JP2016020205A - 乗用車用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Abstract
Description
ラジアルカーカスを適用したタイヤは、バイアスタイヤに比較してタイヤクラウン部の剛性が高いため、耐磨耗性に優れている。また、クラウン部の剛性が高く、タイヤ構成部材間での動きの伝播が抑制されるため、転がり抵抗が小さくなる。このため、燃費がよく、コーナリングパワーも高いという特徴がある。
また、タイヤの幅広化によって、タイヤの接地面積を増加させて、コーナリングパワーを増大させることができる。
近年は、環境問題への関心の高まりにより、低燃費性への要求が厳しくなってきている。特に、将来に向けて実用化されつつある電気自動車は、タイヤ車軸回りにタイヤを回転させるトルクを制御するためのモーターなどの駆動部品を収容するスペースの確保が必要となることから、タイヤ回りのスペース確保の重要性は高まりつつある。
その結果、ラジアルタイヤにおいて、タイヤの断面幅Wと外径Lとを適切な比の下に規制することが所期した諸特性の向上に極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1) 一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅Wと外径Lとの比W/Lが0.25以下であり、
前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側にベルト層を有し、
タイヤのエアボリュームは、15000cm3以上であることを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
前記補強部材は、前記ベルト層のうちタイヤ幅方向長さが最大のベルト層の50〜100%のタイヤ幅方向長さであることを特徴とする、請求項3に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
前記補強部材は、タイヤ幅方向最外側主溝に対応する位置に配置したことを特徴とする、上記(3)に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
まず、発明者は、ラジアルタイヤのタイヤ断面幅W(図1参照)を従前に比し狭くすることによって、車両スペースの確保が可能であること、特にタイヤの車両装着内側近傍に駆動部品の設置スペースが確保されることに着目した(図2参照)。
さらに、タイヤ断面幅Wを狭くすると、タイヤを前方から見た面積(以下、前方投影面積と称する)が減少するため、車両の空気抵抗値(Cd値)が低減されるという効果がある。
しかしながら、接地部分の変形が大きくなるため、同じ空気圧の場合、タイヤの転がり抵抗値(RR値)が大きくなるという問題がある。
以下、比W/Lの好適範囲を導出するに至った実験結果について、詳しく説明する。
供試タイヤとして、慣例に従い、図3に示すような、一対(図3では片側のみ)のビードコア1間をトロイダル状に跨り、ラジアルに配列した、カーカス2を備えた乗用車用空気入りラジアルタイヤを、タイヤサイズを変えて複数試作した。
なお、タイヤサイズに関しては、JATMA(日本のタイヤ規格)、TRA(アメリカのタイヤ規格)ETRTO(欧州のタイヤ規格)等の従来の規格に捉われずに、これらの規格外のタイヤサイズも含めて、幅広く検討した。
ここで、図示例のタイヤにおいて、カーカス2は有機繊維で構成され、カーカス2のクラウン部のタイヤ径方向外側には複数の、図示例では2層のベルト層からなるベルト3、トレッド4が順に配置されている。図示例の2層のベルト層は、タイヤ赤道面CLに対して20〜40°の角度で傾斜した、傾斜ベルト層であり、層間でコードが交差する配置となっている。また、ベルト層のタイヤ径方向外側には、タイヤ赤道面CLに沿って延びる有機繊維からなるベルト保護層5が配置されている。さらに、トレッド4には、複数の、図示例で半部に1つのタイヤ周方向に延びる主溝6が設けられている。
以上のタイヤ構造を基本として、種々の断面幅及び外径のタイヤを多数試作した。
また、試験の評価基準となる従来タイヤとして、上記の慣例に従う構造を有する、タイヤサイズ195/65R15のタイヤを用意した。このタイヤサイズのタイヤは、最も汎用的な車両で使用され、タイヤ性能を比較するのに最も適している。
ここで、各タイヤの諸元を表1に示す。
<空気抵抗値(Cd値)>
実験室にて、上記各タイヤを排気量1500ccの車両に装着し、100km/hに相当する速度で送風したときの空気力を車輪下にある床置き天秤を用いて測定し、従来タイヤを100とする指数によって評価した。数値が小さいほど空気抵抗は小さい。
<転がり抵抗値(RR値)>
上記各タイヤをリムに組み付け、空気圧220kPa、負荷荷重3.5kN、ドラム回転速度100km/hの条件にて転がり抵抗を測定した。
評価結果は、従来タイヤを100とする指数にて示した。この指数値が小さいほど転がり抵抗が小さいことを意味する。
各試験結果を表2と図4に示す。
JOC8モード走行による試験を行った。評価結果は、従来例タイヤの評価結果を100とした指数で表し、指数が大きい方が、燃費が良いことを表している。
<居住性>
1.7m幅車両にタイヤを装着した際のリアトランク幅を計測した。評価結果は、従来例タイヤの評価結果を100とした指数で表し、指数が大きい方が、居住性が良いことを表している。
試験結果を以下の表3に示す。
発明者は、斯くの如くして、乗用車用空気入りラジアルタイヤにおいて、比W/Lを0.25以下とすることで、車両の居住性を向上させつつ、車両の空気抵抗値及びタイヤの転がり抵抗値を共に低減して、燃費性を向上させることができることを見出したものである。
そこで、次に、本発明のラジアルタイヤにおいて、転がり抵抗の増大や、耐磨耗性、コーナリングパワーの低下を防止するための、タイヤ構造について説明する。
以下、図5(a)(b)に示す実施形態に従って説明する。
図5(a)は、本発明の一実施形態のラジアルタイヤのタイヤ幅方向の概略断面図である。図5(a)は、タイヤ赤道CLを境界とした半部のみを示している。なお、図5(a)に示すタイヤは、タイヤ断面幅Wとタイヤ外径Lとの比W/Lが0.25以下である。
図5(a)に示すタイヤの図3に示すタイヤとの違いは、図5(a)に示すタイヤは、カーカス2とベルト3との間に、タイヤ幅方向に延びるコードからなり、タイヤ幅方向長さが、複数のベルト層のうちタイヤ幅方向長さが最大であるベルト層の50〜100%である、補強部材7を有している点である。
この補強部材7により、ベルトの面外曲げ剛性が上がるため、バックリング現象を抑制することができ、トレッドの変形を抑制して、タイヤの転がり抵抗値をさらに低減させることができる。このため、燃費性をさらに向上させることができる。
また、バックリング現象の抑制により、耐磨耗性やコーナリングパワーを向上させることもできる。
なお、補強部材7としては、例えばスチールコードをゴム被覆したプライを用いることができる。
図5(b)のタイヤ構造と図5(a)のタイヤ構造との違いは、カーカス2とベルト3との間のタイヤ幅方向に延びる補強部材7aは、タイヤ幅方向最外側主溝6に対応する位置に部分配置している点である。
ここで、「対応する位置」とは、タイヤの非荷重時における、タイヤ幅方向最外側主溝のタイヤ径方向内側に補強部材を配置することをいい、タイヤ幅方向において、補強部材のタイヤ幅方向内側端は、該最外側主溝のタイヤ幅方向内側端に対し、同位置又は内側にあり、且つタイヤ幅方向において、補強部材のタイヤ幅方向外側端は、該最外側主溝のタイヤ幅方向外側端に対し、同位置又は外側にあることをいう。
この補強部材7aは、バックリング現象が特に起こりやすいタイヤ幅方向最外側主溝の対応位置に設けているため、ベルトが変形しやすい箇所での面外曲げ剛性を向上させて、バックリング現象を抑制することができ、トレッドの変形を抑制して、タイヤの転がり抵抗値をさらに低減することができる。このため、燃費性をさらに向上させることができる。
また、バックリング現象の抑制により、耐磨耗性やコーナリングパワーを向上させることもできる。
さらに、タイヤ幅方向最外側主溝の対応位置にのみ補強部材を設けることで、図5(a)の場合と比較して、補強部材の挿入によるタイヤの重量増を軽減することができる。
なお、タイヤ幅方向最外側主溝の対応位置に補強部材を設ける場合は、タイヤ幅方向の長さは、最大幅のベルト層のタイヤ幅方向長さの50%未満であっても良い。
また、補強部材7aとしては、例えばスチールコードからなるプライを用いることができる。
20mm未満であると、補強部材7aが、ベルトの面外曲げ剛性を向上させる効果が十分でなく、40mmより大きいと、タイヤ重量増を抑制する効果が十分でなくなるからである。
ここで、面外曲げ剛性は、以下のように定義する。
すなわち、図6(a)に示すように、補強部材をタイヤ周方向に200mm、タイヤ幅方向25mmの矩形となるようにカットしたサンプルSをつくる。
次いで、図6(b)に示すように、カットした補強部材を支持部材9で支持する。この状態で、矩形の面に垂直な方向から押板(図示せず)によりサンプルSの中央を押圧する。
このときのサンプルSにおける、支持部材9による支持点P、Q間の距離を160(mm)、押圧の力をF(N)、サンプルのたわみ量をA(mm)とする。
ここで、図6(c)に示すように、面外曲げ剛性(N/mm)を、実験的に得られた荷重−たわみ量線図(F−A線図)で、たわみ量が5(mm)となる点における接線の傾きa(N/mm)と定義する。
このとき、上記の補強部材においては、面外曲げ剛性は、6N/mm以上であることが好ましい。
また、図5(a)(b)において、補強部材は、タイヤの内圧や突起入力等に耐えうる強度が求められるため、JIS Z 2241で定義される引張り強さが大きい部材であることが好ましい。
具体的には、JIS Z 2241で定義される引張り強さが1255kPa以上であることが好ましい。
また、以下のコーナリングパワー、耐磨耗性、タイヤ質量を評価する試験を行った。
なお、表4における供試タイヤ3、4、23、26、31、32は、表1〜3における供試タイヤ
3、4、23、26、31、32とそれぞれ同一のタイヤである。また、表4における従来タイヤとは、表1〜3における従来タイヤと同一のタイヤである。
<コーナリングパワー>
フラットベルト式コーナリング試験機において、内圧220kPa、荷重3.5kN、速度100km/hで測定をおこなった。
コーナリングパワーは、供試タイヤ4におけるコーナリングパワーを100として指数で評価した。当該指数が大きいほどコーナリングパワーが大きく好ましい。
<耐磨耗性>
上記各タイヤの内圧を220kPaとした。それからタイヤに荷重3.5kNをかけ、80km/hの速度で30000km走行させるドラム試験を行った。
耐磨耗性の評価は、上記ドラム走行後の残溝量(残溝深さ)を評価することによって行い、供試タイヤ4における耐磨耗性を100とした指数で表す。
<タイヤ質量>
タイヤ質量は、供試タイヤ4の質量を100として指数で表示した(数値が低いほど軽い)。
各試験結果を以下の表5、6に示す。
2 カーカス
3 ベルト
4 トレッド
5 ベルト補強層
6 周方向主溝
7 補強部材
7a 補強部材(最外側主溝対応位置)
9 支持部材
P 平面上の1点
Q 平面上の1点
R 2点間距離(mm)
A 押し込み量(mm)
S サンプル
W タイヤ断面幅
L タイヤ外径
(1)一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅Wと外径Lとの比W/Lが0.25以下であり、
前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、層間でコードが交差する2層の傾斜ベルト層を有し、
前記ベルト層のタイヤ径方向外側にベルト保護層を有し、
タイヤのエアボリュームは、15000cm3以上であることを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
(9)前記カーカスは、有機繊維で構成されてなる、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
(10)前記2層のベルト層のコードは、タイヤ赤道面に対して20〜40°の角度で傾斜してなる、上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
Claims (8)
- 一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅Wと外径Lとの比W/Lが0.25以下であり、
前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側にベルト層を有し、
タイヤのエアボリュームは、15000cm3以上であることを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。 - 前記比W/Lが0.24以下であることを特徴とする、請求項1に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、タイヤ幅方向に延びるコードからなる補強部材を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記補強部材のタイヤ径方向外側に、複数のベルト層からなるベルト及びトレッドが順に配置され、
前記補強部材は、前記ベルト層のうちタイヤ幅方向長さが最大のベルト層の50〜100%のタイヤ幅方向長さであることを特徴とする、請求項3に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。 - 前記補強部材のタイヤ径方向外側に、複数のベルト層からなるベルト及びトレッドが順に配置され、前記トレッドにタイヤ赤道に沿って延びる複数の主溝が設けられ、
前記補強部材は、タイヤ幅方向最外側主溝に対応する位置に配置したことを特徴とする、請求項3に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。 - 前記補強部材のタイヤ幅方向の長さは、前記タイヤ幅方向最外側主溝の溝幅より20mm以上長いことを特徴とする、請求項5に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記補強部材は、面外曲げ剛性が、6N/mm以上であり、且つJIS Z 2241で定義される引張り強さが1255kPa以上であることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記タイヤのタイヤサイズは、155/55R21、165/55R21、155/55R19、155/70R17、165/55R20、165/65R19、165/70R18、175/55R21、165/55R19、165/70R17、175/55R20、175/65R19、175/80R18、185/55R21、155/50R21、145/50R19、145/55R19、145/60R18のいずれかである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
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