上記のように、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)キャッピング剤としてアルキルアミン又はアルコキシアミンを使用して得られたプレート型銀微粒子と、(B)銀粉と、(C)熱硬化性樹脂と、を含むことを特徴とするものである。
このような構成とすることで、(A)プレート型銀微粒子が焼結すると、通常の銀粉のみを充填したものよりも熱伝導率が高く、また、主として短径方向に焼結するため、球状の銀ナノ微粒子と比べ内部応力が小さく、銀微粒子が高配向することにより反射率に優れる接合材料となる。この(A)プレート型銀微粒子は、通常の銀微粒子(銀ナノ粒子)と異なり、酸素の有無の影響を受けにくいため、窒素等の不活性ガス雰囲気下での焼結が可能であり、低温焼結性に優れている。さらに、本発明の樹脂組成物は、無加圧での接合が可能で、接着性についても優れる。そのため、該熱硬化性樹脂組成物をダイアタッチペースト又は放熱部材接着用材料として使用して作製された半導体装置及び電気・電子部品は、耐リフロー特性に優れたものとなる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用する(A)プレート型銀微粒子は、球状のナノ粒子とは異なり、[111]面と[100]面の結晶成長速度を制御することで製造される、厚みの均一なプレート状の薄片状粒子であり、樹脂組成物に配合可能なプレート型銀微粒子が挙げられる。一般に、大きさがサブミクロンで厚みが数ナノメートル程度であり、三角形板状、六角形板状、切頂三角形板状などの形状を有している。また、その上面が[111]面で広く覆われていることが好ましい。
この(A)プレート型銀微粒子は、その中心粒子径が10〜1000nmであることが好ましい。この範囲とすることで、樹脂成分への分散性を向上できるとともに、ノズルの詰まりの問題や半導体素子の組立て時のチップの歪などを抑制できる。ここで、中心粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定して得られた体積基準の粒度分布曲線における50%積算値(50%粒子径)を指す。
また、厚み方向に垂直な方向の長辺が厚みの8〜200倍の範囲内であることが好ましく、10〜50倍であることがより好ましい。さらに、厚み方向に垂直な方向の短辺が厚みの1〜100倍の範囲内であることが好ましく、3〜50倍であることがより好ましい。
この(A)プレート型銀微粒子は100〜200℃で自己焼結可能である。このように100〜200℃で自己焼結する銀微粒子を含有することで、熱硬化時に銀微粒子の流動性が向上し、その結果、銀微粒子同士の接点がより多くなる上に、接点の面積が大きくなり、熱伝導性が格段に向上する。したがって、プレート型銀粒子の焼結温度は、好ましくは100〜175℃であり、より好ましくは100〜150℃である。なお、ここで自己焼結可能であるとは加圧もしくは添加剤等を加えなくても、融点よりも低い温度での加熱で焼結することをいう。
さらに、(A)プレート型銀微粒子は単結晶であることが好ましい。単結晶とすることで、低温硬化での熱伝導性を確保できる。
この(A)プレート型銀微粒子は、塗布膜中で水平方向に配向し、より多くの接点を有して熱伝導性を向上することができる。これは、熱硬化時においてチップの自重による圧縮効果と、樹脂組成物の揮発成分の減少や硬化収縮等によって体積が収縮する体積排除効果によって、塗布膜中で厚み方向が積層するように自然配向して、銀微粒子同士の接点を大きく確保できるようになるためである。
このような(A)プレート型銀微粒子としては、キャッピング剤としてアルキルアミン又はアルコキシアミンを使用して得られる銀微粒子が挙げられ、例えば、シュウ酸銀とアルキルアミン又はアルコキシアミンとを混合して、シュウ酸銀−アルキルアミン錯体又はシュウ酸銀−アルコキシアミン錯体を生成させ、それをアルコール溶媒中で酸化剤と混合し、熱分解させることで製造できる。
このようにキャッピング剤として、アルキルアミン又はアルコキシアミンを使用することで、PVP等の高分子配位子やカルボン酸など銀とイオン結合を形成する配位子と比較して、キャッピング剤が低温で脱離可能であるため低温焼結が可能となり、焼結時の体積収縮率も小さいものとなる。なお、キャッピング剤は、ナノ粒子の製造の際、結晶表面への付着等により結晶成長速度を制御するものであり、これにより粒子形状を特定のものとして製造できる。
キャッピング剤として、アルキルアミン又はアルコキシアミンを使用したプレート型銀微粒子の具体的な製造方法としては、まず、シュウ酸銀とアルキルアミン又はアルコキシアミンとを混合して、シュウ酸銀−アルキルアミン錯体又はシュウ酸銀−アルコキシアミン錯体を生成させる第1工程を行う。
この第1工程は、シュウ酸銀の銀原子に対して、アルキルアミン又はアルコキシアミンの非共有電子対が配位結合することにより錯化合物を形成する工程である。この形成反応は、25℃(室温)〜50℃程度の温度で5〜60分間程度、撹拌して容易に行うことができる。
ここで用いるシュウ酸銀は、金属銀を生成させ銀微粒子とするための材料であり、銀含有率が高く、加熱によりシュウ酸イオンが二酸化炭素として分解除去され、還元剤を必要とせず金属銀がそのまま得られ、不純物が残留しにくいため、本発明で用いる(A)プレート型銀微粒子の銀原料として好適である。このシュウ酸銀は、分解の際に銀以外の不純物を生じにくいためその他の銀化合物、例えば、ギ酸、酢酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸と銀が化合したカルボン酸銀、塩化銀、硝酸銀、炭酸銀等より有利である。
ここで用いるアルキルアミン又はアルコキシアミンは、シュウ酸銀に含まれる各銀原子に対してアミンの窒素原子が有する非共有電子対が配位結合して、錯化合物を形成しているものである。このアルキルアミンとしては、置換基としてアルキル基等の脂肪族炭化水素基を有するアミン化合物であれば、特にその構造に制限がなく、例えば、アミノ基を1個有するアルキルモノアミン、アミノ基を2個有するアルキルジアミンが挙げられる。具体的には、アルキルモノアミンとしては、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ドデシルアミン等、アルキルジアミンとしては、エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N´−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N´−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N´−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、N,N´−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン等、が挙げられる。なお、シュウ酸銀と反応して上記錯化合物を効率的に形成するため、一級アミン(R1NH2)又は二級アミン(R2R3NH)等のアルキルモノアミンであることが好ましい。
また、アルコキシアミンとしては、置換基としてアルコキシル基を有するアミン化合物であれば、特にその構造に制限がなく、例えば、アミノ基を1個有するアルコキシモノアミン、アミノ基を2個有するアルコキシジアミンが挙げられる。具体的には、アルコキシモノアミンとしては、メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−ブトキシプロピルアミン等が、アルコキシジアミンとしては、N−メトキシ−1,3−プロパンジアミン、N−メトキシ−1,4−ブタンジアミン等が挙げられる。なお、シュウ酸銀と反応して上記錯化合物を効率的に形成するため、一級アミン(R1ONH2)又は二級アミン(R2(R3O)NH)等のアルキルモノアミンであることが好ましい。
ここで、上記一級アミンの置換基R1はアルキル基を表し、炭素数3〜18のアルキル基であることが好ましい。また、二級アミンの置換基R2及びR3は、アルキル基を表し、共に炭素数3〜18のアルキル基であることが好ましい。置換基R2及びR3は、同一であっても異なっていてもよい。さらに、これらのアルキル基には、水酸基、アルコキシル基、シリル基、グリシジル基等の置換基を有していてもよい。
なお、ここで用いるアルキルアミン又はアルコキシアミンは、最終的に得られる銀微粒子の表面に残留し、銀微粒子の焼結性へ影響を与えると考えられるため、その沸点は250℃以下であることが好ましい。このようにアルキルアミン又はアルコキシアミンの沸点を低いものとしておくことで、銀微粒子の低温焼結性を確保できる。ちなみに、この第1工程中に気化により消失しないように、アルキルアミン又はアルコキシアミンの沸点は、50℃以上であることが好ましく、第1工程の反応温度以上とすることがより好ましい。
250℃以下の沸点を有するアルキルアミン及びアルコキシアミンとしては、例えば、ブチルアミン(73℃)、2−メトキシエチルアミン(95℃)、2−エトキシエチルアミン(105℃)、ジプロピルアミン(107℃)、3−メトキシプロピルアミン(120℃)、3−エトキシプロピルアミン(132℃)、4,4−ジメトキシブチルアミン(136℃)、ジブチルアミン(159℃)、イソプロパノールアミン(160℃)、ヘキシルアミン(131℃)、シクロヘキシルアミン(134℃)、ヘプチルアミン(155℃)、3−ブトキシプロピルアミン(170℃)、オクチルアミン(176℃)、ノニルアミン(201℃)、デシルアミン(217℃)、3−アミノプロピルエトキシシラン(217℃)、ドデシルアミン(248℃)等が挙げられる。
ここで用いるアルキルアミンのシュウ酸銀とのモル比は、アルキルモノアミンを用いる場合、シュウ酸銀:アルキルアミン=1:2〜8であることが好ましい。第1工程では、銀原子1個に対してアミノ基1個が結合し、シュウ酸−アルキルアミン錯体が生成する。したがって、シュウ酸銀分子とアルキルアミンとの化学量論比(モル比)は1:2となる。そのため、シュウ酸銀分子に対してアルキルアミンのモル比が2倍未満になると、未反応の銀成分が残るため、錯化合物の均一な低温分解が阻害され、被覆銀微粒子の収率が低下する場合がある。逆に、モル比が8倍を超えると、上記錯化合物の均一熱分解は進むが、アルキルアミンを無駄に使用するばかりか、廃棄物の増大に繋がるため経済性の面で好ましくない。したがって、アルキルアミンの配合量はシュウ酸銀1モルに対して2〜8モルが好ましく、2〜6モルがより好ましい。また、アルキルアミンとしてアルキルジアミンを用いる場合、アルキルアミン1分子中にアミノ基を2個有するため、2配位する場合もあるが、立体障害により1配位となることが多いと考えられ、上記モル比は、シュウ酸銀:アルキルジアミン=1:1〜8であることが好ましく、1:2〜6がより好ましい。なお、アルコキシアミンを用いる場合も上記アルキルアミンと同様にアミノ基の個数により好ましいモル比の範囲が定まる。
なお、第1工程において、脂肪族カルボン酸等の添加剤を適宜配合することができる。脂肪族カルボン酸を少量添加することで、シュウ酸銀及びアルキルアミン又はアルコキシアミンの溶剤に対する分散性を向上させることができる。
次に、上記第1工程で得られたシュウ酸銀−アルキルアミン錯体又はシュウ酸銀−アルコキシアミン錯体を、アルコール溶媒中で酸化剤と混合し、加熱分解させてアルキルアミン又はアルコキシアミンで被覆されたプレート状の銀微粒子を生成させる第2工程を行う。
この第2工程では、酸化剤の存在下、シュウ酸銀を熱分解することにより金属銀を生成するものであり、アルキルアミン又はアルコキシアミンは金属銀の生成においても大部分が気化せず残留し、銀微粒子の表面に存在する。
シュウ酸銀は、単に加熱するだけでも分解して金属銀が生成するが、酸化剤を存在させることにより、熱分解で還元された金属銀(Ag0)が銀イオン(Ag+)へと酸化される。これにより、系全体の見かけの反応速度を遅延させることにより、結晶成長が熱力学的ではなく、速度論に支配され、積層欠陥が生じ、プレート状のナノ粒子を生成できる。
また、この第2工程におけるシュウ酸銀を熱分解するための加熱温度は、25℃(室温)〜200℃であり、70〜150℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましい。一般に、加熱温度は熱分解が進行する温度とすればよく、熱分解を効率よく進行させるために熱分解温度〜熱分解温度+10℃の温度範囲とするのが好ましい。加熱温度が25℃未満であると分解反応が十分に進まず金属銀の析出量が少なくなってしまい、200℃を超えると反応が爆発的に進行して、得られる粒子が粗大な粒子となってしまう。なお、この加熱温度が、アルキルアミン又はアルコキシアミンの沸点よりも高い温度だと、アルキルアミン又はアルコキシアミンが揮発していくため銀粒子が大きくなる傾向があり、アルキルアミン又はアルコキシアミンの沸点よりも低い温度だと、保護分子としてアルキルアミン又はアルコキシアミンが十分に機能して銀粒子が小さくなる傾向がある。
ここで用いられるアルコール溶媒は、反応溶媒として用いることができるものであれば特に限定されずに使用でき、1級アルコール又は2級アルコールであることが好ましい。また、このアルコール溶媒としては、炭素数が1〜8で極性を示すアルコールが好ましい。アルコール化合物の極性の強さを定量的に測定することは困難であるが、極性溶媒である水(H2O)に対する溶解度で、半定量的に評価することができる。つまり、極性の高いアルコールは水に対する溶解度が大きく、極性の低下と共に溶解度が低下する傾向がある。また、炭素数が9以上のアルコールでは、実質的に水に溶解せず極性が低いために、シュウ酸銀アルキルアミン錯体との相溶性が悪い。言い換えれば、わずかに水溶性を示すオクタノール(0.3g/L(20℃))以下の炭素数を持つアルコールであれば、シュウ酸銀アルキルアミン錯体との相溶性を有し、反応場のバラつきを抑制でき好ましい。反応場のバラつきが抑えられ均一になるほど、本発明の銀微粒子の合成に適した条件と考えられる。
そのため、炭素数が8以下であれば良いが、炭素数が1又は2程度であるとアルコールの沸点が反応温度以下となりやすく、分解反応中に溶媒が沸騰してしまうと、分解が激しくなりすぎてしまい好ましくない。したがって、このアルコール溶媒の炭素数は3〜8がより好ましく、炭素数が4〜6が特に好ましい。このようなアルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどが挙げられ、中でもブタノールがその反応性に適しており特に好ましい。
なお、アルコール溶媒の沸点は、60〜250℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。また、アルコール溶媒の沸点はアルキルアミン又はアルコキシアミンの沸点よりも高いことが好ましい。これは、第2工程の反応において、反応中にアルコール溶媒が沸騰することなく反応を進行させるためである。
また、ここで用いられる酸化剤は、銀原子(Ag0)を銀イオン(Ag+)へと酸化させ、系全体の見かけの反応速度を遅延させるものであればよく、その構成成分としてCl−、S2−又はCO3 2−の陰イオンを含有するものが挙げられ、Cl−を構成成分とするものが好ましい。
このCl−を構成成分として有する酸化剤としては、例えば、NaCl、KCl、ZnCl2、NiCl2,CoCl2,CuCl2、FeCl3などが挙げられ、これらは1種又は複数種を混合して用いることができる。
S2−を構成成分として有する酸化剤としては、例えば、Na2S、NaHSなどが挙げられる。CO3 2−を構成成分として有する酸化剤としては、例えば、Na2CO3、NaHCO3などが挙げられる。
この酸化剤としてCl−を用いる場合には、アルコール溶媒中に0.01〜0.6mmol/Lの濃度範囲が好ましい。酸化剤の濃度が、0.01mmol/L未満となると、粒子が球状で粗大になる傾向があり、0.6mmol/Lを超えると、結晶生成が遅くなり、さらに、Ag塩を形成しやすく、また、酸化剤の除去のため、粒子合成後の洗浄回数を増やす必要が出てきてしまう。なお、S2−、CO3 2−の場合には、2価の陰イオンであるため、その濃度は上記Cl−の場合の1/2となる範囲、すなわち0.005〜0.3mmol/Lが好ましい。
このように、本発明で得られるプレート状の銀微粒子は、球状ではなく、例えば、長径が10〜1000nm、厚さが5〜100nmの多角形状のものとなる。なお、このような大きさ、形状は走査電子顕微鏡により確認できる。また、上記プレート状の銀微粒子は、本発明の諸特性を効果的に発揮するために、その平面視したときの長径と短径とのアスペクト比(長径/短径)が1〜3の範囲のものであることが好ましい。また、長径と厚みのアスペクト比(長径/厚み)が2〜50の範囲のものであることが好ましい。
上記の本発明の銀微粒子の製造方法により得られたプレート状の銀微粒子は、低温焼成が可能で、かつ、低体積収縮の特性を有しており、これを用いた導電性接着剤又は導電性ペーストは、一般的な球状の銀微粒子を使用する場合に比べ、フィラーの高充填化が可能で、焼結後の体積収縮率が低く、また、アウトガスの排出量が少ない。
また(A)プレート型銀微粒子の表面を、必要に応じて表面処理することも、相溶性向上の観点から好ましい。表面処理の種類は特に限定はなく、上記(B)成分や(C)成分により適宜選択できる。例えば、相溶性を向上させるには、ステアリン酸、パルミチン酸、ヘキサン酸、オレイン酸等が挙げられる。
さらに、(A)プレート型銀微粒子に加えて、平均粒子径が10〜100nmである球状銀微粒子を加えてもよい。これにより、プレート型銀微粒子と後述する銀粉のみの組み合わせよりも、さらに充填率が向上し、さらなる低温焼結性も付与できる。
本発明に用いられる(B)銀粉は、平均粒子径が0.5〜30μmの銀粉であり、通常、樹脂接着剤中に導電性を付与するために添加される無機充填材としての銀粉であればよい。この(B)銀粉のようなミクロンオーダーの銀粒子を、上記の(A)成分の銀微粒子に加えて添加することで、素子と支持基板との接合強度をより向上させることができる。また、ここで用いられる銀粒子の形状としては、例えば、フレーク状、鱗片状、樹枝状、ロッド状、ワイヤー状、球状等が挙げられる。なお、この(B)成分には、(A)成分に該当する銀微粒子は含まない。
なお、ここで平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定して得られた体積基準の粒度分布曲線における50%積算値(50%粒子径)を指す。
なお、これら(A)成分と(B)成分の割合は、これらの合計量を100としたとき、(A)成分:(B)成分の質量比が10:90〜90:10であることが好ましく、10:90〜50:50がさらに好ましい。(B)成分に対して(A)成分が少なすぎると、高熱伝導性の確保が難しく、(A)成分が多すぎると、硬化物中のボイド発生や、チキソ性が上昇することによるマウント時の糸引き現象などにより作業性が悪化するおそれがある。
本発明で使用する(C)熱硬化性樹脂は、一般に接着剤用途として使用される熱硬化性樹脂であれば特に限定されずに使用できる。中でも、液状樹脂であることが好ましく、室温(25℃)で液状である樹脂がより好ましい。この(C)熱硬化性樹脂としては、例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。
シアネート樹脂は、分子内に−NCO基を有する化合物であり、加熱により−NCO基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。具体的に例示すると、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4’−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、及びノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられる。また、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも使用できる。このプレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類、を触媒として重合させることにより得られる。
シアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。また、シアネート樹脂は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂などの他の樹脂と併用することも可能である。
エポキシ樹脂は、グリシジル基を分子内に1つ以上有する化合物であり、加熱によりグリシジル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。グリシジル基は1分子に2つ以上含まれていることが好ましいが、これはグリシジル基が1つの化合物のみでは反応させても十分な硬化物特性を示すことができないからである。グリシジル基を1分子に2つ以上含む化合物は、2つ以上の水酸基を有する化合物をエポキシ化して得ることができる。このような化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物又はこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオール又はこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオール又はこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、このエポキシ樹脂は、樹脂組成物として室温でペースト状又は液状とするため、単独で又は混合物として室温で液状のものが好ましい。通常行われるように反応性の希釈剤を使用することも可能である。反応性希釈剤としては、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類などが挙げられる。
このとき、エポキシ樹脂を硬化させる目的で硬化剤を使用するが、エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂などが挙げられる。ジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられ、酸無水物としてはフタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体などが挙げられる。
エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるフェノール樹脂としては1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物であり、1分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の場合には架橋構造をとることができないため硬化物特性が悪化し使用できない。
また1分子内のフェノール性水酸基数は2つ以上であれば使用可能であるが、好ましいフェノール性水酸基の数は2〜5である。これより多い場合には分子量が大きくなりすぎるので導電性ペーストの粘度が高くなりすぎるため好ましくない。より好ましい1分子内のフェノール性水酸基数は2つ又は3つである。
このような化合物としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類及びその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類及びその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体又は3核体がメインのもの及びその誘導体などが挙げられる。
さらに、硬化を促進するために硬化促進剤を配合でき、エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン又はテトラフェニルホスフィン及びそれらの塩類、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系化合物及びその塩類などが挙げられる。例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−C11H23−イミダゾール、2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物などのイミダゾール化合物が好適に用いられる。なかでも特に好ましいのは融点が180℃以上のイミダゾール化合物である。また、エポキシ樹脂は、シアネート樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
ラジカル重合性のアクリル樹脂とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、(メタ)アクリロイル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。(メタ)アクリロイル基は分子内に1つ以上含まれていることが好ましい。
ここで、アクリル樹脂としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸又はその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体等が挙げられる。
さらに、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アタリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
また、特に好ましいアクリル樹脂としては、分子量が100〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートで(メタ)アクリル基を有する化合物、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。
ここで、ポリエーテル骨格としては、炭素数が1〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエーテルで(メタ)アクリル基を有する化合物は、ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
ポリエステル骨格としては、炭素数が1〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエステルで(メタ)アクリル基を有する化合物は、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
ポリカーボネート骨格としては、炭素数が1〜6の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリカーボネートで(メタ)アクリル基を有する化合物は、ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
ポリ(メタ)アクリレート骨格としては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体、水酸基を有する(メタ)アクリレートとカルボキシル基、水酸基などの極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体、グリシジル基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体などが好ましい。
上記した共重合体は、それぞれカルボキシル基が水酸基を有する(メタ)アクリレートあるいはグリシジル基を有する(メタ)アクリレートと反応することで得ることが、水酸基が極性基を有さない(メタ)アクリル酸およびその誘導体と反応することで得ることが、可能である。
そして、ポリ(メタ)アクリレートで(メタ)アクリル基を有する化合物は、ポリ(メタ)アクリレートポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
ヒドロキシル基を有する、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドは、それぞれ1分子中に1個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドであり、かつ、ヒドロキシル基を含有するものである。
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸誘導体とを反応することで得ることが可能である。この反応は、公知反応を使用することができ、ポリオール化合物に対し、通常0.5〜5倍モルのアクリル酸エステル又はアクリル酸を使用する。
また、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルアミドは、ヒドロキシル基を有するアミン化合物と(メタ)アクリル酸及びその誘導体とを反応することで得ることが可能である。(メタ)アクリル酸エステルとアミン化合物とを反応させて(メタ)アクリルアミド類を製造する方法は、(メタ)アクリル酸エステルの二重結合が極めて反応性に富む為に、アミン、シクロペンタジエン、アルコール等を予め二重結合に保護基として付加させ、アミド化終了後加熱して保護基を脱離させ目的物を製造するのが一般的である。
このようにヒドロキシル基を含有することにより、還元効果による焼結性が促進されると共に、接着性が向上する。
また、ここでいうヒドロキシル基は脂肪族炭化水素基の水素原子が置換されたアルコール性の基であり、このヒドロキシル基の含有量は、1分子中に1から50個が好ましく、ヒドロキシル基の含有量がこの範囲にあると硬化過多による焼結性の阻害がないため好ましい。
このようなヒドロキシル基を有するアクリル樹脂化合物としては、例えば、次の一般式(I)〜(IV)で示される化合物が挙げられる。
(式中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数1〜100の2価の脂肪族炭化水素基又は環状構造を持つ脂肪族炭化水素基を表す。)
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ上記と同じものを表す。)
(式中、R
1は上記と同じものを表し、nは1〜50の整数を表す。)
(式中、R
1及びnはそれぞれ上記と同じものを表す。)
この(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドとしては、上記した化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、一般式(I)及び(II)におけるR2の炭素数は、1〜100であることが好ましく、1〜36であることがより好ましく、R2の炭素数がこのような範囲にあると硬化過多による焼結性の阻害がないため好ましい。
ここで、(C)成分がアクリル樹脂である場合は、その重合にあたって、一般に重合開始剤が使用されるが、重合開始剤としては熱ラジカル重合開始剤が好ましく、公知の熱ラジカル重合開始剤であれば特に限定されずに使用できる。また、熱ラジカル重合開始剤としては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、導電性ペーストの常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなってしまう。このような特性を満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロへキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパ−オキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−へキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−へキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソブタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独又は硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。また、上記のラジカル重合性のアクリル樹脂は、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
この重合開始剤は、単独で又は硬化性を制御するために2種類以上を混合して用いてもよい。さらに、ダイアタッチペーストの保存性を向上するために各種の重合禁止剤を予め添加しておくことも可能である。
この熱ラジカル開始剤の配合量は、ラジカル重合性のアクリル樹脂成分100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。10質量部を超えるとダイアタッチペーストの粘度の経時変化が大きくなり作業性に問題を生じる可能性があり、0.1質量部未満であると硬化性が著しく低下する可能性がある。
マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましいマレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸又はアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。
マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂との併用も好ましい。アリルエステル樹脂としては、脂肪族のものが好ましく、中でも特に好ましいのはシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物である。アリルエステル系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、500〜10,000が好ましく、特に500〜8,000が好ましい。数平均分子量が上記範囲内であると、硬化収縮を特に小さくすることができ、密着性の低下を防止することができる。またシアネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂との併用も好ましい。
また、マレイミド樹脂は、主鎖に脂肪族炭化水素基を有するビスマレイミド樹脂であり、2つのマレイミド基を連結する主鎖が、炭素数が1以上の脂肪族炭化水素基を有して構成されるものが、特に好ましい。
ここで、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれの形態でもよく、炭素数が6以上であることが好ましく、炭素数が12以上であることがより好ましく、炭素数が24以上であることが特に好ましい。また、この脂肪族炭化水素基はマレイミド基に直接結合していることが好ましい。
また、マレイミド樹脂としては、例えば、次の一般式(V)で表される化合物
(式中、Qは炭素数6以上の2価の直鎖状、分枝鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を示し、Pは2価の原子又は有機基であって、O、CO、COO、CH
2、C(CH
3)
2、C(CF
3)
2、S、S
2、SO及びSO
2から選ばれる2価の原子又は有機基を少なくとも1つ以上含む基であり、mは1〜10の整数を表す。)も好ましく用いられる。
ここで、Pで表される2価の原子は、O、S等が挙げられ、2価の有機基は、CO、COO、CH2、C(CH3)2、C(CF3)2、S2、SO、SO2等、また、これらの原子又は有機基を少なくとも1つ以上含む有機基が挙げられる。上記した原子又は有機基を含む有機基としては、上記以外の構造として、炭素数1〜3の炭化水素基、ベンゼン環、シクロ環、ウレタン結合等を有するものが挙げられ、その場合のPとして次の化学式で表される基が例示できる。
主鎖に脂肪族炭化水素基を有するビスマレイミド樹脂を用いると、耐熱性に優れるとともに、低応力で吸湿後の熱時接着強度の良好な半導体接着用熱硬化型樹脂組成物が得られるため好ましい。
このようなマレイミド樹脂の具体例としては、BMI−1500(デジグナーモレキュールズ社製、商品名;分子量 1500)、BMI−1700(デジグナーモレキュールズ社製、商品名;分子量 1700)、等が挙げられる。
さらに、マレイミド樹脂は、アリル化ビスフェノールとエピクロルヒドリンの重合物であるアリル化エポキシ樹脂もしくは、上記ヒドロキシ基を含有するラジカル重合性アクリル樹脂との併用が特に好ましい。
ここで、アリル化ビスフェノールとエピクロルヒドリンの重合物であるアリル化エポキシ樹脂は、例えば、多価フェノール化合物をメタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール類やアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の溶剤に溶解後、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の塩基を用いて塩化アリルや臭化アリル等のハロゲン化アリルと反応させて多価フェノール化合物のアリルエーテルを得た後、アリル化多価フェノール化合物とエピハロヒドリン類の混合物に触媒として水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の固体を一括添加又は徐々に添加しながら20〜120℃で0.5〜10時間反応させることによって得ることができる。
アリル化エポキシ樹脂は、次の一般式(VI)で表される化合物
(式中、R
3〜R
10は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基及び置換又は無置換のアリル基から選ばれる基であって、そのうちの少なくとも1つは置換又は無置換のアリル基であり、XはSO、SO
2、CH
2、C(CH
3)
2、C(CF
3)
2、O、CO及びCOOから選ばれる2価の原子又は有機基であり、kは0又は1である。)が好ましく用いられる。
マレイミド樹脂とアリル化エポキシ樹脂を併用する場合、その配合割合は、50/50〜95/5が好ましく、より好ましくは65/35〜90/10である。
マレイミド樹脂とラジカル重合性アクリル樹脂を併用する場合、その配合割合は、5/95〜95/5が好ましい。
ここで、(C)成分は、上記(A)成分の銀微粒子と(B)成分の銀粉の合計量を100質量部としたとき、1〜20質量部となるように配合される。(C)成分が1質量部未満であると銀成分が多くなりすぎるため、粘度が高すぎて取り扱いが困難で接着剤として好ましくない。(C)成分が20質量部を超えると銀成分の割合が低下するため、高熱伝導性の確保が不十分となり熱放散性が低下する。また、有機成分が多いことにより、光及び熱により劣化し、その結果、着色及び強度が低下するという、発光装置の寿命を低下させる。このような配合範囲とすることで、アクリル樹脂の接着性能を利用して、銀粒子相互の接触を防止し、かつ、接着層全体の機械的強度を保持することが、容易にできる。
本発明は、本質的には上記(A)〜(C)成分を必須成分として含有するものであるが、必要に応じて以下に説明する(D)〜(E)成分を含有してもよい。
本発明において、さらに(D)フラックス成分としての有機物を添加してもよい。ここでフラックス成分は、基材の酸化被膜を除去するフラックス活性を有するものをいう。この(D)フラックス成分としては、例えば、カルボン酸類が挙げられる。
カルボン酸類としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれであってもよい。脂肪族カルボン酸としては、例えば、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、アリルマロン酸、2,2’−チオジ酢酸、3,3’−チオジプロピオン酸、2,2’−(エチレンジチオ)ジ酢酸、3,3’-ジチオジプロピオン酸、2-エチル−2−ヒドロキシ酪酸、ジチオジグリコール酸、ジグリコール酸、アセチレンジカルボン酸、マレイン酸、リンゴ酸、2-イソプロピルリンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、1,3−アセトンジカルボン酸、トリカルバリン酸、ムコン酸、β−ヒドロムコン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、グルタル酸、α−ケトグルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、クエン酸、アジピン酸、3−tert−ブチルアジピン酸、ピメリン酸、フェニルシュウ酸、フェニル酢酸、ニトロフェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ニトロフェノキシ酢酸、フェニルチオ酢酸、ヒドロキシフェニル酢酸、ジヒドロキシフェニル酢酸、マンデル酸、ヒドロキシマンデル酸、ジヒドロキシマンデル酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、スベリン酸、4,4’−ジチオジ酪酸、桂皮酸、ニトロ桂皮酸、ヒドロキシ桂皮酸、ジヒドロキシ桂皮酸、クマリン酸、フェニルピルビン酸、ヒドロキシフェニルピルビン酸、カフェ酸、ホモフタル酸、トリル酢酸、フェノキシプロピオン酸、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ベンジルオキシ酢酸、フェニル乳酸、トロパ酸、3−(フェニルスルホニル)プロピオン酸、3,3−テトラメチレングルタル酸、5-オキソアゼライン酸、アゼライン酸、フェニルコハク酸、1,2−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジ酢酸、1,4−フェニレンジ酢酸、ベンジルマロン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、ジフェニル酢酸、ベンジル酸、ジシクロヘキシル酢酸、テトラデカン二酸、2,2−ジフェニルプロピオン酸、3,3−ジフェニルプロピオン酸、4,4-ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、ピマール酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、アガト酸などが挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2-ナフトエ酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−フェノキシ安息香酸、ビフェニル−4−カルボン酸、ビフェニル−2−カルボン酸、2−ベンゾイル安息香酸などが挙げられる。これらの中でも、保存安定性や入手容易さの観点から、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、アジピン酸、3,3’−チオジプロピオン酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、スベリン酸、セバシン酸、フェニルコハク酸、ドデカン二酸、ジフェニル酢酸、ベンジル酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、アビエチン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]安息香酸などを用いることが望ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)フラックス成分は、ジカルボン酸が特に好ましく、分解温度が100〜300℃、好ましくは150〜290℃であるものが好ましい。接合基材の酸化被膜の除去だけでなく、接合加熱時の交換反応による(A)成分と(B)成分の表面処理剤を、それに含まれる酸化被膜、酸化銀の除去と同時に、ジカルボン酸それ自身が分解もしくは蒸散するため、その後の銀同士の焼結を邪魔することはない。このことにより、添加前よりも低温で銀同士が焼結する焼結促進効果が得られる。この(D)フラックス成分の沸点が100℃未満であると、常温であっても揮発性が高くなるため、分散媒の揮発による還元能力の低下が生じやすく、安定した接着強度を得ることができなくなるおそれがある。また、(D)フラックス成分の沸点が300℃を超えると、粒子間の焼結が生じにくく、緻密性に欠け、揮発せず膜中にフラックス成分が残存することとなるので好ましくない。
(D)フラックス成分の含有量としては、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。この含有量が5質量部を超えるとボイド発生による信頼性に悪影響を与えるおそれがあり、含有量が0.01質量部未満であると、フラックス活性が機能しないおそれがあるため好ましくない。
さらに、本発明において、(E)溶剤を使用してもよい。(E)溶剤は、還元剤として機能する溶剤であれば公知の溶剤を用いることができる。この溶剤としては、アルコールが好ましく、例えば、脂肪族多価アルコールを挙げることができる。脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロビレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどのグリコール類などを挙げることができる。これらの溶剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(E)溶剤としては、還元剤として機能するアルコール溶剤がペースト硬化(焼結)時の熱処理により高温となることでアルコールの還元力を増大させ、銀粉及び銀微粒子中に一部存在している酸化銀及び金属基板上の酸化金属(例えば、酸化銅)がアルコールによって還元され、純粋な金属となり、結果としてより緻密で導電性が高く、基板との密着性の高い硬化膜の形成ができていると考えられる。また、半導体素子と金属基板に挟まれていることでペースト硬化時の熱処理中にアルコールが一部還流状態となり、溶剤であるアルコールが揮発により系中から直ちに失われることがなく、沸点以上のペースト硬化温度で酸化金属がより効率的に還元されるようになる。
(E)溶剤の沸点は、具体的には、100〜300℃、好ましくは150〜290℃であるものが好ましい。沸点が100℃未満であると、常温であっても揮発性が高くなるため、分散媒の揮発による還元能力の低下が生じやすく、安定した接着強度を得ることができなくなるので好ましくない。また、沸点が300℃を超えると、粒子間の焼結が生じにくく、緻密性に欠け、揮発せず膜中に溶剤が残存することとなるので好ましくない。
(E)溶剤の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量を100質量部としたとき、7〜20質量部であることが好ましい。7質量部未満であると粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがあり、20質量部を超えると粘度が低くなり、ペースト中の銀の沈下及び信頼性が低下するおそれがある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、硬化促進剤、ゴムやシリコーン等の低応力化剤、樹脂粒子、カップリング剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤(顔料、染料)、各種重合禁止剤、酸化防止剤、溶剤、その他の各種添加剤を、必要に応じて配合することができる。これらの各添加剤はいずれも1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
このような添加剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、スルフィドシランなどのシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤などのカップリング剤、カーボンブラックなどの着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの固形低応力化成分、ハイドロタルサイトなどの無機イオン交換体、などが挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記した(A)〜(C)成分、及び必要に応じて配合される(D)〜(E)成分、その他カップリング剤等の添加剤及び溶剤等を十分に混合した後、さらにディスパース、ニーダー、3本ロールミル等により混練処理を行い、次いで、脱泡することにより、調製することができる。
このようにして得られる本発明の熱硬化性樹脂組成物は、高熱伝導性、熱放散性に優れ、素子や放熱部材の基板等への接合材料として使用すると、装置内部の熱の外部への放散性が改善し、製品特性を安定させることができる。
次に、本発明の半導体装置及び電気・電子部品について説明する。
本発明の半導体装置は、上記した熱硬化性樹脂組成物を用いて、半導体素子を素子支持部材となる基板上に接着してなるものである。すなわち、ここで熱硬化性樹脂組成物はダイアタッチペーストとして使用される。
ここで、半導体素子は、公知の半導体素子であればよく、例えば、トランジスタ、ダイオード等が挙げられる。さらに、この半導体素子としては、LED等の発光素子が挙げられる。また、発光素子の種類は特に制限されるものではなく、例えば、MOCVD法等によって基板上にInN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体を発光層として形成させたものも挙げられる。また、素子支持部材は、銅、銀メッキ銅、PPF(プリプレーティングリードフレーム)、ガラスエポキシ、セラミックス等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いることで、金属メッキ処理されていない基材をも接合できる。このようにして得られた半導体装置は、実装後の温度サイクルに対する接続信頼性が従来に比べ飛躍的に向上したものとなる。また、電気抵抗値が十分小さく経時変化が少ないため、長時間の駆動でも出力の経時的減少が少なく長寿命であるという利点がある。
また、本発明の電気・電子部品は、上記した熱硬化性樹脂組成物を用いて、発熱部材に放熱部材を接着してなるものである。すなわち、ここで熱硬化性樹脂組成物は放熱部材接着用材料として使用される。
ここで、発熱部材としては、上記した半導体素子又は該半導体素子を有する部材でもよいし、それ以外の発熱部材でもよい。半導体素子以外の発熱部材としては、光ピックアップ、パワートランジスタ等が挙げられる。また、放熱部材としては、ヒートシンク、ヒートスプレッダー等が挙げられる。
このように、発熱部材に上記した熱硬化性樹脂組成物を用いて放熱部材を接着することで、発熱部材で発生した熱を放熱部材により効率良く外部へ放出することが可能となり、発熱部材の温度上昇を抑えることができる。なお、発熱部材と放熱部材とは、熱硬化性樹脂組成物を介して直接接着してもよいし、他の熱伝導率の高い部材を間に挟んで間接的に接着してもよい。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(製造例1)
硝酸銀(関東化学株式会社製、一級) 203gとシュウ酸アンモニウム一水和物(関東化学株式会社製、特級) 82gとを、順番に純水に溶解させ、室温で12時間撹拌混合し、シュウ酸銀 180gを得た。
次いで、得られたシュウ酸銀 2.38g(7.8mmol)とn−ブチルアミン(関東化学株式会社製) 3.48g(31.2mmol)とを混合し、室温で1分間撹拌し、シュウ酸銀−アルキルアミン錯体を調製した。
これに、1−ブタノール(関東化学株式会社製) 6mLとNaClを0.141mg加え、100℃で15分間加熱撹拌すると、CO2の発泡を伴う反応が完結し、銀色の沈殿物が生成した。これにメタノール(関東化学株式会社製、一級) 5mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を自然乾燥して、厚さ20nm、長径100nm程度のプレート型銀微粒子を得た。得られた固体生成物の主な生成物がプレート型形状の粒子であることは、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、商品名:JSM−7600F;SEM)で観察することにより確認した。
(製造例2)
水 100質量部に、高分子化合物としてゼラチンを0.3質量部溶解させ、得られた水溶液に、硝酸銀を0.024質量部添加、溶解し、液温を60℃に保持した後、還元剤としてアスコルビン酸を0.03質量部添加し、2時間撹拌させながら反応を完遂させ、厚さ1〜5nm、長径50〜300nmのプレート型銀微粒子を得た。
(実施例1〜3、比較例1)
表1の配合に従って各成分を混合し、ロールで混練し、樹脂ペーストを得た。得られた樹脂ペーストを以下の方法で評価した。その結果を表1及び表2に併せて示す。なお、実施例及び比較例で用いた材料は、下記の通りの市販品を使用した。
(A):プレート型銀微粒子1(製造例1で得られた銀微粒子;キャッピング剤として、アルキルアミンを使用したもの)
(A´):プレート型銀微粒子2(製造例2で得られた銀微粒子;キャッピング剤として、ゼラチンを使用したもの)
(B):銀粉(福田金属箔粉工業(株)製、商品名:AgC−212D;平均粒子径:5μm)
(C1):ヒドロキシルエチルアクリルアミド((株)興人製、商品名:HEAA)
(C2):4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成(株)製、商品名:4HBA)
(C3):イミド拡張型ビスマレイミド(デジグナーモレキュールズ社製、商品名:BMI−1500;数平均分子量 1500)
(C4):ジアリルビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:RE−810NM;エポキシ当量 223、加水分解性塩素 150ppm(1N KOH−エタノール、ジオキサン溶媒、還流30分)
重合開始剤:ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルD;急速加熱試験における分解温度:126℃)
(D):リンゴ酸(東京化成工業(株)製)
(E):ジエチレングリコール(東京化成工業(株)製)
<評価方法>
[粘度]
E型粘度計(3°コーン)を用いて、25℃、5rpmでの値を測定した。
[ポットライフ]
25℃の恒温槽内に樹脂ペーストを放置した時の粘度が初期粘度の1.5倍以上増粘するまでの日数を測定した。
[熱時接着強度]
4mm×4mmの接合面に金蒸着層を設けた裏面金チップを、半導体用樹脂ペーストを用いて、無垢の銅フレーム及びPPF(Ni−Pd/Auめっきした銅フレーム)にマウントし、175℃、60分で硬化した。硬化及び吸湿処理(85℃、相対湿度85%、72時間)後、マウント強度測定装置を用い、260℃での熱時ダイシェア強度を測定した。
[熱伝導率]
JIS R 1611−1997に従い、レーザーフラッシュ法により硬化物の熱伝導率を測定した。
以上の結果より、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、175℃程度での低温焼結性に優れることがわかった。したがって、この熱硬化性樹脂組成物を素子接着用ダイアタッチペースト又は放熱部材接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置及び電気・電子機器が得られる。