JP2017085963A - ラミニンフラグメント含有培地を用いる細胞培養方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来のラミニンまたはラミニンフラグメントがプレコーティングされた培養容器を用いて細胞を培養する方法と比較して、少ないラミニンフラグメント使用量で同等の培養効率を実現可能な細胞培養方法を提供する。
【解決手段】インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントを含む培地を用いて細胞を培養する工程を含み、細胞を培養容器に播種する前にラミニンまたはラミニンフラグメントを培養容器にコーティングする工程を含まないことを特徴とする細胞培養方法。
【選択図】なし

Description

本発明はラミニンフラグメントを含有する培地を用いて細胞を培養する方法、およびラミニンフラグメントを含有する細胞培養用培地に関するものである。
ヒトES細胞やヒトiPS細胞などのヒト多能性幹細胞は、その再生医療への応用が世界的に注目されている。ヒト多能性幹細胞を再生医療に応用するためには、これら幹細胞を安全かつ安定的に培養、増幅する培養技術の開発が必要である。
本発明者らは、ヒトES細胞が発現するインテグリンのタイプを解析した結果、α6β1インテグリンがヒトES細胞の主要な接着受容体であること、およびヒトラミニン(特に、α3β3γ2からなるラミニン332およびα5β1γ1からなるラミニン511)の組換えタンパク質が、ヒトES細胞のフィーダーフリー培養基質として有用であることを報告した(非特許文献1参照)。また、本発明者らは、ラミニン511のE8フラグメント(ラミニン511E8)をフィーダーフリー培養基質として用いることにより、従来困難であったヒト多能性幹細胞の単一分散による継代培養が可能であることを報告した(特許文献1、非特許文献2参照)。
現在、組換えヒトラミニン511E8フラグメントが市販され(商品名:iMatrix−511、株式会社ニッピ)、ヒトラミニン511E8はヒトES細胞やヒトiPS細胞などのヒト多能性幹細胞の培養基質として急速に普及し始めている。しかし、ヒトラミニン511E8を基質として細胞を培養するには、培養容器の表面にヒトラミニン511E8を大量にプレコーティングしておく必要がある。そのため、従来の方法では培養コストが高くなるという問題がある。また、通常、培養基質のコーティングには、リン酸緩衝液などを用いて調製した培養基質溶液を培養容器に添加し、約4℃〜約37℃で数時間から一晩インキュベートすることが不可欠である。それゆえ、培養コストの低減とコーティング工程の省略が実現できれば、多能性幹細胞の培養基質としてヒトラミニン511E8がより広く利用されることが期待できる。
国際公開公報第2011/043405号
Miyazaki T, Futaki S, Hasegawa K, Kawasaki M, Sanzen N, Hayashi M, Kawase E, Sekiguchi K, Nakatsuji N, Suemori H. Recombinant human laminin isoforms can support the undifferentiated growth of human embryonic stem cells. Biochem. Biophys. Res. Commun. 375:27-35, 2008. Miyazaki T, Futaki S, Suemori H, Taniguchi Y, Yamada M, Kawasaki M, Hayashi M, Kumagai H, Nakatsuji N, Sekiguchi K, Kawase E. Laminin E8 fragments support efficient adhesion and expansion of dissociated human pluripotent stem cells. Nat Commun. 3,1236. Doi:10.1038/ncomms2231, 2012.
本発明は、ラミニンまたはラミニンフラグメントがプレコーティングされた培養容器を用いて細胞を培養する従来の方法(プレコーティング法)と比較して、少ないラミニンフラグメント使用量で同等の培養効率を実現可能な細胞培養方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の発明を包含する。
[1]インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントを含む培地を用いて細胞を培養する工程を含み、細胞を培養容器に播種する前にラミニンまたはラミニンフラグメントを培養容器にコーティングする工程を含まないことを特徴とする細胞培養方法。
[2]ラミニンまたはラミニンフラグメントがプレコーティングされていない培養容器に細胞を播種して培養することを特徴とする前記[1]に記載の細胞培養方法。
[3]インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントが、ラミニンE8フラグメントである前記[1]または[2]に記載の細胞培養方法。
[4]培地のラミニンフラグメント濃度が、培養容器あたりの液量中に、該培養容器の培養面1cmあたり0.03μg〜2μgのラミニンフラグメントを含有する濃度であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の細胞培養方法。
[5]培地のラミニンフラグメント濃度が、培養容器あたりの液量中に、該培養容器の培養面1cmあたり0.06μg〜0.5μgのラミニンフラグメントを含有する濃度であることを特徴とする前記[4]に記載の細胞培養方法。
[6]インテグリンがインテグリンα6β1、α6β4、α3β1、α7β1である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の細胞培養方法。
[7]細胞が哺乳動物細胞である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の細胞培養方法。
[8]細胞が哺乳動物細胞の幹細胞または該幹細胞から分化した細胞である前記[7]に記載の細胞培養方法。
[9]細胞が多能性幹細胞である前記[8]に記載の細胞培養方法。
[10]インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントを含有することを特徴とする細胞培養用培地。
[11]ラミニンフラグメント濃度が、0.15μg/ml〜10μg/mlである前記[10]に記載の細胞培養用培地。
本発明によれば、従来のプレコーティング法と比較して、少ないラミニンフラグメント使用量で同等の培養効率を実現可能な細胞培養方法を提供することができる。また、そのような方法に用いるための細胞培養用培地を提供することができる。本発明の細胞培養方法は、ラミニンフラグメントを予め培養容器にコーティングする必要がないので、細胞培養操作に必要な時間を短縮することができる。また、ラミニンフラグメントの使用量を低減できるので、培養コストを抑えることができる。さらに、コーティングの際の個人誤差を排除することができ、培養操作の習熟度に依存しない簡便な培養方法を提供することができる。
本発明の細胞培養方法におけるヒト多能性幹細胞の培養基質濃度依存的接着効率を、プレコーティング法と比較した結果を示す図であり、(A)はH9ヒトES細胞の結果、(B)は253G1ヒトiPS細胞の結果である。 本発明の細胞培養方法およびプレコーティング法におけるヒト多能性幹細胞の接着の様子を示す図である。 本発明の細胞培養方法おけるヒト多能性幹細胞の増殖速度を、プレコーティング法と比較した結果を示す図である。 本発明の細胞培養方法におけるヒト多能性幹細胞の増殖の様子を示す図である。
〔細胞培養方法〕
本発明の細胞培養方法は、インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメント(以下、単に「ラミニンフラグメント」と記す場合がある)を含む培地を用いて細胞を培養する工程を含み、細胞を培養容器に播種する前にラミニンまたはラミニンフラグメントを培養容器にコーティングする工程を含まない細胞培養方法である。すなわち、本発明の培養方法は、従来のプレコーティング法では必須である培養容器にコーティングする工程が不要である。
本発明の培養方法に用いる培養容器は特に限定されず、どのような培養容器でも好適に用いることができる。具体的には、培養面に何もコーティングされていない培養容器、培養面に培養基質(細胞外マトリックス)がコーティングされている培養容器、培養面に電荷処理等の細胞接着加工処理が施されている培養容器などが挙げられる。本発明の培養方法では、ラミニンまたはラミニンフラグメントがプレコーティングされていない培養容器を用いることが好ましい。ラミニンまたはラミニンフラグメントがプレコーティングされていない培養容器とは、培養容器の培養面にラミニン(全長ラミニン)およびラミニンフラグメント(全長ラミニンの一部)のどちらもプレコーティングされていない培養容器を意味し、培養面に何もコーティングされていない培養容器、ラミニンおよびラミニンフラグメント以外の培養基質がコーティングされている培養容器、培養面に電荷処理等の細胞接着加工処理が施されている培養容器などが含まれる。本発明の培養方法に用いる培養容器の材質、形状等は特に限定されず、例えば、ガラス製またはプラスチック製のシャーレ、フラスコ、マルチウェルプレート、カルチャースライド、などを好適に用いることができる。また、ポリマー膜製のカルチャーバッグも好適用いることができる。
本発明の培養方法は、具体的には、
(a)ラミニンフラグメント含有培地に細胞を懸濁して細胞懸濁液を調製し、当該細胞懸濁液を培養容器に播種する方法、
(b)ラミニンフラグメントを含有しない培地に細胞を懸濁して細胞懸濁液を調製し、当該細胞懸濁液にラミニンフラグメントを添加した後、当該細胞懸濁液を培養容器に播種する方法、または
(c)ラミニンフラグメントを含有しない培地に細胞を懸濁して細胞懸濁液を調製し、当該細胞懸濁液を培養容器に播種した後、培地にラミニンフラグメントを添加する方法、
のいずれの方法であってもよい。
ラミニンは、α鎖、β鎖およびγ鎖の3本のサブユニット鎖からなるヘテロ3量体分子である。α鎖はα1〜α5の5種類、β鎖はβ1〜β3の3種類、γ鎖はγ1〜γ3の3種類が知られており、それらの組み合わせで少なくとも12種類以上のアイソフォームが存在する(本明細書において、例えば「ラミニンα5β1γ1」を「ラミニン511」と記す。他のアイソフォームも同様に記す。)。本発明の培養方法に用いるラミニンフラグメントは、インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントであればよい。このようなラミニンフラグメントとしては、ヘテロ3量体を形成しているラミニンフラグメントであることが好ましい。具体的には、α鎖、β鎖およびγ鎖の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ全部の鎖が全長より短いラミニンフラグメントである。ラミニンフラグメントがヘテロ3量体を形成していることは、ラミニンフラグメントをSDS−PAGEに供し、バンドの数を検出すること等により確認できる。ラミニンフラグメントがインテグリン結合活性を有していることは、固相結合アッセイ等により確認することができる。
ラミニンの由来は特に限定されず、各種生物由来のラミニンを用いることができる。好ましくは哺乳動物由来のラミニンである。哺乳動物としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ等が挙げられるが、限定されない。なかでもヒト由来のラミニンを用いることが特に好ましい。ヒトの再生医療材料を得るためにヒト幹細胞を培養する場合には、培養系から異種由来の成分を排除するゼノフリー条件を満たす培養環境が求められることから、ヒト由来のラミニンを用いることが好ましい。
本発明の培養方法に用いるラミニンフラグメントとしては、インテグリン結合活性の強さ、組換えタンパク質としての発現効率の観点から、ラミニンE8フラグメント(以下、「ラミニンE8」と記す。)が好ましい。ラミニンのE8は、マウスラミニン111をエラスターゼで消化して得られたフラグメントの中で、強い細胞接着活性をもつフラグメントとして同定されたものである(Edgar D., Timpl R., Thoenen H. The heparin-binding domain of laminin is responsible for its effects on neurite outgrowth and neuronal survival. EMBO J., 3:1463-1468, 1984.、Goodman SL., Deutzmann R., von der Mark K. Two distinct cell-binding domains in laminin can independently promote nonneuronal cell adhesion and spreading. J. Cell Biol., 105:589-598, 1987.)。マウスラミニン111以外のラミニンについてもエラスターゼで消化した際にマウスラミニン111E8に相当するフラグメントの存在が推定されるが、マウスラミニン111以外のラミニンをエラスターゼで消化してE8フラグメントを分離・同定した報告はない。ラミニンE8は、α鎖のC末端フラグメントから球状ドメイン4および5が除かれたフラグメント(以下「α鎖E8」と記す)、β鎖のC末端フラグメント(以下「β鎖E8」と記す)およびγ鎖のC末端フラグメント(以下「γ鎖E8」と記す)が3量体を形成したフラグメントであり、3量体の分子量は約150〜約170kDaである。α鎖E8は通常約770個のアミノ酸からなり、N末端側の約230アミノ酸が3量体形成に関わる。β鎖E8は通常約220〜約230個のアミノ酸からなる。γ鎖E8は通常約240〜約250個のアミノ酸からなる。本発明に用いるラミニンE8は、ラミニンのエラスターゼ消化産物であることを要するものではなく、マウスラミニン111のE8と同様の細胞接着活性を有し、同様の構造を有し、同程度の分子量を有するラミニンのフラグメントであればよい。
ラミニンフラグメントは天然型であってもよく、その生物学的活性を維持したまま、1個またはそれ以上のアミノ酸残基が修飾された修飾型であってもよい。ラミニンフラグメントの製造方法は特に限定されず、例えば、ラミニン高発現細胞から精製した全長ラミニンをエラスターゼ等のタンパク質分解酵素で消化し、目的のフラグメントを分取、精製する方法や、組換えタンパク質として製造する方法などが挙げられる。製造量、品質の均一性、製造コスト等の観点から、組換えタンパク質として製造することが好ましい。
組換えラミニンフラグメントは、公知の遺伝子組換え技術を適宜用いることにより製造することができる。組換えラミニンフラグメントの製造方法としては、例えば、α鎖、β鎖およびγ鎖の部分タンパク質をコードするDNAをそれぞれ取得し、これをそれぞれ発現ベクターに挿入し、得られた3種類の発現ベクターを適切な宿主細胞に共導入して発現させ、3量体を形成しているタンパク質を公知の方法で精製することにより製造することができる。組換えラミニンフラグメント(ラミニンE8)の製造方法としては、例えばIdoら(Ido, H et al., J. Biol. Chem. 282, 11144-11154, 2007.)の方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。主要な哺乳動物のラミニンを構成するα鎖、β鎖、γ鎖をコードする遺伝子の塩基配列情報および各鎖のアミノ酸配列情報は、DDBJ、EMBL、GenBank等の公知のデータベースから取得することができる。なお、組換えラミニン511E8は、商品名iMatrix−511として株式会社ニッピから市販されており、これを好適に用いることができる。
本発明の培養方法は、ラミニン結合性のインテグリンが発現している細胞の培養に好適に用いることができる。ラミニン結合性のインテグリンとしては、インテグリンα6β1、α6β4、α3β1およびα7β1が挙げられる。培養対象細胞として、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくは哺乳動物の幹細胞、および幹細胞から体細胞への分化過程にある細胞である。幹細胞には体性幹細胞、多能性幹細胞などが含まれる。体性幹細胞としては、神経幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、心臓幹細胞、肝臓幹細胞、小腸幹細胞などが挙げられる。多能性幹細胞としては、ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞(人工多能性幹細胞)、mGS細胞(多能性生殖幹細胞)、ES細胞と体細胞との融合細胞、MUSE細胞などが挙げられる。哺乳動物としては、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ等が挙げられる。なかでもヒトが好ましい。
例えば、ヒトES細胞およびヒトiPS細胞が発現する主要なインテグリンはインテグリンα6β1であるので、本発明においてインテグリンα6β1と結合活性の高いラミニンアイソフォームのフラグメントを用いれば、多能性幹細胞の分化多能性(未分化性)を維持した状態で培養するための有用な培養方法を提供することができる。インテグリンα6β1と結合活性の高いラミニンアイソフォームとしては、ラミニン511、ラミニン521、ラミニン332、ラミニン111が挙げられる(Matrix Biology 25(2006),189-197)。
例えば、ヒト神経前駆細胞が発現する主要なインテグリンはインテグリンα3β1またはα7β1であるので、本発明においてインテグリンα3β1またはα7β1と結合活性が高いラミニンアイソフォームのフラグメントを用いれば、多能性幹細胞から神経前駆細胞への分化過程にある細胞、あるいは樹立された神経前駆細胞の接着と機能性を維持するための有用な培養方法を提供することができる。インテグリンα3β1またはα7β1と結合活性の高いラミニンアイソフォームとしては、ラミニン111、ラミニン211、ラミニン511、ラミニン521が挙げられる(J Neurosci Res. 2006 April; 83(5):845-856、Matrix Biology 25(2006), 189-197)。
例えば、筋芽細胞が発現する主要なインテグリンはインテグリンα7β1であるので、本発明においてインテグリンα7β1と結合活性が高いラミニンアイソフォームのフラグメントを用いれば、多能性幹細胞から筋芽細胞への分化過程にある細胞、あるいは樹立された筋芽細胞の接着と機能性を維持するための有用な培養方法を提供することができる。インテグリンα7β1と結合活性の高いラミニンアイソフォームとしては、ラミニン111が挙げられる(J Cell Science 109, 3139-3150 (1996))。
例えば、心筋細胞の分化過程において、分化初期段階において発現する主要なインテグリンはインテグリンα3β1とα6β1であり、分化が進むにつれ主要なインテグリン発現がα7β1に変わるので、本発明においてインテグリンα3β1、α6β1、α7β1と結合活性が高いラミニンアイソフォームのフラグメントを分化段階毎に分けて用いれば、多能性幹細胞から心筋細胞への分化過程にある細胞、あるいは樹立された心筋細胞の接着と機能性を維持するための有用な培養方法を提供することができる。インテグリンα3β1、α6β1と結合活性の高いラミニンアイソフォームとしては、ラミニン511、ラミニン521、ラミニン332が挙げられ、インテグリンα7(X2)β1と結合活性の高いラミニンアイソフォームとしては、ラミニン211、ラミニン111が挙げられる(Cardiovascular Research 47 (2000) 715-725)。
例えば、ケラチノサイトが発現する主要なインテグリンはインテグリンα6β4であるので、本発明においてインテグリンα6β4と結合活性が高いラミニンアイソフォームのフラグメントを用いれば、多能性幹細胞からケラチノサイトへの分化過程にある細胞、あるいは樹立されたケラチノサイトの接着と機能性を維持するための有用な培養方法を提供することができる。インテグリンα6β4と結合活性が高いラミニンアイソフォームとしては、ラミニン332、ラミニン511が挙げられる(The Journal of biological chemistry 287(22), 17975-17984, 2012)。
なお、詳細なインテグリン発現は解析が行なわれていない細胞についても、試験管内あるいは生体内で発現するラミニンアイソフォームが判明している場合は、それらのラミニンアイソフォームのフラグメントを用いて、細胞の接着と機能性を維持するための有用な培養方法を提供することができる。例えば、血管内皮細胞はラミニン411およびラミニン511、脂肪細胞はラミニン411の発現が認められている。したがって、これらのラミニンアイソフォームのフラグメントを用いれば、血管内皮細胞や脂肪細胞の接着と機能性を維持するための有用な培養方法を提供できると考えられる。
本発明の培養方法に用いる培地は特に限定されず、培養対象細胞の培養に適した培地を適宜選択して用いることができる。市販の培地を用いてもよく、自製した培地を用いてもよい。培地のラミニンフラグメント濃度は、培養対象の細胞を所望の接着効率で培養できる濃度であれば特に限定されない。通常、培養容器あたりの液量中に、該培養容器の培養面1cmあたり0.03μg〜2μgのラミニンフラグメントを含有する濃度範囲から選択することができる。好ましくは、培養面1cmあたり0.06μg〜0.5μgのラミニンフラグメントを含有する濃度、より好ましくは、培養面1cmあたり0.1μg〜0.25μgのラミニンフラグメントを含有する濃度である。ここで、培養容器に細胞を播種する際の液量を、例えば200μl/cm(培養面積)とすれば、0.03μg/cm〜2μg/cmは0.15μg/ml〜10μg/mlに相当し、0.06μg/cm〜0.5μg/cmは0.3μg/ml〜2.5μg/mlに相当し、0.1μg/cm〜0.25μg/cmは0.5μg/ml〜1.25μg/mlに相当する。
本発明者らは、本発明の培養方法を用いれば、プレコーティング法より培養面の単位面積当たりのラミニンフラグメント使用量を減らしても、プレコーティング法と同等の細胞接着効率および細胞増殖速度が得られることを確認している(実施例参照)。したがって、本発明の培養方法は、培養時間の短縮、培養操作の簡便性のみならず、コストの点でも従来法と比較して有利な方法である。また、ラミニンフラグメントをプレコーティングした培養容器に細胞を播種すると、細胞が最初に接触したラミニンフラグメントに接着するため、培養面における細胞の分布が不均一になることが指摘されている。本発明の培養補法を用いれば、プレコーティング法におけるこのような問題が解消され、細胞を培養面に均一に分布させることができる。
本発明の第一の実施形態は、ラミニンフラグメント含有培地を用いて細胞懸濁液を調製する工程と、調製した細胞懸濁液を培養容器に播種する工程と、培養対象細胞の培養に適して条件で培養を行う工程を含む。
本発明の第二の実施形態は、ラミニンフラグメントを含有しない培地を用いて細胞懸濁液を調製する工程と、調製した細胞懸濁液にラミニンフラグメントを添加する工程と、ラミニンフラグメントを添加した細胞懸濁液を培養容器に播種する工程と、培養対象細胞の培養に適して条件で培養を行う工程を含む。
本発明の第三の実施形態は、ラミニンフラグメントを含有しない培地を用いて細胞懸濁液を調製する工程と、調製した細胞懸濁液を培養容器に播種する工程と、播種後の細胞懸濁液にラミニンフラグメントを添加する工程と、培養対象細胞の培養に適して条件で培養を行う工程を含む。
本発明の細胞培養方法において行われる細胞培養の各操作手法はいずれも公知であり、当業者は容易に実施することができる。
本発明の培養方法の一実施形態として、ヒト多能性幹細胞を培養する場合を以下に示す。ヒトES細胞またはヒトiPS細胞を培養する場合の培地としては、TeSR−E8(商品名、STEMCELL Technologies)、StemFitAK03N(商品名、味の素株式会社)、StemFitAK02N(商品名、味の素株式会社)、mTeSR1(商品名、STEMCELL Technologies)、TeSR2(商品名、StemCell Technologies)、STEMPRO hESC SFM(商品名、ThermoFisher Scientific)、NutriStem(商品名、Stemgent)、PSGro−free Human iPSC/ESC Growth Medium(商品名、StemRD)、StemEZ(商品名、Cellagen Technology)、Essential 8(商品名、ThermoFisher Scientific)、PluriSTEM Human ES/iPS Medium(商品名、Millipore)、PeproGrow hESC Embryonic Stem Cell Media(商品名、PeproTech)、L7 hPSC Media(商品名、Lonza)、StemMACS(商品名、Milteny Biotech)、HyCell−Stem Media(商品名、Hyclone)、DEF−CS 500(商品名、Cellartis)、S−Medium(商品名、DS Pharma Biomedical)、Repro XF(商品名、Reprocell)、StemSure hPSC Medium Δ(商品名、Wako)等が挙げられる。
(1)フィーダー細胞との共培養系からヒト多能性幹細胞を回収
フィーダー細胞(例えばMEF)と共培養しているヒト多能性幹細胞の培養ディッシュ(3〜5日目)に細胞剥離液(例えば、霊長類ES細胞用細胞剥離液(リプロセル RCHETP002、1mg/ml dispase/DMEM−F12、10mg/ml collagenaseIV/DMEM−F12など)を添加して(例えば1ml/60mmディッシュ)、37℃で5分間恒温処理し、ヒト多能性幹細胞とMEFを剥離する。細胞を15ml遠心チューブに移し、培地を約10ml入れて細胞を懸濁した後、5分間チューブを静置してコロニーのみを沈降させる。上清を除去し、同様の操作を2回以上繰り返して、ヒト多能性幹細胞のコロニーのみを沈降させ、回収する。
(2)ヒト多能性幹細胞の単一細胞状態への移行
回収したヒト多能性幹細胞のコロニーを単一細胞に分散させる。単一細胞に分散させる方法は特に限定されないが、例えば、EDTA溶液でヒト多能性幹細胞コロニーを恒温処理した後、ピペットマンで数回フラッシングすることにより、単一細胞状態に分散させる方法等が挙げられる。
(3)ヒト多能性幹細胞のフィーダーフリー培養(プレコーティング法)
フィーダー細胞との共培養から作製した単一細胞状態のヒト多能性幹細胞、あるいはフィーダーフリー培養から分散剥離した単一細胞状態のヒト多能性幹細胞を、10μMのROCK阻害剤を含む培地に懸濁し、例えばラミニン511E8を0.5μg/cmの濃度でプレコーティングした培養容器に、約1×10〜2×10cells/cm(細胞数は培地に依存して異なる)の播種密度になるように播種する。培養は、用いた培地に適合するCO濃度条件で行い、培地の交換は毎日または培地使用説明書の指示通りに行う。
細胞が増殖して培養面の不足あるいはコロニー内の死細胞の出現が目立つようになるのを目安に継代操作を行う。継代方法は限定されないが、培養容器に細胞分散剥離液(例えば5mM EDTA溶液)で約5〜約8分間室温で恒温処理して、ヒト多能性幹細胞を分散剥離する。処理時間は用いた培地に応じで適宜選択される。数回フラッシングして細胞を完全に剥離させた後、培地を加えて中和希釈し、遠心チューブに回収して遠心分離(1000×g, 3分)する。新鮮な培地で細胞を懸濁した後、例えばラミニン511E8をプレコーティングした培養容器に播種する。なお、プレコーティング法における培養基質はラミニン511E8に限定されない。
(4)本発明の培養方法への移行
フィーダー細胞との共培養またはプレコーティング法で維持培養しているヒト多能性幹細胞を分散剥離した後、ラミニン511E8を約1.25μg/mlの濃度で含有する培地に懸濁し、培養ディッシュに、約200μl/cm(培養面積)の液量で、約1×10〜約2×10cells/cmの播種密度になるように播種する。播種細胞数は、用いた培地に応じて適宜選択され、上記範囲に限定されない。培地には、細胞播種時に10μMのROCK阻害剤の添加が必要であるが、培地交換以後は添加を必要としない。培養は、用いた培地に適合するCO濃度条件で行い、培地の交換は毎日または培地使用説明書の指示通りに行う。なお、ラミニンフラグメントを含有しない培地で細胞懸濁液を調製し、播種後にラミニン511E8溶液を最終濃度が約1.25μg/mlになるように添加してもよい。なお、ヒト多能性幹細胞は単一細胞状態で播種することが好ましいが、これに限定されず、細胞塊が混在した状態で播種してもよい。
〔培地〕
本発明は、インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントを含有する細胞培養用培地を提供する。本発明の培地に使用できるインテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントおよび培地の種類は、上述のとおりである。培地に含まれるラミニンフラグメント濃度は、通常0.15μg/ml〜10μg/mlの範囲から選択され、0.3μg/ml〜2.5μg/mlであることが好ましく、0.5μg/ml〜1.25μg/mlであることがより好ましい。本発明の培地を用いることにより、上記本発明の細胞培養方法において、培地にラミニフラグメントを添加してラミニンフラグメント含有培地を自製する工程を省略することができる。また、上記本発明の細胞培養方法において、均質なラミニンフラグメント含有培地を使用できる点で、培養細胞の品質管理を容易に行うことが可能となる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実験材料〕
(1)細胞外基質
iMatrix−511は株式会社ニッピより購入した(Nippi #892011)。ラミニン521はBioLamina社より購入した(BioLamina #BLA-LN521-02)。ビトロネクチンは和光純薬より購入した(Wako #220-02041)。
(2)使用細胞
ヒトES細胞は、National Stem Cell Bankより購入した株(H9)を使用した。ヒトiPS細胞は京都大学iPS細胞研究所が作製した253G1株を使用した。各細胞は、各機関が推奨するフィーダー細胞との共培養法に従って維持培養した後、更にフィーダーフリー培養法で維持培養した細胞を、通常の維持培養方法と本発明の培養方法(添加法)に分けて培養した。
〔実施例1:本発明の細胞培養方法とプレコーティング法におけるヒト多能性幹細胞の培養基質濃度依存的接着効率の比較〕
プレコーティング法では、iMatrix−511、ラミニン521およびビトロネクチンの各培養基質を、最終コーティング濃度が0〜4μg/cmの範囲になるようにDulbecco’s PBS(DPBS)(Wako #045-29795)で希釈し、溶液50μlを96ウェルマイクロプレート(BD #351172)に加え、37℃ COインキュベーター内で3時間静置することでプレコーティング処理を行った。一方の本発明の細胞培養方法(以下、「本発明の方法」と記す。)では、細胞継代時に細胞懸濁液に各培養基質溶液をそれぞれ直接添加し、プレコーティング処理は行わなかった。
細胞継代処理では、プレコーティング法条件でTeSR−E8培地を使用して維持培養しているH9ヒトES細胞または253G1ヒトiPS細胞に、5mM EDTA/DPBS溶液を加え、5〜8分間室温で恒温処理して細胞をシングル状態に分散剥離し、細胞数をカウントした。細胞は5×10cells/cmの播種密度になるように各培地(100μl)に懸濁し、プレコーティング法のウェルには10μM Y−27632を添加、本発明の方法のウェルには10μM Y−27632と、最終iMatrix−511濃度が0〜2μg/cm/100μlになるようにiMatrix−511のストック液を加えた。24時間後、培養上清を除いて、温めたDMEM−F12培地でウェルを洗浄した後、10%中性ホルマリン緩衝液を加えて10分間細胞を固定した。100%エタノールで10分間処理した後、プレートを完全に乾燥させ、10%Giemsa’s solution/90% MilliQ水で細胞を1時間染色した。プレートをMilliQ水で2回洗浄し、完全に風乾させた後、1%SDS水溶液を加えて細胞を可溶化し、マルチプレートリーダーを用いて波長560nmの吸光度を測定した。
結果を図1(A)および(B)に示した。(A)はH9ヒトES細胞の結果、(B)は253G1ヒトiPS細胞の結果である。図1(A)から明らかなように、H9ヒトES細胞を用いた場合、プレコーティング法では、iMatrix−511(図中iM511)はビトロネクチン(図中VN)と同等以上、ラミニン521(図中LM521)より高い最大細胞接着を示した。一方、本発明の方法では、iMatrix−511はプレコーティング法と同等の最大細胞接着を示し、尚且つプレコーティング法より低濃度で最大細胞接着を示した。また、図1(B)から明らかなように、253G1ヒトiPS細胞を用いた場合、プレコーティング法では、iMatrix−511はビトロネクチンと同等、ラミニン521より高い最大細胞接着を示した。一方、本発明の方法では、一方、本発明の方法では、iMatrix−511はプレコーティング法と同等の最大細胞接着を示し、尚且つプレコーティング法より低濃度で最大細胞接着を示した。
これらの結果から、プレコーティング法よりも本発明の方法の方が、より低濃度のラミニンフラグメントで効率的に、細胞接着効果を促すことが明らかとなった。
〔実施例2:基礎添加法とプレコーティング法それぞれにおけるヒト多能性幹細胞の接着の様子〕
実施例1のH9ヒトES細胞について、播種後24時間目の細胞接着の様子を顕微鏡で観察した。プレコーティング法は各培養基質1μg/cmのウェルを、本発明の方法は各培養基質0.25μg/cmのウェルを、培地で洗浄する前に観察した。
結果を図2に示した。上段がプレコーティング法の結果、下段が基礎添加法の結果である。スケールバーは100μmを示す。図2から明らかなように、本発明の方法におけるiMatrix−511では、H9ヒトES細胞はフラットな細胞接着の形態を示し、0.25μg/cmの低濃度においてもプレコーティング法におけるiMatrix−511の1μg/cmと同等の細胞接着の形態を示した。一方、ラミニン521の場合、本発明の方法においては、細胞接着効果が得られず、生存している一部が凝集して浮いている状態であった。
〔実施例3:本発明の方法とプレコーティング法におけるヒト多能性幹細胞の増殖速度の比較〕
プレコーティング法では、iMatrix−511の最終コーティング濃度を1μg/cmに固定した。本発明の方法では、培養容器の培養面1cmあたり0.25μgのiMatrix−511を含有する濃度になるように、iMatrix−511のストック液を加えた。
TeSR−E8培地で維持培養しているH9ヒトES細胞に5mM EDTA/DPBS溶液を加え、5分間室温で恒温して細胞を単一状態に分散剥離し、細胞数をカウントした。細胞は2×10cells/cmの播種密度になるように細胞懸濁液を調製し、プレコーティング法では10μM Y−27632を加えた後にプレコーティングした培養容器に、本発明の方法ではiMatrix−511のストック溶液と10μM Y−27632を加えた後にコーティング無し培養容器に、それぞれ細胞懸濁液を加えた。
増殖速度のグラフを図3に示した。図3から明らかなように、プレコーティング法の1μg/cmと本発明の方法の0.25μg/cmは同等の細胞接着を示した後、同じ速度で細胞が増殖した。
本発明の方法で培養したH9ヒトES細胞の増殖の様子を、Day1(培養開始日)〜Day4まで、1日1回細胞を顕微鏡で観察した結果を図4に示した。スケールバーは200μmを示す。図4から明らかなように、本発明の方法で培養したH9ヒトES細胞は、培養途中で細胞の剥離が起きず、安定した接着と増殖が観察された。この結果から、本発明の方法においてiMatrix−511を用いれば、iMatrix−511の使用量がプレコーティング法より少なくて済むにもかかわらず、プレコーティング法と同等の高い増殖速度で細胞を増殖できることがわかった。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

Claims (11)

  1. インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントを含む培地を用いて細胞を培養する工程を含み、細胞を培養容器に播種する前にラミニンまたはラミニンフラグメントを培養容器にコーティングする工程を含まないことを特徴とする細胞培養方法。
  2. ラミニンまたはラミニンフラグメントがプレコーティングされていない培養容器に細胞を播種して培養することを特徴とする請求項1に記載の細胞培養方法。
  3. インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントが、ラミニンE8フラグメントである請求項1または2に記載の細胞培養方法。
  4. 培地のラミニンフラグメント濃度が、培養容器あたりの液量中に、該培養容器の培養面1cmあたり0.03μg〜2μgのラミニンフラグメントを含有する濃度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養方法。
  5. 培地のラミニンフラグメント濃度が、培養容器あたりの液量中に、該培養容器の培養面1cmあたり0.06μg〜0.5μgのラミニンフラグメントを含有する濃度であることを特徴とする請求項4に記載の細胞培養方法。
  6. インテグリンがインテグリンα6β1、α6β4、α3β1、α7β1である請求項1〜5のいずれかに記載の細胞培養方法。
  7. 細胞が哺乳動物細胞である請求項1〜6のいずれかに記載の細胞培養方法。
  8. 細胞が哺乳動物細胞の幹細胞または該幹細胞から分化した細胞である請求項7に記載の細胞培養方法。
  9. 細胞が多能性幹細胞である請求項8に記載の細胞培養方法。
  10. インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントを含有することを特徴とする細胞培養用培地。
  11. ラミニンフラグメント濃度が、0.15μg/ml〜10μg/mlである請求項10に記載の細胞培養用培地。
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