JP2016022502A - 高Cr系CSEF鋼の初層サブマージアーク溶接方法 - Google Patents

高Cr系CSEF鋼の初層サブマージアーク溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接において、工程・労力の増大によらずに初層高温割れの発生を抑制できる溶接方法を提供する。【解決手段】C:0.10質量%以下、Si:0.50質量%以下、Mn:1.50質量%以下、P:0.025質量%以下、S:0.025質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる金属粉末またはカットワイヤ21fを、母材10の開先内へ散布高さh:1.0〜4.0mmに充填して初層溶接することを特徴とする。初層溶接において、前記金属粉末等21fにより溶接金属の融点降下が抑制されて、高温割れを防止することができる。【選択図】図7

Description

本発明は、高Cr系CSEF(Creep Strength-Enhanced Ferritic steel:クリープ強度強化フェライト)鋼のサブマージアーク溶接方法に関し、特に、初層溶接方法に関する。
火力発電ボイラ、タービン、脱硫や改質(重油分解)用の化学反応容器(リアクタ)は、いずれも高温、高圧で運転されるため、材料として、1.25Cr−0.5Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo−V鋼等が適用されている。近年、重油の有効利用や石油精製においてさらなる高能率化が求められており、8質量%以上のCrを含有する高Cr系CSEF鋼の適用が検討されている。高Cr系CSEF鋼には、ASTM(American Society for Testing and Materials:米国材料試験協会)規格やASME(American Society of Mechanical Engineers:米国機械協会)規格に規定されるSA387Gr.91、SA213Gr.T91等がある。
火力発電ボイラ、タービン、リアクタは、鍛造リング、パイプ、または曲げ加工鋼板を適宜組み合わせて溶接して組み立てられる。ここで、例えば鍛造リングは、板厚150〜450mm、最大外径7m弱、全長数〜数10mにもなる。溶接方法としては、被覆アーク溶接、TIG溶接、サブマージアーク溶接が用いられ、特に、サブマージアーク溶接は他の溶接方法と比較して高能率であることから多用されている。ところが、高Cr系CSEF鋼にサブマージアーク溶接を行うと、初層溶接で高温割れを生じ易い。
サブマージアーク溶接の初層溶接の高温割れ防止の技術として、例えば特許文献1には、高炭素鋼であるC含有量0.27質量%のJIS SF50やASTM A148の狭開先サブマージアーク溶接において、母材間の継ぎ目に、具体的にはV開先やX開先の初層位置に、スペーサとしてC含有量0.10質量%以下の低炭素鋼や溶接金属からなる異物・異材を介在させる技術が開示されている。この特許文献1には、高炭素鋼材の狭開先溶接においてその初層溶接ビードで高温割れが発生し易いのは、母材希釈による母材のCの溶接金属へのピックアップであると記載されている。すなわち、溶接金属のC濃度が高くなって融点が低下することにより、高温割れが発生し易くなる。そのため、特許文献1では、初層溶接において、低炭素の鋼材や溶接金属からなる異物・異材のスペーサ上に溶接することにより、母材からのCピックアップの影響を緩和して、高温割れを防止することが開示されている。
特開昭58−68481号公報
ここで、高Cr系CSEF鋼は、C含有量については、例えばASTM A182 F91で0.08〜0.12質量%、すなわち最大でも0.12質量%であり、従来の1.25Cr−0.5Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo−V鋼と同程度である。しかし、高Cr系CSEF鋼と共材で構成される溶接ワイヤは、1.25Cr−0.5Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo−V鋼よりも電気抵抗が高く、そのためジュール発熱が高く、溶接電流の大きさが同じであればより溶融し易い。したがって、高Cr系CSEF鋼の溶接においては、溶着金属の量(溶着量)が多くなり、さらに溶着金属の凝固収縮量が1.25Cr−0.5Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo−V鋼よりも大きいため、高温割れの抑制がいっそう困難である。
また、厚板を高能率で溶接するためには、溶接入熱を上げる、すなわち溶接電流を大きく、アーク電圧を高くして、溶接速度を低めにすることが有効である。しかし、溶接入熱を上げると、特に狭開先ではビード形状がなし型となり易く、高温割れの発生リスクが高くなる。ここで問題となる高温割れは、溶着金属中に含まれるP,S,Si,Nb等の低融点化合物が凝固時にデンドライト間やオーステナイト結晶粒界に偏析し、溶接収縮ひずみが加わって発生する割れである。そのため、高温割れの抑制策の一つとして、ワイヤの成分、具体的には、P,S等の不純物を超高純度(EHP:Extra High Purity)溶解で100ppm以下に抑えることは効果的である。しかしながら、超高純度溶解は、電子ビーム溶解や専用の特殊炉壁耐火材を使わざるを得ないことから経済的に難点がある。このため、一般的な不純物レベルでも、高温割れの発生を抑制できる技術が求められている。
さらに、特許文献1に記載されたスペーサを適用するには、バタリング、あるいはスペーサの据付け、固定、精度管理等の多大な工程・労力が発生することになる。また、成分が母材と大きく異なる異物・異材をスペーサとするために、溶接部も含め、要求される継手性能の保安水準を満足しない虞がある。特許文献1においては、溶接後に裏当金をガウジングで除去すると記載されているが、溶接されたスペーサはもちろんその溶接金属を除去することは記載されていない。すなわち特許文献1は、異物・異材となるスペーサの継手内部への残留を許容する用途を対象にしていると考えられる。したがって、異物・異材をスペーサとする特許文献1の溶接方法は、生産性・経済性・継手性能の保安水準という視点から、火力発電ボイラ等には適用困難である。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接において、工程・労力の増大によらずに初層高温割れの発生を抑制できる初層サブマージアーク溶接方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究した結果、開先に所定の成分の充填剤を充填することにより、初層の溶接金属の融点降下を抑制することに想到した。
すなわち、本発明に係る初層サブマージアーク溶接方法は、高Cr系CSEF鋼を母材とし、C:0.10質量%以下、Si:0.50質量%以下、Mn:1.50質量%以下、P:0.025質量%以下、S:0.025質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる金属粉末またはカットワイヤを、前記母材の開先内へ散布高さ1.0〜4.0mmに充填して溶接することを特徴とする。
かかる方法によれば、C含有量を所定値以下に制御した充填剤で母材希釈が抑えられ、溶接金属の融点が低下することなく、初層高温割れが防止される。
本発明に係る初層サブマージアーク溶接方法によれば、高Cr系CSEF鋼の溶接において、工程・労力の増大によらずに初層高温割れの発生を抑制することができる。
本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるシングル方式の溶接チップの状態を示す正面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるシングル方式の溶接チップの状態を示す正面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるシングル方式の溶接チップの状態を示す正面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるタンデム方式の溶接チップの状態を示す正面図である。 本発明に係る初層サブマージアーク溶接方法における母材の狭開先の形状および初層溶接金属を示す断面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法における母材の狭開先の形状およびタンデム方式による溶接金属の積層要領を示す断面図である。 本発明に係る初層サブマージアーク溶接方法における溶接前の充填剤の散布状態を示す断面図であり、図5の部分拡大図に相当する。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法に用いる溶接チップの正面図である。 図8に示す溶接チップの側面図である。 図8に示す溶接チップの、内挿される溶接ワイヤが突出する側の端面図で、図9に対する下面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるシングル方式の溶接チップの状態を示す正面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるシングル方式の溶接チップの状態を示す正面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるシングル方式の溶接チップの状態を示す正面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるシングル方式の溶接チップの状態を示す正面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるシングル方式の溶接チップの状態を示す正面図である。 本発明に係るサブマージアーク溶接方法におけるシングル方式の溶接チップの状態を示す正面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る初層サブマージアーク溶接方法(以下、本発明に係る初層溶接方法)は、高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接における初層溶接の方法であり、シングル、タンデムのいずれの方式にも適用される。シングルサブマージアーク溶接は、例えば図1〜3に示すように、母材10を、溶接ワイヤ12が内挿された溶接チップ11を用いて、アーク溶接で溶接するものであり、1台の溶接チップ11の角度(チップ角度)を溶接方向に対して前傾(図1)または後傾(図2)させ、あるいは垂直(図3)にする。一方、タンデムサブマージアーク溶接は、図4に示すように、溶接ワイヤ12a,12bがそれぞれ内挿された先行極(溶接チップ)11aおよび後行極(溶接チップ)11bの2台を同時に用いて溶接するものである。さらにサブマージアーク溶接は、シングル、タンデムの各方式共に、図示しない溶接フラックスを用いる。また、チップ/母材間距離、チップ形状、チップ角度については、後記にて説明する。
本発明に係る初層溶接方法は、1パス目、すなわち初層溶接に適用されるサブマージアーク溶接方法である。初層溶接により、図5に示すように、開先内の溝底に初層溶接金属21が凝固する。その後、パスを繰り返すことにより、図6に示すように新たな溶接金属22が上へと(図中の白抜き矢印方向に)積層される。
(母材)
本発明に係る初層溶接方法は、母材(被溶接材)として高Cr系CSEF鋼を対象とするものである。高Cr系CSEF鋼には各種の規格があり、例えば、ASTM規格やASME規格に規定されたSA387Gr.T91、EN規格(European standards:欧州規格)に規定されたX10CrMoVNb9−1、火力技術基準に規定された火SFVAF28、火SFVAF29、火STBA28、火STPA28、火SCMV28がある。
母材の成分としては、C:0.07〜0.14質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.70質量%以下、Ni:0.50質量%以下、Cr:8.00〜11.50質量%、Mo:0.25〜1.10質量%、V:0.15〜0.35質量%、Nb:0.04〜0.10質量%、P:0.025質量%以下、S:0.015質量%以下、N:0.03〜0.10質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものが好ましく、さらに、Cu:1.70質量%以下、B:0.060%以下、W:2.50%以下、Co:3.0質量%以下を含有してもよい。
本発明に係る初層溶接方法においては、前記成分の母材に、後記の溶接ワイヤおよび溶接フラックスを組み合わせることが好ましい。さらに本発明に係る初層溶接方法においては、図7に示すように、以下の所定成分の充填剤21fを開先内へ所定の散布高さhに充填して溶接する。
(充填剤)
本発明に係る初層溶接方法は、C:0.10質量%以下、Si:0.50質量%以下、Mn:1.50質量%以下、P:0.025質量%以下、S:0.025質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる金属粉末またはカットワイヤを充填剤として、母材の開先内へ散布高さ1.0〜4.0mmに充填して溶接する。以下、充填剤について、さらに詳細に説明する。
(C:0.10質量%以下)
Cは、溶着金属において、融点を低下させて高温割れを引き起こす。溶着金属の融点降下を防止するために、充填剤のC含有量は母材希釈も加味して0.10質量%以下とし、好ましくは0.05質量%以下である。
(Si:0.50質量%以下)
Siは、溶融金属の粘性を調整してビード形状を整える作用を有する。一方で、0.50質量%を超えると、スラグ焼付きが発生してスラグ除去が困難となる。したがって、充填剤のSi含有量は0.50質量%以下とし、好ましくは0.30質量%以下である。
(Mn:1.50質量%以下)
Mnは、溶融金属の粘性を調整してビード形状を整える作用を有する。一方で、1.50質量%を超えると、スラグ焼付きが発生してスラグ除去が困難となる。したがって、充填剤のMn含有量は1.50質量%以下とし、好ましくは1.30質量%以下である。
(P:0.025質量%以下、S:0.025質量%以下)
P,Sはそれぞれ、溶着金属において、融点を低下させて高温割れを引き起こす。したがって、充填剤のP,Sの各含有量は0.025質量%以下とし、好ましくは0.025質量%未満である。
充填剤は、不可避的不純物として、Cu,Cr,Mo,Ni,Nb,V,W,Co,N等を各0.5質量%以下、合計で0.8質量%以下含有していてもよい。
(散布高さ:1.0〜4.0mm)
充填剤は、散布高さが1.0mm未満では、充填剤の量が不足し、初層の溶着金属のCの濃化を抑制することができず、結果、溶着金属のC濃度が過剰となって、高温割れが抑制できない。したがって、充填剤は、散布高さを1.0mm以上とし、好ましくは1.5mm以上である。一方、充填剤を散布高さ4.0mmを超えて充填すると、充填剤の量が過剰になって、溶接ビード形状が凸ビードとなり、融合不良やスラグ巻込みを引き起こす。したがって、充填剤は、散布高さを4.0mm以下とし、好ましくは3.5mm以下である。
充填剤は、前記成分の金属粉末、カットワイヤのいずれを適用してもよい。金属粉末は、平均粒径が1mm以下であることが好ましく、カットワイヤは、ワイヤ径および長さ(カット長)がそれぞれ1mm以下であることが好ましい。
なお、充填剤による溶接部(図5に示す初層溶接金属21)は、2パス目以降も含むすべての溶接が完了した後に、要求される継手性能の保安水準に応じて除去されてもよい。除去方法は、ガウジングや機械加工等、公知の方法を適用することができる。
(溶接ワイヤ)
本発明に係る初層溶接方法に使用する溶接ワイヤは、C:0.03〜0.13質量%、Si:0.05〜0.50質量%、Mn:0.50〜2.20質量%、Ni:0.20質量%を超え1.00質量%以下、Cr:8.00〜10.50質量%、Mo:0.20〜1.20質量%、V:0.05〜0.45質量%、Nb:0.020〜0.080質量%、P:0.015質量%以下、S:0.010質量%以下、N:0.02〜0.08質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものが好ましく、さらに、Cu:1.70質量%以下、B:0.005質量%以下、W:2.0質量%以下、Co:3.0質量%以下を含有してもよい。
Cは、Nと共に、Cr,Mo,W,V,Nb,Bと結合して各種炭窒化物を析出し、クリープ破断強度を向上させる効果がある。この効果を十分に得るために、溶接ワイヤのC含有量は0.03質量%以上が好ましく、0.04質量%以上がより好ましい。一方、Cを過剰に添加すると、具体的にはC含有量が0.13質量%を超えると、耐高温割れ性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのC含有量は0.13質量%以下が好ましく、0.12質量%以下がより好ましい。
Siは、脱酸剤として作用し、溶着金属中の酸素量を低減して溶接金属の靱性を改善する効果がある。この効果を十分に得るために、溶接ワイヤのSi含有量は0.05質量%以上が好ましく、0.05質量%超がより好ましい。一方、Siはフェライト生成元素であり、過剰に添加すると、具体的にはSi含有量が0.50質量%を超えると、溶接金属におけるδ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのSi含有量は0.50質量%以下が好ましく、0.48質量%以下がより好ましく、0.45質量%以下がさらに好ましい。
Mnは、脱酸剤として作用し、溶着金属中の酸素量を低減して靱性を改善する効果がある。また、Mnは、オーステナイト生成元素であり、溶接金属におけるδ−フェライトの残留による靱性劣化を抑制する効果がある。これらの効果を十分に得るために、溶接ワイヤのMn含有量は0.50質量%以上が好ましく、0.55質量%以上がより好ましい。一方、Mn含有量が2.20質量%を超えても、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのMn含有量は2.20質量%以下が好ましく、2.15質量%以下がより好ましい。
Niは、Mnと同様にオーステナイト生成元素であり、溶接金属におけるδ−フェライトの残留による靱性劣化を抑制する効果がある。この効果を十分に得るために、溶接ワイヤのNi含有量は0.20質量%超が好ましく、0.25質量%以上がより好ましく、0.30質量%以上がさらに好ましい。一方、Ni含有量が1.00質量%を超えても、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのNi含有量は1.00質量%以下が好ましく、0.95質量%以下がより好ましい。
さらに、MnおよびNiの合計含有量が1.50質量%を超えると、溶接金属の靱性が劣化すると共に、溶着金属のAc1変態点が低下して高温焼戻しが不可能となり組織の安定化処理ができなくなる。したがって、溶接ワイヤのMnおよびNiの合計含有量は、1.50質量%以下がさらに好ましい。
Crは、本発明に係る初層溶接方法の被溶接材(母材)である高Cr系CSEF鋼の主要元素であり、耐酸化性および高温強度を確保するために不可欠な元素である。この効果を十分に得るために、溶接ワイヤのCr含有量は8.00質量%以上が好ましく、8.05質量%以上がより好ましい。一方、Crはフェライト生成元素であり、過剰に添加すると、具体的にはCr含有量が10.50質量%を超えると、δ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのCr含有量は10.50質量%以下が好ましく、10.45質量%以下がより好ましい。
Moは、固溶強化元素であり、クリープ破断強度を向上させる効果がある。この効果を十分に得るために、溶接ワイヤのMo含有量は0.20質量%以上が好ましく、0.22質量%以上がより好ましい。一方、Moはフェライト生成元素であるため、過剰に添加すると、具体的には、Moを含有量が1.20質量%を超えると、溶接金属におけるδ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのMo含有量は1.20質量%以下が好ましく、1.18質量%以下がより好ましい。
Vは、析出強化元素であり、炭窒化物として析出してクリープ破断強度を向上させる効果がある。この効果を十分に得るために、溶接ワイヤのV含有量は0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましい。一方、Vはフェライト生成元素でもあり、過剰に添加すると、具体的には、V含有量が0.45質量%を超えると、溶接金属におけるδ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのV含有量は0.45質量%以下が好ましく、0.40質量%以下がより好ましい。
Nbは、固溶強化および窒化物として析出してクリープ破断強度の安定化に寄与する元素である。この効果を十分に得るために、溶接ワイヤのNb含有量は0.020質量%以上が好ましく、0.022質量%以上がより好ましい。一方、Nbはフェライト生成元素でもあり、過剰に含有すると、具体的には、Nb含有量が0.080質量%を超えると、溶接金属におけるδ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのNb含有量は0.080質量%以下が好ましく、0.078質量%以下がより好ましい。
PおよびSは、それぞれ高温割れ感受性を高める元素である。P含有量が0.015質量%を超える場合、または、S含有量が0.010質量%を超える場合、耐高温割れ性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのP含有量は0.015質量%以下に規制することが好ましく、0.010質量%以下がより好ましい。また、溶接ワイヤのS含有量は0.010質量%以下に規制することが好ましく、0.009質量%以下がより好ましい。
Nは、Cと共に、Cr,Mo,W,V,Nb,Bと結合して各種炭窒化物を析出し、クリープ破断強度を向上させる効果がある。この効果を十分に得るために、溶接ワイヤのN含有量は0.02質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましい。一方、Nを過剰に含有すると、具体的には、N含有量が0.08質量%を超えると、スラグ剥離性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのN含有量は0.08質量%以下が好ましく、0.07質量%以下がより好ましい。
Cuは、オーステナイト生成元素であり、溶接金属におけるδ−フェライトの残留による靱性劣化を抑制する効果がある。一方、過剰に含有すると、具体的には、Cu含有量が1.70質量%を超えると、高温割れを引き起こす。したがって、溶接ワイヤのCu含有量は1.70質量%以下が好ましく、1.00質量%以下がより好ましく、0.50質量%以下がさらに好ましい。Cuの含有方法は、溶接ワイヤ表面へのメッキでも構わない。
Bは、微量含有により炭化物を分散・安定化させ、クリープ破断強度を高める効果がある。一方、過剰に含有すると、具体的には、B含有量が0.005質量%を超えると、高温割れを引き起こす。したがって、溶接ワイヤのB含有量は0.005質量%以下が好ましく、0.003質量%以下がより好ましく、0.0015質量%以下がさらに好ましい。
Wは、マトリックスの固溶強化と微細炭化物析出によってクリープ破断強度の安定化に寄与する元素である。一方、Wはフェライト生成元素でもあるため、過剰に含有すると、具体的には、W含有量が2.0質量%を超えると、溶接金属におけるδ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのW含有量は2.0質量%以下が好ましく、1.8質量%以下がより好ましく、1.7質量%以下がさらに好ましい。
Coは、δフェライトの残留を抑制する元素である。一方、Coは過剰に含有すると、具体的には、Co含有量が3.0質量%を超えると、Ac1点を下げるため、高温焼戻しが不可能となり組織の安定化処理ができなくなる。したがって、溶接ワイヤのCo含有量は3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.8質量%以下がさらに好ましい。
溶接ワイヤは、不可避的不純物として、Ti,Al等を各0.02質量%以下、合計で0.04質量%以下含有していてもよい。
溶接ワイヤは、ワイヤ径が3〜5mmであることが好ましい。ワイヤ径が3mm未満では、十分な溶着量を得ることができず、溶接能率が損なわれる。一方、ワイヤ径が5mmを超えると、溶着量が過剰になり、本発明に係る初層溶接方法であっても、初層の高温割れを抑制することが困難である。
(溶接フラックス)
本発明に係る初層溶接方法に使用する溶接フラックスは、次式で表される塩基度が1.0〜3.3であることが好ましい。
塩基度=[CaF2+CaO+MgO+SrO+Na2O+Li2O+1/2(MnO+FeO)]/[SiO2+1/2(Al23+TiO2+ZrO2)]
ここで、上式における各化合物は、当該化合物の溶接フラックスにおける含有量(質量%)を表す。
溶接フラックスの塩基度が1.0未満では、溶接金属中の酸素量が十分に低減せず、溶接金属の靭性が低下する。したがって、溶接フラックスは、塩基度が1.0以上であることが好ましく、1.3以上がより好ましい。一方、溶接フラックスの塩基度が3.3を超えると、ビードの外観や形状が不良となり易い。したがって、溶接フラックスは、塩基度が3.3以下であることが好ましく、3.2以下がより好ましい。なお、本発明に係る初層溶接方法に使用する溶接フラックスは、塩基度がこの範囲を満足するものであれば、当該溶接フラックスを構成する化合物の各含有量等その他の構成は、特に規定されるものではない。
〔シングルサブマージアーク溶接条件〕
本発明に係る初層溶接方法は、シングル溶接の場合には、以下の条件を適用することが好ましい。
(チップ/母材間距離)
チップ/母材間距離は、図1〜3、図11〜16に示すように、溶接ワイヤ12が溶接チップ11から最終的に突出する部分と、母材10との間の距離Lである。前記したように、母材と共材の、すなわち高Cr系CSEF鋼からなる溶接ワイヤは、低Cr系CSEF鋼と比較して電気抵抗が高く、そのためジュール発熱量が大きく、同じ大きさの溶接電流であっても溶着量が多くなる。ここで、ジュール発熱量はチップ/母材間距離が長くなるにしたがい大きくなる。具体的には、チップ/母材間距離が40mmを超えると、溶着量が過剰となる。一方、チップ/母材間距離が20mm未満では、チップ先端がアークによって溶損する危険性がある。したがって、チップ/母材間距離は、20〜40mmの範囲に管理することが好ましく、25〜35mmの範囲がより好ましい。
(チップ形状)
チップ形状は、図1〜3に示す直管状、図8〜10に示すベンド角材状、あるいは特公昭62−58827号公報のFig.3bに示されるような形状でもよく、溶接ワイヤ送給性と給電位置安定化を確保する観点から適宜選択される。特に、図8〜10に示すような、溶接ワイヤ12を突出させる(図11〜16参照)チップ先端部(図8、図9における下端)がワイヤ送給を阻害しない範囲で曲げられたベンド角材状チップでは、給電位置を安定化して、結果としてワイヤ送給速度を安定化する。
(チップ角度)
チップ角度は、図1〜3、図11〜16に示すように、母材10の表面に対して垂直な線と、溶接ワイヤ12が溶接チップ11から最終的に突出する部分での軸線とがなす角度を指す。チップ角度は、溶接アークによるワイヤの加熱度合を左右し、結果として溶接ワイヤ送給速度を増減させる。詳しくは、同じ溶接電流、同じチップ/母材間距離Lであれば、チップ角度が前進角β(図2、図12、図15参照)の方が後退角α(図1、図11、図14参照)よりもワイヤ送給速度が増加する。このため、チップ角度は、後退角αで60°までの範囲、前進角βで60°までの範囲に管理することが、ワイヤ送給速度を安定化させるために好ましい。
(溶接ワイヤの送給速度V:50〜120g/min)
溶接ワイヤの送給速度が50g/min未満では、溶接電流が低過ぎてアークが不安定となり、溶込不良が発生し易い。したがって、溶接ワイヤの送給速度は50g/min以上が好ましく、55g/min以上がより好ましい。一方、溶接ワイヤの送給速度が120g/minを超えると、溶着量が過剰になって高温割れが発生し易く、また、スラグ剥離性も劣化する。したがって、溶接ワイヤの送給速度は120g/min以下が好ましく、115g/min以下がより好ましい。
(溶接速度v:20〜60cm/min)
溶接速度が20cm/min未満では、溶着量が過剰になって高温割れが発生し易い。したがって、溶接速度は20cm/min以上が好ましく、25cm/min以上がより好ましい。一方、溶接速度が60cm/minを超えると、溶融金属の供給が間に合わず、ビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻きが発生し易い。したがって、溶接速度は60cm/min以下が好ましく、55cm/min以下がより好ましい。
(単位溶接長当りの溶着量:1.8〜4.5g/cm)
単位溶接長当りの溶着量は、溶接ワイヤの送給速度/溶接速度である。単位溶接長当りの溶着量が1.8g/cm未満では、溶着量が不足してビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻込みが発生する。したがって、単位溶接長当りの溶着量は1.8g/cm以上が好ましく、2.0g/cm以上がより好ましい。一方、単位溶接長当りの溶着量が4.5g/cmを超えると、溶着量が過剰になって溶融金属の凝固収縮量が過大かつ溶込み形状もなし形になるため、凝固収縮のかかる方向が最終凝固部に対し垂直となって高温割れが発生し易い。したがって、単位溶接長当りの溶着量は4.5g/cm以下が好ましく、4.3g/cm以下がより好ましい。
溶接電流およびアーク電圧は、前記の溶接ワイヤ送給速度を適正範囲にコントロールする一手段として調整される。電源特性は、垂下特性、定電圧特性いずれでも構わない。ここで、垂下特性とは、アーク長が変動しても、電流の変化が少なく安定した溶接ができる電源の特性のことである。具体的には、アーク長が長くなった場合は、一時的にワイヤの送給速度を速くし、アーク長が短くなった場合はワイヤの送給速度が遅くすることによって、電流を一定に安定化する。電源極性は、DCEP、ACいずれを適用してもよい。
〔タンデムサブマージアーク溶接条件〕
本発明に係る初層溶接方法は、タンデム溶接においても適用可能であり、以下の条件を適用することが好ましい。なお、チップ形状は、シングル溶接と同様、図4に示す直管状、図8〜10に示すベンド角材状、あるいは特公昭62−58827号公報のFig.3bに示されるような形状から適宜選択される。
(チップ/母材間距離)
チップ/母材間距離は、図4に示すように、シングル溶接と同様、溶接ワイヤ12a(12b)が溶接チップ11a(11b)から最終的に突出する部分と、母材10との間の距離Lであり、20〜40mmの範囲が好ましい。なお、チップ/母材間距離は、先行極11aと後行極11bとで同じでなくてもよい。また、溶接チップ11a,11bのチップ形状が図8〜10に示すベンド角材状の場合のチップ/母材間距離は、図11〜16において溶接チップ11と母材10の間の距離Lで示す通りである。
(チップ角度)
チップ角度は、図4に示すように、シングル溶接と同様、母材10の表面に対して垂直な線と、溶接ワイヤ12a(12b)が溶接チップ11a(11b)から最終的に突出する部分での軸線とがなす角度α(β)を指す。先行極11a、後行極11b共に、チップ角度(後退角α、前進角β)は±60°(後退角60°から前進角60°まで)の範囲に管理することが、ワイヤ送給速度を安定化させるために好ましい。なお、溶接チップ11a,11bのチップ形状が図8〜10に示すベンド角材状の場合のチップ角度α,βは、図11〜16において溶接チップ11のチップ角度α,βで示す通りである。
(溶接ワイヤの送給速度 先行極VL:45〜90g/min、後行極VT:60〜110g/min)
溶接ワイヤの送給速度が、先行極で45g/min未満、または後行極で60g/min未満では、溶接電流が小さすぎてアークが不安定となり、溶込不良が発生し易い。一方、溶接ワイヤの送給速度が、先行極で90g/minを超える、または後行極で110g/minを超えると、溶着量が過剰になって高温割れが発生し易く、また、スラグ剥離性も悪化する。なお、タンデム溶接においては、先行極の溶接ワイヤの送給速度を後行極よりも遅くすることが好ましい。先行極による溶着金属量がより少ないことで、ビード深さを小さく、ビード幅を大きくでき、高温割れし難くなる。したがって、溶接ワイヤの送給速度は、先行極で45〜90g/min、後行極で60〜110g/minの範囲とすることが好ましい。
(溶接速度v:30〜55cm/min)
溶接速度が30cm/min未満では、溶着量が過剰になって高温割れが発生し易い。一方、溶接速度が55cm/minを超えると、溶融金属の供給が間に合わず、ビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻きが発生し易い。したがって、溶接速度は30〜55cm/minの範囲とすることが好ましい。
(単位溶接長当りの溶着量:2.8〜3.8g/cm)
単位溶接長当りの溶着量は、(先行極の溶接ワイヤの送給速度+後行極の溶接ワイヤの送給速度)/溶接速度である。単位溶接長当りの溶着量が2.8g/cm未満では、溶着量が不足して溶接効率が低下する。一方、単位溶接長当りの溶着量が3.8g/cmを超えると、溶着量が過剰になって溶融金属の凝固収縮量が過大かつ溶込み形状もなし形になるため、凝固収縮のかかる方向が最終凝固部に対し垂直となって高温割れが発生し易い。したがって、単位溶接長当りの溶着量は2.8〜3.8g/cmの範囲とすることが好ましい。
電源特性は、シングル溶接と同様、垂下特性、定電圧特性いずれでも構わない。また、極性も、DCEP、ACいずれを適用してもよい。また、V結線、スコット結線を適用してもよい。
本発明に係る初層溶接方法は、板厚が150mm未満の母材に適用してもよい。また、X開先への適用を排除するものではない。X開先に適用する場合は、裏側への溶接において、初層溶接を、表側と同様に、充填剤を開先内に充填して行う。また、本発明に係る初層溶接方法により初層溶接した後の2パス目以降は、充填剤を除いて前記溶接条件と同様に、または異なる条件でサブマージアーク溶接にて溶接することができ、あるいはガスシールドアーク溶接等の溶接方法を適用してもよい。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではなく、請求項に示した範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
〔試験体作製〕
表1に示す成分の高Cr系CSEF鋼からなる、板厚tが250mmの板材を用意し、機械加工にて、開先の溝底の曲率半径Rが10mm、開先角度θが4°の狭開先を形成して母材とした(図5参照)。また、表4に示す形状(金属粉末、カットワイヤ)および成分の充填剤を用意し、母材の開先内に、表4に示す散布高さh(図7参照)に充填した。なお、充填剤について、金属粉末は平均粒径75μm、カットワイヤはワイヤ径1mm、カット長1mmである。
表2に示す成分でワイヤ径4mmの溶接ワイヤ、および表3に示す粒度および成分の溶接フラックスを用いて、母材の開先に、先端曲がりチップ(図8〜10参照)でサブマージアーク溶接を以下の条件で1層1パス行って、図5に示す試験体20を作製した。
(溶接条件)
チップ/母材間距離:30mm
チップ角度:0°
電極特性:垂下特性
電極極性:ACシングル
溶接姿勢:下向き
溶接電流:400A
溶接電圧:31V
溶接ワイヤの送給速度:80g/min
溶接速度:40cm/min
単位溶接長当りの溶着量:2.0g/cm
Figure 2016022502
Figure 2016022502
Figure 2016022502
〔評価〕
(溶接部の健全性)
作製した試験体の、溶接ビードのスタート、エンド部を除外した300mmの範囲で、50mmごとの断面でマクロ組織を目視にて観察して、溶接欠陥(スラグ巻込み、スラグ剥離性、スラグ焼付き、融合不良、溶込み不良)の有無を観察した。なお、スラグ剥離性は、溶接終了後のビード表面に付着したフラックスをハンマーで3回叩き、スラグが容易に剥離したものを合格、剥離しなかったものを不合格とした。いずれの溶接欠陥のないものを表4に「○」で示し、溶接欠陥の発生したものはその内容を表4に示す。
前記溶接欠陥観察後に、ビード形状を目視にて観察した。詳しくは、スラグ剥離性の評価にてスラグが剥離した跡の表面外観を観察し、ビード形状が安定なものを合格として「○」で、不安定なものを不合格として「×」で、表4に示す。
(耐高温割れ性)
試験体を、溶接ビードのスタート部およびエンド部を除く長さ300mmの範囲で、50mm毎に5箇所を切断して、断面のマクロ組織を観察した。5つの断面すべてに割れの発生していないものを合格として「○」で、1つ以上で割れの発生したものを不合格として「×」で、表4に示す。
Figure 2016022502
表4に示すように、試験体No.1〜3は、充填剤の成分および開先の散布高さが本発明の範囲内であり、溶接部の健全性および耐高温割れ性が良好であった。
これに対して、試験体No.4は、充填剤のC含有量が過剰なため、溶接金属のCの濃化により高温割れが発生した。試験材No.5は充填剤のSi含有量が、試験材No.6は充填剤のMn含有量がそれぞれ過剰なため、スラグ焼付きが発生した。試験材No.7は充填剤のP含有量が、試験材No.8は充填剤のS含有量がそれぞれ過剰なため、高温割れが発生した。
試験体No.9は、充填剤の散布高さが過剰なため、溶接ビード形状が凸ビードとなり、そのために融合不良およびスラグ巻込みが発生した。試験体No.10は、充填剤の散布高さが不足したため、溶接金属のCの濃化を抑制することができず、高温割れが発生した。
10 母材(被溶接材)
11 溶接チップ
11a 先行極(溶接チップ)
11b 後行極(溶接チップ)
12,12a,12b 溶接ワイヤ
20 試験体
21 初層溶接金属
21f 充填剤
22 溶接金属

Claims (1)

  1. 高Cr系CSEF鋼を母材とする初層サブマージアーク溶接方法であって、
    C:0.10質量%以下、Si:0.50質量%以下、Mn:1.50質量%以下、P:0.025質量%以下、S:0.025質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる金属粉末またはカットワイヤを、前記母材の開先内へ散布高さ1.0〜4.0mmに充填して溶接することを特徴とする初層サブマージアーク溶接方法。
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