JP2016036304A - 核酸増幅の非特異反応を抑制する新規の方法 - Google Patents

核酸増幅の非特異反応を抑制する新規の方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プライマーダイマーの出現などの非特異反応を抑制し、抗ポリメラーゼ抗体の作用などを阻害せず、融解温度を低下させる作用が高く、なおかつ粘性が低く、長期保存が可能である性質を満たす物質の存在下で行うワンステップRT−PCR法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、グリコール類、特に1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下で行うことを特徴とするワンステップRT−PCR法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、核酸増幅の非特異反応の抑制方法に関する。
核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、遺伝子診断、臨床検査といった医療分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等においても、広く用いられている。代表的な核酸増幅法はPCR(polymerase chain reaction)である。PCRは、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの解離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって、試料中の標的核酸を増幅する方法である。
検出対象核酸がRNAである場合、たとえば病原性微生物の検出において対象がRNAウイルスである場合、あるいは遺伝子の発現量をmRNAの定量によって測定する場合などは、逆転写酵素によりRNAをcDNAに変換する反応(逆転写反応)をPCRの前に行う。
この逆転写酵素による逆転写反応とDNAポリメラーゼによるPCRは、各々の酵素の至適条件の違いから、先に逆転写反応を行いついで別の反応液に移してPCRが行われることが多い。この煩雑さを解消するために2つの反応を同一反応液中で連続して行う方法、ワンステップRT−PCR法が近年に開発された。(特許文献1)
PCR法には、一対のプライマーで挟まれる標的核酸の領域を増幅することで、目的とする遺伝子配列を増幅できる特徴がある反面、プライマーが目的としない配列にハイブリダイズしてしまった場合(プライマーのミスマッチアニーリング)においても、その配列の増幅が起こり、非特異増幅が生じるという欠点がある。また、PCR中にプライマー同士が会合することで、プライマーダイマーが生じ、これが鋳型DNAとして働いて、非特異増幅産物が生成されるという欠点がある。そのため、PCRにおける課題は、非特異増幅を抑制し目的産物のみを増幅させることにある。
このような背景から、PCRの効率及び特異性を向上させる薬剤の検討が進められ、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、グリセロール、ベタインなどが報告されてきた(特許文献2、3)。これらの薬剤は核酸の融解温度を低下させることで、核酸の増幅効率を向上させることが知られている。しかしながら、これらの物質にはいずれも短所があることが知られている。例えば、ジメチルスルホキシドやホルムアミドは、PCRの特異性を高めるために多用されるホットスタート用抗ポリメラーゼ抗体の作用を阻害する性質がある(非特許文献2)。また、ホルムアミドは、それ自身の水溶液中での安定性が低く、PCRの反応液に混合した状態での長期保存が困難である。一方、グリセロールやベタインは、反応阻害や安定性の面では問題が少ないが、融解温度を低下させる作用が比較的低いため、PCRの反応液に混合する際は極めて高濃度を添加する必要がある。特にグリセロールはそれ自身の粘性が高く、高濃度の添加によって反応液調製時の操作性が著しく低下する、あるいは少液量での反応液調製時に、添加量の誤差が発生しやすいという問題もあった。
その他、テトラメチルアンモニウム塩化物(TMAC)や水酸化テトラエチルアンモニウム(TMAH)、金粒子などがPCRの効率及び特異性を向上させることが知られているが(非特許文献3、4)、これらの物質も短所があることが知られている。例えば、TMACやTMAHは、PCR反応を阻害する傾向が示唆されており、一方、金粒子は、汎用的に使用するにはコストがかかるといった問題があった。
特許2968585 特許4761265 特許4300321 特表2002−513587号
Nature,324(6093),13−19(1986) Clontech社,TaqStart Antibody取扱説明書(2005年3月発行) Nucleic Acids Research,Vol.19,No.13(1991年6月発行) Angew Chem Int Ed Engl.2005 Aug 12;44(32)
核酸増幅法において、標的核酸の増幅以外の非特異反応を抑制する物質の検討が進められてきた。しかしながら、従来使用されてきた物質は、ホットスタート用抗ポリメラーゼ抗体の作用を阻害する性質があるものや、水溶液中での安定性が低く長期保存が困難なもの、物質の粘度が高く反応液調整時の操作性が著しく低下するものなど、ワンステップRT−PCR用のプレミックス試薬として、いずれも使用に際し短所を有するものであった。
そこで、本発明は、核酸増幅における非特異反応を抑制する性質を有する物質として、(1)核酸増幅以外の反応、すなわちホットスタート用抗ポリメラーゼ抗体の作用などを阻害しないこと、(2)融解温度を低下させる作用が高く、なおかつ粘性が低く、添加による操作性の低下が顕著でないこと、(3)長期保存が可能であることの性質を満たす物質の存在下で行うワンステップRT−PCR法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、グリコール類、特に1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下でのワンステップRT−PCR法は、非特異反応を抑制する効果があることを見出した。そして、驚くべきことに、抗ポリメラーゼ抗体に対する阻害作用がなく、操作性の低下も極めて少なく、長期保存が可能で、さらに混合液状態での安定性が高いワンステップRT−PCR反応用組成物が提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の概要は以下の通りである。
[項1]グリコール類を含むことを特徴とするワンステップRT−PCR法。
[項2]グリコール類の炭素数が4以下である、項1に記載のワンステップRT−PCR法。
[項3]グリコール類が、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である、項1又は2に記載のワンステップRT−PCR法。
[項4]グリコール類の核酸含有溶液中での濃度が1〜20容量%である、項1から3のいずれか一に記載のワンステップRT−PCR法。
[項5]グリコール類の核酸含有溶液中での濃度が3〜15容量%である、項1から4のいずれか一に記載のワンステップRT−PCR法。
[項6]プライマーおよび標的核酸以外に増幅に必要な組成を含む、項1から5のいずれか一項に記載のワンステップRT−PCR反応用組成物。
[項7]少なくとも逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、抗体、反応緩衝剤、金属イオンを含む、項1から6のいずれか一項に記載のワンステップRT−PCR反応を実施するための組成物。
本発明により、ホットスタート用抗ポリメラーゼ抗体の作用等を阻害せず、融解温度を低下させる作用が高く、粘性が低いため添加による反応液組成物の操作性の低下が極めて少なく、かつ保存安定性も高い、という種々の困難な要求を満たしつつ、非特異反応を抑制して核酸増幅の成功率を大幅に向上させることができる方法を提供することができた。
ジメチルスルホキシドを添加しなかった時及び添加した時の反応性の差異を、リアルタイムRT−PCRにおいて検討し、融解曲線分析の結果を表した図である。 1,3−プロパンジオールを添加しなかった時および添加した時の反応性の差異を、リアルタイムRT−PCRにおいて検討し、融解曲線分析の結果を表した図である。 1,2−プロパンジオールを添加しなかった時および添加した時の反応性の差異を、リアルタイムRT−PCRにおいて検討し、融解曲線分析の結果を表した図である。 1,2−エタンジオールを添加しなかった時および添加した時の反応性の差異を、リアルタイムRT−PCRにおいて検討し、融解曲線分析の結果を表した図である。
本発明の態様は、グリコール類の存在下で行う核酸増幅法に関連する。
本発明における核酸増幅反応とは、鋳型の核酸に対し、相補的な配列を持つ核酸を配列依存的に合成する反応を指し、その様式は特に限定されないが、より具体的には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法のように特定の標的配列を指数関数的に増幅する方法が例示される。本発明の実施するための好ましい方法は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法を用いた方法である。
またワンステップRT−PCR法においては、通常のワンステップRT−PCR法のみならず、定量PCR(qPCR)、LA−PCR(Long and Accurate PCR)、競合的PCR、In situ PCR、RNA−primered PCR、multiplex PCR、シャトルPCR、PCR/GC−calmp法、ストレッチPCR、Alu PCR、メガプライマーPCR、Immuno PCR等、PCR法を応用した核酸増幅方法も本発明に含まれる。
本発明におけるグリコール類とは、アルコールの一種(ポリオール)で、鎖式または環式脂肪族炭化水素を形成する炭素原子のうち、2つの炭素原子にそれぞれ1つずつのヒドロキシ基が存在している化合物であり、ジオール化合物とも呼ばれる。最も構造が単純なエチレングリコールを単にグリコールと呼びあらわすこともあるが、ここでは前述の広義でのグリコール類を指す。
本発明におけるグリコール類は、いかなる構造のグリコール類を用いても良いが、好ましくは炭素数4以下の鎖式構造のグリコール類が用いられる。炭素数4以下のグリコール類として、1,2−エタンジオール(「エチレングリコール」ともいわれる)、1,2−プロパンジオール(「プロピレングリコール」ともいわれる)、1,3−プロパンジオール(「トリメチレングリコール」ともいわれる)、1,2−ブタンジオール(「α−ブチレングリコール」ともいわれる)、1,3−ブタンジオール(「β−ブチレングリコール」ともいわれる)、1,4−ブタンジオール(「テトラメチレングリコール」ともいわれる)、2,3−ブタンジオール(「ジメチレングリコール」ともいわれる)、2,2´−オキシジエタノール(「ジエチレングリコール」とも言われる)、が用いられる。より好ましくは炭素数2または3のグリコール類、即ち、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールが用いられる。これらのグリコール類は、構造により製法が異なるものの、いずれも工業的な製造方法が確立されており、安価で容易に入手が可能である。これらのグリコール類は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を任意に組み合わせて用いたとしても本発明の効果を奏する。
溶液中または固形物中のグリコール類の検出、測定には、NMR(核磁気共鳴)分析、ガスクロマトグラフィーによる方法や、ポリオール脱水素酵素を用いた方法などが一般的に用いられる。
ワンステップRT−PCR反応における核酸増幅反応溶液中の本発明によるグリコール類の濃度は1〜20容量%が好ましく、より好ましくは3〜15容量%である。1容量%未満ではグリコール類による核酸の融解温度低下の効果が少なく、核酸増幅の成功率の向上効果が小さい。また20容量%より高い濃度であっても核酸増幅の成功率の向上効果は小さくなるほか、ハンドリングも悪くなる。
本発明のワンステップRT−PCR用組成物には、グリコール類のほかに、さらに鋳型となる核酸、DNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼ、逆転写酵素、プライマーとなるオリゴヌクレオチド、ジデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、反応バッファー、マグネシウムイオン等の金属イオンを、実施する核酸増幅方法により必要に応じて存在させる。一例として、PCR法を用いた核酸増幅方法においては、鋳型核酸、DNAポリメラーゼ、オリゴヌクレオチド、dNTPs、反応バッファーが一般的に必要である。
核酸増幅のための温度・時間・反応サイクル等の条件は、増幅したい核酸の種類や塩基の配列、鎖長等によって変わるが、当業者であれば適宜設定できる。ただし、本発明の効果を享受するため、変性反応における設定温度や設定時間は、通常より温度を低く若しくは時間を短く設定することが好ましいが、この限りではない。
本発明の別の実施態様は、ホットスタートPCR法を実施するために、抗DNAポリメラーゼ抗体の存在下で核酸増幅反応を行う場合において、グリコール類を共存させる方法である。従前、核酸の融解温度を調整する目的でDMSOやホルムアルデヒドを添加した場合、これらの物質は抗ポリメラーゼ抗体の作用を阻害するものとなっていた。本発明に用いるグリコール類は抗ポリメラーゼ抗体の作用を阻害することがないため、極めて有用である。
本発明のグリコール類は、ワンステップRT−PCR反応用試薬に予め混合する。核酸増幅反応用試薬は通常2〜10倍の濃縮状態で保存されることが多いがその場合、グリコール類は反応溶液中の終濃度が好ましくは1〜20容量%、より好ましくは3〜15容量%となるような濃度で混合しておく。
(先行文献との比較)
特表2002−513587号公報(特許文献4)には、ハイブリッド脱安定化剤としてエチレングリコールを使用することが記載されている。しかしながら該特許文献4はinsituハイブリダイゼーションにおいて用いることを特徴とするものであり、本発明とは趣旨も構成も効果も異なるものである。すなわち、非特異的な結合(ハイブリダイゼーション)を除去し、特異的結合と非特異的結合との比を増大させることを目的とし、そのためにより好ましくは30〜65%,最も好ましくは50〜65%という極めて多い量を存在させている。これに対し、本発明は核酸増幅、とりわけワンステップRT−PCR法における非特異反応を抑制することを目的とするものであり、添加する濃度も1〜20容量%と大きな違いがある。実際、該特許出願において最も好ましいといわれる50〜65%濃度のもとで核酸増幅反応を行うのは現実的ではない。加えて、本発明において22.5容量%以上の濃度を添加した場合には、本発明所望の効果が得られなかった。したがって、特許文献4に記載の発明と本発明とは、目的、構成要件、効果において全く異なるものである。
(核酸融解温度の測定方法)
核酸融解温度は、二本鎖核酸が一本鎖核酸に解離する、または互いに相補的な配列を持つ核酸同士が二本鎖を形成する温度であり、一般的には核酸を含む溶液の温度を連続的に変化させた際に、核酸の融解/解離によって発生する波長260nmにおける吸光度の変化を、温度に対してプロットし、その形成されるS字曲線の中点に相当する温度と定義される。核酸融解温度の測定には、いかなる方法を用いても良いが、前述の吸光度の変化を利用した方法が好適に用いられる。即ち、一本鎖核酸は二本鎖核酸よりも波長260nmにおける吸光度が高く、核酸を徐々に加熱または冷却した際に、一本鎖核酸と二本鎖核酸の割合が変化し、その際に吸光度の変化を追うことで、核酸融解温度を求める方法である。また近年多用されている、インターカレーター蛍光色素による方法を用いても良い。即ち、核酸の二本鎖に結合した際にのみ強い蛍光を発する色素、より具体的にはSYBR Green I(登録商標)や臭化エチジウムなどを核酸を含む溶液に混合し、その溶液の温度を連続的に変化させた際に得られる蛍光強度の変化を、同様に温度に対してプロットし、その変化量が最大となる温度を核酸融解温度とする方法である。前述の吸光度を用いた測定方法が、Lambert−Berrの法則から一般的に2.0OD以下で測定すべきであるとされ、また、測定器の性能上の制約から0.1OD以下の測定が困難であることから、融解温度の測定可能な核酸濃度が限定されるのに対し、インターカレーター蛍光色素を用いる方法は、これよりも広い核酸濃度範囲で核酸融解温度を測定することが可能である。特に0.1ODを下回る低濃度の核酸を使用した場合でも容易に測定が可能であることから、PCRの増幅産物の融解温度を測定することで、増幅産物を電気泳動を伴わず融解温度により判別するといった用途にも用いられている。一方、リアルタイムPCRに使用される機器は、一般的にインターカレーター蛍光色素を利用した融解温度測定に対応しているものが多く、それら用いることにより、PCRとその増幅産物の融解温度測定を連続的に実施することが可能である。リアルタイムPCR用機器を用いた融解温度測定法としては、具体的にはロシュ・ダイアグノスティックス社製LightCylcer1.1を用いた測定法が例示される。本方法では、PCRの温度サイクリングの後に、95℃0秒、65℃10秒、95℃0秒、最終段の95℃までの温度遷移率を0.2℃/秒、蛍光取得様式を「CONT」とした設定を追加することで、融解温度測定が自動的に実施される。融解温度測定では、温度遷移時の蛍光値が連続的に取得され、結果はその蛍光値の導関数により表示される。その導関数が最大となった際の温度が、そのPCR増幅産物の融解温度となる。なお、融解温度は融解温度調整剤の濃度の他、塩濃度、溶媒和効果や、測定する核酸自身の濃度にも影響を受けるため、融解温度測定時にはこれらの条件を常に同一にする必要がある。
(グリコール類の定性・定量方法)
核酸増幅用反応溶液中のグリコール類の存在の有無は、NMR(核磁気共鳴法)により検出することができる。NMRは共鳴周波数400MHzで13C−NMRにより測定できる。13C‐NMRの測定、はシングルパルス1H完全デカップリング法で20%重水素化ジメチルホルムアミド溶液80℃または、20%重水素化クロロホルム溶液40℃で行い、内部標準として各種重水素化溶媒のシグナルを用いることができる。核酸増幅用反応溶液中のグリコール類の定量は、ガスクロマトグラフ(GC)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて行うことができる。
(グリコール類の粘度の測定方法)
グリコール類の粘度は、いかなる方法を用いて計測しても良いが、一般的には、粘度計を用いた機器による測定法が好適に用いられる。粘度計は「JIS Z 8803液体の粘度−測定方法」により毛細管粘度計、落球粘度計、回転粘度計(3種類)に分類されるが、いずれの粘度計を使用しても良い。一方、粘度の単位はパスカル秒(Pa・s)で表され、1Pa・sは、流体内に1mにつき1m/sの速度勾配があるとき、その速度勾配の方向に垂直な面において速度の方向に1パスカル(Pa)の応力が生ずる粘度と定義される。粘度の単位にはかつてポアズ(P)が用いられていたが、1Pa・s=10Pと換算される。粘度は、温度の影響を大きく受け、一般的には温度が下がるほど粘度が上昇するため、厳密な温度制御化での測定が求められ、粘度の記載時にはその測定温度を併記する必要があるが、通常は常温付近(20℃または25℃)程度で測定される。また粘度は、気圧の影響も受けるが、測定は一般的に1気圧の条件下で測定が行われる。これらグリコール類の粘度は、グリセロールの粘度が1420mPa・s(20℃)であるのに対し、プロピレングリコールおよびエチレングリコールの粘度はそれぞれ40.4mPa・s(25℃)、16.1mPa・s(25℃)であり、1,3−プロパンジオールはこの両者の中間の値を取るとされている。
実施例1 核酸増幅におけるジメチルスルホキシドの評価
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、HeLa細胞より精製したTotal RNAを使用した。
(2)RT−PCR反応
PCRの反応効率と特異性の検討の指標として、β−Actinを標的としたRT−PCRを行った。
ReverTra Ace(東洋紡) 0.3unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 2unit、
rTaq DNA Polymerase 1unit、
anti Taq high(東洋紡) 1unit、
Tris−HClバッファー 10mM、
dNTP 0.2mM、
MgCl3mM、
SYBR Green(ライフテクノロジーズ)1/40000濃度
ジメチルスルホキシド 2%
β−actinフォアードプライマー 0.3μM、
β−actinリバースプライマー 0.3μM、
RNA 5μl、
を含む反応液20μlを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 40サイクル
(3)融解曲線解析
反応終了後、直ちに60℃ 0.5℃/秒 95℃融解曲線解析に供した。すなわち、60℃から0.5℃/秒で90℃まで上昇させた。反応はライフテクノロジーズ社製のStepOnePlusを使用した。
(4)結果
その結果を図1に示す。2% ジメチルスルホキシドの添加では、非特異反応を抑制することができないという結果となった。これは、ジメチルスルホキシドにより、PCRの特異性を高めるために多用されているホットスタート用抗ポリメラーゼ抗体の作用が阻害されたためである。
実施例2 核酸増幅における1,3−プロパンジオールの評価
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、HeLa細胞より精製したTotal RNAを使用した。
(2)RT−PCR反応
PCRの反応効率と特異性の検討の指標として、β−Actinを標的としたRT−PCRを行った。
ReverTra Ace(東洋紡) 0.3unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 2unit、
rTaq DNA Polymerase 1unit、
anti Taq high(東洋紡) 1unit、
Tris−HClバッファー 10mM、
dNTP 0.2mM、
MgCl3mM、
SYBR Green(ライフテクノロジーズ)1/40000濃度
1,3−プロパンジオール 6%、
β−actinフォアードプライマー 0.3μM、
β−actinリバースプライマー 0.3μM、
RNA 5μl、
を含む反応液20μlを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 40サイクル
(3)融解曲線解析
反応終了後、直ちに60℃ 0.5℃/秒 95℃融解曲線解析に供した。すなわち、60℃から0.5℃/秒で90℃まで上昇させた。反応はライフテクノロジーズ社製のStepOnePlusを使用した。
(4)結果
その結果を図2に示す。6% 1,3−プロパンジオールの添加により、非特異反応が抑制されるという驚くべき結果となった。
実施例3 核酸増幅における1,2−プロパンジオールの評価
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、HeLa細胞より精製したTotal RNAを使用した。
(2)RT−PCR反応
PCRの反応効率と特異性の検討の指標として、β−Actinを標的としたRT−PCRを行った。
ReverTra Ace(東洋紡) 0.3unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 2unit、
rTaq DNA Polymerase 1unit、
anti Taq high(東洋紡) 1unit、
Tris−HClバッファー 10mM、
dNTP 0.2mM、
MgCl3mM、
SYBR Green(ライフテクノロジーズ)1/40000濃度
1,2−プロパンジオール 6%、
β−actinフォアードプライマー 0.3μM、
β−actinリバースプライマー 0.3μM、
RNA 5μl、
を含む反応液20μlを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 40サイクル
(3)融解曲線解析
反応終了後、直ちに60℃ 0.5℃/秒 95℃融解曲線解析に供した。すなわち、60℃から0.5℃/秒で90℃まで上昇させた。反応はライフテクノロジーズ社製のStepOnePlusを使用した。
(4)結果
その結果を図3に示す。6% 1,2−プロパンジオールの添加により、非特異反応が抑制されるという驚くべき結果となった。
実施例4 核酸増幅における1,2−エタンジオールの評価
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、HeLa細胞より精製したTotal RNAを使用した。
(2)RT−PCR反応
PCRの反応効率と特異性の検討の指標として、β−Actinを標的としたRT−PCRを行った。
ReverTra Ace(東洋紡) 0.3unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 2unit、
rTaq DNA Polymerase 1unit、
anti Taq high(東洋紡) 1unit、
Tris−HClバッファー 10mM、
dNTP 0.2mM、
MgCl3mM、
SYBR Green(ライフテクノロジーズ)1/40000濃度
1,2−エタンジオール 6%、
β−actinフォアードプライマー 0.3μM、
β−actinリバースプライマー 0.3μM、
RNA 5μl、
を含む反応液20μlを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 40サイクル
(3)融解曲線解析
反応終了後、直ちに60℃ 0.5℃/秒 95℃融解曲線解析に供した。すなわち、60℃から0.5℃/秒で90℃まで上昇させた。反応はライフテクノロジーズ社製のStepOnePlusを使用した。
(4)結果
その結果を図4に示す。6% 1,2−エタンジオールの添加により、非特異反応が抑制されるという驚くべき結果となった。
本発明により、分子生物学の分野において有用な組成物、殊に鋳型核酸からDNAの生成及び更なるDNA増幅を行う際に有用な組成物を提供する。本発明により、核酸増幅において反応阻害がなく、操作性の低下が顕著でなく、低コストで反応を実施でき、特に、核酸増幅反応用のプレミックス試薬への混合という用途において、より利便性の高い試薬形態を供給可能である。本発明は、遺伝子発現解析に際して特に有用であり、研究のみならず臨床診断や環境検査等にも利用できる。

Claims (7)

  1. グリコール類の存在下で行うことを特徴とするワンステップRT−PCR法。
  2. グリコール類の炭素数が4以下である、請求項1に記載のワンステップRT−PCR法。
  3. グリコール類が、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1または2に記載のワンステップRT−PCR法。
  4. グリコール類の核酸含有溶液中での濃度が1〜20容量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のワンステップRT−PCR法。
  5. グリコール類の核酸含有溶液中での濃度が3〜15容量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載のワンステップRT−PCR法。
  6. プライマーおよび標的核酸以外に増幅に必要な組成を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のワンステップRT−PCR反応用組成物。
  7. 少なくとも逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、抗体、反応緩衝剤、金属イオンを含む、請求項6に記載のワンステップRT−PCR反応を実施するための組成物。
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