JP2016051025A - 電子写真用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】地球環境保全に対して配慮され、更には耐オフセット性、耐ブロッキング性及び低湿環境下での帯電安定性に優れる電子写真用トナーを提供する。【解決手段】少なくとも、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合物であるエステル化合物及びロジンを構成するカルボン酸のアミド化剤によるアミド化によって得られるアミド化合物の混合物と、着色剤とを含むことを特徴とする電子写真用トナーである。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真用トナーに関し、特には耐オフセット性、耐ブロッキング性及び低湿環境下での帯電安定性に優れる電子写真用トナーに関するものである。
潜像を顕像化するトナーは、種々の画像形成プロセスに用いられており、その一例として電子写真方式の画像形成プロセスに用いられることが知られている。
電子写真方式の画像形成プロセスを利用する画像形成装置においては、一般的に、潜像担持体である感光体ドラム表面の感光層を均一に帯電させる帯電工程、帯電状態にある感光体ドラム表面に原稿像の信号光を投射して静電潜像を形成する露光工程、感光体ドラム表面の静電潜像に現像剤として電子写真用トナーを供給して顕像化する現像工程、感光体ドラム表面のトナー像を紙やOHPシート等のメディアに転写する転写工程、トナー像を加熱、加圧等によりメディア上に定着させる定着工程及びトナー像転写後の感光体ドラム表面に残留するトナー等をクリーニングブレードにより除去して清浄化するクリーニング工程を実行してメディア上に所望の画像が形成される。メディアへのトナー像の転写は、中間転写媒体を介して行われることもある。
このような画像形成装置に使用される現像剤としては、トナーのみを主成分とする一成分現像剤と、トナーとキャリアとを混合して使用される二成分現像剤とがある。また、これらの現像剤に用いられるトナーは、例えば混練粉砕法や、懸濁重合法及び乳化重合凝集法等に代表される重合法等によって製造される。
混練粉砕法では、結着樹脂及び着色剤を主成分とし、必要に応じて離型剤、帯電制御剤等を添加して混合したトナー原料を溶融混練し、冷却して固化させた後、粉砕分級することでトナーが製造される。
近年、地球環境保全の観点から、様々な技術分野において多くの取り組みがなされている。現在は、数多くの製品の原材料が石油から製造されているが、これらの原材料の製造時や焼却時に発生する二酸化炭素や、必要となるエネルギー等を削減する取り組みは、地球温暖化防止の観点から非常に重要である。
また、地球温暖化防止につながる他の取り組みとして省エネルギー化も様々な角度から検討されており、電子写真の分野では、紙やOHPシート等のメディア上に転写されたトナーの定着温度を下げることによる定着エネルギーの低減が有効であるとの認識が高まっている。また、コピー機やファクシミリ機の更なる高速化も望まれている。これらの動向からトナーの低融点化は必要不可欠である。なお、トナーの低融点化とは、定着下限温度を下げることであり、これによりトナーの低温定着が達成できる。
紙やOHPシート等のメディア上に転写されたトナー像を定着する方法としては、ヒートロール等によってトナー像を加熱溶融し、加圧して定着させる接触加熱型定着方式がよく用いられており、この方式におけるトナーの定着性は、定着下限温度からホットオフセット開始温度までの定着可能温度幅によって評価することができる。
トナー用結着樹脂には架橋構造の樹脂や高分子量体と低分子量体とを含む樹脂等が用いられているが、このような結着樹脂において、耐ホットオフセット性を向上させるために架橋成分や高分子量体成分の含有量を多くすると、樹脂の溶融粘度が大きくなりすぎてトナーの低温定着性が不充分になってしまうおそれがある。一方、低温定着性を向上させるために低分子量体の含有量を多くすると、樹脂の溶融粘度は小さくなるものの、トナーの弾性が低下して耐ホットオフセット性が低下してしまうおそれがある。
従って、高温における耐オフセット性を維持しつつ、トナーの低融点化を達成するためには、更に新たなトナー用結着樹脂の設計が特に重要である。
また、地球温暖化防止につながる新たな取り組みとして、バイオマスと呼ばれる植物由来の資源を利用することが大いに注目されている。バイオマスを燃焼させる際に発生する二酸化炭素は、もともと植物が光合成により取り込んだ大気中の二酸化炭素であるため、全体で見ると大気中の二酸化炭素の収支はゼロでありその総量は変化しないと考えられている。このように、大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない性質はカーボンニュートラルと呼ばれており、カーボンニュートラルである植物由来の資源を利用することで大気中の二酸化炭素量を一定に保つことができる。このようなバイオマスから製造されるプラスチックは、バイオマスポリマー、バイオマスプラスティック、非石油系高分子材料等の名称で呼ばれており、これらの原料となるモノマーはバイオマスモノマーとも呼ばれている。
電子写真の分野においても、地球環境保全に配慮して、環境安全性に優れ、二酸化炭素削減に効果的な資源であるバイオマスを含む生分解性樹脂を利用する取り組みがなされている。
例えば、ポリエステル樹脂は、一般的に、カルボン酸とアルコールとを縮重合させることにより製造されるが、特許文献1においては、アルコール成分と、ロジン化合物をアルコール成分及びカルボン酸成分の総質量中5質量%以上含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂をトナー用結着樹脂として使用する技術が提案されている。
特開2010−152291号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるようなトナーは、ロジン骨格をポリエステル樹脂中に導入することで、低温定着性に優れるものの、耐オフセット性及び耐ブロッキング性には依然として改善の余地がある。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、地球環境保全に対して配慮され、更には耐オフセット性、耐ブロッキング性及び低湿環境下での帯電安定性に優れる電子写真用トナーを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、上述のようなロジン骨格を導入したポリエステル樹脂には、ロジンを構成するカルボン酸の一部が、その立体障害により、多価アルコールと反応しないまま残留しているため、ポリエステル樹脂の結晶性や耐熱性を悪化し、ブロッキングやオフセット現象を起こすことが分かった。
そして、本発明者は、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合物であるエステル化合物を合成し、その後、アミド化剤を用いて未反応カルボン酸をアミド化することで、ロジンを構成するカルボン酸由来のカルボキシ基を処理することができ、耐オフセット性及び耐ブロッキング性を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、アミド化剤を用いて未反応カルボン酸をアミド化することで得られるアミド化合物は、アミド結合の双極子モーメントが大きく、分子内にNが存在するかのように振る舞うため、例えばホウ素を含む帯電制御剤のように、低湿環境下での帯電安定性を向上させることができる。
即ち、本発明の電子写真用トナーは、少なくとも、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合物であるエステル化合物及びロジンを構成するカルボン酸のアミド化剤によるアミド化によって得られるアミド化合物の混合物と、着色剤とを含むことを特徴とする。
本発明の電子写真用トナーの好適例においては、前記ロジンを構成するカルボン酸が、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びサンダラコピマール酸からなる群から選択される1つ以上のカルボン酸である。
本発明の電子写真用トナーの他の好適例においては、前記アミド化剤が、アルキルアミンである。ここで、前記アルキルアミンは、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン及びジブチルアミンからなる群から選択される1つ以上のアミン化合物であることが好ましい。
本発明の電子写真用トナーの他の好適例においては、前記アミド化が、塩基性化合物の存在下で行われる。ここで、前記塩基性化合物は、ピリジン及び4−N,N−ジメチルアミノピリジンからなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。
本発明の電子写真用トナーの他の好適例において、前記混合物は、重量平均分子量(Mw)が3000〜40000である。
本発明の電子写真用トナーの他の好適例において、前記混合物は、軟化温度が110〜160℃である。
本発明の電子写真用トナーの他の好適例において、前記混合物は、ガラス転移温度が50〜80℃である。
本発明によれば、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールを縮合させ、次いで、アミド化剤を用いて未反応カルボン酸をアミド化することで得られる、エステル化合物とアミド化合物の混合物を用いることで、地球環境保全に対して配慮され、更には耐オフセット性、耐ブロッキング性及び低湿環境下での帯電安定性に優れる電子写真用トナーを提供することができる。
以下に、本発明の電子写真用トナー(以下、単に本発明のトナーともいう)を詳細に説明する。本発明の電子写真用トナーは、少なくとも、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合物であるエステル化合物及びロジンを構成するカルボン酸のアミド化剤によるアミド化によって得られるアミド化合物の混合物と、着色剤とを含むことを特徴とする。
上記エステル化合物とアミド化合物の混合物は、天然樹脂であるロジンを構成するカルボン酸を用いて得られるため、トナー用結着樹脂のように用いることができ、かかる混合物を用いて得られるトナーは、石油資源の枯渇問題を解決したり、CO排出量を削減したりする観点から、地球環境保全に配慮されたトナーである。
また、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物は、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合によりエステル化合物を合成し、次いで、該縮合の際に未反応であったロジンを構成するカルボン酸のアミド化剤によるアミド化によりアミド化合物を合成することで得られる混合物であるため、ロジンを構成するカルボン酸由来のカルボキシ基は、エステル結合又はアミド結合に変換されている。このため、耐オフセット性及び耐ブロッキング性を向上させることができる。一方、カルボキシ基のすべてを変換してしまうと、耐オフセット性を低下させる場合もある。よって、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物には、カルボキシ基を少し残すことが好ましい。
上記ロジンを構成するカルボン酸は、ロジン中に含まれる樹脂酸のことであり、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びサンダラコピマール酸等の樹脂酸が挙げられる。これらカルボン酸は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、入手がし易く、安定供給が可能であるといった理由から、上記ロジンを構成するカルボン酸は、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びサンダラコピマール酸からなる群から選択される1つ以上のカルボン酸であることが好ましい。
なお、ロジンは、上記樹脂酸を約90%含む天然樹脂であり、松材をクラフト法によってパルプ化する製造工程で副生する粗トール油を水蒸気蒸留して得られるトールロジン;松の樹幹に傷をつけ採集した生松ヤニを水蒸気蒸留して得られるガムロジン;及び伐採した松の根株をチップ状にして有機溶剤で抽出し、更に蒸留して得られるウッドロジンが知られている。
多価アルコールとしては、ポリエステル合成用モノマーとして知られるものを使用でき、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族系ジオール類等が挙げられる。これら多価アルコールは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記エステル化合物は、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合反応によって得られるが、該縮合反応は、常法に従って実施でき、例えば有機溶媒及びエステル化触媒の存在下、カルボン酸と多価アルコールとを反応させることによって行われ、生成するエステル化合物の軟化温度等が所望の値になったところで反応を終了する。なお、有機溶媒としては、例えばトルエン等が挙げられるが、有機溶媒が使用されない場合もある。
上記エステル化触媒としては、チタン化合物及び無機錫(II)化合物が好ましい。これらエステル化触媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有するチタン化合物がより好ましい。なお、総炭素数1〜28のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルアルコキシ基、t−ブチルアルコキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。
また、無機錫(II)化合物のとしては、Sn−ハロゲン結合を有する錫(II)化合物が好ましく、錫(II)のフッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物等が挙げられる。
上記縮合反応には、ロジンを構成するカルボン酸と共に、多塩基酸を用いてもよい。多塩基酸を用いることで、多塩基酸と多価アルコールとの間で重縮合反応が起こり、エステル化合物がポリエステル樹脂として得られる。換言すれば、ロジンを構成するカルボン酸と一緒に多塩基酸を用いる場合、上記エステル化合物を、ロジンを構成するカルボン酸で変性されたポリエステル樹脂と表現することもできる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比や反応率等を適宜変更することによって、例えば、ポリエステルの末端のカルボキシ基含有量を調整でき、延いては得られるポリエステルの特性を変性できる。なお、上記縮合反応において、ロジンを構成するカルボン酸:多塩基酸:多価アルコールの質量比は、5〜10:1:2〜8であることが好ましい。
多塩基酸としては、ポリエステル合成用モノマーとして知られるものを使用でき、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸、ピロメリト酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類;並びにこれら多塩基酸の低級アルキルエステル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル又はt−ブチルのエステル化合物等が挙げられる。これら多塩基酸は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。
上記ポリエステル樹脂は、ポリエステルの主鎖及び/又は側鎖にカルボキシ基、スルホン酸基等の親水性基を結合させることによって、水中で自己分散性を発揮する自己分散性ポリエステル樹脂として使用することもできる。
上記アミド化合物は、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合反応において未反応のまま残留しているロジンを構成するカルボン酸をアミド化剤によってアミド化させることによって合成されるアミド化合物である。これにより、未反応のロジンを構成するカルボン酸由来のカルボキシ基を処理できるため、耐オフセット性及び耐ブロッキング性を向上させることができる。また、上記アミド化合物は、低湿環境下におけるトナーの帯電安定性を向上させることができる。
上記アミド化剤としては、特に制限されるものではないが、アルキルアミンが好ましい。アルキルアミンは、比較的安定な液体であるため、取り扱いが容易であり、また、ロジンを構成するカルボン酸のように立体障害が大きいカルボン酸に対してもアミド化反応を安定に進行させることができる。上記アミド化剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記アミド化剤としては、例えば、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン及びジブチルアミンからなる群から選択される1つ以上のアミン化合物であることが好ましい。
ロジンを構成するカルボン酸のアミド化は、常法に従って実施でき、例えば有機溶媒及び塩基性化合物の存在下、該カルボン酸のカルボキシ基とアミド化剤とを反応させることによって行われる。なお、有機溶媒としては、例えばトルエン、テトラヒドロフラン等が使用される。なお、上記エステル化合物を合成する際に多塩基酸を用いた場合は、未反応のロジンを構成するカルボン酸のカルボキシ基以外にも、ポリエステルの末端カルボキシ基等のカルボキシ基が存在し得るが、これらカルボキシ基もアミド化剤によって同様にアミド化される。なお、得られる混合物の軟化温度等が所望の値になったところでアミド化反応を終了する。
上記塩基性化合物を用いることで、アミド化反応を安定に進行させることができるが、安定な液体や固体であると、取り扱いが容易であるため好ましい。具体例としては、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。これら塩基性化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記エステル化合物とアミド化合物の混合物は、水酸基価が好ましくは12以下であり、より好ましくは9以下である。
上記エステル化合物とアミド化合物の混合物は、酸価が好ましくは20以下であり、より好ましくは18以下である。
上記エステル化合物とアミド化合物の混合物は、軟化温度が好ましくは110〜160℃である。軟化温度が110℃未満では、トナーの保存性が低下し、一方、160℃を超えると、低温オフセットを起こす場合がある。
上記エステル化合物とアミド化合物の混合物は、ガラス転移温度が好ましくは50〜80℃である。ガラス転移温度が50℃未満では、トナーの保存性が低下し、一方、80℃を超えると、低温オフセットを起こす場合がある。
上記エステル化合物とアミド化合物の混合物は、重量平均分子量(Mw)が3000〜40000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が上記特定した範囲内にあれば、耐オフセット性を更に改善することができる。
本発明のトナー中において、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物の含有量は、例えば10〜85質量%であることが好ましい。また、低湿環境下での帯電安定性の観点から、上記混合物に占めるアミド化合物の割合は、25〜50質量%であることが好ましい。
本発明のトナーは、着色剤を含むことを要する。本発明のトナーに用いる着色剤としては、有機系及び無機系を問わず、様々な種類及び様々な色の着色剤を用いることが可能である。
黒色の着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト、及びマグネタイト等の着色剤が挙げられる。
黄色の着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、及びタートラジンレーキ等の着色剤が挙げられる。
橙色の着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、及びインダスレンブリリアントオレンジGK等の着色剤が挙げられる。
赤色の着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、及びブリリアントカーミン3B等の着色剤が挙げられる。
紫色の着色剤としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、及びメチルバイオレットレーキ等の着色剤が挙げられる。
青色の着色剤としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、及びインダスレンブルーBC等の着色剤が挙げられる。
緑色の着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、及びファイナルイエローグリーンG等の着色剤が挙げられる。
白色の着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の着色剤が挙げられる。
本発明のトナー中において、着色剤の含有量は、黒色の着色剤の場合、5〜12質量%の範囲が好ましく、6〜8質量%の範囲がより好ましい。一方、カラー画像用の着色剤の場合、着色剤の含有量は、3〜8質量%の範囲が好ましく、4〜6質量%の範囲がより好ましい。
本発明のトナーは、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物及び着色剤の他、トナー用結着樹脂や、磁性粉、離型剤、帯電制御剤等の内添剤を必要に応じて含んでもよい。
トナー用結着樹脂としては、公知のものを使用でき、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。本発明のトナー中において、トナー用結着樹脂は、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物との合計が25〜91質量%となるように配合されることが好ましい。なお、ここでいうトナー用結着樹脂は、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合物であるエステル化合物やロジンを構成するカルボン酸のアミド化剤によるアミド化によって得られるアミド化合物と異なる成分である。
磁性粉としては、マグネタイト、γ−ヘマタイト、及び各種フェライト等の磁性体が挙げられる。本発明のトナー中において、磁性粉の含有量は、2〜5質量%であることが好ましい。
離型剤としては、各種離型剤、特に低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、酸化型のポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスが挙げられ、これらの離型剤を用いることにより本発明のトナーの定着性の向上を図ることができる。本発明のトナー中において、離型剤の含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。
帯電制御剤としては、負帯電トナー用及び正帯電トナー用の2種がある。負帯電トナー用の帯電制御剤としては、クロム・アゾ錯体染料と、鉄アゾ錯体染料と、コバルト・アゾ錯体染料と、サリチル酸と、サリチル酸誘導体のクロム錯体、亜鉛錯体、アルミニウム錯体及びホウ素錯体と、サリチル酸塩化合物と、ナフトール酸と、ナフトール酸誘導体のクロム、亜鉛、アルミニウム及びホウ素錯体と、ナフトール酸塩化合物と、ベンジル酸と、ベンジル酸誘導体のクロム、亜鉛、アルミニウム及びホウ素錯体と、ベンジル酸塩化合物と、長鎖アルキル・カルボン酸塩と、長鎖アルキル・スルホン酸塩等の界面活性剤が挙げられる。正帯電トナー用の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、ニグロシン染料誘導体、トリフェニルメタン誘導体、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、四級ピリジニウム塩、グアニジン塩、アミジン塩等が挙げられる。本発明のトナー中において、帯電制御剤の含有量は、0.01〜5質量%であることが好ましい。
本発明のトナーは、流動性の調整、感光体上へのトナー・フィルミングの防止、及び感光体上の残留トナーのクリーニング性の向上を目的として、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物、着色剤、及び必要に応じて適宜選択される内添剤を含むトナー粒子の表面に外添剤が添加されてもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫及び酸化亜鉛等の無機酸化物と、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類及びスチレン等の化合物の単独重合体樹脂微粒子及び共重合体樹脂微粒子と、フッ素樹脂微粒子と、シリコーン樹脂微粒子と、ステアリン酸等の高級脂肪酸及びその高級脂肪酸の金属塩と、カーボンブラック、フッ化黒鉛、炭化珪素及び窒化ホウ素等が挙げられる。
本発明のトナーにおいて、外添剤の添加量は、上記トナー粒子100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが好ましい。
次に、本発明のトナーを製造する方法について説明する。本発明のトナーの製造方法は、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物と、着色剤と、必要に応じて適宜選択される内添剤とを混合して原材料混合物を得る前混合工程と、原材料混合物を溶融混練して混練物を得る溶融混練工程と、混練物を冷却固化し、粉砕して粉砕物を得る冷却粉砕工程と、粉砕物を分級する分級工程と、必要に応じて外添剤を外添する外添工程とを含む。
(1)前混合工程
前混合工程では、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物と、着色剤と、必要に応じて適宜選択される内添剤とを、混合機によって乾式混合して、原材料混合物を作製する。
混合機としては、公知のものを使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)等が挙げられる。
(2)溶融混練工程
溶融混練工程では、前混合工程で作製された原材料混合物を、混練機によって溶融混練して、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物中に着色剤及び必要に応じて添加された内添剤が分散した混練物を作製する。
混練機としては、公知のものを使用でき、例えば、ニーダ、二軸押出機、二本ロールミル、三本ロールミル、ラボブラストミル等の一般的な混練機を使用できる。更に具体的には、例えば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)等の1軸又は2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)等のオープンロール方式の混練機が挙げられる。溶融混練は、複数の混練機を用いて行っても構わない。
溶融混練時の温度は、使用する混練機によるが、80℃以上200℃以下であることが好ましい。このような範囲の温度下で溶融混練を行うことで、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物中に着色剤及び必要に応じて添加された内添剤を均一に分散させることができる。
混練物のテトラヒドロフラン(以下、「THF」とも記す)不溶分は、5質量%以上25質量%以下が好ましい。混練物のTHF不溶分が5質量%未満であると、トナーの耐ホットオフセット性が悪化するおそれがある。混練物のTHF不溶分が25質量%を超えると、弾性が高すぎるために充分に溶融混練されておらず、着色剤等の分散性が悪い混練物であるおそれがある。
(3)冷却粉砕工程
冷却粉砕工程では、溶融混練工程で得られた混練物を冷却固化し、粉砕して、粉砕物を得る。
冷却固化された混練物は、ハンマーミル又はカッティングミル等によって、重量平均粒径100μm以上5mm以下程度の粗粉砕物に粗粉砕され、得られた粗粉砕物は、例えば、重量平均粒径15μm以下にまで、更に微粉砕される。
粗粉砕物の微粉砕には、例えば、超音速ジェット気流を利用するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機等を用いることができる。
(4)分級工程
分級工程では、冷却粉砕工程で得られた粉砕物を分級機によって分級し、過粉砕トナー粒子及び粗大トナー粒子を除去し、トナー粒子(未外添トナーともいう)を得る。過粉砕トナー粒子及び粗大トナー粒子は、回収して他のトナーの製造に再利用することができる。
分級には、遠心力及び風力による分級により過粉砕トナー粒子を除去できる公知の分級機を使用でき、例えば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)等を使用することができる。
分級後に得られる未外添トナーの重量平均粒径は、3μm以上15μm以下であることが好ましい。高画質画像を得るためには、未外添トナーの重量平均粒径が3μm以上9μm以下であることが好ましく、5μm以上8μm以下であることがより好ましい。未外添トナーの重量平均粒径が3μm未満であると、トナーの粒径が小さいため、高帯電化および低流動化が起こる。トナーの高帯電化及び低流動化によって、トナーが感光体に安定して供給されず、地肌かぶり及び画像濃度の低下等が発生する。未外添トナーの重量平均粒径が15μmを超えると、トナーの粒径が大きいため、高精細な画像を得られない。また、粒径が大きくなることでトナーの比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。その結果、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生する。
(5)外添工程
外添工程では、分級工程で得られたトナー粒子と外添剤とを混合機で混合してトナーを得る。混合機としては、前混合工程で用いた混合機を用いることができる。
なお、本発明のトナーは、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物、着色剤、及び必要に応じて適宜選択される内添剤を含むトナー粒子を一成分現像剤として使用してもよいし、該トナー粒子に外添剤を外添したものを一成分現像剤として使用してもよい。また、本発明のトナーとキャリアの混合物を二成分現像剤として使用することもできる。
キャリアとしては、例えば、磁性を有するコア粒子表面に樹脂被覆層を設けた被覆キャリアが一般的によく使用される。コア粒子としては公知の磁性粒子が使用できるが、フェライト系粒子が好ましい。
本発明のトナーは、コピー装置及びプリンタ装置等の画像形成装置において、コピー用紙等の記録媒体上に画像を形成すべく用いられる。
本発明のトナーを使用した画像形成装置では、記録媒体上に画像を形成する場合に、感光体ドラムを均一に帯電させ、帯電させた感光体ドラム上に形成すべき画像に基づく光像を走査して静電潜像を形成し、形成した静電潜像に、本発明のトナーを付着させることで可視画像化させる現像を行い、得られた可視画像をシート上に転写し、そして転写したトナーを記録媒体に定着させることにより画像を形成する。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。まず、各物性値の測定方法について説明する。
・エステル化合物とアミド化合物の混合物のガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(商品名:Diamond DSC、パーキンエルマージャパン株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料0.01gを昇温速度毎分10℃(10℃/min)で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの低温側のベースラインを高温側に延長した直線とピークの低温側の曲線に対して勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
・エステル化合物とアミド化合物の混合物の軟化温度(T1/2
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−500C、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gをシリンダに挿入し、ダイから押出されるように荷重10kgf/cm(0.980665MPa)を与えながら、昇温速度毎分6℃(6℃/min)で加熱し、ダイから試料の半分が流出したときの温度を軟化温度として求めた。ダイには、口径1mm、長さ1mmのものを用いた。
・エステル化合物とアミド化合物の混合物のピークトップ分子量、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布指数(Mw/Mn)の測定
GPC装置(商品名:HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)を用い、温度40℃において、試料の0.25質量%のテトラヒドロフラン溶液を試料溶液とし、試料溶液の注入量を200μLとして、分子量分布曲線を求めた。得られた分子量分布曲線のピークの頂点の分子量をピークトップ分子量として求めた。また得られた分子量分布曲線から、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを求め、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比である分子量分布指数(Mw/Mn)を求めた。なお、分子量校正曲線は標準ポリスチレンを用いて作成した。
・THF不溶分の測定
試料1gを円筒濾紙に投入し、ソックスレー抽出器にかけた。テトラヒドロフラン(THF)100mLを抽出溶媒として用い、6時間加熱還流して、試料からTHF可溶画分を抽出した。THF可溶画分を含む抽出液から溶媒を除去した後、THF可溶画分を100℃で24時間乾燥し、得られたTHF可溶画分を秤量し、質量X(g)を求めた。THF可溶画分質量X(g)と、測定に用いた試料の質量(1g)とから、下記式(1):
P(質量%)={1(g)−X(g)}/1(g)×100 (1)
に基づいて、試料中のTHF不溶画分の割合P(質量%)を算出した。以下、この割合PをTHF不溶解分と称する。
・エステル化合物とアミド化合物の混合物の酸価及び水酸基価の測定
JIS K 0070(化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法)に記載の電位差滴定法を用いて行った。電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業株式会社製)を用いた。
(実施例1)
・エステル化合物とアミド化合物の混合物の作製
170℃で溶融した状態のアビエチン酸(荒川化学工業(株)製)7kg、テレフタル酸(キシダ化学株式会社製)1kg、1,3−プロパンジオール(キシダ化学株式会社製)1.1kg、グリセリン(キシダ化学株式会社製)500g、ビスフェノールA(キシダ化学株式会社製)3.2kg、及びエステル化触媒としてチタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネート(1.02kg(酸成分及びアルコール成分の総量100質量部に対し、0.080質量部相当))を添加し、25℃の水を通水した還流冷却管を上部に装備した98℃の温水を通水した分溜管、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び温度計を装備した20リットルの四つ口フラスコ中、窒素雰囲気下、165℃で2時間縮合反応させた後、4時間かけて200℃まで昇温した。その後50kPaに減圧した。所望の軟化点(110℃)に達するまで縮合反応を行ってポリエステル(エステル化合物)を得た。ここで、ヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶媒を用いた薄層クロマトグラフィーにより、未反応アビチエン酸が残っていることを確認した。更に、テトラヒドロフラン(キシダ化学株式会社製)5L、ピリジン(キシダ化学株式会社製)3.49kg、ジイソプロピルアミン(キシダ化学株式会社製)4.52kgを加え、40℃で所望の軟化点(125℃)に達するまで未反応のまま残留しているロジンを構成するカルボン酸のアミド化を行った。減圧濃縮により溶媒を除去し、エステル化合物とアミド化合物の混合物12.5kgを得た。ここで、ヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶媒を用いた薄層クロマトグラフィーにより、未反応アビチエン酸が大幅に減少していることを確認した。なお、上記エステル化合物とアミド化合物の混合物に占めるアミド化合物の割合を、FT/IR−4000(日本分光(株)製)によって求め、その結果を表2に示す。
・前混合工程
上記エステル化合物とアミド化合物の混合物85質量部、着色剤として、予め非晶性ポリエステル樹脂中に40質量%の濃度で予備混練分散させた銅フタロシアニン顔料混練物10質量部(顔料4質量部)、離型剤としてポリエチレンワックス(商品名:PW−600、ベーカーペトロライト社製、融点(Tm):87℃)3質量部、帯電制御剤(商品名:Copy Charge N4P VP 2481、クラリアントジャパン株式会社製)2質量部を含有するトナー原料(10kg)をヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)にて10分間混合し、原材料混合物(9.8kg)を得た。この原材料混合物のTHF不溶分は15.8質量%であった。
・溶融混練工程
得られた原材料を、株式会社池貝製ニ軸混練機PCM−37にて、設定温度140℃、供給量5Kg/Hで溶融混練して溶融混練物(9.5kg)を作製した。この混練物のTHF不溶分は21.8質量%であった。
・粉砕分級工程
溶融混練工程にて得られた溶融混練物(9.5kg)を室温まで冷却して固化した後、カッターミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した。次いで、粗粉砕によって得られた粗粉砕物をカウンタージェットミル(商品名:AFG、ホソカワミクロン株式会社製)によって微粉砕した後、得られた粉砕物をロータリー式分級機(商品名:TSPセパレータ、ホソカワミクロン株式会社製)によって分級して、未外添トナー(8.1kg)を得た。
・外添工程
次いで、得られた未外添トナー粒子100質量部に対して、シランカップリング剤とジメチルシリコーンオイルで表面処理している疎水性シリカ微粉体(BET比表面積140m2 /g)1.2質量部、シランカップリング剤で表面処理している疎水性シリカ微粉体(BET比表面積30m2/g)0.8質量部、酸化チタン(BET比表面積130m2/g)0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合することによって実施例1のトナー(7.8kg)を製造した。
(実施例2〜実施例20)
エステル化合物とアミド化合物の混合物の作製において、ロジンを構成するカルボン酸、多塩基酸、多価アルコール、アミド化剤及び塩基性化合物の種類及び使用量を表1に示されるものに変更した以外は、実施例1と同様の方法に従い、実施例2〜実施例20のトナーを作製した。なお、エステル化合物とアミド化合物の混合物に占めるアミド化合物の割合及び得られたアミド化合物の量を表2に示す。
(比較例1)
実施例1のエステル化合物とアミド化合物の混合物の作製において、アミド化剤及び塩基性化合物を用いたアミド化を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法に従い、比較例1のトナーを作製した。
このため、比較例1では、エステル化合物とアミド化合物の混合物ではなく、ポリエステル(エステル化合物)が得られるが、該ポリエステルには、ロジンを構成するカルボン酸が未反応のまま残存している。
Figure 2016051025
表1中、実施例7は、アビチエン酸:ネオアビチエン酸の質量比が1:1であり、実施例8は、ネオアビチエン酸:ピマール酸の質量比が1:1であり、実施例9は、アビチエン酸:ネオアビチエン酸:ピマール酸の質量比が1:1:1である。
実施例1〜実施例20及び比較例1のトナーについて、以下のようにして各種評価を行った。結果を表2〜3に示す。
・粒度分布(トナーの体積平均粒径(D50)及び変動係数(CV値)
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mg及びアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(分散剤、キシダ化学株式会社製)1mlを添加し、超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)にて超音波周波数20kHzで3分間超音波分散処理したものを測定用試料とした。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径20μm、測定粒子数50000カウントの条件下に試料粒子の粒径の測定を行い、得られた測定結果から試料粒子の体積粒度分布を求め、求めた体積粒度分布から体積平均粒径D50(μm)を算出した。また、体積粒度分布における標準偏差を求めて、下記式(2)に基づいて変動係数(CV値、%)を算出した。なお、体積平均粒径D50(μm)とは、累積体積分布における大粒径側からの累積体積が50%になる粒径のことを示す。
CV値(%)={体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒径(μm)}×100・・・(2)
Figure 2016051025
・定着域評価
キャリアとして、体積平均粒径45μmのフェライトコアキャリアを用いて、キャリアに対する実施例及び比較例のトナーの被覆率がそれぞれ60%となるようにV型混合器混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)にて20分間混合して、二成分現像剤を作製した。
得られた二成分現像剤を、カラー複合機(商品名:MX−2700、シャープ株式会社製)を改造したものを用いて、記録媒体である記録用紙(商品名:PPC用紙SF−4AM3、シャープ株式会社製)に、縦20mm、横50mmの長方形状のベタ画像部を含むサンプル画像を、ベタ画像部における未定着状態でのトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cmになるように調整して未定着画像を作製した。得られた未定着画像の非オフセット域を、カラー複合機の定着部を用いて作製した外部定着器を用いて、所定の温度で定着を行い、紙面へのオフセットの有無を目視で評価した。尚、定着機のプロセススピードは124mm/secで、A4サイズの試験紙には52g/m紙を用い、低温オフセットもホットオフセットも起こらない温度域を非オフセット域として、定着性の指標とした。
定着域評価の評価基準を以下のように規定し、G及びNBの評価を実使用上問題ないレベルとした。
G(good):非オフセット域が60℃以上
NB(not bad):非オフセット域が45〜55℃
B(bad):非オフセット域が45℃未満
・保存性評価
トナー100gをポリエチレン容器に入れて密封した後、50℃の恒温恒湿槽に48時間放置した。このトナーを200メッシュ網を搭載した振動式ふるい機にて60Hzで1分間振動させた後のメッシュ上のトナーの質量を測定し、下記式(3)を用いてメッシュアップ率を求め、以下の基準で保存性を評価した。G及びNBの評価を実使用上問題ないレベルとした。
メッシュアップ率(%)={100−(振動させた後のトナーの質量)/100}・・・(3)
G(good)(良好):メッシュアップ率が1.0%未満である。
NB(not bad)(実用上問題なし):メッシュアップ率が1.0%以上〜3.0%未満である。
B(bad):メッシュアップ率が3.0%以上である。
・耐久性評価
10000枚の用紙に印字処理を連続して行ない、現像剤の凝集について評価した。用紙はA4サイズである。また、各用紙に印字処理された画像の印字率は5%である。現像剤の凝集は、印字処理を行なった後の現像剤の流動性を測定して凝集の有無を測定した。なお、流動性測定は、流動性測定装置(振動移送式流動性測定装置 株式会社エトワス社製)を用い、電圧60V、振動数137Hzの試験条件で現像剤の移送時間を測定して行なった。ここで、未使用の現像剤の移送時間は5分未満であった。
耐久性の評価基準
G(good)(良好):移送時間が5分未満
NB(not bad)(実用上問題なし):移送時間が5分以上、10分未満
B(bad):移送時間が10分以上
・帯電安定性評価
室温5℃、湿度5%の環境下で、10000枚の用紙に印字処理を連続して行ない、帯電安定性について評価した。用紙はA4サイズである。また、各用紙に印字処理された画像の印字率は5%である。帯電安定性は、印字試験前後の帯電量を測定した。なお、帯電安定性測定は、帯電量測定装置(Trek社製)を用いて行なった。
帯電安定性の評価基準
G(good)(良好):印字前後の帯電量低下量が5μC/g未満
NB(not bad)(実用上問題なし):印字前後の帯電量低下量が5μC/g以上、10μC/g未満
B(bad):印字前後の帯電量低下量が10μC/g以上
・総合評価
VG(very good):全ての評価がGである
G(good):NBの評価が1つある
NB(not bad):NBの評価が2つある
B(bad):Bの評価が1つ以上ある
Figure 2016051025
表から、実施例1〜実施例20のトナーは、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合反応において未反応のまま残存しているロジンを構成するカルボン酸をアミド化剤によってアミド化させたため、比較例1のトナーと比較して、耐オフセット性、耐ブロッキング性及び低湿環境下での帯電安定性が非常に優れていることが分かった。
本発明の電子写真用トナーは、耐オフセット性、耐ブロッキング性及び低湿環境下での帯電安定性に優れ、安定した高画質を提供できる。

Claims (9)

  1. 少なくとも、ロジンを構成するカルボン酸と多価アルコールとの縮合物であるエステル化合物及びロジンを構成するカルボン酸のアミド化剤によるアミド化によって得られるアミド化合物の混合物と、着色剤とを含むことを特徴とする電子写真用トナー。
  2. 前記ロジンを構成するカルボン酸が、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びサンダラコピマール酸からなる群から選択される1つ以上のカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
  3. 前記アミド化剤が、アルキルアミンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用トナー。
  4. 前記アルキルアミンが、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン及びジブチルアミンからなる群から選択される1つ以上のアミン化合物であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真用トナー。
  5. 前記アミド化が、塩基性化合物の存在下で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
  6. 前記塩基性化合物が、ピリジン及び4−N,N−ジメチルアミノピリジンからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真用トナー。
  7. 前記混合物は、重量平均分子量(Mw)が3000〜40000であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
  8. 前記混合物は、軟化温度が110〜160℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
  9. 前記混合物は、ガラス転移温度が50〜80℃であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
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