第1の発明は、圧縮機で圧縮された冷媒を基に冷気を生成する冷却器と、前記冷却器で生成された冷気を強制的に循環させる冷却ファンと、前記冷却器および冷却ファンを収める冷却室と、前記冷却室の一部を背面に備える低温貯蔵室と、前記低温貯蔵室の上方にあって冷却室の一部を背面に備え前記低温貯蔵室より高い温度に保たれた少なくとも一つの高温貯蔵室と、前記高温貯蔵室と前記冷却室を連通する冷気の戻り通路と、前記冷却ファンとは別に前記高温貯蔵室内に設けられ前記戻り通路内の冷気を取り込み高温貯蔵室内で循環させる高温貯蔵室ファンと、前記高温貯蔵室ファンを制御する制御部とを備え、前記制御部は前記圧縮機と前記冷却ファンが運転停止中は前記高温貯蔵室ファンの運転を強制的に停止状態とする構成としてある。
これにより、この冷蔵庫では高温貯蔵室ファンを回転させることによって高温貯蔵室内の冷気を強制的に循環し冷却室からの冷輻射により生じる高温貯蔵室内の温度差を解消して結露発生を抑制することができるとともに、圧縮機及び冷却ファン停止時には前記高温貯蔵室ファンを停止状態とするので、高温貯蔵室の野菜冷気入口付近に逆流している冷却器からの冷たい冷気(以下、低温冷気と称す)を高温貯蔵室ファンにより吸引して高温貯蔵室へと供給してしまうこともなくなり、高温貯蔵室ファンを設けたことによる温度差解消効果を維持しつつ低温冷気の高温貯蔵室内への吸引供給による凍結や結露発生も未然に防止できる。従って高温貯蔵室内の結露発生を確実に防止すると同時に冷気生成用の冷却
器を大型化して大能力の冷蔵庫にも対応することができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記制御部は圧縮機と冷却ファンの運転中であって冷気の戻り通路への冷気流れを開閉するダンパが閉じているときに高温貯蔵室ファンを回転駆動する構成としてある。
これにより、高温貯蔵室と連通する戻り通路中の冷気の流れがダンパにより阻止されているときには冷却室からの低温冷気が逆流してくることがなく、したがって、高温貯蔵室内ファンの回転により冷却室から逆流する低温冷気を吸引し高温貯蔵室に供給して過冷するようなことなく高温貯蔵室内の冷気を循環させて温度差を解消することができ、高温貯蔵室内の結露発生を抑制して良好な状態で貯蔵食品を冷却保存することができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記制御部は圧縮機と冷却ファンの運転中であって冷気の戻り通路への冷気流れを開閉するダンパが開いているときにも高温貯蔵室ファンを回転駆動する構成としてある。
これにより、高温貯蔵室と連通する戻り通路には冷却ファンによる冷気循環動圧が加わって冷却室からの低温冷気が逆流してくることもないので、高温貯蔵室内ファンの回転により冷却室から逆流する低温冷気を吸引し高温貯蔵室に供給して過冷することなく高温貯蔵室内の冷気を循環させて温度差を解消することができるうえに、前記戻り通路には戻り冷気が流れているので、高温貯蔵室ファンの回転によりこの戻り通路内の戻り冷気を吸引して高温貯蔵室に供給し当該高温貯蔵室を冷却することができ、高温貯蔵室内の結露発生を抑制しつつこれを効率よく冷却して良好な状態で貯蔵食品を冷却保存することができる。
第4の発明は、第1〜第3の発明において、前記高温貯蔵室は野菜室、低温貯蔵室は冷凍室で構成するとともに、前記高温貯蔵室の上部にこれよりも低い温度に保たれる冷蔵室を設けて、前記野菜室を冷凍室と冷蔵室の間に配置した構成としてある。
これにより、野菜室で発生する結露を抑制して野菜室内の野菜を良好に冷却保存できるとともに、冷凍室と冷蔵室の間にあって比較的低温に維持される野菜室に戻り通路の戻り冷気を取り込んで効果的に冷却することもでき、しかも野菜の取り出しが容易となり、信頼性及び使い勝手の良い冷蔵庫とすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図24を用い説明する。尚、この実施の形態ではいわゆる真ん中野菜と略称されるタイプの冷蔵庫を例にして説明するが、これによって、本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、冷蔵庫の全体構成について説明する。
<冷蔵庫本体構成>
図1〜図6において、本実施の形態に係る冷蔵庫は、前方を開口した冷蔵庫本体1を備え、この冷蔵庫本体1は、図3等に示すように主に鋼板を用いた外箱2と、ABSなどの硬質樹脂で成型された内箱3と、前記外箱2と内箱3との間に発泡充填された硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材4とから構成されている。冷蔵庫本体1は、仕切板5.6によって複数の貯蔵室に区分されており、冷蔵庫本体1の最上部には冷蔵室7、その冷蔵室7の下部に野菜室8、そして最下部に冷凍室9が配置されていて、真ん中野菜室タイプの冷蔵庫となっている。前記各貯蔵室の前面開口部は、扉10、扉11、扉12によって開閉可能に閉塞されている。
冷蔵庫本体1の上部後方領域には機械室14が設けられている。機械室14には、冷媒を圧縮する圧縮機15、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側構成部品が収容されている。
また、冷蔵庫本体1の背面には冷気を生成する冷却室16が設けられている。この冷却室16は冷凍室9の背面から野菜室8の下部背面に渡って形成されており、野菜室8との間は発泡スチロール等によって断熱性を持たせた奥面仕切壁体17を設けて断熱仕切りしている。
冷却室16内には冷却器18が配設されており、冷却器18の上部には冷却ファン19が配置されている。前記冷却ファン19は、冷却器18により冷却された冷気を冷蔵室7、野菜室8、冷凍室9に強制循環させて各室を冷却するものである。例えば、冷蔵室7は食品が凍らない程度の温度1℃〜5℃に冷却し、野菜室8は冷蔵室7と同等もしくは若干高めの温度2℃〜7℃に冷却している。また、冷凍室9は冷凍保存のために通常−22℃〜−15℃の冷凍温度帯に冷却しており、場合によっては冷凍保存状態向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温に冷却することもある。
上記冷却ファン19は図16に示すように野菜室8と冷却室16とを仕切る仕切板6に組み付け、この仕切板6を冷蔵庫本体1の内箱3にセットすることによって取り付けてある。この状態で上記冷却ファン19は図9、図10に示すように野菜室8の背面と対向する部分に位置し、野菜室8との間を仕切る奥面仕切壁体17に向けて冷気を送風し、野菜室下部背面に強い冷輻射をもたらす。
また、前記冷却器18の下部空間には、図9等に示すように冷却器18或いはその周辺に付着する霜や氷を除霜する除霜ヒータ28が配置されている。除霜ヒータ28の下部には除霜時に生じる除霜水を受けるためのドレンパン29が配置され、除霜水はドレンパン29の最深部から図示しないドレンチューブを介して庫外の蒸発皿に排出するようになっている。
次に冷気循環構成について説明する。
<冷気循環通路構成>
冷気を生成する冷却室16は、図9、図10等に示すように前記した奥面仕切壁体17と冷蔵庫本体1との間に形成されている冷却室冷気搬送路30に冷却ファン19の下流が開口しており、この冷却室冷気搬送路30を介して各室に冷気を送風する。
冷却室冷気搬送路30の上部は図7、図8、図10、特に図10に示すように冷蔵室ダンパ31を介して冷蔵室7の背面略中央部に形成されている冷蔵冷気往き通路32と連通している。冷蔵冷気往き通路32の側方には図7、図8に示すように冷蔵室7からの冷蔵冷気戻り通路33が隣接設置されていて、その下部は野菜室8、冷却室16に連通している。
冷蔵室7には図7に示すようにその奥壁上部適所に冷蔵冷気往き通路32の冷蔵冷気入口35が設けてあり、同奥壁下部適所には前記冷蔵冷気戻り通路33へ開口する冷蔵冷気戻り口36が設けられていて、冷却室16からの冷気は冷蔵室ダンパ31を介して冷蔵冷気往き通路32に供給され、その冷蔵冷気入口35から冷蔵室7に供給される。一方、冷蔵室冷却後の冷気は冷蔵冷気戻り口36から冷蔵冷気戻り通路33を介して野菜室8に供給され、かつ冷却室16へと循環する。また、この冷蔵室7には後述するようにその下部にパーシャル室が設けられていて、当該パーシャル室には図8に示すようにパーシャル室
ダンパ31a、パーシャル室冷気往き通路32a、パーシャル室冷気入口35aを介して冷気が供給されるようになっている。
この実施の形態では、同図8から明らかなように、前記奥面仕切壁体17と仕切板6の背面に、前記冷却室冷気搬送路30と冷蔵冷気往き通路32及びパーシャル室冷気往き通路32aとを連絡する往き通路37と、冷蔵冷気戻り通路33と野菜室8、冷却室16とを連絡する戻り通路38が形成されていて、前記冷蔵室ダンパ31等はこの往き通路37に設けられている。
そして、前記冷蔵冷気往き通路32と冷蔵冷気戻り通路33との間に連通路39が形成されていて、冷蔵冷気往き通路32を流れる低温冷気の一部が冷蔵冷気戻り通路33に直接混入するように構成されている。
また、冷凍室9の背面には図8に示すように前記冷却室16の冷却器18の側方を下向きに延びる冷気戻りダクト40が設けられており、この冷気戻りダクト40の上部が上記戻り通路38を介して野菜室8に連通するとともにその下部が冷却室16の下部近傍に開口していて、前記野菜室8冷却後の冷気が戻り通路38、冷気戻りダクト40を介してその下部開口から冷却室16へと循環するように構成されている。
一方、冷凍室9は図10に示すようにその背面壁体41の上部に前記奥面仕切壁体17背面の冷却室冷気搬送路30下部に連通する冷凍冷気入口42が、下部に前記冷却室16の下部に開口する冷凍冷気戻り口43が形成されていて、冷却室16からの冷気が冷却室冷気搬送路30下部から冷凍冷気入口42を介して供給され、冷凍室冷却後の冷気が冷凍冷気戻り口43を介して冷却室16へと循環する。
<野菜室構成>
野菜室8は、図7、図8、図12に示すように奥壁左右いずれか一方寄り部分、この実施の形態では正面から見て右側部分の下部であって前記冷蔵冷気戻り通路33からの戻り通路38部分に、野菜冷気出入り口44が一つだけ設けられている。上記野菜冷気出入り口44は、図8に示すように、冷却ファン19のベルマウス開口下端より上方に位置するように設けられていて、冷却ファン19停止時に冷却室16内の低温冷気が冷気戻りダクト40及び戻り通路38を介して逆流してきた場合、前記野菜冷気出入り口44より野菜室8に流入しないようにしてある。
さらにこの野菜室8には、特に図12に示すように当該野菜室8背面の奥面仕切壁体17を利用して前記冷気の戻り通路38の前面位置に上下方向に野菜室通路部50が縦設形成されている。この野菜室通路部50は上部が野菜室8上部に設けた前後方向の第一の通路47aの第一の野菜冷気吸込み口47に連通し、下部は野菜冷気出入り口44と連通している。
また前記野菜室8には、前記野菜冷気出入り口44と対向する部分にプロペラファン等からなる野菜室ファン53が配置されている。この野菜室ファン53は、その中心軸が野菜冷気出入り口44の中心軸より下方に位置する様にオフセット状態に配置されている。また、野菜室ファン53は野菜冷気出入り口44の前方に位置し、前から見て野菜室ファン53と野菜冷気出入り口44が重なるように設置されている。なお、野菜室8の冷却量が大きく必要な場合は野菜冷気出入り口44の開口面積を大きく、冷却量が小さくてよい場合は野菜冷気出入り口44の開口面積を小さくすることが有効であるが、いずれの場合も野菜冷気出入り口44の下端は野菜室ファン53の上端より低い位置に設け、前後に重なるように設置してある。
なお、この実施の形態の野菜室8には、図13、図14等に示すようにその奥の面となる奥面仕切壁体17の上部であって前記野菜冷気出入り口44の対角位置となる部分、この実施の形態では左奥側上部に、第二の野菜冷気吸込み口51が設けられており、この第二の野菜冷気吸込み口51を備えた第二の通路51aも図12に示すように前記野菜室通路部50の上部に連通している。
図15は上記野菜室通路部50、第二の野菜冷気吸込み口51、そしてその第二の通路51aを形成している奥面仕切壁体17の分解斜視図で、野菜室通路部50は発泡スチロール(図示せず)を介して重合させた前仕切板17aと後仕切板17bとの間に形成されており、その上端部分50aは前記第一の通路47aと第二の通路51aに開口している。さらにこの野菜室通路部50の下部には既に述べたように野菜室ファン53が組み込まれており、その吹出口54は野菜室8内に開口していて、野菜冷気出入り口44からの冷気と第一の野菜冷気吸込み口47及び第二の野菜冷気吸込み口51からの野菜室冷気を野菜室8内に送風するようになっている。
なお、上記野菜室8には、図11等に示すように野菜収納ケース48が配置されており、この野菜収納ケース48は扉11のフレームに載置された下段野菜収納ケース49aと、下段野菜収納ケース49aの上に載置された上段野菜収納ケース49bとから構成されている。そして上記野菜室8は上記野菜収納ケース48とその下の仕切板6及び野菜室8の内周壁面との間に空間が設けられ、当該空間は前記野菜冷気出入り口44からの冷気が流れる風路を構成している。
また、下段野菜収納ケース49aは図18に示すようにケース仕切板58によって左右に分割されており、前記野菜冷気出入り口44と対向する側、この実施の形態では右側部分を一段深くしてペットボトルやパック等の非野菜収納部(以下、ペットボトル等収納部と称す)59としてある。なお、このペットボトル等収納部59は野菜室8内を前後に仕切ってその前側部分をペットボトル等収納部としてもよい。
<冷蔵室構成>
冷蔵室7は図4等に示すように内部に複数の収納棚60を有するとともに、準冷凍温度帯に冷却できるパーシャル室61を備え、それぞれの適所に既に述べた冷蔵冷気入口35及び冷蔵冷気戻り口36(いずれも図7参照)が設けられている。そして、冷蔵室7の側壁適所には各室の庫内温度設定や製氷および急速冷却などの設定を行う操作部62が配置されている。
<冷凍室構成>
また、冷凍室9は既に図10を用いて述べたようにその奥壁上部に前記奥面仕切壁体17背面の冷却室冷気搬送路30下部と連通する冷凍冷気入口42が形成され、さらに奥壁下部に前記冷却室16に連通する冷凍冷気戻り口43が形成されている。そして構造図には図示していないが、冷却室16から冷凍室9への通路の適所にも冷凍室ダンパ34を組み込んである。なお、この冷凍室9にも、図4等に示すようにその扉12のフレームに載置された冷凍室ケース63が設けられており、更にその冷凍室ケース63の上部には製氷装置64が組み込まれている。
次にこの冷蔵庫の制御構成について説明する。
<制御構成>
図19は本実施の形態の冷蔵庫における制御ブロック図を示し、65は冷蔵室温度検知手段、66は野菜室温度検知手段、67は冷凍室温度検知手段、68は外気温度検知手段で、いずれもサーミスタで形成してあり、それぞれ冷蔵室7、野菜室8、冷凍室9、冷蔵
庫本体1の適所に設置されている。69は冷蔵庫全体を統括制御する制御部で、マイクロコンピュータ等によって構成してあり、前記冷蔵室温度検知手段65、冷凍室温度検知手段67からの出力に基づきあらかじめ組み込まれた制御ソフトにしたがって冷蔵室ダンパ31、冷凍室ダンパ34を開閉制御するとともに、圧縮機15、冷却ファン19を駆動して各室を設定温度に制御する。さらにこの制御部69は冷蔵室温度検知手段65及び野菜室温度検知手段66、外気温度検知手段68からの出力に基づき野菜室8の野菜室通路部50に組み込んだ野菜室ファン53の運転を制御するようになっている。具体的には後述する。
以上のように構成された冷蔵庫について、次にその動作、作用を説明する。
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。
庫内の設定された温度に応じて制御部69からの信号により冷凍サイクルが動作し冷却運転が行われる。圧縮機15の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)である程度凝縮液化し、さらに冷蔵庫の側面や背面、また冷蔵庫の前面間口に配設された冷媒配管(図示せず)などを経由し冷蔵庫の結露を防止しながら凝縮液化し、キャピラリーチューブ(図示せず)に至る。その後、キャピラリーチューブでは圧縮機15への吸入管(図示せず)と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって冷却室の冷却器18に至る。ここで、前記冷却器18内の冷媒は蒸発気化し、当該冷却器18を有する冷却室16で各貯蔵室を冷却するための冷気が生成される。
次に冷気循環による冷却動作について説明する。
冷却室16内で生成された低温の冷気は、冷却ファン19によって、冷却室冷気搬送路30から冷蔵室7と冷凍室9に送られ、冷蔵室7に供給された冷気は冷蔵室7を冷却した後、その戻り冷気の一部が野菜室8に供給され、それぞれの室が設定温度に冷却される。そして、各室を冷却したのちの冷気は、再び冷却室16に戻って冷却器18により冷却され、冷却ファン19で各室に循環していく。また、上記各室への冷気供給は、制御部69が冷蔵室温度検知手段65及び冷凍室温度検知手段67の検出温度に基づき圧縮機15と冷却ファン19を運転/停止、及び冷蔵室ダンパ31、冷凍室ダンパ34を開・閉制御し、それぞれの室が設定温度帯に維持されるようになっている。
次に、野菜室8の冷却動作について説明する。
野菜室8は冷蔵室冷却後の冷気が図12に示すように冷気の戻り通路38に設けられている野菜冷気出入り口44から供給されて冷却される。この冷気は、野菜室8に設けられている開口が野菜冷気出入り口44一つであるため、冷却ファン19の運転中、すなわち冷却運転中は、冷却ファン19の送風によって生じる野菜室8と戻り通路38との間の圧力差により野菜室内の冷気の一部が入れ替わるような形で緩やかに野菜室8に流れ込み、野菜収納ケース48と野菜室8の内周壁との間の空間を流れ、この野菜収納ケース48内に収納されている野菜やペットボトル等をケース外周から間接的に冷却し、前記野菜冷気出入り口44から戻り通路38へと流出して、冷気戻りダクト40から冷却室16へと循環する。
そのため、前記野菜室8内に出入りする冷気は、冷気出入り口を別々に設けた場合に比べ緩やかでその量も比較的少ないものとなる。したがって、野菜室8内の冷気は若干量が入れ替わる程度となり、大部分は野菜室8内にとどまった状態となる。すなわち、野菜室8内の冷気は野菜から蒸散した湿気を含む高湿度のままの状態に維持されるようになる。よって、野菜室8内の冷気が大量に循環して入れ替わるような場合に比べ野菜の乾燥劣化
を大きく低減させることができ、従来に比べかなり良好な状態で野菜を冷却保存することが可能となっている。
一方、この冷蔵庫では図12で示したように野菜室8の野菜室通路部50下部であって前記野菜冷気出入り口44と対向する部分に野菜室ファン53が設けられているから、この野菜室ファン53が冷却運転中に回転すると、戻り通路38を流れる戻り冷気の一部が前記野菜冷気出入り口44から野菜室通路部50内へと吸引され、野菜室ファン53の吹出口54より野菜室8内の野菜収納ケース48後面に向かって供給されることになる。
ここでこの実施の形態では、前記野菜室ファン53が野菜冷気出入り口44とオフセット状態となっているから、前記した野菜冷気出入り口44を介して行われる冷気の出入りは開口が野菜冷気出入り口44一つであっても比較的円滑なものとなり、確実な冷気取り込みが可能となる。すなわち、図12の(X)(Y)で示すように野菜室ファン53の中心軸に近い野菜冷気出入り口44の下端寄り部分(図12中の下部)ではXで示すように冷気が野菜室8内に流れ込み、野菜室ファン53の中心軸から遠い野菜冷気出入り口44の上端寄り部分(図12中の上部)ではYで示すように冷気が野菜室8から流出する様に明確に区分されるようになる。したがって、一つの野菜冷気出入り口44であっても冷気の出入りが入り乱れてこれが滞り結果的に冷気取り込み不足を招来することを防止でき、戻り通路38内より確実に冷気を吸引取り込みして野菜室ファン53の吹出口54より野菜室8内に供給することができる。
そして、この場合でも冷気出入り口が一つであるため、冷気出入り口を別々に設けている場合に比べ野菜室内冷気の入り代わり量は比較的少なく、野菜室8内は高湿度状態に保持されて野菜の乾燥劣化防止効果が維持される。
以上のようにして野菜室8内に取り込まれ、野菜室8の野菜収納ケース48に向かって供給された冷気は、野菜収納ケース48と野菜室8の底面及び内周壁との間の空間を前記冷却ファン19の送風圧によって循環する際の流れよりも早く流れ、前記した如く野菜冷気出入り口44から戻り通路38を介して冷却室16へと戻り循環する。その際、冷却室16へと戻り循環する冷気以外の冷気は、野菜室8の上部に設けた第一の野菜冷気吸込み口47及び第二の野菜冷気吸込み口51より第一の通路47a及び第二の通路51aに吸引され、これらの通路と連通している野菜室通路部50を介して野菜室ファン53に吸引され当該野菜室ファン53の吹出口54から再び野菜室8内の野菜収納ケース48に向けて供給され、野菜室8内を拡散及び循環する。
次に、野菜室8の結露防止について説明する。
野菜室8は前記のようにして冷却されるが、その背面に位置している冷却室16及び下方に位置する冷凍室9からの冷輻射を受け、従来と同様その背面下部近傍が低温化しやすい。特に冷却室16からの冷輻射が強く、野菜室8背面への冷輻射は、冷却室16自体はもちろん冷却室16から冷蔵室ダンパ31に至るまでの冷却室冷気搬送路30帯域がこの冷却室16と同じ極低温帯の冷却室温度域となっていてこの冷蔵室ダンパ31までの冷却室温度帯域と対向する部分で強い冷輻射を受け、この部分が低温化しやすい。
この冷輻射による野菜室背面下部近傍の低温化は、冷却運転中及び冷却停止中の何れの場合にも、前記した野菜室ファン53の回転により野菜室8内の冷気を拡散及び循環させることによって解消する。すなわち、前記した野菜室ファン53が回転すると、野菜室8内の冷気が前記したように拡散及び循環し、この拡散及び循環する冷気により温度が分散され、低温化を抑制する。より詳細に述べると、野菜室ファン53によって野菜室8内の冷気は拡散及び循環され、この拡散及び循環する冷気は、野菜室8の背面に位置する冷却
室温度帯域からの冷輻射および下方に位置する冷凍室9からの冷輻射によって低温化しやすい野菜室背面下部付近の温度を野菜室8内に拡散させ、野菜室8内の温度を下げて野菜室8内を冷却すると同時に、野菜室背面下部付近に極端な低温化や温度差が生じるのを抑制する。
以上のようにして野菜室8内の温度差は解消されて均温化が図られるので、野菜室内の温度差に起因する結露発生は防止される。
ここで、冷蔵庫内の全ての室が設定温度を下回り圧縮機15及び冷却ファン19の動作が停止すると、全ての冷気はそれまでの冷却ファン19により付いていた圧力差を解消し、温度の違いから生じる密度差による平衡状態へ流れ始める。この場合、冷却室冷気搬送路30に次いで冷凍室9内の圧力が高いため、この冷却室冷気搬送路30、冷却室16及び冷凍室9内の冷気は圧力差が解消するまで広がり続ける。このとき、冷凍室9内及び冷却室16内の冷気は比較的低温で密度が高くこれらの室に溜まっているため、これよりも上方に位置する冷却室冷気搬送路30内の低温冷気が下方に流下する。そしてこの低温冷気は、前記冷却室16及び冷凍室9内に冷たい冷気が充満しているため、冷却室16と冷凍室9を介してつながっている冷気の戻り通路38へと広がり、冷却室16の冷却ファン19下端高さと略同じ高さまで戻り通路38内に逆流して野菜室8の野菜冷気出入り口44近傍へ達することになる。
しかしながら本実施の形態では、前記戻り通路38に開口する野菜冷気出入り口44の下端は冷却ファン19のベルマウス下端高さよりも高く設置されているため、逆流した低温冷気が野菜冷気出入り口44から野菜室8へと流入するのを抑制でき、野菜冷気出入り口44直下近傍に滞留している。
そのため、前記圧縮機15及び冷却ファン19が停止しているときに野菜室ファン53が回転すると、野菜冷気出入り口44直下近傍に滞留している低温冷気を野菜室ファン53が吸引して野菜室8に供給してしまうことになる。
しかしながら本発明では前記低温冷気が逆流する圧縮機15及び冷却ファン19の停止中には、後に詳述する様に野菜室ファン53を停止状態とする。したがって、戻り通路38の野菜冷気出入り口44直下近傍まで逆流してこの部分に低温冷気が滞留していても、野菜室ファン53がこの冷却室16から逆流した低温冷気を吸引して野菜室8内に供給することはない。これにより、野菜室8が逆流冷気により局所的に冷却されることを抑制し、野菜室8内の結露や凍結、過冷を防止できる。
以上のようにしてこの冷蔵庫は冷却運転中と冷却停止中の何れの場合でも野菜室8の局部的な低温化と低温冷気の取り込みによる結露等を防止するから、冷気生成用の冷却器18を大型化して冷却室16が冷凍室9と野菜室8にまたがる大きな大能力の大型冷蔵庫であっても、その冷却室16からの冷輻射に起因する結露や低温冷気の取り込みに起因する結露や凍結を抑制することができる。したがって、小能力の小型冷蔵庫から大能力の大型冷蔵庫に至る全域の冷蔵庫において、結露水や凍結による野菜劣化を抑制し、良好な状態で野菜を冷却保存することが可能となる。しかも、この冷蔵庫は、野菜室8を冷蔵室7と冷凍室9との間となる冷蔵庫本体1上下略中央部分に設けた真ん中野菜室タイプの冷蔵庫となっているから、野菜等の出し入れを中心に使用されるユーザの使い勝手を高めることができ、効果的である。
次に上記野菜室の冷却及び結露防止制御について図20〜図24を用いて説明する。
図20は上記実施の形態1における冷蔵庫の野菜室冷却動作を説明するフローチャート
、図21は同野菜室を冷気循環により均温化しているときの動作を示すタイミングチャート図、図22は同野菜室を冷気循環により均温化しつつ冷却しているときの冷却動作を示すタイミングチャート図、図23は同野菜室の温度が所定温度より高いときの冷気循環による均温化と冷却動作を示すタイミングチャート図、図24は同野菜室の実際の冷却状況例を示すフローチャート図である。
この実施の形態における冷蔵庫は、図20のフローチャートに示すように、普通の冷蔵庫と同様まず冷蔵室7あるいは冷凍室9の温度に基づき冷却運転の可否を決定(S1)、すなわち、圧縮機15と冷却ファン19の運転の可否を決定する。例えば冷凍室9の温度が設定温度以上であると、冷凍室温度検知手段67からの出力に基づき制御部69が圧縮機15と冷却ファン19を駆動し、かつ冷凍室ダンパ34と冷蔵室ダンパ31及びパーシャル室ダンパ(以下、説明簡略化のため本発明の対象となる野菜室8への冷気供給を制御する冷蔵室ダンパ31を例にして説明する)を開いて、冷却器18で生成した冷気を冷凍室9、冷蔵室7等とともに野菜室8に供給し、冷蔵室7、野菜室8、冷凍室9を冷却する。この時、野菜室8は既述した通り冷却ファン19の送風による成り行き状態での冷気取り込みによって穏やかに冷却される。
次に上記冷却運転可否決定(S1)の後、外気温を取り込んで外気温状態を判定(S2)し、判定した温度結果に基づき初期設定されている野菜室ファン53の駆動時間(オン駆動時間とオフ時間)を温度補正してタイマ駆動時間とし設定(S3)する。例えば、外気温が所定温度以上の夏場等にはファン駆動時間を長くし、所定温度以下の冬場等には短くなるようにタイマ駆動時間を設定する。
次に野菜室温度を取り込んでこれが冷却安定時の温度範囲、すなわちあらかじめ設計的に定めた所定温度範囲内か否かを判定(S4)し、所定温度範囲内であればタイマ制御運転(S5)に入る。
一方、前記ステップ(S4)で野菜室温度が所定温度範囲以上、例えば野菜等の出し入れによって温度が高くなっている過渡時の温度と判定すれば、温度制御運転(S6)に入る。
さらに所定温度範囲以下であれば、野菜室8内の温度が十分低いことになり、制御部69は野菜室ファン53を停止状態(S14)とする。これにより、野菜室ファン53を回転させて無駄な電力消費を抑制し、野菜の良好な冷却保存を実現することができる。
前記タイマ制御運転(S5)に入ると、まず冷却運転中か否か、すなわち、圧縮機15および冷却ファン19が運転中か否かを確認(S8)する。
運転中でなければ、野菜室ファン53を停止状態(S14)とする。これにより、冷蔵庫が運転停止しているのにもかかわらず野菜室ファン53が回転し、既に述べたように戻り通路38に逆流している冷却室16からの低温冷気を吸引して野菜室8内に供給し野菜室8内に結露や凍結を発生させることを防止することができる。
運転中であれば、次に冷蔵室ダンパ31が開いているか、すなわち、冷蔵室ダンパ31が開いて冷却室16からの冷気を冷蔵室7および野菜室8に供給し、これらの各室を冷却しているか否かを確認(S9)する。
冷蔵室ダンパ31が閉じて冷蔵室7および野菜室8の冷却を停止しているときであれば、タイマ駆動時間に基づいて野菜室ファン53を回転させて野菜室温度差解消のための均温化運転(S10)を行う。この冷蔵室ダンパ31が閉じている時の均温化運転時は戻り
通路38に冷気の流れが生じず、冷却室16からの低温冷気が戻り通路38に逆流してくることがないので、既述したように野菜室ファン53は冷却室16から逆流する低温冷気を吸引し野菜室8に供給して過冷するようなことなく野菜室8内の冷気を野菜室8内で循環させ、野菜室内の温度差を解消して結露発生を抑制する。
また、上記均温化運転は野菜室ファン53をあらかじめ定めた時間で回転制御しているので、野菜室8内の温度を常時検出して野菜室ファン53を回転制御する場合に生じがちな温度検出遅れによる温度制御ばらつきを低減することもでき、野菜室8内の温度を安定させて良好な状態で野菜を冷却保存することができる。
また、上記タイマ制御運転(S5)における均温化運転(S10)時の野菜室ファン53の回転は、ステップ(S3)で外気温を考慮して設定した時間行うようにしているので、扉側等から受ける外気からの熱量が変化してもこれに応じて野菜室内の冷気を過不足なく循環させることができる。これにより、野菜室内温度を確実に均温化することができ、野菜室内の温度差に起因して発生す結露を確実かつ効率よく抑制することができる。
図21はこのタイマ制御運転による均温化時の野菜室ファン53の駆動状態と野菜室8の温度状態を示し、圧縮機15が運転し冷蔵室ダンパ31が閉じているときに野菜室ファン53が回転し、野菜室8内の温度は温度検出遅れ等によるばらつきを発生することなくほぼ一定の温度に均温化される。これにより、野菜室8内の温度差に起因して発生する結露を確実に抑制することができる。
一方、前記ステップ(S8)での運転状態確認の結果、冷蔵室ダンパ31が開いていて野菜室8等を冷却中であれば、野菜室ファン53を前記した均温化のための駆動とともに更に冷却のための駆動も行って野菜室8の冷却+均温化運転(S12)を行う。この冷却+均温化運転は、これまた既述した通り野菜室8と連通する戻り通路38に冷却ファン19からの動圧が加わって冷却室からの低温冷気が逆流してくることもないので、野菜室ファン53の回転により冷却室16から逆流する低温冷気を吸引し野菜室8に供給して過冷することなく戻り通路38内に流れている戻り冷気を吸引し取り込んで野菜室内冷気とともに野菜室8内に循環させ、野菜室8内を均温化して結露発生を抑制しつつ野菜室8内を冷却する。
図22はこのタイマ制御運転による冷却+均温化時の野菜室ファン53の駆動状態を示し、あらかじめ設定した一定のタイマ駆動時間だけ冷却用回転及び均温化用回転を行う(S13a)。これにより、野菜室8内を所定温度範囲内に冷却維持するとともに、野菜室内冷気が既述したように循環されて野菜室内に大きな温度差が生じるのを防止し結露発生を抑制する。
ここで、上記タイマ制御運転(S5)における冷却+均温化運転(S12)時の野菜室ファン53の駆動も、ステップ(S3)で外気温を考慮して設定した時間行うようになっている(S13a)。したがって、前記均温化運転時と同様、扉側等から受ける外気からの輻射熱量に応じて野菜室内の冷気を過不足なく循環させることができるうえに、当該野菜室内温度に適した量の冷気取入れが可能となる。これにより、野菜室内温度を確実に均温化して温度差に起因する結露発生を確実かつ効率よく防止することができるとともに、野菜室8内を外気温に左右されることなく確実に所定温度範囲内に冷却維持することができる。しかも、上記野菜室ファン53の回転は更にタイマ制御運転で定めた時間で回転制御しているので、野菜室8内の温度を常時検出して野菜室ファン53を回転制御する場合に生じがちな温度検出遅れによる温度制御ばらつきも低減することができ、野菜室8内の温度を安定させて良好な状態で野菜を冷却保存することができる。
次に前記温度制御運転(S6)について説明する。
温度制御運転に入る(S6)と、まず前記したステップ(S3)で設定したタイマ駆動時間のうち冷却用タイマ駆動時間を野菜室8の温度に応じて更に補正して冷却用温度駆動時間として設定(S7)する。
その後、前記タイマ制御運転(S5)と同様、冷却運転中か否か、すなわち、圧縮機15および冷却ファン19が運転中か否かを確認(S8)する。
この場合、ステップ(S4)での野菜室温度の判定が所定温度範囲以上であるから、圧縮機15および冷却ファン19は当然運転中であり、その後冷蔵室ダンパ31が開いているか、すなわち、冷蔵室ダンパ31が開いて冷却室16からの冷気を冷蔵室7および野菜室8に供給し、これらの各室を冷却しているか否かを確認(S9)するが、この場合も前記ステップ(S4)での野菜室温度の判定が所定温度範囲以上であるから、圧縮機15および冷却ファン19は運転中であって冷蔵室ダンパ31は開き冷却中であり、野菜室ファン53を駆動して野菜室8の冷却+均温化運転(S12)を行う。
ここで、上記温度制御運転(S6)における冷却+均温化運転(S12)の野菜室ファン53の駆動は、前記ステップ(S7)で野菜室温度に基づき補正した冷却用温度駆動時間に基づいて行われ、その冷却用温度駆動時間が経過する(S13b)と、停止(S14)する。すなわち、野菜等の出し入れにより野菜室8を開放したことにより外気が入り込むなどして温度が高くなると、野菜室内の温度に基づいて設定した冷却用温度駆動時間回転して停止する。したがって、野菜室内を確実かつ迅速に所定温度まで冷却し、かつ、野菜室内温度の均温化を行って結露発生も防止することができる。
図23はこの温度制御運転(S6)による野菜室ファン53の駆動状態を示し、野菜室内の均温化のための均温化時間に加えて行われる野菜室内冷却のための冷却時間が、野菜室8の温度に応じて長くなり、野菜室8の温度に応じて最適な時間野菜室ファン53が回転する(S13b)。これにより、野菜室内に取り込む冷気の量が増加して野菜室8内を確実かつ迅速に冷却することができるとともに、野菜室内を均温化して結露発生を防止することができる。この場合、野菜室ファン53の駆動時間を長くすると同時に回転数を上げる、あるいは回転数だけを上げるなどすれば、野菜室内に取り込む冷気の量を多くしてより短時間に野菜室8を所定温度まで冷却することができ、効果的である。
図24はこの実施の形態1の制御で制御した場合の野菜室の冷却状況の一例を示すタイミングチャート図である。図26に示すように、野菜室8内の温度が安定温度状態である所定温度範囲内にあるとき(X)にはステップ(S3)で定めたタイマ制御運転時間だけ野菜室ファン53を冷却及び均温化のため駆動し、野菜等の取り出しのために野菜室8が解放されて野菜室内温度が高くなる過渡時となる(Y)と、野菜室内の温度に応じて野菜室ファン53を駆動する冷却時間が長くなって野菜室8を効率よく冷却し、野菜室内温度が低下するにしたがってその野菜室ファン53を駆動する冷却時間が短くなって終りには野菜室内の温度が安定時である所定温度範囲内になる(X)と、ステップ(S3)で定めたタイマ制御運転時間に戻って野菜室内の冷却及び均温化を行う。
(実施の形態2)
図25は実施の形態2における冷蔵庫の冷却室背面部分の冷気流れを説明する斜視図、図26は同実施の形態2における冷蔵庫の野菜室における冷気流れを説明するための概略断面図である。
この実施の形態2の冷蔵庫は、前記実施の形態1で説明した野菜冷気出入り口44の代
わりに野菜冷気入口45と野菜冷気戻り口46をそれぞれ別々に設けたものである。すなわち、野菜室8に野菜冷気入口45と、当該野菜冷気入口45より上方位置、例えば第一の通路47a、第二の通路51aと野菜室通路部50との合流付近に野菜冷気戻り口46を設けたものである。
その他の構成は制御も含め前記実施の形態1と同様であり、同一構成要素部分には同一番号を附記して説明は省略する。
この実施の形態2の場合は、野菜室内への冷気は野菜冷気入口45から冷気の戻り通路38中の冷気が流れ込み、野菜室8内の冷気は野菜冷気戻り口46から冷気の戻り通路38へと流出する。したがって、一つの野菜冷気出入り口44から冷気が出入りする場合に比べ冷気の出入りは円滑で、より多くの冷気が野菜室8内に流れ込むもののとなり、効率よく野菜室内に冷気を取り込んで、野菜室8内を強力に冷却できる。よって、例えば野菜室8が冷蔵庫本体の最下部にあって野菜室8の底部が外気からの熱輻射を受けて低温化しにくい冷蔵庫のような場合等に効果的である。
その他の作用効果は野菜冷気出入り口44一つで冷気を出入りさせて野菜の乾燥劣化を抑制する効果以外実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
以上のように上記各実施の形態の冷蔵庫は野菜室内の温度差に起因する結露発生を抑制すると同時に野菜室内を低温に冷却保持することができ、常に良好な状態で野菜を冷却保存することができるものであるが、更にこの冷蔵庫は野菜室冷却に関してさらに次のような効果も有するので、以下これを説明しておく。
まず、この実施の形態の冷蔵庫では上記野菜室ファン53は野菜収納ケース48の下段野菜収納ケース49a及び上段野菜収納ケース49bの外周に向けて冷気を循環させるから、野菜室ファン53によって循環する冷気が下段野菜収納ケース49a及び上段野菜収納ケース49b内に入って野菜同士の間を流れることを抑制でき、野菜同士の間を冷気が流れることによって生じがちな野菜の乾燥劣化も防止して新鮮かつ良好な状態で野菜を冷却保存することができる。
特にこの実施の形態では上記下段野菜収納ケース49a及び上段野菜収納ケース49bで構成される野菜収納ケース48の上部に野菜室内を拡散または循環する冷気の吸込み口ともなる第一の野菜冷気吸込み口47及び第二の野菜冷気吸込み口51を設けているから、野菜室8内を循環する冷気は下段野菜収納ケース49a及び上段野菜収納ケース49bからなる野菜収納ケース48内に入り込むことなくそのまま第一の野菜冷気吸込み口47及び第二の野菜冷気吸込み口51へと流れる様になり、より確実に野菜の乾燥劣化を防止して新鮮かつ良好な状態で野菜を冷却保存することができる。これは上段野菜収納ケース49bの上面開口縁を野菜室天井面ともなる仕切板5に近接させることでより高めることができるとともに、当該上面面開口を覆う蓋を設ければさらに効果的に高めることができる。
加えて、上記野菜室ファン53は下段野菜収納ケース49a及び上段野菜収納ケース49bで構成される野菜収納ケース48の上部開口縁より下方部分に位置しているから、野菜室ファン53から送風される冷気は野菜収納ケース48のうち、特にその下段野菜収納ケース49aの底面及び下部外周付近を循環するようになる。したがって、この野菜室ファン53によって循環する冷気はさらに野菜収納ケース48内に入り込みにくいものとなり、野菜収納ケース48内に冷気が入り込んで循環することにより生じる野菜の乾燥劣化をこの点からも確実に防止することができ、より新鮮かつ良好な状態で野菜を冷却保存することができる。
また、この実施の形態では上記野菜収納ケース48はその下段野菜収納ケース49aの内部を左右に仕切ってその一方にペットボトルやパック等の非野菜収納部59(以下、ペットボトル等収納部59と称す)を設け、このペットボトル等収納部59側の野菜室背面部分に野菜室ファン53を設けて、当該ペットボトル等収納部59に向けて野菜室内の冷気を循環させるように構成してあるから、野菜室ファン53からの冷気はペットボトル等収納部59の周りを集中的に循環するようになり、ペットボトル等収納部59に収納されているペットボトルやパック等を効率よく冷却することができる。特にペットボトル等収納部59に収納されているペットボトルやパック等の飲料水等は野菜よりも熱容量が大きくて冷えにくいことから効果的であり、これによってペットボトル等の収納による野菜室温度の上昇を効率よく抑制し、結露発生を効果的に防止すると同時に野菜の保存も良好に行うことができる。
特にこの実施の形態では、野菜室ファン53とともに野菜室8に設けた第一の野菜冷気吸込み口47をも野菜収納ケース48のペットボトル等収納部59側の部分に設けた構成としてあるから、野菜室ファン53からの冷気をペットボトル等収納部分にさらに効率よく集中的に循環させることができ、効果的である。
また、野菜室8内の冷気を循環させるためのもう一つの吸込み口ともなる第二の野菜冷気吸込み口51を野菜室ファン53と略対角位置の野菜室上部に設けた構成としてあるから、野菜室ファン53からの冷気は野菜収納ケース48のペットボトル等収納部59の底面部分を通って前方へと野菜室8内を斜めに縦断しながら循環して野菜室上部の第二の野菜冷気吸込み口51へと流れる様になるので、下段野菜収納ケース49a及び上段野菜収納ケース49bからなる野菜室ケース内への冷気の入り込みを防止しつつ下段野菜収納ケース49a及び上段野菜収納ケース49bからなる野菜ケースの外周に広範囲に冷気を循環させることができ、野菜及びペットボトル等を効果的に冷却することができる。
また、この冷蔵庫は、冷蔵冷気往き通路32と冷蔵冷気戻り通路33との間に連通路39が形成してあり、野菜室ファン53が回転するとその吸引力によって冷蔵冷気往き通路32内の低温な新鮮冷気が冷蔵冷気戻り通路33内に混入して戻り通路38を介し野菜冷気出入り口44から野菜室8内に供給される。すなわち、野菜室8は、冷蔵室7からの冷蔵室冷却後の比較的温度が高くなっている戻り冷気によって冷却されるが、この冷蔵庫では野菜室ファン53の回転により前記冷蔵室冷却後の冷気に低温の新鮮冷気が混入して低温化された冷気で野菜室8を冷却することになる。したがって野菜室8を効果的に冷却することができ、例えば、野菜やペットボトル等が一時的に多く収納された時などのように冷却負荷条件が悪いときでも、野菜室8を確実に冷却することができる。また、上記連通路39を介して取り込む低温の新鮮冷気の量は野菜室ファン53の回転数を上げることによって増加させることができ、夏場で熱容量の大きい常温のペットボトル等が大量に収納された時でも、これを確実に冷却することができる。しかも野菜室8を確実に冷却できるので、冷却室16からの冷輻射による結露発生も効率よく抑制でき、野菜を良好な状態で冷却保存することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態で説明した構成は本発明を実施する一例として示したものであり、本発明の目的を達成する範囲で種々変更可能なことは言うまでもない。
例えば、本実施の形態では、冷蔵庫本体1の最上部に冷蔵室7、その下に野菜室8、最下部に冷凍室9を配置した3室のレイアウトの冷蔵庫を例にして説明したが、冷凍室の上方に冷蔵温度帯の貯蔵室が一つだけ配置された2室のレイアウトであっても、その貯蔵室の背面下部に冷却室が位置していてこの冷却室と前記貯蔵室が戻り通路でつながっていれば、冷却運転停止時に冷却室からの冷気の逆流が生じるので、本発明を適用すれば上側貯
蔵室の結露を防止することが可能となる。さらに、最下部の貯蔵室が冷凍温度帯で無くても上側貯蔵室より低い温度(たとえばチルド温度)の場合や、冷凍室の更に下に貯蔵室がある場合でも、冷却運転停止時における冷却室からの冷気の逆流が生じるので本発明を適用することができ、あらゆるレイアウトの冷蔵庫に適用できるものである。