JP2016041027A - 茸類栽培方法、発酵菌床生成ミキサー、及び茸類栽培システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】茸類栽培方法は、基材を用意する工程S1Aと、該基材に水を加える加水工程S1Bと、該基材を攪拌しながら発酵させる発酵菌床を生成する工程S1Cと、該発酵菌床に茸類の種菌を接種する工程S2と、を含む。菌床発酵生成工程S1Cでは、格納容器11内に投入した基材を攪拌させながら加温して、基材に好気性発酵を引き起こすことを特徴とする。また、加水工程S1Bで使用する水が温水であることが好ましい。また、発酵菌床2を袋状体3で包装する袋詰め工程S3を更に含むことも好ましい。
【選択図】図1
Description
従来の茸類の栽培方法には、原木栽培と菌床栽培とが挙げられる。さらに菌床栽培には、ビン栽培や袋栽培が挙げられる(特許文献1〜3参照)。主流のビン栽培を一例として説明すると、その方法とは、ミキサーを用いた培地調製、充填機を用いたビン詰め、殺菌釜やボイラーを用いた殺菌、接種機を用いた接種、培養、掻き出し機を用いた菌掻き、芽出し、さし芽の単離、さし芽の移植、生育、収穫等の各工程からなる(非特許文献1及び本明細書に添付の図5参照)。
ところで、上述した従来の栽培方法のいずれも、広葉樹や針葉樹のオガコ等、何らかの木質系原料を使用しているのが通常である。先の大震災に伴う原子力発電所での事故により、東日本産の木質系原料が使用できなくなったことから、限られた地域の原料を使用せざるを得なくなったこと、電気料金も値上げとなったこと、など、茸類生産者を取り巻く経営環境は厳しいものとなっている。
また、従来のビン栽培や袋栽培では、殺菌釜を使用して基材内の微生物を加熱して死滅させる「殺菌工程」(例えば、高圧殺菌あるいは常圧殺菌)を経て培地(菌床)の製造を行うため、化石燃料を多量に使用する必要がある。さらには、最近の為替変動(円安)により原油価格が高騰しており、茸類生産者を取り巻く経営環境は一層厳しいものとなっている。
さらに、従来のビン栽培や袋栽培では、上述した殺菌釜の他、ボイラー、充填機、接種機、菌掻き機など多種多様な専用装置が必要であり、このため高額な設備投資も必要とすることも問題である。
また、従来法では、木質系材料だけでは茸の生育に必要な栄養分を供給できないことから、米糠、ふすま、トウモロコシ等の栄養剤の添加も必要である。このような添加処理を追加した従来方法であっても、その方法で得られる茸類は収穫量が十分とは言えないばかりか、その味・香にも改善の余地があった。また、従来法では、培地のビン詰めの後工程で接種工程が実施され、しかも、種菌がビン開口部に近い培地の中央部にのみ接種されるため、培地全体に菌糸が蔓延するのに時間が掛ることも指摘されている。
(態様1)
基材を用意する工程と、
該基材に水を加える加水工程と、
該基材を攪拌しながら発酵させる発酵菌床を生成する工程と、
該発酵菌床に茸類の種菌を接種する工程と、
を含み、かつ、
発酵菌床を生成する前記工程では、格納容器内に投入した前記基材を攪拌しながら加温して、前記基材に好気性発酵を引き起こすことを特徴とする茸類栽培方法。
(態様2)
発酵菌床を生成する前記工程では、前記基材の攪拌中に該基材に対して外気を送風することを特徴とする態様1に記載の茸類栽培方法。
(態様3)
発酵菌床を生成する前記工程では、前記加温の後に、冷却された外気を前記格納容器内に送風して前記基材を冷却することを特徴とする態様1又は2に記載の茸類栽培方法。
(態様4)
発酵菌床を生成する前記工程では、前記外気は予め除菌されていることを特徴とする態様2又は3に記載の茸類栽培方法。
(態様5)
前記加水工程で使用する前記水が温水であることを特徴とする態様1〜4のいずれかに記載の茸類栽培方法。
(態様6)
前記発酵菌床を袋状体で包装する袋詰め工程を更に含むことを特徴とする態様1〜5のいずれかに記載の茸類栽培方法。
(態様7)
格納容器が設けられかつ該格納容器内で発酵菌床を生成可能な発酵菌床生成ミキサーであって、
基材を前記格納容器内へ投入可能な材料投入口と、
前記格納容器に水又は温水を供給する加水手段と、
前記格納容器内で前記基材を攪拌可能な攪拌手段と、
を備え、かつ、
前記基材を加温可能な加温手段を更に備えることを特徴とする発酵菌床生成ミキサー。
(態様8)
前記基材へ空気を供給する送風手段を更に備えることを特徴とする態様7に記載の発酵菌床生成ミキサー。
(態様9)
発酵菌床を排出する菌床排出口が更に設けられた態様7又は8に記載の発酵菌床生成ミキサーと、
包装菌床搬送口が設けられかつ外壁によって区画されたクリーン室と、
前記クリーン室内に設けられかつ前記ミキサーで製造された発酵菌床を包装する袋詰め手段と、
を備えた茸類栽培システム。
(態様10)
前記クリーン室内には、室内の空気を冷却する冷房手段と、冷却された前記空気を収集して前記ミキサーに送るブロアとが設けられて、前記ミキサーの前記送風手段を構成することを特徴とする態様9に記載の茸類栽培システム。
(態様11)
前記クリーン室内には、外部から導入する空気又は室内の空気の少なくとも一方を除菌可能なフィルタ部が更に設けられることを特徴とする態様9又は10に記載の茸類栽培システム。
(態様12)
前記クリーン室内には、前記菌床排出口から前記袋詰め手段へ前記発酵菌床を搬送する第1搬送手段と、前記袋詰め手段にて包装された前記発酵菌床を前記袋詰め手段から前記包装菌床搬送口へと搬送する第2搬送手段とが更に設けられることを特徴とする態様9〜11のいずれかに茸類栽培システム。
(態様13)
前記ミキサーは、前記クリーン室内側に向いた第1側と、前記クリーン室外側に向いた第2側とを有するように設置され、かつ、
第1側には前記材料投入口が設けられる一方、第2側には前記菌床排出口又は該排出口及び前記送風手段が設けられることを特徴とする態様9〜12のいずれかに記載の茸類栽培システム。
本発明の茸類栽培方法の新規なポイントや特有さを説明するためにも、先ず、従来の茸類栽培方法で主流となっている通常のビン詰め菌床栽培について図5を参照しながら説明する。
図1に本発明の茸類栽培方法の各工程S1〜S7を示すフローチャートである。本発明の栽培方法は、先ず、図1からも視覚的に明らかなように、後述する新規な発酵菌床生成ミキサー10(以下、単に「発酵ミキサー」や「ミキサー」とも呼ぶ。)を使用して菌床2(図2及び図3参照)の発酵(好気性発酵)を行う工程S1が導入されていることに留意されたい。この菌床発酵工程S1は、具体的には、オガコ等の木質系材料や非木質農業副産物を含んだ基材を用意(ミキサー1へ投入)する工程S1Aと、該基材に水を加える加水工程S1Bと、を含む。なお、基材に採用する非木質農業副産物として、コーンコブ、コットンハル、ビートバルブ、稲わら、落下生殻、籾殻、ハト麦殻などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
次に、上述した本発明の栽培方法を具体的に具現可能な栽培システム1について詳述する。この栽培システム1は発酵菌床生成ミキサー10を備える。このミキサー10は本発明の栽培システム1には欠かせない最も重要な構成要素の一つであるため、先ず、この要素から説明する。
発酵菌床生成ミキサー10には、図4に示すように、内側に基材(培地材料)を投入可能な格納容器が11設けられかつ該容器11内で発酵菌床を生成可能である。このミキサー10は、さらに、上述した基材を格納容器11内へ投入可能な材料投入口12と、格納容器11に水又は温水を供給する加水手段13と、格納容器11内で基材を攪拌可能な攪拌手段14と、格納容器11内に設けられかつ基材を加温可能な加温手段15と、格納容器11内に設けられかつ基材へ空気(後述の好適な形態では予め除菌及び冷却された空気)を供給する送風手段16と、を備えることを特徴とする。
より具体的には、材料投入口12はミキサー10の上面に、後述する菌床排出口17はミキサー10の下部側面に設置されていることが好ましい。これらの投入口12や排出口17は、ヒンジ付き開閉扉12A,17Aによって開閉可能にしてもよく、これにより、基材投入時や菌床排出時以外での雑菌や埃のミキサー10への侵入を阻止することが可能となる。
ミキサー10内で基材を収容する格納容器11の形状は特に限定されないが、後述の攪拌手段14の利用を考慮すると鉛直方向下側部分11Bが中空円筒状を成すことが好ましい。加水手段13は、外部から給水口13Bを経て格納容器11に水を供給する給水ライン13Aと、格納容器11から排水口13Cを経て外部へ水を排出する排水ライン13Dと、によって構成される(図2〜図4参照)。ここで、給水ライン13A供給用の水として、温水(例えば、一般の家庭や工場に供給される温水)を利用することが好ましく、これにより、菌床発酵期間(つまり、後述する加温手段15の使用時間)を大幅に減らすことが可能となり、ひいては、栽培期間の短縮、収穫量の増加や製造コストの低減につながる。
攪拌手段14は、例えば、格納容器11の中心軸に沿って延びた回転軸14Aと、この回転軸14Aの長手方向に所定間隔だけ離間して取り付けられかつ半径方向に延びた複数の攪拌用羽根14Bと、この回転軸14Aを回転させるための駆動モータ14C、回転速度を調整する制御部14Dと、を備えたものが考えられる。なお、本実施例では、回転軸14Aの長手方向に沿って長尺の棒体14Eが回転軸14Aの回りに螺旋状に延び、各攪拌用羽根14Bの径方向先端部に接合されており、これにより、羽根14Bに基材の攪拌に耐えうる機械的強度や剛性を付与することができる。
また、加温手段15は、例えば、格納容器11の内壁付近に面状ヒーター15Aを貼るように構成しても良い。さらに、格納容器11内の室温を計測する図示しない温度センサ(例えば、熱電対、測温抵抗体やサーミスタ等の抵抗式温度計、放射温度計やサーモグラフィ等の非接触温度計)やヒーター15Aへの投入電圧(電力)を制御可能な制御部15B(例えば、インバータ)等が設置されていてもよい。これにより、室内温度を、所定期間、上述した好適な温度帯(40℃〜90℃、好ましくは50℃〜80℃の範囲内)に維持することができるようになり、茸育成に望ましい菌床の好気性発酵を実現することが可能となる。
また、このミキサー10には、外部からの空気又は冷却空気を格納容器11内に導入し、収容・攪拌される菌床に吹き付ける送風手段16が設けられていることが好ましい。上記構成の格納容器11を使用している場合、長手方向の端部に位置する端面に外気導入用の給気口16Aを設け、格納容器11内で加熱された蒸気を排出する為の排気口16B及びこの排気口16Bから上側に延びた排気路(煙突)16Cを設けることが好ましい。
なお、送風手段16によってミキサー10に供給される外気は、上述の発酵工程S1での好気性発酵を促進するために、クリーンな空気を導入することが好ましい。
本発明の栽培システム1は、主要な構成要素として、さらにクリーン室20を備える(図2及び図3参照)。クリーン室20の外周の多くは、断熱パネル等によって構成された外壁21によって区画されるが、作業員出入扉21Aと包装菌床搬送口21Bとがさらに設置されている。加えて、クリーン室20の室内に外気が簡単に入り込むのを防ぎ、空気の清浄度の保持を容易にする為に、作業員出入扉21Aと外部環境との間に入場室22及び入場扉22Aを追加設置するようにしてもよい。
さらに、クリーン室20内には、室内の空気を冷却する冷房手段24A,24Bと、冷却された空気を収集してミキサー10の給気口16Aに送るブロア16D及び冷気供給ライン16Eと、が設けられていることが好ましく、これらの構成要素によって、ミキサー10における前述の好ましい送風手段16を構成することができ、極めて清浄でかつ冷たい外気をミキサー10に導入・案内することができるようになる。
また、クリーン室20の室内には、袋詰め手段25が設けられることが好ましい。より具体的には、菌床排出口17からクリーン室20へ発酵菌床2を搬送する第1搬送手段(例えば、チェーンコンベア)25Aと、この第1搬送手段25Aにて搬送された発酵菌床2を回収口25B1で回収し、これを袋状体3で包装する袋詰め機構本体25Bと、この袋詰め機構本体25Bにて包装された発酵菌床2を袋詰め機構本体25Bから包装菌床搬送口21Bへと搬送する第2搬送手段(例えば、ベルトコンベア)25Cとが更に設けられることが好ましい。
以上説明したミキサー10、袋詰め手段25、冷房機能付きクリーン室20を一つに統合した本発明の栽培システム1により、前述した本発明の製造方法の全工程S1〜S7のうち、前述した基材(培地材料)の投入工程S1Aから袋詰め工程S3までを、ほぼ一つの設備空間(ミキサー10及びクリーン室20内)で実行できるようになる。
加えて、ミキサー10は、クリーン室20の内側に向いた第1側AAと、クリーン室2の外側に向いた第2側BBとを有するようにクリーン室20に設置されていることが好ましい。言い換えれば、ミキサー10の一部がクリーン室20から外側に張り出した構成を成す。さらに、好ましくは、第2側BBには材料投入口12は設けられる一方、第1側AAには菌床排出口17と送風手段16が設けられることが好ましい。
2 発酵菌床(培地)
3 袋状体
10 発酵菌床生成ミキサー
11 格納容器
12 材料投入口
13 加水手段
14 攪拌手段
15 加温手段
16 送風手段
16D ブロア
16D1 ブロア内のフィルタ部
17 菌床排出口
20 クリーン室
21 クリーン室の外壁
21A 作業員出入扉
21B 包装菌床搬送口
23A フィルタ部
24 冷房手段
25 袋詰め手段
25A 袋詰め手段の第1搬送手段
25B 袋詰め機構本体
25C 袋詰め手段の第2搬送手段
AA ミキサー10の第1側
BB ミキサー10の第2側
S1 発酵工程
S1A 基材を用意(投入)する工程
S1B 加水工程
S1C 発酵菌床を生成する工程
S2 接種工程
S3 袋詰め工程
Claims (13)
- 基材を用意する工程と、
該基材に水を加える加水工程と、
該基材を攪拌しながら発酵させる発酵菌床を生成する工程と、
該発酵菌床に茸類の種菌を接種する工程と、
を含み、かつ、
発酵菌床を生成する前記工程では、格納容器内に投入した前記基材を攪拌しながら加温して、前記基材に好気性発酵を引き起こすことを特徴とする茸類栽培方法。 - 発酵菌床を生成する前記工程では、前記基材の攪拌中に該基材に対して外気を送風することを特徴とする請求項1に記載の茸類栽培方法。
- 発酵菌床を生成する前記工程では、前記加温の後に、冷却された外気を前記格納容器内に送風して前記基材を冷却することを特徴とする請求項1又は2に記載の茸類栽培方法。
- 発酵菌床を生成する前記工程では、前記外気は予め除菌されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の茸類栽培方法。
- 前記加水工程で使用する前記水が温水であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の茸類栽培方法。
- 前記発酵菌床を袋状体で包装する袋詰め工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の茸類栽培方法。
- 格納容器が設けられかつ該格納容器内で発酵菌床を生成可能な発酵菌床生成ミキサーであって、
基材を前記格納容器内へ投入可能な材料投入口と、
前記格納容器に水又は温水を供給する加水手段と、
前記格納容器内で前記基材を攪拌可能な攪拌手段と、
を備え、かつ、
前記基材を加温可能な加温手段を更に備えることを特徴とする発酵菌床生成ミキサー。 - 前記基材へ空気を供給する送風手段を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の発酵菌床生成ミキサー。
- 発酵菌床を排出する菌床排出口が更に設けられた請求項7又は8に記載の発酵菌床生成ミキサーと、
包装菌床搬送口が設けられかつ外壁によって区画されたクリーン室と、
前記クリーン室内に設けられかつ前記ミキサーで製造された発酵菌床を包装する袋詰め手段と、
を備えた茸類栽培システム。 - 前記クリーン室内には、室内の空気を冷却する冷房手段と、冷却された前記空気を収集して前記ミキサーに送るブロアとが設けられて、前記ミキサーの前記送風手段を構成することを特徴とする請求項9に記載の茸類栽培システム。
- 前記クリーン室内には、外部から導入する空気又は室内の空気の少なくとも一方を除菌可能なフィルタ部が更に設けられることを特徴とする請求項9又は10に記載の茸類栽培システム。
- 前記クリーン室内には、前記菌床排出口から前記袋詰め手段へ前記発酵菌床を搬送する第1搬送手段と、前記袋詰め手段にて包装された前記発酵菌床を前記袋詰め手段から前記包装菌床搬送口へと搬送する第2搬送手段とが更に設けられることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに茸類栽培システム。
- 前記ミキサーは、前記クリーン室内側に向いた第1側と、前記クリーン室外側に向いた第2側とを有するように設置され、かつ、
第1側には前記材料投入口が設けられる一方、第2側には前記菌床排出口又は該排出口及び前記送風手段が設けられることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の茸類栽培システム。
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