JP6402905B2 - 核酸増幅の非特異反応を抑制する新規の方法 - Google Patents
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Description
[項1]グリコール類を含むことを特徴とするワンステップRT−PCR法。
[項2]グリコール類の炭素数が4以下である、項1に記載のワンステップRT−PCR法。
[項3]グリコール類が、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である、項1又は2に記載のワンステップRT−PCR法。
[項4]グリコール類の核酸含有溶液中での濃度が1〜20容量%である、項1から3のいずれか一に記載のワンステップRT−PCR法。
[項5]グリコール類の核酸含有溶液中での濃度が3〜15容量%である、項1から4のいずれか一に記載のワンステップRT−PCR法。
[項6]プライマーおよび標的核酸以外に増幅に必要な組成を含む、項1から5のいずれか一項に記載のワンステップRT−PCR反応用組成物。
[項7]少なくとも逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、抗体、反応緩衝剤、金属イオンを含む、項1から6のいずれか一項に記載のワンステップRT−PCR反応を実施するための組成物。
特表2002−513587号公報(特許文献4)には、ハイブリッド脱安定化剤としてエチレングリコールを使用することが記載されている。しかしながら該特許文献4はinsituハイブリダイゼーションにおいて用いることを特徴とするものであり、本発明とは趣旨も構成も効果も異なるものである。すなわち、非特異的な結合(ハイブリダイゼーション)を除去し、特異的結合と非特異的結合との比を増大させることを目的とし、そのためにより好ましくは30〜65%,最も好ましくは50〜65%という極めて多い量を存在させている。これに対し、本発明は核酸増幅、とりわけワンステップRT−PCR法における非特異反応を抑制することを目的とするものであり、添加する濃度も1〜20容量%と大きな違いがある。実際、該特許出願において最も好ましいといわれる50〜65%濃度のもとで核酸増幅反応を行うのは現実的ではない。加えて、本発明において22.5容量%以上の濃度を添加した場合には、本発明所望の効果が得られなかった。したがって、特許文献4に記載の発明と本発明とは、目的、構成要件、効果において全く異なるものである。
核酸融解温度は、二本鎖核酸が一本鎖核酸に解離する、または互いに相補的な配列を持つ核酸同士が二本鎖を形成する温度であり、一般的には核酸を含む溶液の温度を連続的に変化させた際に、核酸の融解/解離によって発生する波長260nmにおける吸光度の変化を、温度に対してプロットし、その形成されるS字曲線の中点に相当する温度と定義される。核酸融解温度の測定には、いかなる方法を用いても良いが、前述の吸光度の変化を利用した方法が好適に用いられる。即ち、一本鎖核酸は二本鎖核酸よりも波長260nmにおける吸光度が高く、核酸を徐々に加熱または冷却した際に、一本鎖核酸と二本鎖核酸の割合が変化し、その際に吸光度の変化を追うことで、核酸融解温度を求める方法である。また近年多用されている、インターカレーター蛍光色素による方法を用いても良い。即ち、核酸の二本鎖に結合した際にのみ強い蛍光を発する色素、より具体的にはSYBR Green I(登録商標)や臭化エチジウムなどを核酸を含む溶液に混合し、その溶液の温度を連続的に変化させた際に得られる蛍光強度の変化を、同様に温度に対してプロットし、その変化量が最大となる温度を核酸融解温度とする方法である。前述の吸光度を用いた測定方法が、Lambert−Berrの法則から一般的に2.0OD以下で測定すべきであるとされ、また、測定器の性能上の制約から0.1OD以下の測定が困難であることから、融解温度の測定可能な核酸濃度が限定されるのに対し、インターカレーター蛍光色素を用いる方法は、これよりも広い核酸濃度範囲で核酸融解温度を測定することが可能である。特に0.1ODを下回る低濃度の核酸を使用した場合でも容易に測定が可能であることから、PCRの増幅産物の融解温度を測定することで、増幅産物を電気泳動を伴わず融解温度により判別するといった用途にも用いられている。一方、リアルタイムPCRに使用される機器は、一般的にインターカレーター蛍光色素を利用した融解温度測定に対応しているものが多く、それら用いることにより、PCRとその増幅産物の融解温度測定を連続的に実施することが可能である。リアルタイムPCR用機器を用いた融解温度測定法としては、具体的にはロシュ・ダイアグノスティックス社製LightCylcer1.1を用いた測定法が例示される。本方法では、PCRの温度サイクリングの後に、95℃0秒、65℃10秒、95℃0秒、最終段の95℃までの温度遷移率を0.2℃/秒、蛍光取得様式を「CONT」とした設定を追加することで、融解温度測定が自動的に実施される。融解温度測定では、温度遷移時の蛍光値が連続的に取得され、結果はその蛍光値の導関数により表示される。その導関数が最大となった際の温度が、そのPCR増幅産物の融解温度となる。なお、融解温度は融解温度調整剤の濃度の他、塩濃度、溶媒和効果や、測定する核酸自身の濃度にも影響を受けるため、融解温度測定時にはこれらの条件を常に同一にする必要がある。
核酸増幅用反応溶液中のグリコール類の存在の有無は、NMR(核磁気共鳴法)により検出することができる。NMRは共鳴周波数400MHzで13C−NMRにより測定できる。13C‐NMRの測定、はシングルパルス1H完全デカップリング法で20%重水素化ジメチルホルムアミド溶液80℃または、20%重水素化クロロホルム溶液40℃で行い、内部標準として各種重水素化溶媒のシグナルを用いることができる。核酸増幅用反応溶液中のグリコール類の定量は、ガスクロマトグラフ(GC)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて行うことができる。
グリコール類の粘度は、いかなる方法を用いて計測しても良いが、一般的には、粘度計を用いた機器による測定法が好適に用いられる。粘度計は「JIS Z 8803液体の粘度−測定方法」により毛細管粘度計、落球粘度計、回転粘度計(3種類)に分類されるが、いずれの粘度計を使用しても良い。一方、粘度の単位はパスカル秒(Pa・s)で表され、1Pa・sは、流体内に1mにつき1m/sの速度勾配があるとき、その速度勾配の方向に垂直な面において速度の方向に1パスカル(Pa)の応力が生ずる粘度と定義される。粘度の単位にはかつてポアズ(P)が用いられていたが、1Pa・s=10Pと換算される。粘度は、温度の影響を大きく受け、一般的には温度が下がるほど粘度が上昇するため、厳密な温度制御化での測定が求められ、粘度の記載時にはその測定温度を併記する必要があるが、通常は常温付近(20℃または25℃)程度で測定される。また粘度は、気圧の影響も受けるが、測定は一般的に1気圧の条件下で測定が行われる。これらグリコール類の粘度は、グリセロールの粘度が1420mPa・s(20℃)であるのに対し、プロピレングリコールおよびエチレングリコールの粘度はそれぞれ40.4mPa・s(25℃)、16.1mPa・s(25℃)であり、1,3−プロパンジオールはこの両者の中間の値を取るとされている。
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、HeLa細胞より精製したTotal RNAを使用した。
(2)RT−PCR反応
PCRの反応効率と特異性の検討の指標として、β−Actinを標的としたRT−PCRを行った。
ReverTra Ace(東洋紡) 0.3unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 2unit、
rTaq DNA Polymerase 1unit、
anti Taq high(東洋紡) 1unit、
Tris−HClバッファー 10mM、
dNTP 0.2mM、
MgCl2 3mM、
SYBR Green(ライフテクノロジーズ)1/40000濃度
ジメチルスルホキシド 2%
β−actinフォアードプライマー 0.3μM、
β−actinリバースプライマー 0.3μM、
RNA 5μl、
を含む反応液20μlを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 40サイクル
(3)融解曲線解析
反応終了後、直ちに60℃ 0.5℃/秒 95℃融解曲線解析に供した。すなわち、60℃から0.5℃/秒で90℃まで上昇させた。反応はライフテクノロジーズ社製のStepOnePlusを使用した。
(4)結果
その結果を図1に示す。2% ジメチルスルホキシドの添加では、非特異反応を抑制することができないという結果となった。これは、ジメチルスルホキシドにより、PCRの特異性を高めるために多用されているホットスタート用抗ポリメラーゼ抗体の作用が阻害されたためである。
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、HeLa細胞より精製したTotal RNAを使用した。
(2)RT−PCR反応
PCRの反応効率と特異性の検討の指標として、β−Actinを標的としたRT−PCRを行った。
ReverTra Ace(東洋紡) 0.3unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 2unit、
rTaq DNA Polymerase 1unit、
anti Taq high(東洋紡) 1unit、
Tris−HClバッファー 10mM、
dNTP 0.2mM、
MgCl2 3mM、
SYBR Green(ライフテクノロジーズ)1/40000濃度
1,3−プロパンジオール 6%、
β−actinフォアードプライマー 0.3μM、
β−actinリバースプライマー 0.3μM、
RNA 5μl、
を含む反応液20μlを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 40サイクル
(3)融解曲線解析
反応終了後、直ちに60℃ 0.5℃/秒 95℃融解曲線解析に供した。すなわち、60℃から0.5℃/秒で90℃まで上昇させた。反応はライフテクノロジーズ社製のStepOnePlusを使用した。
(4)結果
その結果を図2に示す。6% 1,3−プロパンジオールの添加により、非特異反応が抑制されるという驚くべき結果となった。
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、HeLa細胞より精製したTotal RNAを使用した。
(2)RT−PCR反応
PCRの反応効率と特異性の検討の指標として、β−Actinを標的としたRT−PCRを行った。
ReverTra Ace(東洋紡) 0.3unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 2unit、
rTaq DNA Polymerase 1unit、
anti Taq high(東洋紡) 1unit、
Tris−HClバッファー 10mM、
dNTP 0.2mM、
MgCl2 3mM、
SYBR Green(ライフテクノロジーズ)1/40000濃度
1,2−プロパンジオール 6%、
β−actinフォアードプライマー 0.3μM、
β−actinリバースプライマー 0.3μM、
RNA 5μl、
を含む反応液20μlを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 40サイクル
(3)融解曲線解析
反応終了後、直ちに60℃ 0.5℃/秒 95℃融解曲線解析に供した。すなわち、60℃から0.5℃/秒で90℃まで上昇させた。反応はライフテクノロジーズ社製のStepOnePlusを使用した。
(4)結果
その結果を図3に示す。6% 1,2−プロパンジオールの添加により、非特異反応が抑制されるという驚くべき結果となった。
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、HeLa細胞より精製したTotal RNAを使用した。
(2)RT−PCR反応
PCRの反応効率と特異性の検討の指標として、β−Actinを標的としたRT−PCRを行った。
ReverTra Ace(東洋紡) 0.3unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 2unit、
rTaq DNA Polymerase 1unit、
anti Taq high(東洋紡) 1unit、
Tris−HClバッファー 10mM、
dNTP 0.2mM、
MgCl2 3mM、
SYBR Green(ライフテクノロジーズ)1/40000濃度
1,2−エタンジオール 6%、
β−actinフォアードプライマー 0.3μM、
β−actinリバースプライマー 0.3μM、
RNA 5μl、
を含む反応液20μlを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 5分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 40サイクル
(3)融解曲線解析
反応終了後、直ちに60℃ 0.5℃/秒 95℃融解曲線解析に供した。すなわち、60℃から0.5℃/秒で90℃まで上昇させた。反応はライフテクノロジーズ社製のStepOnePlusを使用した。
(4)結果
その結果を図4に示す。6% 1,2−エタンジオールの添加により、非特異反応が抑制されるという驚くべき結果となった。
Claims (4)
- 1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であるグリコール類の存在下で行う、ホットスタート法を用いたワンステップRT−PCR法における非特異反応を低減する方法。
- グリコール類が1,3−プロパンジオールである請求項1に記載のワンステップRT−PCR法における非特異反応を低減する方法。
- グリコール類の核酸含有溶液中での濃度が1〜20容量%である、請求項1または2に記載のホットスタート法を用いたワンステップRT−PCR法における非特異反応を低減する方法。
- グリコール類の核酸含有溶液中での濃度が3〜15容量%である、請求項1から3のいずれかに記載のホットスタート法を用いたワンステップRT−PCR法における非特異反応を低減する方法。
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