JP5903968B2 - 細胞培養基材の評価方法及び評価装置、並びに細胞培養基材の製造方法 - Google Patents

細胞培養基材の評価方法及び評価装置、並びに細胞培養基材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、基材上に機能性層を備える細胞培養基材の評価方法及び評価装置、並びにそのような細胞培養基材の製造方法に関する。
細胞をシート状に培養し、トリプシン等の酵素を使用せずに例えば温度を低下させるだけで細胞をシート状に回収する「細胞シート工学」という技術が再生医療分野で注目されている。本技術によって得られる細胞シートは、角膜や歯周組織等の再生医療で既に一定の治療効果が確認され、欧州で既に臨床研究や治験が進められている。また、複数の種類の細胞シートを積層させることによる三次元組織モデルの作製や、血管組織を伴う成熟した組織を生体外で作製することも可能であり、本技術をベースにした研究開発や治療が今後ますます期待される。
培養した細胞シートの接着、脱着の制御は、例えば、基材上に固定したポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)等の機能性層を介して行われる。このポリマーは、主に温度に応答して水和能が変化する材料であり、臨界溶解温度未満の温度では周囲の水に対する親和性が向上し、ポリマーが水を取り込み膨潤して表面に細胞を接着しにくくする性質(細胞非接着性)を示し、同温度以上の温度ではポリマーから水が脱離することでポリマーが収縮し表面に細胞を接着しやすくする性質(細胞接着性)を示すものである。細胞の脱接着性は、上記PIPAAmの固定化密度や鎖長に影響を受けることが知られており、したがって、細胞の脱接着性の良否を検討するため、機能性層の状態を評価する手法の開発が望まれている。
基材上に機能性層を設けた細胞培養基材を評価する従来の方法として、(特許文献1)が知られている。(特許文献1)には、0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリ−N−イソプロピルアクリルアミド等の温度応答性ポリマーを被覆した細胞培養基材の表面上に、細胞を播種後、48時間以内に蛋白質加水分解酵素を使わずに温度処理だけで細胞を当該基材表面から剥離して回収し、生細胞と反応する試薬を用いて分光計で定量する、温度応答性細胞培養基材の評価方法が開示されている。培養細胞は、基材表面積当たり100〜10000個/cmとなるように個々の状態で基材表面上に付着していることが必要とされる。すなわち、細胞をシートの状態で回収すると、細胞間接着によって細胞が引っ張られる力の影響が無視できないため、(特許文献1)では個々の状態(まばらな状態)で基材上に播種することにより細胞間接着の影響を排除し、基材と細胞との相互作用のみを反映した結果を得ている。
上記(特許文献1)に記載の評価方法は、細胞培養を実施するため、評価を行うために少なくとも数時間〜数十時間を要するという問題点があった。
特開2009−82123号公報
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、細胞培養を実施する必要がなく、短時間でPIPAAm等からなる機能性層の状態を評価することができる方法、及びその方法を実施するための評価装置を提供することを目的とする。また、上記評価方法を利用して、機能性層の状態が良であるような細胞培養基材を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、機能性層の表面に供給した液滴に対しさらに液体を注入して液滴の容積を拡張させるか又は液体を吸引して液滴の容積を収縮させたとき、PIPAAm等の、細胞を培養するための機能性層の状態に依存して、その拡張又は収縮挙動が異なる点に着目した。そして、液滴が拡張又は収縮する過程において液滴の接触角が増大及び減少を繰り返す現象(スティックスリップ現象)を観測し、その観測結果を分析することで機能性層の状態を評価できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)基材と、前記基材上に設けられた、細胞を培養するための機能性層とを有する細胞培養基材の評価方法であって、
機能性層の表面に液滴を供給する工程と、
供給した液滴にさらに液体を注入して液滴を拡張させるか又は供給した液滴から液体を吸引して液滴を収縮させる工程と、
拡張又は収縮する液滴の接触角を測定する工程と、
を有し、
接触角が増大及び減少を繰り返す現象を観測し、その観測結果に基づいて機能性層の状態の評価を行う前記細胞培養基材の評価方法。
(2)機能性層の状態の評価を、接触角が増大及び減少を繰り返す回数に基づいて行う上記(1)に記載の細胞培養基材の評価方法。
(3)機能性層が、温度変化により細胞接着性が変化する温度応答性ポリマーを含む上記(1)又は(2)に記載の細胞培養基材の評価方法。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の評価方法を実施するための装置であって、
細胞培養基材が配置されるステージと、
ステージ上に配置された細胞培養基材の機能性層の表面に液滴を供給し、さらに供給した液滴に液体を注入し又は供給した液滴から液体を吸引するための液滴調節手段と、
液体の注入により拡張するか又は液体の吸引により収縮する液滴を撮影するための撮像手段と、
撮像手段により撮影した画像に基づき液滴の接触角を算出する接触角算出部と、
を有する細胞培養基材の評価装置。
(5)基材と、前記基材上に設けられた、細胞を培養するための機能性層とを有する細胞培養基材を準備する工程と、
準備した細胞培養基材について、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の評価方法を実施する工程と、
を有し、
評価の結果、機能性層の状態が良と判定されたものとを製品とする細胞培養基材の製造方法。
本発明により、細胞培養を実施する必要がなく、短時間で細胞培養基材における細胞の脱接着性等を評価することができる。また、細胞の脱接着性に優れる細胞培養基材を効率的に製造することができる。
本発明に係る細胞培養基材の評価方法を説明するための図である。 本発明に係る細胞培養基材の評価装置の一実施形態を示す図である。 実施例1〜3及び比較例1における接触角の測定結果(室温)を示すグラフである。 実施例1〜3及び比較例1における接触半径の測定結果(室温)を示すグラフである。 実施例1〜3及び比較例1における接触角の測定結果(40℃)を示すグラフである。 実施例1〜3及び比較例1における接触半径の測定結果(40℃)を示すグラフである。 実施例1〜3及び比較例1において測定されたスティックスリップ回数を比較したグラフである。
以下、図面に基づき本発明を詳細に説明する。まず、本発明の評価対象である細胞培養基材の構成について述べる。
細胞培養基材は、基材上(通常は、基材の片面側)に、細胞を培養するための機能性層を設けて構成される。基材と機能性層の間は、一般には直接密着しているが、必要に応じて、機能性層の固定化を容易にするプライマー層等の中間層が介在していても良い。
細胞培養基材は、細胞及び培地を収容する細胞培養容器の内底面に設置されて使用される。したがって、基材は、細胞培養容器の底板を兼ねていても良いし、底板や側壁等から形成された容器の内底面に、後から基材及び機能性層の積層体を接合させる形態であっても良い。容器に後から接合させる積層体の形態である場合、基材は板状又はフィルム状であり、基材の、機能性層が設けられた側と反対側には、細胞培養容器の底板に接合させるための粘着剤層及び剥離シートを適宜設けることができる。
基材の材料は特に限定されない。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリル樹脂等の樹脂材料や、ガラス、石英等の無機材料が挙げられ、樹脂材料が好ましく用いられる。
基材の、機能性層が設けられる側の表面は、易接着処理された表面であることができる。「易接着処理」とは、例えば、ポリエステル、アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、シランカップリング剤、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の易接着剤による処理を指す。
機能性層を構成する材料としては、細胞を培養することができる機能を有するものであれば特に限定されない。例えば、静電相互作用により細胞との接着性を示す材料として、ポリリジン等の塩基性ポリマー、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の塩基性化合物及びそれらを含む縮合物等が挙げられる。また、生物学的特性により細胞との接着性を示す材料として、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、ビトロネクチン、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)配列含有ペプチド、YIGSR(チロシン−イソロイシン−グリシン−セリン−アルギニン)配列含有ペプチド、コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン等が挙げられる。
その中でも、細胞を培養後、基材から細胞を脱着させるため、あるいは細胞をシート状に回収するために細胞培養基材を利用する場合には、機能性層として、所定の刺激により細胞接着性が変化する機能を有するものを採用することができる。例えば、刺激を加えることにより細胞接着性から細胞非接着性へと変化する刺激応答性ポリマーを含むことができる。刺激応答性ポリマーとしては、温度応答性ポリマー、pH応答性ポリマー、イオン応答性ポリマー、光応答性ポリマー等を挙げることができ、作製しようとする細胞シートに適したものを適宜選択することができる。特に、温度応答性ポリマーは、温度変化により細胞接着性が変化し、刺激の付与が容易であることから好ましい。
温度応答性ポリマーとして、例えば、細胞を培養する温度では細胞接着性を示し、作製した細胞シートを剥離する時の温度では細胞非接着性を示すものを用いると良い。具体的には、臨界溶解温度未満の温度では周囲の水に対する親和性が向上し、ポリマーが水を取り込んで膨潤して表面に細胞を接着しにくくする性質(細胞非接着性)を示し、同温度以上の温度ではポリマーから水が脱離することでポリマーが収縮して表面に細胞を接着しやすくする性質(細胞接着性)を示すものを用いると良い。このような臨界溶解温度は、下限臨界溶解温度と呼ばれる。下限臨界溶解温度Tが0℃〜80℃、さらに好ましくは0℃〜50℃である温度応答性ポリマーを用いると良い。Tが0℃〜80℃であると、細胞を安定的に培養できるからである。
好適な温度応答性ポリマーとしては、アクリル系ポリマー又はメタクリル系ポリマーが挙げられる。より具体的には、例えばポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=32℃)等が挙げられる。
これらのポリマーを形成するためのモノマーとしては、放射線照射によって重合し得るモノマーを用いることができる。モノマーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(もしくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、及びビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの1種以上を使用することができる。モノマーが一種類単独で使用された場合、基材上に形成されるポリマーはホモポリマーとなり、モノマーが複数種一緒に使用された場合、基材上に形成されるポリマーはヘテロポリマーとなるが、本発明においてはいずれの形態も適用可能である。
また、増殖細胞の種類によってTを調節する必要がある場合や、機能性層の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場合等には、上記以外の他のモノマー類をさらに加えて共重合しても良い。さらに、上記ポリマーとその他のポリマーとのグラフト又はブロック共重合体、あるいは上記ポリマーと他のポリマーとの混合物を用いて機能性層を構成しても良い。また、ポリマー本来の性質が損なわれない範囲で架橋することも可能である。
温度応答性ポリマー等を含む機能性層は、従来知られた手法を適宜採用して基材上に形成することができる。例えば、重合により目的の刺激応答性ポリマーを形成するモノマーと、該モノマーを溶解しうる有機溶媒と含む塗布用組成物を調製し、これを慣用の塗布方法に従って、基材の表面に塗布して塗膜を形成し、次に、該塗膜に放射線照射等の適当な手段により塗膜中のモノマーを重合してポリマーを形成するとともに、基材の表面とポリマーとの間にグラフト化反応を生じさせることにより形成することができる。
機能性層の膜厚は、例えば、0.5nm〜300nmの範囲内とすると良く、特に1nm〜100nmの範囲内であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
次に、本発明の細胞培養基材の評価方法及び評価装置について述べる。本発明の評価方法は、機能性層の表面に液滴を供給する工程と、供給した液滴にさらに液体を注入して液滴を拡張させるか又は供給した液滴から液体を吸引して液滴を収縮させる工程と、拡張又は収縮する液滴の接触角を測定する工程とを有することを特徴とする。
具体的には、まず、図1に示すように、基材10及び機能性層20を含む細胞培養基材1における機能性層20の表面に、好ましくはマイクロシリンジ等の針状管体Sを用い、その針状管体Sの先端から液滴Lを供給する。続いて、液滴L内に針状管体Sの先端が挿入されている状態のまま液滴Lにさらに液体を注入し、液滴を拡張させる。このとき、液滴は、一定の接触角を維持しつつ針状管体Sからの液体の注入量に比例してなだらかに拡張するのではなく、液滴と機能性層20との相互作用に起因して、接触角が一旦増大した後に減少に転じることを繰り返しながら、液滴Lから液滴L、液滴Lへと不連続的に拡張する現象(スティックスリップ現象)を起こす。本発明者は、このスティックスリップ現象の特性が機能性層20の状態を反映することから、スティックスリップ現象の観測結果に基づいて機能性層20の状態を評価可能であることを見出した。なお、スティックスリップ現象は、液滴が拡張する場合のみならず、収縮する場合にも同様に観測される。したがって、機能性層20の表面に初めに液滴Lを供給し、その後、針状管体Sによって液滴を構成する液体を吸引して液滴L、液滴Lの状態へと徐々に収縮させ、その収縮過程において減少及び増大を繰り返す接触角を測定しても良い。液滴Lとしては通常水が用いられるが、場合によりアルコール等の他の液体を用いても良い。具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール等を使用することができる。
例えば、機能性層20がポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)等の温度応答性ポリマーを含み、且つその固定化量が少ない場合には、機能性層20の表面の疎水性が相対的に高くなる。その場合、液滴Lと機能性層20との間の相互作用の影響が小さいため、液滴を拡張させるときに、液滴が機能性層20の表面に保持され難く、一旦増大した接触角はすぐに減少し、その結果、一定時間内における接触角の増大及び減少を繰り返す回数(本明細書において、スティックスリップ回数という)が多くなる。一方、機能性層20がPIPAAm等の温度応答性ポリマーを含み、且つその固定化量が多い場合には、機能性層20の表面の疎水性は相対的に低くなる(親水性が高くなる)。その場合、液滴と機能性層20との間の相互作用の影響が大きくなるため、液滴を拡張させるときに、液滴が機能性層20の表面に強く保持され、液滴の接触角はより大きな角度になるまで減少に転じず、その結果、一定時間内におけるスティックスリップ回数は少なくなる。したがって、一定時間内におけるスティックスリップ回数を測定することにより、ポリマーの固定化量等の、機能性層20の状態を評価することができる。
なお、スティックスリップ回数を測定する際、どの程度の接触角の増大及び減少を1回の繰り返し単位として数えるかは、評価対象とする複数の細胞培養基材の中で統一すれば良く、測定精度等を考慮して適宜設定することができる。例えば、単位時間内に、現在の接触角の値に対して5%〜65%以上変動した場合のみを接触角の増大又は減少として認定する方法や、所定の時間内に増大から減少への変動(又はその逆)があっても、その変動は無視し、その所定の時間範囲における最初と最後の時点の値を比較して増大又は減少の傾向を認定する方法等を挙げることができる。あるいは、種々の技術分野において従来知られたピーク検出法を利用しても良い。なお、後述の実施例においては、接触角が増大した後に減少に転じ、その後増大に転じる直前までを1回のスティックスリップと定義している。
また、スティックスリップ回数によって機能性層20の状態を評価する方法の他にも、接触角が増大及び減少を繰り返す現象(スティックスリップ現象)を観測し、その観測結果に基づき評価する方法であれば適宜採用することができる。例えば、増大及び減少を繰り返す接触角の変動周期(平均周期)に着目して評価を行う方法や、接触角が増大から減少に転じ、再び増大に転じるまでの接触角差(落差)の平均値等に基づき評価を行う方法等を挙げることができる。
機能性層20の表面に供給する液滴の量は、液滴の接触角を適切に測定できれば良く特に限定されない。具体的には、測定に伴って拡張又は収縮する液滴の最小値及び最大値が1μL〜1mL、特に1μL〜20μLの範囲内であることが好ましい。また、液滴にさらに液体を注入する場合、あるいは液体を吸引する場合における注入/吸引速度は、測定の精度や効率を考慮して適宜設定することができる。具体的には、0.25nL/msec〜0.5μL/msec程度、特に0.5nL/msec〜0.01μL/msec程度とすることが好ましい。
以上の評価方法を細胞培養基材の製造工程において利用することにより、機能性層の状態(固定化量、細胞の脱接着性)が良好な細胞培養基材を効率的に製造することができる。具体的には、例えば、予めいくつかの細胞培養基材を用いて細胞培養を行い、その細胞培養結果とスティックスリップ回数等との相関を調べてスティックスリップ回数等の好適な範囲(又は閾値)を求めておき、それ以降に量産される他の細胞培養基材のスティックスリップ回数等の値が上記の好適な範囲(又は閾値)に含まれるか否かをもって製品の良否の判定作業を行うことができる。この場合、細胞培養基材の量産工程においては、評価のために従来のような細胞培養を実施しないため、極めて短時間で評価を行うことができ、細胞培養基材の量産工程の大幅な効率化を図ることができる。一例として、基材がポリスチレンからなり、機能性層が温度応答性ポリマーであるポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)を含み、室温において機能性層の表面に1μLの水滴を供給し、さらに0.3μL/msecの量で水を注入し水滴を拡張させる場合、測定開始後2000msec経過するまでのスティックスリップ回数が2回〜4回の範囲内であれば、PIPAAmの固定化量及び細胞の脱接着性の観点から、機能性層の状態が良好であると判定することができる。
図2に、上述の評価方法を実施するための装置の一実施形態を示す。この評価装置は、細胞培養基材1が配置されるステージ11と、ステージ11上に配置された細胞培養基材1の機能性層の表面に液滴Lを供給し、さらに供給した液滴Lに液体を注入し又は供給した液滴から液体を吸引するための液滴調節手段12と、液体の注入により拡張するか又は液体の吸引により収縮する液滴Lを撮影するための撮像手段14と、撮像手段14により撮影した画像に基づき液滴Lの接触角を算出する接触角算出部15aとを有している。その他、例えば、拡張又は収縮する液滴Lの接触半径の変化も測定する場合には、撮影した画像に基づき液滴Lの接触半径を算出する接触半径算出部15bをさらに備えることができる。また、必要に応じて、ヒーター、冷却装置等の温度調節手段13を備えても良い。
ステージ11上の細胞培養基材1は、拡散板17を通過させた光源16からの光で照明される。撮像手段14は、拡張又は収縮する液滴Lを捉えることができれば良く、具体的にはCCD等を備える高速度カメラが好適に用いられる。図2に示すようにステージ11の側方から液滴Lを撮影し、液滴Lの接触角及び接触半径を測定することができるが、その他、ステージ11の上方にも撮像手段を設置して液滴Lを平面的に観測し、液滴Lの接触半径等を同時に測定して測定精度を高めても良い。また、液滴調節手段12は、液滴Lに挿入可能な、マイクロシリンジ等の針状管体を備え、さらに設定した量の液体を注入又は吸引するためのポンプ、及び針状管体を細胞培養基材1上の適切な位置に保持するための位置調節機構を適宜備えている。さらに、接触角算出部15a及び接触半径算出部15bは、撮像手段により取得される画像を解析し、液滴Lの接触角及び接触半径を算出する機能を有している。
次に、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
・細胞培養基材の製造
ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(アルドリッチ社)を2%含み、N−イソプロピルアクリルアミドを、最終モノマー濃度が40重量%となるようにイソプロピルアルコール(IPA)に溶解させて溶液を調製した。続いて、ポリスチレン製の基材を用い、この基材上に前記のN−イソプロピルアクリルアミド溶液をコーティングし、電子線照射装置を用いて電子線照射を行い、基材上にポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)からなる機能性層をグラフト重合により形成した。その後、この積層体を5℃のイオン交換水を用いて洗浄し、乾燥して細胞培養基材を得た。得られた細胞培養基材をエチレンガスオキサイド滅菌処理した。
・細胞培養基材の評価
製造した細胞培養基材を、接触角測定装置DM−501(商品名、協和界面科学社製)のステージに水平に載置し、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドの下限臨界溶解温度(T=32℃)未満である室温(25℃)において、機能性層の表面にマイクロシリンジの先端から純水1.5μLを滴下して液滴を形成した。続いて、この液滴にマイクロシリンジの先端を挿入した状態でさらに液体を注入し、液滴を拡張させた。拡張する液滴の様子を側方からCCDカメラで観測し、ソフトウェアFAMAS(商品名、協和界面科学社製)により液滴の接触角θ及び接触半径rを経時的に測定した。測定結果を図3及び図4に示す。また、温度条件をポリ−N−イソプロピルアクリルアミドの下限臨界溶解温度以上である40℃に設定し、上記と同様にして拡張する液滴の接触角θ及び接触半径rを経時的に測定した。測定結果を図5及び図6に示す。
(実施例2)
最終モノマー濃度が35重量%となるように溶解させた溶液を用いて機能性層を形成した以外は、上記実施例1と同様にして室温及び40℃における液滴の接触角θ及び接触半径rを測定した。測定結果を図3〜図6に示す。
(実施例3)
最終モノマー濃度が30重量%となるように溶解させた溶液を用いて機能性層を形成した以外は、上記実施例1と同様にして室温及び40℃における液滴の接触角θ及び接触半径rを測定した。測定結果を図3〜図6に示す。
(比較例1)
何らポリマー等が固定化されていないポリスチレン製の基材を用いて、上記実施例1と同様の測定を行い、室温及び40℃における液滴の接触角θ及び接触半径rを求めた。測定結果を図3〜図6に示す。
図3及び5に示すように、実施例1〜3の細胞培養基材については液滴の接触角θが増大及び減少を繰り返すスティックスリップ現象が観測された。また、接触半径rは図4及び6に示すように階段状に増大することが確認された。さらに、図3及び図5の結果を参照し、実施例1〜3及び比較例1について接触角θが増大及び減少を繰り返すスティックスリップ回数(グラフ中の各線の山の数)をカウントした。スティックスリップ回数は、測定開始後4700msec経過するまでの範囲内での回数である。その結果を図7に示す。なお、図7は、実施例1〜3及び比較例1の測定をそれぞれ複数回行った結果の平均値を示している。
図7に示すように、実施例1〜3はスティックスリップ回数が異なることから、スティックスリップ現象の観測によってPIPAAmの固定化量が異なる実施例1〜3の細胞培養基材を明確に区別できることが分かった。また、PIPAAmの固定化量が多い実施例1では、スティックスリップ回数が少なくなった。これは、固定化量が多くなると機能性層の表面が親水性となり、界面張力(液滴を保持する力)が相対的に大きくなるためと考えられる。一方、固定化量が少ない実施例1では、機能性層の表面はより疎水性となり、界面張力が相対的に小さいため、スティックスリップ回数が多く観測されたものと考えられる。なお、ポリマーが固定化されておらず、機能性層を有しない比較例1の場合には、表面の疎水性が最も高くなるため、液滴と機能性層との相互作用が弱くスティックスリップ現象は観測されなかった。比較例1における接触半径rは、図4及び6に示すようになだらかに増大する。
また、図7に示すように、測定温度が室温及び40℃のいずれの場合であっても、スティックスリップ回数は実施例1が最も少なく実施例3が最も大きいという傾向は変わらなかった。このことから、スティックスリップ回数は、測定温度によらず、機能性層の状態(ポリマーの固定化量)を反映することが明らかとなった。さらに、実施例1〜3ではいずれも、40℃で測定した場合のスティックスリップ回数が室温の場合よりも多くなった。これは、測定温度がPIPAAmの下限臨界溶解温度(T=32℃)よりも高いと、PIPAAmから水が脱離することでPIPAAmが収縮して細胞接着性を示し、表面がより疎水性となって界面張力(液滴を保持する力)が相対的に小さくなるためと考えられる。
次に、実施例1〜3で作製した細胞培養基材を内側底面に設置したシャーレに、10%FBS含有DMEM培地を満たし、3T3 Swiss Albino細胞を6.25×10cell/cmの条件で播種した。37℃下で18時間培養した後に、20℃の低温インキュベーターに移し、30分間のインキュベート後、剥離して浮遊した細胞の様子を位相差顕微鏡で観察した。その結果、実施例1の細胞培養基材では細胞の剥離性(脱着性)が良好であったのに対し、実施例2及び3の細胞培養基材では細胞が一部剥離せず、剥離性が良好といえるものではなかった。これらの結果から、拡張する液滴のスティックスリップ回数を指標として、細胞の脱接着性が良好な細胞培養基材を効率的に製造することができることが分かった。
1 細胞培養基材
10 基材
11 ステージ
12 液滴調節手段
13 温度調節手段
14 撮像手段
15a 接触角算出部
15b 接触半径算出部
16 光源
17 拡散板
20 機能性層
L、L〜L 液滴
S 針状管体
r 接触半径
θ 接触角

Claims (5)

  1. 基材と、前記基材上に設けられた、細胞を培養するための機能性層とを有する細胞培養基材の評価方法であって、
    機能性層の表面に液滴を供給する工程と、
    供給した液滴にさらに液体を注入して液滴を拡張させるか又は供給した液滴から液体を吸引して液滴を収縮させる工程と、
    拡張又は収縮する液滴の接触角を測定する工程と、
    を有し、
    接触角が増大及び減少を繰り返すスティックスリップ現象を観測し、そのスティックスリップ現象の観測結果に基づいて機能性層の状態の評価を行う前記細胞培養基材の評価方法。
  2. 機能性層の状態の評価を、接触角が増大及び減少を繰り返す回数に基づいて行う請求項1に記載の細胞培養基材の評価方法。
  3. 機能性層が、温度変化により細胞接着性が変化する温度応答性ポリマーを含む請求項1又は2に記載の細胞培養基材の評価方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の評価方法を実施するための装置であって、
    細胞培養基材が配置されるステージと、
    ステージ上に配置された細胞培養基材の機能性層の表面に液滴を供給し、さらに供給した液滴に液体を注入し又は供給した液滴から液体を吸引するための液滴調節手段と、
    液体の注入により拡張するか又は液体の吸引により収縮する液滴を撮影するための撮像手段と、
    撮像手段により撮影した画像に基づき液滴の接触角を算出する接触角算出部と、
    を有する細胞培養基材の評価装置。
  5. 基材と、前記基材上に設けられた、細胞を培養するための機能性層とを有する細胞培養基材を準備する工程と、
    準備した細胞培養基材について、請求項1〜3のいずれかに記載の評価方法を実施する工程と、
    を有し、
    評価の結果、機能性層の状態が良と判定されたものとを製品とする細胞培養基材の製造方法。
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