JP2016039796A - 接着性細胞の培養方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】細胞培養面22となる容器壁21を備えた袋状容器2に、接着性細胞と液体培地とを含む液体収容物6を封入して培養する接着性細胞の培養方法であり、容器壁21を載置する載置面31を有する第1部材3と、容器壁21に対向する容器壁21を押さえる押さえ面42を有する押さえ板41と、を備えた形状保持手段1に袋状容器2をセットし、載置面31と押さえ面42とで袋状容器2を押圧して袋状容器2の内圧を上昇させ、この内圧の上昇により、少なくとも細胞培養面22近傍の液状収容物6の流動を規制した状態を維持しつつ培養する。
【選択図】図2
Description
これらの容器の培養面を形成するスチレン樹脂自体は疎水性であり、接着性細胞は、接着し難く、その結果、細胞はきわめて増殖しにくく、死滅してしまうことも多い。
ところが、組織培養用のシャーレまたはフラスコは、紫外線照射処理またはプラズマ処理等により、培養面を親水化して接着性細胞が培養面に接着するのを容易にしている。
しかし、袋状容器は、閉鎖系で培養できるというメリットがあり、これを接着性細胞の培養に使用しようとする幾つかの試みがなされている。
また、第2の課題は、異物、細菌による影響の無い環境で、接着性細胞を容易に培養できる培養方法を提供することにある。
また、第4の課題は、安価な部材を使用することによって、接着性細胞を容易且つ安価に培養できる培養方法を提供することにある。
また、ここでいう培養性能は、細胞が培養面に接着することで増殖する性能を含むのはもちろんのこと、増殖しないまでも、培養目的に合った形態に成育する性能も含まれる。
ここで、接着性細胞が接着し難い面とは、請求項1に記載の接着生細胞の培養方法で培養することで始めて細胞が成育または増殖するものであって、同培養方法で培養しなければ、すなわち、前記形状保持手段を使用しないで培養した場合には、細胞の接着性が悪く、細胞培養面に接着しないで、または、途中まで増殖しても剥離して、細胞が凝集塊を形成し、増殖しないか、死滅してしまい、容器単独では接着性細胞培養用容器として成り立たない面である。
なお、接着性細胞培養用容器として成り立たないとは、商品化のメリット、産業上のメリットが無いことを意味する。
本発明の実施形態の培養方法では、図1乃至図3に示すように、細胞培養面22となる容器壁21を備えた袋状容器2に、接着性細胞と液体培地とを含む液体収容物6を封入して、容器壁21を載置する載置面31を有する第1部材3と前記容器壁21に対向する容器壁21を押さえる押さえ面42を有する第2部材4とを備えた形状保持手段1に袋状容器2をセットし、載置面31と押さえ面42とで袋状容器2を押圧して当該容器の内圧を上昇させ、この内圧の上昇により液体収容物6の流動を抑制し、この状態を維持しつつインキュベートすることで、接着性細胞が細胞培養面22に接着することを促し、または、接着した細胞が剥離することを抑制して、培養性能を向上する。
本実施形態の液体収容物6は、袋状容器2に収容され、接着性細胞、液体培地を主成分とする流動性を有する液体であって、これに、血清、その他の添加剤、指示薬等が含まれていても構わない。
本実施形態の袋状容器2は、互いに対向する一対の容器壁21,21間に収容空間が形成された扁平形状の樹脂製袋状容器である。周囲には収容空間と外部とを連通するためのポート23及びチューブ24が設けられている。チューブ24の端部は、液体収容物6を収容空間内に収容または排出する際に、シリンジや他のチューブ等を接続できるとともに密封可能な接続部25となっている。
本実施形態の形状保持手段1は、液体収容物6が封入された袋状容器2を載置面31と押さえ面42とで押圧して袋状容器2の内圧を上昇させ、この内圧の上昇により液体収容物6の流動を抑制する手段である。この形状保持手段1は、インキュベート中連続して袋状容器2を保持するだけでなく、そのまま細胞培養中の各操作を行える構造となっている。
袋状容器2を第一部材3に載置して蓋体5を閉じ、突起52と突起受け51で第1部材3と蓋体5を固定することで、載置面31に載置された一方の容器壁21に対向する他方の容器壁21を押さえ面42で押圧する。
次に、このような袋状容器2及び形状保持手段1を用いて接着性細胞を培養する方法について説明する。
また、培養操作上、袋状容器2を傾斜させたり、反転させたりする場合には、収容空間の高低差により生じる液圧の変化に対して容器壁が実質的に変形しない程度に内圧をあげる必要がある。
本実施形態の培養方法によれば、培地の流動性を規制することで、培養後期まで、剥離せずに、利用可能な細胞形態を維持しながら培養することができる。
第1の点は、液体収容物6の流動性が低下していることであり、第2の点は、その液体収容物6の流動性よりも細胞の細胞培養面22への接着性若しくは増殖性が勝っていること、または、細胞培養面22に接着した細胞の剥離抵抗性が勝っていることある。
ここでは、インキュベートとは、培養容器を細胞および培養液と共にインキュベータ内に静置することを意味し、インキュベート期間とは、細胞の播種から細胞の取り出しまでの一連のインキュベートが終了するまでの期間を意味し、この期間には、細胞の観察、培地または添加剤の追加または交換等により、一時インキュベートを中断する期間も含まれる。
なお、このようにして分散状態で回収した接着性細胞は、その後、例えば洗浄液で十分に洗浄してから使用される。
以上のような本実施形態の接着性細胞の培養方法によれば、袋状容器2を押圧して容器の内圧を上昇させることで、細胞培養面22近傍の液体収容物6の流動を規制し、その状態を維持しつつ各種の培養操作ができるので、接着性細胞が接着しにくい細胞培養面22を有する袋状容器であっても、接着性細胞を容易に培養できる。
また、袋状容器2を押さえ面42と載置面31との間で圧迫するだけで、細胞培養面22の変形を規制すると共に細胞培養面22近傍の液体収容物6の流動を規制することができるので、形状保持手段1の構成を簡素化できる。そのため接着性細胞の培養の準備に手間がかからず、容易に接着性細胞の培養を行うことができる。
例えば、容器壁21を載置する載置面31と、容器壁21を押さえて内圧を上昇させる押さえ面42とを備えたものであれば、形状保持手段1の構成は適宜変更可能である。
上記では載置面31を第1部材3に固定して設け、押さえ面42を有する押さえ板41を変位可能に設けて付勢したが、押さえ面42を固定して設け、載置面31を変位可能に設けて付勢してもよく、載置面31と押さえ面42との両方を変位可能に設けてそれぞれ付勢してもよい。
上記実施形態では、一つの形状保持手段1に一つの袋状容器2を保持させて、培養を行った例について説明したが、形状保持手段の数や袋状容器の数は、任意に設定可能である。例えば複数の形状保持手段にそれぞれ一つの袋状容器を保持させてもよい。その場合、各形状保持手段をどのように配列してもよい。
さらに複数の形状保持手段を設けたり、形状保持手段に複数の載置面を設けたりした場合、各袋状容器の気体の供給及び排出を阻害しない範囲で、複数の形状保持手段や載置面を上下に積層して配置することも可能である。
[実施例1]
図1乃至図3に示すような袋状容器2及び形状保持手段1を用い、接着性細胞を培養した。
接着性細胞は、正常ヒト新生児包皮線維芽細胞(クラボウ社製)を使用した。
液体培地は線維芽細胞用合成培地EIDF(+)(ニプロ社製、商標)を用い、牛胎児血清を5wt%となるように添加し、調製した。
袋状容器2に、予め前記液体培地に25mlの液体収容物6を封入しておき、細胞浮遊液をシリンジで注入することで、細胞播種濃度が5000cell/cm2となるように接着性細胞を播種し、同時に、袋状容器2内に空気が残留しないように、混入した空気を除去した。この時、袋状容器2の二つの容器壁21,21間の寸法は外寸で約5mmであった。
袋状容器2を形状保持手段1にセットした状態のまま、インキュベータに収容し、37℃、二酸化炭素濃度5%、湿度95%以上の加湿下で、4日間インキュベートした。
インキュベート期間中には、袋状容器2を形状保持手段1にセットした状態のまま、インキュベータから取り出して顕微鏡により細胞の接着状態を観察した。
またインキュベート期間中には、上述した本実施形態における通常の培養方法で1回の培地交換を行った。培養開始3日目に、液体収容物20mlを抜き取って廃棄し、新たに20mlの新鮮培地を注入した。
細胞培養面22が上になるように袋状容器2を形状保持手段1ごとゆっくりと反転してから、10mlの無菌空気の入ったシリンジを袋状容器2のチューブ24の接続部25に接続し、袋状容器2に空気を注入して、袋状容器2の液体収容物6の液面を細胞培養面22に接着した細胞から離間させてから、チューブ24を介して袋状容器2の液体収容物6をゆっくりと抜き出した後で、細胞剥離液としてPBSで10倍希釈したトリプシン(0.25%Trypsin-EDTA Gibco)3mlが収容されたシリンジを袋状容器2のチューブ24の接続部25に接続し替えて、袋状容器2内にゆっくりと細胞剥離液を注入した。次に、ゆっくりと反転して細胞培養面22が下になるように戻して、すなわち、細胞剥離液が細胞面にゆっくりと、均一に広がるようにして、細胞剥離液と細胞を接触させた。
細胞播種から24時間経過後と4日経過後の細胞回収直前の顕微鏡写真を図4(a)と図4(b)に示した。また、細胞の生育状態の評価及び細胞濃度を表1に示した。
図4(a)より、細胞播種から24時間後、殆どの細胞が細胞培養面に接着していて、細胞の凝集は見られなかった。また、図4(b)より、4日後の細胞回収直前においては、コンフルとなっていたが、捲れて巻きながら剥離するもの、剥離して細胞塊になったものは見られなかった。そのため、トリプシンによる回収操作で、細胞を個々に分散した状態で回収することができ、細胞数の計数もできた。表1から、回収された細胞総数は、細胞播種時より十分に増加しており、細胞が順調に増殖したことが確認できる。
形状保持手段1を用いずに、液体収容物6を封入した袋状容器2を平らなアクリル板上に、押圧をかけずに載置して培養したこと、また、細胞が浮遊して細胞塊を形成していたために、3日目の培地交換及び4日後の回収操作を行わなかったこと以外は、全て実施例1と同様に接着性細胞を培養した。
図5(a)から、細胞播種から24時間後、細胞培養面22に接着している細胞もあるが、その数は少なく、細胞培養面22に接着せずに浮遊して細胞の凝集塊を形成するものもあった。また、図5(b)から、4日後においては、接着している細胞は見られず、少し大きくなった細胞の凝集塊がまばらに見られた。量的な観点から見て、これは、細胞塊が増殖した結果ではなく、播種した細胞が凝集した結果と考えられた。
なお、この細胞塊は、トリプシンで処理しても個々の細胞に分散しないので、細胞数の特定にまで至らなかった。
2 袋状容器
3 第1部材
4 第2部材
5 蓋体
6 液状収容物
21 容器壁
22 細胞培養面
23 ポート
24 チューブ
25 接続部
31 載置面
32 引出口
41 押さえ板
42 押さえ面
43 付勢部材
44 ピン
45 通気孔
51 突起受け
52 突起
Claims (5)
- 細胞培養面となる容器壁を備えた袋状容器に、接着性細胞と液体培地とを含む液状収容物を封入して接着性細胞を培養する培養方法であって、
前記容器壁を載置する載置面を有する第1部材と前記容器壁に対向する容器壁を押さえる押さえ面を有する第2部材とを備えた形状保持手段に前記袋状容器をセットし、
前記載置面と前記押さえ面とで前記袋状容器を押圧して当該容器の内圧を上昇させ、この内圧の上昇により、前記液状収容物の流動を抑制し、この状態を維持しながら培養することで、接着性細胞が前記細胞培養面に接着することを促し、または、接着した細胞が剥離することを抑制して、培養性能を向上することを特徴とする接着性細胞の培養方法。 - 前記細胞培養面が、接着性細胞が接着し難い面であることを特徴とする請求項1に記載の接着性細胞の培養方法。
- 前記細胞培養面が、疎水性の高い素材で形成され、且つ、細胞の接着性を向上する表面処理が施されていないことを特徴とする請求項1又は2に記載の接着性細胞の培養方法。
- 前記細胞培養面の水との接触角が、90°近傍、または、90°以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着性細胞の培養方法。
- 前記細胞培養面が、低密度ポリエチレン樹脂、低密度直鎖状ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、又は、これらの混合物により形成され、且つ、細胞の接着性を向上する表面処理が施されていないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接着性細胞の培養方法。
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