JP2019080561A - 多能性幹細胞培養用の多孔質基材及び多能性幹細胞の未分化維持培養方法 - Google Patents

多能性幹細胞培養用の多孔質基材及び多能性幹細胞の未分化維持培養方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 フィーダーフリー培養で多能性幹細胞を未分化維持培養可能であり、継代培養において多能性幹細胞の未分化維持率が高く、タンパク質分解酵素を用いることなく多能性幹細胞を基材から剥離可能な、多能性幹細胞培養用の多孔質基材、多能性幹細胞の未分化維持培養方法を提供する。【解決手段】 多孔質基材が平坦部及び細孔を有する平膜であり、前記細孔の孔径が培養する多能性幹細胞よりも小さなものであることを特徴とする、多能性幹細胞培養用の多孔質基材。【選択図】 図1

Description

本発明は、多孔質基材を多能性幹細胞の培養基材に適用することによって、タンパク質分解酵素を用いることなく多能性幹細胞を培養基材から剥離可能な多能性幹細胞培養用の多孔質基材、及び培養方法に関する。
胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)などの多能性幹細胞は、生体の様々な組織に分化する能力(分化万能性)を持つ細胞であり、再生医療分野における細胞ソースとして大きな注目が寄せられている。多能性幹細胞を再生医療に応用するには、まず必要な数の多能性幹細胞を基材に未分化状態で増殖させ、単一細胞又は細胞凝集塊(細胞シートを除く)として回収することが必須である。
多能性幹細胞を基材から細胞を剥離させる際は、タンパク質分解酵素が用いられている(例えば、特許文献1)。タンパク質分解酵素は多細胞表面にあるタンパク質を分解し、多能性幹細胞と基材間の結合および多能性幹細胞間の結合を切断する役目を担っている。しかしながら、タンパク質分解酵素は細胞の生存率に悪影響を与えることが知られており、特許文献1の方法では、剥離によって細胞の生存率が低下してしまうという問題があった。
タンパク質分解酵素を用いることなく細胞を剥離する方法として、温度応答性を有する基材を用いる方法が知られている。例えば、特許文献2では、水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子が被覆された細胞培養支持体を用い、温度変化により細胞を剥離せしめ、細胞シートを回収する方法が開示されている。しかしながら特許文献2に記載の方法では、多能性幹細胞に適用することはできないという問題があった。また、特許文献2では細胞シートの回収を主目的としており、単一細胞又は細胞の凝集塊を得るものではない。
WO2009/006399号公報 特開2009−131275号公報
本発明の目的は、フィーダーフリー培養で多能性幹細胞を未分化維持培養可能であり、継代培養において多能性幹細胞の未分化維持率が高く、タンパク質分解酵素を用いることなく多能性幹細胞を培養基材から剥離可能であり、多能性幹細胞を単一細胞又は細胞凝集塊(細胞シートを除く)として回収可能な多能性幹細胞の培養基材、培養方法を提供することにある。
本発明者らは以上の点を鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する多孔質基材を多能性幹細胞の培養基材として適用することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、平坦部及び細孔を有する平膜であり、前記細孔の孔径が培養する多能性幹細胞よりも小さなものであることを特徴とする、多能性幹細胞培養用の多孔質基材を提供する。
また、本発明は、多孔質基材を用いる細胞培養方法であって、下記[1]〜[3]工程を経ることを特徴とする多能性幹細胞の未分化維持培養方法を提供する。
[1]前記多孔質基材に、マトリゲル、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1種類の生体由来物質を添加する工程、及び、多孔質基材に多能性幹細胞を播種する工程。
[2]前記多孔質基材に播種された多能性幹細胞を増殖させる工程。
[3]前記増殖させた多能性幹細胞を外部刺激によって多孔質基材から剥離する工程。
本発明によって、フィーダーフリー培養で多能性幹細胞を培養可能であり、継代培養において多能性幹細胞の未分化維持率が高く、タンパク質分解酵素を用いることなく多能性幹細胞を培養基材から剥離可能であり、多能性幹細胞を単一細胞又は細胞凝集塊(細胞シートを除く)として回収可能な多能性幹細胞の未分化維持培養用基材、培養方法を提供することができる。
本発明の多孔質基材を示す斜視及び断面の模式図である。 実施例1の培養装置の断面の模式図である。 実施例1の多孔質基材表面のレーザー顕微鏡像である。 実施例1の培養結果を示す位相差顕微鏡像である。 実施例3の培養結果を示す位相差顕微鏡像である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その趣旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本発明において「多能性幹細胞」とは、全ての組織細胞へと分化することが可能(分化多能性)な細胞を示す。多能性幹細胞の種類として特に限定はないが、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、生殖幹細胞(GS細胞)等を挙げることができる。再生医療への適用に好適であることからES細胞又はiPS細胞が好ましく、作製における倫理上の問題がないことからiPS細胞がさらに好ましい。また、多能性幹細胞の由来動物は特に限定されるものではないが、例えば、哺乳動物由来であることができる。哺乳動物の例には、げっ歯類(マウス、ラット等)、霊長類(サル、ヒト等)が含まれ、また実験動物であってもよく、コンパニオンアニマルであってもよい。本発明において、好ましくは霊長類由来であり、さらに好ましくはヒト由来である。
本発明では、多孔質基材を培養基材として用いる。本発明において「培養基材」とは、多能性幹細胞が接着するための支持体(足場材)を示す。培養基材として多孔質基材を用いることによって、本発明の培養方法は後述する[3]工程において、タンパク質分解酵素を用いることなく多能性幹細胞を培養基材から剥離することができる。培養基材として多孔質基材を用いない場合、タンパク質分解酵素を用いることなく多能性幹細胞を剥離することができない。また、培養基材が多孔質基材であることにより、培養中の細胞への物質伝達が促進されるため、多能性幹細胞の増殖性を高めることができる。本発明において多能性幹細胞の「増殖性」とは、多能性幹細胞を培養した際に一定期間に増殖する割合を示し、多能性幹細胞の量産性を高めるのに好適であることから、増殖性が高い方が好ましい。
本発明において、多孔質基材は平坦部及び細孔を有する平膜である。多孔質基材が平坦部及び細孔を有することによって、多能性幹細胞の増殖性及び剥離性を付与することができる。多孔質基材が平坦部及び細孔を有するとは、例えば図1に示す形状のように、平面に複数の細孔を設けた形状のことを示す。多孔質基材が前記構造を有することにより、多能性幹細胞の増殖性を高めることができ、また、タンパク質分解酵素を用いることなく多能性幹細胞を剥離することができる。本発明において多能性幹細胞の「剥離性」とは、後述するタンパク質分解酵素を用いることなく多能性幹細胞を剥離する[3]工程の際に、どの程度の強度の外部刺激によって剥離するかの程度を示し、より短時間で剥離が可能であり、また、多能性幹細胞にダメージを与えることなく剥離可能であることから、剥離性が高い方が好ましい。
本発明において、多能性幹細胞に十分な増殖性及び剥離性を付与するために、前記細孔の孔径は培養する多能性幹細胞よりも小さなものである。細孔の孔径が培養する多能性幹細胞よりも小さなものであることにより、多能性幹細胞が複数の細孔を跨って多孔質基材に接着するために、多能性幹細胞が十分な増殖性を有し、また、多能性幹細胞にダメージを与えることなく弱い外部刺激によって剥離可能である。また、増殖性を高めるのに好適であることから、前記孔径が5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましく、0.1μm以下であることが最も好ましい。さらに、多能性幹細胞の剥離性を高めるのに好適であることから、前記孔径が0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましく、0.1μm以上であることが特に好ましく、0.2μm以上であることが最も好ましい。ここで、本発明において多孔質基材の細孔の「孔径」とは、多孔質基材が有する細孔の、多孔質基材の面内方向に沿った直径の平均値を示し、多孔質基材のレーザー顕微鏡像や走査型電子顕微鏡像、透過型電子顕微鏡像において20点以上の細孔について該直径を測定し、平均値を求めることによって算出することができる。
本発明において、多能性幹細胞の増殖性及び剥離性を高めるのに好適であることから、多孔質基材の細孔の細孔密度が、10〜1010個/cmであることが好ましく、10〜10個/cmがさらに好ましく、10〜10個/cmが特に好ましく、10〜10個/cmが最も好ましい。ここで、本発明において多孔質基材の細孔の「細孔密度」とは、多孔質基材の基材面積当たりに存在する細孔の数を示し、多孔質基材のレーザー顕微鏡像や走査型電子顕微鏡像、透過型電子顕微鏡像において、多孔質基材の細孔の孔径の200倍以上の長さを一辺とする正方形の領域において細孔の数を求めることで算出することができる。なお、本発明において多孔質基材の「基材面積」とは、多孔質基材に細孔が存在しないと仮定した場合の、多孔質基材の一主面の表面積を示す。
本発明において、多能性幹細胞の剥離性を高めるのに好適であることから、多孔質基材の空隙率が0.01〜60%であることが好ましく、0.01〜20%がさらに好ましく、0.01〜4%が特に好ましく、0.01〜1.5%が最も好ましい。ここで、本発明において多孔質基材の「空隙率」とは、多孔質基材の表面の一主面について、細孔部分の合計面積を基材面積で割った値で、面積割合で基材面にどの程度の空隙が存在するのかを示し、多孔質基材のレーザー顕微鏡像や走査型電子顕微鏡像、透過型電子顕微鏡像において、多孔質基材の細孔の孔径の200倍以上の長さを一辺とする正方形の領域を観察することによって測定することができる。
前記空隙率としてはまた、位相差顕微鏡による多能性幹細胞の観察を可能とするのに好適であることから、80%以下が好ましく、50%以下がさらに好ましく、20%以下が特に好ましく、10%以下が最も好ましい。
さらに、前記空隙率としては、培地中に含まれる成分を迅速に透過させ、細胞へ万遍なく栄養を行き渡らせるのに好適であることから、空隙率が0.1%以上であることが好ましく、1%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましく、10%以上が最も好ましい。空隙率が前記範囲にあることで、多能性幹細胞の継代培養において剥離回収した細胞の未分化維持率を高めることができる。ここで、本発明において多能性幹細胞の「未分化維持率」とは、培養した細胞に含まれる未分化の多能性幹細胞の割合を示し、多能性幹細胞の未分化マーカーを染色し、フローサイトメーターにより測定することができる。未分化維持率が高い場合、多能性幹細胞の純度が高いことを意味し、好ましいものである。
本発明において、多孔質基材が有する細孔の形状に特に制限はないが、位相差顕微鏡による多能性幹細胞の観察を可能とするのに好適であることから、多孔質基材が有する細孔が、円柱状の形状であることが好ましく、独立した円柱状の形状であることがさらに好ましい。細孔の形状が円柱状の形状であることにより、多孔質基材の透明性を高めることができ、位相差顕微鏡によって多孔質基材表面の細胞の形状を観察するのに好適である。
本発明において、多能性幹細胞の増殖性を高めるのに好適であることから、多孔質基材の表面に、マトリゲル、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1種類の生体由来物質が吸着していることが好ましく、少なくともラミニンを含む4種類の組み合わせであることがさらに好ましく、ラミニンとマトリゲル、ラミニンとフィブロネクチン、又はラミニンとコラーゲンのいずれかの組み合わせであることが特に好ましく、ラミニン単独であることが最も好ましい。
前記生体由来物質は、天然物であってもよく、遺伝子組み換え技術等で人工的に合成したものであってもよく、制限酵素等で切断した断片や、これら生体由来物質をベースとした合成タンパク質あるいは合成ペプチドであっても良い。
前記マトリゲルとしては、入手容易性から、市販品としては例えば、Matrigel(Corning Incorporated製)やGeltrex(Thermo Fisher Scientific製)を好適に用いることができる。
前記ラミニンの種類は特に限定されるものではないが、例えば、ヒトiPS細胞の表面に発現しているα6β1インテグリンに対して高活性を示すことが報告されているラミニン511、ラミニン521又はラミニン511−E8フラグメントを用いることができる。前記ラミニンは、天然物であってもよく、遺伝子組み換え技術等で人工的に合成したものであってもよく、また、前記ラミニンをベースとした合成タンパク質あるいは合成ペプチドであっても良い。入手容易性から、市販品としては例えば、iMatrix−511((株)ニッピ製)を好適に用いることができる。
前記ビトロネクチンは、天然物であってもよく、遺伝子組み換え技術等で人工的に合成したものであってもよく、また、前記ビトロネクチンをベースとした合成タンパク質あるいは合成ペプチドであっても良い。入手容易性から、市販品としては例えば、ビトロネクチン,ヒト血漿由来(和光純薬工業(株)製)やsynthemax(Corning Incorporated製)、Vitronectin(VTN−N)(Thermo Fisher Scientific製)を好適に用いることができる。
前記フィブロネクチンは、天然物であってもよく、遺伝子組み換え技術等で人工的に合成したものであってもよく、また、前記フィブロネクチンをベースとした合成タンパク質あるいは合成ペプチドであっても良い。入手容易性から、市販品としては例えば、フィブロネクチン溶液、ヒト血漿由来(和光純薬工業(株)製)やRetronectin(タカラバイオ(株)製)を好適に用いることができる。
前記コラーゲンの種類は特に限定されるものではないが、例えば、typeIコラーゲンやtypeIVコラーゲンを用いることができる。前記コラーゲンは、天然物であってもよく、遺伝子組み換え技術等で人工的に合成したものであってもよく、また、前記コラーゲンをベースとした合成ペプチドであっても良い。入手容易性から、市販品としては例えば、コラーゲンI,ヒト(Corning Incorporated製)やコラーゲンIV,ヒト(Corning Incorporated製)を好適に用いることができる。
本発明において、多能性幹細胞の増殖性及び剥離性を高めるのに好適であることから、下記試験による多孔質基材のラミニン吸着率が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、20%〜80%であることが特に好ましく、30%〜60%であることが最も好ましい。
[ラミニン吸着率試験]
リン酸緩衝生理食塩水1mLに対して0.5mg/mLの濃度のラミニン511−E8フラグメント溶液を2〜2.5μL添加した溶液を、多孔質基材の基材面積における単位面積当たりの量で0.2mL/cm多孔質基材上に滴下し、37℃で24時間静置した時、下記式より求めたラミニン吸着率。
Figure 2019080561
ここで、多孔質基材に吸着したラミニン511−E8フラグメントの重量、及び、多孔質基材上に滴下した溶液に含まれるラミニン511−E8フラグメントの重量の測定方法については特に制限はないが、例えば、HiLyte FluorTM 647 Labeling Kit−NH(同仁化学研究所製)を用いて蛍光標識したラミニン511−E8フラグメントを用い、ラミニン吸着率を蛍光測定によって求める方法を挙げることができる。
本発明において、多能性幹細胞の増殖性及び剥離性を高めるのに好適であることから、多孔質基材の基材面積当りのラミニン511−E8フラグメントの吸着量が、5〜5000ng/cmであることが好ましく、10〜1000ng/cmであることがさらに好ましく、15〜500ng/cmであることが特に好ましく、20〜100ng/cmであることが最も好ましい。ラミニン511−E8フラグメントは、市販品としては例えばiMatrix−511(ニッピ社製)等を用いることができる。
本発明において、多孔質基材が表面に、水に対する応答温度が0℃〜50℃の範囲にある温度応答性高分子による層を有することが好ましい。本発明の基材が多孔質であり、さらに温度応答性高分子による層を有することによって、温度変化のみによって多能性幹細胞を剥離することができる。基材が多孔質ではないものであるか、又は、温度応答性高分子による層を有しない場合、温度変化のみによって多能性幹細胞を剥離することができない。
本発明において、前記温度応答性高分子は、応答温度が0℃〜50℃の範囲にあることが好ましい。応答温度が0℃〜50℃の範囲にあることにより、本発明の培養基材は体温(37℃)付近で多能性幹細胞接着性を有すると共に、温度降下で細胞を剥離し、ダメージを与えることなく細胞を分別回収することが可能である。応答温度を有しない場合、温度降下のみによって多能性幹細胞を剥離することができない。体温付近で多能性幹細胞接着性を付与すると共に、温度降下で多能性幹細胞を剥離し、ダメージを与えることなく多能性幹細胞を分別回収するのに好適であることから、応答温度が10℃〜40℃の範囲にあることがさらに好ましく、15℃〜35℃の範囲にあることが特に好ましく、15℃〜25℃が最も好ましい。ここで、本発明において応答温度とは、温度応答性高分子の下限臨界溶液温度を示し、温度応答性高分子を0.6wt%溶解させた水溶液において、波長500nmの光の透過率を0〜100℃の温度範囲で測定し、透過率の最大値に対して50%の透過率となる温度を求めることにより算出することができる。また、温度応答性高分子を0.6wt%の濃度で水に溶解させることができない場合においては、温度応答性高分子を被覆した基材の、水中における空気(気泡)の接触角を0〜100℃の温度範囲で測定し、接触角の最小値と最大値の平均値の接触角となる温度を求めることにより算出することができる。
前記温度応答性高分子を構成する単量体単位としては特に制限はないが、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド等のN アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のN,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体;1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−プロペニル)−モルホリン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)− ピペリジン、4−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−モルホリン等の環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル等のビニルエーテルを挙げることができ、応答温度を0〜50℃とするのに好適であることから、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミドが好ましく、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドがさらに好ましく、N−イソプロピルアクリルアミドが特に好ましい。
前記温度応答性高分子による層の膜厚としては特に制限はないが、温度変化による多能性幹細胞の剥離性を高めるのに好適であることから、1〜1000nmが好ましく、30〜500nmがさらに好ましく、50〜200nmが特に好ましく、80〜150nmが最も好ましい。
前記温度応答性高分子による層の形成方法としては特に制限はないが、温度応答性高分子を多孔質基材に強固に固定化するのに好適であることから、温度応答性高分子の単量体単位を多孔質基材上で電子線重合する方法、熱又は光反応性の温度応答性高分子を用いて熱または光により多孔質基材に固定化する方法、温度応答性高分子の単量体単位とその他の単量体単位との共重合体を用いる方法を好適に用いることができる。
前記温度応答性高分子の単量体単位とその他の単量体単位との共重合体を用いる方法においては、共重合体を強固に多孔質基材に固定化させるのに好適であることから、少なくとも水に不溶の高分子の単量体単位を含むことが好ましい。また、温度応答性高分子のLCSTの制御に好適であることから、共重合体の構造としてはブロック共重合体であることが好ましい。
前記水に不溶の高分子の単量体単位としては特に制限はないが、例えば、スチレン、2−ヒドロキシフェニルアクリレート、2−ヒドロキシフェニルメタクリレート、3−ヒドロキシフェニルアクリレート、3−ヒドロキシフェニルメタクリレート、4−ヒドロキシフェニルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−ドデシルメタクリレート、n−テトラデシルアクリレート、n−テトラデシルメタクリレートを挙げることができる。
前記共重合体における温度応答性高分子の構成単位比率は、多能性幹細胞の剥離性を高め、継代培養における未分化維持率を高める観点から、5mol%以上が好ましく、20mol%以上がさらに好ましく、30mol%以上が特に好ましく、40mol%以上が最も好ましい。また、共重合体を多孔質基材へ強固に固定化するのに好適であることから、温度応答性高分子の構成単位比率が95mol%以下であることが好ましく、90mol%以下であることがさらに好ましく、85mol%以下であることが特に好ましく、80mol%以下であることが最も好ましい。
本発明における温度応答性高分子の分子量としては特に制限はないが、温度応答性高分子による層の強度を高めるのに好適であることから、数平均分子量で1000〜100万であることが好ましく、2000〜50万であることがさらに好ましく、5000〜30万であることが特に好ましく、1万〜20万であることが最も好ましい。
本発明において、多能性幹細胞の増殖性及び剥離性を高めるのに好適であることから、多孔質基材の材質が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ニトロセルロース及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましく、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種類であることがさらに好ましく、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートから選択される少なくとも1種類であることが特に好ましく、ポリエチレン又はポリエチレンテレフタレートから選択される少なくとも1種類であることが最も好ましい。
本発明において、多能性幹細胞の増殖性を高めるために、多孔質基材の表面にガンマ線照射、プラズマ処理、コロナ処理等などで表面処理を施したものを用いてもよく、多孔質基材の表面にポリマーコーティングを施したものを用いてもよい。
本発明はまた、多孔質基材を用いる多能性幹細胞の培養方法であって、下記[1]〜[3]工程を経ることを特徴とする多能性幹細胞の未分化維持培養方法にも関するものである。
[1]前記多孔質基材にマトリゲル、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1種類の生体由来物質を添加する工程、及び、多孔質基材に多能性幹細胞を播種する工程。
[2]前記多孔質基材に播種された多能性幹細胞を増殖させる工程。
[3]前記増殖させた多能性幹細胞を外部刺激によって多孔質基材から剥離する工程。
ここで、本発明において「未分化維持培養」とは、前記多能性幹細胞の分化多能性を維持したまま培養し、多能性幹細胞を増殖させることによってその数を増やすことを示す。
以下、各工程について詳細に説明する。
本発明の多能性幹細胞の未分化維持培養方法における[1]工程は、多孔質基材にマトリゲル、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1種類の生体由来物質を添加する工程(以下、「生体由来物質添加工程」と表記する。)、及び、培養基材に多能性幹細胞を播種する工程(以下、「細胞播種工程」と表記する。)である。本発明において「細胞を播種する」とは、細胞が分散した培地(以下、「細胞懸濁液」と表記する。)を培養基材上に塗布、又は、培養基材に注入する等により、細胞懸濁液と培養基材とを接触させることを示す。本発明において、前記生体由来物質添加工程と細胞播種工程の順番に特に制限はなく、一方を先に行ってもよいし、生体由来物質及び多能性幹細胞を同一の培地内に混合することによって、これらの工程を同時に行う方法であってもよい。生体由来物質添加工程を有することによって、多能性幹細胞を多孔質基材に接着させ、増殖させることが可能となる。生体由来物質添加工程を有しない場合、多能性幹細胞が多孔質基材に接着させることができないか、又は増殖させることができない。
前記[1]工程において、前記生体由来物質添加工程としては、特に制限はないが、例えば、培養基材に事前にコーティング又は吸着させておく方法、細胞播種時の培地に添加しておく方法等を挙げることができる。
前記生体由来物質添加工程において、多能性幹細胞接着性を付与するのに好適であることから、少なくともラミニンを含む4種類の組み合わせであることがさらに好ましく、ラミニンとマトリゲル、ラミニンとフィブロネクチン、又はラミニンとコラーゲンのいずれかの組み合わせであることが特に好ましく、ラミニン単独であることが最も好ましい。
前記[1]工程において、多能性幹細胞の播種方法に特に制限はないが、例えば、培養基材に細胞懸濁液を塗布、又は注入することによって行うことが出来る。播種の際の細胞密度は特に制限はないが、細胞を維持することができ、かつ増殖させることができるように、1.0×10〜1.0×10cells/cmが好ましく、5.0×10〜5.0×10cells/cmがさらに好ましく、1.0×10〜2.0×10cells/cmが特に好ましく、1.2×10〜1.0×10cells/cmが最も好ましい。
前記[1]〜[3]工程においては、多能性幹細胞の未分化性を維持させるのに有効な条件で培養が実施される。未分化性を維持させるのに有効な条件としては、特に制限はないが、例えば、培養開始時の多能性幹細胞の密度を上記播種の際の細胞密度として記載した好ましい範囲とすること、適切な液体培地の存在下で行うことなどが挙げられる。多能性幹細胞の未分化性を維持させるのに有効な培地としては、例えば、多能性幹細胞の未分化性を維持するための因子として知られている、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウム、塩基性線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、CCL2、アクチビン、2−メルカプトメタノールのうち1つ以上を添加した培地を好適に用いることができる。多能性幹細胞の未分化性を維持するのに特に好適であることから、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウム、塩基性線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)を含有する培地を用いることがさらに好ましく、塩基性線維芽細胞増殖因子を添加した培地を用いることが最も好ましい。
前記塩基性線維芽細胞増殖因子を添加した培地の種類に特に制限はないが、例えば、市販品としては、DMEM(Sigma−Aldrich Co. LLC製)、Ham’s F12(Sigma−Aldrich Co. LLC製)、D−MEM/Ham’s F12(Sigma−Aldrich Co. LLC製)、Primate ES Cell Medium((株)REPROCELL製)、StemFit AK02N(味の素(株)製)、StemFit AK03(味の素(株)製)、mTeSR1(STEMCELL TECHNOLOGIES製)、TeSR−E8(STEMCELL TECHNOLOGIES製)、ReproNaive((株)REPROCELL製)、ReproXF((株)REPROCELL製)、ReproFF((株)REPROCELL製)、ReproFF2((株)REPROCELL製)、NutriStem(バイオロジカルインタストリーズ社製)、iSTEM(タカラバイオ(株)製)、GS2−M(タカラバイオ(株)製)、hPSC Growth Medium DXF(PromoCell(株)製)等を挙げることができる。多能性幹細胞の未分化状態を維持するのに好適であることから、Primate ES Cell Medium((株)REPROCELL製)、StemFit AK02N(味の素(株)製)又はStemFit AK03(味の素(株)製)が好ましく、StemFit AK02N(味の素(株)製)又はStemFit AK03(味の素(株)製)がさらに好ましく、StemFit AK02N(味の素(株)製)が特に好ましい。
前記[1]工程で用いる培地としてはまた、多能性幹細胞の生存を維持するのに好適であることから、前記塩基性線維芽細胞増殖因子を添加した培地にさらにRho結合キナーゼ阻害剤を添加した培地を用いることが好ましい。特にヒトの多能性幹細胞を用いる場合であって、ヒトの多能性幹細胞の細胞密度が低い状態において、Rho結合キナーゼ阻害剤が添加されていると、ヒトの多能性幹細胞の生存維持に効果的な場合がある。Rho結合キナーゼ阻害剤としては、例えば、(R)−(+)−trans−N−(4−pyridyl)−4−(1−aminoethyl)−cyclohexanecarboxamide・2HCl・H2O(和光純薬工業(株)製Y−27632)、1−(5−Isoquinolinesulfonyl)homopiperazine Hydrochloride(和光純薬工業(株)製HA1077)を用いることができる。培地に添加されるRho結合キナーゼ阻害剤の濃度としては、ヒトの多能性幹細胞の生存維持に有効な範囲であってヒトの多能性幹細胞の未分化状態に影響を与えない範囲であり、好ましくは1μM〜50μMであり、より好ましくは3μM〜20μMであり、さらに好ましくは5μM〜15μMであり、最も好ましくは8μM〜12μMである。
前記[1]工程を開始するとまもなく、多能性幹細胞は培養基材に接着し始める。
本発明の多能性幹細胞の未分化維持培養方法における[2]工程では、前記播種された多能性幹細胞を増殖させる。細胞の増殖能や生理活性,機能維持に好適であることから、培養温度としては、好ましくは30〜42℃、さらに好ましくは32〜40℃、特に好ましくは36〜38℃、最も好ましくは37℃である。
前記[2]工程を開始して22〜26時間後に、最初の培地交換を行うことが好ましい。その48〜72時間後に2度目の培地交換を行い、その後、24〜48時間毎に培地交換を行うことが好ましい。この間、多能性幹細胞は増殖し、コロニーと呼ばれる細胞塊を形成する。コロニーの大きさが1mm前後になるまで培養を継続させ、その後[3]工程に移行する。
本発明の多能性幹細胞の未分化維持培養方法における[3]工程では、多能性幹細胞が増殖した培養基材に外部刺激を与えることにより、タンパク質分解酵素を用いることなく、前記増殖した多能性幹細胞を培養基材から剥離する。ここで、本発明において「外部刺激」とは、超音波や振動等の力学的刺激、光や電気、磁気等の電磁気学的刺激、加温や冷却等の熱力学的刺激を示し、酵素反応等の生物反応によるものを除く。前記外部刺激としては、多能性幹細胞を好適に剥離させ、細胞へのダメージをより低減するために、培養液に対流を生じさせる工程、多孔質基材の細胞播種面の裏面に圧力を加える工程、多孔質基材に振動を加える工程からなる群から選択される少なくとも1種類の工程を含むことが好ましい。対流を生じさせる方法としては特に限定はないが、例えば、培養液をピペッティングすることやポンプ、撹拌翼を用いる等の方法により、機械的に液体内部に強制対流を発生させる方法の他、培養基材に物理的な振動を加える方法、温度差を与えることによりマランゴニ対流等の自然対流を発生させる方法を挙げることが出来る。
本発明において「培養液」とは、多能性幹細胞及び多孔質基材が浸漬している培地等の液体を示す。多孔質基材の細胞播種面の裏面に圧力を加える工程としては、多能性幹細胞の存在する面とは逆側の面に、ポンプなどにより圧力を加える方法を挙げることができる。ここで、本発明において「細胞播種面」とは、前記[1]工程において細胞を播種することによって、細胞が存在する多孔質基材面を示す。
また、前記[1]工程の多孔質基材が、表面に水に対する下限臨界溶解温度(LCST)が0℃〜50℃の範囲にある温度応答性高分子による層を有する多孔質基材である場合、前記[3]工程が、培養液を冷却する工程であっても良い。
本発明の多孔質基材はまた、本発明の多能性幹細胞の未分化維持培養方法を実行するための培養装置に用いることができる。前記培養装置は多孔質基材を含み、前記多孔質基材は固定されて用いられていることが好ましい。培養可能な多能性幹細胞の数を増加させるのに好適であることから、多孔質基材が前記培養装置において、複数積層されていることが好ましい。
本発明の培養装置においては、前記多孔質基材を含み、前記培養方法を実行するための装置であること以外は特に限定されず、培養装置の形状、規模などは特に制限はない。シャーレ、試験管から大型のタンクまで適宜利用可能である。
本発明の培養基材は、大量の細胞を培養する際に、細胞を剥離する工程を簡略化し細胞の量産性を高めるのに好適であることから、弱い外部刺激で細胞が剥離することが好ましく、冷却及びピペッティングで剥離することがさらに好ましく、冷却のみで剥離することが特に好ましい。ここで、本発明において「ピペッティング」とは、ピペットマン等の器具を用いて培養液の吸引及び吐出を繰り返すことにより、培養環境に対流を生じさせる操作を示す。
本発明の培養基材は、培養した多能性幹細胞から作製した細胞懸濁液を未分化維持培養又は分化誘導用のスフェロイドの作製に用いるのに好適であることから、継代培養した多能性幹細胞の未分化維持率が70%以上であることが好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。未分化維持率は未分化マーカーを染色した細胞を用いてフローサイトメーターにより測定することができる。
以下、本発明を実施するための形態を挙げて本発明について詳細に説明する。なお、断りのない限り、試薬は市販品を用いた。
[多孔質基材の細孔の孔径及び細孔密度の測定]
多孔質基材の細孔の観察はレーザー顕微鏡((株)キーエンス製VK−X)により行い、無作為に選んだ20点の細孔の直径を測定することにより孔径を算出した。また、80μmを一辺とする正方形の領域の細孔数を求めることにより、細孔密度を算出した。
[実施例1]
多孔質基材として孔径0.4μm、細孔密度1.9×10個/cmの円柱状の細孔を有する空隙率0.24%の多孔質膜(Corning Incorporated製、商品名Falcon(登録商標)カルチャーインサート、材質:ポリエチレンテレフタレート)を用い、ヒトiPS細胞201B7株を1300個/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を用いた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(培地に対して2.5μL/mL)を添加し培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させ、再度位相差顕微鏡で観察した。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。
[実施例2]
実施例1と同様にして細胞を培養し、細胞播種から144時間後の培地交換の後、細胞播種面の裏面から窒素圧により加圧した。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。
[実施例3]
試験管に、4−シアノ−4−[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノイックアシッド0.40g(0.1mmol)、n−ブチルメタクリレート7.11g(50mmol)、アゾビス(イソブチロニトリル)33mg(0.2mmol)を加え、1,4−ジオキサン50mLに溶解した。窒素バブリングにより30分脱気を行った後、65℃で24時間反応させた。反応終了後、反応溶媒をロータリーエバポレーターにて減圧留去し、反応溶液を濃縮した。濃縮液をメタノール250mLに注ぎ、析出した黄色油状物質を回収して減圧乾燥し、n−ブチルメタクリレート重合体を得た。
試験管に、前記n−ブチルメタクリレート重合体0.9g(0.3mmol)、N−イソプロピルアクリルアミド8.14g(72mmol)、アゾビスイソブチロニトリル5mg(0.03mmol)を加え、1,4−ジオキサン15mLに溶解させた。窒素バブリングにより30分脱気を行った後、65℃で17時間反応させた。反応終了後、反応液をアセトンで希釈し、ヘキサン200mLに注ぎ、析出した淡黄色固体を回収して減圧乾燥し、N−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体を得た。
多孔質基材として孔径0.4μm、細孔密度1.9×10個/cm、の円柱状の細孔を有する空隙率0.24%の多孔質膜(Corning Incorporated製、商品名Falcon(登録商標)カルチャーインサート、材質:ポリエチレンテレフタレート)を用い、この基材上にN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体の0.6wt%エタノール溶液を2000rpmでスピンコートし、温度応答性高分子を被覆した。この基材上にヒトiPS細胞201B7株を1300個/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を用いた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(培地に対して2.5μL/mL)を添加し培養した。 細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却し、再度位相差顕微鏡で観察した。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。
[実施例4]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径0.05μm、孔密度6.0×10個/cmの細孔を有する空隙率1.2%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリカーボネート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、基材を4℃で1時間冷却し、再度位相差顕微鏡で観察した。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。
[実施例5]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径0.1μm、孔密度6.0×10個/cmの細孔を有する空隙率4.7%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリエチレンテレフタレート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させ、再度位相差顕微鏡で観察した。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。
[実施例6]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径0.2μm、孔密度5.0×10個/cmの細孔を有する空隙率15.7%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリエチレンテレフタレート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させた。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。なお、細胞の剥離は培養基材に光を当てて目視により観察することに加え、剥離操作の前後で培地中の細胞数を計測することにより確認した。
[実施例7]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径0.4μm、孔密度1.5×10個/cmの細孔を有する空隙率18.8%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリエチレンテレフタレート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させた。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。なお、細胞の剥離は培養基材に光を当てて目視により観察することに加え、剥離操作の前後で培地中の細胞数を計測することにより確認した。
[実施例8]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径0.45μm、孔密度4.0×10個/cmの細孔を有する空隙率0.6%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリエチレンテレフタレート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、再度位相差顕微鏡で観察した。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。
[実施例9]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径0.6μm、孔密度4.0×10個/cmの細孔を有する空隙率11.3%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリカーボネート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させた。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。なお、細胞の剥離は培養基材に光を当てて目視により観察することに加え、剥離操作の前後で培地中の細胞数を計測することにより確認した。
[実施例10]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径0.8μm、孔密度4.0×10個/cmの細孔を有する空隙率20.1%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリエチレンテレフタレート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させた。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。なお、細胞の剥離は培養基材に光を当てて目視により観察することに加え、剥離操作の前後で培地中の細胞数を計測することにより確認した。
[実施例11]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径2μm、孔密度3.0×10個/cmの細孔を有する空隙率9.4%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリエチレンテレフタレート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させ、再度位相差顕微鏡で観察した。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。
[実施例12]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径5μm、孔密度4.0×10個/cmの細孔を有する空隙率7.9%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリカーボネート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させ、再度位相差顕微鏡で観察した。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。
[実施例13]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径10μm、孔密度1.0×10個/cmの細孔を有する空隙率7.9%の多孔質膜(it4ip製、商品名ipPORE、材質:ポリエチレンテレフタレート)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させ、再度位相差顕微鏡で観察した。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。
[実施例14]
実施例3で合成したN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートのブロック共重合体をエタノールに溶解させ、0.6wt%溶液とした。孔径0.2μmの細孔を有する多孔質膜(帝人(株)製、商品名ミライム、材質:ポリエチレン)を直径3.2cm、内径1.6cmのリングで挟むことにより固定化した。多孔質膜にプラズマ照射(流入ガスは空気、20Paガス圧下、導電電流20mA、1分間照射)を行い、さらにブロック共重合体を溶解させたエタノール溶液を30μL滴下し、2000rpmで60秒間スピンコートした。室温で1時間乾燥し、ブロック共重合体が被覆された基材を作製した。
前記ブロック共重合体が被覆された基材を培地に浸漬して固定し、ヒトiPS細胞201B7株を1300cells/cmの密度で播種し、37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素(株)製)を多孔質膜上の液面高さが2mmとなる量(=多孔質膜の面積に対して0.2mL/cm)加えた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液((株)ニッピ製)(2.5μL/mL)を添加した培地を使用して培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、4℃で1時間冷却を行い、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させた。細胞は剥離し、凝集塊として回収出来た。なお、細胞の剥離は培養基材に光を当てて目視により観察することに加え、剥離操作の前後で培地中の細胞数を計測することにより確認した。
[実施例15]
実施例3で作製したブロック共重合体が被覆された基材に培地StemFitAK02N(味の素(株)製)を0.2mL/cm加え、さらにヒトiPS細胞201B7株を260個/cm、iMatrix−511溶液((株)ニッピ製)を2.5μL/mLの濃度で加えた。37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。また、細胞播種から24時間後までは、培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)を添加した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から168時間後、培地を全て除去した後にPBS緩衝液を加え、PBS緩衝液を吸引除去することで細胞を洗浄した。0.25mMのエチレンジアミン四酢酸を含有するPBS緩衝液を加え、37℃で5分間インキュベートした。Y−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)を含有する培地を加えた後、基材を4℃に冷却し、基材側面を叩いて振動を与え、ピペッティングを行うことにより細胞を基材から剥離して、細胞懸濁液を作製した。この細胞懸濁液を用いて、前記ブロック共重合体が被覆された基材に細胞を播種することで、継代を行った。同様の操作を繰り返すことにより、5回の継代を行った。
5回の継代を行った細胞を剥離して回収し、4%パラホルムアルデヒドを含有するPBS緩衝液で処理した後、Alexa Fluor(商標) 647 anti−human SSEA−4 Antibodyで細胞を染色し、フローサイトメーターにより細胞の未分化維持率を測定した。未分化維持率は98%であった。
[比較例1]
培養基材として非多孔質基材であるポリスチレンシャーレを用い、その他は実施例1と同様にして培養を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、培地にピペッティングを行うことで対流を発生させたが、細胞は剥離せず、回収することはできなかった。
[比較例2]
基材にブロック共重合体を被覆せず、直径3.5cmのディッシュ(Corning Incorporated製、材質:ポリスチレン)をそのまま用いた。
[継代培養及び未分化維持率評価]
前記ブロック共重合体が被覆された基材に培地StemFitAK02N(味の素(株)製)を0.2mL/cm加え、さらにヒトiPS細胞201B7株を1300個/cm、iMatrix−511溶液((株)ニッピ製)を2.5μL/mLの濃度で加えた。37℃、CO濃度5%の環境下で培養した。また、細胞播種から24時間後までは、培地にY−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)を添加した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい前記培地に交換を行った。細胞播種から168時間後、培地を全て除去した後にPBS緩衝液を加え、PBS緩衝液を吸引除去することで細胞を洗浄した。0.25mMのエチレンジアミン四酢酸を含有するPBS緩衝液を加え、37℃で5分間インキュベートした。Y−27632(和光純薬工業(株)製)(濃度10μM)を含有する培地を加えた後、基材表面をセルスクレーパーで擦ることにより全ての細胞を基材から剥離して、細胞懸濁液を作製した。この細胞懸濁液を用いて、前記ブロック共重合体が被覆された基材に細胞を播種することで、継代を行った。同様の操作を繰り返すことにより、20回の継代を行った。
20回の継代を行った細胞を剥離して回収し、4%パラホルムアルデヒドを含有するPBS緩衝液で処理した後、Alexa Fluor(商標) 647 anti−human SSEA−4 Antibodyで細胞を染色し、フローサイトメーターにより細胞の未分化維持率を測定した。未分化維持率は36%であった。
Figure 2019080561
1 多孔質基材
11 平坦部
12 細孔
20 培地

Claims (12)

  1. 平坦部及び細孔を有する平膜であり、前記細孔の孔径が培養する多能性幹細胞よりも小さなものであることを特徴とする、多能性幹細胞培養用の多孔質基材。
  2. 細孔の孔径が、0.01〜10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の多能性幹細胞培養用の多孔質基材。
  3. 空隙率が、0.01〜60%であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の多能性幹細胞培養用の多孔質基材。
  4. 細孔が、独立した円柱状の形状であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の多孔質基材。
  5. 多孔質基材が、表面に水に対する応答温度が0℃〜50℃の範囲にある温度応答性高分子による層を有することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の多能性幹細胞培養用の多孔質基材。
  6. 多孔質基材が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種類の材料であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の多能性幹細胞培養用の多孔質基材。
  7. 多能性幹細胞が人工多能性幹細胞であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の多能性幹細胞培養用の多孔質基材。
  8. マトリゲル、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1種類の生体由来物質が表面に吸着していることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の多能性幹細胞培養用の多孔質基材。
  9. 下記試験によるラミニン吸着率が10%以上であることを特徴とする、請求項1〜請求項8に記載の多能性幹細胞培養用の多孔質基材。
    リン酸緩衝生理食塩水1mLに対して0.5mg/mLの濃度のラミニン511−E8フラグメント溶液を2〜2.5μL添加した溶液を、多孔質基材の基材面積における単位面積当たりの量で0.2mL/cm多孔質基材上に滴下し、37℃で24時間静置した時、下記式より求めたラミニン吸着率。
    Figure 2019080561
  10. 多孔質基材を用いる細胞培養方法であって、下記[1]〜[3]工程を経ることを特徴とする多能性幹細胞の未分化維持培養方法。
    [1]請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質基材に、マトリゲル、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1種類の生体由来物質を添加する工程、及び、多孔質基材に多能性幹細胞を播種する工程。
    [2]前記多孔質基材に播種された多能性幹細胞を増殖させる工程。
    [3]前記増殖させた多能性幹細胞を外部刺激によって多孔質基材から剥離する工程。
  11. 前記[3]工程が、培養液に対流を生じさせる工程、多孔質基材の細胞播種面の裏面に圧力を加える工程及び多孔質基材に振動を加える工程からなる群から選択される少なくとも1種類の工程であることを特徴とする、請求項10に記載の多能性幹細胞の未分化維持培養方法。
  12. 前記[1]工程の多孔質基材が、請求項5に記載の多孔質基材であり、前記[3]工程が、培養液を冷却する工程であることを特徴とする、請求項10又は請求項11に記載の多能性幹細胞の未分化維持培養方法。
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