次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る田植機1の側面図である。
図1に示すように、本実施形態の散布作業車(作業車両)としての田植機1は、車体2と、当該車体2の後方に配置された植付部(作業部)3と、施肥機(粒状体散布装置)8と、を備えている。
車体2は、左右一対の前輪4及び後輪5を備えており、エンジン10の駆動力によって走行可能に構成されている。また、車体2の前後方向で前輪4と後輪5の間の位置には、オペレータが搭乗する運転座席6が設けられている。運転座席6の前方には、オペレータが車体2を操向操作するための操向ハンドル7が配置されている。
また、操向ハンドル7の左右には、予備苗台9が設けられている。予備苗台9には、予備のマット苗を収容した苗箱を搭載することができる。
前記植付部3は、車体2の後方に昇降リンク機構12を介して連結されている。また、車体2の後部には、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するためのPTO軸13、及び、植付部3を昇降駆動するための昇降シリンダ14等が配置されている。
昇降リンク機構12は、トップリンク18、ロワーリンク19等からなる平行リンク機構から構成されている。また、ロワーリンク19には、前記昇降シリンダ14が連結されている。この昇降シリンダ14を伸縮動作させることにより、植付部3の全体を昇降させることができる。
植付部3は、線引きマーカ16(回転マーカ、回転体)と、苗載台17と、複数の植付ユニット20と、を備えている。
各植付ユニット20は、回転ケース21に2つの植付爪22を備えるロータリ式植付装置として構成されている。エンジン10からPTO軸13を介して入力される駆動力によって、回転ケース21が回転駆動されることで苗の植付けを行うように構成されている。従って、エンジン10は、植付部3の駆動源である。なお、本実施形態の田植機は4条植えの田植機として構成されており、4条分の植付ユニット20を車体2の左右方向に並べて備えている。
線引きマーカ16は、車体2の左右それぞれに配置されている。なお、図1においては、施肥機8の構成をわかり易く示すために、本来は実線で描くべき線引きマーカ16を鎖線で示している。左右の線引きマーカ16は、マーカ支持アーム58の先端に回転可能に取り付けられている。左右の線引きマーカ16は、それぞれ、図1に示すようにマーカ支持アーム58を略直立させて線引きマーカ16を地面から上昇させる離間状態と、マーカ支持アーム58を車体2から離れる向きに倒して先端の線引きマーカ16を地面に接触させる接触状態と、の間で切り換えることができる。
線引きマーカ16を地面に接触させた状態で車体2を走行させることにより、線引きマーカ16が地面を転がりながら回転する。これにより、地面に目安ラインを明確に形成することができる。この目安ラインは、植付ユニット20の植付爪22によって植え付けた苗のラインと平行に引かれる。なお、線引きマーカ16の外周には複数の爪部が突出状に設けられているため、線引きマーカ16は当該爪部を地面に食い込ませて滑ることなく回転する。このため、線引きマーカ16が地面に描く目安ラインは明確である。オペレータは、目安ラインを参照しながら田植機1を走行させることにより、それまでに植えられた苗と平行に植付けを行うことができる。
苗載台17は、植付ユニット20の上方に配置されており、マット苗を載置可能に構成されている。なお、本実施形態の田植機は4条植えであるから、苗載台17は4条分のマット苗を車体2の左右方向に並べて載置できるように構成されている。
苗載台17は、前記マット苗を各植付ユニット20に対して供給する搬送機構(周知の縦送り機構及び横送り機構)を備えている。これにより、各植付ユニット20に対して苗を順次供給できるので、各植付ユニット20が苗の植付けを行うことができる。
施肥機8は、粒状の固体である肥料(粒状体)を圃場に散布する装置である。なお、この施肥機8の詳細な構成は後述する。
続いて、本実施形態の田植機1における駆動伝達経路について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、田植機1の動力伝達構成を示すスケルトン図である。図3は、植付部3及び施肥機8に係る動力伝達構成を示すスケルトン図である。
図2に示すように、エンジン10の駆動力は、駆動伝達ベルト70を介して、エンジン10の前方に配置されたミッションケース71に入力される。ミッションケース71の内部には油圧式無段変速装置72が設けられており、この油圧式無段変速装置72によってエンジン10の駆動力が変速される。この油圧式無段変速装置72としては、例えば公知のHST(静油圧式無段変速機)等を採用することができる。油圧式無段変速装置72の変速比は、オペレータが変速ペダルを操作することにより変更することができる。
油圧式無段変速装置72からの出力の一部は、メインクラッチ73を介してギア式の主変速装置74に入力され、変速される。主変速装置74は、オペレータが主変速レバーを操作することで切換可能に構成されている。主変速レバーは、「前進」「後進」「苗継」のポジションを少なくとも選択可能に構成されている。主変速レバーが「前進」位置に操作されると、後述の車軸75,76を、車体2を前進させる方向に回転駆動させる。一方、主変速レバーが「後進」位置に操作されると、車軸75,76を、車体2を後進させる方向に回転駆動させる。また、主変速レバーが「苗継」位置に操作されると、車軸75,76、及びPTO軸13に対する駆動の伝達が切断される。
主変速装置74で変速された回転駆動力の一部は、ミッションケース71と一体的に形成されたフロントアクスルケース77に伝達され、前輪4の車軸である前車軸75L,75Rを回転駆動する。また、主変速装置74で変速された回転駆動力の一部は、ミッションケース71から後方に突出するプロペラシャフト78を介してリアアクスルケース79に入力され、後輪5の車軸である後車軸76L,76Rを駆動する。以上の構成により、前輪4及び後輪5を駆動して車体2を走行させることができる。車体2の走行速度は、オペレータが上記の変速ペダルを操作することにより任意に変更することができる。
プロペラシャフト78から左の後車軸76Lまでの駆動伝達経路の間には、左のサイドクラッチ80Lが配置されている。同様に、プロペラシャフト78から右の後車軸76Rまでの駆動伝達経路の間には、右のサイドクラッチ80Rが配置されている。左右のサイドクラッチ80L,80Rは、それぞれ独立して接続/切断を切り換えることができる。
油圧式無段変速装置72の出力の一部は、ミッションケース71の後端から取り出されて、植付駆動伝動軸81を介して植付変速部82に入力される。植付変速部82内には複数のギアからなる変速装置が設けられており、入力された駆動力を適宜変速してPTO軸13から出力するように構成されている。このPTO軸13が伝達する駆動力によって、図3に示す植付部3が駆動される。以上の構成により、回転ケース21を回転駆動する速度を変速することができるので、苗を植え付ける間隔を変更することができる。
図2に示す植付変速部82において、PTO軸13には、植付クラッチ83を介して駆動力が伝達されるように構成されている。この植付クラッチ83を切断することにより、植付部3の駆動を停止することができる。この植付クラッチ83の接続/切断は、オペレータが図略の植付クラッチ操作レバーを操作することによって切り換えることができる。また、植付クラッチ83は、田植機1の車体2や植付部3の動作を制御する図示しないコントローラによっても切換可能になっている。
上記ミッションケース71内には、植付駆動伝動軸81の回転を検出する回転センサ(作業速度検出部)84が取り付けられている。この回転センサ84は、例えばロータリエンコーダによって構成することができる。また、植付クラッチ83には、植付クラッチ83の接続/切断を検出可能な植付クラッチセンサ89が設けられる。回転センサ84及び植付クラッチセンサ89の検出結果は、施肥機8が備える後述の制御部60(図18)に入力される。
植付変速部82から出力された動力は、PTO軸13を介して、図3に示す植付部3の植付ケース85内に入力される。植付ケース85に入力された駆動力は、複数の伝動シャフト86及び複数の伝動ギア87等を介して、回転ケース駆動軸88まで伝達される。回転ケース駆動軸88の両端には、植付ユニット20の回転ケース21が取り付けられる。
以上の構成により、回転ケース21を回転駆動することができるので、ロータリ式植付装置として構成された植付ユニット20による苗の植付けを行うことができる。
上述したように、回転ケース駆動軸88に入力される駆動力は、ミッションケース71内のHSTによって、変速ペダルの操作量に応じて変速されている。一方、車体2の走行速度も、変速ペダルの操作量に応じて変速される。従って、回転ケース21の回転速度(ひいては、植付部3の植付速度)は、車体2の走行速度に応じて変化する。詳細にいえば、車体2を高速で走行させると回転ケース21の回転周期は短くなり、低速で走行させると回転ケース21の回転周期は長くなる。これにより、車体2の走行速度にかかわらず、苗を等間隔で植え付けることができる。
次に、本実施形態の田植機1が備える施肥機8について、詳細に説明する。図4は施肥機8の背面図、図5は施肥機8の平面図である。図6は施肥機8の側面図、図7は施肥機8の側面断面図である。
図4及び図5に示すように、施肥機8は、施肥フレーム(ベース部)55と、ホッパ27と、繰出部11と、搬送部33と、ブロア37と、空気供給管38と、を備えている。
施肥フレーム55は、ホッパ27、繰出部11、搬送部33、ブロア37及び空気供給管38等を支持する枠組状の構造体として構成されており、車体2に固定されている。施肥フレーム55は、機体左右方向に沿って配置された複数本の棒状部材56と、これらの棒状部材56を連結する連結板57及び支持ステー48L,48Rと、を備える。支持ステー48L,48Rは、施肥フレーム55の左右両端部に配置されている。連結板57は、支持ステー48L,48Rの間で、適宜の間隔を空けて機体左右方向に複数並べて設けられている。
ホッパ27は、図1に示すように、車体2の前後方向において運転座席6と苗載台17の間の位置に配置されている。図4に示すように、ホッパ27は、ホッパ本体30と、蓋部31と、を備えている。ホッパ本体30は、その上部が開放された容器として構成されており、当該ホッパ本体30の内部に肥料が収容される。蓋部31は、ホッパ本体30の上部の開放部を覆うように配置されている。
図4、図6及び図7に示すように、ホッパ本体30の下部は、下側に近づくにつれて細くなるように漏斗状に形成された通路部32となっている。通路部32の下部は開放されているので、ホッパ本体30内の肥料は、通路部32を介して下方に流出する。
次に、繰出部11について説明する。繰出部11は、ホッパ27の下方に配置されている。繰出部11は、ホッパ27から供給された肥料を少量ずつ下方に繰り出すように構成されている。
繰出部11は、中空状に形成された繰出ケース28と、繰出ケース28の下部に固定された案内部40と、を備えている。当該繰出ケース28は、前記ホッパ本体30の通路部32の下部に取り付けることができるように構成されている。図7に示すように、繰出ケース28の内部には肥料流入空間25が形成されている。肥料流入空間25は、前記通路部32に連通している。従って、ホッパ27から供給された肥料は、肥料流入空間25に流入する。
図7に示すように、繰出ケース28の内部において、前記肥料流入空間25の下部には、繰出板(繰出回転体)15が配置されている。繰出板15は、略円板状に形成された部材である。繰出板15の軸心には、回転軸23が固定されている。
繰出板15の回転軸23には、従動側ベベルギア34が固定されている。また、繰出ケース28には、駆動軸26が回転可能に支持されている。駆動軸26には、図7に示すように、駆動側ベベルギア35が固定されている。駆動側ベベルギア35は、前記従動側ベベルギア34と噛み合っている。
駆動軸26には、例えば図3に示すように、駆動源である電動モータ50が出力した駆動力が入力される(詳しくは後述する)。当該駆動力は、ベベルギア34,35を介して回転軸23に伝達される。これにより、繰出板15が、回転軸23まわりで回転駆動される。
図7に示すように、繰出板15には、当該繰出板15を厚み方向に貫通する繰出孔24が複数形成されている。この繰出孔24は、所定量(1粒から数粒程度)の肥料を収容できる程度の大きさで形成されている。これにより、肥料流入空間25内の肥料は、所定量ずつ繰出孔24内に取り込まれる。このように繰出孔24に所定量の肥料が取り込まれた状態で、当該繰出板15が回転駆動されることにより、肥料を取り込んだ状態の繰出孔24が回転軸23まわりで移動する。そして、繰出孔24の位置が所定の繰出位置に一致したときに、当該繰出孔24内に取り込まれていた前記肥料が下方に放出される。以上の構成で、ホッパ27内の肥料を所定量(1粒から数粒程度)ずつ下方に繰り出すことができる。
案内部40は、中空状に形成されており、繰出ケース28の下部に固定されている。図7等に示すように、案内部40の上部は開放されており、繰出ケース28の下端部に接続している。また、案内部40は、下側に近づくにつれて徐々に細くなるように漏斗状に形成されている。案内部40の下端は、後述する搬送部33の接続路41に接続可能に構成されている。また、案内部40の下端には、弾性変形可能な接続リング65が固定されている。
続いて、空気供給管38及びブロア37について説明する。空気供給管38は、直線状に形成された略パイプ状の部材であり、図4に示すように車体2の左右方向に沿って配置されている。この空気供給管38は、複数の連結板57を貫通するように配置され、施肥フレーム55に固定されている。空気供給管38の一側の端部(本実施形態の場合は右側の端部)は閉じられており、他方の端部(本実施形態の場合は左側の端部)にはブロア37が接続されている。なお、空気供給管38は、車体2に対して相対移動しないように固定されている。ブロア37は、施肥フレーム55に取り付けられており、前記空気供給管38の内部に空気を送り込むように構成されている。
続いて、搬送部33について説明する。搬送部33は、接続路41と、搬送ホース42と、作溝器43と、を備えている。
接続路41は、繰出部11が備える案内部40の下方に配置されている。接続路41は図7等に示すように、円管状に構成されており、車体2の前後方向に略沿って配置されている。接続路41の前後方向における中間部の上部には導入口が開口されており、この導入口には、前記案内部40の下端部を、前記接続リング65を介して接続することができる。これにより、接続路41の内部空間が案内部40に連通する。なお、本実施形態において、案内部40(接続リング65)は接続路41とは別の部材として構成され、互いに接続/離間が可能に構成されている。
接続路41の前側の端部には、空気供給管38が接続されている。これにより、前記ブロア37が発生させた空気流が、空気供給管38を介して接続路41内に供給されて、接続路41内を後方へ流れる。なお、接続路41は、空気供給管38に対して相対移動しないように、施肥フレーム55に対して固定されている。
以上の構成で、繰出部11によって繰り出された肥料は、前記導入口を介して接続路41内に導入される。そして、接続路41内に導入された肥料は、前記空気流に乗って後方へ搬送される。
接続路41の後側の端部には、搬送ホース42が接続されている。搬送ホース42は、可撓性を有するチューブ状の部材である。搬送ホース42の、接続路41とは反対側の端部には、図1に示すように、地面に近接させて配置された作溝器43が接続されている。この作溝器43は、圃場に溝を形成して、当該溝の部分に料を落下させることができる。この構成で、前記肥料は、ブロア37が発生させた前記空気流に乗って搬送ホース42内を作溝器43まで搬送され、当該作溝器43から、散布対象面である地面(溝)に向けて放出される。
以上のように構成された施肥機8により、ホッパ27内の肥料を、繰出部11によって所定量ずつ繰り出すとともに、搬送部33によって地面まで搬送して散布することができる。
なお、本実施形態の田植機は4条植えであるから、本実施形態の施肥機8は、4条分の肥料を同時に散布できるように、4つの繰出部11と、4つの搬送部33を、それぞれ車体2の左右方向に並べて設けている(図4を参照)。
また、本実施形態のホッパ27は、2条分の肥料を収容するように構成されている。即ち、図4に示すように、それぞれのホッパ本体30の下部が二股に分かれて、2つの通路部32を形成している。そして、各通路部32に、繰出部11が接続されている。これにより、1つのホッパ27によって、2つの繰出部11に対して肥料を供給できる。
本実施形態の施肥機8においては、4条分の肥料を収容できるように、2つのホッパ27が車体2の左右方向に並べて配置されている。ここで、左側のホッパ27を左ホッパ27Lと呼び、右側のホッパ27を右ホッパ27Rと呼ぶことがある。
前述のように、施肥機8は、繰出部11の繰出板15を回転駆動するための駆動軸26を有している。本実施形態では、1つのホッパ27が備える2条分の繰出部11を、共通の1本の駆動軸26によって駆動するように構成されている。従って、本実施形態の施肥機8は、2本の駆動軸26を有している。具体的には、図4に示すように、施肥機8は、左の駆動軸26Lと、右の駆動軸26Rと、を備えている。なお、左右の駆動軸26L,26Rは、互いに独立している。
図4に示すように、左の駆動軸26Lは、左ホッパ27Lに接続されている2つの繰出部11にまたがって配置されている。左の駆動軸26Lに駆動力を入力することにより、左ホッパ27Lに接続されている前記2つの繰出部11を同時に駆動できる。
また図4に示すように、右の駆動軸26Rは、右ホッパ27Rに接続されている2つの繰出部11にまたがって配置されている。右の駆動軸26Rに駆動力を入力することにより、右ホッパ27Rに接続されている前記2つの繰出部11を同時に駆動できる。
左右の駆動軸26L,26Rにおいて、車体2の左右方向内側には、駆動入力ギア(被駆動ギア、被駆動部材)49L,49Rがそれぞれ固定される。この駆動入力ギア49L,49Rには、後述の電動モータ50が備える駆動出力ギア(出力ギア、出力部材)53L,53Rをそれぞれ噛み合わせることができる。
続いて、上記の駆動軸26L,26Rを介して施肥機8を駆動するために設けられる電動モータ50について、図3、図4及び図8等を参照して詳細に説明する。図8は、施肥機8の電動モータ50の構成を示す斜視図である。
車体2(具体的には、施肥機8の施肥フレーム55)には、図3、図4及び図8に示すように、施肥機8の駆動源である電動モータ50が設けられている。即ち、施肥機8は、田植機1の植付部3や車体2の駆動源であるエンジン10から駆動力を供給されるのではなく、特別の駆動源である電動モータ50によって駆動される。この電動モータ50は例えばブラシレスDCモータとして構成され、回転ハウジング51と、固定軸52と、を備えている。
図8に示すように回転ハウジング51は円筒形に形成され、その内部に、図示しないロータと、ステータと、減速機と、が内蔵されている。回転ハウジング51は、その軸線を車体2の左右方向に向けつつ、車体2の左右中央に配置されている。
上述したように、本実施形態の施肥機8においては、4つの繰出部11と、4つの搬送部33を、それぞれ車体2の左右方向に並べて設けている。言い換えれば、施肥機8には、ホッパ27内の肥料が散布されるときに通過する経路が4条分配置されている。そして図4等に示すように、上記の4条分の肥料経路が並べられる方向と垂直な方向でみたときに、電動モータ50(回転ハウジング51)は、ホッパ27より低い位置に配置されるとともに、上記の4条分の肥料経路のうち、機体中央側で隣り合う2条分の肥料経路の間に配置されている。このように、複数条分の肥料経路を避けた位置に電動モータ50が配置されることで、コンパクトで作業の邪魔になりにくい構成が実現される。また、隣り合う肥料経路の間に電動モータ50が配置されることで、田植機1の植付部3等との干渉を回避できるとともに、機体左右方向での施肥機8の幅を小さくすることができる。
また、本実施形態の施肥機8は、施肥フレーム55及び回動ステー47に対し、ホッパ27、繰出部11、搬送部33、及び電動モータ50等が取り付けられるように構成されている。従って、施肥フレーム55及び回動ステー47を中心にまとまりのある構成が実現され、既存の田植機1に後付けして用いることも容易である。
固定軸52は、円筒状の回転ハウジング51の軸線に一致するように配置された丸棒状の軸として構成される。固定軸52の両端は、回転ハウジング51から突出するように構成される。また、施肥フレーム55を構成する複数個の連結板57のうち、回転ハウジング51を間に挟むように配置されている機体中央側の2枚の連結板57からは、それぞれ固定ステー54(左側の固定ステー54L及び右側の固定ステー54R)が上方に突出するように形成される。この1対の固定ステー54L,54Rの上端部には、前記固定軸52の両端部がそれぞれ回転不能に固定される。
回転ハウジング51の軸方向の両端面には、1対の駆動出力ギア53がそれぞれ固定される。具体的には、回転ハウジング51の左側の端面には左の駆動出力ギア53Lが配置され、右側の端面には右の駆動出力ギア53Rが配置される。駆動出力ギア53L,53Rはそれぞれ平歯車として構成され、その軸線は回転ハウジング51の回転軸線と一致している。
この構成で、電動モータ50に電力を供給して駆動すると、回転ハウジング51が固定軸52に対して回転し、駆動出力ギア53L,53Rも一体的に回転する。これにより、電動モータ50の動力を駆動出力ギア53L,53Rを介して取り出すことができる。従って、本実施形態では、回転ハウジング51が電動モータ50の出力軸に相当する。この出力軸の軸線は、駆動軸26L,26Rの軸線と平行に配置されている。
このように、本実施形態の施肥機8が備える電動モータ50は、ハウジングを固定して出力軸を回転させるのではなく、回転ハウジング51の全体が回転することで駆動力を出力する構成となっている。このため、肥料の粉が回転ハウジング51に堆積しにくくなるので、清掃の手間を軽減できるほか、錆の発生を防止することができる。
なお、図8に示すように、ブラシ(清掃部材)96を回転ハウジング51の表面(例えば、外周面)に接触するように設けても良い。この場合、回転ハウジング51の回転と同時にブラシ96による清掃が行われるので、電動モータ50をより綺麗に保つことができる。
本実施形態の電動モータ50には、例えば遊星歯車機構による減速機が内蔵されており、適宜の減速比(例えば1/20程度)で減速された回転出力を回転ハウジング51から得ることができるようになっている。従って、大掛かりな減速機構を設けることなく、繰出部11を駆動するのに適切な速度の回転を取り出すことができる。
また、本実施形態において、電動モータ50は、その固定軸52が回転ハウジング51の軸方向両側から突出するように構成されており、その両端が固定ステー54L,54Rに対してそれぞれ固定されている。このように両持ち支持となっているので、駆動入力ギア49L,49Rを駆動する際に電動モータ50側に反力が加わったとしても、構成に生じる撓みを少なくすることができる。
続いて、ホッパ27の回動機構について説明する。図9は、施肥機8の供給部を回動させた様子を示す背面図である。
即ち、本実施形態の施肥機8は、ホッパ27内の肥料を外部に排出できるようにするため、当該ホッパ27を回動させることができるように構成されている。即ち、図4に示す状態から、ホッパ本体30から蓋部31を外して、当該ホッパ本体30を回動させて上部の開放部分を下に向けることにより(図9の状態)、当該ホッパ本体30内の肥料を排出できる。また、上記のようにホッパ本体30を回動させることができるので、当該ホッパ本体30内を清掃するなどのメンテナンスも容易に行うことができる。
ホッパ27を回動可能とする構成について詳しく説明すると、以下のとおりである。即ち、本実施形態の施肥機8は、図4に示すように、回動軸46と、回動ステー47と、を備える。そして、この回動ステー47と、前述した施肥フレーム55と、により、施肥機8を田植機1に取り付けるための取付部材が構成されている。
なお前述のように、本実施形態の施肥機8では、2つのホッパ27(左ホッパ27L及び右ホッパ27R)を、車体2の左右方向に並べて有している。そこで本実施形態では、図4に示すように、回動軸46及び回動ステー47を、施肥機8の左側と右側にそれぞれ設けている。また、支持ステー48は、上述したとおり、施肥フレーム55の左側と右側の端部にそれぞれ配置されている。以下の説明及び図面において、符号の後に「L」を付した場合は左側の構成を、符号の後に「R」を付した場合は右側の構成を、それぞれ示すものとする。
支持ステー48は、車体2に固定された前記施肥フレーム55の一部をなしている。つまり、支持ステー48は、車体2に対して固定されている。左の支持ステー48Lは、空気供給管38の左側の端部近傍に配置されている。右の支持ステー48Rは、空気供給管38の右側の端部近傍に配置されている。
前記支持ステー48には、回動軸46が支持されている。回動軸46は、車体2の前後方向と平行に配置されている。左の回動軸46Lは左の支持ステー48Lに、右の回動軸46Rは右の支持ステー48Rに、それぞれ支持されている。
図4に示すように、回動ステー47は、略上下方向に沿って配置されている。回動ステー47の下側の端部は、回動軸46を介して支持ステー48に支持されている。これにより、回動ステー47は、支持ステー48に対して回動軸46まわりで回動可能となっている。左の回動ステー47Lは、左の回動軸46Lを介して、左の支持ステー48Lに支持されている。右の回動ステー47Rは、右の回動軸46Rを介して、右の支持ステー48Rに支持されている。
回動ステー47の上側の端部は、ホッパ本体30に固定されている。これにより、ホッパ27を、回動軸46まわりで回動させることができる。具体的には、左の回動ステー47Lの上側の端部が、左ホッパ27Lのホッパ本体30の左側面に固定されている。これにより、左ホッパ27Lを、左の回動軸46Lまわりで左上方に向けて回動させることができる(図9の矢印Pを参照)。また、右の回動ステー47Rの上側の端部が、右ホッパ27Rのホッパ本体30の右側面に固定されている。これにより、右ホッパ27Rを、右の回動軸46Rまわりで右上方に向けて回動させることができる(図9の矢印Qを参照)。
なお本実施形態では、図5に二点鎖線で示すように、ブロア37を、左ホッパ27Lから離れる方向に退避できるように構成されている。この理由は、当該ブロア37は図4に示すように左ホッパ27Lのすぐ左側に配置されているので、当該左ホッパ27Lが回動したときにブロア37と干渉してしまうためである。そこで上記のように、ブロア37を左ホッパ27Lから退避できるようにしたことで、当該ブロア37に干渉することなく左ホッパ27Lを上方に回動させることができる。
図5に示すように、左右のホッパ27のそれぞれに対応して、把手36が設けられている。把手36は、ホッパ27に対して固定されている。従って、オペレータは、把手を手で掴んで持ち上げることにより、ホッパ27を、回動軸46を中心として跳ね上げるように上方に回動させることができる。なお、図5に示すように、本実施形態の把手36は、ホッパ27から、前方に向けて(運転座席6側に向けて)突出するように配置されている。これにより、オペレータは、ホッパ27の回動操作を運転座席6側から容易に行うことができる。
また、本実施形態において、ホッパ27は、回動軸46まわりで回動する際に、当該ホッパ27に接続されている2つの繰出部11と一体的に回動するように構成されている(図9を参照)。従って、ホッパ27を回動させる際に、当該ホッパ27を繰出部11から切り離す操作は不要である。
なお、ホッパ27と繰出部11が回動軸46まわりで一体的に回動できるようにするためには、当該繰出部11が搬送部33から離間できる必要がある。そこで、繰出部11は図11に示すように、搬送部33の接続路41から上に向けて離間できるように構成されている。
また前述のように、繰出部11の繰出ケース28には駆動軸26が支持されているので、ホッパ27は、駆動軸26と一体的に回動するということもできる。具体的には、左の駆動軸26Lは、左の回動軸46Lまわりで左ホッパ27Lと一体的に回動する。また、右の駆動軸26Rは、右の回動軸46Rまわりで右ホッパ27Rと一体的に回動する。
以上のように、本実施形態の施肥機8において、ホッパ27、当該ホッパ27に取り付けられている2つの繰出部11、及び当該2つの繰出部11にまたがって配置された駆動軸26は、回動軸46まわりで一体的に回動可能である。ここで、ホッパ27、繰出部11、及び駆動軸26は、搬送部33に対して肥料を供給するものである。そこで以下の説明では、施肥機8が備える構成のうち、ホッパ27、繰出部11、及び駆動軸26を、まとめて「供給部」と呼ぶ。
より具体的には、左ホッパ27L、当該左ホッパ27Lに取り付けられた2つの繰出部11、及び左の駆動軸26Lは、左の回動軸46Lまわりで一体的に回動可能である(図9の矢印Pを参照)。そこで、これらをまとめて「左の供給部」と呼ぶ。また、右ホッパ27R、当該右ホッパ27Rに取り付けられた2つの繰出部11、及び右の駆動軸26Rは、右の回動軸46Rまわりで一体的に回動可能である(図9の矢印Qを参照)。そこで、これらをまとめて「右の供給部」と呼ぶ。
以上のように、本実施形態の施肥機8において、左右の供給部は、それぞれ回動軸46まわりで回動可能である。これにより、左右の供給部は、それぞれ、作業位置(図4、図5)と排出位置(図9)の間で移動することができる。
ここで、供給部の作業位置とは、当該供給部が、搬送部33に対して肥料を供給できる状態にあるときの位置をいう。具体的には、供給部が備える2つの繰出部11のそれぞれが、対応する搬送部33の接続路41の上部に接続している状態(図4、図6、及び図7に示す状態)を、当該供給部の作業位置とする。この状態で、供給部が備える駆動軸26に駆動力を入力することにより、当該供給部が備える2つの繰出部11の繰出板15をそれぞれ回転駆動し、2条分の肥料を所定量ずつ繰り出して、当該肥料を、対応する搬送部33に対して供給できる。
供給部を、上記の作業位置から回動軸46まわりで上方に回動させることにより、当該供給部を搬送部33から離間させることができる(例えば図9の状態)。この状態の供給部の位置を、排出位置と呼ぶ。なお、この状態の供給部は、搬送部33に対して肥料を供給することができない。
左の供給部を上記の作業位置としたときに、左の駆動軸26Lは図4に示すように、車体2の左右方向と略平行になるように配置されている。また、左の供給部は、左の駆動軸26Lに固定された左の駆動入力ギア49Lを有している。この左の駆動入力ギア49Lは、左の駆動軸26Lの両端部のうち、右の供給部に近い側の端部(右側の端部)の近傍に配置されている。なお、この左の駆動入力ギア49Lは、平ギア(平歯車)となっている。
また、右の供給部を上記の作業位置としたときに、右の駆動軸26Rは図4に示すように、車体2の左右方向と略平行になるように配置されている。また、右の供給部は、右の駆動軸26Rに固定された右の駆動入力ギア49Rを有している。この右の駆動入力ギア49Rは、右の駆動軸26Rの両端部のうち、左の供給部に近い側の端部(左側の端部)の近傍に配置されている。なお、この右の駆動入力ギア49Rは、平ギア(平歯車)となっている。
図4及び図5に示すように、左右の供給部をともに作業位置としたときに、左の駆動軸26Lと右の駆動軸26Rの軸線が一致するように、当該左右の駆動軸26L,26Rが配置されている。このとき、左右の駆動入力ギア49L,49Rが、軸線方向で隣接して並ぶように配置されている。
図4及び図5に示すように、左の供給部を作業位置としたときに、左の駆動入力ギア49Lが、左の駆動出力ギア53Lに噛み合うように配置されている。この状態で、電動モータ50を駆動することにより、左の駆動出力ギア53Lと左の駆動入力ギア49Lを介して、左の駆動軸26Lまで回転駆動力が伝達される。これにより、左の供給部が備える2つの繰出部11を駆動できる。
また図4及び図5に示すように、右の供給部を作業位置としたときに、右の駆動入力ギア49Rが、右の駆動出力ギア53Rに噛み合うように配置されている。この状態で、電動モータ50を駆動することにより、右の駆動出力ギア53Lと右の駆動入力ギア49Rを介して、右の駆動軸26Rまで回転駆動力が伝達される。これにより、右の供給部が備える2つの繰出部11を駆動できる。
そして、図3から図5までに示すように、左右の駆動入力ギア49L,49Rは、電動モータ50において回転ハウジング51と一体的に回転する駆動出力ギア53L,53Rに対して、それぞれ噛み合うことができるように配置されている。以上の構成により、1つの電動モータ50から、左右の駆動軸26L,26Rそれぞれに対して駆動力を伝達できる。
なお、前述の特許文献1では、右の駆動軸(第1入力軸)にのみ駆動力が入力される構成であったため、左の駆動軸(第2入力軸)に対して駆動力を伝達するために、左右の駆動軸を連結する連結機構が必要であった。この点、本実施形態では、1つの電動モータ50から左右の駆動軸26L,26Rそれぞれに対して駆動力を伝達する構成であるため、右の駆動軸26Rから左の駆動軸26Lに駆動力を伝達する必要はない。そこで、本実施形態の施肥機8では、左右の駆動軸26L,26Rを連結する連結機構を有していない。これにより、施肥機8をシンプルに構成できる。
図6に示すように、右の駆動入力ギア49Rの軸中心は、右の駆動出力ギア53Rの軸中心より高い位置に配置されている。言い換えると、右の駆動入力ギア49Rは、右の駆動出力ギア53Rに対して上方(斜め上方)から噛み合うように配置されている。
従って、図10に示すように、右の駆動入力ギア49Rは、上方に向けて移動することにより、右の駆動出力ギア53Rとの噛合いを解除して、当該駆動出力ギア53Rから離間することが可能である。これとは逆に、右の駆動入力ギア49Rを、右の駆動出力ギア53Rに対して上方から接近させることにより、当該右の駆動出力ギア53Rと噛み合わせることができる。
なお、上記では右の駆動入力ギア49Rと右の駆動出力ギア53Rの関係について述べたが、左の駆動入力ギア49Lと左の駆動出力ギア53Lの関係も同様である。
従って、図9に示すように、左の供給部を作業位置から排出位置まで移動させることにより、左の駆動入力ギア49Lを、左の駆動出力ギア53Lから上方に向けて離間させることができる(図9の矢印Pを参照)。これにより、電動モータ50と、左の駆動軸26Lと、の間の連結が解除された状態となる。逆に、左の供給部を、排出位置から作業位置まで移動させることにより、左の駆動入力ギア49Lと、左の駆動出力ギア53Lと、を噛み合わせることができる(図4の状態)。これにより、電動モータ50と、左の駆動軸26Lと、が連結された状態となる。
このように、本実施形態の構成によれば、左の供給部を左の回動軸46Lまわりで移動させることにより、電動モータ50と、左の駆動軸26Lと、の間を連結又は切断することができる。そして、当該連結及び切断は、左の駆動入力ギア49Lと、左の駆動出力ギア53Lとが、離間又は接近することにより実現される。従って、当該連結及び切断を実現するためのクラッチ等は不要である。そこで本実施形態では、電動モータ50と、左の駆動軸26Lと、の間にクラッチを有していない。
また同様に、右の供給部を、作業位置から排出位置まで移動させることにより、右の駆動入力ギア49Rを、右の駆動出力ギア53Rから上方に向けて離間させることができる(図9の矢印Qを参照)。これにより、電動モータ50と、右の駆動軸26Rと、の間の連結が解除された状態となる。逆に、右の供給部を、排出位置から作業位置まで移動させることにより、右の駆動入力ギア49Rと、右の駆動出力ギア53Rと、を噛み合わせることができる(図4の状態)。これにより、電動モータ50の出力軸と、右の駆動軸26Rと、が連結された状態となる。
このように、本実施形態の構成によれば、右の供給部を右の回動軸46Rまわりで移動させることにより、電動モータ50と、右の駆動軸26Rと、の間を連結又は切断することができる。そして、当該連結及び切断は、右の駆動入力ギア49Rと、右の駆動出力ギア53Rとが、離間又は接近することにより実現される。従って、当該連結及び切断を実現するためのクラッチ等は不要である。そこで本実施形態では、電動モータ50と、右の駆動軸26Rと、の間にクラッチを有していない。
なお、前述の特許文献1では、供給部(上部施肥機)を回動させる際には、クラッチ及び連結機構を切断する操作が必要であった。このため、供給部を回動させる際に、クラッチ又は連結機構を切断する操作を忘れてしまうと、前記クラッチ又は連結機構を破損するおそれがあった。
この点、本実施形態の施肥機8では、上記のように、クラッチ及び連結機構を有していないので、当該クラッチ及び連結機構が破損するという問題は生じない。また、供給部を回動軸46まわりで移動させる際に、クラッチや連結機構を操作する必要がないので、簡単な操作で、供給部を回動軸46まわりで移動させることができる。
ところで、特許文献1のクラッチは、エンジンと、供給部(上部施肥機)と、の間の連結を断接制御するものである。特許文献1の構成において、仮にクラッチを省略したとすれば、供給部をエンジンから切り離すことができなくなるので、当該供給部を停止させることができなくなる。従って、特許文献1の構成においては、供給部をエンジンから切り離して停止させるためにも、クラッチは必須の構成である。
これに対し、本実施形態の田植機1では、施肥機8の供給部を駆動するための専用の駆動源として、電動モータ50を設けている。電動モータ50は、エンジン10とは独立して制御可能であるから、供給部を停止するためには、電動モータ50を停止すれば良い。このように、本実施形態の施肥機8では、専用の駆動源としての電動モータ50により供給部が駆動されるので、当該供給部をエンジンから切り離して停止させるためのクラッチは不要である。これにより、上記のように、クラッチを省略できるのである。
また、本実施形態の田植機1において、仮に供給部の駆動源をエンジン10とした場合は、当該エンジン10から駆動出力ギア53L,53Rまで駆動を伝達するための駆動伝達機構を設ける必要がある。このため、当該駆動伝達機構のレイアウトの制約により、駆動出力ギア53L,53Rを車体2の左右方向中央部に配置することが難しい。この結果、駆動出力ギア53L,53Rを、左右の駆動入力ギア49L,49Rが噛み合うことができる位置に配置することが難しくなる。
この点、電動モータ50は、電力の供給源と接続したり制御信号を供給したりするためのケーブルを設置する必要はあるが、車体2に配置するときの自由度が高いので、駆動出力ギア53L,53Rを車体2の左右方向中央部に配置することは容易である。本実施形態では、図4及び図5に示すように、駆動出力ギア53L,53Rを車体2の左右方向中央部に配置しているので、当該駆動出力ギア53L,53Rに対して左右の駆動入力ギア49L,49Rが噛み合うことができる。
特許文献1には、上述の連結機構を解除する操作を行うための操作部材が記載されている。特許文献1においては、操作部材は、把手(第2把持部)の近傍に配置されている。従って、オペレータは、操作部材を、把手(第2把持部)とともに把持することで、連結機構の連結を解除できる。ここで、操作部材は、連結機構の近傍に配置される必要があるため、把手(第2把持部)も、連結機構の近傍に配置される必要がある。このように、特許文献1の構成では、把手の位置が制約を受けてしまう。
この点、本実施形態の施肥機8では、上記のように、クラッチ及び連結機構を有していないので、当該クラッチ又は連結機構を操作するための操作部材も不要である。従って、当該操作部材の近傍に把手36を配置しなければならないという制約もない。このように、本実施形態の構成によれば、把手36を自由に配置できる。従って、オペレータが握り易い位置に把手36を配置することが可能になるので、当該把手36を握って供給部を移動させる作業を行い易くなる。
次に、手作業ではなく、電動モータの駆動力によって左右の供給部を昇降可能に構成された第1変形例について、図12及び図13を参照して説明する。図12は、電動モータ50xの動力を他に活用できるように構成した第1変形例の施肥機8xを示す斜視図である。図13は、第1変形例の施肥機8xにおいて、供給部を昇降させるための構成を強調して示す正面図である。なお、本変形例以降の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
本変形例では、図8に示す電動モータ50の代わりに、ハウジングが回転しない構成の電動モータ50xが備えられている。この電動モータ50xは、図12に示すように、例えば遊星歯車機構による減速機が内蔵された固定ハウジング51xを備えている。固定ハウジング51xは、機体中央側の2枚の連結板57の間を架け渡すように設置されたスライド板131の上面に固定されている。
電動モータ50xの出力軸(即ち、減速機の出力軸)は固定ハウジング51xの両側から突出しており、この突出部分に、駆動出力ギア(出力ギア、出力部材)53L,53Rがそれぞれ固定されている。従って、電動モータ50xを駆動することにより、駆動出力ギア53L,53Rを固定ハウジング51xに対して回転させることができる。
駆動出力ギア53L,53Rの近傍には、図8に示す実施形態と同様に、駆動入力ギア(被駆動ギア、被駆動部材)49L,49Rが配置されている。本実施形態では更に、駆動出力ギア53L,53Rの近傍に、供給部昇降入力ギア(第2被駆動ギア、第2被駆動部材)66L,66Rが配置されている。この供給部昇降入力ギア66L,66Rは、駆動出力ギア53L,53Rに噛み合うことが可能に構成されている。
1対の連結板57のそれぞれの上端部は所定の幅で機体左右方向内側に折り曲げられ、その上側にスライド板131が載せられている。そして、スライド板131には前後方向に細長い複数の長孔132が形成され、この長孔132に差し込まれた段付きボルト133が、連結板57の上端の折曲げ部分に固定されている。これにより、スライド板131は、前後方向に所定のストロークでスライドすることができる。
スライド板131の下側には、ロック機構134が配置されている。このロック機構134は、機体左右方向にスライド可能に支持されたロッド135と、このロッド135を長手方向一側に付勢するバネ136と、バネ136のバネ力に抗する向きにオペレータが引っ張ることが可能なツマミ137と、を備えている。
ロッド135は、その長手方向を機体左右方向に向けて、スライド板131の下面側に取り付けられている。このロッド135の一端は、一側の連結板57に形成された前後方向に細長い長孔138を通過して突出しており、その端部に前記ツマミ137が固定される。一方、他側の連結板57には、ロッド135を差し込むことが可能な3つのロック孔139が、前後方向に並べて形成されている。
以上の構成で、オペレータがツマミ137を引っ張ってロッド135をロック孔139から抜くと、スライド板131を前後方向に移動させることが可能な状態になる。そして、電動モータ50x及び駆動出力ギア53L,53Rをスライド板131とともに移動させることで、駆動出力ギア53L,53Rが、駆動入力ギア49L,49Rだけに噛み合う図12の状態と、供給部昇降入力ギア66L,66Rだけに噛み合う状態と、何れにも噛み合わない状態と、に切り換えることができる。オペレータは、所望の位置にスライド板131を動かした後に、引っ張っていたツマミ137を戻して、バネ136のバネ力が作用するロッド135を、上記の3つの状態に対応して設けられた3つのロック孔139のうち何れかに挿入させる。これにより、スライド板131が移動しないようにロックすることができる。
このように、前後移動可能なスライド板131、及びロック機構134等により、駆動出力ギア53L,53Rを、駆動入力ギア49L,49Rに連結された状態と、駆動入力ギア49L,49Rから切り離された状態と、で切換可能な断接機構150が構成されている。
以下、左右の供給部を昇降させるための構成を説明する。図13に示すように、供給部昇降入力ギア66L,66Rは、回転可能に支持された1対の供給部昇降伝達軸141L,141Rの機体左右中央側の端部に固定されている。供給部昇降伝達軸141L,141Rの回転は、適宜の歯車列142L,142Rを介して、施肥機8の左右端部に回転可能に支持されたウォームギア143L,143Rに伝達される。一方、ホッパ27、繰出部11、駆動軸26L,26R、及び駆動入力ギア49L,49R等を備える左右の供給部は、回動軸46L,46Rを中心として回動可能に構成されている。また、この回動軸46L,46Rに連結されて左右の供給部をそれぞれ支持する回動ステー47L,47Rには、昇降ギア144L,144Rが固定されている。そして、前記ウォームギア143L,143Rは、昇降ギア144L,144Rに噛み合っている。
従って、電動モータ50xが備える駆動出力ギア53L,53Rを供給部昇降入力ギア66L,66Rに連結させた状態で電動モータ50xを駆動すると、ホッパ27等を含む左右の供給部を、それぞれ、回動軸46L,46Rを中心として跳ね上げるように上方に回動させることができる。一方、電動モータ50xは正逆転が可能に構成されており、当該電動モータ50xを逆転させることにより、左右それぞれの供給部を下方に回動させることができる。従って、オペレータは把手36を手で掴んで重量物のホッパ27を持ち上げたりすることなく、電動モータ50xの動力で左右の供給部を上昇させてホッパ27の内部の肥料を排出したり、元に戻したりできるので、大幅な省力化を実現できる。
なお、本実施形態では、上記のとおり、繰出部11を駆動する電動モータ50xの動力を左右の供給部の昇降のために活用できるが、他の用途にも用いることができるようになっている。
具体的に説明すると、駆動出力ギア53L,53Rのそれぞれには、図12や図13に示すように、外部出力軸としてのアタッチメント出力軸67L,67Rが設けられている。このアタッチメント出力軸67L,67Rには、電動モータ50xの出力(減速機で減速された出力)が伝達され、駆動出力ギア53L,53Rと一体的に回転する。
このアタッチメント出力軸67L,67Rには、交換可能なアタッチメント(ツール)を取り付けることができる。図12には、アタッチメントの一例としての回転ドライバー(回転工具)145が示されている。この回転ドライバー145は、アタッチメント出力軸67L,67Rに着脱可能なジョイント部146と、ジョイント部146に一端が接続されたフレキシブルワイヤ147と、フレキシブルワイヤ147の他端に接続されたチャック部148と、を備えている。なお、図12の例では、チャック部148にはマイナスのドライバービットが装着されているが、例えばプラスのドライバービットや穴あけドリル等を装着しても良い。
この構成で、前記駆動出力ギア53L,53Rを、駆動入力ギア49L,49Rにも供給部昇降入力ギア66L,66Rにも噛み合わない状態で、アタッチメント出力軸67Lに回転ドライバー145を装着して電動モータ50xを駆動することにより、その回転動力がフレキシブルワイヤ147を介してチャック部148に伝達され、ドライバービットを回転させることができる。このように、電動モータ50xをドライバーの回転動力源として活用することができる。
なお、図12に示す例では、アタッチメント出力軸67L,67Rに対しては、固定ハウジング51xに内蔵された図略の減速機で減速した後の電動モータ50xの回転が伝達されている。従って、回転ドライバー145を強いトルクで駆動できる。しかしながら、構成を変更すれば、減速機を経由させない形で電動モータ50xの出力回転を活用することも可能である。例えば、アタッチメント出力軸67L,67Rが駆動出力ギア53L,53Rに対して相対回転できるように変更した上で、電動モータ50xが備える図示しないロータとアタッチメント出力軸67L,67Rとを直結する構成が考えられる。これにより、駆動出力ギア53L,53Rが低速で回転すると同時に、アタッチメント出力軸67L,67Rが高速回転する構成とすることができる。この場合は、アタッチメントとして、清掃のためのブロアのファンや、電動モータ50xを冷却するためのファン等をアタッチメント出力軸67L,67Rに連結すると、ファンの高速回転を容易に実現でき、十分な風量を得ることができる。
次に、電動モータを第1変形例から更に変更した第2変形例について、図14を参照して説明する。図14は、電動モータ50xの配置を変更した第2変形例の施肥機8yを示す正面図である。
本変形例の施肥機8yにおいては、図14に示すように、電動モータ50xが施肥機8yの機体左右に1つずつ配置されている。それぞれの電動モータ50xは、左右のホッパ27がそれぞれ備えるホッパ本体30の下部が二股に分かれている部分の間に配置されている。
なお、詳細は図示しないが、本変形例のように構成する場合は、左右のホッパ27の繰出部11を駆動するそれぞれの駆動軸26L,26Rは、電動モータ50xを境に2分割して配置されることになる。
次に、電動モータを供給部側に配置するように変更した第3変形例について、図15及び図16を参照して説明する。図15は、電動モータ50xを供給部側に配置した第3変形例の施肥機8zを示す背面図である。図16は、第3変形例の施肥機8zにおいて、供給部を回動させた様子を示す背面図である。
本変形例の施肥機8zにおいては、図15に示すように、電動モータ50xが施肥機8zの機体左右端部に1つずつ配置されている。この電動モータ50xは、前記の第1変形例及び第2変形例と同様に、ハウジングが回転しない構成の電動モータとされており、その出力軸を機体中央側に向けて突出させている。それぞれの電動モータ50xの出力軸は、左右の供給部の駆動軸26L,26Rと軸線が一致するように配置され、当該駆動軸26L,26Rと連結される。
左右の電動モータ50xは、回動ステー47L,47Rに取り付けられる。従って、施肥フレーム55に対して供給部を移動させるときは、図16に示すように電動モータ50xも供給部と一体的に移動することになる。即ち、本変形例の施肥機8zにおいては、電動モータ50xと繰出部11との連結状態を保ったまま、左右の供給部を作業位置と排出位置との間で移動させることができる。従って、電動モータ50xの駆動力を繰出部11へ伝達したり遮断したりするための機構(特許文献1が備えるクラッチや連結機構)を設ける必要がないので、施肥機8zを安価に構成することができる。また、特許文献1のようにクラッチや連結機構等を操作する必要がないので、操作のし忘れによって機構を破損する心配もない。
また、本変形例においては、電動モータ50xが左右に1つずつ配置され、左側の電動モータ50xによって左側の2条分の繰出部11を駆動でき、右側の電動モータ50xによって右側の2条分の繰出部11を駆動できる構成となっている。これにより、左側の2条分の繰出部11と、右側の2条分の繰出部11と、を個別に駆動できるので、例えば、左右片側の2条だけ肥料を繰り出すことが容易になる。
図15に示すように、左右のホッパ本体30における機体左右端部(即ち、供給部を排出位置へ回動させたときに下側になる部分)には排出開口151が形成され、この排出開口151には着脱可能な閉鎖部材152が取り付けられている。従って、肥料を排出する場合には、ホッパ本体30の上部の蓋部31を取り外すことなく、図16に示すように閉鎖部材152を取り外して供給部を回動させることで、左右の端部の排出開口151から肥料を素早く排出することができる。ホッパ本体30の開放部からではなく、排出開口151から肥料を排出する場合、前述の実施形態(図9)のように大きく回動させる必要はなく、図16に示すようにある程度傾斜させるだけで殆ど全量の肥料を排出することができる。また、排出開口151はホッパ本体30の上側の開口より小さいため、排出される肥料を受ける容器や袋として、口が広いものを用意する必要がない。従って、容器や袋を小型化し易く、肥料排出時の作業性が良好である。
なお、本変形例においても、上記の第1変形例(図13)と同様に供給部の昇降のためのギア機構等を設け、更に適宜のクラッチ機構を設けることで、電動モータ50xの動力を、左右の供給部を回動させるために用いることができる。
次に、供給部が回動する方向を変更した第4変形例について、図17を参照して説明する。図17は、第4変形例の施肥機8wを示す側面図である。
図17に示す本変形例の施肥機8wにおいては、供給部の回動中心である回動軸46が、機体前後方向ではなく機体左右方向(即ち、駆動軸26と平行な方向)に配置されている。ホッパ27、繰出部11、駆動軸26等を備える供給部は、この回動軸46を中心として、機体前後方向に回動させることができる。
従って、オペレータは供給部を、図17に実線で示す作業位置から機体前方に倒すことで、鎖線で示す排出位置に移動させることができる。
本変形例のホッパ本体30における前面側(即ち、供給部を排出位置へ回動させたときに下側になる部分)には、排出開口151が設けられている。この排出開口151には、当該開口を閉鎖可能な部材であるシャッタ部材152xが設けられている。このシャッタ部材152xはスライド移動可能な板状部材とされており、排出開口151を開閉することができる。
また、排出開口151には、蛇腹状に構成された排出案内管153の一端が接続されている。この排出案内管153は適度な可撓性を有するとともに、伸縮可能に構成されている。
この構成で、供給部が作業位置にあるときは、シャッタ部材152xが排出開口151を閉鎖した状態とし、排出案内管153を縮めた状態にしておく。一方、供給部を排出位置に移動させたときは、排出案内管153を伸ばして先端を袋や容器の内部に差し込み、この状態でシャッタ部材152xを開くと、肥料を袋等へ排出することができる。
本変形例では、変形可能な排出案内管153によって肥料の排出経路を案内できるので、袋や容器を排出開口151の真下に位置させる必要がない。従って、肥料の排出作業が一層容易になる。
なお、本変形例では、2条分の肥料を散布する左右2つの供給部が独立して前後方向に回動できるように構成している。しかしながらそれに限らず、4条分で1つの供給部として構成し、当該供給部が前後方向に回動するようにしても良い。また、本変形例では電動モータを図示していないが、当該電動モータは供給部を回動させたときに当該供給部と一体的に回動するように構成しても良いし、施肥フレーム55側に残るように構成しても良い。また、供給部の回動軸の軸線が、駆動軸26の軸線と一致するように配置しても良い。
次に、施肥機8の繰出部11(即ち、繰出板15)を駆動する電動モータ50の制御について、図18及び図19を主に参照して説明する。
図18に示すように、本実施形態の田植機1は、電動モータ50を制御する制御部60を備える。制御部60は、例えばCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されている。また、この制御部60は、田植機1の車体2や植付部3等を制御する前述のコントローラ(図略)と連動して電動モータ50を制御することもできるが、当該コントローラによらずに単独で電動モータ50を制御することもできるようになっている。即ち、電動モータ50は、田植機1の動力の起動/停止(エンジン10の起動/停止)によらずに、単独で制御可能に構成されている。
この制御部60は、粒状の肥料を散布する際の制御モードとして、散布モードと、散布停止モードと、調量モードと、清掃モードと、を有する。
田植機1は、施肥機8を操作するための操作パネル(操作部)90を備えている。この操作パネル90は、例えば、運転座席6の前方の操向ハンドル7の近傍に配置しても良いし、運転座席6の後方のホッパ27近傍に配置しても良い。この操作パネル90は、制御部60に電気的に接続される。
図19に示すように、操作パネル90は、散布モードスイッチ91と、調量モードスイッチ92と、清掃モードスイッチ93と、施肥量調整ダイアル94と、ディスプレイ(表示部)121と、を備えている。
オペレータは、散布モードスイッチ91を押すことにより、散布モードと散布停止モードとを交互に切り換えることができる。また、オペレータは、調量モードスイッチ92又は清掃モードスイッチ93を押すことにより、制御モードを調量モード又は清掃モードに切り換えることができる。また、オペレータは、施肥量調整ダイアル94を回転操作することで、散布モードにおける施肥量の調整作業を行うことができる。施肥量調整ダイアル94の周囲には、その操作範囲を区分するように0から9までの1.5刻みで目盛りが付されており、この目盛りの詳細については後述する。ディスプレイ121は、例えば液晶ディスプレイとして構成されており、種々の情報、例えば制御部60がどの制御モードであるか等を表示することができる。
なお、前述の図12及び図13に示す第1変形例の施肥機8xにおいては、電動モータ50xを繰出部11の駆動以外の用途で広く活用できるようにするために、オペレータの意思によって電動モータ50xを自由に駆動/停止できることが好ましい。このため、電動モータ50xの正転/逆転/停止を切換可能なスイッチ等を備え、かつその速度を調整可能なダイアル等を備えた図略の第2操作パネルが、適宜の場所、例えば当該電動モータ50xの近傍(ツマミ137の周囲等)に設置されることが好適である。
図18に示すように、電動モータ50にはバッテリー111が接続されており、電動モータ50に電力を供給することができる。また、前述のエンジン10にはオルタネータ112が取り付けられており、前記バッテリー111には、オルタネータ112が発電した電力が蓄えられる。なお、図18においてはバッテリー111には電動モータ50のみが接続されているように描かれているが、バッテリー111の電力は実際には、図18に示す制御部60、記憶部61、操作パネル90、各種センサ、及び各種アクチュエータ等に供給されている。
電動モータ50には、温度センサ(モータ異常検出部)95が設けられている。温度センサ95は回転ハウジング51の内部に設けられており、例えば電動モータ50に過剰な負荷が加わった場合の電動モータ50の過大な温度上昇を検知することで、電動モータ50の負荷に関する異常の発生を検出することができる。この温度センサ95は、制御部60に電気的に接続される。
以下、制御部60がとり得る制御モードについてそれぞれ説明する。
散布モードは、田植機1で苗を植え付ける際に肥料を散布するためのモードである。この散布モードにおいて、制御部60は、田植機1が走行しながら苗の植付けを行うのに伴い、電動モータ50を介して繰出部11を駆動することで肥料を散布する。
この散布モードにおいて、制御部60は、電動モータ50の回転速度を、車体2の走行速度(植付部3の植付速度)と、施肥量調整ダイアル94の操作位置と、の双方に連動するように制御する。
以下、具体的に説明する。上記したように、施肥機8は、ホッパ27内の肥料を繰出部11によって所定量ずつ繰り出すとともに、搬送部33によって地面まで搬送して作溝器43から散布するものである。そして、繰出部11が備える繰出板15が1周回転する毎に繰り出される肥料の量は、繰出孔24の容積と数により定まる。従って、単位時間内に繰出板15が回転する回数(回転速度)を増加させれば、単位時間内に繰り出される肥料の量を増やすことができる。
一方で、図2に示す植付駆動伝動軸81はミッションケース71からの動力が伝達されるため、その回転速度は、車体2の走行速度に対応して変化する。従って、植付駆動伝動軸81の回転速度を回転センサ84によって検出することにより、車体2の走行速度を検出することができる。なお、上述したとおり植付部3は車体2の走行速度に応じた速度で駆動されるので、回転センサ84は、実質的に植付部3の植付速度(作業速度)を検出するものであるということもできる。散布モードにおいて、制御部60は、回転センサ84から入力された回転信号に基づいて回転速度を計算して取得し、この回転速度が速くなるのに応じて施肥機8における繰出板15の回転速度が速くなるように電動モータ50の回転速度を制御する。これにより、車体2の走行速度にかかわらず肥料を均一に撒くことができる。
また、散布モードにおいて制御部60は、施肥量調整ダイアル94が施肥量を大きくする側に操作されればされるほど、施肥機8における繰出板15の回転速度が速くなるように、電動モータ50の回転速度を制御する。従って、オペレータは、当該施肥量調整ダイアル94を回すことで、施肥量の大小を調整することができる。
ただし、制御部60には植付クラッチセンサ89の検出結果が入力されており、植付クラッチ83が切断されている場合には、電動モータ50を停止させるように制御する。これにより、植付部3による苗の植付けが行われるときだけ繰出部11が駆動され、施肥が行われることになる。
そして、本実施形態の制御部60は、散布モードにおいて、植付クラッチセンサ89が植付クラッチ83の接続を検知してから所定時間(以下、増量時間と呼ぶことがある)の間は、電動モータ50を特別に大きい速度で駆動する増速制御を行い、上記の増量時間が経過すると、電動モータ50を通常どおりの速度で駆動する基本制御を行う。
この理由は、以下のとおりである。即ち、制御部60は、植付クラッチ83の接続により植付部3が駆動されると同時に施肥機8(繰出部11)の駆動を開始するように制御する。しかしながら、繰出部11の駆動を開始して肥料が繰り出されてから、当該肥料が搬送部33を搬送されて実際に作溝器43から散布されるまでには一定のタイムラグがあるため、施肥できない区間が発生してしまう。なお、以下では、上記のタイムラグにより施肥できない時間を無施肥時間と呼び、この結果として施肥できなかった区間を無施肥区間と呼ぶことがある。
この点を考慮し、本実施形態の制御部60は、少なくとも上記の無施肥時間の間、電動モータ50を通常より大きい速度で(例えば通常の2倍程度の速度で)駆動するように制御する(増速制御)。なお、以下では、この増速制御が行われて、通常より肥料が多く播かれた時間を増量時間と呼ぶことがある。増速制御を行う時間(増量時間)は、上記の無施肥時間と同じか、それより若干長い時間とすることが好ましい。
図20に、田植機1を停止させた状態で植付クラッチ83を接続し、直ちに田植機1の走行を開始して植付けを行う場合の、電動モータ50の速度の制御例を示す。なお、図20には、田植機1の走行加速度(植付部3の植付加速度)は一定で、施肥量調整ダイアル94の設定値が異なる3つの場合がそれぞれグラフで示されている。何れの場合も、前記の増量時間TIが経過するまでは増速制御が行われ、電動モータ50の回転速度は、通常の回転速度(破線で示す)のほぼ2倍の速度となるように制御される。増量時間TIが経過すると基本制御に移行し、電動モータ50は通常の回転速度に戻る。
なお、上述したとおり、図20には、田植機1の走行加速度が等しく、施肥量調整ダイアル94の設定値が異なる3つの場合のグラフが示されている。ただし、施肥量調整ダイアル94の設定値が一定で、田植機1の走行加速度が異なる場合でも、図20に示したグラフと全く同様に制御されることになる。
以上により、植付クラッチ83を接続した後は、上記の無施肥時間の直後に、肥料が通常の2倍播かれる増量時間が続くことになる。従って、施肥作業の開始直後の施肥量の不足を補償し、全体としての肥効を確保することができる。
しかも、本実施形態では、上記の増速制御に連動して、作溝器43において肥料を放出する方向を変化させるように構成されている。具体的に説明すると、図21に示すように、作溝器43においては、搬送ホース42に接続される筒状の排出ガイド43aが形成され、この排出ガイド43aには、下方及び後方を開放させる散布口43bが形成されている。そして、排出ガイド43aの内部であって、散布口43bの近傍には、肥料の放出方向を案内する放出案内部材(案内部材)45が回転可能に取り付けられている。
放出案内部材45は、排出ガイド43aの内部を前後に仕切るように板状に形成されている。また、放出案内部材45は、排出ガイド43aの内部に形成される肥料通路の断面をほぼ2等分するように配置されている。この放出案内部材45は、排出ガイド43aに取り付けられた軸45aを中心として回転することにより、ほぼ地面に垂直な姿勢と、後ろ下がりの斜め姿勢と、に切り換えることができる。放出案内部材45の姿勢が地面に垂直であるときは、肥料の全量が散布口43bからほぼ真下に播かれる。放出案内部材45の姿勢が斜め姿勢であるときは、肥料の一部(ほぼ半量)が放出案内部材45によって後ろ側へ播かれるように案内され、残りの肥料が真下に播かれる。
放出案内部材45の軸45aは、例えばソレノイドや電動モータからなる放出案内アクチュエータ98(図18)に連結されている。この放出案内アクチュエータ98は、制御部60に電気的に接続される。そして制御部60は、上記の増量時間においては放出案内アクチュエータ98を斜め姿勢とし、増量時間が経過すると通常の直立した姿勢となるように、放出案内アクチュエータ98を制御する。
これにより、施肥作業を開始した直後に繰出板15から繰り出された肥料の一部を、放出案内部材45のガイド作用により、施肥量が不足する場所である後方の無施肥区間に散布することができる。また、このとき、電動モータ50が増速制御される結果として繰出板15は通常より速く回転するので、肥料の一部を後方寄りに播いたとしても、真下に播かれる肥料が不足することはない。以上により、肥効のムラを改善することができる。
また、本実施形態の制御部60では、上記の制御に加えて、車体2の走行時のスリップを考慮して電動モータ50を駆動することもできるようになっている。即ち、制御部60は、植付駆動伝動軸81の回転速度を回転センサ84によって検出することで車体2の走行速度を検出できるが、この走行速度は車軸75,76の回転速度であって、田植機1の走行時に発生するスリップを考慮していない。従って、田植機1においてスリップが発生すると、その分だけ田植機1は実質的に走行できないことになる。この場合にも通常と同じ量の肥料を施肥機8で施肥してしまうと、施肥量がオペレータの意図していた量より結果的に多くなって、肥料の無駄になり、また、苗枯れの原因になることもある。
この点、本実施形態の田植機1においては、前述の線引きマーカ16にマーカ回転センサ(状態検出部、回転検出部)99が設けられており、このマーカ回転センサ99が制御部60に電気的に接続されている。従って、制御部60は線引きマーカ16の回転を検出することができる。
マーカ回転センサ99が検出する線引きマーカ16の回転量は、当該線引きマーカ16が地面と良好に接触している限り、車体2の実質的な走行距離に応じた値となる。制御部60は、回転センサ84が検出する走行速度と、マーカ回転センサ99が検出する車体2の正味の走行速度と、を用いてスリップ率を計算し、このスリップ率に基づいて、電動モータ50の回転速度を減速側に補正する。
これにより、圃場の状態が悪く田植機1の走行時にスリップが発生しても、制御部60による施肥量の減少制御が行われるので、オペレータが希望する量の肥料を正確に散布することができる。また、車体2のスリップに起因する施肥量の減少制御が自動的に行われるため、スリップが発生するとき、オペレータが施肥量の調整を行わずに、田植機1の運転に集中することができる。
また、田植機1の実質的な走行に伴って地面を転がる線引きマーカ16の回転をマーカ回転センサ99で検出することで、田植機1の正味の走行速度を正確に検知することができる。これにより、車体2にスリップが発生しても、オペレータが意図する施肥量を確実に保つことができる。以上のスリップ補正制御によって、オペレータが意図した量の肥料を正確に施肥することができる。
以上で説明した増速制御やスリップ補正制御のように、本実施形態の制御部60は、施肥機8における繰出部11の駆動速度と、植付部3の植付速度と、の対応関係を状況に応じて変更することができる。このような制御は、繰出部11が、(植付部3の駆動源である)エンジン10とは異なる駆動源である電動モータ50で駆動されているために、容易に行うことができる。
散布停止モードは、電動モータ50を停止状態として、繰出部11を駆動させないモードである。このモードは例えば、施肥が必要ない場合や、田植機1に路上を走行させる場合等に選択される。
調量モードは、繰出板15を所定の周回数(例えば、50周)だけ回転させるモードである。調量モードがスタートすると、制御部60は電動モータ50を駆動して、繰出板15を所定の回転速度で正確に所定の回転量だけ回転させ、その後に停止させる。
上記の散布モードと異なり、調量モードにおける電動モータ50の回転速度は、車体2の走行速度に関係なく(施肥量調整ダイアル94の操作位置にも植付クラッチ83の状態にも関係なく)、予め定めた速度で一定とされる。また、上述したとおり、繰出部11は、エンジン10とは独立の駆動源である電動モータ50で駆動される。従って、田植機1が走行を停止している場合でも、また、エンジン10が停止している場合でも、調量モードを実行することができる。
なお、以下では、繰出板15を所定の速度で所定の回転量だけ回転させる電動モータ50の制御を、定量駆動制御と呼ぶことがある。この調量モードにおける電動モータ50の制御は、定量駆動制御の一例である。
以下、調量モードを利用した肥料の調量について説明する。オペレータは、例えばガレージに田植機1を入れ、エンジン10を停止させた状態で、施肥機8の散布口43bから肥料を受けるように適当な容器を置き、調量モードスイッチ92を押して調量モードをスタートさせる。すると、上記のとおり制御部60によって電動モータ50が駆動されて、繰出板15が正確に所定の周回数だけ回転され、停止する。
施肥機8の駆動が停止された後、オペレータは、容器に受けられた肥料の量を計測する。この計測により得られた結果(調量の結果)は、オペレータが施肥機8による肥料の標準的な散布量を把握するのに役立つものである。従って、オペレータは、実際の施肥作業における施肥量をどうするか(施肥量調整ダイアル94をどの位置に操作すべきか)を決定したり、又はどのくらいの量の肥料が必要になるかを予測したりするにあたって、上記の調量の結果を有力な手掛かりとすることができる。
以下、具体的に説明する。オペレータが施肥を希望する目標量をA(kg/10アール)、1条分の施肥機8について前記の調量モードにより繰出板15を50周だけ回転させたときの散布量の測定値をB(kg)、施肥機の条数をC、田植機1の走行速度をV(m/s)としたとき、10アールあたりで必要な繰出板15の周回数は、A×50/C/B(周)となる。施肥機8における各条の間の距離を30cmとすると、10アール分の施肥作業を完了させるために必要な時間は、1000/0.3/C/Vとなるので、田植機1が速度Vで作業するときに必要な繰出板15の回転速度は、0.9×A×V/B(rpm)となる。
一方で、上記の施肥量調整ダイアル94の周囲に付されていた目盛りは、田植機1の速度Vが1(m/s)であるときの繰出板15の回転速度の基準を表す。例えば、田植機1の速度Vが1(m/s)であるときに、施肥量調整ダイアル94を「6」の目盛りに合わせた場合は繰出板15が30rpmの速度で回転し、「9」の目盛りであれば45rpmの速度で回転する。従って、目標の施肥量を達成するために必要な繰出板15の回転速度を上記の計算式を用いて求め、この回転速度に対応する目盛りに施肥量調整ダイアル94を合わせることで、希望する量の肥料を的確に散布することができる。
なお、操作パネル90は図示しないテンキー等の入力部を備えており、上記の調量モードで得られた散布量の測定値Bをオペレータが入力して設定できるように構成されている。制御部60は、調量モードの測定値Bが設定された場合、上記の散布モードにおいて、回転センサ84又はマーカ回転センサ99で検出される田植機1の走行速度を用いて、施肥機8から施肥される量を上記の式から随時計算し、例えば、所定距離あたりの施肥量、所定面積あたりの施肥量、所定時間当たりの施肥量等を、上記のディスプレイ121にリアルタイムで表示することができる。これにより、オペレータは、実際に散布された量を確認しながら植付け及び施肥作業をすることができる。
清掃モードは、上記の調量モードと同様に定量駆動制御を行うモードであり、繰出板15を所定の周回数だけ回転させるものである。ただし、清掃モードは、繰出板15の繰出孔24から肥料を排出するために十分な程度の少ない周回数(1周未満である場合を含む)しか繰出板15を回転させない点で、調量モードと異なる。
以下、清掃モードを利用した施肥機8の内部の清掃について説明する。施肥作業が終わった後、オペレータは、施肥機8のホッパ27内に残っている肥料を、図9のようにホッパ27を開放位置に回動させることで排出する。これにより、ホッパ27及び肥料流入空間25内の肥料の大部分を排出することができる。
しかし、上記のようにホッパ27を跳ね上げることによっても、繰出部11の繰出板15に形成された繰出孔24に入り込んだ肥料を排出することは難しい。一方で、繰出孔24に入っている肥料を長時間放置すると、繰出孔24の内壁等に貼り付いて固まってしまい、詰まりの原因になる。
そこで、オペレータは、操作パネル90の清掃モードスイッチ93を押す。これにより清掃モードがスタートし、制御部60は電動モータ50を駆動して、繰出板15を所定の回転速度で所定の回転量だけ回転させ、その後に停止させる。この回転量としては、繰出板15に形成されている全ての繰出孔24が、下流側に配置された案内部40の内部空間と面する場所を1回〜数回程度通過するのに十分な回転量として定めることができ、例えば、半周、1周、又は数周程度とされる。なお、この繰出板15の回転と連動して前記ブロア37を駆動し、肥料排出のための空気流を空気供給管38から供給することが好ましい。これにより、繰出板15の繰出孔24の内部に残留している肥料を、散布口43bを介して容易に排出することができる。
制御部60は、オペレータの操作パネル90の操作により出力された信号、及び、温度センサ95や植付クラッチセンサ89からの信号に基づいて、制御指令を出して電動モータ50を制御する。
記憶部61は、繰出部11の駆動に関して予め設定された情報を記憶している。この情報としては、例えば、調量モードにおける繰出板15の回転速度及び回転量や、清掃モードにおける繰出板15の回転量や、電動モータ50の温度異常の判定の閾値などの情報が挙げられる。
上記の構成で、制御部60は、施肥機8の制御モードや、植付クラッチセンサ89及び温度センサ95の検出結果等の情報に基づいて、出すべき動作指令を決定する。
具体的には、制御部60は、制御モードに応じて電動モータ50に制御指令を出して、当該電動モータ50の駆動/停止や、回転速度等を適宜制御する。これにより、上記の散布モード、調量モード、清掃モード等の制御が実現される。
また、制御部60は、電動モータ50の駆動中において、モータ温度の異常が温度センサ95により検出された場合には、制御部60に電気的に接続されたブザー(警報部)97を鳴らしてオペレータに知らせるとともに、電動モータ50を自動的に停止させる。これにより、電動モータ50の焼付き等を未然に防止することができるとともに、オペレータに早期の対応を促すことができる。
ところで、施肥機8を用いて施肥作業を行いつつ田植機1で植付作業を行っている際に、オペレータのミス等の何らかの事情で、調量モードスイッチ92又は清掃モードスイッチ93が押される可能性がある。この場合、意図した施肥が行われないので、オペレータが当該誤操作に気付くまでに車体2が走行した分の施肥作業の一部又は全部をやり直さなければならず、作業の効率を悪化させる。
また、例えば路上を走行中に、調量モードスイッチ92又は清掃モードスイッチ93が操作ミス等で押されると、肥料が無駄に散布されてしまい、当該肥料を回収しなければならなくなる。
この点に関して、本実施形態の田植機1は、走行中又は施肥作業中に調量モード及び清掃モードのスイッチが押されても、制御モードの切換を行わないインターロック制御を行うように構成されている。
具体的に説明すると、制御部60は、調量モードスイッチ92や清掃モードスイッチ93が操作された場合に、田植機1が作業中又は走行中であるかどうかに基づいて、制御モードを切り換えるかどうかを判断する。制御部60は、エンジン10が停止しているとき、又は主変速レバーがニュートラル位置のときだけ、調量モード又は清掃モードへ移行し、それ以外の場合は制御モードの切換は行われない(調量モードスイッチ92や清掃モードスイッチ93の操作は無効になる)。
このように、本実施形態の田植機1は、エンジン10が停止しているとき、又は主変速レバーがニュートラル位置のときだけ、調量モード又は清掃モードに切換可能に制限されている。
このようなインターロック制御により、上記のような操作ミスによる施肥作業の効率低下を確実に防止することができる。従って、オペレータは誤操作等を心配することなく、施肥作業等に集中することができる。
以上に説明したように、上記実施形態等に開示される施肥機8は、田植機1に取り付けられる。また、施肥機8は、施肥フレーム55及び回動ステー47からなる取付部材と、ホッパ27と、繰出部11と、電動モータ50と、を備える。ホッパ27は、前記取付部材に支持され、肥料を収容する。繰出部11は、ホッパ27内の肥料を繰り出す。電動モータ50は、繰出部11を駆動する。田植機1の動力の起動/停止によらずに単独で電動モータ50を制御可能に構成されている。
これにより、施肥機8用の特別の駆動源が設けられるため、駆動系が簡素化されるとともに、施肥機8自体の制御も容易である。また、取付部材を中心にまとまりのある構成が実現され、かつ、電動モータ50は単独で制御可能であるので、既存の田植機等に取り付けて使用することが容易になる。
また、図4に示す実施形態等の施肥機8において、電動モータ50は、ホッパ27内の肥料が散布されるときに通過する経路を避けた位置に配置される。電動モータ50の出力軸は、繰出部11の駆動軸26と平行に配置されている。また、図15等に示す第3変形例の施肥機8zにおいては、電動モータ50xの出力軸は、駆動軸26と同軸で配置されている。
これにより、施肥機8のコンパクトなレイアウトが実現でき、作業の邪魔になりにくい。また、既存の田植機が備える例えば植付部の構成と干渉しにくいので、後付けして使用することが容易である。
また、図4に示す実施形態の施肥機8において、取付部材は、ホッパ27及び繰出部11を含んで構成される供給部を支持する施肥フレーム55を備える。前記供給部が、施肥フレーム55に対して相対移動可能に構成されている。電動モータ50は、施肥フレーム55に配置されている。また、図15等に示す第3変形例の施肥機8zにおいては、電動モータ50xは、供給部側に配置されている。
これにより、肥料の排出の容易さと、電動モータ50(50x)を用いた簡素な駆動伝達構成と、を両立することができる。
また、図15及び図16に示す第3変形例の施肥機8zにおいては、施肥フレーム55に対して、ホッパ27及び繰出部11を含む供給部と、電動モータ50xと、が一体的に相対移動可能に構成されている。
これにより、繰出部11と電動モータ50xとの間で駆動力が伝達できる状態を維持したまま、供給部を電動モータ50xとともに相対移動させることができる。従って、(特許文献1の構成では必要になっていた)クラッチや連結機構を省略できるので、構成が簡素化されるとともに、供給部を相対移動させる場合の作業も簡単になる。
また、第3変形例の施肥機8zにおいて、供給部は、互いに独立に施肥フレーム55に対して移動可能に複数備えられる。電動モータ50xは、複数の供給部のそれぞれに設けられている。
これにより、それぞれの供給部の繰出部11を駆動できるとともに、各供給部を施肥フレーム55に対して相対移動させることができる。また、複数の繰出部11のうち一部だけを駆動することも容易である。
一方、図4等に示す実施形態の施肥機8においては、電動モータ50は施肥フレーム55側に配置され、供給部を施肥フレーム55に対して相対移動させたときに電動モータ50が施肥フレーム55側に残るように構成されている。図12に示す第1変形例の施肥機8xや、図14に示す第2変形例の施肥機8yにおいても同様である。
これにより、供給部を軽量化できるので、小さな力で、供給部を施肥フレーム55に対して相対移動させることができる。
また、図4等に示す実施形態の施肥機8において、前記供給部は、繰出部11への駆動力を入力するための駆動入力ギア49L,49Rを備える。電動モータ50の駆動力を出力するための駆動出力ギア53L,53Rが、供給部を施肥フレーム55に対して相対移動させたときに施肥フレーム55側に残るように設けられる。駆動出力ギア53L,53R及び駆動入力ギア49L,49Rは、互いに連結した状態と、連結を解除した状態と、の間で切換可能に構成されている。供給部を施肥フレーム55に対して相対移動させることにより、駆動入力ギア49L,49Rと駆動出力ギア53L,53Rとの連結及び連結解除が切り換えられる。
これにより、電動モータ50から繰出部11への駆動力の伝達/遮断の切換を、供給部の相対移動と同時並行的に行うことができる。従って、例えばクラッチの切換操作が不要になり、供給部を移動させる操作が簡単になる。また、部材の連結/連結解除によって駆動力の伝達/遮断の切換を実現しているので、クラッチを特別に設ける必要がなくなり、施肥機8のコストを低減することができる。
また、図4等に示す実施形態の施肥機8において、前記供給部は、互いに独立して移動可能に2つ備えられる。駆動入力ギア49L,49Rは、前記供給部のそれぞれに備えられる。1つの電動モータ50の動力が、2つの駆動入力ギア49L,49Rに入力される。
これにより、施肥フレーム55側に配置された1つの電動モータ50によって、複数の供給部を駆動することができる。従って、構成を簡素化できる。
また、図4等に示す実施形態の施肥機8、図13に示す第1変形例の施肥機8x、及び、図14に示す第2変形例の施肥機8yにおいて、電動モータ50(50x)は、ホッパ27より低い位置であって、当該ホッパ27内の肥料が散布されるときに通過する複数条分の肥料経路の間に配置されている。また、図15に示す第3変形例の施肥機8zにおいて、電動モータ50xは、ホッパ27より低い位置であって、端部に位置する前記肥料経路の外側の脇に配置されている。
これにより、施肥機8、8x、8y、8zのコンパクトなレイアウトを実現することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態及び変形例において、電動モータ50,50xの出力軸は、機体左右方向に向けて配置されている。しかしながら、例えば、電動モータ50,50xの出力軸を機体前後方向に向けて配置し、当該出力軸の軸線が駆動軸26L,26Rの軸線と交差するように構成することができる。この場合、電動モータ50,50xと駆動軸26L,26Rとは、ベベルギア等を用いて連結すれば良い。
上記の実施形態及び変形例において、供給部は、ホッパ27と、繰出部11と、駆動軸26と、を含んで構成されている。しかしながら、例えば搬送部33が供給部に含まれる(即ち、搬送部33がホッパ27等とともに回動する)ように構成されても良い。
図17に示す第4変形例において、供給部が機体前方ではなく機体後方に回動するように構成されても良い。
供給部が施肥フレーム55に対して回動する構成に限らず、例えば供給部が施肥フレーム55に対して平行移動できるように構成しても良い。
上記実施形態及び変形例では、繰出部11は、円板状の繰出板15に、その厚み方向で貫通する繰出孔24を複数設け、当該繰出板15を、略垂直方向に配置された回転軸23まわりで回転駆動する構成となっている。しかし、繰出部11の構成はこれに限定されず、肥料を所定量ずつ繰り出せる構成であれば良い。例えば、円柱状の繰出ロールの周囲に複数の繰出穴を設け、当該繰出ロールを、略水平方向に配置された回転軸まわりで回転駆動する構成であっても良い。
上記実施形態及び変形例の施肥機は4条分の肥料を散布するものであり、左右の供給部がそれぞれ2条分の肥料を供給する構成となっているが、これに限定されない。例えば、6条分の肥料を散布する施肥機として、左右の供給部がそれぞれ3条分の肥料を供給する構成とすることができる。もっとも、左右の供給部が同じ条数分の肥料を供給する必要はない。例えば6条分の肥料を散布する施肥機においては、左の供給部が4条分の肥料を供給し、右の供給部が2条分の肥料を供給するような構成とすることもできる。
本願発明の構成は、施肥機8を備えた田植機1に限定されず、粒状体(粒状の固形物)を繰り出して地面に散布する散布作業車に広く適用することができる。