図1に、本発明の液体吐出ヘッドの模式図を示す。液体吐出ヘッドは、基板1と、基板1上に形成された流路形成部材2とを有する。基板1は例えばシリコンで形成されており、基板1を貫通するように供給口3が形成されている。供給口3の開口の両側には、熱作用部である発熱抵抗体4が形成されている。流路形成部材2は、液体の流路や液室を形成しており、樹脂や無機膜で形成されている。流路形成部材2の発熱抵抗体4と対向する位置には、吐出口5が開口している。図1において、発熱抵抗体4と吐出口5との間の領域(部屋)が液室である。図1では、1つの液室の内部に1つの発熱抵抗体4が形成されており、流路形成部材2の発熱抵抗体4に対向する位置に吐出口5が開口している。液体は、供給口3から液室へと供給され、発熱抵抗体4によって吐出のためのエネルギーを与えられる。そして、吐出口5から吐出して記録媒体に着弾し、記録が行われる。
図1の液体吐出ヘッドに関して、基板1を上面から見た図を図2(a)に示す。また、図2(a)のA−A´における断面図を、図2(b)に示す。基板1には、SiO2やSiN等からなる蓄熱層6が形成されており、蓄熱層6上には発熱抵抗体層7が形成されている。発熱抵抗体層7上には、Al、Al−Si、Al−Cu等の金属材料からなる一対の電極配線層8が隙間を空けて形成される。電極配線層8が設けられていない領域が熱作用部17である。熱作用部17は、液室12の内部に形成されており、液体に熱を作用させることで吐出させる部分である。熱作用部17の発熱抵抗体層7が、図1における発熱抵抗体4である。
発熱抵抗体層7及び電極配線層8は、下部保護層9で覆われている。下部保護層9はSiO2やSiN等で形成されており、絶縁層としても機能させることができる。熱作用部17は、電極配線層8の間の発熱抵抗体層7と、その上の下部保護層9とで構成される。電極配線層8は不図示の駆動素子回路ないし外部電源端子に接続され、外部からの電力供給を受ける。発熱抵抗体層7と電極配線層8とは、どちらが上方(基板1から遠い方)にあってもよい。
下部保護層9上には、第1の密着層10及び第2の密着層11が設けられている。第1の密着層10及び第2の密着層11は、Ta等で形成されている。このうち、第1の密着層10は熱作用部17の上部を含む領域に配置され、第2の密着層11は第1の密着層10と分離して液室12の内部の液体に接する部分に配置される。第1の密着層10上の熱作用部17に対応する部分には、第1の被覆層13が設けられる。第1の被覆層13は、液体の発熱に伴う化学的、物理的衝撃から発熱抵抗体を守り、かつクリーニング処理に際し溶出してコゲを除去する役割を持つことが好ましい。第1の被覆層13と流路内電極として用いられる第2の被覆層14とは、基板を介して電気的に接続するような構成ではない。但し、液室12の内部に電解質を含む液体(インク等)が充填されると、この液体を介して電流が流れる。この結果、第1の被覆層13及び第2の被覆層14と溶液との界面で、電気化学反応が発生する。
図2では、第1の被覆層13と液体との間に電気化学反応を生じさせるために、下部保護層9にスルーホール15を形成し、第1の被覆層13と電極配線層8とを第1の密着層10を介して接続させている。電極配線層8は、基板1の端部まで延在し、その先端が外部との電気的接続を行うための外部電極16となっている。また、熱作用部に対応する第1の被覆層13は、流路形成部材2と接することなく形成することが好ましい。これは、電気化学反応により第1の被覆層13が溶出しても、流路形成部材2と、下部保護層9や第1の密着層10との密着性が低下することを抑制するためである。
本発明は、発熱抵抗体を被覆する第1の被覆層13に電圧を印加することで、電気化学反応を生じさせて第1の被覆層13を液体に溶出させる。これにより、第1の被覆層13に堆積したコゲを除去するためのクリーニング処理を行う。ここで、第1の被覆層13に堆積したコゲを除去する際に、液室の内部の液体の温度を、複数の液室の液室間で選択的に変えることを特徴とする。例えば、発熱抵抗体上のコゲの付着状態に応じて、各発熱抵抗体表面上の温度調整をし、コゲ除去のためのクリーニング処理を行う。
好ましくは、定期的に発熱抵抗体上の第1の被覆層13のコゲ付着状態を確認する。この構成により、各発熱抵抗体上のコゲ付着状態を確認して、コゲの付着が多いと判断すると温度調整の温度を高くしてクリーニング処理を行うことができる。
本発明でのコゲの除去は、記録のための液体の吐出直後には行わないことが好ましい。記録のための液体の吐出直後には、吐出がされた液室内の液体の温度が熱をもった発熱抵抗体によって高められている可能性があるからである。好ましくは、記録のための液体の吐出から30秒以上空けてからコゲの除去を行う。より好ましくは1分以上である。
図3は、液体吐出ヘッドの回路構成を示す回路図である。601は液体吐出ヘッドの基板、602は記録データをラッチするためのラッチ回路である。603はシフトレジスタであり、シフトクロックに同期して、記録データをシリアルで入力して保持する。604は、本例の液体吐出記録装置の制御部より入力される記録データをラッチするためのラッチ信号の入力端子である。606は、ヒートパルス信号の入力端子である。また、基板601には、ラッチ回路602とシフトレジスタ603が構成されている。シフトレジスタ603は、ROMに記憶される後述の選択データをシリアルで入力して保持する。ラッチ回路602は、その選択データをラッチする。AND回路606は、ヒートパルス信号と、記録データ信号と、ブロック信号と、選択データとの論理和をとるAND回路606の出力がハイレベルになると、それに対応するトランジスタアレー607中の発熱抵抗体駆動用のトランジスタがオンとなって、そのトランジスタに接続されている発熱抵抗体608に電流が流されて、それが発熱駆動される。発熱抵抗体608、トランジスタ、及びAND回路606の接続関係については後述する。
次に、以上の構成の液体吐出ヘッドを用いたプリンタ装置の動作の概略を説明する。まず、装置の電源が投入された後、予め測定されている各基板601における液体発泡水準に応じて、各発熱抵抗体に印加されるヒートパルスのパルス幅を決定する。液体発泡水準は、一定の温度条件下において、所定の電圧を印加したときの最小液体吐出パルス値のランク分けによる。ヒートパルスは、プレヒートパルスとメインヒートパルスを含む。この決定した各吐出口毎に対応するヒートパルスの幅データを、シフトクロックに同期してシフトレジスタ603に転送する。その後、電圧信号を出力する。実際に発熱抵抗体に通電を行う際には、後述するように、ROMに記憶されている選択データにしたがって、発熱抵抗体608の駆動条件が選択される。ROMに記憶された上記選択データは、ラッチ回路602にラッチされる。その選択データのラッチは、例えば、プリント装置の最初の起動時等に一度だけ行えばよい。
次に、選択データをROMに記憶させた後の、ヒートパルス信号の生成について説明する。まず、ROMからの信号をフィードバックし、その信号によって選択されたパルスデータに応じて、液体の吐出に適正なエネルギーを発熱抵抗体608に印加するように、ヒートパルスのパルス幅を決定する。また、温度センサの検出値に応じて、プレヒートパルスのパルス幅、その印加タイミングが、プリンタ制御部により決定される。種々の温度条件下においても液体の吐出量が各液室で一定になるように、種々のヒートパルスを設定することができる。
図4は、液体吐出の駆動を表すタイミング図である。記録情報を一時的に保持するラッチは入力端子から供給される転送クロック(CLK)に従って入力端子からシリアルに供給される記録情報(DATA)を入力し、ラッチに記録情報(DATA)をパラレルに出力するシフトレジスタである。液体吐出ヘッドは、シフトレジスタがラッチに接続され、ある時点ではそのシフトレジスタの出力はラッチで保持される。また、複数の発熱抵抗体が複数のグループに分割され、入力端子から供給されるブロックイネーブル信号に従って特定のグループが選択され、発熱抵抗体を駆動するヒート選択回路を有する。記録データに応じてAND回路より出力されるヒートパルスと、選択回路より選択されて出力される信号との論理和を取って駆動用ドライバに出力している。こうして出力信号がハイレベルになると、対応する駆動用ドライバがオンして、それに接続されている発熱抵抗体に電流が流されて発熱駆動され、液室内の液体の膜沸騰により吐出口から液滴が吐出され、記録媒体上に記録を行なう。
図5(a)〜(h)は、液体吐出ヘッドの製造方法を示す図である。図6(a)〜(h)は、それぞれ図5(a)〜(h)に対応した液体吐出ヘッドの上面図である。
尚、以下の製造工程は、発熱抵抗体を選択的に駆動するためのスイッチングトランジスタ等の半導体素子でなる駆動回路が予め作り込こまれた基板に対して実施されるものである。簡略化のために、以下の図ではシリコンで形成された基板1を図示している。
まず、基板1に対し、熱酸化法、スパッタリング法、CVD法等によって、発熱抵抗体層の下部層として蓄熱層6を形成する。尚、駆動回路を予め作り込んだ基板に対しては、それら駆動回路の製造プロセス中で蓄熱層を形成可能である。
次に、蓄熱層6上に、TaSiN等の発熱抵抗体層7をスパッタリング等により形成し、さらにAl等の電極配線層8をスパッタリング等により形成する。発熱抵抗体層7の厚さは、300nm以上700nm以下とすることが好ましい。電極配線層8の厚さは、100nm以上500nm以下とすることが好ましい。続いてフォトリソグラフィ法を用い、発熱抵抗体層7及び電極配線層8に対して同時に反応性イオンエッチング等のエッチングを施し、図5(a)及び図6(a)に示すような形状を形成する。
次に、図5(b)及び図6(b)に示すように、ウエットエッチングにより電極配線層8を部分的に除去し、除去した部分の発熱抵抗体層7を露出させる。発熱抵抗体層の露出させた部分が、熱作用部であり、発熱抵抗体となる。尚、配線端部における下部保護層9のカバレッジ性を良好なものとするため、配線端部において適切なテーパ形状が得られる公知のウエットエッチングを行うことが好ましい。
次に、プラズマCVD法等を用いて、図5(c)及び図6(c)に示すように、SiN等の下部保護層9を形成し、熱作用部17を設ける。下部保護層9の厚みは、150nm以上550nm以下とすることが好ましい。
次に、図5(d)及び図6(d)に示すように、フォトリソグラフィ法等を用いて、ドライエッチングにより下部保護層9を部分的に除去し、スルーホール15を形成する。これは、下部保護層9の上層に形成する第1の密着層10及び第1の被覆層13と、電極配線層8とを電気的に接続する為のものであり、これにより電極配線層8を露出させる。
次に、図5(e)及び図6(e)に示すように、第1の被覆層13に電気化学反応時の電源を供給する配線層を兼ねる第1の密着層10を、下部保護層9上に、タンタルのスパッタリング等で形成する。第1の密着層10の厚さは、50nm以上150nm以下とすることが好ましい。
次に、図5(f)及び図6(f)に示すように、第1の被覆層13を形成する。第1の被覆層13は、上層と下層を交互にそれぞれ2層以上積層して形成する積層構造であることが好ましい。例えば、まず第1の密着層10の上面に、上層としてのIrをスパッタリング法により形成する。続いて下層を、同じくスパッタリング法により形成する。この一連の工程により、上層と下層が積層された第1の被覆層13を形成する。上層の厚さは、10nm以上50nm以下とすることが好ましい。下層の厚さは、50nm以上200nm以下とすることが好ましい。
次に、図5(g)及び図6(g)に示すような第1の被覆層13のパターンを形成する。フォトリソグラフィ法を用いた反応性イオンエッチングにより、第1の被覆層13を部分的に除去する。これにより、熱作用部17上の第1の被覆層13と、もう一方の第2の被覆層14とを形成する。
次に、図5(h)及び図6(h)に示すような第1の密着層10のパターンを形成するために、フォトリソグラフィ法を用いて、ドライエッチングにより第1の密着層10を部分的に除去する。これにより、熱作用部17上の第1の密着層10と、もう一方の第2の密着層11とを形成する。
次に、外部電極16を形成するために、フォトリソグラフィ法を用いて、反応性イオンエッチングにより下部保護層9を部分的に除去し、その部分の電極配線層8を部分的に露出させる(不図示)。
上記の工程により製造した液体吐出ヘッド用の基板に、フォトリソグラフィ法等により流路形成部材を形成し、基板に供給口を形成する等して、液体吐出ヘッドが製造される。
本発明の液体吐出ヘッドにおいて、コゲ除去のクリーニング処理を行う方法について記載する。本発明のコゲ除去のクリーニング処理は、熱作用部に対応する第1の被覆層13をアノード電極、第2の被覆層14(流路内電極)をカソード電極とし、電解質を含む溶液である液体との電気化学反応を生じさせる。この際、第1の被覆層13は、第1の密着層10及び電極配線層8を介して外部電極16に接続されているので、アノード側となるように電圧を印加すればよい。アノード電極である第1の被覆層13の表面部分(多層の場合は上層)が溶出し、第1の被覆層13に堆積したコゲが除去される。電気化学反応によって溶液中に溶出する金属材料は、一般に種々金属の電位−pH図を見れば把握できる。第1の被覆層13の保護層として用いられる材料は、液体が有するpH値においては溶出せず、電圧を印加してアノード電極となる時に溶出する性質を持つ材料であることが好ましい。即ち、第1の被覆層13には、液体中での電気化学反応により溶出する金属を用いる。このような金属としては、例えばIr、Ruが挙げられる。第2の被覆層14は、対向電極となるが、同じくIr,Ruで形成することが好ましい。より好ましくは、第1の被覆層13と第2の被覆層14とは、同じ種類の金属で形成する。
第1の被覆層13を溶出させることで、その上についたコゲも一緒に溶出させることができる。第1の被覆層13の最表面は、Irであることが好ましい。これは、カソード電極となる、第2の被覆層14において、最上層をIrとすることで、吐出中に上層が酸化しにくく、カソード電極として安定を保つことが可能であるからである。また、カソード側に接続される第2の被覆層14は、必ずしも積層構造である必要はないが、成膜、エッチングといった製造工程を考慮すると、第1の被覆層13と同一の層構成を取ることが好ましい。
以下に、実際のパターンを記録(印字)して、コゲ除去のクリーニング処理を行う例を具体的に示す。画像と文字が混在するパターンを830枚印字すると、液室aは1×109パルス、液室bは2×108パルス、液室cは8×107パルス印加される。この時液室aは印加パルス数が多いため、他の液室b、液室cに比べてコゲの付着が多くなる。さらに、コゲ付着が多いため最小発泡エネルギー(Pth)が初期に比べ12%以上大きくなり、吐出速度は初期に比べ20%程度低下する。他の液室b、液室cのコゲ付着は少なく、初期のPth、初期の吐出速度と比べて大きな変化は見られない。この時点では液室aのみコゲ除去のクリーニング処理を行う。文字パターンが主なパターンを1200枚印字すると、液室aは3×108パルス、液室bは1×109パルス、液室cは6×107パルス印加される。この時液室bのコゲ付着が多くなり、Pthが初期に比べ12%以上大きく、吐出速度は初期に比べ20%程度低下する。この時点では液室bのみコゲ除去のクリーニング処理を行う。このように、各種印字パターンや印字枚数によって各液室のコゲの付着具合が異なるので、各液室の印加パルス数が多くなると(例えば、1×109パルス)、その液室はコゲ付着が多くなったと判断して、当該液室のみコゲ除去のクリーニング処理を行う。または、印字途中に適宜Pthを測定しながら、Pthが初期に比べて大きく(例えば10%以上)なると、その液室の発熱抵抗体上の被覆層にコゲ付着が多くなったと判断して、当該液室のみコゲ除去のクリーニング処理を行う。
本発明では、定期的に各液室におけるコゲ付着状態が把握されることが好ましい。コゲ付着状態は、印字枚数や吐出パルス数に応じて定期的に各液室のPthを測定することにより把握する。即ち、段階的に駆動パルス幅を短くして吐出するパルス幅のスレッシュホールドを確認する。Pth測定手段を備えた装置構成により、各発熱抵抗体上のコゲ付着状態を把握して、コゲ付着が多い液室内の発熱抵抗体のみ温度調整してコゲ除去を行うことができる。
液室毎の温度調整は、液体吐出履歴(例えばパルスカウント)に基づいて行うことができる。他にも、液室毎の最小発泡エネルギー(Pth)に基づき、Pthの変化に応じて行うこともできる。さらに、液室毎の最小発泡電圧(Vth)や、液室毎の吐出口からの液体吐出速度、液室毎のコゲ状態観察(官能評価)結果に基づいて行ってもよい。
また、液室の温度調整は、短パルス加熱や吐出パルス加熱にて行う方法が挙げられるが、液体吐出駆動の電源とは別電源にて、各液室内の発熱抵抗体に印加する方法や、液室毎に温度調整用の発熱抵抗体を設けて液室個別に温度を調整する方法でもよい。
液室の液体の温度を、発熱抵抗体に液室の内部の液体を吐出しないパルスを与えることによって選択的に変える方法が、短パルス駆動による方法である。液室の温度調整を短パルス駆動によって行うと、その温度調整した特定の液室に対してコゲ除去のクリーニング処理を行うことができる。温度調整がなければ液室内の温度はほぼ上がらず、当該液室内の液体(インク)と第1の被覆層13との電気化学反応は起こらない。よってコゲ除去のクリーニング処理は十分に行われず、特定の液室を温度調整することにより所望の液室のコゲ除去を行うことが可能となる。
一方、液室の液体の温度を、発熱抵抗体に液室の内部の液体を吐出するパルスを与えることによって選択的に変える方法もある。液室によってコゲ付着の程度が異なる場合、多くのコゲが付着した液室を選択し、パルス駆動によって液体を吐出させると、その吐出させた特定の液室のみコゲ除去のクリーニング処理を行うことができる。吐出させなければ液室内の温度はほとんど上がらず、当該液室内の液体(インク)と第1の被覆層13との電気化学反応は起こらない。よって、コゲ除去のクリーニング処理は十分に行われず、特定の液室を選択的に吐出させることにより、所望の液室のコゲ除去を行うことが可能となる。
<実施例1>
本発明の液体吐出ヘッドを用いて、コゲ除去のクリーニング処理を実施した。
液体吐出ヘッドにおける熱作用部17上の層として、第1の密着層10としてTaを形成した後、第1の被覆層13としてIrの層を形成した。そして、熱作用部17に対応する第1の被覆層13上にコゲが堆積するように所定条件で熱作用部17を駆動した後、第1の被覆層13に通電することによりコゲ除去のクリーニング処理を実施した。液体としてはシアンインク(商品名;BCI−7eC、キヤノン製)を用いた。
まず、液室12の熱作用部17に、電圧24V及びパルス幅0.82μsの駆動パルスを、周波数15kHzで1.0×109パルス印加した。その後、熱作用部17に対応する第1の被覆層13の表面状態を顕微鏡で観察すると、多くのコゲが堆積していた。また、この状態の液体吐出ヘッドを用いて液体の吐出を行うと、所望の位置から着弾位置が大幅にずれていることが確認された。この時の吐出速度は初期15m/sに比べ9m/sとなり、6m/sの低下が認められた。
次に、第1の被覆層13に接続している外部電極16に3.2VのDC電圧を30秒間印加し、コゲ除去のクリーニング処理を行った。このとき、第1の被覆層13をアノード電極(正電位)、第2の被覆層14をカソード電極(負電位)とした。コゲ除去のクリーニングは、液室12を温度調整しながら行った。温度調整の方法は、吐出口から液体を吐出しない短いパルスを印加して(即ち短パルス駆動によって)行った。短パルス駆動は、24V、0.45μs、12kHzの条件とし、このようにして発熱抵抗体を温度調整し、液室の温度調整も行った。短パルスを印加している間の発熱抵抗体の表面温度を赤外線サーモビュアにて計測したところ、ベース温度65℃から最高温度220℃であることが確認された。
その後、第1の被覆層13の表面状態を顕微鏡で観察すると、それまで堆積していたコゲが除去されていることが確認された。また、吐出速度は15m/sとなり、初期の吐出速度と同程度まで回復し、着弾ドットは所望の位置に着弾して良好な印字品位が得られた。
また、シアンインクである上記BCI−7eCのみならず、他の色のインクにおいても同様の効果が得られた。
<実施例2>
実施例1のコゲ除去のクリーニング処理を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にした。
液室12の熱作用部17には、電圧24V及びパルス幅0.82μsの駆動パルスを、周波数15kHzで印加し、Pthが駆動電圧21.0Vでパルス幅0.88μs以上となるところまで吐出を行った。その後、熱作用部17に対応する第1の被覆層13の表面状態を顕微鏡で観察すると、多くのコゲが堆積していた。また、この状態の液体吐出ヘッドを用いて液体の吐出を行うと、所望の位置から着弾位置が大幅にずれていることが確認された。この時の吐出速度は初期15m/sに比べ9m/sとなり、6m/sの低下が認められた。
次に、液室12の熱作用部17には、電圧24V及びパルス幅0.82μsの駆動パルスを、周波数15kHzで印加し、液体を吐出しながらコゲ除去のクリーニング処理を行った。コゲ除去のクリーニング処理として、第1の被覆層13に接続している外部電極16に3.2VのDC電圧を30秒間印加した。吐出パルスを印加している間の発熱抵抗体の表面温度を赤外線サーモビュアにて計測したところ、最高温度は300℃以上であることが確認された。
その後、コゲがあった部分を顕微鏡で確認すると、それまで堆積していたコゲが除去されていることが確認された。また、吐出速度は15m/sとなり、初期の吐出速度と同程度まで回復し、着弾ドットは所望の位置に着弾して良好な印字品位が得られた。
尚、シアンインクであるBCI−7eCのみならず、他の色のインクにおいても同様の効果が得られた。