JP2014108093A - 機能性ポリマー層を有する多孔質フィルム基材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、均一な機能性ポリマー層を有する多孔質フィルム基材を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、物質の接着性を制御する機能性ポリマー層が多孔質フィルムに形成されてなる基材を製造する方法であって、第1の面と、第1の面の反対側に位置する第2の面と、を有する多孔質フィルムを準備する工程、少なくとも片面が再剥離性を有する微粘着性面である支持体を準備する工程、支持体の微粘着性面に多孔質フィルムの第1の面が接触するように、支持体上に多孔質フィルムを配置する工程、および多孔質フィルムの第2の面に、機能性ポリマー層を形成するための塗工液を供給する工程を含む前記方法に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、機能性ポリマー層を有する多孔質フィルム基材の製造方法に関する。
近年、酵素を用いることなくシート状に形成した細胞を低侵襲に回収する技術が再生医療分野において注目を集めている。その際に使用されるのが、温度応答性ポリマーを結合させた温度応答性細胞培養基材である。特許文献1には、水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性ポリマーで基材表面を被覆した細胞培養容器上において、細胞を上限臨界溶解温度未満または下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度未満にすることにより酵素処理なくして培養細胞を剥離させる方法が記載されている。
また、組織または細胞を培養する方法として、多重型培養容器が用いられることがある。これは二つの容器の底部が一定距離を保ち離隔され配置されることを特徴としている。上部容器の底面に透過性メンブレンを設けることで、液性因子の透過が可能となることから、増殖因子徐放担体との併用培養、二種類以上の細胞の共培養、および細胞を用いた物質透過性試験などに用いられている。特許文献2には、底部に透過性メンブレンを設けた培養容器を用いた上皮系細胞の培養方法であって、細胞が培養されている間は常に多孔膜を介して培地が下部容器から細胞に供給される培養方法が記載されている。
温度応答性による回収が望まれる細胞の中には培養の際に液性因子を必要とするものも存在するため、これらの技術を合わせることで、より高機能な細胞培養基材の作成が可能になると考えられる。温度応答性細胞培養基材を作製する方法として、基材への塗工液の塗布および電子線照射が知られているが、多孔質フィルムに塗工液を塗布すると塗工液が孔部を通過することによる裏周りが発生するため、塗工液を安定的に塗布する方法が必要となってくる。
特許1972502号 特開2011−250804号公報
多孔質フィルムへの塗布安定性向上のために、多孔質フィルムをテープを用いて支持体に固定して塗工液を塗布する方法が考えられるが、テープとの張り合わせや塗布時のテンションによって多孔質フィルムにしわや折れが生じ、歩留まりの低下や塗布膜厚の不均一化という問題があった。
本発明者らは、多孔質フィルムを、再剥離性の微粘着性面を有する支持体上に配置した上で、塗工液を塗布することにより、多孔質フィルムにしわや折れが生じるのを防ぐことができ、塗布膜厚を均一化できるとともに、塗工液の裏周りも防止できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)物質の接着性を制御する機能性ポリマー層が多孔質フィルムに形成されてなる基材を製造する方法であって、
第1の面と、第1の面の反対側に位置する第2の面と、を有する多孔質フィルムを準備する工程、
少なくとも片面が再剥離性を有する微粘着性面である支持体を準備する工程、
支持体の微粘着性面に多孔質フィルムの第1の面が接触するように、支持体上に多孔質フィルムを配置する工程、および
多孔質フィルムの第2の面に、機能性ポリマー層を形成するための塗工液を供給する工程
を含む前記方法。
(2)支持体の微粘着性面がシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂からなる、(1)記載の方法。
(3)機能性ポリマーが温度応答性ポリマーであり、基材が温度応答性細胞培養基材であり、多孔質フィルムに供給された塗工液に放射線を照射することにより温度応答性ポリマーを多孔質フィルムの第2の面に固定化する工程をさらに含む、(1)または(2)記載の方法。
(4)温度応答性ポリマーがアクリル系ポリマーまたはメタクリル系ポリマーである、(3)記載の方法。
(5)温度応答性ポリマーが、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドである、(4)記載の方法。
本発明によれば、多孔質フィルムに、しわや折れの発生を防止し、また塗工液の裏周りを防止して、機能性ポリマー層を形成することができ、均一な機能性ポリマー層を有する多孔質フィルム基材を製造することができる。
本発明の機能性ポリマー層が多孔質フィルムに形成されてなる基材の製造方法の一実施形態を示す断面図である。
本発明は、物質の接着性を制御する機能性ポリマー層が多孔質フィルム上に形成されてなる基材であって、特に細胞を培養して細胞シートを形成し、これを非浸襲的に回収するのに好適な、温度応答性を有する細胞培養基材を製造する方法に関する。
本発明の製造方法は、例えば図1に示すように、
第1の面と、第1の面の反対側に位置する第2の面と、を有する多孔質フィルム1を準備する工程(図1A)、
少なくとも片面が再剥離性を有する微粘着性面である支持体2を準備する工程(図1A)、
支持体2の微粘着性面に多孔質フィルム1の第1の面が接触するように、支持体上に多孔質フィルムを配置する工程(図1A)、および
多孔質フィルムの第2の面に機能性ポリマー層を形成するための塗工液3を供給する工程(図1BおよびC)
を含む。
本発明の製造方法は、好ましくは、例えば図1Dに示すように、多孔質フィルム1に供給された塗工液3に放射線4を照射することにより温度応答性ポリマーを多孔質フィルムの第2の面に固定化する工程をさらに含む。
物質の接着性を制御する機能性ポリマーは、特定の物質に対して接着性および/または非接着性の表面を提供する機能性ポリマーであり、例えば、細胞に対して接着性の表面を提供するポリマーや、細胞に対して非接着性の表面を提供するポリマーや、細胞に対する接着性が変化する表面を提供するポリマーなどが挙げられる。なお、物質は細胞に限らず、特定のたんぱく質、細菌、薬剤等を含む。このような機能性ポリマーによる物質の接着性の制御能を左右する一因としては、機能性ポリマーにより形成される機能性ポリマー層の厚さが挙げられる。すなわち、機能性ポリマーによる物質の接着性の制御能を均質化したい場合には、機能性ポリマー層の厚さを均一化することが有効である。
特に物質が細胞である場合、細胞接着性を判断する指標として、実際に細胞培養した際の細胞接着伸展率を用いることができる。細胞接着性の表面は、細胞接着伸展率が60%以上の表面であることが好ましく、細胞接着伸展率が80%以上の表面であることが更に好ましい。細胞接着伸展率が高いと、効率的に細胞を培養することができる。本発明における細胞接着伸展率は、播種密度が4000cells/cm以上30000cells/cm未満の範囲内で培養しようとする細胞を測定対象表面に播種し、37℃、CO濃度5%のインキュベーター内に保管し、14.5時間培養した時点で接着伸展している細胞の割合({(接着している細胞数)/(播種した細胞数)}×100(%))と定義する。
細胞の播種は、10%FBS入りDMEM培地に懸濁させて測定対象物上に播種し、その後、細胞ができるだけ均一に分布するよう、細胞が播種された測定対象物をゆっくりと振とうすることにより行うものである。さらに、細胞接着伸展率の測定は、測定直前に培地交換を行って接着していない細胞を除去した後に行う。細胞接着伸展率の測定では、細胞の存在密度が特異的になりやすい箇所(例えば、存在密度が高くなりやすい所定領域の中央、存在密度が低くなりやすい所定領域の周縁)を除いた箇所を測定箇所とする。
一方、細胞非接着性とは、細胞が接着しにくい性質をいう。細胞非接着性は、表面の化学的性質や物理的性質等によって細胞の接着や伸展が起こりにくいか否かで決定される。細胞非接着性の表面は、上記で定義した細胞接着伸展率が60%未満の表面であることが好ましく、40%未満の表面であることがより好ましく、5%以下の表面であることが更に好ましく、2%以下の表面であることが最も好ましい。
細胞に対して非接着性の表面を提供するポリマーとしては、親水性ポリマーが挙げられる。本発明において親水性ポリマーは、細胞の吸着、特に非特異的吸着を抑制する親水性ポリマーをさす。親水性ポリマーは、炭素成分を含み、ポリマーの主鎖もしくは側鎖に親水性の官能基を含むポリマーのことを指す。親水性ポリマーは、水溶性や水膨潤性を有する、炭素酸素結合を含む水溶性ポリマーであることが好ましい。また、細胞培養に使用する場合は、生体毒性の低いもの採用することが好ましい。
親水性ポリマーの具体例としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、これらと他のモノマーとの共重合体や、グラフト重合体などが挙げられる。中でもポリアルキレングリコールは様々な分子量のものが市販されており、かつ生体適合性に優れているので好適に用いることができる。
ポリアルキレングリコール(PAG)は、1つ以上のアルキレングリコール単位((CH−O)からなるアルキレングリコール鎖(AG鎖)を少なくとも含むが、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキレングリコール鎖は、例えば、次式:
−((CH−O)
(nはアルキレン鎖の炭素数を表し、mは重合度を示す整数である)
で表される構造を指す。nは、同一または異なって、通常1〜10の整数であり、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは2〜3の整数である。mは、好ましくは1〜100の整数であり、より好ましくは3〜10の整数である。ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマーなどが挙げられる。mが小さいと細胞非接着性の機能が弱く、またmが大きいと性質として凝固しやすいため製造上困難が生じうる。
PAG末端のヒドロキシル基は、他の物質と共有結合を形成することが可能な官能基が直接的または間接的(リンカーを解して)に導入された状態であってもよい。導入される官能基としては、代表的には、(1H−イミダゾール−1−イル)カルボニル基、スクシンイミジルオキシカルボニル基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アジド基、シアノ基、活性エステル基(1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、パラニトロフェニルオキシカルボニル基等)、ハロゲン化カルボニル基(塩化カルボニル基、フッ化カルボニル基、臭化カルボニル基、ヨウ化カルボニル基)等が挙げられる。これらの官能基は、PAG末端のヒドロキシル基の水素を置換する置換基として、PAGに直接的に連結されていてもよいし、PAGの末端に結合したリンカーに結合した官能基として、PAGに間接的に連結されていてもよい。リンカーとしては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5の、二価の脂肪族炭化水素基、好ましくはアルキレン基が挙げられる。アルキレン基における炭素が、窒素、酸素および硫黄から選択される同一または異なるヘテロ原子で置換された基でもよい。
多孔質フィルム上に形成される親水性ポリマー層における親水性ポリマーの密度および親水性は、表面における水の接触角を指標として簡便に評価することができる。例えば、親水性ポリマー固定化後の表面の水接触角が典型的には48°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下であれば、親水性ポリマーが十分な密度で存在し、親水性を有するとともに細胞の吸着や接着、特に非特異的吸着が抑制されていると考えられる。なお、本発明において水接触角とは、23℃において測定される水接触角をさす。
機能性ポリマー層として親水性ポリマー層を形成するための塗工液は、親水性ポリマーを、好ましくは適当な溶媒に溶解することにより調製できる。親水性ポリマーは、一種類のみを用いてよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましい溶媒としては、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、2−ブタノール、n−ブタノール、および水等が挙げられ、それらを1種以上使用してよい。その他の溶媒、例えば1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−ブトキシエタノール、およびエチレン(もしくはジエチレン)グリコールまたはそのモノエチルエーテル、等も1種以上使用してよい。本発明においては、i−プロパノールが好ましい。i-プロパノールは薄膜に塗布することで室温にて容易に揮発するため、特段の乾燥工程なしに、乾燥によるメリットを得ることができるからである。また、多孔質フィルム基材として細胞培養に汎用されるポリスチレンを選択した場合においても表面を侵さないため好ましい。上記塗工液にはその他添加剤として、硫酸等で代表される酸類、モール塩等を配合してよい。
溶媒に溶解させる親水性ポリマーの量は、ポリマーの分子量に応じて決定されるが、好ましくは放射線照射の直前における濃度が1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。
本発明の方法は、機能性ポリマーとしての、細胞に対する接着性が変化する表面を提供するポリマーのうち、特に温度応答性ポリマーの層を多孔質フィルムに形成する場合に優位に用いられる。温度応答性ポリマーは、温度変化によって細胞の脱接着を可能とする材料であり、このような細胞の脱接着を適切に行うには、温度応答性ポリマーにより形成される機能性ポリマー層の厚みを綿密に制御する必要があるからである。
温度応答性ポリマーは細胞培養温度下(通常、37℃程度)において疎水性を示し、培養した細胞シートの回収時の温度下において親水性を示すものである。なお、温度応答性ポリマーが、疎水性から親水性に変化する温度(水に対する臨界溶解温度(T))としては、特に限定されないが、培養後の細胞シートの回収の容易さの観点からは、細胞培養温度よりも低い温度であることが好ましい。このような温度応答性ポリマー成分を含むことで、細胞培養時においては、細胞の足場(細胞接着面)が充分に確保されるため細胞培養を効率よく行うことができる。その一方、培養後の細胞シートの回収時においては、疎水性部分を親水性に変化させ、培養された細胞シートを細胞培養基材から分離させることで、細胞シートの回収を一層容易にすることができる。特に所定の臨界溶解温度未満の温度で親水性を示し、同温度以上の温度で疎水性を示す温度応答性ポリマーが好ましい。このような温度応答性ポリマーにおける臨界溶解温度を特に下限臨界溶解温度と呼ぶ。
本発明に好適に使用できる温度応答性ポリマーは具体的には下限臨界溶解温度Tが0〜80℃、好ましくは0〜50℃であるポリマーが好ましい。Tが80℃を越えると細胞が死滅する可能性があるので好ましくない。またTが0℃より低いと、一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細胞が死滅してしまうため好ましくない。そのような好適なポリマーとしてはアクリル系ポリマーまたはメタクリル系ポリマーが挙げられる。具体的に好適なポリマーとしては、例えばポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35℃)、およびポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=32℃)等が挙げられる。その他のポリマーとしては、例えばポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリメチルビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のアルキル置換セルロース誘導体や、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドとのブロック共重合体等に代表されるポリアルキレンオキサイドブロック共重合体が挙げられる。
温度応答性ポリマーの分子量は、特に制限されないが、分子量に応じてグラフト密度を調整することが好ましい。例えば、比較的分子量の小さいポリマーは密に固定化し、比較的分子量の大きいポリマーは疎に固定化することが好ましい。
これらのポリマーを形成するためのモノマーとしては、例えばモノマーの単独重合体がT=0〜80℃を有するようなモノマーであって、放射線照射によって重合し得るモノマーが挙げられる。モノマーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(もしくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、およびビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。モノマーが一種類単独で使用された場合、多孔質フィルム上に形成されるポリマーはホモポリマーとなり、モノマーが複数種一緒に使用された場合、多孔質フィルム上に形成されるポリマーはコポリマーとなるが、どちらの形態も本発明に包含される。また、増殖細胞の種類によってTを調節する必要がある場合や、被覆物質と細胞培養基材との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞培養基材の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとその他のポリマーとのグラフトまたはブロック共重合体、あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を用いてもよい。
機能性ポリマー層として温度応答性ポリマー層を形成するための塗工液として、上記のようなモノマーを、好ましくは適当な溶媒に溶解したものを使用できる。モノマーとともに、前記モノマーが重合してなるオリゴマーまたはプレポリマーを、溶媒に溶解して塗工液を調製してもよい。ここでオリゴマーまたはプレポリマーの大きさはダイマー以上のものであれば特に限定されず、分子量約3,300(典型的には28分子ポリマー)より大きいものが好ましく、分子量5,700以上のものがより好ましい。上限は特に限定されないが、ポリマーと区別する観点から、通常は100万以下である。なお「プレポリマー」という用語は放射線照射前のポリマーを指す。
塗工液に含まれるモノマーの量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。モノマーに加えて、オリゴマーまたはプレポリマーを添加する場合のオリゴマーまたはプレポリマーの量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
温度応答性ポリマー層を形成するための塗工液として、温度応答性ポリマーを、適当な架橋剤とともに、適当な溶媒に溶解したものを使用してもよい。温度応答性ポリマーと架橋剤をそれぞれ溶媒に溶解して塗工液を調製し、別々に多孔質フィルム上に供給してもよい。
架橋剤としては、好ましくは放射線反応性官能基を2以上有する架橋剤を用いる。温度応答性ポリマーとともに放射線反応性官能基を有する架橋剤を含む塗工液を多孔質フィルム上に供給した後、放射線(例えば電子線)を照射することにより、温度応答性ポリマーを、架橋剤を介して多孔質フィルムに共有結合で結合させることができ、温度応答性ポリマーの強固な固定化が達成できる。放射線反応性官能基、例えば電子線反応性官能基は、放射線(例えば電子線)を照射することにより、多孔質フィルムに共有結合で結合することができるものであれば特に制限されない。放射線反応性官能基は、高エネルギー照射下でラジカルを形成することができる部分であり、放射線源にさらされるとフリーラジカルを発生し、架橋およびグラフトを達成する。
放射線反応性官能基は、用いる温度応答性ポリマーにより適宜選択されるが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アジ基、一級、二級または三級の脂肪族基、脂環式基、ベンジル基などの芳香族基などが挙げられる。架橋剤は、これらの放射線反応性官能基を1種類のみ有するものでもよいし、複数種有するものでもよい。放射線反応性官能基として、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する架橋剤を用いることが好ましい。アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する架橋剤は入手しやすく、アジ基などと比較すると取り扱いが比較的容易である。
架橋剤の具体例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ならびにエトキシ化グリセリン(メタ)アクリレート、例えば、エトキシ化グリセリンジアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリンジメタクリレート、およびエトキシ化グリセリントリメタクリレートなどが挙げられる。
温度応答性ポリマー層を形成するための塗工液の調製に使用する溶媒としては、それぞれ温度応答性ポリマー、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、および/または架橋剤を溶解しうるものであれば特に限定されないが、常圧下に於いて沸点120℃以下、特に60〜110℃のものが好ましい。好ましい溶媒としては、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、2−ブタノール、n−ブタノール、および水等が挙げられ、それらの1種以上使用してよい。中でも上記と同様の理由により、i−プロパノールが好ましい。その他の溶媒、例えば1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−ブトキシエタノール、およびエチレン(もしくはジエチレン)グリコールまたはそのモノエチルエーテル、等も1種以上使用してよい。上記塗工液にはその他添加剤として、硫酸等で代表される酸類、モール塩等を配合してよい。
上記機能性ポリマー層を形成する多孔質フィルムは、公知または市販のものを適用できる。培養する細胞に対し培養液中の成分が自由に透過できる必要性から、多孔質フィルムは、通気性を有するものや、液透過性を有するものが好ましい。多孔質フィルムの平均細孔径は、培養する細胞が透過せずに接着できる必要性から、好ましくは0.1〜3.0μm、より好ましくは0.4〜1.0μmである。また、多孔質フィルムの細孔密度は、好ましくは1.0×10〜1.0×1010個/cm、より好ましくは1.0×10〜1.0×109個/cmである。
多孔質フィルムの構造としては、特に制限されないが、不織布、織布、シート、フィルム、膜などの構造が挙げられるが、細胞培養の観点から、透明度が高く、平面性を保持できるものが好ましい。多孔質フィルムの厚みは、特に制限はないが、製造時の取り扱いやすさの観点から、好ましくは5〜100μmである。
多孔質フィルムは、その片面に機能性ポリマー層を形成できるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリエステル、ポリスチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ウレタンアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリオレフィンおよびポリ乳酸から選択される樹脂からなる多孔質フィルムが挙げられる。
温度応答性ポリマー層、例えばアクリル系ポリマー層またはメタクリル系ポリマー層、特にポリ−N−イソプロピルアクリルアミド層を多孔質フィルム上に形成する場合、多孔質フィルムは、その表面が、放射線反応性官能基と放射線照射により共有結合し得る材料を含むものであることが好ましい。表面のみが、放射線照射により放射線反応性官能基と共有結合し得る材料を含むものであってもよいし、多孔質フィルムの全部がそのような材料を含むものであってもよい。多孔質フィルムの表面または中間層に本発明の目的を妨げない限り任意の層を設けてもよいし、任意の処理を施してもよい。例えば、多孔質フィルム表面にオゾン処理、プラズマ処理、スパッタリング等の処理技術を用いて親水化を施すことができる。
多孔質フィルムを構成する材料であって、それ自体が放射線反応性官能基と共有結合を形成し得るものとしては、ポリエステル、ポリスチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリウレタン、ウレタンアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、共役結合を持つ天然ゴム、共役結合を持つ合成ゴム、ポリシリコーンを含有するシリコーンゴム等が挙げられる。多孔質フィルムはこれらの材料を2種以上含むブレンドポリマーまたはポリマーアロイからなるものであってもよい。
放射線反応性官能基と共有結合するように表面処理された多孔質フィルムとしては、表面が易接着処理されたポリエチレンテレフタレート、表面がコロナ処理またはプラズマ処理された合成樹脂、表面がウレタンアクリレート等のアクリル系樹脂により被覆された合成樹脂等が挙げられる。多孔質フィルムはこれらの材料を2種以上含むブレンドポリマーまたはポリマーロイからなるものであってもよい。合成樹脂としてはナイロン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。合成樹脂はこれらの材料を2種以上含むブレンドポリマーまたはポリマーロイからなるものであってもよい。
多孔質フィルムは、機能性ポリマー層を形成した後、細胞培養に適した形状(例えばディッシュ形状)に加工することができる。また、ディッシュ形状の容器の細胞培養面に、機能性ポリマー層を形成した多孔質フィルムを接着剤などにより貼り付けてもよい。加工の際は、必要に応じて他の材料からなる部材を多孔質フィルムと組み合わせて使用することもできる。
本発明で用いる多孔質フィルムとしては、細胞培養器材として使用されている実績やヒートシール適性の観点から、多孔質ポリエチレンテレフタレート、多孔質ポリカーボネートが特に適している。
温度応答性ポリマー層の形成のために多孔質フィルム上に塗布する、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、温度応答性ポリマーおよび/または架橋剤を含む塗工液の塗布量は温度応答性ポリマーが機能(例えば温度応答性)を発揮するのに必要な塗布量であり、50mg/m以上あればよい。塗布量の上限は特にないが、40g/m未満が好ましく、10g/m以下がより好ましい。親水性ポリマー層の形成のために多孔質フィルム上に塗布する、親水性ポリマーを含む塗工液の塗布量は、親水性ポリマーが機能(例えば細胞非接着性または非特異的吸着の抑制)を発揮するのに必要な塗布量であり、50g/m以上あればよい。塗布量の上限は特にないが、40g/m未満が好ましく、10g/m以下がより好ましい。
塗布量が多すぎると、厚みが増して塗膜厚が安定しないこと、厚みが増して放射線の貫通・照射量が安定しないこと、ならびに照射エネルギーに由来する膜内の対流により被覆量にムラが生じる場合がある。また、遊離のポリマーや分子を洗浄するための洗浄時間を短くするためには塗膜量は10g/m以下が望ましい。
機能性ポリマーを形成するための塗工液の多孔質フィルムへの塗布方法としては公知のいずれの方法を使用してもよく、例えばスピンコーター、バーコーター等による塗布法、噴霧塗布法等が挙げられる。大面積への塗布方法としてはブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ロッドコーティング法、ナイフコーディング法、リバースロールコーティング法、オフセットグラビアコーティング法等が使用できる。
ベタ形成においては、グラビアコート法、ロールコート法、スロットコート法、キスコ−ト法、スプレーコート法、ファウンテンコーティング法等公知のコーティング法を用いることができる。又、絵柄層のパターン形成においては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等公知の印刷法を用いることができる。塗布方法として連続のコート法または印刷法を使用することもできる。連続のコート法または印刷法としては、具体的にはホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ダイコート、マイクログラビアコート、スライドコート、スリットリバースコート、カーテンコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート等の塗布方法が使用できるが、これらは例示に過ぎず、当業者であれば適用可能なものを使用することができる。本発明は、塗工液を多孔質フィルムに塗布する際に、多孔質フィルムにテンションが加わるような塗布法を採用したとしても、後述するように多孔質フィルムにしわや折れの発生を防止することができる。
本発明は、機能性ポリマー層を形成するための塗工液を供給する際に、少なくとも片面が再剥離性を有する微粘着性面である支持体を用いることを特徴とする。このような支持体の微粘着性面に多孔質フィルムの第1の面が接触するように、支持体上に多孔質フィルムを配置し、多孔質フィルムの第2の面に機能性ポリマー層を形成するための塗工液を供給する。そして、上記のような塗布方法で、塗工液を多孔質フィルムに塗布する。それにより、塗工液の塗布の際に多孔質フィルムにしわや折れが生じるのを防ぐことができ、塗布膜厚を均一化できるとともに、塗工液の裏周りも防止できる。すなわち、多孔質フィルムをテープ等用いて固定した状態で塗工液を塗布すると、テープとの張り合わせや塗布時のテンションによって多孔質フィルムにしわや折れが生じ、歩留まりの低下や塗布膜厚の不均一化が生じるが、支持体の微粘着性面に多孔質フィルムを一時的に付着させた状態で塗工液を塗布すると、多孔質フィルムは全面的に支持体に接触しており、また微粘着性面により固定されているため、塗工液の塗布時にテンションがかかってもしわや折れが生じにくく、歩留まりの向上に寄与するとともに、塗布膜圧を均一化することができる。したがって、均一な機能性ポリマー層を有する多孔質フィルム基材を製造することができる。
ここで再剥離性とは、一度粘着または接着させた後で、容易に剥離できる性質をさす。本発明における支持体の微粘着性面は、軽度の粘着性を有することから、多孔質フィルムを接触させるとこれに接着して、塗工液の塗布工程の間、一時的に固定することができるが、塗布工程が完了した後は、多孔質フィルムと支持体を容易に剥離することができる。微粘着性は、多孔質フィルムを支持体に一時的に固定できるが、容易に剥離することが可能な程度の粘着性をさす。また多孔質フィルムの支持体への追従性を高めるために、支持体は、適度な弾性を有する弾性体であることが好ましい。
上記のような特性を有する材料としては、エラストマー材料が挙げられる。エラストマー材料には、ゴム材料、熱硬化性樹脂系エラストマー材料、および熱可塑性樹脂系エラストマー材料が包含されるが、耐熱性の観点から熱硬化性樹脂系エラストマー材料が好ましい。ゴム材料には、天然ゴムおよび合成ゴム(ポリブタジエン系ゴム、ニトリル系ゴム、クロロプレン系ゴム)が包含される。エラストマー材料の具体例としては、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フッ素ゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、およびポリイソブチレンゴムなどが挙げられる。シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂は、耐熱性に優れ、放射線照射による変性がなく、固体として安定しているため、特に好ましい。また、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂は、弾性を硬化剤の量で調整できるとともに、適度な粘着性を有する点でも好ましい。
支持体の形状は、多孔質フィルムをその微粘着性面に接触させて一時的に固定化できる形状であれば特に制限されず、シート状、板状、台状、円筒状、ローラー状などが考えられるが、好ましくはシート状または板状である。全体が上記のような再剥離性と微粘着性を有する材料からなる支持体であってもよいし、多孔質フィルムと接触させる面のみが再剥離性と微粘着性を有する材料からなる支持体であってもよい。
全体がエラストマー材料からなるシート状または板状の支持体を用いる場合、その厚みは、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。上記範囲の厚みを有する支持体は、印刷適正および操作性がよいため好ましい。全体がエラストマー材料からなるシート状または板状の支持体は、別の支持体、例えば台状、円筒状、ローラー状の支持体(例えば、図1の5)上に配置して使用してもよい。
多孔質フィルム上に機能性ポリマー層として、温度応答性ポリマー層を形成する場合は、温度応答性ポリマーを形成するための塗工液を多孔質フィルム上に供給して塗布した後、放射線照射することにより多孔質フィルム表面と温度応答性ポリマーとの結合反応を進行させることが好ましい。ここでいう結合反応は、放射線照射によって、多孔質フィルムと温度応答性ポリマーの間の共有結合が形成される反応をさす。
使用する放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等がある。本発明においては、γ線と電子線がエネルギー効率がよく、特に生産性の面から電子線が好ましい。紫外線に関しては適当な重合開始剤や基材とのアンカー剤を組合せることで使用できる。放射線の線量の範囲は、電子線であれば50kGy〜400kGyが好ましく、γ線であれば5kGy〜50kGyが好ましい。通常、線量範囲は、放射線による温度上昇および樹脂のTgに基づき、適宜決定することができる。
放射線照射後は、塗膜を乾燥させて溶媒を除去することが好ましい。塗布工程で形成される塗膜は残留溶剤量の影響により結晶が形成されることがないため、乾燥前の塗膜に放射線を照射した後、乾燥を行ってもよいし、塗膜を乾燥した後に放射線を照射してもよい。ただし、乾燥前のウェットな状態の塗膜に放射線照射を行うと、環境変化や異物、塗膜厚変動等の影響を受ける可能性があることから、塗膜を乾燥した後に放射線を照射することが好ましい。乾燥方法としては特に限定されないが、典型的にはドライエア乾燥法、熱風(温風)乾燥法、(遠)赤外乾燥法などが挙げられる。
上述の工程を経て形成された機能性ポリマー層は、遊離のポリマー分子や、未反応物等が存在している。そこでこれらの遊離ポリマーや未反応物を除去するために洗浄を行う洗浄工程を更に含むことが好ましい。
洗浄方法としては特に限定されないが、典型的には浸漬洗浄、遥動洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、超音波洗浄等が挙げられる。また洗浄液としては典型的には各種水系、アルコール系、炭化水素系、塩素系、酸・アルカリ洗浄液が挙げられる。洗浄方法と洗浄液の組み合わせは適宜選択すればよい。
多孔質フィルム表面における機能性ポリマー層の被覆量は、0.5〜5.0μg/cmであることが好ましく、1.0〜4.0μg/cmであることがより好ましい。被覆量が多すぎると、細胞の接着性が低下し、細胞を付着させて培養することが困難になる場合がある。また被覆量が少なすぎると、機能性ポリマーとしての機能を発揮できない可能性が考えられる。
このような機能性ポリマーの被覆量は、例えばフーリエ変換赤外分光計全反射法(FT−IR−ATR法)、被覆部もしくは非被覆部の染色や蛍光物質の染色による分析、更に接触角測定等による表面分析を単独或は併用して求めることができる。
本発明の多孔質フィルム基材を用いて、種々の細胞、例えば生体内の各組織、臓器を構成する上皮細胞や内皮細胞、収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経系を構成するニューロン、グリア細胞、繊維芽細胞、生体の代謝に関係する肝実質細胞、非肝実質細胞や脂肪細胞、分化能を有する細胞として、種々組織に存在する幹細胞、さらには骨髄細胞、ES細胞等から細胞シートを作製することができる。
こうして作製された細胞シートは表面の接着因子が損なわれていないことに加えて、細胞培養面に接した部分が均一な品質を有することから、再生医療などへの利用に適したものである。また、細胞シートを利用することでバイオセンサー等の検出デバイスへの応用へも展開できる。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の範囲に限定されるものではない。
(実施例1)
塗工液作製
ポリ−N−イソプロアクリルアミドを最終濃度2重量%、ポリエチレングリコールジアクリレートを最終濃度0.18重量%になるようにイソプロプルアルコール(i−プロパノール)に溶解させて塗工液を作製した。
塗布工程
多孔質フィルムとして、サイズ140mm×200mm、厚さ32μm、平均細孔径0.4μm、細孔密度1.5×10個/cmの透明ポリエステル製メンブレン(it4ip社製)を用いた。
微粘着性面を有する支持体として、サイズ140mm×225mm、厚さ85μmの自己粘着性フィルムであるゲルポリ(登録商標)(パナック社)を用いた。ゲルポリは、ポリエステルフィルムにポリオレフィン系エラストマー樹脂をコーティングしたフィルムシートである。
支持体の微粘着性面に多孔質フィルムを気泡が入らないように貼付し、グラビア印刷・コーティング試験機GP10(クラボウ社)を用い、ヘリオ70線版により上記塗工液を多孔質フィルム上に供給し塗布した。このとき、しわや折れがないことを確認した。
その後40℃、20秒で乾燥させた後、電子線照射装置(岩崎電気社製)を用いて電子線照射を行い、多孔質フィルム表面にポリ−N−イソプロアクリルアミドを固定化し(200kV、150kGy)、細胞培養基材フィルムを作製した。
細胞評価
作製した細胞培養基材フィルムを浸漬洗浄後、自然乾燥させた。その後32mmΦの円形に切り出し、35mmΦポリスチレンディッシュ(ベクトンディッキンソン社製)底面に両面テープを介して接着させた。
得られた細胞培養皿に対し、ウシ血管内皮細胞(JCRBより入手)を、4.0×10cells/cmになるように調整し、培養皿内に播種した。このとき、使用培地は10%FBS含有DMEM(シグマ製)であった。培養はCOインキュベーターで37℃、5%COの条件にて行い、培養1日後顕微鏡観察したところ、細胞が培養皿に接着している様子が確認された。その後、培養皿を20℃、5%CO条件下のインキュベーターに入庫した。30分後、20℃のインキュベーターから出庫したところ、接着していた細胞が剥離している様子が確認された。
(実施例2)
微粘着性面を有する支持体として、サイズ140mm×225mm、厚さ250μmのシリコーンゴムフィルム珪樹(登録商標)(三菱樹脂化学社製)を用いたことを除いて、実施例1と同様に行った。塗工液をフィルム上に塗布したとき、しわや折れがないことを確認した。
(比較例1)
多孔質フィルムを固定する支持体として、サイズ140mm×225mm、厚さ50μmのポリスチレンフィルム(旭化成ケミカル社製)を用いた。ポリスチレンフィルムに多孔質フィルムを、セロハンテープを用いて上下部を固定し、グラビア印刷・コーティング試験機GP10(クラボウ社)を用い、ヘリオ70線版により実施例1の塗工液をフィルム上に塗布した。このとき、しわや折れが生じることを確認した。

Claims (5)

  1. 物質の接着性を制御する機能性ポリマー層が多孔質フィルムに形成されてなる基材を製造する方法であって、
    第1の面と、第1の面の反対側に位置する第2の面と、を有する多孔質フィルムを準備する工程、
    少なくとも片面が再剥離性を有する微粘着性面である支持体を準備する工程、
    支持体の微粘着性面に多孔質フィルムの第1の面が接触するように、支持体上に多孔質フィルムを配置する工程、および
    多孔質フィルムの第2の面に、機能性ポリマー層を形成するための塗工液を供給する工程
    を含む前記方法。
  2. 支持体の微粘着性面がシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂からなる、請求項1記載の方法。
  3. 機能性ポリマーが温度応答性ポリマーであり、基材が温度応答性細胞培養基材であり、多孔質フィルムに供給された塗工液に放射線を照射することにより温度応答性ポリマーを多孔質フィルムの第2の面に固定化する工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
  4. 温度応答性ポリマーがアクリル系ポリマーまたはメタクリル系ポリマーである、請求項3記載の方法。
  5. 温度応答性ポリマーが、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドである、請求項4記載の方法。
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