JP2015222236A - X線回折測定方法および入射角度調整用治具 - Google Patents

X線回折測定方法および入射角度調整用治具 Download PDF

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Abstract

【課題】 測定対象物が運搬不可能で測定箇所が小さい場合や水平でない場合でも、精度よく測定箇所に設定値通りの距離と入射角度でX線を照射して、X線回折測定を行う。
【解決手段】 測定対象物OBの測定箇所に治具Jを吸着させて、X線回折測定装置から光軸位置がX線の光軸と同じLED光を照射し、X線回折測定装置に備えたカメラで撮像を行う。アーム式移動装置を操作してX線回折測定装置の筐体50の位置と姿勢を調整し、LED光の照射点が治具Jの基準点に合致し、カメラの撮像画像に表示されるLED光の照射点とLED光の反射光の受光点が、撮像画像に独立して表示される基準位置に合致するようにする。その後、X線回折測定装置からX線を出射し、発生したX線の回折光を受光することで回折環を撮像する。
【選択図】図2

Description

本発明は、測定対象物にX線を照射して測定対象物で回折したX線によりX線回折環を形成するX線回折測定において、測定対象物に対するX線の入射角、X線の照射位置およびX線の照射点からX線回折環形成平面までの距離を調整する方法及び該調整時に使用する治具に関する。
従来から、例えば特許文献1に示されるように測定対象物に所定の角度でX線を照射して、測定対象物で回折したX線により感光性を有するイメージングプレートの表面にX線回折環(以下、回折環という)を形成し、形成された回折環にレーザ光を走査しながら照射して回折環の形状を読取り、読取った回折環の形状からcosα法による分析を行って測定対象物の残留応力を測定するX線回折測定装置が知られている。この回折環の形状を用いたcosα法による残留応力の計算方法は、例えば以下の特許文献2に示されており、残留応力を計算するには回折環の形状の他に、格子面間隔等の既知のパラメーター、X線の照射点からイメージングプレート(回折環形成平面)までの距離L、及びX線の測定対象物に対する入射角ψが必要である。測定対象物が直方体形状であれば、特許文献1に示されるように、X線の光軸の測定対象物を載置するステージ平面に対する角度が、常に設定値になるようにX線回折測定装置を構成し、距離Lが設定値になるときの測定対象物表面の高さを予め求めておけば、距離L及び入射角ψとも設定値にすることができる。即ち、ステージ平面をその法線方向に移動させ、測定対象物表面の高さが設定した高さになるよう調整すれば、距離L及び入射角ψは設定値にすることができる。しかし、測定対象物が大型であったり固定されていたりする場合は、測定対象物を運搬したり、ステージに載置することは不可能である。このような測定対象物に対して測定が可能なX線回折測定装置として、以下の特許文献3には運搬可能なX線回折測定装置であって、測定対象物に装置の筐体の切り欠き部を合わせることで、距離Lと入射角ψを設定値にすることができるX線回折測定装置が紹介されている。
特開2012−225796号公報 特開2005−241308号公報 特開2013−113737号公報
しかしながら、運搬不可能な測定対象物において、測定箇所の平面部分が小さい場合や、測定箇所の平面部分が重力方向に対して垂直でない、即ち水平でない場合は、特許文献3のようにX線回折測定装置をセットすることは困難であり、距離Lと入射角ψを精度よく設定値にすることは困難であるという問題がある。また、それ以前に測定箇所にX線の照射位置を合わせることも困難であるという問題がある。
本発明はこの問題を解消するためなされたもので、その目的は、運搬不可能な測定対象物において、測定箇所の平面部分が小さい場合や測定箇所の平面部分が水平でない場合でも、精度よく測定箇所にX線の照射位置を合わせ、距離Lと入射角ψを精度よく設定値通りにしてX線回折測定を行うことができるX線回折測定方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、対象とする測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、X線出射器から測定対象物に向けてX線を照射して、測定対象物にて発生したX線の回折光を、X線出射器から出射されるX線の光軸に対して垂直に交差する撮像面にて受光し、X線の回折光の像である回折環を撮像する回折環撮像手段と、X線出射器からX線が出射されていない状態で、X線出射器から出射されるX線と光軸を同一にした平行光である可視光を測定対象物に出射する可視光出射器と、可視光の照射点を含む領域の測定対象物の画像を結像する結像レンズ、及び結像レンズによって結像された画像を撮像する撮像器を有し、撮像された画像を表す撮像信号を出力するカメラと、カメラから出力される撮像信号を入力して、撮像器によって撮像された画像を画面上に表示する表示器であって、測定対象物における可視光の照射点から撮像面までの距離が設定された距離であるとき、撮像器によって撮像される照射点の画像上の位置を照射点基準位置として、撮像信号により表示される画像とは独立して画面上に表示し、可視光の照射点が照射点基準位置と合致し、測定対象物における可視光の入射角度が設定された入射角度であるとき、撮像器によって撮像される反射光の受光点の画像上の位置を受光点基準位置として、撮像信号により表示される画像とは独立して画面上に表示する表示器と、X線出射器、撮像面、可視光出射器及びカメラを含む筐体と、筐体に連結され、筐体の位置と姿勢を変化させ固定する複数の関節を有する移動装置とを備えたX線回折測定装置を用い、さらに、測定対象物に吸着する平面状の吸着部と、吸着部の平面と平行である反射平面と、反射平面上又は反射平面に平行かつ反射平面の近傍の平面上に描画された基準点及び基準方向線とを有する治具であって、可視光出射器が出射する可視光が、基準方向線を含む反射平面に垂直な平面内の方向から、反射平面に設定された入射角度で入射し、基準点に照射されたとき、可視光の光軸の延長線上に吸着部の中心があり、基準点と吸着部との間の距離が既知である治具を用いたX線回折測定方法において、測定対象物の測定箇所に基準方向線が測定方向と合致するよう治具の吸着部を吸着させ、可視光出射器から可視光を出射させて、カメラにて撮像され表示器に表示される画像を見ながら、可視光の照射点が基準点及び照射点基準位置と合致し、反射光の受光点が受光点基準位置と合致するよう、複数の関節を有する移動装置により筐体の位置と姿勢を調整する位置姿勢調整ステップと、治具を除去し、回折環撮像手段により回折環を形成する回折環形成ステップとを行うことにある。
これによれば、運搬不可能な測定対象物において、測定箇所の平面部分が小さい場合や測定箇所の平面部分が水平でない場合でも、測定箇所に治具の吸着部を吸着させ、X線回折測定装置の可視光出射器から可視光を出射させて、カメラにて撮像される画像を見ながら、可視光の照射点が治具の基準点及び画像上の照射点基準位置と合致し、反射光の受光点が画像上の受光点基準位置と合致するよう、X線回折測定装置の筐体の位置と姿勢を調整すれば、精度よく測定箇所にX線の照射位置を合わせ、距離Lと入射角ψを精度よく設定値通りにすることができる。また、この調整は測定対象物の反射率が小さくて充分な反射光が生じない場合でも、行うことができる。
また、治具の反射平面は透光性板状物質の表面であり、基準点及び基準方向線が描画された面は透光性板状物質の裏面又は裏面に合致された面であり、基準点は基準方向線上にクロスマークで表示されているようにするとよい。これによれば、可視光は透光性板状物質の表面で反射するとともに入射して裏面と合致した面で散乱して照射点を生じさせるので、カメラの撮像画像において可視光照射点と反射光受光点が確認しやすく、調整を行いやすくすることができる。
また、本発明は、測定対象物の測定箇所に平行光である可視光が設定された方向から設定された入射角度で照射されるよう調整する際に使用する治具の発明としても実施し得るものである。
本発明の実施において用いられるX線回折測定装置を含むX線回折測定システムの全体概略図である。 図1のX線回折測定装置の拡大図である。 図2のX線回折測定装置におけるX線が通過する部分を拡大して示す部分断面図である。 図3のプレート部分の拡大斜視図である。 X線回折測定装置の位置と姿勢の調整に用いられる治具の構造を示す図である。 X線回折測定システムを用いて測定対象物の残留応力の測定を行うときの工程図である。 (A)はX線回折測定装置のX,Y軸方向の位置の調整及びZ軸周りの角度の調整を説明するための図であり、(B)は前記位置及び角度調整時の画像を示す図である。 (A)はX線回折測定装置のX,Y,Z軸方向の位置の調整を説明するための図であり、(B)は前記位置調整時の画像を示す図である。 (A)はX線回折測定装置のX軸周り,Y軸周りの傾きの調整を説明するための図であり、(B)は前記傾き調整時の画像を示す図である。 (A)はX線回折測定装置のX,Y,Z軸方向の位置及びX,Y軸周りの傾きの微調整を説明するための図であり、(B)は前記微調整時の画像を示す図である。
本発明の実施形態において用いられるX線回折測定装置を含むX線回折測定システムの構成について図1乃至図5を用いて説明する。このX線回折測定システムは、X線回折測定システムを測定対象物OBの所まで運搬して測定対象物OBの残留応力を測定及び評価するものである。X線回折測定装置はアーム式移動装置の先端に連結され、測定対象物OBに対して位置と姿勢が最適になるよう調整したうえでX線照射により回折環を撮像することができるようになっている。なお、本実施形態では、測定対象物OBは固定された鉄製の部材で表面の反射率が低いものである。
X線回折測定装置は、X線を出射するX線出射器10、回折X線による回折環が形成されるイメージングプレート15を取り付けるためのテーブル16と、テーブル16を回転及び移動させるテーブル駆動機構20と、イメージングプレート15に形成された回折環の形状を測定するためのレーザ検出装置30と、これらのX線出射器10、イメージングプレート15、テーブル16、テーブル駆動機構20及びレーザ検出装置30を収容する筐体50とを備えている。そして、X線回折測定システムは、前記X線回折測定装置とともに、コンピュータ装置90、高電圧電源95、及び測定対象物OBの測定箇所にセットする治具Jを備えている。また、筐体50内には、X線出射器10、テーブル16、テーブル駆動機構20及びレーザ検出装置30に接続されて作動制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1において筐体50外に示された2点鎖線で示された各種回路は、筐体50内の2点鎖線内に納められている。なお、図1及び図2においては、回路基板、電線、固定具、空冷ファンなどは省略されている。
筐体50は、略直方体状に形成されるとともに、底面壁50a、前面壁50b、後面壁50e、上面壁50f、側面壁(図示せず)、及び底面壁50aと前面壁50bの角部を紙面の表側から裏側に向けて切り欠くように設けた切欠き部壁50cと繋ぎ壁50dを有するように形成されている。切欠き部壁50cは底面壁50aに垂直な平板と平行な平板とからなり、繋ぎ壁50dは側面壁と垂直であり底面壁50aと所定の角度を有している。この所定の角度は、例えば30〜45度である。側面壁の1つには、支持アーム51に接続される接続部(図示せず)が設けられており、接続部は図1及び図2の紙面の垂直周りに回転可能になっている。支持アーム51は、図示されていないアーム式移動装置の先端であり、アーム式移動装置を操作することにより、筐体50(X線回折測定装置)を任意の位置と姿勢にすることができる。これにより、測定対象物OBに対して筐体50(X線回折測定装置)の位置と姿勢を調整することができる。
X線出射器10は、長尺状に形成され、筐体50内の上部にて図示左右方向に延設されて筐体50に固定されており、高電圧電源95からの高電圧の供給を受け、X線制御回路71により制御されて、X線を図1の下方に向けて出射する。筐体50の側面壁は出射されるX線の光軸に対して略平行で、底面壁50aは出射されるX線の光軸に対して略垂直になっている。よって、底面壁50aを測定対象物OBの表面と平行にすると、出射されるX線は測定対象物OBの表面に対して垂直になる。また、繋ぎ壁50dを測定対象物OBの表面と平行にすると、出射されるX線は測定対象物OBの表面の法線に対して繋ぎ壁50dと底面壁50aとが成す角度(例えば30〜45度)になる。
X線制御回路71は、後述するコンピュータ装置90を構成するコントローラ91によって制御され、X線出射器10から一定の強度のX線が出射されるように、X線出射器10に高電圧電源95から供給される駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器10は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路71は、この冷却装置に供給される駆動信号も制御する。これにより、X線出射器10の温度が一定に保たれる。
テーブル駆動機構20は、X線出射器10の下方にて、移動ステージ21を備えている。移動ステージ21は、フィードモータ22及びスクリューロッド23により、X線出射器10から出射されたX線の光軸と測定対象物OBの法線とが成す平面内であって、前記X線の光軸に垂直な方向に移動可能となっている。フィードモータ22は、テーブル駆動機構20内に固定されていて筐体50に対して移動不能となっている。スクリューロッド23は、X線出射器10から出射されたX線の光軸に垂直な方向に延設されていて、その一端部がフィードモータ22の出力軸に連結されている。スクリューロッド23の他端部は、テーブル駆動機構20内に設けた軸受部24に回転可能に支持されている。また、移動ステージ21は、それぞれテーブル駆動機構20内にて固定された、対向する1対の板状のガイド25,25により挟まれていて、スクリューロッド23の軸線方向に沿って移動可能となっている。すなわち、フィードモータ22を正転又は逆転駆動すると、フィードモータ22の回転運動が移動ステージ21の直線運動に変換される。フィードモータ22内には、エンコーダ22aが組み込まれている。エンコーダ22aは、フィードモータ22が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ91からの指令により作動開始する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路73は、フィードモータ22を駆動して移動ステージ21をフィードモータ22側へ移動させる。位置検出回路72は、エンコーダ22aから出力されるパルス列信号が入力されなくなると、移動ステージ21が移動限界位置に達したことを表す信号をフィードモータ制御回路73に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72から移動限界位置に達したことを表す信号を入力すると、フィードモータ22への駆動信号の出力を停止する。上記の移動限界位置を移動ステージ21の原点位置とする。したがって、位置検出回路72は、移動ステージ21が図1及び図2にて左上方向に移動して移動限界位置に達したとき「0」を表す位置信号を出力し、移動ステージ21が移動限界位置から右下方向へ移動すると、エンコーダ22aからのパルス列信号をカウントし、移動限界位置からの移動距離xを表す信号を位置信号として出力する。
フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ21の移動先の位置を表す設定値を入力すると、その設定値に応じてフィードモータ22を正転又は逆転駆動する。位置検出回路72は、エンコーダ22aが出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして、位置検出回路72は、カウントしたパルス数を用いて移動ステージ21の現在の位置(移動限界位置からの移動距離x)を計算し、コントローラ91及びフィードモータ制御回路73に出力する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72から入力した移動ステージ21の現在の位置が、コントローラ91から入力した移動先の位置と一致するまでフィードモータ22を駆動する。
また、フィードモータ制御回路73は、移動ステージ21の移動速度を表す設定値をコントローラ91から入力する。そして、エンコーダ22aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ21の移動速度を計算し、前記計算した移動ステージ21の移動速度がコントローラ91から入力した移動速度になるようにフィードモータ22を駆動する。
一対のガイド25,25の上端は、板状の上壁26によって連結されている。上壁26には、貫通孔26aが設けられていて、貫通孔26aの中心位置はX線出射器10の出射口11の中心位置に対向しており、X線出射器10から出射されたX線は、出射口11及び貫通孔26aを介してテーブル駆動機構20内に入射する。
後述するイメージングプレート15が回折環撮像位置にある状態(図1乃至図3の状態)において、移動ステージ21の貫通孔26aと対向する位置には、図3に拡大して示すように、貫通孔21aが形成されている。移動ステージ21には、出射口11及び貫通孔26a,21aの中心軸線位置を回転中心とする出力軸27aを有するスピンドルモータ27が組み付けられている。出力軸27aは、円筒状に形成され、回転中心を中心軸とする断面円形の貫通孔27a1を有する。スピンドルモータ27の出力軸27aと反対側には、貫通孔27a1の中心位置を中心軸線とする貫通孔27bが設けられている。貫通孔27bの内周面上には、貫通孔27bの一部の内径を小さくするための円筒状の通路部材28が固定されている。
また、スピンドルモータ27内には、エンコーダ22aと同様のエンコーダ27cが組み込まれている。エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75へ出力する。さらに、エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、コントローラ91及び回転角度検出回路75に出力する。
スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75は、コントローラ91からの指令により作動開始する。スピンドルモータ制御回路74は、コントローラ91から、スピンドルモータ27の回転速度を表す設定値を入力する。そして、エンコーダ27cから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いてスピンドルモータ27の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ91から入力した回転速度(設定値)になるように、駆動信号をスピンドルモータ27に供給する。回転角度検出回路75は、エンコーダ27cから出力されたパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値を用いてスピンドルモータ27の回転角度すなわちイメージングプレート15の回転角度θpを計算して、コントローラ91に出力する。そして、回転角度検出回路75は、エンコーダ27cから出力されたインデックス信号を入力すると、カウント値を「0」に設定する。すなわち、インデックス信号を入力した位置が回転角度0°の位置である。なお、イメージングプレート15の回転角度0°の位置とは、後述するレーザ検出装置30からのレーザ照射によりイメージングプレート15に形成された回折環を読み取る際、インデックス信号を入力した時点でレーザ光が照射されている位置である。この位置は各半径位置においてあるためラインである。
テーブル16は、円形状に形成され、スピンドルモータ27の出力軸27aの先端部に固定されている。テーブル16の中心軸と、スピンドルモータ27の出力軸の中心軸とは一致している。テーブル16は、一体的に設けられて下面中央部から下方へ突出した突出部17を有していて、突出部17の外周面には、ねじ山が形成されている。突出部17の中心軸は、スピンドルモータ27の出力軸27aの中心軸と一致している。テーブル16の下面には、イメージングプレート15が取付けられる。イメージングプレート15は、表面に蛍光体が塗布された円形のプラスチックフィルムである。イメージングプレート15の中心部には、貫通孔15aが設けられていて、この貫通孔15aに突出部17を通し、突出部17の外周面上にナット状の固定具18をねじ込むことにより、イメージングプレート15が、固定具18とテーブル16の間に挟まれて固定される。固定具18は、円筒状の部材で、内周面に、突出部17のねじ山に対応するねじ山が形成されている。
テーブル16、突出部17及び固定具18にも貫通孔16a,17a,18aがそれぞれ設けられており、貫通孔16a,17a,18aの中心軸はテーブル16の中心軸と同じであり、貫通孔18aの内径は貫通孔16a,17aに比べて小さく、前述した通路部材28の内径と同じである。したがって、スピンドルモータ27の出力軸27aから出射されたX線は、貫通孔16a,17a,18aを介するとともに、切欠き部壁50cに設けた円形孔50c1を介して外部下方に位置する測定対象物OBに向かって出射される。この場合、通路部材28の内径及び貫通孔18aの内径は小さいので、通路部材28を介して貫通孔27b,27a1,16a,17a内に入射したX線はやや拡散しているが、貫通孔18aから出射されるX線は貫通孔27a1の軸線に平行な平行光となり、円形孔50c1から出射される。また、この円形孔50c1の内径は、測定対象物OBからの回折光をイメージングプレート15に導くために大きい。
イメージングプレート15は、フィードモータ22によって駆動されて、移動ステージ21、スピンドルモータ27及びテーブル16と共に、原点位置から回折環を撮像する回折環撮像位置へ移動する。前述のように、この回折環撮像位置において、X線出射器10から出射されたX線が測定対象物OBに照射されるようになっている。また、イメージングプレート15は、スピンドルモータ27によって駆動されて回転しながら、フィードモータ22によって駆動されて、移動ステージ21、スピンドルモータ27及びテーブル16と共に、撮像した回折環を読み取る回折環読取り領域内、及び回折環を消去する回折環消去領域内を移動する。なお、この場合のイメージングプレート15の移動においては、イメージングプレート15の中心軸が、X線出射器10から出射されたX線の光軸とイメージングプレート15における回転角度0°の位置(ライン)とが成す平面内に保たれた状態で、前記X線の光軸に垂直な方向に移動する。
レーザ検出装置30は、回折環を撮像したイメージングプレート15にレーザ光を照射して、イメージングプレート15から入射した光の強度を検出する。レーザ検出装置30は、測定対象物OB及び回折環撮像位置にあるイメージングプレート15からフィードモータ22側に充分離れている。すなわち、イメージングプレート15が回折環撮像位置にあるとき、測定対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置30によって遮られないようになっている。レーザ検出装置30は、レーザ光源31と、コリメートレンズ32、反射鏡33、ダイクロイックミラー34、及び対物レンズ36を備えている。
レーザ光源31は、レーザ駆動回路77によって制御されて、イメージングプレート15に照射するレーザ光を出射する。レーザ駆動回路77は、コントローラ91によって制御され、レーザ光源31から所定の強度のレーザ光が出射されるように、駆動信号を制御して供給する。レーザ駆動回路77は、後述するフォトディテクタ42から出力された受光信号を入力して、受光信号の強度が所定の強度になるようにレーザ光源31に出力する駆動信号を制御する。これにより、イメージングプレート15に照射されるレーザ光の強度が一定に維持される。
コリメートレンズ32は、レーザ光源31から出射されたレーザ光を平行光に変換する。反射鏡33は、コリメートレンズ32にて平行光に変換されたレーザ光を、ダイクロイックミラー34に向けて反射する。ダイクロイックミラー34は、反射鏡33から入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。対物レンズ36は、ダイクロイックミラー34から入射したレーザ光をイメージングプレート15の表面に集光させる。この対物レンズ36から出射されるレーザ光の光軸は、X線出射器10から出射されたX線の光軸とイメージングプレート15における回転角度0°の位置(ライン)とが成す平面内であって、前記X線の光軸に平行な方向、すなわち移動ステージ21の移動方向に対して垂直な方向である。
対物レンズ36には、フォーカスアクチュエータ37が組み付けられている。フォーカスアクチュエータ37は、対物レンズ36をレーザ光の光軸方向に移動させるアクチュエータである。なお、対物レンズ36は、フォーカスアクチュエータ37が通電されていないときに、その可動範囲の中心に位置する。
対物レンズ36によって集光されたレーザ光を、イメージングプレート15の表面であって、回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じる。すなわち、回折環を撮像した後、イメージングプレート15にレーザ光を照射すると、イメージングプレート15の蛍光体が回折X線の強度に応じた光であって、レーザ光の波長よりも波長が短い光を発する。イメージングプレート15に照射されて反射したレーザ光の反射光及び蛍光体から発せられた光は、対物レンズ36を通過して、ダイクロイックミラー34にて蛍光体から発せられた光の大部分は反射し、レーザ光の反射光の大部分は透過する。ダイクロイックミラー34の反射方向には、集光レンズ38、シリンドリカルレンズ39及びフォトディテクタ40が設けられている。集光レンズ38は、ダイクロイックミラー34から入射した光を、シリンドリカルレンズ39に集光する。シリンドリカルレンズ39は、透過した光に非点収差を生じさせる。フォトディテクタ40は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として、増幅回路78に出力する。
増幅回路78は、フォトディテクタ40から出力された受光信号(a,b,c,d)をそれぞれ同じ増幅率で増幅して受光信号(a’,b’,c’,d’)を生成し、フォーカスエラー信号生成回路79及びSUM信号生成回路80へ出力する。本実施形態においては、非点収差法によるフォーカスサーボ制御を用いる。フォーカスエラー信号生成回路79は、増幅された受光信号(a’,b’,c’,d’)を用いて、演算によりフォーカスエラー信号を生成する。すなわち、フォーカスエラー信号生成回路79は、(a’+c’)−(b’+d’)の演算を行い、この演算結果をフォーカスエラー信号としてフォーカスサーボ回路81へ出力する。フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)は、レーザ光の焦点位置のイメージングプレート15の表面からのずれ量を表している。
フォーカスサーボ回路81は、コントローラ91により制御され、フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路82に出力する。ドライブ回路82は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ37を駆動して、対物レンズ36をレーザ光の光軸方向に変位させる。この場合、フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)の値が常に一定値(例えば、ゼロ)となるようにフォーカスサーボ信号を生成することにより、イメージングプレート15の表面にレーザ光を集光させ続けることができる。
SUM信号生成回路80は、受光信号(a’,b’,c’,d’)を合算してSUM信号(a’+b’+c’+d’)を生成し、A/D変換回路83に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート15にて反射し、ダイクロイックミラー34で反射した微量のレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート15にて反射したレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、イメージングプレート15に入射した回折X線の強度に相当する。A/D変換回路83は、コントローラ91によって制御され、SUM信号生成回路80からSUM信号を入力し、入力したSUM信号の瞬時値をディジタルデータに変換してコントローラ91に出力する。
また、レーザ検出装置30は、集光レンズ41及びフォトディテクタ42を備えている。集光レンズ41は、レーザ光源31から出射されたレーザ光の一部であって、ダイクロイックミラー34を透過せずに反射したレーザ光をフォトディテクタ42の受光面に集光する。フォトディテクタ42は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。従って、フォトディテクタ42は、レーザ光源31が出射したレーザ光の強度に相当する受光信号をレーザ駆動回路77へ出力する。
また、対物レンズ36に隣接して、LED光源43が設けられている。LED光源43は、LED駆動回路84によって制御されて、可視光を発して、イメージングプレート15に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路84は、コントローラ91によって制御され、LED光源43に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
また、X線回折測定装置は、LED光源44を有する。LED光源44は、図2乃至図4に示すように、X線出射器10とテーブル駆動機構20の上壁26との間に配置されたプレート45の一端部下面に固定されている。プレート45は、その他端部上面にて、筐体50内に固定されたモータ46の出力軸46aに固着されており、モータ46の回転により、テーブル駆動機構20の上壁26に平行な面内を回転する。テーブル駆動機構20の上壁26にはストッパ部材47a,47bが設けられており、ストッパ部材47aは、プレート45を図4のD1方向に回転させたとき、LED光源44がX線出射器10の出射口11及びテーブル駆動機構20の上壁26の貫通孔26aに対向する位置(A位置)に静止するように、プレート45の回転を規制する。一方、ストッパ部材47bは、プレート45を図4のD2方向に回転させたとき、プレート45がX線出射器10の出射口11とテーブル駆動機構20の上壁26の貫通孔26aとの間を遮断しない位置(B位置)に静止するように、プレート45の回転を規制する。言い換えれば、A位置は、プレート45が図2及び図3に示す状態にある位置であり、LED光源44から出射されるLED光がスピンドルモータ27の貫通孔27a1に設けた通路部材28の通路に入射する位置である。B位置は、X線出射器10から出射されるX線がプレート45によって遮られない位置である。
LED光源44は、コントローラ91によって作動制御されるLED駆動回路85からの駆動信号によりLED光を出射する。LED光は拡散する可視光であり、プレート45がA位置にあるとき、その一部は、貫通孔26a,21a、通路部材28の通路及び貫通孔27bを介して、スピンドルモータ27の出力軸27aの貫通孔27a1に入射し、貫通孔16a,17a,18a及び切欠き部壁50cの円形孔50c1から出射される。このLED光の場合も、通路部材28の内径及び貫通孔18aの内径は小さいので、通路部材28を介して貫通孔27b,27a1,16a,17a内に入射したX線はやや拡散しているが、貫通孔18aから出射されるLED光は貫通孔27a1の軸線に平行な平行光となり、円形孔50c1から出射される。したがって、LED光源44、通路部材28、貫通孔18aなどが、可視光である平行光を測定対象物OBに出射する本発明の可視光出射器を構成する。
モータ46はエンコーダ22a,27aと同様なエンコーダ46bを備えており、エンコーダ46bはモータ46が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を回転制御回路86に出力する。回転制御回路86は、コントローラ91から回転方向と回転開始の指示が入力されると、モータ46に駆動信号を出力して、モータ46を指示方向に回転させる。そして、エンコーダ46bからのパルス列信号の入力が停止すると、駆動信号の出力を停止する。これにより、プレート45を、上述したA位置及びB位置までそれぞれ回転させることができる。
筐体50の切欠き部壁50cには結像レンズ48が設けられているとともに、筐体50内部には撮像器49が設けられている。撮像器49は、多数の撮像素子をマトリクス状に配置したCCD受光器又はCMOS受光器で構成され、各撮像素子で受光した光の強度に応じた大きさの受光信号(撮像信号)を撮像素子ごとにセンサ信号取出回路87にそれぞれ出力する。これらの結像レンズ48及び撮像器49は、イメージングプレート15に対して設定された位置にある測定対象物OBにおけるLED光の出射点(照射点)を中心とした領域の画像を撮像する。すなわち、結像レンズ48及び撮像器49は、測定対象物OBを撮像するディジタルカメラとして機能する。このイメージングプレート15に対して設定された位置とは、前記測定対象物OBにおけるX線及びLED光の出射点(照射点)からイメージングプレート15までの垂直距離Lが、予め決められた所定距離となる位置である。なお、この場合の結像レンズ48及び撮像器49による被写界深度は、前記出射点を中心とした前後の範囲で設定されている。センサ信号取出回路87は、撮像器49の各撮像素子からの受光信号(撮像信号)の強度データを、各撮像素子の位置(すなわち画素位置)が分かるデータと共にコントローラ91に出力する。したがって、コントローラ91には、測定対象物OBにおけるLED光の照射点P1(図7乃至図10参照)を含む、照射点P1近傍の画像を表す画像データが出力されることになる。
また、結像レンズ48の光軸は、X線出射器10から出射されるX線の光軸とイメージングプレート15の回転基準位置のラインを含む平面に含まれるように調整されている。また、結像レンズ48の光軸と、測定対象物OBに照射されるX線及びLED光の光軸が交わる点は、イメージングプレート15に対して設定された位置にある測定対象物OBにおけるX線及びLED光の出射点(照射点)である。さらに、X線及びLED光の測定対象物OBに対する入射角度が設定値であるとき、結像レンズ48の光軸と測定対象物OBのX線及びLED光の照射点における法線方向とが成す角度は前記入射角度に等しい角度である。
したがって、測定対象物OBにおける測定箇所がイメージングプレート15に対して設定された位置にあり、LED光源44からのLED光が測定対象物OBに設定された入射角度で照射された場合には、照射点P1を含む測定対象物OBの画像が撮像器49で撮像されることに加えて、測定対象物OBにて反射したLED光の受光点P2(図9、図10参照)も撮像器49で照射点P1と同じ位置に撮像されることになる。すなわち、測定対象物OBに照射されるLED光は平行光であり、測定対象物OBにおけるLED光の照射点において、LED光は散乱光と、略平行光のまま反射する反射光を発生させる。そして、散乱光のうち結像レンズ48に入射した光は撮像器49の位置で結像して照射点P1の画像となり、結像レンズ48に入射した反射光は結像レンズ48により集光されて撮像器49で受光され、受光点P2の画像となる。そして、測定対象物OBにおける測定箇所がイメージングプレート15に対して設定された位置にあり、LED光が測定対象物OBに設定された入射角度で照射されたとき、結像レンズ48に入射する散乱光の光軸と反射光の光軸は、いずれも結像レンズ48の光軸と一致するため、照射点P1の画像と受光点P2の画像は同じ位置になる。なお、撮像器49は測定対象物OBを撮像するもので、撮像器49は結像レンズ48の焦点位置よりも若干量だけ後方に位置するので、厳密には、撮像器49によって受光される反射光は集光した後にやや拡散したものである。
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された各種プログラムを実行してX線回折測定装置の作動を制御する。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作業指示などの入力のために利用される。表示装置93は、表示画面上に撮像器49によって撮像された照射点P1及び受光点P2を含む画像に加えて、測定対象物OBの測定箇所に対するX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を適正に設定するためのマークも表示される。このマークに関しては、詳しく後述する。さらに、表示装置93は、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果なども視覚的に知らせる。高電圧電源95は、X線出射器10にX線出射のための高電圧及び電流を供給する。
測定対象物OBの表面が反射率が低い場合は充分なLED光の反射光が得られず、撮像器49で撮像され表示装置93に表示される撮像画像に、明確に受光点P2が得られないことがある。この場合、測定対象物OBの測定箇所には、図5に示す治具Jがセットされる。図5は治具Jを上方向から見た図と横方向から見た図である。治具Jは円盤部2と円柱部9からなる。円盤部2はプラスチックを円盤状に加工し、上面を所定深さで切削して、切削箇所にガラス板3を埋め込んだ構造である。ガラス板3の裏面に合致する円盤部2の表面には、基準方向線4、基準方向線4と交差して十字状のマークを形成するための線5、十字状のマークの交差箇所に基準点8、基準方向線4の線上に矢印7、及び基準方向線4の線上に円6が描かれている。基準点8はX線回折測定装置から照射されるLED光の照射目標点とするものであり、矢印7はLED光の照射方向を示すものであり、円6は円柱部9の位置を示すものである。X線回折測定装置からLED光が照射されたときLED光はガラス板3の表面で一部が反射し、一部が屈折して入射する。入射したLED光は、ガラス板3の裏面で反射するととともにガラス板3の裏面に合致する円盤部2の表面で散乱する。これによりX線回折測定装置の撮像器49にはLED光の照射点と反射光の受光点が撮像される。ただし、ガラス板3は薄いため、ガラス板3の表面での反射光と裏面での反射光は同一の受光点として撮像される。また、ガラス板3は薄いため、ガラス板3の表面、裏面での反射点と円盤部2の表面での散乱点はすべて同一の点と見なすことができる。ガラス板3の裏面に合致する円盤部2の表面の色はLED光の色と補色または等色相差の関係にある色になっており、例えば、LED光の色が赤である場合は、青、緑、青緑のいずれかの色になっている。これによりLED光の照射点を見やすくすることができる。
円柱部9の底面近くの内部には磁石10が埋め込まれており、測定対象物OBが鉄やSUSである場合は、円柱部9の底面が測定対象物OBの表面に吸着する。円柱部9の底面はガラス板3の表面と平行になっており、ガラス板3の表面と測定対象物OBの治具Jを吸着させた箇所の表面とは平行になる。上述のように円柱部9が取り付けられている部分の円盤部2の平面に相当する箇所には、丸印6が付けられており、上方から見たときに測定箇所の位置がわかるようになっている。そして、LED光が基準方向線4の矢印7が表示された方向から、ガラス板3の表面に所定の入射角度ψ(図5では30°になっている)で入射し、基準点8に照射されるようにすると、LED光の光軸の延長線は円柱部9の底面の中心と交差するようになっている。また、ガラス板3の裏面から円柱部9の底面までの高さHは既知の値であり、基準点8から円柱部9の底面の中心までの距離H/cosψも既知の値である。なお、LED光は屈折してガラス板に入射するため、正確には距離はH/cosψではないが、ガラス板3は薄いためLED光は直進すると見なして、H/cosψとすることができる。
以下に、上記のように構成したX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを用いて、測定対象物OBに対するX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を調整したうえでX線を照射し、測定対象物OBの残留応力を測定する具体的方法について説明する。この残留応力の測定は、X線回折測定システムを測定対象物OBの所まで運搬して設置し、電源を投入することにより作動させた後、図5に示すように、位置姿勢調整工程S1、回折環撮像工程S2、回折環読取り工程S3,回折環消去工程S4及び残留応力計算工程S5を実行することにより行われる。
まず、X線入射角調整工程S1について説明する。最初に作業者は、X線回折測定装置の筐体50に接続されたアーム式移動装置を操作することで、X線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を調整して、おおよそでX線の照射点(測定箇所)及び照射方向(残留圧縮応力の測定方向)が意図した位置と方向になり、X線の照射点からイメージングプレート15までの距離が設定値になるようにする。次に作業者は、測定対象物OBの測定箇所に治具Jを円柱部9の底面を吸着させることでセットする。このとき、治具Jに描かれた基準方向線4が残留圧縮応力の測定方向になり、X線が照射される側に矢印7が来るようにする。次に作業者は、入力装置92を操作して治具Jを用いた調整を行うことを入力する。この入力は、後述するように、治具Jを用いた調整を行う場合、X線の照射点からイメージングプレート15までの距離Lが設定値よりやや大きくなるため、残留応力の計算において使用する距離Lは、設定値に既知の距離を加算した値とするためである。次に作業者は、入力装置92を操作してステージ調整工程S1の開始をコントローラ91に指示する。この指示に応答して、コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御して、イメージングプレート15を回折環撮像位置(図1及び図2の状態)に移動させる。また、コントローラ91は、回転制御回路86を制御し、モータ46をストッパ部材47aによりプレート45の回転が停止するまで図4のD1方向に回転させて、プレート45をA位置まで回転させる。この状態では、LED光源44がテーブル駆動機構20の上壁26に設けた貫通孔26aに対向して位置する。
その後、コントローラ91は、LED駆動回路85を制御して、LED光源44を点灯させる。このLED光源44の点灯により、LED光源44から出射されて拡散された可視光であるLED光の一部は、貫通孔26a、通路部材28、貫通孔27b,27a1,16a,17a,18aを介して固定具18から出射される。この場合、通路部材28及び貫通孔18aの内径は小さく、貫通孔18aから出射されるX線は貫通孔27a1の軸線に平行な平行光である。この平行光であるLED光は、筐体50の切欠き部壁50cに設けた円形孔50c1から外部へ出射され、治具J又はその近傍に照射される。
次に、コントローラ91は、センサ信号取出回路87に撮像器49からの撮像信号の入力を指示して、撮像器49による撮像信号をセンサ信号取出回路87からコントローラ91に出力させる。コントローラ91は、この撮像信号を表示装置93に出力して、撮像器49によって撮像されたLED光の照射位置近傍の画像を表示装置93に表示させる。このとき、表示装置93に表示される画像には、治具J及びLED光の照射点P1の画像がある。また、LED光がガラス板3に設定された入射角度に近い角度で入射している場合は、ガラス板3で反射したLED光が結像レンズ48により集光されて、撮像器49が受光した受光点P2も画像として表示される。さらに、コントローラ91は、撮像器49によって撮像された照射点P1及び受光された受光点P2を含む、撮像器49からの撮像信号によって表示される画像とは独立して、結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する位置に相当する撮影画像上の位置に十字マークを表示する。
この場合、十字マークのクロス点は表示装置93の画面の中心に位置し、十字マークのX軸方向は画面の横方向に対応し、十字マークのY軸方向は画面の縦方向に対応する。そして、十字マークのクロス点は、測定対象物OBにおけるLED光の照射点からイメージングプレート15までの距離Lが設定値であるときに、照射点P1が撮像器49に撮像される位置であると同時に、距離Lが設定値であり、LED光が治具Jのガラス板3に設定された入射角度で入射されるとき、即ち測定対象物OBの測定箇所に設定された入射角度で入射されるとき、ガラス板3での反射光が結像レンズ48により集光されて、撮像器49に受光点P2として受光される位置である。また、十字マークのY軸方向がLED光及びX線の照射方向であり、これを治具Jのガラス板3に投影させた方向が残留応力の測定方向である。また、十字マークのY軸線は、X線の光軸と結像レンズ48の光軸とを含む平面が、撮像器49と交差するラインであり、治具Jのガラス板3の法線がX線の光軸と結像レンズ48の光軸とを含む平面と平行であるときに受光点P2が表示されるラインである。
作業者は、表示装置93に表示される画像を見ながら、アーム式移動装置を操作することで、X線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を調整して、画面上における照射点P1が治具Jの基準点8の位置と合致するとともに十字マークのクロス点と合致し、治具Jの基準方向線4と十字マークのY軸方向が合致し、受光点P2が十字マークのクロス点と一致するようにする。この表示装置93の画像を見ながらのX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢の調整手順について、図7乃至図10を用いて説明する。図7(A)乃至図10(A)は、X線回折測定装置を動かす方向、照射されるLED光の光軸、撮像器49に結像するLED光の光路および反射したLED光の光路を示しており、図7(B)乃至図10(B)は表示装置93に表示される画像を示している。
まず、作業者は図7(A)に示すように、X線回折測定装置(ケース50)をX軸及びY軸方向にそれぞれ移動させ、表示装置93の表示画面上に治具JとLED光の照射点P1が入るようにする。そして、図7(A)に示すようにX線回折測定装置をZ軸周りに回転させるとともに、表示装置93の表示画面上から治具Jが消えないようにX線回折測定装置をX軸方向、Y軸方向に移動させ、図7(B)に示すように治具Jの基準方向線4と十字マークのY軸が平行になるようにする。
次に、作業者は図8(A)に示すようにX線回折測定装置をX軸方向、Y軸方向に移動させ、LED光の照射点P1が治具Jの基準点8と合致するようにする。そして、X線回折測定装置をZ軸方向へ微小移動させるとともにX軸方向、Y軸方向へ微小移動させ、図8(B)に示すようにLED光の照射点P1が治具Jの基準点8と合致したまま、表示画面の十字マークのクロス点に合致するようにする。LED光の照射点P1が治具Jの基準点8に合致していてもX線回折測定装置をZ軸方向へ移動させるとLED光の照射点P1はY軸方向に多少ずれるので、この位置調整は繰り返して行う必要がある。
次に、作業者は図9(A)に示すように、X線回折測定装置をX軸周り、Y軸周りにそれぞれ回転させ、図9(B)に示すように、LED光の反射光の受光点P2が表示画面の十字マークのクロス点付近になるようにする。そして、図10(A)に示すように、X線回折測定装置のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向への微小移動とX軸周り及びY軸周りの微小回転を繰り返して行い、図10(B)に示すように、LED光の照射点P1が治具Jの基準点8及び表示画面の十字マークのクロス点と合致し、LED光の反射光の受光点P2が表示画面の十字マークのクロス点に合致するようにする。これによりX線回折測定装置(ケース50)の位置と姿勢の調整が完了するので、作業者は治具Jを測定対象物OBから取り外す。これにより測定対象物OBの測定箇所へのX線の入射角度ψは設定値通りになる。また、測定箇所(X線の照射点)からイメージングプレート15までの距離Lは、治具Jの基準点8までの距離を設定値にした分、設定値よりやや大きくなり、設定値+(H/cosψ)になる。ただし、後述する回折環の形状からの残留応力の計算において、距離Lとして設定値+(H/cosψ)を用いればよいので、設定値+(H/cosψ)を治具Jを用いたときの距離Lの設定値と見なしてよい。
次に作業者は、入力装置92を操作してコントローラ91に調整終了を指示する。この指示に応答して、コントローラ91は、LED駆動回路85を制御してLED光源44を消灯させ、センサ信号取出回路87を制御して撮像器49から撮像信号の入力停止及び撮像信号のコントローラ91への出力を停止させ、かつ回転制御回路86を制御して、モータ46をストッパ部材47bによりプレート45の回転が停止するまで図4のD2方向に回転させて、プレート45をB位置まで回転させる。このプレート45の回転により、X線出射器10からのX線がテーブル駆動機構20の上壁26に設けた貫通孔26aに入射され得る状態となる。
次の回折環撮像工程S2において、作業者は入力装置92を用いて、測定対象物OBの材質(本実施例では、鉄)を入力し、残留応力の測定開始をコントローラ91に指示する。これにより、コントローラ91は、まずイメージングプレート15が撮像位置にある状態で、スピンドルモータ制御回路74を制御して、イメージングプレート15を低速回転させ、エンコーダ27cからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート15の回転を停止させる。これにより、後述する回折環読取り工程S3による回折環の読取り開始時においてレーザ光が照射されている位置が回転角度0°の位置になる。
次に、コントローラ91は、X線制御回路71を制御してX線出射器10にX線の出射を開始させ、所定時間の経過後に、X線制御回路71を制御してX線出射器10にX線の出射を停止させる。これにより、X線出射器10から出射されたX線は、貫通孔26a,21a、通路部材28、貫通孔27b,27a1,16a,17a,18a及び円形孔50c1を介して外部に出射され、測定対象物OBの測定箇所に所定時間だけ照射される。この測定対象物OBへのX線の所定時間の照射により、測定対象物OBの測定箇所から回折X線が発生し、イメージングプレート15には回折環が撮像される。
このような回折環撮像工程S2の後、コントローラ91は、自動的に又は作業者による入力装置92を用いた指示により、図5の回折環読取り工程S3を実行する。コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御して、イメージングプレート15を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させる。このイメージングプレート15の読取り開始位置とは、対物レンズ36の中心すなわちレーザ光の照射位置が回折環基準半径Roの円に対して若干だけ内側になるような位置である。この場合、位置検出回路72から出力される位置信号は、移動ステージ21が移動限界位置にある状態から移動ステージ21が移動した移動距離xを表しており、移動ステージ21すなわちテーブル16(イメージングプレート15)が移動限界位置にある状態で、テーブル16(イメージングプレート15)の中心から対物レンズ36の中心位置までの距離は予め決められた所定値である。したがって、イメージングプレート15の読取り開始位置への移動は、位置検出回路72からの位置信号を用いて行われる。
回折環基準半径Roとは、測定対象物OBの残留応力が「0」であるときに、測定対象物OBに対するX線の照射によりイメージングプレート15上に形成される回折環の半径であり、測定対象物OBにおけるX線の回折角度Θx及びイメージングプレート15から測定対象物OBまでの距離Lに応じて決まる。そして、X線の回折角度Θxは測定対象物OBの材質で決まり、前記距離Lは前記X線入射角調整工程S1での調整により設定値+(H/cosψ)に調整されている。したがって、測定対象物OBの材質ごとに予め回折角Θxを記憶しておけば、前記入力した測定対象物OBの材質を用いることにより、コントローラ91は回折環基準半径RoをRo=L・tan(2Θx)の演算によって自動的に計算する。なお、同一の材質の測定対象物OBの残留応力を繰り返し測定する場合には、前記回折環基準半径Roを計算することなく、繰り返し利用できる。
次に、コントローラ91は、スピンドルモータ制御回路74に、イメージングプレート15が所定の一定回転速度で回転するように、スピンドルモータ27の回転を制御させる。また、レーザ駆動回路77を制御してレーザ光源31によるレーザ光のイメージングプレート15に対する照射を開始させる。その後、コントローラ91は、フォーカスサーボ回路81にフォーカスサーボ制御の開始を指示して、フォーカスサーボ回路81にフォーカスサーボ制御を開始させる。したがって、対物レンズ36が、レーザ光の焦点がイメージングプレート15の表面に合うように光軸方向に駆動制御される。
次に、コントローラ91は、回転角度検出回路75及びA/D変換回路83を作動させて、回転角度検出回路75からスピンドルモータ27(イメージングプレート15)の基準位置からの回転角度θpを入力させ始めるとともに、A/D変換回路83からSUM信号の瞬時値Iのディジタルデータをコントローラ91に出力させ始める。次に、コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御してフィードモータ22を回転させて、イメージングプレート15を読取り開始位置から図1及び図2の右下方向へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート15において、回折環基準半径Roの若干内側の位置から外側方向に一定速度で相対移動し始める。この若干内側の位置は、撮像した回折環の半径が回折環基準半径Roからずれる可能性のある位置よりもやや内側の位置である。これにより、レーザ光の照射位置は、相対的にイメージングプレート15上を螺旋状に回転し始める。
その後、コントローラ91は、イメージングプレート15が所定の小さな角度だけ回転するごとに、SUM信号の瞬時値IのディジタルデータをA/D変換回路83を介して入力するとともに、回転角度検出回路75からの回転角度θp及び位置検出回路72からの移動距離xを入力して、SUM信号の瞬時値Iのディジタルデータを、基準位置からの回転角度θpと、移動距離xに基づくイメージングプレート15の中心からのレーザ光の照射位置の径方向距離r(半径値r)とに対応させて順次記憶する。この場合も、移動ステージ21すなわちテーブル16(イメージングプレート15)が移動限界位置にある状態で、テーブル16(イメージングプレート15)の中心から対物レンズ36の中心位置までの距離は予め決められた所定値であるので、前記半径値rは移動距離xを用いて計算される。これにより、螺旋状に回転するレーザ光の照射位置に関して、SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータが所定回転角度ごとに順次記憶されて蓄積されていく。
SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータの所定回転角度ごとの記憶動作と並行して、コントローラ91は、回転角度θpごとに半径値rに対するSUM信号の瞬時値Iの曲線を作成し、曲線のピークに対応した半径値rαとSUM信号強度値Iαを記憶する。これは回折環の回転角度αごとに半径方向における回折X線の強度分布を求め、回折X線の強度がピークとなる箇所の半径値rαと回折X線の強度に相当する強度Iαを求める処理である。そして、すべての回転角度θp(回転角度α)において半径値rαと強度Iαを取得し、検出するSUM信号の瞬時値Iが強度Iαに対して充分小さくなった(例えば1/10以下になった)時点で、SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータを所定回転角度ごとに検出し記憶する処理を終了する。これにより、回折環における回折X線の強度に相当する強度の分布(瞬時値I、回転角度θp及び半径値rのデータ群)および回折環の形状(回転角度αごとの半径値rα)が検出されたことになる。
その後、コントローラ91は、フォーカスサーボ回路81によるフォーカスサーボ制御を停止させ、レーザ駆動回路77によるレーザ光源31のレーザ光の照射を停止させる。また、コントローラ91は、A/D変換回路83及び回転角度検出回路75の作動を停止させるとともに、フィードモータ制御回路73によるフィードモータ22の作動も停止させる。これにより、回折環読取り工程S3が終了される。なお、この状態では、位置検出回路72の作動及びイメージングプレート15の回転は、以前と同様のまま継続されている。
このような回折環読取り工程S3の後、コントローラ91は、自動的に又は作業者による入力装置92を用いた指示により、図5の回折環消去工程S4を実行する。この回折環消去工程においては、コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御してイメージングプレート15を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート15の消去開始位置とは、LED光源43から出力されるLED光の中心が回折環基準半径Roの円に対して前記読取り開始位置の場合よりもさらに内側になるような位置である。この場合も、前記読取り開始位置の場合と同様に、イメージングプレート15の移動は、位置検出回路72からの位置信号を用いて行われる。
次に、コントローラ91は、LED駆動回路84を制御してLED光源43によるLED光のイメージングプレート15に対する照射を開始させるとともに、フィードモータ制御回路73を制御して、イメージングプレート15を前記消去開始位置から消去終了位置まで図1及び図2の右下方向に一定速度で移動させるように、フィードモータ22を回転させる。消去終了位置とは、LED光源43によるLED光の中心が回折環基準半径Roよりも前記消去開始位置と同じ程度の距離だけ外側となる位置である。これにより、LED光源43によるLED光が、消去開始位置から消去終了位置まで、イメージングプレート15上に螺旋状に照射され、前記回折X線によって形成された回折環が消去される。
次に、コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御してイメージングプレート15の移動を停止させるとともに、LED駆動回路84を制御してLED光源43によるLED光の照射を停止させる。また、コントローラ91は、位置検出回路72の作動を停止させるとともに、スピンドルモータ制御回路74を制御してスピンドルモータ27によるイメージングプレート15の回転も停止させる。これにより、回折環消去工程S4が終了する。
このような回折環消去工程S4の後、コントローラ91は、自動的に又は作業者による入力装置92を用いた指示により、図5の残留応力計算工程S5を行う。なお、残留応力計算工程S5は、回折環消去工程S4と並行して行ってもよい。残留応力計算工程S5は、回折環読取り工程S3において得られた回折環の形状(回転角度αごとの半径値rα)を用いて、コントローラ91が行うプログラムによる演算処理である。この演算処理における計算方法は、背景技術に特許文献2として示した特開2005−241308号公報の〔0026〕〜〔0044〕に詳細に説明されているので省略するが、この計算において回折環の形状データと共に、X線の入射角度ψに入射角度の設定値が、X線照射点からイメージングプレート15までの距離Lに距離の設定値+(H/cosψ)が使用される。よって、上述した調整方法により精度よく入射角度ψと距離Lが調整されているので、残留応力(残留圧縮応力と残留せん断応力)を精度よく計算することができる。
コントローラ91は残留応力の計算が終了すると、表示装置に93に残留応力の計算結果を表示する。なお、これ以外に、回折環の強度分布画像(瞬時値Iを明度にして瞬時値I、回転角度θp及び半径値rのデータ群から得られる画像)及び入射角度ψ、距離L等の測定条件を表示するようにしてもよい。作業者は結果を見ることで、測定対象物OBの疲労度の評価等を行うことができる。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、X線を照射して回折したX線により回折環を形成するX線回折測定装置に、出射されるX線と光軸を同一にしたLED光を出射するLED光源44、貫通穴15a等と、LED光の照射点を含む領域の測定対象物の画像を結像する結像レンズ48、及び結像レンズ48によって結像された画像を撮像する撮像器49を有し、撮像された画像を表す撮像信号を出力するカメラと、カメラから出力される撮像信号を入力して、撮像器によって撮像された画像を画面上に表示する表示装置93であって、測定対象物OBにおけるLED光の照射点からイメージングプレート15までの距離が設定された距離であるとき、撮像器49によって撮像される照射点の画像上の位置を十字マークとして、撮像信号により表示される画像とは独立して画面上に表示し、LED光の照射点が十字マークと合致し、測定対象物におけるLED光の入射角度が設定された入射角度であるとき、撮像器によって撮像される反射光の受光点の画像上の位置も十字マークに合致する表示装置93と、X線回折測定装置の筐体50に連結され、筐体50の位置と姿勢を変化させ固定するアーム式移動装置とを備えるX線回折測定装置を用い、さらに、測定対象物OBに吸着する底面が平面の円柱部9と、円柱部9の底面と表面が平行であるガラス板3と、ガラス板3の裏面に合致する円盤部2の表面に描画された基準点8及び基準方向線4とを有する治具Jであって、LED光が、基準方向線4を含むガラス板3に垂直な平面内の方向から、ガラス板3に設定された入射角度で入射し、基準点8に照射されたとき、LED光の光軸の延長線上に円柱部9の底面の中心があり、基準点8と円柱部9の底面との間の距離が既知である治具Jを用いて、測定対象物OBの測定箇所に基準方向線4が測定方向と合致するよう治具Jの円柱部9の底面を吸着させ、X線回折測定装置からLED光を出射させて、カメラにて撮像され表示装置93に表示される画像を見ながら、LED光の照射点が基準点8及び十字マークと合致し、反射光の受光点が十字マークと合致するよう、アーム式移動装置によりX線回折測定装置の筐体50の位置と姿勢を調整し、その後、X線を照射して回折環を形成している。これによれば、運搬不可能な測定対象物OBにおいて、測定箇所の平面部分が小さい場合や測定箇所の平面部分が水平でない場合でも、測定箇所に治具Jの吸着部を吸着させ、X線回折測定装置からLED光を出射させて、カメラにて撮像される画像を見ながら、LED光の照射点が治具Jの基準点8及び画像上の十字マークと合致し、反射光の受光点が画像上の十字マークと合致するよう、X線回折測定装置の筐体50の位置と姿勢を調整すれば、精度よく測定箇所にX線の照射位置を合わせ、距離Lと入射角ψを精度よく設定値通りにすることができる。また、この調整は測定対象物OBの反射率が小さくて充分な反射光が生じない場合でも、行うことができる。
また、上記実施形態においては、使用する治具Jは、反射平面は透光性板状物質であるガラス板3の表面であり、基準点8及び基準方向線4が描画された面はガラス板3の裏面に合致された円盤部2の表面であり、基準点8は基準方向線4上にクロスマークで表示されている。これによれば、LED光はガラス板3の表面で反射するとともに入射して裏面と合致した円盤部2の表面で散乱して照射点を生じさせるので、X線回折測定装置のカメラの撮像画像においてLED光の照射点とLED光の反射光の受光点が確認しやすく、調整を行いやすくすることができる。
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態では、治具Jは、反射平面にガラス板3を用い、測定対象物OBの測定箇所への吸着のために円柱部9に埋め込んだ磁石10を用いたが、測定対象物OBに吸着可能な平面状の吸着部を有し、吸着部の平面と反射平面が平行であれば、治具Jはどのような構成のものでもよい。例えば、ガラス板3の替わりに透明のプラスチックの板を用いてもよいし、磁石10の替わりに吸盤を用いてもよい。また、上記実施形態では、基準点8および基準方向線4は、ガラス板3に密着する円盤部2の表面に描画したが、ガラス板3の表面でもよいし、裏面でもよい。また、上記実施形態では、基準点8は基準方向線4を用いた十字のクロス点にしたが、LED光の照射点の目標位置が確認できればどのような描画の仕方で基準点8を示してもよい。
また、上記実施形態においては、ガラス板3の表面でのLED光の反射点、ガラス板3の裏面でのLED光の反射点、及びガラス板3の裏面に密着する円盤部2の上面でのLED光の照射点は、ガラス板3が薄いためすべて同一の点と見なせるとした。しかし、ガラス板3をある程度厚くし、前記LED光の反射点及び照射点を別の点とした場合でも、X線回折測定装置の位置と姿勢の調整は可能である。この場合は、ガラス板3の裏面からの反射光は微量であるため無視できるので、LED光の照射点からイメージングプレート15までの距離LとLED光の入射角度ψが設定値であるときの、撮像画面における照射点P1と受光点P2の位置を目標位置として表示すればよい。なお、この場合は、距離Lの設定値に加算する距離はH/cosψよりやや大きくなるが、距離Lの設定値に比べれば微量であるので、測定精度にはほとんど影響しない。ただし、より精度のよい測定を行いたい場合は、H/cosψに加算する値をガラス板3の厚さと屈折率と入射角度ψから求めるようにすればよい。
また、上記実施形態においては、LED光の照射点からイメージングプレート15までの距離Lが設定値であり、治具Jのガラス板3(測定対象物OBの測定箇所)の表面に対するLED光の入射角度が設定値であるとき、表示装置93に表示される画像上のLED光の照射点P1及びLED光の反射光の受光点P2とも十字マークのクロス点に合うよう構成した。しかし、同一位置に合うことは必須ではないので、照射点P1及び受光点P2は異なる位置に合うようにしてもよい。この場合、結像レンズ48の光軸位置を上記実施形態とは異なる位置にして、距離L、入射角度ψが設定値のとき、結像レンズ48に入射する散乱光の光軸と反射光の光軸が異なるように構成すればよい。
また、上記実施形態においては、距離Lが設定値のとき、結像レンズ48の光軸上にLED光の照射点があるようにし、十字マークのクロス点は結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する点に対応するようにした。しかし、距離Lが設定値のとき、照射点P1が形成される位置を精度よく撮像画像中に表示できればよいので、距離Lが設定値のとき、LED光の照射点が結像レンズ48の光軸からややずれた位置にあるようにし、十字マークのクロス点は結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する点からややずれた位置に対応するようにしてもよい。ただし、結像レンズ48の中心を通過する光が結像レンズ48の光軸から離れるほど、形成されるスポットは大きくなるので、十字マークのクロス点に対応する位置は、結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する位置近辺にあることが好ましい。
また、上記実施形態では、プレート45、モータ46及びストッパ部材47aによりLED光源44をX線の光軸上に移動させて、LED光を測定対象物OBに照射する構造にした。しかし、これに代えて、出射X線と光軸を同一にした可視の平行光を照射することができれば、どのような構造にしてもよい。例えば、ビームスプリッタを出射X線の光軸上に配置し、LED光をビームスプリッタで反射させて出射X線と光軸を同一にして照射するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、スピンドルモータ27の貫通孔27bに内径の小さな通路部材28を設けるとともに、固定具18の貫通孔18aの内径を小さくして、LED光源44から出射されたLED光から小さな断面径の平行光が得られるようにしたが、小さな断面径の可視の平行光が得られるならば、別の構造にしてもよい。例えば、通路部材28の軸長を長くすることにより、LED光源44からのLED光から小さな断面径の平行光が得られるようにしてもよい。また、可視光であるレーザ光を出射するレーザ光源の近くにコリメートレンズとエキスパンダ―レンズを配置し、出射する小さな断面径のレーザ光の光軸をスピンドルモータ27の出力軸27aの貫通孔27a1の中心軸線と一致させるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、イメージングプレート15に回折環を形成した後、レーザ照射装置30からのレーザ照射と光の強度検出により、回折環における回折X線の強度に相当する強度の分布を検出し、LED光の照射により回折環の消去を行ったが、回折環を形成してその強度分布を検出することができるならば、回折環の形成と強度分布の検出はどのような方法を用いてもよい。例えば、イメージングプレート15の代わりにイメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDを備え、X線出射器10からのX線照射の際、X線CCDの各画素が出力する電気信号により回折環における強度分布を検出するようにしてもよい。また、イメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDの代わりに微小サイズのX線CCDを位置を検出しながら走査し、X線CCDの各画素が出力する電気信号とX線CCDの走査位置から回折環における強度分布を検出するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、X線回折測定装置として、回折環の形成と回折X線の強度に相当する強度の分布、即ち回折環の読取りと回折環の消去と残留応力の計算を行える装置にしたが、測定に時間がかかってもよければ、X線回折測定装置は回折環の形成のみを行う装置にし、回折環が形成されたイメージングプレート15をテーブル16から取り外して別の装置にセットし、回折環の読取り、回折環の消去及び残留応力の計算を別の装置で行うようにしてもよい。また、残留応力の計算をさらに別の装置で行うようにしてもよい。
10…X線出射器、15…イメージングプレート、15a,16a,17a,18a,21a,26a,27a1,27b…貫通孔、16…テーブル、18…固定具、20…テーブル駆動機構、21…移動ステージ、22…フィードモータ、23…スクリューロッド、27…スピンドルモータ、28…通路部材、30…レーザ検出装置、31…レーザ光源、36…対物レンズ、44…LED光源、45…プレート、46…モータ、47a,47b…ストッパ部材、48…結像レンズ、49…撮像器、50…筐体、50a…底面壁、50c…切欠き部壁、50d…繋ぎ壁、51…支持アーム、90…コンピュータ装置、91…コントローラ、92…入力装置、93…表示装置、95…高電圧電源 、OB…測定対象物、J…治具、2…円盤部、3…ガラス板、4…基準方向線、8…基準点、9…円柱部、10…磁石

Claims (3)

  1. 対象とする測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
    前記X線出射器から測定対象物に向けてX線を照射して、前記測定対象物にて発生したX線の回折光を、前記X線出射器から出射されるX線の光軸に対して垂直に交差する撮像面にて受光し、前記X線の回折光の像である回折環を撮像する回折環撮像手段と、
    前記X線出射器からX線が出射されていない状態で、前記X線出射器から出射されるX線と光軸を同一にした平行光である可視光を測定対象物に出射する可視光出射器と、
    前記可視光の照射点を含む領域の測定対象物の画像を結像する結像レンズ、及び前記結像レンズによって結像された画像を撮像する撮像器を有し、前記撮像された画像を表す撮像信号を出力するカメラと、
    前記カメラから出力される撮像信号を入力して、前記撮像器によって撮像された画像を画面上に表示する表示器であって、測定対象物における前記可視光の照射点から前記撮像面までの距離が設定された距離であるとき、前記撮像器によって撮像される照射点の画像上の位置を照射点基準位置として、前記撮像信号により表示される画像とは独立して画面上に表示し、前記可視光の照射点が前記照射点基準位置と合致し、前記測定対象物における前記可視光の入射角度が設定された入射角度であるとき、前記撮像器によって撮像される反射光の受光点の画像上の位置を受光点基準位置として、前記撮像信号により表示される画像とは独立して画面上に表示する表示器と、
    前記X線出射器、撮像面、可視光出射器及びカメラを含む筐体と、
    前記筐体に連結され、前記筐体の位置と姿勢を変化させ固定する複数の関節を有する移動装置とを備えたX線回折測定装置を用い、さらに、
    測定対象物に吸着する平面状の吸着部と、前記吸着部の平面と平行である反射平面と、前記反射平面上又は前記反射平面に平行かつ前記反射平面の近傍の平面上に描画された基準点及び基準方向線とを有する治具であって、前記可視光出射器が出射する可視光が、前記基準方向線を含む前記反射平面に垂直な平面内の方向から、前記反射平面に前記設定された入射角度で入射し、前記基準点に照射されたとき、前記可視光の光軸の延長線上に前記吸着部の中心があり、前記基準点と前記吸着部との間の距離が既知である治具を用いたX線回折測定方法であって、
    前記測定対象物の測定箇所に前記基準方向線が測定方向と合致するよう前記治具の吸着部を吸着させ、前記可視光出射器から可視光を出射させて、前記カメラにて撮像され前記表示器に表示される画像を見ながら、前記可視光の照射点が前記基準点及び前記照射点基準位置と合致し、前記反射光の受光点が前記受光点基準位置と合致するよう、前記複数の関節を有する移動装置により前記筐体の位置と姿勢を調整する位置姿勢調整ステップと、
    前記治具を除去し、前記回折環撮像手段により回折環を形成する回折環形成ステップとを行うことを特徴とするX線回折測定方法。
  2. 請求項1に記載のX線回折測定方法において、
    前記治具の反射平面は、透光性板状物質の表面であり、前記基準点及び基準方向線が描画された面は前記透光性板状物質の裏面又は前記裏面に合致された面であり、前記基準点は前記基準方向線上にクロスマークで表示されていることを特徴とするX線回折測定方法。
  3. 測定対象物の測定箇所に平行光である可視光が設定された方向から設定された入射角度で照射されるよう調整する際に使用する治具であって、
    測定対象物に吸着する平面状の吸着部と、前記吸着部の平面と平行である反射平面と、前記反射平面上又は前記反射平面に平行かつ前記反射平面の近傍の平面上に描画された基準点及び基準方向線とを有し、前記可視光が、前記基準方向線を含む前記反射平面に垂直な平面内の方向から、前記反射平面に前記設定された入射角度で入射し、前記基準点に照射されたとき、前記可視光の光軸の延長線上に前記吸着部の中心があり、前記基準点と前記吸着部との間の距離が既知である治具。
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