JP2019126326A - 多能性幹細胞の剥離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊で、高い生存率で多能性幹細胞を基材から剥離可能であり、未分化の多能性幹細胞を選択的に基材から剥離可能な多能性幹細胞の剥離方法を提供する。【解決手段】 基材上で培養された多能性幹細胞の剥離方法であって、下記[1]及び[2]工程を経ることを特徴とする多能性幹細胞の剥離方法。[1]キレート剤を含有し、トリプシンの含有量が0.25wt%未満である細胞剥離液と多能性幹細胞を接触させる工程。[2]培養環境に外部刺激を加える工程。【選択図】 図1
Description
本発明は、単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊で、高い生存率で多能性幹細胞を基材から剥離可能であり、未分化の多能性幹細胞を選択的に基材から剥離可能な多能性幹細胞の剥離方法に関する。
胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)などの多能性幹細胞は、生体の様々な組織に分化する能力(分化万能性)を持つ細胞であり、再生医療分野における細胞ソースとして大きな注目が寄せられている。多能性幹細胞を再生医療に応用するには、まず必要な数の多能性幹細胞を未分化状態で増殖させ、単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊として回収することが必須である。
多能性幹細胞を基材から細胞を剥離させる際は、トリプシンが用いられている(例えば、特許文献1)。タンパク質分解酵素は多細胞表面にあるタンパク質を分解し、多能性幹細胞と基材間の結合および多能性幹細胞間の結合を切断する役目を担っている。しかしながら、タンパク質分解酵素は細胞の生存率に悪影響を与えることが知られており、特許文献1の方法では、剥離によって細胞の生存率が低下してしまうという問題があった。さらには、特許文献1の方法では分化した細胞と未分化の細胞のいずれも基材から剥離するため、未分化の多能性幹細胞のみを選択的に剥離回収することはできないという問題があった。
タンパク質分解酵素を用いることなく細胞を剥離する方法として、温度応答性を有する基材を用いる方法が知られている。例えば、特許文献2では、水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子が被覆された細胞培養支持体を用い、温度変化により細胞を剥離せしめ、細胞シートを回収する方法が開示されている。しかしながら特許文献2に記載の方法では、冷却に時間を要することから短時間で細胞を培養支持体から剥離することはできないという問題があった。また、特許文献2に記載の方法は、未分化の多能性幹細胞のみを選択的に剥離回収することはできず、さらには、特許文献2では細胞シートの回収を主目的としており、単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊を得るものではない。
本発明の目的は、高い細胞生存率で多能性幹細胞を基材から剥離可能であり、未分化の多能性幹細胞を選択的に基材から剥離可能な多能性幹細胞の剥離方法を提供することにある。
本発明者らは以上の点を鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の成分からなる細胞剥離液を用い、外部刺激によって多能性幹細胞を基材から剥離することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、基材上で培養された多能性幹細胞の剥離方法であって、下記[1]及び[2]工程を経ることを特徴とする多能性幹細胞の剥離方法が提供される。
[1]キレート剤を含有し、トリプシンの含有量が0.25wt%未満である細胞剥離液と多能性幹細胞を接触させる工程。
[2]培養環境に外部刺激を加える工程。
本発明によって、単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊で、高い生存率で多能性幹細胞を基材から剥離可能であり、未分化の多能性幹細胞を選択的に基材から剥離可能な多能性幹細胞の剥離方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その趣旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本発明において「多能性幹細胞」とは、様々な組織の細胞へと分化することが可能(分化多能性)な幹細胞を示す。多能性幹細胞の種類として特に限定はないが、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、生殖幹細胞(GS細胞)等を挙げることができる。再生医療への適用に好適であることからES細胞又はiPS細胞が好ましく、作製における倫理上の問題がないことからiPS細胞がさらに好ましい。また、多能性幹細胞の由来動物は特に限定されるものではないが、例えば、哺乳動物由来であることができる。哺乳動物の例には、げっ歯類(マウス、ラット等)、霊長類(サル、ヒト等)が含まれ、また実験動物であってもよく、コンパニオンアニマルであってもよい。本発明において、好ましくは霊長類由来であり、さらに好ましくはヒト由来である。
本発明において「未分化細胞」とは、分化多能性を維持している多能性幹細胞を示す。また、「分化細胞」とは、多能性幹細胞から特定の細胞へと分化した細胞を示す。
本発明の多能性幹細胞の剥離方法を適用するための、多能性幹細胞の培養方法は、基材上で培養すること以外に特に制限はなく、従前公知の多能性幹細胞の培養方法を用いることができる。本発明の剥離方法によって剥離回収した後の多能性幹細胞へのウィルス等の汚染のリスクを低減するのに好適であることから、フィーダーフリー培養された多能性幹細胞が好ましい。
本発明の多能性幹細胞の剥離方法は、下記[1]及び[2]工程を経ることを特徴とする。
本発明の多能性幹細胞の剥離方法は、下記[1]及び[2]工程を経ることを特徴とする。
[1]キレート剤を含有し、トリプシンの含有量が0.25wt%未満である細胞剥離液と多能性幹細胞を接触させる工程。
[2]培養環境に外部刺激を加える工程。
以下、各工程について詳細に説明する。
本発明の多能性幹細胞の剥離方法における[1]工程は、多能性幹細胞と細胞剥離液を接触させる。多能性幹細胞と細胞剥離液を接触させることによって、多能性幹細胞の細胞−細胞間結合を乖離させ、多能性幹細胞を単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊とすることができる。また、[1]工程によって、未分化細胞の基材からの剥離を促進し、[2]工程における選択剥離の選択性を高めることができる。[1]工程を行わない場合、高い生存率又は選択性で多能性幹細胞を剥離することができない。
本発明の多能性幹細胞の剥離方法は、キレート剤を含有する細胞剥離液を用いる。キレート剤を含有する細胞剥離液を用いることによって、多能性幹細胞を単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊として剥離することができ、また、細胞の生存率を高めることができる。キレート剤を含有しない場合、高い細胞生存率を維持しつつ単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊で多能性幹細胞を剥離することができない。また、キレート剤を含有する細胞剥離液を用いることによって、後述する未分化細胞の選択剥離の際、高い選択性で未分化細胞を剥離することができる。ここで、本発明における選択剥離の「選択性」とは、剥離した細胞に含まれる未分化細胞の割合を示す。
[1]工程は、細胞を単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊とするのに好適であり、また、細胞の生存率及び選択剥離の選択制を高めるのに好適であることから、5×10−10〜5×10−1mol/Lのキレート剤の存在下で行われることが好ましく、5×10−6〜1×10−1mol/Lがさらに好ましく、5×10−4〜5×10−2mol/Lが特に好ましく、1×10−3〜5×10−2mol/Lが最も好ましい。
前記キレート剤としては、キレート剤であること以外に特に限定はないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’−六酢酸、1,3−プロパンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール−N,N,N’,N’−四酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、イミノ二酢酸、エチドロン酸、クエン酸、ムギネ酸、ビピリジン、ポルフィリン、フェナントロリン、ポルフィリン、クラウンエーテル、サイクレン、18−クラウン−6、デフェロキサミン、ドータオクトレオテート、ニコチアナミン、ジメルカプロール、シデロホア等を挙げることができる。細胞を単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊とするのに好適であり、また、細胞の生存率及び選択剥離の選択制を高めるのに好適であることから、1〜4価の金属イオンとキレートを形成するキレート剤が好ましく、2価の金属イオンとキレートを形成するキレート剤がさらに好ましく、カルシウムイオンとキレートを形成するキレート剤が特に好ましく、エチレンジアミン四酢酸が最も好ましい。
本発明の多能性幹細胞の剥離方法は、トリプシンの含有量が0.25wt%未満の細胞剥離液を用いる。トリプシンの含有量が0.25wt%未満であることにより、剥離後の多能性幹細胞の生存率を高めることができ、また、未分化の多能性幹細胞を選択剥離することができる。トリプシンの含有量が0.25wt%以上の場合、多能性幹細胞の生存率が低下するとともに、未分化の多能性幹細胞を選択剥離することができない。多能性幹細胞の生存率及び選択剥離の選択制を高めるのに好適であることから、トリプシンの含有量が0.05wt%未満であることがさらに好ましく、0.005wt%未満が特に好ましく、トリプシンを含有しないすなわち、前記[1]工程が、トリプシンの非存在下で行われることが最も好ましい。ここで、本発明において「トリプシン」とは、膵臓から分泌されるタンパク質分解酵素の「EC.3.4.21.4」、又は該タンパク質分解酵素と同等の特性を有する分解酵素を示す。市販品としては例えば、Trypsin(商標)、TrypLE(商標)SELECT、TrypLE(商標)EXPRES(いずれもサーモフィッシャー社製)等を挙げることができる。
前記[1]工程の多能性幹細胞と細胞剥離液との接触時間としては特に限定はないが、多能性幹細胞を単一細胞又は数個〜数十個の細胞の凝集塊とし、また、細胞の生存率及び選択剥離の選択性を高めるのに好適であることから、1秒〜1時間が好ましく、10秒〜30分間がさらに好ましく、1分〜20分間が特に好ましく、5分〜15分間が最も好ましい。
前記[1]工程における細胞剥離液の温度としては特に限定はないが、細胞の生存率を高めるのに好適であることから、0〜40℃が好ましく、0〜35℃がさらに好ましく、5〜35℃が特に好ましく、10〜30℃が最も好ましい。
前記[1]工程の後、必要に応じて細胞剥離液の除去や培地への置換を行ってもよい。培地としては特に制限はないが、多能性幹細胞の未分化性を維持させるのに好適であることから、例えば、多能性幹細胞の未分化性を維持するための因子として知られている、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウム、塩基性線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、CCL2、アクチビン、2−メルカプトメタノールのうち1つ以上を添加した培地を好適に用いることが好ましく、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウム、塩基性線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)を含有する培地がさらに好ましく、塩基性線維芽細胞増殖因子を添加した培地が特に好ましい。
前記塩基性線維芽細胞増殖因子を添加した培地の種類に特に制限はないが、例えば、市販品としては、DMEM(シグマアルドリッチ社製)、Ham’s F12(シグマアルドリッチ社製)、D−MEM/Ham’s F12(シグマアルドリッチ社製)、Primate ES Cell Medium(REPROCELL社製)、StemFit AK02N(味の素社製)、StemFit AK03(味の素社製)、mTeSR1(STEMCELL TECHNOLOGIES社製)、TeSR−E8(STEMCELL TECHNOLOGIES社製)、ReproNaive(REPROCELL社製)、ReproXF(REPROCELL社製)、ReproFF(REPROCELL社製)、ReproFF2(REPROCELL社製)、NutriStem(バイオロジカルインタストリーズ社製)、iSTEM(タカラバイオ社製)、GS2−M(タカラバイオ社製)、hPSC Growth Medium DXF(PromoCell社製)等を挙げることができる。多能性幹細胞の未分化状態を維持するのに好適であることから、Primate ES Cell Medium(REPROCELL社製)、StemFit AK02N(味の素社製)又はStemFit AK03(味の素社製)が好ましく、StemFit AK02N(味の素社製)又はStemFit AK03(味の素社製)がさらに好ましく、StemFit AK02N(味の素社製)が特に好ましい。
前記[1]工程及び[2]工程において、細胞の生存率を高めるのに好適であることから、必要に応じてRho結合キナーゼ阻害剤を添加してもよい。特にヒトの多能性幹細胞を用いる場合であって、Rho結合キナーゼ阻害剤としては、例えば、(R)−(+)−trans−N−(4−pyridyl)−4−(1−aminoethyl)−cyclohexanecarboxamide・2HCl・H2O(和光純薬社製Y−27632)、1−(5−Isoquinolinesulfonyl)homopiperazine Hydrochloride(和光純薬社製HA1077)を用いることができる。培地に添加されるRho結合キナーゼ阻害剤の濃度としては、ヒトの多能性幹細胞の生存維持に有効な範囲であってヒトの多能性幹細胞の未分化状態に影響を与えない範囲であり、1×10−6〜5×10−5mol/Lが好ましく、3×10−6〜2×10−5mol/Lがさらに好ましく、8×10−6〜1.2×10−5mol/Lが特に好ましい。
本発明の多能性幹細胞の未分化維持培養方法における[2]工程は、培養環境に外部刺激を加え、前記[1]工程において細胞剥離液を接触させた多能性幹細胞を剥離する。本発明において「培養環境」とは、基材、細胞、培養液等からなる細胞の培養を行う空間を示す。ここで、本発明において「培養液」とは、多能性幹細胞及び基材が浸漬している培地等の液体を示す。また、本発明において「外部刺激」とは、超音波や振動等の力学的刺激、光や電気、磁気等の電磁気学的刺激、加温や冷却等の熱力学的刺激を示し、酵素反応等の生物反応によるものを除く。
本発明の多能性幹細胞の未分化維持培養方法における[2]工程は、培養環境に外部刺激を加え、前記[1]工程において細胞剥離液を接触させた多能性幹細胞を剥離する。本発明において「培養環境」とは、基材、細胞、培養液等からなる細胞の培養を行う空間を示す。ここで、本発明において「培養液」とは、多能性幹細胞及び基材が浸漬している培地等の液体を示す。また、本発明において「外部刺激」とは、超音波や振動等の力学的刺激、光や電気、磁気等の電磁気学的刺激、加温や冷却等の熱力学的刺激を示し、酵素反応等の生物反応によるものを除く。
前記[2]工程では、高い生存率及び選択剥離の選択性で多能性幹細胞を剥離させるのに好適であることから、前記外部刺激としては、培養液への対流、基材の細胞播種面の裏面への圧力、及び基材への振動からなる群から選択される少なくとも1種類の外部刺激であることが好ましい。培養液へ対流を生じさせる方法としては特に限定はないが、例えば、培養液をピペッティングすることやポンプ、撹拌翼を用いる等の方法により、機械的に液体内部に強制対流を発生させる方法の他、培養液を入れている容器に物理的な振動を加える方法、温度差を与えることによりマランゴニ対流等の自然対流を発生させる方法を挙げることが出来る。基材の細胞播種面の裏面に圧力を加える方法としては、多能性幹細胞の存在する面とは逆側の面に、ポンプなどにより圧力を加える方法を挙げることができる。基材への振動を与える方法としては、定常波発生器等の振動発生装置を基材に接触させる方法を挙げることができる。ここで、本発明において「細胞播種面」とは、細胞が存在する基材面を示す。
本発明において、高い生存率及び選択剥離の選択性で多能性幹細胞を剥離させるのに好適であることから、温度応答性を有する基材を用い、前記[2]工程の外部刺激が、基材の冷却である多能性幹細胞の剥離方法を好適に用いることができる。ここで本発明において基材が「温度応答性を有する」とは、温度変化によって基材の性質が変化することを示し、例えば、温度変化によって基材の親水/疎水性が変化することを挙げることができる。温度応答性を有する基材を用い、前記[2]工程において冷却を行うことによって、基材の温度応答によって多能性幹細胞を高い生存率及び選択剥離の選択性で多能性幹細胞を剥離することができる。
前記温度応答性を有する基材としては、水に対する下限臨界溶解温度(LCST)が0℃〜50℃の範囲にある温度応答性高分子による層を表面に有する基材を挙げることができ、
剥離後の多能性幹細胞の生存率を高めるのに好適であることから、LCSTが0℃〜50℃の範囲にあることが好ましく、5℃〜35℃がさらに好ましく、10℃〜25℃が特に好ましく、15℃〜25℃が最も好ましい。
剥離後の多能性幹細胞の生存率を高めるのに好適であることから、LCSTが0℃〜50℃の範囲にあることが好ましく、5℃〜35℃がさらに好ましく、10℃〜25℃が特に好ましく、15℃〜25℃が最も好ましい。
前記温度応答性高分子を構成する単量体単位としては特に制限はないが、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド等のN アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のN,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体;1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−プロペニル)−モルホリン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)− ピペリジン、4−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−モルホリン等の環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル等のビニルエーテルを挙げることができ、ブLCSTを0〜50℃とするのに好適であることから、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミドが好ましく、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドがさらに好ましく、N−イソプロピルアクリルアミドが特に好ましい。
前記温度応答性高分子による層の膜厚としては特に制限はないが、多能性幹細胞の剥離性を高めるのに好適であることから、1〜1000nmが好ましく、30〜500nmがさらに好ましく、30〜100nmが特に好ましく、40〜60nmが最も好ましい。
前記温度応答性高分子による層の形成方法としては特に制限はないが、温度応答性高分子を基材に強固に固定化するのに好適であることから、温度応答性高分子の単量体単位を基材上で電子線重合する方法、熱又は光反応性の温度応答性高分子を用いて熱または光により基材に固定化する方法、温度応答性高分子の単量体単位とその他の単量体単位との共重合体を用いる方法を好適に用いることができる。
前記温度応答性高分子の単量体単位とその他の単量体単位との共重合体を用いる方法においては、共重合体を強固に基材に固定化させるのに好適であることから、少なくとも水に不溶の高分子の単量体単位を含むことが好ましい。また、温度応答性高分子のLCSTの制御に好適であることから、共重合体の構造としてはブロック共重合体であることが好ましい。
前記水に不溶の高分子の単量体単位としては特に制限はないが、例えば、スチレン、2−ヒドロキシフェニルアクリレート、2−ヒドロキシフェニルメタクリレート、3−ヒドロキシフェニルアクリレート、3−ヒドロキシフェニルメタクリレート、4−ヒドロキシフェニルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−ドデシルメタクリレート、n−テトラデシルアクリレート、n−テトラデシルメタクリレートを挙げることができる。
前記共重合体における温度応答性高分子の構成単位比率は、LCSTの応答を高める観点から、5mol%以上が好ましく、20mol%以上がさらに好ましく、30mol%以上が特に好ましく、40mol%以上が最も好ましい。また、共重合体を基材へ強固に固定化するのに好適であることから、温度応答性高分子の構成単位比率が95mol%以下であることが好ましく、90mol%以下であることがさらに好ましく、85mol%以下であることが特に好ましく、80mol%以下であることが最も好ましい。
前記温度応答性高分子の分子量としては特に制限はないが、温度応答性高分子による層の強度を高めるのに好適であることから、数平均分子量で1000〜100万であることが好ましく、2000〜50万であることがさらに好ましく、5000〜30万であることが特に好ましく、1万〜20万であることが最も好ましい。
本発明において、多能性幹細胞の生存率を高め、また、選択剥離の選択性を高めるのに好適であることから、基材の少なくとも一部に細胞低接着性の領域を有する基材を好適に用いることができる。細胞低接着性の領域を有する基材としては特に限定はないが、例えば、基材の材質の少なくとも一部が細胞低接着性の材質であるもの、基材の表面の少なくとも一部に細胞低接着性のコーティングが施されているもの、基材が多孔質であるもの等を挙げることができる。また、本発明において細胞低接着性の材質やコーティングとは、該材質又はコーティング上でのラミニンの吸着量が、表面処理ポリスチレン上での値よりも小さな成分であることを示す。ラミニン吸着量は下記試験により求めることができる。
[ラミニン吸着量試験]
リン酸緩衝生理食塩水1mLに対して0.5mg/mLの濃度のラミニン511−E8フラグメント溶液を2.5μL添加した溶液を、基材の単位面積当たりの量で0.2mL/cm2滴下し、37℃で24時間静置した時のラミニン511−E8フラグメントの吸着量。
[ラミニン吸着量試験]
リン酸緩衝生理食塩水1mLに対して0.5mg/mLの濃度のラミニン511−E8フラグメント溶液を2.5μL添加した溶液を、基材の単位面積当たりの量で0.2mL/cm2滴下し、37℃で24時間静置した時のラミニン511−E8フラグメントの吸着量。
ここで、ラミニン511−E8フラグメントの吸着量の算出方法については特に制限はないが、例えば、HiLyte FluorTM 647 Labeling Kit−NH2(同仁化学研究所製)を用いて蛍光標識したラミニン511−E8フラグメントを用い、吸着前後のラミニン511−E8フラグメントの溶液中の濃度差を蛍光測定によって求める方法を挙げることができる。また、ラミニン511−E8フラグメントは、市販品としては例えばiMatrix−511(ニッピ社製)を用いることができる。
前記細胞低接着性のコーティングの被覆量としては特に制限はないが、多能性幹細胞の剥離性を高めるのに好適であることから、0.1〜30μg/cm2であることが好ましく、1〜20μg/cm2がさらに好ましく、3〜15μg/cm2が特に好ましく、3.5〜7μg/cm2が最も好ましい。
本発明の剥離方法で剥離した細胞は、直径1000μm以上の凝集塊が存在しないことが好ましく、直径500μm以上の凝集塊が存在しないことがさらに好ましく、直径100μ以上の凝集塊が存在しないことが特に好ましく、直径50μm以上の凝集塊が存在しないことが最も好ましい。
本発明の剥離方法で剥離した細胞の生存率としては、80%以上が好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
本発明の剥離方法で剥離した際の選択剥離の選択性としては、剥離した分化細胞の割合が80%以下であることが好ましく、50%以下がさらに好ましく、20%以下が特に好ましく、
10%以下が最も好ましい。ここで、剥離した分化細胞の割合は、剥離前の分化細胞の数又は分化細胞のコロニー数と、剥離後に基材上に残存する分化細胞数又は分化細胞のコロニー数から算出することができる。
10%以下が最も好ましい。ここで、剥離した分化細胞の割合は、剥離前の分化細胞の数又は分化細胞のコロニー数と、剥離後に基材上に残存する分化細胞数又は分化細胞のコロニー数から算出することができる。
以下、本発明を実施するための形態を挙げて本発明について詳細に説明する。なお、断りのない限り、試薬は市販品を用いた。
[実施例1]
基材としてポリスチレンディッシュ(コーニング社製)を用い、ヒトiPS細胞201B7株を1300個/cm2の密度で播種し、37℃、CO2濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素製)を用いた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液(ニッピ製)(培地に対して2.5μL/mL)を添加し培養した。
[実施例1]
基材としてポリスチレンディッシュ(コーニング社製)を用い、ヒトiPS細胞201B7株を1300個/cm2の密度で播種し、37℃、CO2濃度5%の環境下で培養した。培地はStemFitAK02N(味の素製)を用いた。また、細胞播種から24時間後までは、前記培地にY−27632(和光純薬製)(濃度10μM)とiMatrix−511溶液(ニッピ製)(培地に対して2.5μL/mL)を添加し培養した。
細胞播種から24時間後、96時間後、144時間後に、位相差顕微鏡で細胞の様子を観察し、いずれの場合においても細胞接着ならびに増殖を確認し、新しい培地に交換を行った。細胞播種から144時間後の培地交換の後、細胞はコロニー状で基材に存在していることを確認した。
培地を除去してリン酸緩衝生理食塩水で洗浄後、リン酸緩衝生理食塩水にエチレンジアミン四酢酸を5×10−3mol/Lの濃度となるように加えた細胞剥離液をディッシュ内に加え、25℃で5分間処理した。細胞剥離液を除去してY−27632を添加した培地をディッシュ内に加えた後、ピペッティングを行うことで対流を発生させた。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は98.2%であった。剥離した分化細胞の割合は2.5%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例2]
エチレンジアミン四酢酸の濃度が2.5×10−4mol/Lの細胞剥離液を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は93.2%であった。剥離した分化細胞の割合は7.6%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例3]
エチレンジアミン四酢酸の濃度が5×10−6mol/Lの細胞剥離液を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は89.7%であった。剥離した分化細胞の割合は6.6%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例4]
エチレンジアミン四酢酸の濃度が5×10−2mol/Lの細胞剥離液を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は94.8%であった。剥離した分化細胞の割合は8.3%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例5]
ピペッティングを行う代わりに基材を振動させ、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞又は数個〜数十個の細胞凝集塊として回収できた。細胞の生存率は94.6%であった。剥離した分化細胞の割合は6.2%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例6]
基材として温度応答性高分子をコーティングした基材を用い、ピペッティングを行う代わりに基材を冷却し、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞又は数個〜数十個の細胞凝集塊として回収できた。細胞の生存率は96.8%であった。剥離した分化細胞の割合は5.0%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例2]
エチレンジアミン四酢酸の濃度が2.5×10−4mol/Lの細胞剥離液を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は93.2%であった。剥離した分化細胞の割合は7.6%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例3]
エチレンジアミン四酢酸の濃度が5×10−6mol/Lの細胞剥離液を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は89.7%であった。剥離した分化細胞の割合は6.6%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例4]
エチレンジアミン四酢酸の濃度が5×10−2mol/Lの細胞剥離液を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は94.8%であった。剥離した分化細胞の割合は8.3%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例5]
ピペッティングを行う代わりに基材を振動させ、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞又は数個〜数十個の細胞凝集塊として回収できた。細胞の生存率は94.6%であった。剥離した分化細胞の割合は6.2%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例6]
基材として温度応答性高分子をコーティングした基材を用い、ピペッティングを行う代わりに基材を冷却し、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞又は数個〜数十個の細胞凝集塊として回収できた。細胞の生存率は96.8%であった。剥離した分化細胞の割合は5.0%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
なお、温度応答性高分子の合成及びコーティングは以下の方法で行った。
試験管に、4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノイックアシッド0.40g(0.1mmol)、n−ブチルメタクリレート7.11g(50mmol)、アゾビス(イソブチロニトリル)33mg(0.2mmol)を加え、1,4−ジオキサン50mLに溶解した。窒素バブリングにより30分脱気を行った後、70℃で24時間反応させた。反応終了後、反応溶媒をロータリーエバポレーターにて減圧留去し、反応溶液を濃縮した。濃縮液をメタノール250mLに注ぎ、析出した黄色油状物質を回収して減圧乾燥し、n−ブチルメタクリレート重合体を得た。
試験管に、前記n−ブチルメタクリレート重合体0.9g(0.3mmol)、N−イソプロピルアクリルアミド8.14g(72mmol)、アゾビスイソブチロニトリル5mg(0.03mmol)を加え、1,4−ジオキサン15mLに溶解させた。窒素バブリングにより30分脱気を行った後、65℃で17時間反応させた。反応終了後、反応溶媒をアセトンで希釈し、ヘキサン500mLに注ぎ、析出した淡黄色固体を回収して減圧乾燥し、N−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートの共重合体を得た。
ポリスチレンディッシュ上にN−イソプロピルアクリルアミドとn−ブチルメタクリレートの共重合体の1wt%エタノール溶液を2000rpmでスピンコートし、温度応答性高分子を被覆した。
温度応答性高分子のLCSTは32℃、構成単位比率はn−ブチルメタクリレート4mol%、N−イソプロピルアクリルアミド96mol%、分子量はMn7万であった。ポリスチレンディッシュ上への温度応答性高分子の被覆の膜厚は40nmであった。
[実施例7]
基材として温度応答性高分子をコーティングした基材を用い、基材を冷却した後にピペッティングを行い、その他は実施例6と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は95.4%であった。剥離した分化細胞の割合は7.2%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例8]
基材として孔径0.4μm(細孔密度1.9×1010個/m2)の円柱状の細孔を有するポリエチレンテレフタレート膜(コーニング社製Falconカルチャーインサート)を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は90.2%であった。剥離した分化細胞の割合は2.2%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[比較例1]
エチレンジアミン四酢酸を含有しないリン酸緩衝生理食塩水を細胞剥離液として用い、その他は実施例1と同様にして細胞の剥離を行った。細胞は剥離しなかった。
[比較例2]
エチレンジアミン四酢酸の濃度が2.5×10−4mol/L、トリプシンの濃度が0.5wt%の細胞剥離液を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。全ての細胞が剥離した。細胞の生存率は79.8%であった。剥離した分化細胞の割合は100%であった。
[比較例3]
細胞剥離液をディッシュ内に添加せず、その他は実施例1と同様にして細胞の剥離を行った。細胞は剥離しなかった。
[比較例4]
ピペッティングを行わず、ピペッティングに要する時間と同じ時間だけ室温で静置し、その他は実施例1と同様にして細胞の剥離を行った。細胞は剥離しなかった。
[実施例7]
基材として温度応答性高分子をコーティングした基材を用い、基材を冷却した後にピペッティングを行い、その他は実施例6と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は95.4%であった。剥離した分化細胞の割合は7.2%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[実施例8]
基材として孔径0.4μm(細孔密度1.9×1010個/m2)の円柱状の細孔を有するポリエチレンテレフタレート膜(コーニング社製Falconカルチャーインサート)を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。未分化の細胞が選択的に剥離し、単一細胞として回収できた。細胞の生存率は90.2%であった。剥離した分化細胞の割合は2.2%であった。直径50μm以上の凝集塊は存在しなかった。
[比較例1]
エチレンジアミン四酢酸を含有しないリン酸緩衝生理食塩水を細胞剥離液として用い、その他は実施例1と同様にして細胞の剥離を行った。細胞は剥離しなかった。
[比較例2]
エチレンジアミン四酢酸の濃度が2.5×10−4mol/L、トリプシンの濃度が0.5wt%の細胞剥離液を用い、その他は実施例1と同様にして細胞を剥離した。全ての細胞が剥離した。細胞の生存率は79.8%であった。剥離した分化細胞の割合は100%であった。
[比較例3]
細胞剥離液をディッシュ内に添加せず、その他は実施例1と同様にして細胞の剥離を行った。細胞は剥離しなかった。
[比較例4]
ピペッティングを行わず、ピペッティングに要する時間と同じ時間だけ室温で静置し、その他は実施例1と同様にして細胞の剥離を行った。細胞は剥離しなかった。
Claims (8)
- 基材上で培養された多能性幹細胞の剥離方法であって、下記[1]及び[2]工程を経ることを特徴とする多能性幹細胞の剥離方法。
[1]キレート剤を含有し、トリプシンの含有量が0.25wt%未満である細胞剥離液と多能性幹細胞を接触させる工程。
[2]培養環境に外部刺激を加える工程。 - 前記[1]工程が、5×10−10〜5×10−1mol/Lのキレート剤の存在下で行われることを特徴とする、請求項1に記載の多能性幹細胞の剥離方法。
- 前記キレート剤が、カルシウムイオンとキレートを形成するものであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の多能性幹細胞の剥離方法。
- 前記[1]工程が、トリプシンの非存在下で行われることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の多能性幹細胞の剥離方法。
- 外部刺激が、培養液への対流、基材の細胞播種面の裏面への圧力、及び基材への振動からなる群から選択される少なくとも1種類の外部刺激であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の多能性幹細胞の剥離方法。
- 基材が温度応答性を有するものであり、外部刺激が、基材の冷却であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の多能性幹細胞の剥離方法。
- 基材の少なくとも一部に細胞低接着性の領域を有することを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の多能性幹細胞の剥離方法。
- 多能性幹細胞が人工多能性幹細胞であることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の多能性幹細胞の剥離方法。
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WO2020036096A1 (ja) * | 2018-08-17 | 2020-02-20 | 東ソー株式会社 | 細胞懸濁液の製造方法 |
WO2024075722A1 (ja) * | 2022-10-04 | 2024-04-11 | 東ソー株式会社 | 温度応答性マイクロキャリアを用いた細胞培養方法及び温度応答性細胞培養用ビーズ |
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WO2015105029A1 (ja) * | 2014-01-09 | 2015-07-16 | 東京エレクトロン株式会社 | 細胞培養容器および細胞継代培養システム並びに細胞継代培養方法 |
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JP2017085963A (ja) * | 2015-11-10 | 2017-05-25 | 国立大学法人京都大学 | ラミニンフラグメント含有培地を用いる細胞培養方法 |
-
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中村幸夫, 目的別で選べる細胞培養プロトコール, 実験医学別冊, 2012-03-20, PP.202-203 ISBN 978-4-7581-0183-7, JPN6021041575, 20 March 2012 (2012-03-20), ISSN: 0004622955 * |
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