JP2016004710A - 固体電解質形燃料電池および該燃料電池の反応抑止層形成用材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】反応抑止層形成用材料は、希土類元素がドープされたセリウム酸化物粒子成分として、相互に粒度分布および平均粒子径が異なる大粒径セリウム酸化物粒子成分と小粒径セリウム酸化物粒子成分とを含む。大粒径セリウム酸化物粒子成分の平均粒子径は2μm以下であり、小粒径セリウム酸化物粒子成分の平均粒子径は0.5μm以下であり、且つ、大粒径セリウム酸化物粒子成分の平均粒子径は、小粒径セリウム酸化物粒子成分の平均粒子径の3倍以上30倍以下である。
【選択図】図2
Description
SOFCを構成する最小単位のセル(単セル)は、酸素イオン伝導体からなる緻密構造の層状の固体電解質と、該固体電解質層の一方の面に形成された多孔質構造の空気極(カソード)と、該固体電解質層の他方の面に形成された多孔質構造の燃料極(アノード)とから構成されている。そして、単セルのカソード形成側の固体電解質の表面に空気等に代表されるO2含有ガスが供給され、アノード形成側の固体電解質の表面にはH2等の燃料ガスが供給される。そして電池反応として、空気中のO2ガスがカソードで還元されて生成された酸素イオンが固体電解質を通過し、アノードにおいてH2ガス等の燃料ガスを酸化することによって外部負荷に電子を放出する。これに伴い、電気エネルギーを発生させる。
典型的には、酸化ニッケル(NiO)およびYSZの混合物に、造孔剤、溶剤、ビヒクル(樹脂)等を添加し混合して得たスラリー状(ペースト状)の材料をドクターブレード法等によってシート状に成形し、さらに当該シートを所望数だけ積層してアノード支持体層を形成する。そして形成したアノード支持体層上に固体電解質層、反応抑止層、カソード層を順次積層(形成)し、得られた積層体を焼成(即ち共焼成)することによって、アノード支持型SOFC(単セル)を製造する。例えば、以下の特許文献1には、従来のアノード支持型SOFCの一例が記載されている。
低温作動化を効果的に実現する一助としてカソード材料が検討されている。例えば、電子導電性と酸素イオン導電性とを示すいわゆる電子−酸素イオン混合導電体材料を用いてカソードを構成することによって、電極/電解質/気相の接する三相界面だけでなく、カソード表面においても電極反応を進行させ、電極活性を高めることが期待されている。かかるカソード材料として、ペロブスカイト型酸化物材料であるランタンコバルタイト系材料(例えばLaSrCoO3−δ系材料)やランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)系材料が挙げられる。例えば、以下の特許文献2には、低温作動タイプのSOFCで使用され得るカソード材料の一例が記載されている。
しかしながら、かかるセリア系材料は、焼結性が低く、例えば一般的な構成のSOFCの焼結温度である1300〜1400℃の温度域では緻密化が充分とはいえない場合があった。また、焼結時の収縮率が固体電解質と比較して低いため、固体電解質ならびに反応抑止層を共焼成する場合や予め固体電解質を焼成した後に反応抑止層を焼成する場合において、固体電解質層と反応抑止層との間の界面で剥離が発生する虞があった。
酸化チタンのような無機チタン化合物、好ましくはチタンアルコキシド類やチタンキレート類等の有機チタン化合物を含むことにより、反応抑止層と固体電解質層との間の界面の接着性(界面接着率)をより向上させることができる。このため、本態様の反応抑止層形成用材料によると、例えばカソード(空気極)材料としてYSZ等の固体電解質層と反応性の高いペロブスカイト型酸化物材料を採用した場合においても、当該固体電解質層とカソードとの間に良好な反応抑止層を形成することができる。しかも、反応抑止層と固体電解質層との間の接着性(界面接着率)が高いため、発電性能に優れる固体酸化物形燃料電池(特には低温作動タイプのSOFC)を製造することができる。
特に好ましくは、前記チタン化合物の含有量が全体の0.001質量%〜10質量%であることを特徴とする。この程度の含有量でチタン化合物を含むことにより、反応抑止層と固体電解質層との間の高い接着性(界面接着率)が実現することができる。
このようなペースト状反応抑止層形成用材料(以下、「反応抑止層形成用ペースト」ともいう。)によると、当該反応抑止層形成用ペーストを対象とする固体電解質層(或いは該固体電解質層を焼成により形成するためのグリーンシート)上に塗布等によって付与することにより、容易に所定厚さの反応抑止層を形成することができる。
かかる反応抑止層形成用ペーストの好適な一態様は、上記チタン化合物が分散または溶解して含まれるペースト材料である。特にチタンアルコキシド類やチタンキレート類等の有機チタン化合物が有機系溶媒に溶解した状態で存在する(即ちTiレジネートを含む)ペースト材料によると、高い接着性(界面接着率)を有し、剥離し難い固体電解質層と反応抑止層の積層構造を備えた固体酸化物形燃料電池を製造することができる。
そして、固体酸化物形燃料電池の断面を電子顕微鏡観察(典型的にはSEM観察)することによって導き出される反応抑止層と該反応抑止層に隣接する固体電解質層との間の界面全体の長さに占める該界面の接着部分の長さの割合を百分率で示す界面接着率(%)が、60%以上であることを特徴とする。ここで「接着部分」とは電顕観察によって当該界面における剥離の認められない部分(換言すれば電顕観察下で反応抑止層と固体電解質層の固相同士が密着している部分)をいう。
ここで開示されるSOFCでは、ジルコニア(典型的にはYSZ等の安定化ジルコニア)を主体とする固体電解質層と、セリウム酸化物からなる反応抑止層との間の上記界面接着率が60%以上の高値である。従って、例えばペロブスカイト型酸化物材料から成る空気極(カソード)を備えた低温作動タイプのSOFCであって、耐久性が高く良好な発電性能を奏するSOFCを提供することができる。
例えば、上記チタン化合物を含む反応抑止層形成用材料から形成された反応抑止層は適当量のチタン酸化物を含み、結果、反応抑止層と固体電解質層との間の剥離を防止し、熱耐久性と発電性能の高いSOFCが提供される。
ここで開示される反応抑止層形成用材料は、主成分として粒径分布と平均粒子径が相互に異なる2種類のセリウム酸化物粒子成分を含む。即ち、上述した構成の大粒径セリウム酸化物粒子成分と小粒径セリウム酸化物粒子成分とを含む。ここで「平均粒子径」は、レーザ回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置により測定された粒度分布における積算値50%での粒径(50%累積体積平均粒子径(メジアン径);D50)を意味する。
希土類元素がドープされたセリウム酸化物としては、サマリアがドープされたセリア (SDC)、イットリアがドープされたセリア(YDC)、ガドリニアがドープされたセリア(GDC)等が挙げられる。なかでもGDCが好適である。また、好適な希土類元素のドープ量は、5〜20モル%(好ましくは5〜15モル%)程度である。このようなセリウム酸化物成分から成る反応抑止層を形成することにより、YSZ等のジルコニアを主体とする固体電解質層とペロブスカイト型酸化物材料から成る空気極(カソード)との反応を抑止することができる。
大粒径セリウム酸化物粒子成分としては、平均粒子径(D50)が2μm以下であるものが好ましく、特には1μm以下のものが好ましい。取扱性や反応抑止層と固体電解質層との間の界面接着性を高める観点から、大粒径セリウム酸化物粒子成分として、平均粒子径が0.8μm以下のセリウム酸化物粒子を好ましく採用することができる。例えば、平均粒子径が0.1μm以上2μm以下の大粒径セリウム酸化物粒子成分が好ましく、0.3μm以上1μm以下のものがより好ましく、0.5μm以上0.8μm以下のものが特に好ましい。
大粒径セリウム酸化物粒子成分の含有量と小粒径セリウム酸化物粒子成分の含有量との比(質量比)は特に限定されない。大粒径セリウム酸化物粒子成分と小粒径セリウム酸化物粒子成分とを併用することによる効果をより良く発揮させる観点から、大粒径セリウム酸化物粒子成分の含有量が小粒径セリウム酸化物粒子成分の含有量以上であることが好ましい。例えば、固体電解質層に対する界面接着性の観点からは、大粒径セリウム酸化物粒子成分と小粒径セリウム酸化物粒子成分との質量比が10:1〜1:1であることが適当であり、5:1〜1:1であることが好ましく、4:1〜2:1であることがより好ましく、4:1〜3:1であることが特に好ましい。
ここで開示される反応抑止層形成用材料は、上述の大粒径セリウム酸化物粒子成分、小粒径セリウム酸化物粒子成分以外の添加物を含んでいてもよい。例えば、上述したように、ここで開示される反応抑止層形成用材料は、ペースト状に調製されていてもよい。当該ペースト状の反応抑止層形成用材料(以下、反応抑止層形成用ペーストともいう。)には、少なくとも1種の分散媒(溶媒)が含まれている。この分散媒としては、上記セリウム酸化物粒子を好適に分散できるもののうち、一種または二種以上を特に限定することなく用いることができる。かかる分散媒は有機系溶媒、無機系溶媒のいずれを用いてもよい。後述するチタン化合物がチタンを構成元素とする有機金属化合物である場合、該有機金属化合物が可溶な有機系溶媒を用いることが好ましい。かかる有機系溶媒としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、または他の有機溶剤が挙げられる。例えば、テルピネオール、ブチルジグリコールアセテート、イソブチルアルコール、チルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、エチレングリコール、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット等が好適に用いられる。また、無機系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒であることが好ましい。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、例えば、水と均一に混合し得る有機系溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。かかるペーストにおける分散媒(溶媒)の含有率は、特に限定されないが、ペースト全体の凡そ10質量%〜50質量%(典型的には20質量%〜35質量%)が好ましい。かかる反応抑止層形成用ペーストは、当該反応抑止層形成用ペーストを対象とする固体電解質層(或いは該固体電解質層を焼成により形成するためのグリーンシート)上に付与することが容易であるため好ましい。また、塗布等によって付与することにより、容易に所定厚さの反応抑止層を形成できるため好ましい。
ここに開示される反応抑止層形成用材料は、さらにチタン化合物を含有してもよい。チタン化合物としては、酸化チタンのような無機チタン化合物、チタンアルコキシド類やチタンキレート類等の有機チタン化合物が挙げられる。このようなチタン化合物を含むことにより、反応抑止層と固体電解質層との間の界面の接着性(界面接着率)をより向上させることができる。
ここに開示される反応抑止層形成用材料は、さらにバインダとして種々の樹脂成分を含むことができる。このような樹脂成分を加えることによって、反応抑止層形成用材料の固体電解質層上への付与が更に容易になる。かかる樹脂成分はペーストを調製するのに良好な粘性および塗膜形成能(例えば、印刷性や付着性等を含む。)を付与し得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ロジン樹脂等を主体とするものが挙げられる。このうち、特にエチルセルロース等のセルロース系高分子が含まれているのが好ましい。
以上、ここで開示される反応抑止層形成用材料について説明した。かかる反応抑止層形成用材料は、例えば、固体酸化物形燃料電池(すなわちSOFC)の固体電解質層と空気極(カソード)との反応を抑止する反応抑止層形成用材料として好適に用いることができる。以下、ここに開示される反応抑止層形成用材料を用いて構成されるSOFCの具体的な実施態様を示しながら、本発明が提供するSOFCについて説明する。
燃料極支持体材料として、平均粒子径0.5μmの酸化ニッケル(NiO)粉末と平均粒子径0.5μmの8mol%イットリア安定化ジルコニア(8mol%Y2O3‐ZrO2;以下、8YSZ)粉末とを、NiO:8YSZ=60:40の質量比で混合し、混合粉末とした。この混合粉末と、バインダ(ポリビニルブチラール;PVB)と、造孔材(カーボン粒子、平均粒子径:約5μm)と、可塑剤(フタル酸オクチル)と、溶剤(トルエン:エタノール=1:3)とを、58:8.5:5:4.5:24の質量比で配合し、混合することで、ペースト状の燃料極支持体形成用組成物を調製した。次いで、この燃料極支持体形成用組成物をドクターブレード法によりシート状に塗布、乾燥させて、厚みが0.5mm〜1mmの燃料極支持体グリーンシートを形成した。
実施例2〜9および比較例1〜6は、反応抑止層形成用材料における大粒径Ce粒子Aの平均粒子径、小粒径Ce粒子Bの平均粒子径、およびチタン化合物の含有量が実施例1とは異なる。それ以外は実施例1と同様の手順でSOFCを作製した。各例の構成を表1に纏めて示す。
上記作製した実施例1〜9および比較例1〜6のSOFCの断面を10視野とり、図2に示すように、SEM観察することによって、反応抑止層と固体電解質層との間の界面全体の長さに占める該界面の接着部分の長さの割合を界面接着率として百分率で算出した。ここで「接着部分」はSEM観察によって当該界面における剥離の認められない部分(換言すればSEM観察下で反応抑止層と固体電解質層の固相同士が密着している部分)と定義した。結果を表1の該当欄に示す。
上記作製した実施例1〜9および比較例1〜6のSOFCを下記の条件で運転させた際の出力密度を測定し、電圧0.8Vにおける出力(W/cm2)を発電性能として、表1に示した。
運転温度:700℃
燃料極供給ガス:H2ガス(50ml/min)
空気極供給ガス:Air(100ml/min)
14 燃料極
20 固体電解質層
30 反応抑止層
40 空気極
100 固体酸化物形燃料電池(SOFC)
Claims (9)
- 固体酸化物形燃料電池の反応抑止層を形成するための材料であって、
希土類元素がドープされたセリウム酸化物粒子成分として、相互に粒度分布および平均粒子径が異なる大粒径セリウム酸化物粒子成分と小粒径セリウム酸化物粒子成分とを含み、
ここで、前記大粒径セリウム酸化物粒子成分の平均粒子径は2μm以下であり、前記小粒径セリウム酸化物粒子成分の平均粒子径は0.5μm以下であり、且つ、
前記大粒径セリウム酸化物粒子成分の平均粒子径は、前記小粒径セリウム酸化物粒子成分の平均粒子径の3倍以上30倍以下であることを特徴とする、反応抑止層形成用材料。 - チタン化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の反応抑止層形成用材料。
- 前記チタン化合物がチタンを構成元素とする有機金属化合物であることを特徴とする、請求項2に記載の反応抑止層形成用材料。
- 前記チタン化合物の含有量が全体の0.001質量%〜10質量%であることを特徴とする、請求項2または3に記載の反応抑止層形成用材料。
- さらに有機溶媒およびバインダを含み、ペースト状に調製されたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応抑止層形成用材料。
- ジルコニアを主体とする固体電解質層と空気極との間に反応抑止層が配置された固体酸化物形燃料電池であって、
前記反応抑止層は、希土類元素がドープされたセリウム酸化物粒子を焼成して形成されたものであり、
ここで、固体酸化物形燃料電池の断面を電子顕微鏡観察することによって導き出される前記反応抑止層と該反応抑止層に隣接する前記固体電解質層との間の界面全体の長さに占める該界面の接着部分の長さの割合を百分率で示す界面接着率(%)が、60%以上であることを特徴とする、固体酸化物形燃料電池。 - 固体電解質層と空気極との間に反応抑止層が配置された固体酸化物形燃料電池であって、
前記反応抑止層は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応抑止層形成用材料から形成されたものであり、
ここで、固体酸化物形燃料電池の断面を電子顕微鏡観察することによって導き出される前記反応抑止層と該反応抑止層に隣接する前記固体電解質層の隣接面との間の界面全体の長さに占める該界面の接着部分の長さの割合を百分率で示す界面接着率(%)が、60%以上であることを特徴とする、固体酸化物形燃料電池。 - 前記界面接着率が70%以上であることを特徴とする、請求項6または7に記載の固体酸化物形燃料電池。
- 前記反応抑止層は、チタンを構成金属元素として有する酸化物を含むことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の固体酸化物形燃料電池。
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