次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体的な構成を示す側面図である。
図1に示すように、本実施形態の田植機(圃場作業機)1は、車体部5と、前輪12と、後輪13と、エンジン10と、ミッションケース23と、運転座席25と、操舵ハンドル26と、変速ペダル(走行操作部材)27と、植付部(作業部)14と、施肥機(供給部)8と、を備える。
車体部5は、田植機1の走行機体として構成されている。車体部5は、エンジン10の動力によって圃場を走行可能である。
前輪12及び後輪13は、車体部5を支持する。前輪12及び後輪13は、それぞれ車体部5に対して左右1対で設けられている。
エンジン10は、田植機1の動力源として機能する。エンジン10は、車体部5の前部に支持されている。
ミッションケース23は、エンジン10の動力を変速する。ミッションケース23は、車体部5の下部に取り付けられている。
エンジン10の動力は、ミッションケース23により変速されて、前輪12及び後輪13に伝達される。また、エンジン10の動力は、ミッションケース23と、車体部5の後部に配置されたPTO軸24と、を介して、植付部14に伝達される。
運転座席25には、オペレータが座ることができる。運転座席25は、車体部5の前後方向において前輪12と後輪13の間に配置されている。
操舵ハンドル26は、運転座席25の前方に配置されたステアリングコラムに取り付けられている。オペレータが操舵ハンドル26を手で握って回すことで、車体部5の直進/旋回を指示することができる。
変速ペダル27は、運転座席25の前側の床から上方に突出するように配置されている。変速ペダル27は、車体部5の適宜の箇所に回転可能に支持されている。オペレータが変速ペダル27を踏むことで、変速ペダル27を操作することができる。変速ペダル27には、オペレータが踏込みを解除したときに当該変速ペダル27を戻すための図略の戻しバネが取り付けられている。
オペレータが変速ペダル27を足で踏み込むことで、車体部5の走行を指示することができる。オペレータが変速ペダル27を足で踏み込む深さを変更することで、車体部5の加速/減速を指示することができる。一方、オペレータが変速ペダル27から足を離すことで、田植機1の走行停止を指示することができる。
変速ペダル27の適宜の場所には、変速ペダル27の操作位置を検出可能なペダルセンサ(操作位置検出センサ)28が取り付けられている。ペダルセンサ28は、例えばポテンショメータとして構成することができる。
植付部14は、車体部5の後方に配置されている。植付部14は、苗を圃場に対して植え付ける作業を行う。植付部14は、昇降リンク機構31を介して車体部5に連結されている。
車体部5には、昇降シリンダ17が配置されている。昇降シリンダ17が伸縮駆動することにより、植付部14を車体部5に対して上下に昇降させることができる。ただし、シリンダ以外のアクチュエータにより植付部14を昇降させてもよい。植付部14を下降させると、後述の植付爪45が苗を圃場に植え付けることができる状態になる。
植付部14は、植付入力ケース部40と、複数の植付ユニット34と、苗載台35と、複数のフロート36と、を備えている。植付部14は、各植付ユニット34に対して苗を苗載台35から順次供給し、苗の植付けを連続的に行うことができる。
各植付ユニット34は、植付伝動ケース部41と、回転ケース部42と、を備える。植付伝動ケース部41には、PTO軸24及び植付入力ケース部40を介して動力が伝達される。
回転ケース部42は、植付伝動ケース部41に回転可能に取り付けられている。回転ケース部42は、植付伝動ケース部41の車幅方向の両側に配置されている。各回転ケース部42の一側には、2つの植付爪45が取り付けられている。
2つの植付爪45は、回転ケース部42の回転に伴い変位する。2つの植付爪45が変位することにより、1条分の苗の植付が行われる。
苗載台35は、複数の植付ユニット34の前上方に配置されている。苗載台35には、苗マットを載置することができる。苗載台35は、当該苗載台35に載置された苗マットの苗を各植付ユニット34に対して供給することができる。
具体的には、苗載台35は、車幅方向に往復するように横送り移動可能(横方向にスライド可能)に構成されている。また、苗載台35は、当該苗載台35の往復移動端で苗マットを間欠的に下方に縦送り搬送可能に構成されている。
フロート36は、植付部14の下部に揺動可能に設けられている。フロート36は、植付部14の植付姿勢を圃場表面に対して安定させるために、当該フロート36の下面を圃場表面に接触させることができる。
フロート36には、フロート36の姿勢を検出するフロートセンサ37が設けられている。フロートセンサ37は、例えばポテンショメータとして構成することができる。フロートセンサ37の検出結果は、植付部14が上昇しているか下降しているかを判定するために用いることもできる。
続いて、本実施形態の田植機1における駆動伝達経路について、図2を参照して説明する。図2は、田植機1の動力伝達構成を示すスケルトン図である。
図2に示すように、エンジン10の駆動力は、駆動伝達ベルト70を介して、ミッションケース23に入力される。ミッションケース23の内部には油圧機械式無段変速機(HMT)3が設けられており、この油圧機械式無段変速機3によってエンジン10の駆動力が無段変速される。詳細は後述するが、油圧機械式無段変速機3の変速比は、オペレータが変速ペダル27を操作することにより変更することができる。
油圧機械式無段変速機3の出力は、ミッションケース23から取り出されて前輪12及び後輪13に伝達される。これにより、前輪12及び後輪13が駆動される。
油圧機械式無段変速機3の出力は、ミッションケース23から取り出されて、植付駆動伝動軸81、植付変速部82を介してPTO軸24に伝達される。このPTO軸24の駆動力によって、図1及び図3に示す植付部14が駆動される。
PTO軸24の動力は、図3に示すように、植付部14の植付入力ケース部40に入力される。植付入力ケース部40に入力された駆動力は、複数の伝動シャフト及び複数の伝動ギア等を介して、回転ケース部42の駆動軸まで伝達される。
以上の構成により、回転ケース部42を回転駆動することができるので、ロータリ式植付装置として構成された植付ユニット34による苗の植付けを行うことができる。
上述したように、回転ケース部42の駆動軸に入力される駆動力は、ミッションケース23内の油圧機械式無段変速機3によって、変速ペダル27の操作量に応じて変速される。一方、車体部5の走行速度も、油圧機械式無段変速機3によって、変速ペダル27の操作量に応じて変速される。従って、回転ケース部42の回転速度(ひいては、植付部14の植付速度)は、車体部5の走行速度に応じて変化する。詳細にいえば、車体部5を高速で走行させると回転ケース部42の回転周期は短くなり、低速で走行させると回転ケース部42の回転周期は長くなる。これにより、車体部5の走行速度にかかわらず、苗が植え付けられる場所の間隔を一定にすることができる。
図2に示すように、植付変速部82には、複数のギアからなる変速装置が設けられている。この変速装置により、植付部14の回転ケース部42を回転駆動する速度を変速することができる。これにより、植付部14が圃場に苗を植え付ける間隔(苗と苗との間の距離)を変更することができる。
植付変速部82には、植付クラッチ83が配置されている。この植付クラッチ83を切断することにより、植付部14の駆動を停止することができる。植付クラッチ83の接続/切断は、オペレータが図略の植付クラッチ操作レバーを操作することによって切り換えることができる。また、植付クラッチ83は、田植機1の車体部5や植付部14の動作を制御する図示しないコントローラによっても切換可能になっている。
前輪12の車軸には、車速センサ19が設けられている。車速センサ19は、車軸の回転を検出することで、田植機1の車速を検出することができる。ただし、車速センサ19は、田植機1の他の適宜の位置に設けることもできる。
植付クラッチ83には、植付クラッチ83の接続/切断を検出可能な植付クラッチセンサ85が設けられる。
次に、本実施形態の田植機1が備える施肥機8について、詳細に説明する。
図1に示すように、施肥機8は、ホッパ71と、繰出部72と、電動モータ75と、搬送ホース76と、ブロア77と、作溝器78と、を備える。
ホッパ71は、図1に示すように、車体部5の前後方向において運転座席25と苗載台35の間の位置に配置されている。ホッパ71には、適宜の量の粒状の肥料(農用資材)を貯留することができる。
繰出部72は、ホッパ71の下部に接続されている。繰出部72は、ホッパ71から供給された肥料を少量ずつ下方に繰り出すことができる。
繰出部72の内部には、肥料が通過可能な図略の経路が形成されている。この経路には、円板状の繰出板73が配置されている。この繰出板73には、少量の肥料を収容可能な図略の繰出凹部が複数形成されている。繰出板73を回転させることで、繰出凹部に収容された肥料を経路の下流に繰り出すことができる。
電動モータ75は、施肥機8の適宜の位置に取り付けられている。電動モータ75は、繰出部72の繰出板73を回転させる駆動源として機能する。
搬送ホース76は、繰出部72に形成される肥料の経路の下流側に接続されている。搬送ホース76は、可撓性を有する細長いチューブ状の部材である。搬送ホース76において、繰出部72と接続される側と反対側の端部には、後述の作溝器78が接続される。搬送ホース76の内部空間を介して、繰出部72の肥料を作溝器78へ送ることができる。
ブロア77は、繰出部72に近接した適宜の位置に配置されている。ブロア77は、空気流を生成して、繰出部72における肥料の経路の適宜の位置から吹き込む。この空気流は、繰出部72の下流部の肥料を、搬送ホース76を通じて作溝器78へ搬送するために用いられる。
作溝器78は、植付部14の下部に配置されている。作溝器78は地面に近接させて配置されており、圃場に溝を形成することができる。図示しないが、作溝器78には肥料の散布口が形成されている。搬送ホース76を通って搬送された肥料は、散布口を介して、作溝器78が形成した溝に落下する。
以上のように構成された施肥機8により、ホッパ71内の肥料を繰出部72によって所定量ずつ繰り出して、地面まで搬送して作溝器78から散布することができる。
本実施形態の田植機1では、施肥機8を駆動するための専用の駆動源として、電動モータ75を設けている。電動モータ75はエンジン10とは独立して制御可能であるから、施肥機8を停止するためには、電動モータ75を停止すれば良い。従って、本実施形態では、施肥機8をエンジンから切り離して停止させるためのクラッチは不要である。
なお、本実施形態の田植機は4条植えであるから、本実施形態の施肥機8は、4条分の肥料を同時に散布できるように、4つの繰出部72を、それぞれ車体部5の左右方向に並べて設けている(図3を参照)。4つの繰出部72には、1つの電動モータ75の駆動力が分配されて伝達される。
次に、施肥機8の繰出部72(即ち、繰出板73)を駆動する電動モータ75の制御について、図4を主に参照して説明する。図4は、田植機1及び施肥機8の制御ブロック図である。
図4に示すように、田植機1は、走行制御部100を備える。走行制御部100は、例えばCPU、ROM、RAM等からなるコンピュータとして構成されている。走行制御部100は、車体部5の走行車速等を制御することができる。
田植機1は、電動モータ75を制御する繰出制御部60を備える。この繰出制御部60は、田植機1の車体部5や植付部14等と連動して電動モータ75を制御することができる。
変速ペダル27の操作位置を検出するペダルセンサ28は、走行制御部100に電気的に接続されるとともに、繰出制御部60にも電気的に接続される。
運転座席25の近傍には、最高車速ダイアル96が設けられている。最高車速ダイアル96では、オペレータが変速ペダル27を最も踏み込んだ際の車速、即ち変速ペダルの最大位置での車速を設定する。最高車速ダイアル96は、走行制御部100に電気的に接続されるとともに、繰出制御部60にも電気的に接続される。
ミッションケース23には、図略の変速入力レバーが回転可能に設けられている。変速入力レバーを回転させることで、ミッションケース23が備える油圧機械式無段変速機3の変速比を指示することができる。
車体部5には、サーボモータ105が設けられている。このサーボモータ105は、ミッションケース23が備える変速入力レバーを回転させることができる。サーボモータ105は、走行制御部100に電気的に接続されている。
運転座席25の近傍には、例えばレバー等からなる車速固定手段97が設けられる。車速固定手段97は、オペレータが変速ペダル27を踏み込まない場合の走行速度の固定あるいは解除を設定することができる。これにより、オペレータが変速ペダル27を操作しない場合であっても、所定の走行速度を得ることができる。ここで、所定の走行速度とは、例えば、圃場作業に適した速度である。車速固定手段97によって走行速度が固定されている状態で、オペレータによって変速ペダル27が操作された場合は、車速固定手段97は強制的に解除される。
車速固定手段97には、当該車速固定手段97の操作を検出する車速固定手段センサ98が取り付けられている。車速固定手段センサ98は、走行制御部100に電気的に接続されるとともに、繰出制御部60にも電気的に接続される。
走行制御部100は、ペダルセンサ28により検出される変速ペダル27の操作位置、及び、最高車速ダイアル96の操作位置に基づいて、サーボモータ105に制御信号を送信し、ミッションケース23の変速入力レバーを操作する。また、車速固定手段97の操作により走行速度の固定が指示された場合は、そのときの変速入力レバーの操作位置を維持するようにサーボモータ105を制御する。これにより、オペレータが意図した走行速度を得ることができる。
繰出制御部60には、車速センサ19、フロートセンサ37、及び植付クラッチセンサ85が電気的に接続される。
田植機1は、施肥機8を操作するための操作パネル(操作部)90を備えている。この操作パネル90は、例えば操舵ハンドル26の近傍に配置することができるが、他の適宜の場所、例えば、ホッパ71の近傍に配置することもできる。操作パネル90は、繰出制御部60に電気的に接続される。
操作パネル90は、施肥量調整ダイアル94を備える。オペレータは、施肥量調整ダイアル94を回転操作することで、施肥機8が散布する肥料の量を調整することができる。
繰出制御部60は、田植機1が走行しながら苗の植付けを行うのに伴い、電動モータ75を介して繰出部72を駆動することで肥料を散布する。
繰出制御部60は、原則的には、電動モータ75の回転速度を、車体部5の走行速度(言い換えれば、植付部14の植付速度)と、施肥量調整ダイアル94の操作位置と、の双方に連動するように制御する。
上述したように、施肥機8は、ホッパ71内の肥料を繰出部72によって所定量ずつ繰り出して、作溝器78から散布する。そして、繰出部72が備える繰出板73が1周回転する毎に繰り出される肥料の量は、上述の繰出凹部の容積と数により定まる。従って、単位時間内に繰出板73が回転する回数(回転速度)を増加させれば、単位時間内に繰り出される肥料の量を増やすことができる。
一方で、植付部14にはミッションケース23からの動力が伝達されるため、その回転速度は、車体部5の走行速度に対応して変化する。植付部14は、車体部5の走行速度に応じた速度で駆動される。
繰出制御部60は、植付作業時(ただし、車体部5の発進直後及び停止直前を除く。)においては、車速センサ19から入力された回転信号に基づいて回転速度を計算して取得し、この回転速度が速くなるのに応じて施肥機8における繰出板73の回転速度が速くなるように電動モータ75の回転速度を制御する。これにより、車体部5の走行速度にかかわらず肥料を均一に撒くことができる。
また、繰出制御部60は、施肥量調整ダイアル94が施肥量を大きくする側に操作されるのに伴って、施肥機8における繰出板73の回転速度が速くなるように、電動モータ75の回転速度を制御する。従って、オペレータは、当該施肥量調整ダイアル94を回すことで、施肥量の大小を調整することができる。
繰出制御部60には、植付クラッチセンサ85の検出結果が入力される。繰出制御部60は、植付クラッチ83が切断されている場合には、電動モータ75を停止させるように制御する。これにより、植付部14による苗の植付けが行われるときだけ繰出部72が駆動され、施肥が行われることになる。
そして、繰出制御部60は、田植機1の発進時及び停止時には、車体部5の走行速度そのものではなく、変速ペダル27の操作位置に基づいて、施肥機8の電動モータ75の回転速度を求め、当該回転速度で回転するように電動モータ75に指示する。
即ち、変速ペダル27の操作位置と、それによって実現されるべき車体部5の走行速度と、の関係は、予め求めて繰出制御部60の記憶部に記憶させておくことができる。繰出制御部60は、上記の関係を参照して、変速ペダル27から車体部5において実現されるべき走行速度を求め(車体部5の実際の走行速度は問わない)、その走行速度に応じた回転速度を電動モータ75に指示する。
上述したとおり、電動モータ75に対して回転数の変更を指示してから、地面に肥料が撒かれる単位時間当たりの量が意図したものとなるまでは、電動モータ75による応答遅れ、及び、搬送ホース76による応答遅れにより、ある程度のタイムラグが生じる。
一方で、オペレータが変速ペダル27の操作位置を変更してから、車体部5の走行速度が意図したものとなるまでは、サーボモータ105による応答遅れ、ミッションケース23(油圧機械式無段変速機3)における油圧の応答遅れ等により、同様にタイムラグが生じる。なお、サーボモータ105による応答遅れは、変速ペダル27の操作によって車体部5が急加速/急減速することを防ぐなど、乗り心地の観点から意図的に設定している。
これを利用して、本実施形態の繰出制御部60は、田植機1の発進時及び停止時においては、ペダルセンサ28が検出した変速ペダル27の操作位置に直接連動するように、電動モータ75に対して回転速度を指示する。これにより、車体部5の実質的な発進/停止に対する施肥量制御のタイムラグを小さくすることができる。
図5のグラフは、従来技術と本実施形態とで、田植機1の発進時における施肥開始タイミングの違いを模式的に表している。
従来は、施肥のタイムラグΔt1は、車体部5の走行開始タイミングを起点として現れていた。従って、車体部5の発進開始(植付け開始)から施肥の開始までに、比較的な大きなタイムラグ(Δt1)が生じていた。
一方、本実施形態では、施肥のタイムラグΔt1は、車体部5の走行開始のタイムラグΔt0と同様に、変速ペダル27の踏込み開始タイミングを起点として現れる。従って、車体部5の発進開始(植付け開始)と、施肥の開始と、の間のタイムラグを小さくすることができる。
本実施形態では、オペレータが変速ペダル27を踏み込んで田植機1が発進するのに伴い、変速ペダル27の操作位置に連動して電動モータ75の回転速度を制御するモードとなる(ペダル連動モード)。これにより、電動モータ75が回転を直ちに開始することができる。
車体部5の走行速度及び施肥機8による肥料の供給速度が十分に上昇したタイミングで、繰出制御部60は、車速センサ19が検出した車体部5の車速に連動するように、電動モータ75に対して回転速度を指示するモードとなる(車速連動モード)。このモードでは、変速ペダル27の操作量の小さな変化によって施肥量が敏感に変動するのを防止できるので、安定した施肥を実現することができる。
田植機1を停止するためにオペレータが変速ペダル27の踏込みを勢い良く解除した場合(例えば、足を一気に離した場合)、繰出制御部60は、再びペダル連動モードとなる。これにより、車体部5の停止から施肥停止までの時間を短くすることができる。
上記の制御を実現するために、繰出制御部60は図4に示すように、作業距離計算部61と、モード判定部62と、モータ制御部63と、を備える。
具体的に説明すると、繰出制御部60は、例えばCPU、ROM、RAM等からなるコンピュータとして構成されている。ROMには、電動モータ75を制御するためのプログラムが記憶されている。上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、繰出制御部60を、作業距離計算部61、モード判定部62及びモータ制御部63として機能させることができる。
作業距離計算部61は、植付部14による苗の植付けが行われながら車体部5が走行した距離を、車速センサ19、フロートセンサ37、及び植付クラッチセンサ85の検出結果に基づいて計算する。
モード判定部62は、ペダルセンサ28及び車速センサ19の検出結果等に基づいて、現在のモードを、ペダル連動モードとするか、車速連動モードとするかを判定する。
モータ制御部63は、繰出制御部60の現在のモードに応じて、電動モータ75の回転速度を制御する。
次に、図6を参照して、繰出制御部60が行う処理を詳細に説明する。図6は、施肥機8の電動モータ75の回転速度制御を説明するフローチャートである。
図6の処理がスタートすると、繰出制御部60のモード判定部62は先ず、変速ペダル27がゼロから踏み込まれ始めたか否かを判定する(ステップS101)。この判定は、現在のペダルセンサ28の検出値と、所定時間前のタイミングでのペダルセンサ28の検出値と、を用いて行うことができる。
ステップS101の判断で、変速ペダル27がゼロから踏み込まれ始めたと判定した場合、繰出制御部60のモード判定部62は、踏み込まれ始めてからの作業距離が所定以内か否かを判定する(ステップS102)。作業距離は、植付部14による苗の植付けが行われながら車体部5が走行した距離を意味する。この作業距離は、作業距離計算部61によって計算される。具体的には、作業距離は、植付けが行われていることを示す所定の条件下で車速センサ19から得られた走行速度を積分することにより得ることができる。植付けが行われている条件とは、植付クラッチセンサ85によって植付クラッチ83の接続状態が検出されていること、かつ、フロートセンサ37によって植付部14の下降が検出されていることである。作業距離の判定閾値は任意であるが、例えば2メートルとすることが考えられる。
ステップS102の判断で、作業距離が所定距離以内であった場合、モード判定部62は、繰出制御部60をペダル連動モードにすると判定する。この結果、ペダル連動モードとなった繰出制御部60のモータ制御部63は、変速ペダル27の操作位置をペダルセンサ28により検出する(ステップS103)。そして、モータ制御部63は、検出された踏込量に応じて、施肥機8の電動モータ75の回転速度を計算し、得られた回転速度を指示する電気信号を電動モータ75に出力する(ステップS104)。その後、処理はステップS101に戻る。
ステップS101の判断で、変速ペダル27がゼロから踏み込まれ始めてないと判定した場合、及び、ステップS102の判断で、作業距離が所定距離を上回っている場合は、モード判定部62は、変速ペダル27の踏込みが解除される勢いが所定以上か否かを判定する(ステップS105)。踏込みが解除される勢いは、変速ペダル27の操作位置が走行停止側に変化する単位時間当たりの変化量と言い換えることもできる。この判定は、現在のペダルセンサ28の検出値と、少し前のタイミングでのペダルセンサ28の検出値と、を用いて行うことができる。
ステップS105の判断で、変速ペダル27の踏込みが解除される勢いが所定の勢い以上であると判定された場合は、モード判定部62は、車速センサ19の検出結果に基づいて、車速がゼロになったか否かを判定する(ステップS106)。
ステップS106の判断で、車速がゼロになっていなかった場合、モード判定部62は、繰出制御部60をペダル連動モードにすると判定する。この結果、繰出制御部60はペダル連動モードとなる。モータ制御部63は、上記のステップS103、ステップS104の処理を行う。その後、処理はステップS101に戻る。
ステップS105の判断で、変速ペダル27の踏込みが解除される勢いが所定の勢いを下回ると判定された場合、及び、ステップS106の判断で、車速がゼロになっていると判定された場合は、モード判定部62は、繰出制御部60を車速連動モードにすると判定する。この結果、繰出制御部60は車速連動モードとなる。繰出制御部60のモータ制御部63は、車体部5の走行速度を車速センサ19により検出する(ステップS107)。そして、モータ制御部63は、検出された走行速度に応じて、施肥機8の電動モータ75の回転速度を計算し、得られた回転速度を指示する電気信号を電動モータ75に出力する(ステップS108)。その後、処理はステップS101に戻る。
以上により、車体部5の発進時又は停止時にペダル連動モードとなり、それ以外の時には車速連動モードとなるように繰出制御部60が切り替わって、状況に応じた電動モータ75の速度制御を行うことができる。
図7には、田植機の発進時での変速ペダルの踏込量と車速の関係を発明者が実験で計測した結果が示されている。このグラフでは、変速ペダルを踏み込み始めてから田植機が走行を開始するまでに、0.9秒のタイムラグが生じていることがわかる。従って、本実施形態のペダル連動モードの制御をすることにより、田植機が走行を開始してから施肥が実際に開始されるまでのタイムラグを0.9秒短縮できるものと期待できる。言い換えれば、発進時の車速を0.3メートル毎秒とした場合には、距離にして0.27メートル分、苗を植え付けているにもかかわらず肥料を散布できない区間をなくすことができる。
停止時のグラフは省略するが、発明者は田植機の停止に関しても実験を行った。この結果、変速ペダルの踏込みを解除してから田植機が走行を停止するまでに、0.6秒のタイムラグが生じていることがわかった。従って、本実施形態のペダル連動モードの制御をすることにより、田植機が走行を停止してから施肥が実際に停止するまでのタイムラグを0.6秒短縮できるものと期待できる。言い換えれば、0.6秒分の施肥量だけ、停止場所に集中して散布される肥料の量を減らすことができる。
以上に説明したように、本実施形態の田植機1は、車体部5と、変速ペダル27と、植付部14と、施肥機8と、を備える。車体部5は、圃場を走行可能である。変速ペダル27は、車体部5の走行速度を指示するために操作される。植付部14は、圃場に対して作業を行う。施肥機8は、圃場に肥料を供給する。植付部14は、車体部5の走行開始に連動して駆動を開始する。施肥機8は、車体部5の走行開始を指示する変速ペダル27の操作に連動して駆動を開始する。
これにより、変速ペダル27が踏み込まれ始めてから車体部5が走行を実際に開始するまでのタイムラグを利用して、車体部5の走行開始(植付部14の作業開始)から施肥の開始までの実質的なタイムラグを減らすことができる。
また、本実施形態の田植機1において、施肥機8は、操作部材連動モードと、車速連動モードと、を切替可能である。操作部材連動モードは、変速ペダル27の操作位置に連動して駆動速度を変更する。車速連動モードは、車体部5の走行速度に連動して駆動速度を変更する。施肥機8は、操作部材連動モードから車速連動モードに、肥料を供給しながら切替可能である。
これにより、走行開始の当初は変速ペダル27の操作に連動して施肥速度を制御することで、施肥開始のタイムラグを実質的に抑制することができる。一方、車体部5の走行開始の時点から十分に時間が経過したタイミングでは、車速に連動して施肥速度を制御することで、安定した施肥を実現することができる。
また、本実施形態の田植機1において、施肥機8は、変速ペダル27の操作により車体部5の走行開始が指示されてからの車体部5の走行距離である作業距離が閾値以上になった場合に、操作部材連動モードから車速連動モードに切り替えられる。
これにより、制御を自然に切り替えることができる。
また、本実施形態の田植機1において、植付部14は、車体部5の走行停止に連動して駆動を停止する。施肥機8は、車体部5の走行停止を指示する変速ペダル27の操作に連動して駆動を停止する。
これにより、変速ペダル27の踏込みが解除され始めてから車体部5が走行を停止するまでのタイムラグを利用して、車体部5の走行停止(植付部14の作業停止)から施肥の停止までの実質的なタイムラグを減らすことができる。
また、本実施形態の田植機1において、施肥機8は、操作部材連動モードと、車速連動モードと、を切替可能である。操作部材連動モードは、変速ペダル27の操作位置に連動して駆動速度を変更する。車速連動モードは、車体部5の走行速度に連動して駆動速度を変更する。施肥機8は、車速連動モードから操作部材連動モードに、肥料を供給しながら切替可能である。
これにより、走行停止の直前では変速ペダル27の操作に連動して施肥速度を制御することで、施肥停止のタイムラグを実質的に抑制することができる。一方、車体部5が停止するよりも十分に前のタイミングでは、車速に連動して施肥速度を制御することで、安定した施肥を実現することができる。
また、本実施形態の田植機1において、施肥機8は、変速ペダル27が走行停止側へ所定以上の勢いで操作された場合に、車速連動モードから操作部材連動モードに切り替えられる。
これにより、急停止操作がされた場合の施肥の停止の遅れを確実に抑制することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
車体部5の発進時において、操作部材連動モードから車速連動モードへの切替は、作業距離に限らず、例えば変速ペダル27の踏込み開始から所定時間が経過したこと、又は、車体部5の走行速度が所定速度以上になったこと等を条件として行うこともできる。
車体部5の停止時において、車速連動モードから操作部材連動モードへの切替は、変速ペダル27の操作の勢いに限らず、変速ペダル27の操作位置が所定の位置よりも走行停止側に操作されたこと等を条件として行うことができる。
電動モータ75の回転速度を変速ペダル27の操作位置に連動させる制御は、車体部5の発進時にだけ行い、停止時には行わないこともできる。
車体部5の走行速度を指示する走行操作部材は、ペダルに限定されず、例えばレバー等とすることもできる。
農用資材は、肥料以外の適宜の粒状体又は粉体等とすることもできる。