JP2016013111A - 底面部を剥離可能な培養容器 - Google Patents

底面部を剥離可能な培養容器 Download PDF

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裕美子 成田
Yumiko NARITA
裕美子 成田
正敏 黒田
Masatoshi Kuroda
正敏 黒田
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Abstract

【課題】温度応答性高分子層を有する細胞培養容器で培養した細胞シートを、ダメージを与えることなく容易に移送させるべく、底部を剥離可能な細胞培養容器の提供。【解決手段】樹脂層の上に設けられた温度応答性高分子層を有するフィルム30と、細胞培養容器の側壁部2を構成する筒状のハウジング20を用意する工程、及びハウジングの端部21とフィルムの温度応答性高分子層上の少なくともいずれかに有機溶剤を塗布した後、ハウジングを端部21が接するようフィルム30の温度応答性高分子層上に載せ、ハウジング20とフィルム30とを有機溶剤塗布部により接合する。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞培養容器及びその製造方法に関する。特に、細胞シートをフィルムに付着させた状態で回収できる細胞培養容器及びその製造方法に関する。
細胞をシート状に培養し、トリプシンなどの酵素を使用せずに温度を低下させるだけで細胞をシート状に回収する「細胞シート工学」という技術が再生医療分野で注目されている。細胞シート工学によって得られる細胞シートは角膜や歯周組織などの再生医療で既に一定の治療効果も確認され欧州で既に臨床研究や治験が進められている。また、複数の種類からなる細胞シートを積層することによる三次元組織モデルの作製や血管組織を伴う成熟した組織を生体外で作製することも可能であり、今後ますます本技術をベースにした研究や治療が期待される。
このような細胞シートを、目的とする患部(移植部位)に移植するには、例えば、温度応答性材料の上で培養した細胞シートを温度変化により剥離させ、得られた細胞シートに別途用意したシートを被せて該シートに細胞シートを付着させた状態で容器から取り出し、患部まで移送し、その患部に移植(貼付)するといった一連の操作が必要となるが、この操作には高度な技術が要求され、かつ細心の注意を払う必要がある。そのため、操作者の技術によらず容易に細胞シートを移送可能とするような器具が求められている。
細胞シートを把持するための治具としては、例えば特許文献1〜3に記載されているようなものが知られている。しかし、特許文献1および2に記載されていような細胞シートをフックなどで直接把持する治具では、把持した際に細胞シートに張力がかかり、細胞シートがその形状を維持できない可能性がある上、細胞シートへのダメージは避けられない。また、特許文献3に記載されているような細胞シートを吸着させて移送するデバイスでは、吸引や加圧により細胞シートにダメージが加わるリスクがある上、細胞シートの培養時における非接着面に触れてハンドリングする必要があり、細胞シートの非接着面に独特の性質が損なわれる可能性もある。そのため、製造した細胞シートを、どのような操作者であっても、ダメージを与えることなく容易に移送することができる手段が求められている。
一方、出願人は、以前に、底部に機能性有機化合物層(特に温度応答性高分子層)を備える細胞培養容器の製造方法として、表面上に機能性有機化合物層が固定された底部を用意し、当該底部の周縁に、周側壁部を、その下端面の少なくとも内周寄りの部分が、機能性有機化合物層の周縁部に載るように設ける方法を提案している(特許文献4)。
特開2013−074867号公報 特開2013−198442号公報 特開2010−075081号公報 特開2013−99280号公報
本発明者らは、温度応答性高分子層を有する細胞培養容器で培養した細胞シートを、ダメージを与えることなく容易に移送させる方法として、細胞培養容器の底部を、細胞シートが付着した状態のまま底部を構成する基材ごと剥離して移送させることに想到した。しかし、例えば特許文献4に記載した方法で製造した細胞培養容器では、細胞シート作製後に底部を剥離させることは想定されておらず、底部が容易に剥離できる構成とはなっていない。一方、底部を剥離可能な強度で側壁部と接合した容器を用意し、その容器に温度応答性高分子層を設けることも考えられるが、容器底部に温度応答性高分子をグラフトさせるには、ポリマーを含むインクを滴下し、電子線を照射し、洗浄するといった一連の工程が必要であり、温度応答性高分子層の状態に容器ごとにバラつきが生じて品質が一定とならず、細胞シートの製造が安定して行えない恐れがある。また、容器の製造手順が複雑となり、製造コストが高くなると考えられる。より簡便な方法で底部を剥離可能な温度応答性高分子層を有する細胞培養容器を提供することが望まれる。
本発明者らは上述したような問題を検討した結果、樹脂層の上に設けられた温度応答性高分子層を有するフィルムと、培養容器の側壁部を構成する筒状のハウジングを用意し、ハウジングの端部とフィルムの温度応答性高分子層上の少なくともいずれかに有機溶剤を塗布した後、ハウジングを端部が接するようフィルムの温度応答性高分子層上に載せて接合させることにより、底部を剥離可能な温度応答性高分子層を有する細胞培養容器を簡便に製造可能であることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)側壁部と底部とを有し、内部に培養液を保持可能な細胞培養容器であって、前記底部は、樹脂層の上に設けられた温度応答性高分子層を容器内面に備えたフィルムを含み、前記側壁部と前記底部の接合部は、前記側壁部から前記底部を剥離可能な強度で樹脂により接合されており、前記接合部の樹脂は、少なくとも前記温度応答性高分子層に由来する材料を含む、前記細胞培養容器。
(2)前記側壁部が筒状のハウジングにより構成されており、前記底部を構成するフィルムが、前記ハウジングの外部に突出するフランジ部を形成している、(1)に記載の細胞培養容器。
(3)前記側壁部が筒状のハウジングにより構成されており、前記ハウジングの少なくとも一端は樹脂からなり、前記接合部の樹脂が、前記底部を構成するフィルムと、前記ハウジングの一端とが、それらの少なくとも一方が有機溶剤により膨潤した状態で接触することにより形成されたものである、(1)または(2)に記載の細胞培養容器。
(4)前記接合部の樹脂が粘性を有しており、一度剥離した前記底部を構成するフィルムを再接着することが可能である、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(5)側壁部から底部を剥離可能な細胞培養容器の製造方法であって、
樹脂層の上に設けられた温度応答性高分子層を有するフィルムと、細胞培養容器の側壁部を構成する筒状のハウジングを用意する工程、および
前記ハウジングの端部と前記フィルムの温度応答性高分子層上の少なくともいずれかに有機溶剤を塗布した後、前記ハウジングの端部と前記フィルムの温度応答性高分子層とを接触させ、前記ハウジングと前記フィルムとを有機溶剤塗布部により接合させる工程
を含む、前記方法。
(6)底部を剥離可能な細胞培養容器を用いて細胞をシート状に培養する工程、および前記細胞培養容器の底部を剥離し、剥離した底部と共に該底部に付着した細胞シートを移送することを含む、細胞シートの移植方法。
本発明によれば、底部を剥離可能な温度応答性高分子層を有する細胞培養容器を、安定した品質で、かつ簡便な方法で提供することができ、該容器を用いて培養した細胞シートの移送を容易に行うことが可能となる。
図1aは、本発明の細胞培養容器の一態様を示す図である。図1bは、図1aに示した細胞培養容器1の製造途中を示す図である。 本発明の細胞培養容器の別の態様を示す図である。 本発明の細胞培養容器の一態様における、側壁部と底部を接合する接合部の近傍の断面構造を示す図である。 本発明の細胞培養容器の製造過程の一例を示す図である。
(本発明の細胞培養容器の基本構成)
図1aは、本発明の細胞培養容器の一態様を表す図である。本発明の細胞培養容器1は、側壁部2と底部3とを有し、内部に培養液を保持可能であり、底部3は、樹脂層31の上に設けられた温度応答性高分子層32を容器内面に備え、好ましくは可撓性を有する、フィルムから構成される。容器内面の温度応答性高分子層32の表面には、表面保護のための除去可能なフィルムなどが載せられていてもよい。側壁部2と底部3は接合部において樹脂41により接合されており、その接合強度は底部3を側壁部2から剥離可能であり、かつ内部に入れた培養液が漏れ出ない程度である。
図1bは、図1aに示した細胞培養容器1の製造途中を示す図である。図示したように、細胞培養容器1は、接合後に側壁部2を構成する筒状のハウジング20と、接合後に底部3を構成するフィルム30とを接合することにより作製される。図中、ハウジング20は円筒状として示したが、ハウジングの断面形状はこれに限らず、任意の断面形状を有する筒状であってよい。ただし、ハウジング20のフィルム30と接合する端部21は、接合後に十分な強度を得られるよう、平面であることが望ましい。
フィルム30は、好ましくは可撓性を有し、少なくとも樹脂層31と、その上に設けられた温度応答性高分子層32を、ハウジング20との接合後に細胞培養容器1の容器内面となる側に有する。細胞培養は、その温度応答性高分子層32の上に細胞を接着させて行われる。フィルム30はハウジング20の断面よりも大きなサイズを有し、ハウジング20の外部に突出するフランジ部5を形成していることが好ましい。フランジ部5は、細胞培養容器1の底部3を剥離する際に、少なくとも一部においてヒトが手で把持できる程度、例えば5mm以上、特に10mm以上ハウジング20から突出していることが好ましい。必要に応じて、図2に示すように、フランジ部5の一部が周囲よりも大きく突出し、よりヒトの手で把持しやすい構成となっていてもよい。
図3は、本発明の細胞培養容器の一態様における、側壁部と底部を接合する接合部の近傍の断面構造を示す図である。図中、左側が細胞培養容器1の内部側を、右側が外部側をそれぞれ示す。図示するように、側壁部2と底部3は接合部4により接合されており、接合部4は樹脂41により側壁部2と底部3を接合している。底部3は、接合前のフィルム30について述べたように、樹脂層31と、その上に設けられた温度応答性高分子層32とを有する。接合部の樹脂41は、少なくとも温度応答性高分子層32に由来する材料を含み、場合により樹脂層31に由来する材料も含む。図3中、樹脂41は温度応答性高分子層32と同じ厚みであるように示しているが、これに限られず、温度応答性高分子層32よりも厚く、樹脂層31の領域にも達していてもよい。
(本発明の細胞培養容器の製造方法)
細胞培養容器1の製造は以下のようにして行う。まず、樹脂層31とその上に設けられた温度応答性高分子層32を有するフィルム30と、筒状のハウジング20とを用意し、次にハウジング20の端部21と、フィルム30の温度応答性高分子層32の少なくともいずれか、好ましくは端部21に有機溶剤を塗布した後、ハウジング20を端部21が接するようにフィルム30の温度応答性高分子層32上に載せる。ハウジング20をフィルム30上に載せる際は、特に圧力を加えて押し付ける必要はなく、ハウジング20の自重による圧で十分である。なお、フィルム30は、図1bに示したように予めハウジング20よりもやや大きくフランジ部5が十分な大きさとなるようなサイズにカットしておいてもよい。あるいは図4に示したように、シート状のフィルム30の上に複数のハウジング20を載せるようにし、フィルム30とハウジング20を接合後にフィルム30を所望の大きさにカットするようにしてもよい。
塗布された有機溶剤と接触すると、少なくとも温度応答性高分子層32は膨潤し軟化する。ハウジング20の端部21が樹脂からなる場合はさらにその樹脂も膨潤し軟化する。その軟化した状態でハウジング20の端部21とフィルム30の温度応答性高分子層32とを接触させ、次いで塗布した有機溶剤を自然乾燥または加熱により揮発させると、少なくとも温度応答性高分子層32に由来する材料を含み、さらにハウジング20の端部21を構成する樹脂に由来する材料、あるいは場合によりフィルム30の樹脂層31を構成する樹脂に由来する材料をも含み得る樹脂41が接合部4に形成される。具体的には、樹脂41は、温度応答性高分子層32を構成する化合物または同化合物が有機溶剤と接触することにより変性して生じた化合物を少なくとも含み、さらに、ハウジング20の端部21の樹脂を構成する化合物、もしくはフィルム30の樹脂層31の樹脂を構成する化合物、またはそれら化合物が有機溶剤と接触することにより変性して生じた化合物を含み得る。
樹脂41は、細胞培養容器1の側壁部2と底部3とを剥離可能な強度で接合する。側壁部2と底部3との接合強度は、例えば、両者の材質、両者が接触する面積、使用する有機溶剤の種類、有機溶剤に含有される接着剤の有無などの種々の要素により、適宜調整可能である。なお、本明細書でいう「剥離可能な強度」とは、例えばヒトがフランジ部5を手で把持して側壁部2と底部3とを分離できる程度の強度であり、供給される培養液の自重により底部3を構成するフィルム30が破れたりしないような強度を意味する。ここで、例えば温度応答性高分子層32、または端部21を構成する樹脂もしくはフィルム30の樹脂層31の材質、あるいは用いる有機溶剤を選択することにより、樹脂41が粘性を有するようにすると、底部3を構成するフィルム30を一度剥離した後に再接着することが可能となる。
(ハウジング)
ハウジング20を構成する材料としては金属、ガラス、セラミック、樹脂などや、これらの複合材を用いることができるが、少なくとも端部21およびその近傍が樹脂よりなると、有機溶剤を用いた接着の際にその樹脂も絡み合って接合部4の樹脂41を形成することができるためより好ましい。ハウジング20に用いる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリルなどが挙げられる。なかでもポリスチレンおよびポリカーボネートがハウジング20に用いる樹脂として好ましい。
上記のようなハウジング20を構成する材料は細胞非接着性であってもよい。その場合、温度応答性高分子層32上に播種した細胞は側壁部2の表面には接着しにくいため、底部3を剥離する際に培養して得られた細胞シートに損傷を与えにくくなるという利点がある。
(フィルム)
フィルム30は、少なくとも樹脂層31と、その上に設けられた温度応答性高分子層32とを有する。フィルム30は、可撓性を有すると剥離作業が行いやすくなるため好ましい。フィルム30の厚みは、ハウジング20と接着して細胞培養容器1の底部3を形成した際に、細胞培養液および培養した細胞シートを保持可能であれば特に限定されないが、例えば10〜300μmの範囲の厚みとすることができる。
樹脂層31を構成する材料としては、一方の表面に上述の温度応答性高分子層を形成することが可能であればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリルなどが挙げられる。なかでもポリスチレンおよびポリカーボネートが樹脂層31を構成する材料として好ましい。
温度応答性高分子層32は、細胞接着性を発揮する温度領域が10℃〜45℃、特に33℃〜40℃の範囲であると、細胞を安定的に培養することができ好ましい。また、細胞非接着性を発揮する温度領域は、1℃〜36℃、特に4℃〜32℃の範囲内であると、細胞シートの剥離に与えるダメージを減らすことができるため好ましい。そのような観点から、温度応答性高分子層32を構成する材料としては、具体的には、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、および、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドなどの温度応答性高分子を挙げることができ、なかでもPNIPAAm、ポリ−N−n―プロピルメタクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドが好ましい。温度応答性高分子は1種類のみからなるものであってもよく、2種類以上含むものであってもよい。また、温度領域の調整をするため、温度応答性材料同士またはその他のポリマーと共重合したものを用いるものであってもよい。
樹脂層31の上に温度応答性高分子層32を設ける方法としては、従来用いられている方法を用いることができる。例えば、温度応答性高分子材料を含む組成物をスピンコート等の公知の塗布方法を用いて樹脂層31の上に塗布し、電子線や紫外線処理によりグラフト重合させる方法を用いることができる。フィルム30は、樹脂層31の温度応答性高分子層32が形成される側とは反対側に他の層を1層以上さらに有していてもよい。
(有機溶剤)
本発明の細胞培養容器の製造方法において用いる有機溶剤は、フィルム30の温度応答性高分子層32、および場合によりそれに加えて樹脂層31の材質、ならびにハウジング20の端部21の材質に応じて適切なものを用いることにより、フィルム30とハウジング20とを剥離可能な強度で接合することが可能となる。具体的な例としては、ハウジング20の端部21がポリスチレンからなり、フィルム30がポリスチレンからなる樹脂層の上にポリ−N−イソプロピルアクリルアミドをグラフト共重合させたものである場合、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル(PGMEA)、クロロホルム(CHCl)、塩化メチレン(CHCl)を有機溶剤として用いると、所望の接合強度を実現できる。フィルム30やハウジング20の材質に適した有機溶剤を用いると、それら材料に接触した際に有機溶剤が高分子により構成された構造の中に入り込み、分子運動を誘起し、それにより高分子同士が絡み合うことにより接合が実現されるものと考えられる。有機溶剤は、所望の接合強度が得られるよう、2種以上を混合して用いてもよい。また、有機溶剤にさらにシリコーンや高分子材料が混合されており、それ自体が接着剤として機能するようなものを用いてもよい。
(細胞シートの製造および移送)
本発明の細胞培養容器を用いた細胞シートの製造は次のように行う。まず、細胞培養容器1に適切な培地を加え、底部3の表面の温度応答性高分子層32の上に細胞シートの元となる細胞を播種し、通常の手順に従って培養を行う。細胞がコンフルエントまで増殖しシート状になったことを確認した後に培地を除去し、底部3を構成するフィルム30をハウジング20から剥離する。培地の除去は、例えば、底部3の上方からピペット等を利用して除去してもよいし、あるいは、側壁部2と底部3とを一部剥離した箇所から除去してもよい。温度応答性高分子層32に接着した状態の細胞シートは、フィルム30の剥離後に接着状態を解除するようにしてもよいが、フィルム30の剥離前、さらに好ましくは培地の除去前に、温度変化により予め接着状態を解除しておくことが好ましい。剥離後の底部3を構成していたフィルム30は、その上に細胞シートを載せた状態で移送することが可能であり、細胞シートを所望の移植先に直接移植するための移送基材としても利用することができる。
培養して細胞シートとする細胞の種類としては、生体に存在するあらゆる組織とそれに由来する細胞を用いることができるが、接着性の細胞が好ましい。具体的には、生体内の各組織、臓器を構成する上皮細胞や内皮細胞、収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経系を構成するニューロン、グリア細胞、線維芽細胞、生体の代謝に関係する肝実質細胞、非肝実質細胞や脂肪細胞、分化能を有する細胞として、種々組織に存在する幹細胞、さらには骨髄細胞、ES細胞、iPS細胞などを用いることができる。細胞は、一種類のみであってもよく、二種類以上用いるものであってもよい。細胞が由来する動物も特に限定されず、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジなどが含まれる。細胞は、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、あるいは、それらを何代か継代させたものでもよい。さらにこれら細胞は、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞などの多能性幹細胞、単分化能を有する血管内皮前駆細胞などの単能性幹細胞、分化が終了した細胞の何れであってもよい。細胞を通常の方法で予備培養して増殖させ、酵素処理することにより剥離および回収した上で播種することができる。
培養液としては、当技術分野で通常用いられる細胞培養用培地であれば特に制限なく用いることができる。例えば、用いる細胞の種類に応じて、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMDM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地及びRPMI1640培地などの基礎培地を用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.培養容器の製造
ポリスチレンフィルム(厚さ50μm)の表面にポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)をグラフト共重合させたフィルムと、外径35mm、高さ10mmの円筒形であり、壁の厚みが0.3mmのポリスチレン製ハウジングを用意した。ハウジングの一方の端部にプロピレングリコール1−モノメチルエーテル(PGMEA)を塗布した後に、塗布した端部を下にしてハウジングの直径よりもやや大きくカットした前述のフィルムの上に載せ、室温で24時間静置することによりフィルムとハウジングの溶剤溶着を行い、培養容器を得た。
2.耐荷重性試験
培養容器におけるフィルムとハウジングの接着強度が培養に耐えられるものかどうかを試験した。はかりの上にハウジングの直径よりもやや小さい直径を有する円筒を置き、その円筒の上に、底面内部が円筒と接するよう、上記1に従って作製した培養容器を円筒に被せるように設置した。次に、培養容器のハウジング部を把持して鉛直下方に向かってゆっくりと力を加え、ハウジングからフィルムが剥離した際の負荷荷重をはかりから読み取る試験を行った。フィルムとハウジングは負荷荷重が1kgを超えた状態においても剥離しなかった。
3.剥離容易性試験
培養容器の底面を構成するフィルムが、細胞培養後に容易に剥離可能であるかどうかを試験した。上記1に従って作製した培養容器において、フィルムのハウジングの外側にある領域にワイヤーを通し、そのワイヤーには分銅を取り付けた。次いで、底面が水平となるよう培養容器のハウジング部分を保持した状態で、分銅をフィルムからぶら下げ、ハウジングとフィルムの接合部に負荷をかけた。5サンプルについてこの試験を行ったところ、フィルムをハウジングから剥離させるのに必要な分銅の重量はいずれも60g以下であった。
4.細胞培養試験
上記1で作製した培養容器にマウス骨格筋芽細胞を4×10cells/cmの密度で播種した。播種後4日目に細胞がコンフルエントまで増殖しシート状になったことを確認してから培地を抜き、細胞シートをフィルムに付着させた。次いでフィルムをハウジングから剥離することにより、細胞シートが付着したフィルムを得ることができた。
5.他の培養容器作成例
(1)接着剤による接着
外径38mm、内径32mm、高さ10mmの円筒形であり、壁の厚みが3mmのポリカーボネート製のハウジングと、上記1と同じ表面にPNIPAAmをグラフト共重合させたフィルムを用意した。ハウジングの一方の端部にシリコーン系の医療用接着剤(RTV118)を塗布し、塗布した端部を下にして直径40mmに切り出したフィルム上に載せて、室温で24時間静置することによりフィルムとハウジングの接着を行った。得られた培養容器は、上記1で作製したものと同等の耐荷重性および剥離容易性を有していた。
(2)他の溶剤による溶剤溶着例
PGMEAに代えてクロロホルム(CHCl)または塩化メチレン(CHCl)を用いた以外は上記1と同様にして培養容器を作製した。得られた培養容器は、上記1で作製したものと同等の耐荷重性および剥離容易性を有していた。
1…細胞培養容器、2…側壁部、3…底部、4…接合部、5…フランジ部、20…ハウジング、21…ハウジング端部、30…フィルム、31…樹脂層、32…温度応答性高分子層、41…接合部の樹脂。

Claims (6)

  1. 側壁部と底部とを有し、内部に培養液を保持可能な細胞培養容器であって、前記底部は、樹脂層の上に設けられた温度応答性高分子層を容器内面に備えたフィルムを含み、前記側壁部と前記底部の接合部は、前記側壁部から前記底部を剥離可能な強度で樹脂により接合されており、前記接合部の樹脂は、少なくとも前記温度応答性高分子層に由来する材料を含む、前記細胞培養容器。
  2. 前記側壁部が筒状のハウジングにより構成されており、前記底部を構成するフィルムが、前記ハウジングの外部に突出するフランジ部を形成している、請求項1に記載の細胞培養容器。
  3. 前記側壁部が筒状のハウジングにより構成されており、前記ハウジングの少なくとも一端は樹脂からなり、前記接合部の樹脂が、前記底部を構成するフィルムと、前記ハウジングの一端とが、それらの少なくとも一方が有機溶剤により膨潤した状態で接触することにより形成されたものである、請求項1または2に記載の細胞培養容器。
  4. 前記接合部の樹脂が粘性を有しており、一度剥離した前記底部を構成するフィルムを再接着することが可能である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
  5. 側壁部から底部を剥離可能な細胞培養容器の製造方法であって、
    樹脂層の上に設けられた温度応答性高分子層を有するフィルムと、細胞培養容器の側壁部を構成する筒状のハウジングを用意する工程、および
    前記ハウジングの端部と前記フィルムの温度応答性高分子層上の少なくともいずれかに有機溶剤を塗布した後、前記ハウジングの端部と前記フィルムの温度応答性高分子層とを接触させ、前記ハウジングと前記フィルムとを有機溶剤塗布部により接合させる工程
    を含む、前記方法。
  6. 底部を剥離可能な細胞培養容器を用いて細胞をシート状に培養する工程、および前記細胞培養容器の底部を剥離し、剥離した底部と共に該底部に付着した細胞シートを移送することを含む、細胞シートの移植方法。
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