止時にプラテンローラ10に対向するようにサーマルヘッド25の印字面を通紙ルートに向けた状態で配線基板26を介してヘッドブラケット27の保持部27aに実装されている。このサーマルヘッド25の印字面には、通電により発熱する複数の発熱抵抗体(発熱素子)がラベル連続体Pの幅方向(短方向)に沿って並設されている。なお、配線基板26は、プリンタ1の全体動作を制御する制御部MC(図9参照)から送られた印字信号をサーマルヘッド25に伝送する配線用の基板である。
図3、図4および図7(a)に示すように、ヘッドブラケット27は、サーマルヘッド25を保持するとともに、開閉カバー部3の保持または保持解除を行う部材であり、開閉カバー部3の閉止時にプラテンローラ10の向かい側において、開閉カバー部3の保持または保持解除が可能なようにプラテンローラ10に対して接近および離間する方向に揺動自在の状態で支持軸27bに軸支されている。
このヘッドブラケット27は、例えば金属によって形成されており、サーマルヘッド25で発生した熱を放散する機能を備えている。これにより、サーマルヘッド25で発生した熱を放散するためのヒートシンクを別個に設けた場合に比べて、プリンタ1を小型化および軽量化することができる。また、ヒートシンクを別個に設ける場合に比べて、部品点数を減らすことができるので、プリンタ1のコストを低減することができる。
図3(b)、図4(b)および図5〜図7(a)に示すように、ヘッドブラケット27の保持部27aにおいてプラテンローラ10の長手方向両端側には、一対の翼部27c,27cが保持部27aと一体に形成されている。この一対の翼部27c,27cの各々においてプラテンローラ10に向かって延在する先端部には、溝27dが形成されている。この溝27dは保持部27aに向かって延びている。この溝27d内に、プラテン軸10aの長手方向両端部が嵌め込まれることにより、プラテンローラ10が回転可能な状態で開閉カバー部3がヘッドブラケット27に保持される。
図3(b)、図4(b)、図6および図7(b)に示すように、ヘッドブラケット27の保持部27aの上辺において、プラテンローラ10の長手方向中央近傍には、プラテンローラ10から離間する方向に延在する一対の被押圧部27e,27eが保持部27aと一体に形成されている。この一対の被押圧部27e,27eは、図6および図7(b)に示すように、保持部27aからセンサ部Sの配線基板SSの幅方向の両側面を挟み込んだ状態で延在し、図3(b)および図4(b)に示すように、その各々の延在端部においてフローティング状態で終端している。
図3、図4および図7(a)に示すように、コイルバネ29は、開閉カバー部3の閉止時にサーマルヘッド25およびヘッドブラケット27をプラテンローラ10側に付勢する部材であり、ヘッドブラケット27の背面側(配線基板26の実装面の裏面側)に設置されている。このコイルバネ29の付勢力によりヘッドブラケット27がプラテンローラ10側に押し付けられるので、サーマルヘッド25がラベル連続体Pを介してプラテンローラ10にしっかりと押し付けられる。また、ヘッドブラケット27の溝27d内に嵌り込んだプラテン軸10aがしっかりと押さえられるので、開閉カバー部3をヘッドブラケット27によりしっかりと保持することができる。
図3、図4および図7(a)に示すように、カッタCtは、印字後のラベル連続体Pを切断するための固定刃であり、その刃先をラベル連続体Pの通紙ルート側に向けた状態で支持部31の先端に固定されている。カッタCtは、プラテンローラ10の長手方向(図3、図4および図7(a)の紙面に垂直な方向)に沿って延在した状態で設置されている。このカッタCtを支持する支持部31は、カバーオープンボタンBp側からプラテンローラ10側に向かって厚さが次第に薄くなるように傾斜しており、カッタCtの刃先が、フロントカバー部2bの表面よりもサーマルヘッド25に近い位置(高さ)に設置されている。このように、支持部31の表面側を傾斜させたことにより、剥離発行時にラベルを指で摘むための領域を広くすることができるので、ラベルを摘み易くすることができる。また、支持部31がラベル連続体Pの切断の邪魔にならないので、ラベル連続体Pを上手く切断することができる。また、カッタCtの刃先をサーマルヘッド25に近い位置に設置したことにより、フィード時およびバックフィード時にラベル連続体Pの搬送量を減らせるので、プリンタ1の印字動作間の準備時間を短縮させることができる。また、カッタCtをフロントカバー部2bの表面よりも内側に設けたことにより、作業者の指がカッタCtに触れ難くすることができるので、プリンタ1の安全性を向上させることができる。
図3(a)、図4(a)および図5〜図7に示すように、センサ部Sは、印字後のラベル連続体Pの検出手段であり、剥離センサ(第1の検出手段)SAと、カットセンサ(第2の検出手段)SBと、配線基板SSと、コネクタSCと、配線SWとを備えている。
図3(a)、図4(a)および図7に示すように、剥離センサSAは、剥離発行の場合に台紙付きラベルの台紙から剥離されたラベルを検出するとともに、通常発行の場合に台紙付きラベルおよび台紙無しラベルのラベル連続体Pを検出するセンサである。剥離センサSAは、例えば、反射型のセンサにより構成されており、図5、図6および図7(b)に示すように、発光部SA1と受光部SA2とを有している。発光部SA1と受光部SA2とは、ラベル連続体Pが搬送される通紙ルートを向いた状態で配線基板SSの主面内において配線基板SSの幅方向(プラテンローラ10の長手方向:図7(b)の横方向)に沿って並んで配置されている。
また、剥離センサSAは、図3(a)および図7(a)に示すように、剥離ユニット部4がプリンタ1の内部に収容されている通常発行の場合でも、ラベル連続体Pを検出することが可能なようにカッタCtとニップローラ4aとの間に設置されている。すなわち、通常発行時において、剥離センサSAの発光部SA1から放射された検出光がニップローラ4aに邪魔されずにラベル連続体Pに照射され、ラベル連続体Pから反射された検出光がニップローラ4aに邪魔されずに剥離センサSAの受光部SA2で受光されるようになっている。なお、支持部31には剥離センサSAの検出光(放射光および反射光)を透過させる貫通孔(図示せず)が形成されている。
図3(a)、図4(a)および図7(a)に示すように、カットセンサSBは、剥離発行の場合には使用されず、通常発行の場合に台紙付きラベルおよび台紙無しラベルのラベル連続体Pを検出するセンサである。カットセンサSBは、例えば、反射型のセンサにより構成されており、図6および図7(b)に示すように、発光部SB1と受光部SB2とを有している。発光部SB1と受光部SB2とは、ラベル連続体Pが搬送される通紙ルートを向いた状態で配線基板SSの主面内に配線基板SSの幅方向(プラテンローラ10の長手方向:図7(b)の横方向)に沿って並んで配置されている。
また、カットセンサSBは、カッタCtの位置よりも印字搬送方向の下流側であってカッタCtとフロントカバー部2bの表面との間(図3(a)および図4(a)において剥離センサSAの上方)に設置されている。すなわち、剥離センサSAとカットセンサSBとは印字搬送方向に沿って2段に設置されている。ここで、カッタCtがフロントカバー部2bの表面に位置している場合、フロントカバー部2bの表面上にカットセンサSBを設けることになるので、プリンタ1が厚くなり大型になる。これに対して、本実施の形態においては、カッタCtをフロントカバー部2bの表面よりも内側に設け、フロントカバー部2bの表面とカッタCtとの間にカットセンサSBを設けたことにより、プリンタ1を小型にすることができる。なお、支持部31にはカットセンサSBの検出光(放射光および反射光)を透過させる貫通孔(図示せず)が形成されている。
図3(a)、図4(a)および図7に示すように、配線基板SSは、剥離センサSAおよびカットセンサSBを実装する共通の配線基板である。配線基板SSは、例えば、プリント配線基板により形成されており、カバーオープンボタンBpの設置領域の範囲内においてラベル連続体Pの印字搬送方向に沿って縦置きに設置(固定)されている。配線基板SSの背面(剥離センサSAやカットセンサSBの実装面の裏側)にはコネクタSCおよび配線SWが電気的に接続されている。剥離センサSAおよびカットセンサSBは、配線基板SS、コネクタSCおよび配線SWを通じて後述の制御部MC(図9参照)に電気的に接続されている。
ここで、カッタCtがフロントカバー部2bの表面に位置している場合、フロントカバー部2bの表面上にカットセンサSBを設けることになるので、剥離センサSAとカットセンサSBとの距離が離れすぎて配線基板SSの共通化が難しい。これに対して、本実施の形態においては、カッタCtをフロントカバー部2bの表面よりも内側に設け、フロントカバー部2bの表面とカッタCtとの間にカットセンサSBを設けたことにより、剥離センサSAとカットセンサSBとの距離を短くすることができるので、配線基板SSを共通化することが容易になる。そして、剥離センサSAおよびカットセンサSBを共通の配線基板SSに実装したことにより、配線基板SS内の配線パターンやコネクタSCを共通化することができるので、剥離センサSAとカットセンサSBとで別々に配線基板を設ける場合に比べて、配線基板の面積を縮小させることができる。また、剥離センサSAおよびカットセンサSBと制御部とを電気的に接続する配線SWを一纏めに束ねることができるので配線SWの空間的な占有領域を縮小することができる。これらにより、プリンタ1を小型化することができる。また、配線基板SSの面積を縮小できるので、1枚のベースボードから取得できる配線基板SSの枚数を増やすことができる上、配線金属材料の使用量を低減することができるので、配線基板SSのコストを低減することができる。また、コネクタSCの共通化によりコネクタSCのコストを低減することができる。したがって、プリンタ1のコストを低減することができる。
図6に示すように、センサ部Sの配線基板SSを覆うカバー部の前面(プラテンローラ10に対向する面)とヘッドブラケット27との間には、センサ部Sの前面からプラテンローラ10に向かって突出する突出段差部Pjが設置されている。この突出段差部Pjは、光の反射率が金属よりも低いプラスチック等により形成されている。
上記したように、ヘッドブラケット27は、サーマルヘッド25の放熱体としての機能を持たせているので、できるだけ大きな面積を確保したい。この観点からは、ヘッドブラケット27をセンサ部Sの前面に近接した位置まで形成した方が好ましいが、そのようにすると、ヘッドブラケット27が金属製であることから、剥離センサSAやカットセンサSBの発光部SA1,SB1から放射された光がヘッドブラケット27に当たって反射し、剥離センサSAやカットセンサSBの受光部SA2,SB2に入射することで剥離センサSAやカットセンサSBが誤動作してしまう場合がある。これに対して、本実施の形態においては、センサ部Sの前面とヘッドブラケット27との間に突出段差部Pjを設けたことにより、金属製のヘッドブラケット27からの反射光が剥離センサSAやカットセンサSBの受光部SA2,SB2に入射するのを抑制または防止することができるので、剥離センサSAおよびカットセンサSBの誤動作を防止することができる。
図3〜図8に示すように、カバーオープンボタンBpは、開閉カバー部3を開放するためのボタンであり、フロントカバー部2bの表面に対して交差する方向(図7の上下方向)に移動可能な状態で設置されている。カバーオープンボタンBpは、ヘッドブラケット27の一対の被押圧部27e,27eの対向側(直上)に配置されており、押圧部35aと、一対の脚部35b,35bとを一体的に有している。
カバーオープンボタンBpの押圧部35aは、開閉カバー部3の開放時に操作者が押圧する部分である。図3(a)、図4(a)、図7および図8に示すように、押圧部35aにおいて、センサ部Sの配線基板SSに対向する部分には、配線基板SSから離間する方向に窪む凹部35dが形成されている。すなわち、開閉カバー部3の閉止時においてカバーオープンボタンBpの裏面と配線基板SSの上端部とは所定の長さだけ離れている。このため、図8(b)に示すように、開閉カバー部3の開放するためにカバーオープンボタンBpを押しても押圧部35aが配線基板SSに接触しないようになっている。
図5、図6および図7(b)に示すように、カバーオープンボタンBpの一対の脚部35b,35bは、押圧部35aの裏面において長手方向両端部の各々から配線基板SSの幅方向の両側面を挟んだ状態でヘッドブラケット27の一対の被押圧部27e,27eに向かって延在し、一対の被押圧部27e,27eの各々に接触している。このように、センサ部Sの配線基板SSは、カバーオープンボタンBpの押圧部35aと一対の脚部35b,35bとで囲まれる空き領域に配置されている。すなわち、プリンタ1の空き領域を有効に活用することができるので、センサ部Sを他の位置に配置する場合に比べて、プリンタ1を小型化することができる。
開閉カバー部3を開放するには、図8(a)の状態から図8(b)に示すように、カバーオープンボタンBpの押圧部35aをプリンタ1の内部側に向かって押すと、一対の脚部35b,35bを介してヘッドブラケット27の一対の被押圧部27e,27eも押される。ヘッドブラケット27の一対の被押圧部27e,27eが押されると、ヘッドブラケット27が支持軸27bを中心にしてプラテンローラ10から離間する方向に揺動する。このため、ヘッドブラケット27の一対の翼部27c,27cの先端の溝27dからプラテンローラ10のプラテン軸10aが離れるので、ヘッドブラケット27による開閉カバー部3の保持状態が解除される。この開閉カバー部3の保持状態が解除されると、開閉カバー部3は、その長手方向他端部側の開閉支持軸3a(図3および図4参照)に配置されたトーションバネ3b(図3および図4参照)の付勢力により自動的に開く。
次に、プリンタ1の制御部について図9を参照して説明する。図9は図1のプリンタの要部の回路ブロック図である。
制御部MCは、プリンタ1の全体の動作を制御する部分であり、CPU(Centoral Processing Unite)40と、ROM(Read Only Memory)41と、RAM(Random Access Memory)42と、搬送制御回路43と、印字制御回路44と、ラベル検出回路45〜47と、インタフェース48と、表示制御回路49と、通信インタフェース50と、EEPROM(Electinically Erasable Programmable ROM)51と、これらを相互に電気的に接続するバスライン52とを有している。
CPU40は、インタフェース48および表示制御回路49を通じて入力部(操作ボタンBc、電源ボタンBv等)Bおよび表示部Dpに電気的に接続されているとともに、通信インタフェース50を通じて外部の携帯端末等のような無線通信部53と無線で通信可能になっている。
ROM41には、プリンタ1の動作を制御するためのソフトウェア(制御プログラム)が格納されている。RAM42は、CPU40が動作する上で必要となる各種データを記録するとともに、入力部Bまたは外部の無線通信部53から受信した印字データ等を一時的に格納する。そして、CPU40は、ROM41内の制御プログラムに従って搬送制御回路43、印字制御回路44、ラベル検出回路45〜47、インタフェース48および表示制御回路49等の各部の動作を制御する。
搬送制御回路43は、駆動モータMにパルス信号を送信し、プラテンローラ10によるラベル連続体Pの搬送動作を制御する。印字制御回路44は、CPU40から送信される印字データに対応する制御信号を生成してサーマルヘッド25に送信し、印字動作を制御する。
ラベル検出回路45〜47は、CPU40の制御下において、位置検出用のセンサ12、剥離センサSAおよびカットセンサSBの各発光部SA1,SB1を制御し、ラベル連続体Pに向かって光を放射するとともに、位置検出用のセンサ12、剥離センサSAおよびカットセンサSBの受光部から出力される電気信号を受け取り、デジタルデータに変換してCPU40に送信する。EEPROM51には、プリンタ1の各種設定データや後述の剥離センサSAおよびカットセンサSBの検出データ等が記録される。
これら各部は、バスライン52を通じてCPU40に電気的に接続され、CPU40の管理下においてインタフェース48や通信インタフェース50から受信した印字データに従ってサーマルヘッド25によりラベル連続体Pのラベルに印字を施す。
次に、プリンタ1の制御部MCによるセンサ部S(剥離センサSAおよびカットセンサSB)の制御例について図10および図11を参照して説明する。図10は図1のプリンタの印字完了時のセンサ部およびプラテンローラの周辺の概略構成図、図11は図1のプリンタの各状態時における剥離センサおよびカットセンサのラベル検出状態を示した図である。なお、ラベル連続体P1〜P3は、粘着剤層を有する台紙無しラベルを示している。
図10に示すように、ラベル連続体P1は、印字完了時(印字完了後であってカット前)の排出状態が正常な場合を示している。この場合、剥離センサSAおよびカットセンサSBの両方でラベル連続体P1を検出することができる。すなわち、剥離センサSAおよびカットセンサSBの発光部SA1,SB1から放射された光が、ラベル連続体P1に当たり反射するので、剥離センサSAおよびカットセンサSBの受光部SA2,SB2で検出できる。
しかし、ラベル連続体Pは台紙が無く薄いことやラベル片の長手方向の長さが不特定であることに起因して印字完了時にラベル連続体Pが撓んでしまう場合がある。ラベル連続体P2,P3は、印字完了時(印字完了後であって切断前)に撓んでいる場合を示している。
ラベル連続体P2の場合は、プリンタ1に向かって撓んでいるが、ラベル連続体P2の粘着剤層が開閉カバー部3に貼り付いていない場合を示している。この場合、剥離センサSAではラベル連続体P2を検出できるが、カットセンサSBではラベル連続体P2を検出できない。すなわち、剥離センサSAの発光部SA1から放射された光は、ラベル連続体P2に当たり反射するので、剥離センサSAの受光部SA2で検出できるが、カットセンサSBの発光部SB1から放射された光は、ラベル連続体P2に当たらないので、カットセンサSBの受光部SB2で検出できない。
ラベル連続体P3の場合は、さらにプリンタ1に向かって撓んでおり、ラベル連続体P3の粘着剤層が開閉カバー部3に接触し貼り付いている場合を示している。この場合、剥離センサSAおよびカットセンサSBの両方でラベル連続体P3を検出できない。すなわち、剥離センサSAおよびカットセンサSBの発光部SA1,SB1から放射された光は、ラベル連続体P3に当たないので、剥離センサSAおよびカットセンサSBの両方の受光部SA2,SB2で検出できない。
そこで、本実施の形態のプリンタ1の制御部MCにおいては、ラベル連続体Pの印字完了後であって切断前に、剥離センサSAおよびカットセンサSBの両方でラベル連続体Pの検出動作を実施し、剥離センサSAおよびカットセンサSBの少なくとも1つにおいてラベル連続体Pが検出されない場合、ラベル連続体Pの排出状態に異常があると判断する。
具体的には、例えば、以下のようにする。まず、プリンタ1の状態毎に、正常時の剥離センサSAおよびカットセンサSBの検出結果を調べる。プリンタ1の状態のうち、印字完了時(印字完了後であって切断前)については、上記ラベル連続体P2,P3のような異常な排出状態があるので、それぞれの異常時の剥離センサSAおよびカットセンサの検出結果を調べる。
その結果、図11に例示するように、印字前の待機時においてラベル連続体Pの排出状態が正常な場合は、剥離センサSAでは「ラベル有り」、カットセンサSBでは「ラベル無し」と検出される。印字完了時(印字完了後であって切断前)においてラベル連続体Pの排出状態が正常な場合は、剥離センサSAおよびカットセンサSBの両方で「ラベル有り」と検出される。一方、印字完了時(印字完了後であって切断前)においてラベル連続体Pの排出状態が異常な場合は2種類あり、ラベル連続体P2の状態時には、剥離センサSAでは「ラベル有り」、カットセンサSBでは「ラベル無し」と検出され、ラベル連続体P3の状態時には、剥離センサSAおよびカットセンサSBの両方で「ラベル無し」と検出される。さらに、ラベル連続体Pの切断後においてラベル連続体Pの排出状態が正常な場合は、剥離センサSAでは「ラベル有り」、カットセンサSBでは「ラベル無し」と検出される。
続いて、本実施の形態においては、図11の剥離センサSAおよびカットセンサSBの検出データを図9に示したプリンタ1のRAM42やEEPROM51(以下、単にRAM42等という)に予め記憶しておく。そして、プリンタ1によりラベル連続体Pに印字を施した後、制御部MCでは、剥離センサSAおよびカットセンサSBによりラベル連続体Pの有無を実際に検出し、その検出結果と、RAM42等に記憶された剥離センサSAおよびカットセンサSBの検出データとを比較する。これにより、プリンタ1の印字完了時(実際の検出時)におけるラベル連続体Pの排出状態の良否を判断する。例えば、印字完了時の剥離センサSAおよびカットセンサSBの実際の検出結果が、共に「ラベル有り」の場合は、ラベル連続体Pの排出状態が正常であると判断される。一方、印字完了時の剥離センサSAおよびカットセンサSBの実際の検出結果において、剥離センサSAでは「ラベル有り」、カットセンサSBでは「ラベル無し」と検出された場合は、図10に例示したラベル連続体P2の異常な排出状態であると判断される。また、剥離センサSAおよびカットセンサSBの両方で「ラベル無し」と検出された場合は、図10に例示したラベル連続体P3の異常な排出状態であると判断される。いずれの排出異常の場合も、その後のプリンタ1の印字動作を一時的に禁止するとともに、プリンタ1の表示部Dpに異常を知らせるメッセージを表示する。この異常を知らせるメッセージの表示と同時に異常を知らせる音を鳴らしても良い。これにより、プリンタ1の印字完了時においてラベル連続体Pが開閉カバー部3に貼り付いていることに因る不具合を防止することができる。
また、プリンタ1の印字前の待機時に実際に検出した剥離センサSAおよびカットセンサSBの検出結果と、RAM2等に記憶された印字前の待機時の剥離センサSAおよびカットセンサSBの正常な検出データとを比較することにより、プリンタ1の印字前の待機時(実際の検出時)におけるラベル連続体Pの排出状態の良否を判断することもできる。ここでは、剥離センサSAおよびカットセンサSBの両方で「ラベル無し」と検出された場合は、ラベル連続体Pの排出状態が異常であると判断される。すなわち、ラベル連続体Pの頭出しが異常な状態になっている。この場合は、ラベル連続体Pのバックフィードが正常に行われていないと判断されるので、その後のプリンタ1の印字動作を一時的に禁止するとともに、プリンタ1の表示部Dpに異常を知らせるメッセージを表示する。上記と同様、同時に異常を知らせる音を鳴らしても良い。この場合は、表示部Dpにバックフィードを再度やり直すこと等を促すメッセージを表示しても良い。そして、作業者が再度バックフィードをやり直す操作を行うことで、ラベル連続体Pを正常な位置にセットする。これにより、プリンタ1の印字時前の待機時においてラベル連続体Pのバックフィードが正常に行われていないことに因る印字位置ずれ等の不具合を防止することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
例えば、ラベル連続体として、長尺帯状の台紙とその長手方向に沿って所定間隔毎に仮着された複数枚のラベルとを有する台紙付きラベルを使用しても良い。台紙のラベル貼付面には、ラベルを容易に剥離することが可能なようにシリコーン等のような剥離剤が被覆されている。また、台紙のラベル貼付面の裏面には、長手方向に沿って予め決められた間隔毎にラベルの位置を示す位置検出マークが形成されている。ラベルの表面(印字面)には感熱発色層が形成されている。この他、例えば、台紙が無く粘着剤層もない連続シート(台紙無しラベル)を使用しても良いし、紙類に限らずサーマルヘッドにより印字可能なフィルム(台紙無しラベル)等を使用しても良い。連続シートまたはフィルムの場合も位置検出マークを設けることができる。