JP2016011624A - コンポジット推進薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価で良好な特性を有するコンポジット推進薬を提供する。
【解決手段】コンポジット推進薬は、過塩素酸アンモニウムと、金属粉末と、バインダーとを含有する。上記バインダーは、数平均分子量が2000〜4000であり、1分子中の平均水酸基数が2.2〜2.6である水酸基末端液状ポリブタジエンと、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤とを主成分とする。この構成では、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤を用いることにより、汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンを良好に硬化させることができるようになる。これにより、安価で良好な特性を有するコンポジット推進薬を提供することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、安価で良好な伸び特性を有するコンポジット推進薬に関する。
固体推進薬は、液体推進薬に比べ、長期保存が可能であり、取り扱いが容易であり、初期より大きな推力が得られるという特長を有する。そのため、固体推進薬は、人工衛星打ち上げ用ロケットや軍事用ロケットなどに広く利用されている。
固体推進薬は、ダブルベース系固体推進薬と、コンポジット推進薬とに大別される。ダブルベース系固体推進薬は、ニトログリセリンと、ニトロセルロースとを主成分とする。コンポジット推進薬は、酸化剤と、燃料成分であるバインダーとを主成分とする。
特許文献1〜3にはコンポジット推進薬に関する技術が開示されている。良好な伸び特性を有するコンポジット推進薬として、例えば、過塩素酸アンモニウムを酸化剤とし、アルミニウム粉末を助燃剤とし、水酸基末端液状ポリブタジエンをバインダーとするものが知られている。
このようなコンポジット推進薬では、水酸基末端液状ポリブタジエンを硬化させるための硬化剤として、イソフォロンジイソシアネートモノマーが用いられる(特許文献1〜3参照)。また、特許文献4では、水酸基末端液状ポリブタジエンの使用量を低減させる技術が検討されている。
特開2007−99565号公報 特開2008−169073号公報 特開2004−250244号公報 特開2011−20880号公報
一般的なコンポジット推進薬に用いられる水酸基末端液状ポリブタジエンは、入手困難な特殊品であるため高価である。これに対し、特許文献4では、高価な水酸基末端液状ポリブタジエンの使用量を低減させる技術が検討されている。しかしながら、高価な水酸基末端液状ポリブタジエンが用いられる以上、その使用量を低減させたとしても、安価なコンポジット推進薬が得られない。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、安価で良好な伸び特性を有するコンポジット推進薬を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るコンポジット推進薬は、過塩素酸アンモニウムと、金属粉末と、バインダーとを含有する混合物を硬化させて得られる。
上記バインダーは、数平均分子量が2000〜4000であり、1分子中の平均水酸基数が2.2〜2.6である水酸基末端液状ポリブタジエンと、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤とを主成分とする。
この構成では、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤を用いることにより、汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンを良好に硬化させることができる。これにより、良好な伸び特性を有するコンポジット推進薬を安価で製造可能となる。
上記過塩素酸アンモニウムと上記金属粉末と上記バインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、
上記過塩素酸アンモニウムの含有量が50〜88重量部であり、
上記金属粉末の含有量が2〜25重量部であり
上記バインダーの含有量が10〜35重量部であってもよい。
この構成では、特に良好な特性を有するコンポジット推進薬が得られる。
上記ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤が、アロファネート体のヘキサメチレンジイソシアネートを含んでもよい。
上記ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤が、ビウレット体のヘキサメチレンジイソシアネートを含んでもよい。
この構成により、汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンを特に良好に硬化させることができるようになる。
上記金属粉末が、マグナリウムとアルミニウムとのうちの少なくとも一方を含み、1〜50μmの平均粒子径を有していてもよい。
この構成では、燃焼時のエネルギー効率の良好なコンポジット推進薬が得られる。
上記過塩素酸アンモニウムは、
メディアン径10〜50μmの第1の粒子と、
メディアン径150〜250μmの第2の粒子と、
メディアン径350〜500μmの第3の粒子と、を含んでいてもよい。
上記第1の粒子と上記第2の粒子と上記第3の粒子との含有量の合計を100重量部とすると、
上記第1の粒子の含有量が5〜20重量部であり、
上記第2の粒子の含有量が20〜40重量部であり、
上記第3の粒子の含有量が50〜80重量部であってもよい。
この構成では、酸化剤である過塩素酸アンモニウムの嵩密度が大きくなるため、燃焼時に酸素が良好に供給されるコンポジット推進薬が得られる。
安価で良好な伸び特性を有するコンポジット推進薬を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るコンポジット推進薬は、主として、酸化剤である過塩素酸アンモニウムと、助燃剤である金属粉末と、燃料成分であるバインダーとを含有する。
以下、本実施形態に係るコンポジット推進薬の各構成について詳細に説明する。
[過塩素酸アンモニウム]
本実施形態に係るコンポジット推進薬では、酸化剤として、酸素の供給性能に優れる過塩素酸アンモニウムが用いられる。
過塩素酸アンモニウムの含有量は、過塩素酸アンモニウムと金属粉末とバインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、50〜88重量部であることが好ましく、60〜87重量部であることが更に好ましい。
過塩素酸アンモニウムの含有量を50重量部以上とすることにより、コンポジット推進薬の燃焼時に酸素の供給が良好に行われるようになる。また、過塩素酸アンモニウムの含有量を60重量部以上とすることにより、コンポジット推進薬の燃焼時に酸素の供給が更に良好に行われるようになる。
コンポジット推進薬では、燃焼剤であるバインダーが不足すると、良好な燃焼が得られなくなる。その点、過塩素酸アンモニウムの含有量を、88重量部以下、更には87重量部以下に留めることにより、コンポジット推進薬におけるバインダーの不足を防止することができる。
更に、過塩素酸アンモニウムは、メディアン径10〜50μmの小粒子(第1の粒子)と、メディアン径150〜250μmの中粒子(第2の粒子)と、メディアン径350〜500μmの大粒子(第3の粒子)との3種類の粒子により構成されていることが好ましい。
第1の粒子の含有量は、第1の粒子と第2の粒子と第3の粒子との含有量の合計を100重量部とすると、5〜20重量部であることが好ましい。第2の粒子の含有量は、第1の粒子と第2の粒子と第3の粒子との含有量の合計を100重量部とすると、20〜40重量部であることが好ましい。第3の粒子の含有量は、第1の粒子と第2の粒子と第3の粒子との含有量の合計を100重量部とすると、50〜80重量部であることが好ましい。
これにより、酸化剤である過塩素酸アンモニウムの嵩密度が大きくなるため、コンポジット推進薬の燃焼時に酸素の供給が良好に行われるようになる。また、3種類の粒子により構成された過塩素酸アンモニウムを用いることにより、未硬化スラリーを注型しやすい粘度に保持することができる。
なお、過塩素酸アンモニウムは、上記の3種類の粒子のうち、いずれか2種類の粒子により構成されている場合にも、上記と同様の効果を奏する。
[金属粉末]
本実施形態に係るコンポジット推進薬では、助燃剤として、燃焼時のエネルギー効率が良好な金属粉末が用いられる。金属粉末は、特定の種類に限定されない。しかし、金属粉末は、取り扱いの容易さの観点から、マグナリウムとアルミニウムとのうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。
マグナリウムは、マグネシウムとアルミニウムとの合金であるが、マグネシウムとアルミニウムとの組成割合は任意である。しかし、マグナリウムは、マグネシウム成分による着火性と、アルミニウム成分による燃焼性とが良好に発現されるような組成割合のマグネシウム及びアルミニウムを含むことが好ましい。
また、マグナリウムとアルミニウムとの混合物を用いる場合にも、この混合物が、マグネシウム成分による着火性と、アルミニウム成分による燃焼性とが良好に発現されるような組成割合のマグナリウム及びアルミニウムを含むことが好ましい。
更に、マグナリウムは、過塩素酸アンモニウムの燃焼によって発生する塩化水素の量を低減させる機能を有する。そのため、低公害化の観点から、コンポジット推進薬の金属粉末にはマグナリウムが含まれることが好ましい。
金属粉末の含有量は、過塩素酸アンモニウムと金属粉末とバインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、2〜30重量部であることが好ましく、2〜25重量部であることが更に好ましい。
金属粉末の含有量を2重量部以上とすることにより、コンポジット推進薬の燃焼速度の温度依存性を低減させることができる。また、金属粉末の含有量を30重量部以下とすることにより、金属粉末とバインダーとの混合性が良好になる。更に、金属粉末の含有量を25重量部以下とすることにより、金属粉末とバインダーとの混合性が更に良好になる。
金属粉末の平均粒子径は、100μm以下であることが好ましく、1〜50μmであることが更に好ましい。
金属粉末の平均粒子径を100μm以下とすることにより、金属粉末の燃焼効率が良好になる。また、金属粉末の平均粒子径を50μm以下とすることにより、金属粉末の燃焼効率が更に良好になる。更に、金属粉末の平均粒子径を1μm以上とすることにより、コンポジット推進薬の製造時のハンドリング性が向上する。
[バインダー]
本実施形態に係るコンポジット推進薬では、燃料成分として、バインダーが用いられる。コンポジット推進薬の製造に用いられる硬化前のバインダーには、樹脂成分と、硬化剤とが含まれる。樹脂成分は、主として、汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンにより構成される。また、硬化前のバインダーには、各種添加剤が含まれていてもよい。
バインダーの含有量は、過塩素酸アンモニウムと金属粉末とバインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、10〜35重量部であることが好ましい。これにより、コンポジット推進薬において良好な燃焼が得られるようになる。
以下、バインダーの各成分の詳細について説明する。
(1)一般的なコンポジット推進薬に用いられる水酸基末端液状ポリブタジエン
まず、一般的なコンポジット推進薬に用いられる、数平均分子量が2600〜3000であり、1分子中の平均水酸基数が2〜2.2個である水酸基末端液状ポリブタジエンについて説明する。
水酸基末端液状ポリブタジエンは、一般的に、ブタジエンを原材料とし、イソプロパノール中で過酸化水素を触媒としてラジカル重合により製造される。この方法で製造される水酸基末端液状ポリブタジエンでは、1分子中の平均水酸基数が2.2〜2.6個となり、ヒドロキシル基が付加された3官能以上の多官能成分が多く含まれる。この水酸基末端液状ポリブタジエンは、汎用品であり、安価で入手可能である。
一般的なコンポジット推進薬の製造方法では、水酸基末端液状ポリブタジエンをイソフォロンジイソシアネートモノマーによって硬化させる。しかし、多官能成分が多く含まれる水酸基末端液状ポリブタジエンは、イソフォロンジイソシアネートモノマーによって硬化させられると、硬く伸びの小さい樹脂となってしまう。
このような樹脂により製造されるコンポジット推進薬では十分な伸び特性が得られない。伸び特性の不足するコンポジット推進薬では、クラックが発生することにより異常燃焼を起こしやすくなる。
したがって、一般的なコンポジット推進薬の製造方法では、多官能成分が少なくなるように調整された特殊品の水酸基末端液状ポリブタジエンが用いられる。このような特殊品の水酸基末端液状ポリブタジエンは、汎用品の水酸基末端液状ポリブタジエンを繰り返し精製する手法や、アニオン重合などの特殊な重合方法を用いる手法を用いて製造される。特殊品である水酸基末端液状ポリブタジエンの1分子中の平均水酸基数は2.0〜2.2個である。
このように特殊品である水酸基末端液状ポリブタジエンを用いて製造される一般的なコンポジット推進薬は非常に高価になる。
(2)本実施形態に係る水酸基末端液状ポリブタジエン
本実施形態に係るコンポジット推進薬では、一般的なコンポジット推進薬とは異なり、多官能成分が多く含まれる汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンを精製することなく用いる。これにより、本実施形態に係るコンポジット推進薬は、一般的なコンポジット推進薬とは異なり、安価で製造可能となる。
本実施形態に係る汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンの数平均分子量は2000〜4000である。数平均分子量が2000未満の水酸基末端液状ポリブタジエンでは、混和した酸化剤や金属粉末が分散した後に再凝集しやすくなる。また、数平均分子量が4000を超える水酸基末端液状ポリブタジエンでは、注型が困難なほどに未硬化スラリーの粘度が高くなり、また気泡の混入が発生しやすくなる。
(3)硬化剤
本実施形態では、汎用品である水酸基末端液状ポリブタジエンを硬化させる硬化剤として、架橋点間の平均分子量を高分子化可能な、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤を用いる。水酸基末端液状ポリブタジエンは、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤によって硬化させられると、良好な伸び特性を有する樹脂となる。
したがって、本実施形態に係るコンポジット推進薬では、良好な伸び特性が得られるため、クラックの発生による異常燃焼が起こりにくい。
ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤としては、モノマー、アロファネート体、アダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などの各種ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤は、アロファネート体とビウレット体とのうちの少なくとも一方を含む場合に、架橋点間の平均分子量が制御可能となり、特に良好な伸び特性を有するコンポジット推進薬が得られる。
硬化剤は、複数種類のヘキサメチレンジイソシアネートを含んでいてもよく、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤以外の硬化剤を含んでいてもよい。
硬化剤の含有量は、水酸基末端液状ポリブタジエンの活性部位1分子に対して、硬化剤の活性部位が0.5分子以上となるように調整されていることが好ましく、硬化剤の活性部位が0.7以上となるように調整されていることが更に好ましい。硬化剤の活性部位を0.5分子以上、更には0.7分子以上とすることにより、水酸基末端液状ポリブタジエンの硬化性が向上する。
なお、水酸基末端液状ポリブタジエンの硬化性は、硬化剤の活性部位が1.0分子を超えるとあまり向上しなくなり、硬化剤の活性部位が1.5分子を超えるとほとんど向上しなくなる。
そのため、硬化剤の含有量は、コストの観点から、水酸基末端液状ポリブタジエンの活性部位1分子に対して、硬化剤の活性部位が1.5分子以下となるように調整されていることが好ましく、硬化剤の活性部位が1.0分子以下となるように調整されていることが更に好ましい。
(4)添加剤
バインダー成分としての添加剤は、バインダーを所望の物性とするために添加される。添加剤としては、例えば、可塑剤、ポリマー鎖延長剤、結合剤、架橋剤などが挙げられる。
可塑剤は、バインダーの低温での伸び特性を向上させ、未硬化スラリーの粘度を低下させる目的で添加される。
本実施形態で利用可能な可塑剤としては、例えば、ジオクチルアジペート(DOA)、イソデシルアジペート(DIDA)、イソデシルペラルゴネート(IDP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチルセパケート(DOS)等のエステル類や1,2,4−ブタントリオールトリナイトレート(BTTN)、トリメチロールエタントリナイトレート(TMETN)などが挙げられる。
可塑剤は特定の種類に限定されず、複数種類の可塑剤が併用されてもよい。可塑剤の添加量は、バインダー100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることが更に好ましい。
ポリマー鎖延長剤は、水酸基末端液状ポリブタジエンの架橋点間の平均分子量を制御する目的で添加される。ポリマー鎖延長剤は、硬化剤と化学反応し、水酸基末端液状ポリブタジエンとの間にポリマー鎖を形成する。ポリマー鎖延長剤は、水酸基末端液状ポリブタジエンの末端に水酸基を有するポリマーを添加することができる。
ポリマー鎖延長剤は、1分子中に2〜2.3個の水酸基を有するポリマーである。ポリマー鎖延長剤の数平均分子量は、500〜4000であることが好ましく、600〜3500であることが更に好ましい。
ポリマー鎖延長剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロックポリマー、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、両末端水酸基水素化ポリブタジエンなどが挙げられる。
ポリマー鎖延長剤は特定の種類に限定されず、複数種類のポリマー鎖延長剤が併用されてもよい。可塑剤の添加量は、バインダー100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることが更に好ましい。
結合剤は、他の粉末成分に対するバインダー成分の密着性を付与する目的で添加される。
結合剤としては、例えば、1,2−トリス(2メチルアジリテニル)フォスフィンオキサイド(MAPO)、ビスイソフタル−1−(2メチル)アジリジン、トリス〔1−(2エチル)アジリジニル〕ベンゼン、2モルのMAPO、0.7モルのアジピン酸、0.3モルの酒石酸の付加体等であるMT−4等のアジリジン系、トリエタノールアミン、テトラエチレンペンタミンとアクリロニトリルの反応物(TEPANまたはHX−879、3M社)、テトラエチレンペンタミンとアクリロニトリルとグリシドールとの反応物(TEPANOLまたはHX−878、3M社)等のアミン系、ジヒドロキシエチル−5,5−ジメチルヒダントイン(DHE)などが挙げられる。
結合剤は特定の種類に限定されず、複数種類の結合剤が併用されてもよい。可塑剤の添加量は、バインダー100重量部に対して、0.01〜5重量部であることが好ましく、0.01〜3重量部であることが更に好ましい。
架橋剤は、硬化剤と化学反応し、3次元的にバインダー成分を架橋する分岐点となるポリオールであり、バインダーの物性を変化させるために添加される。
架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリエーテルトリオール、ポリエステルトリオール等の三官能以上のポリオール類などが挙げられる。架橋剤は特定の種類に限定されず、複数種類の架橋剤が併用されてもよい。
[その他添加剤]
その他、コンポジット推進薬に求められる伸び特性に応じ、添加剤が添加されてもよい。添加剤としては、例えば、燃焼速度調整剤、老化防止剤、硬化触媒、振動燃焼抑制剤が挙げられる。
燃焼速度調整剤としては、例えば、酸化第二鉄、フェロセン、ビスエチルフェロセニルプロパン、フッ化リチウムなどを採用可能である。
老化防止剤としては、例えば、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、フェニル−β−ナフチルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの反応生成物(ノンフレックスBA、精工化学社製)などが採用可能である。
硬化触媒としては、例えば、スズ化合物、ビスマス化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等の金属化合物などが採用可能である。
振動燃焼抑制剤としては、例えば、炭化ジルコニウム、酸化ジルコニウムなどが採用可能である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
[コンポジット推進薬の製造]
以下のコンポジット推進薬の製造例では、いずれの実施例及び比較例でも全原料の量を500重量部とした。
まず、水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)と、可塑剤であるジオクチルアジペート(DOA)とを真空下60℃で30分間混合した。水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)の種類及び量は各実施例及び比較例ごとに異なる。ジオクチルアジペート(DOA)の量はいずれの実施例及び比較例でも6.00重量部とした。
上記により得られた混合物に、常圧にて、メッシュを用いて篩分けした32〜45μmのマグナリウム(アルミニウムとマグネシウムの重量混合比50:50)を添加し、真空下にて60℃で10分間混合した。マグナリウムの量はいずれの実施例及び比較例でも90.00重量部とした。
上記により得られた混合物に、常圧にてメディアン径400μmの過塩素酸アンモニウム(AP400)を添加し、真空下にて60℃で10分間混合した。また、これにより得られた混合物に、常圧にてメディアン径200μmの過塩素酸アンモニウム(AP200)を添加し、真空下にて60℃で10分間混合した。更に、これにより得られた混合物に、常圧にてメディアン径50μmの過塩素酸アンモニウム(AP50)を添加し、真空下にて60℃で10分間混合した。
各過塩素酸アンモニウム粉末AP400、AP200、AP50の量は、いずれの実施例及び比較例でも、それぞれ216.50重量部、92.50重量部、31重量部とした。
上記により得られた混合物に、硬化剤であるヘキサメチレンジイソシアネートを添加し、真空下60℃にて10分間混合してコンポジット推進薬の前駆体である未硬化スラリーを得た。ヘキサメチレンジイソシアネートの種類は各実施例及び比較例ごとに異なる。ヘキサメチレンジイソシアネートの量は、いずれの実施例及び比較例でも、NCO/OH=0.9となるように調整した。これにより、全原料におけるバインダー成分の含有量が14.00重量%となるようにした。
上記により得られたスラリーの一部をスチロール角型ケース(180×90×45mm)に充填し、60℃で7日間保持することにより硬化させて、各実施例及び比較例に係るコンポジット推進薬が得られた。
[引っ張り試験]
各実施例及び比較例に係るコンポジット推進薬を、社団法人火薬学会の火薬学会規格(V)プロペラント計測方法に記載の単軸引張計測方法により、50mm/分、試験温度20℃にて引っ張り試験を行い、最大応力[kg・f/cm]、最大応力時の歪み(伸び)[%]、及び弾性率[kg・f/cm]を測定した。
[実施例1]
水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)は、数平均分子量2800、1分子中の水酸基数2.32の汎用品である。水酸基末端液状ポリブタジエンの量は55.00重量部である。硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(三井化学製タケネートD−178NL)である。硬化剤の量は9.00重量部である。
[実施例2]
水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)は、数平均分子量2800、1分子中の水酸基数2.32の汎用品である。水酸基末端液状ポリブタジエンの量は56.40重量部である。硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(三井化学製D−165N)である。硬化剤の量は7.60重量部である。
[比較例1]
水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)は、数平均分子量2800、1分子中の水酸基数2.32の汎用品である。水酸基末端液状ポリブタジエンの量は59.10重量部である。硬化剤は、イソフォロンジイソシアネートモノマーである。硬化剤の量は4.90重量部である。
比較例1に係るコンポジット推進薬は、実施例1,2に係るコンポジット推進薬と、硬化剤の種類が異なる。
[比較例2]
水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)は、数平均分子量2730、1分子中の水酸基数2.10の特殊品である。水酸基末端液状ポリブタジエンの量は59.45重量部である。硬化剤は、イソフォロンジイソシアネートモノマーである。硬化剤の量は4.55重量部である。
比較例2に係るコンポジット推進薬は、実施例1,2に係るコンポジット推進薬と、水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)の種類、及び硬化剤の種類が異なる。比較例2に係るコンポジット推進薬は、特殊品である水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)を用いて製造される一般的なコンポジット推進薬である。
[評価結果]
表1は、実施例1,2、及び比較例1,2に係るコンポジット推進薬について、原料の成分と、引っ張り試験の結果とを示している。
Figure 2016011624
実施例1,2では、いずれも比較例2と同等の最大応力、最大応力時の歪、及び弾性率が得られた。つまり、実施例1,2に係るコンポジット推進薬は、汎用品である安価な水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)を用いて製造されるにも関わらず、比較例2に係る特殊品である高価な水酸基末端液状ポリブタジエン(HTPB)を用いて製造されるコンポジット推進薬と同等の伸び特性を有する。
一方、比較例1では、実施例1,2、及び比較例2と比較して、最大応力時の歪が大幅に低下するとともに、弾性率が大幅に上昇している。したがって、比較例1に係るコンポジット推進薬では、コンポジット推進薬として必要な伸び特性が得られていない。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。

Claims (6)

  1. 過塩素酸アンモニウムと、
    金属粉末と、
    数平均分子量が2000〜4000であり、1分子中の平均水酸基数が2.2〜2.6である水酸基末端液状ポリブタジエンと、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤とを主成分とするバインダーと
    を含有する混合物を硬化させて得られる
    コンポジット推進薬。
  2. 請求項1に記載のコンポジット推進薬であって、
    前記過塩素酸アンモニウムと前記金属粉末と前記バインダーとの含有量の合計を100重量部とすると、
    前記過塩素酸アンモニウムの含有量が50〜88重量部であり、
    前記金属粉末の含有量が2〜25重量部であり
    前記バインダーの含有量が10〜35重量部である
    コンポジット推進薬。
  3. 請求項1又は2に記載のコンポジット推進薬であって、
    前記ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤が、アロファネート体のヘキサメチレンジイソシアネートを含む
    コンポジット推進薬。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のコンポジット推進薬であって、
    前記ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤が、ビウレット体のヘキサメチレンジイソシアネートを含む
    コンポジット推進薬。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のコンポジット推進薬であって、
    前記金属粉末が、マグナリウムとアルミニウムとのうちの少なくとも一方を含み、1〜50μmの平均粒子径を有する
    コンポジット推進薬。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載のコンポジット推進薬であって、
    前記過塩素酸アンモニウムは、
    メディアン径10〜50μmの第1の粒子と、
    メディアン径150〜250μmの第2の粒子と、
    メディアン径350〜500μmの第3の粒子と、を含み、
    前記第1の粒子と前記第2の粒子と前記第3の粒子との含有量の合計を100重量部とすると、
    前記第1の粒子の含有量が5〜20重量部であり、
    前記第2の粒子の含有量が20〜40重量部であり、
    前記第3の粒子の含有量が50〜80重量部である
    コンポジット推進薬。
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