しかし、ピットの深さを減少させることによって、移動ケーブルに関連する課題が生じる。ピットの深さが、移動ケーブルの固有の動的屈曲半径に対応するには不十分である場合、エレベータかごの下方に延在する移動ケーブル部分がピットの床又はピット内の他のシステム構成要素に接触する恐れがある。このような接触は望ましくない。
エレベータかごに接続されたエレベータ用移動ケーブルを保護する例示的な装置は、エレベータかご又は前記移動ケーブルの少なくとも一方に固定されるように構成されたデフレクタを備える。デフレクタは、エレベータかごが昇降路底部の上方における少なくとも選択された高さにあるときに、移動ケーブルが、対応するエレベータかごの下方において、エレベータかごの底部から第1の距離に亘って延在することを可能にし、第1の距離は、移動ケーブルの固有の動的屈曲半径に少なくとも等しい。デフレクタは、エレベータかごが選択された高さより下方にあるときに、移動ケーブルの一部分が、エレベータかごの底部の下方において、固有の動的屈曲半径よりも小さい第2の距離に亘って延在することを促進する。
前記段落の装置の1つまたは複数の特徴を有する1つの例示的な装置では、デフレクタは、エレベータかごに固定されるように構成されたブラケットを備える。
前記段落のいずれかの装置の1つまたは複数の特徴を有する例示的な装置では、ブラケットは、追加的又は代替的に、水平方向に延びる第1の部分と、垂直方向に延びる第2の部分と、第1の部分と第2の部分との間に位置する湾曲部分と、を備える。
前記3つの段落のいずれかの装置の1つまたは複数の特徴を有する例示的な装置では、垂直方向に延びる第2の部分が、移動ケーブルに接触するように構成された接触面と、接触面に隣接する少なくとも1つの案内面と、を備える。案内面は、移動ケーブルを案内し接触面と接触させるように配向されている。
前記4つの段落のいずれかの装置の1つまたは複数の特徴を有する例示的な装置では、装置は、追加的又は代替的に2つの案内面を含む。一方の案内面は接触面の第1の側にあり、他方の案内面は接触面の他方の側にある。
前記段落のいずれかの装置の1つまたは複数の特徴を有する別の例示的な装置では、デフレクタは追加的又は代替的にスリングを備え、該スリングは、移動ケーブルに固定されるように構成された第1の端部と、昇降路の静止面に固定されるように構成された第2の端部と、を有する。
前記段落の装置の1つまたは複数の特徴を有する例示的な装置では、デフレクタは、静止面に対してスリングを弾性的に支持するために、スリングの第1の端部又は第2の端部のうちの少なくとも一方の近傍に弾性部材を追加的又は代替的に備える。
前記2つの段落のいずれかの装置の1つまたは複数の特徴を有する例示的な装置では、デフレクタは、追加的又は代替的にばねを備える。
前記段落の装置の1つまたは複数の特徴を有する例示的な装置では、デフレクタは、移動ケーブルに固定されたキャッチ部材と、エレベータかご底部の下方において移動ケーブルが第2の距離に亘って延在することを促進するようにキャッチ部材と協働するリフト部材と、を備える。前記段落の装置の1つまたは複数の特徴を有する例示的な装置では、デフレクタは、リフト部材に関連付けられたムーバを備え、ムーバは、エレベータかごが選択された高さより下方に移動すると、これに応じてリフト部材を移動させるように構成されている。
前記2つの段落のいずれかの装置の1つまたは複数の特徴を有する例示的な装置では、ムーバの下方への移動によってリフト部材が上方に移動するように、リフト部材及びムーバが互いに連結されている。
前記3つの段落のいずれかの装置の1つまたは複数の特徴を有する例示的な装置では、デフレクタは、エレベータかごに支持されるように構成されたアクチュエータを備え、エレベータかごが選択された高さより下方に移動したときに、アクチュエータによってムーバが下方へと移動するように、アクチュエータがエレベータかごに支持されている。
例示的なエレベータシステムは、昇降路内で移動するように支持されたエレベータかごを含む。移動ケーブルは、昇降路に対する所定位置において支持された1つの端部と、エレベータかごに連結された他の1つの端部と、を有する。デフレクタは、エレベータかご又は移動ケーブルのうちの少なくとも1つに固定されるように構成される。デフレクタは、エレベータかごが昇降路底部の上方における少なくとも選択された高さにあるときに、移動ケーブルが、対応するエレベータかごの下方において、エレベータかごの底部から第1の距離に亘って延在することを可能にし、第1の距離は、移動ケーブルの固有の動的屈曲半径に少なくとも等しい。デフレクタは、エレベータかごが選択された高さより下方にあるときに、移動ケーブルが、エレベータかごの底部の下方において、固有の動的屈曲半径よりも小さい第2の距離に亘って延在することを促進する。
前記段落のシステムの1つまたは複数の特徴を有するエレベータシステムの一例において、デフレクタは、エレベータかごに固定されたブラケットを備える。
前記段落のいずれかのシステムの1つまたは複数の特徴を有する例示的エレベータシステムでは、ブラケットは水平方向に延びる第1の部分と、垂直方向に延びる第2の部分と、第1の部分と第2の部分との間に位置する湾曲部分と、を追加的又は代替的に備える。
前記3つの段落のいずれかのシステムの1つまたは複数の特徴を有する例示的エレベータシステムでは、垂直方向に延びる第2の部分は、エレベータかごが昇降路底部に近づくと移動ケーブルに接触するように構成された接触面と、接触面に隣接する少なくとも1つの案内面と、を有し、案内面は、移動ケーブルを案内し接触面と接触させるように配向されている。
前記4つの段落のいずれかのシステムの1つまたは複数の特徴を有する例示的エレベータシステムでは、システムは、追加的又は代替的に2つの案内面を含む。案内面のうち一方の案内面は接触面の第1の側にあり、案内面のうち他方の案内面は接触面の他方の側にある。
前記段落のいずれかのシステムの1つまたは複数の特徴を有する別の例示的エレベータシステムでは、デフレクタは、移動ケーブルに固定された第1の端部と、昇降路の静止面に固定されるように構成された第2端部と、を有するスリングを追加的又は代替的に含む。
前記段落のシステムの1つまたは複数の特徴を有する例示的エレベータシステムでは、デフレクタは、静止面に対してスリングを弾性的に支持するために、スリングの第2の端部の近くに弾性部材を追加的又は代替的に含む。
前記2つの段落のいずれかのシステムの1つまたは複数の特徴を有する例示的エレベータシステムでは、デフレクタは、追加的又は代替的にばねを含む。
前記段落のいずれかのシステムの1つまたは複数の特徴を有する例示的エレベータシステムでは、デフレクタは、移動ケーブルに固定されたキャッチ部材と、エレベータかごの底部の下方において移動ケーブルが第2の距離に亘って延在することを促進するようにキャッチ部材と協働するリフト部材と、を備える。
前記段落のいずれかのシステムの1つまたは複数の特徴を有する例示的エレベータシステムでは、デフレクタは、リフト部材に関連付けられたムーバを備え、ムーバは、エレベータかごが選択された高さより下方に移動すると、これに応じてリフト部材を移動させるように構成されている。
前記段落のいずれかのシステムの1つまたは複数の特徴を有する例示的エレベータシステムでは、ムーバの下方への移動により、リフト部材が上方に移動するように、リフト部材及びムーバが共に連結されている。
前記段落のいずれかのシステムの1つまたは複数の特徴を有する例示的エレベータシステムでは、デフレクタは、エレベータかごに支持されるように構成されたアクチュエータを備え、エレベータかごが選択された高さより下方に移動すると、アクチュエータによりムーバが下方へと移動する。
エレベータかごに固定された1つの端部と、昇降路に対して所定位置に固定された第2の端部とを有する、エレベータ用移動ケーブルを保護する例示的な方法は、エレベータかご又は移動ケーブルの少なくとも一方にデフレクタを提供するステップを含む。移動ケーブルの一部分は、エレベータかごが昇降路底部の上方における少なくとも選択された高さにあるときに、エレベータかごの下方においてエレベータかごの底部から第1の距離に亘って延在する。第1の距離は、移動ケーブルの固有の動的屈曲半径に少なくとも等しい。エレベータかごが選択された高さより下方にあるときに、デフレクタを用いて移動ケーブルの一部分の方向を変えることにより、移動ケーブルがエレベータかごの下方において第2の距離に亘って延在する。第2の距離は、固有の動的屈曲半径より小さい。
開示される例示的な実施例の種々の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態から当業者に明らかになるであろう。発明を実施するための形態に付随する図面について、以下簡単に説明する。
図1は、例示的なエレベータシステム20の選択した部分を概略的に示している。選択した部分のみが図示されている。当業者であれば、エレベータシステムには他の多くの構成要素(例えば、レール、バッファ、ガバナ、マシン、ブレーキ、駆動装置、コントローラ、トラクション部材など)が含まれていてもよく、また開示する例示的な実施例が他のエレベータシステム(例えば、異なるローピング方式など)に利用できることを理解されるであろう。上記のような構成要素は当業者によって既に認識されているため、簡潔に示すため、上記のような構成要素を説明及び図面から省略している。
例示的なエレベータシステム20は、エレベータかご22を含む。移動ケーブル24は、エレベータかご22と関連付けられている。移動ケーブル24の第1の端部26は、エレベータかご22に固定されており、第2の端部28は、昇降路の壁部30に対する所定位置に固定されている。移動ケーブル24の第2の端部28は、図示の例では、昇降路の壁部30に支持されたコントローラ32の適切な部分に接続されるように配置されている。
移動ケーブル24は、エレベータかご22に関連付けられた構成要素に電力を供給するため、エレベータかご22に関連付けられたコントローラ32と構成要素との間で制御信号通信を供給するため、又は特定の設置の必要性に応じて上記の双方を供給するために有用である。移動ケーブル24は、本実施例では、公知の構成及び構造を有する。
多くのエレベータシステムでは、昇降路底部におけるピットは、エレベータかご22が昇降路内の最も低い位置にあるときにエレベータかご22の下方に位置する移動ケーブル24の部分34に対応するのに十分な深さを有している。当該部分34は、例えば、移動ケーブル24の構成に基づいて、固有の屈曲半径を有する。固有の動的屈曲半径は、ケーブル製造業者によって提示される。例えば、通常の移動ケーブルは、300ミリメートルの固有の動的屈曲半径を有する。
エレベータシステムが占める空間を減少させることが最近の傾向であり、空間の減少にはエレベータのピットの寸法を減少させたいという要求が含まれる。従来のエレベータのピットは、1〜1.5メートル程度又はそれ以上の深さを有している。いくつかの例では、エレベータシステムが占める空間を減少させることは、ピットの深さを減少させることを含む。例えば、約0.3メートル又はそれ以下の深さを有する浅いピットが望まれる場合がある。上記深さは、ほとんどのエレベータ用移動ケーブルの固有の屈曲半径に対応することができない。
図2及び図3は、移動ケーブル24の保護装置の一実施例を示している。該装置は、エレベータかご22の下方に位置する移動ケーブル24の部分34の固有の屈曲半径に対応するために十分な深さを有していないピットを備えた昇降路底部にエレベータかご22が接近したときに、移動ケーブル24を保護する場合に有益である。本実施例における装置は、エレベータかご22に固定されたデフレクタ40を含む。デフレクタ40は、移動ケーブル24とエレベータかご22との間の水平方向の最短距離を維持するとともに、エレベータかごが昇降路底部の近傍に位置するときに移動ケーブル24の部分34をエレベータかご22の底部近傍へと移動させる。エレベータかご22が少なくとも昇降路底部の上方における選択された高さに位置する場合、部分34は、デフレクタ40によって移動ケーブル24の固有の屈曲半径と少なくとも等しいエレベータかご底部からの距離に位置することができる。エレベータかごが前記選択された高さよりも下方に位置する場合には、部分34は、デフレクタ40によって固有の屈曲半径よりもエレベータかご22の底部近傍へと容易に移動することができる。
図示するデフレクタ40は、水平方向に延びる第1の部分42と、湾曲部分44と、垂直方向に延びる第2の部分46と、を含む。第1の部分42、湾曲部分44及び第2の部分46によって、相対的に硬質なブラケットが形成される。ブラケットは、エレベータかご22が昇降路の底部近傍にあるときに移動ケーブル24の部分34の方向を変える。一実施例では、デフレクタ40は金属片からなる。図示の例では、第1の部分42及び湾曲部分44はそれぞれ、1つの金属片から形成され、第2の部分46は、他方の金属片に固定される第2の金属片から形成される。本開示の利益を享受する当業者であれば、他のデフレクタ構成であってもよいことを理解されるであろう。
本実施例では、湾曲部分44と第2の部分46は、移動ケーブル24と接触又は係合する。本実施例では、第2の部分46は、移動ケーブル24に接触するように構成された接触面48を含む。また、本実施例における第2の部分46は、接触面48に隣接する案内面50を含み、該案内面50は、接触面48と接触するように移動ケーブル24を案内する。
端部28と端部26との間の移動ケーブル24の長さは、通常、昇降路の長さ及びピットの深さに基づいて選択される。いくつかの実施例では、上記長さは、移動ケーブル24の最下部(すなわち、固有の動的屈曲半径の中心)とピット床との間の距離Xが、ピット床とエレベータかご22の床面との間の距離Hに対して、所定の関係を有するように選択される。一実施例では、エレベータの設置者は、式X=(H−360)/2(式中、X及びHはミリメートルで表わす)を満たすように、移動ケーブル24の長さを選択する。
エレベータかご22が昇降路底部に接近すると、移動ケーブル24の一部は接触面48及び装置40の湾曲部分44と接触する。エレベータかご22の側面に対する第2の部分46の位置(第1の部分42の長さによって少なくとも部分的に決定される)によって、エレベータかご22が昇降路内を十分に下方へと移動すると、移動ケーブル24の部分34の方向が変わる。昇降路内のより高い位置では、デフレクタ40は、エレベータかご22に対する移動ケーブル24の位置に対して、(効果がある場合には)最小限の効果のみを有する。エレベータかご22が十分に低い位置にあり、かつ移動ケーブル24の部分34が結果として十分短い場合、部分34はデフレクタ40によってエレベータかご22の底部により近づく。
図4から分かるように、エレベータかご22が、符号60で概略的に示すピット床に接近すると、移動ケーブル24の部分34は、装置40が存在しない場合にはピット床60に接触してしまう。移動ケーブル24の固有の屈曲半径により、結果的に移動ケーブル24とピット床60との間の接触が生じることとなる。デフレクタ40は、ピット床60との接触を回避するように、少なくとも部分34の方向を変える。エレベータかご22が昇降路内の最下階乗場位置62に接近したときにデフレクタ40によって移動ケーブル24の部分34の屈曲半径が変化するように、移動ケーブル24の長さが選択される。
図5は、図4の配置からエレベータかごがピット床60のより近傍へとさらに降下した後の状態を示している。本実施例では、エレベータかご22は、最下階乗場位置62の下方まで下降している。移動ケーブル24の長さ、エレベータかご22の垂直位置及びデフレクタ40の存在により、移動ケーブル24の部分34はエレベータかご22の下方において少なくとも部分的に平坦化されている。接触面48は、エレベータかご22の側面から移動ケーブル24の一部を効果的に離間させるとともに、部分34の固有の半径と異なる方向へと部分34の方向を変える。換言すれば、デフレクタ40は、部分34とピット床60との間の接触を回避するために、少なくとも移動ケーブル24の部分34の方向を変える。エレベータかごが昇降路内のより高い位置にあるときに比べて、エレベータかごが昇降路の底部近傍にあるときに、デフレクタ40によって部分34がエレベータかご22の底部により近づくように容易に移動する。また、デフレクタ40により、移動ケーブル24とエレベータかご22の下縁部との間の接触が回避される。
図示した実施例によれば、昇降路内におけるエレベータかご22の移動の大部分に亘って、移動ケーブル24がエレベータかご22の下方に固有の動的屈曲半径を有することが可能となる。これにより、移動ケーブル24の望ましくない揺れが回避される。上記の状況下では、エレベータかご22が昇降路底部に接近したときに固有の動的屈曲半径が維持されていなくても、移動ケーブル24の望ましくない揺れに関する問題は生じない。したがって、図示した実施例及び以下に説明する実施例によれば、移動ケーブルの固有の動的屈曲半径に対応することができない減少したピット深さを有することが可能となるとともに、昇降路内での移動ケーブルの望ましくない揺れを回避するために固有の動的屈曲半径を用いることができる。
図6は、移動ケーブル24を保護する装置の他の例示的な実施例を概略的に示している。本実施例は、スリングからなるデフレクタ70を含む。該スリングは、ブラケットを用いて移動ケーブル24に固定されている第1の端部72を有し、該ブラケットは、移動ケーブル24の長さに沿った選択した位置において移動ケーブル24の周囲に固定されている。スリング70の第2の端部74は、昇降路に対する所定位置に固定されている。本実施例では、第2の端部74は、床面などの固定面76の近傍に固定されている。スリング70の長さは、移動ケーブル24の長さよりも短い。スリング70の第1の端部72が移動ケーブル24に固定される位置は、例えば、スリングの長さと、スリングの第2の端部74とピット床60との間の垂直距離とに基づいて選択される。上記説明を考慮することにより、当業者であれば、特定の状況におけるニーズを満たすように端部74の位置を選択することができるであろう。
図6は、エレベータかご22が昇降路内において、エレベータかご22の下方に位置する部分34の固有の動的屈曲半径に対応するのに十分な距離を有して、エレベータかご22がピット床60の上方に位置している例示的な状況を概略的に示している。図7は、昇降路内のより低い位置にあるエレベータかご22を示しており、本実施例では、エレベータかご22は最下階乗場位置62に接近している。図7に示すように、エレベータかご22が最下階乗場位置62から距離hを隔てた上方に位置するとき、スリング70はきつく引っ張られる。スリング70は、エレベータかご22の底部により近接した部分34の移動を促進する。スリング70により部分34の方向が変わるため、部分34は固有の動的屈曲半径を有していない。部分34をエレベータかご22の底部により近接させることにより、移動ケーブル24の固有の屈曲半径に対応するために相対的に深いピット深さを必要とすることなく、エレベータかご22がピット床60に接近することができる。上記状態におけるエレベータかご22の位置を考慮すれば、移動ケーブルの固有の動的屈曲半径が維持されていなくても、移動ケーブルの揺れに関する問題は生じない。
図8は、例示的なスリング70の特徴部分を示している。スリング70の端部74の近傍には弾性部材78が設けられている。弾性部材78により、スリング70にある程度の延伸と弾力性とがもたらされる。図8の説明と図7の説明とを比較すると、図8ではエレベータかご22は最下階乗場位置62まで下降している。距離hは、弾性部材78の延伸によって調整される。
図9に示すように、エレベータかご22が、ピット床60近傍へとさらに下降すと、このエレベータかご22のさらなる移動に対応するように、弾性部材78は延伸し続ける。弾性部材78のさらなる延伸つまり拡張は、図9における距離h2+xで表される。図8から分かるように、移動ケーブル24には多少のたるみが依然としてあるものの、図9では、移動ケーブル24のたるみは、より少ないかあるいは全くない。図8に示す位置にエレベータかごがあるときに比べ、図9に示す位置にエレベータかごがあるときには、移動ケーブル24の部分34は、エレベータかご22の底部により近接するように引っ張られる。
一実施例では、弾性部材78は、移動ケーブル24及びスリング70のあらゆる断線又は損傷を回避するばね定数を有するように選択される。一実施例では、弾性部材78は、ばねからなる。上記説明の利益を享受する当業者であれば、特定の状況のニーズを満たすため、スリング70及び弾性部材78の適切な材料を選択することができるであろう。
一実施例では、昇降路の最上階乗場と最下階乗場との間に亘るエレベータかごの走行距離は、45メートルである。デフレクタ70の端部72は、エレベータかご22の底部から約942ミリメートルの地点において移動ケーブル24に固定される。本実施例では、移動ケーブル24の長さは約44.5メートルである。エレベータかご22の底部が最下階乗場位置の上方約0.5メートルにある場合、デフレクタ70は、例えば、図7に示すように、きつく引っ張られる。本実施例では、図7に示す距離hは、約0.5メートルである。
上記一実施例では、移動ケーブル24は、約0.5キログラム/メートルの単位長さ当たりの質量を有する。移動ケーブル24の固有の動的屈曲半径は、300ミリメートルである。上記一実施例では、エレベータかご22の底部が十分に高い位置にあり、デフレクタ70がきつく引っ張られていない場合、弾性部材78は、約3.5キログラムのばね力を有する。デフレクタ70がきつく引っ張られたとき、弾性部材78は、約7.1キログラムのばね力を有する。エレベータかごが下降を続け、弾性部材78が延伸すると、382ミリメートルの長さを有する弾性部材78に7.4キロのばね力が対応する。また、本実施例では、493ミリメートルで9.5キロのばね力及び593ミリメートルで11.5キロのばね力となる。
1つの特定の配置について説明してきたが、当業者であれば、特定のエレベータシステム構成に応じて、異なる長さ及びばね力が有用であることを理解されるであろう。
図10は、移動ケーブル24の保護に有用であるデフレクタ90の他の実施例を概略的に示している。本実施例には、移動ケーブル24に固定されたキャッチ部材92が含まれる。リフト部材94は、エレベータかご22が昇降路内を十分に下降するとキャッチ部材92に接触するように昇降路内に配置されている。
図11は、エレベータかご22が図10に示す位置よりも下方に下降した状態にある図10の実施例を示している。図11では、キャッチ部材92は、リフト部材94のすぐ上方にあり、エレベータかご22に支持されたアクチュエータ96は、ムーバ98のすぐ上方にある。エレベータかご22が、図11に示される位置から下方へ移動すると、アクチュエータ96は、ムーバ98に接触し、該ムーバ98を(図示の)下方向に付勢する。
図12から分かるように、エレベータかご22の下方への移動に起因するムーバ98の下方への移動によって、リフト部材94及びキャッチ部材92が上方へと移動する。本実施例では、ムーバ98及びリフト部材94は、プーリ102上を移動するケーブル100にそれぞれ連結されており、このため、ムーバ98が下方へと移動すると、これに応じてリフト部材94が上方へと移動するようになっている。ばね104は、ムーバ98及びリフト部材94を互いに向けて図10及び図11の位置へと付勢する。エレベータかご22の下降により、ムーバ98がばね94の付勢に対抗して移動し、これに応じてリフト部材94が上方へと移動する。
キャッチ部材92が移動ケーブル24上の所定位置に固定されているため、リフト部材94により生じるキャッチ部材92の上方への移動は、エレベータかご22より下方に位置する移動ケーブル24の部分34の半径を変化させる。キャッチ部材92とエレベータかご22底部との間における移動ケーブル24の固定長と、リフト部材94の位置と、により、エレベータかご22の下方に位置する移動ケーブル24の屈曲半径が減少する。エレベータかご22がさらに下降すると、移動ケーブル24の部分34は、エレベータかご22底部のより近傍へと移動する。
図示の構成によれば、昇降路内の多くの位置において移動ケーブル24の固有の動的屈曲半径を用いることできるとともに、移動ケーブル24の固有の動的屈曲半径にピット深さが対応していない場合であっても、エレベータかご22が所望の最下位置まで到達することが可能となる。
エレベータかご22が図12の位置から昇降路内を上昇すると、ばね104によって、ムーバ98及びリフト部材94が、例えば、図11に示す各位置へと戻る。エレベータかご22がアクチュエータ96とムーバ98との接触位置よりも上方に位置しているときは、デフレクタ90は、エレベータかご22に対する移動ケーブル24の位置に影響を与ることはない。これにより、移動ケーブル24の固有の動的屈曲半径が存在することができ、したがって、エレベータかご22の移動の大部分において移動ケーブル24の望ましくない揺れが回避される。
開示した各実施例において、移動ケーブル24の最下部(点)と、エレベータかご22の底部との間の距離が移動ケーブル24の固有の動的屈曲半径よりも小さくなるように、デフレクタによって、移動ケーブル24が効果的にエレベータかご22の下方に延在することが可能となる。各実施例では、構成要素の位置及び移動ケーブル24の長さは、移動ケーブル24の少なくとも静的屈曲半径に対応するように選択される。当業者であれば、移動ケーブルの静的屈曲半径は、ケーブルの過度の屈曲や折畳みによって生じ得るケーブルの損傷を回避するために必要とされる最小の静的屈曲半径として、ケーブル製造業者によって決定されるということを理解されるであろう。
図示した例示的なエレベータ用移動ケーブルを保護する装置により、エレベータかご22が昇降路底部に接近したときに、移動ケーブル24の部分34がエレベータかご22の底面により近接するように容易に移動する。各実施例によれば、移動ケーブルの固有の動的屈曲半径に対応することができない浅いピット深さを利用するができる。図示した各実施例によれば、昇降路の幅を拡大することなく、移動ケーブルを保護することができる。昇降路幅の拡大を回避することにより、エレベータシステムが占める空間を減少させるという目標を達成することができる。また、開示された実施例によれば、移動ケーブルの望ましくない揺れを回避することができる。図示した実施例によれば、昇降路内で最小のピット深さしか利用できない場合であっても、経済的で信頼性の高いエレベータ用移動ケーブルの保護手段を提供することができる。
いくつかの例を別個の実施例として開示しているが、開示した実施例のうち任意の実施例の1つまたは複数の特徴部を他の特徴部と組み合わせてもよい。
前述の説明は、限定的なものではなく例示的なものである。当業者であれば、本発明の本質から必ずしも逸脱しない、開示した実施例に対する変形形態及び修正形態を理解されるであろう。本発明に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ、決定され得る。