JP2015221754A - 歯科用水硬性セメント組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
(1)一般的な歯科用器具で操作可能な練和物性状で、(2)充分かつ最適な操作時間を確保できる初期硬化時間を有し、(3)初期硬化直後の硬化物が、組織液中あるいは水中で崩壊することがなく、(4)硬化後の強度、封鎖性など物理的性質に優れた、歯科用水硬性セメント組成物を提供する。
【解決手段】
(A)以下の(イ)〜(ニ)成分を含有する粉材と、(イ)ケイ酸三カルシウム、又はケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウム、(ロ)酸化カルシウム、及び/又は水酸化カルシウム、(ハ)硫酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ土類金属塩又は硫酸遷移金属塩から選ばれる1種又は2種以上の硫酸塩、(二)粉材全量に対して0〜5質量%未満のカルシウムアルミネート、(B)水溶性高分子化合物の水溶液からなる液剤とを、用時に練和して得られる、歯科用水硬性セメント組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、最適の操作時間内に調節でき、かつ効率的に、保存療法、歯内療法、外科処置を伴う歯内療法などの歯科治療が可能な歯科用水硬性セメント組成物に関する。
歯科用水硬性セメントの一種であるMTA製材( Mineral Trioxide Aggregate )は米国で開発された歯内治療用材料である(特許文献1)。
MTA製材は、良好な封鎖性、抗菌性、生体適合性、硬組織誘導能などを有する生体機能性材料であることから、a)露髄面の直接覆髄、b)断髄面の直接覆髄など覆髄材として臨床応用されている。さらに、c)穿孔封鎖、d)アぺキシフィケーション、e)逆根管充填など外科処置を伴う高度な歯内療法など様々な用途への応用も進んでいて注目を集めている。
a)覆髄とは歯髄保護の手法であり、間接覆髄と直接覆髄に分類される。
間接覆髄は象牙質を介して、外来刺激を遮断し、歯髄の炎症を鎮め、第三象牙質の形成を促すことにより歯髄保護を目的とする。
直接覆髄は、感染象牙質除去後の窩洞で偶発的に露髄したもののうち、露髄が小さくかつ細菌感染がないものに対して歯髄保護とデンティン・ブリッジ(硬組織からなる象牙橋)形成誘導のために試みられる。
b)生活歯髄切断法(生活断髄法)とは、歯髄の疾患が歯冠部の歯髄に限局している場合に、抜髄のように歯髄を全て除去してしまうのではなく、歯冠の部分の歯髄(冠部歯髄)だけを除去し(断髄)、断髄面を直接覆髄することによって、歯根部分の歯髄(根部歯髄)は、生活歯髄のまま残す治療法である。
この生活断髄法は、乳歯あるいは若い永久歯根(未完成歯)に対して行われる。根未完成歯において、根部歯髄を生きて残すことは、歯根の成長を止めずにすみ、歯根の完成をはかることができる。また、根未完成歯は根尖孔が太いことから、抜髄後に緊密な根管充填を行うのは困難であることから、生活断髄法は好ましい。
c)穿孔とは、歯牙の意図せざる箇所に孔が開いてしまうことである。この原因はう蝕による場合に加え、歯科医療処置による場合もある。すなわち、タービンなどで歯を削っている時や、リーマー・ファイルなどで根管治療を行っている際などに、誤って意図しない部位を穿孔してしまうことである。
穿孔してしまった場合には修復材料で封鎖して修復を試みるが、慢性的な炎症反応が常に存在し上皮性の肉芽組織が穿孔部に充満し、歯根膜は寸断されている状態にあるため、最悪の場合は抜歯になってしまうことがある。
d)アペキシフィケーションとは、歯髄が失活した根未完成歯の根尖を硬組織(セメント質)で閉鎖させようとする治療法(根尖閉鎖術)のことである。根尖まで壊死組織を除去、拡大、清掃が終了した根管に、通常水酸化カルシウム製剤を充填することによってこの目的が達成される。根尖が硬組織で閉鎖された後は、根管充填シーラーとガッタパーチャを用いて根管充填を行うのが一般的である。
e)逆根管充填は様々な理由で、通常の根管治療が出来ない場合、歯肉側から開窓して病巣掻爬、歯根の汚染部分を除去した後、根尖側から逆に根尖部に根管充填し、閉鎖する外科処置を伴う治療のことである。この一連の治療を、歯根端切除術とも云う。
また再植法により逆根管充填を行なうこともある。同じく通常の根管治療では治癒が望めないケースで、病巣が大きすぎる症例、また奥歯で手術操作が困難な症例、歯根付近を神経が走行しているなどの理由で、開窓が行えない症例などが該当する。
MTA製材の露出歯髄への応用により、被蓋硬組織(デンティン・ブリッジ)形成を伴う創傷治癒が、従来の水酸化カルシウム製剤以上に期待できることから、a)の覆髄処置、特に直接覆髄時の成功率が高いことを示す報告が数多くなされている。
また従来の材料では果たし得なかった難治症例においても、生体親和性もよく、拒絶反応を起こしにくいMTA製材は、逆根管充填、穿孔封鎖、アペキシフィケーションの成功例が数多く報告されており、MTA製材の臨床的有用性は大きいと期待されている。
現在入手可能なMTA製材は、工業用セメントとして汎用されるポルトランドセメントから、有害物質(重金属類、ヒ素)を除去したものである。ポルトランドセメントの主成分は、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2)、ケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO2)、カルシウムアルミネート(3CaO・Al2O3)、カルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al2O3・Fe2O3)、二水石膏(CaSO4・2H2O)などである。
このうち、セメントクリンカーと呼ばれるケイ酸二カルシウム、ケイ酸三カルシウム、カルシウムアルミネートおよびカルシウムアルミノフェライトの混合物は、酸化カルシウム、シリカ、アルミナおよび第二酸化鉄の混合物を焼成することで作られる。
セメントクリンカーの成分のうち、ケイ酸二カルシウムの水和反応は極めて遅く、数日単位で硬化反応が進行することが知られており、硬化体の最終強度の向上と寸法安定性を保つ働きがあるものの、硬化に時間がかかる。
一方、ケイ酸三カルシウムの水和反応は非常に速いため、硬化初期の強度を向上させる効果がある。
また、カルシウムアルミネートの水和反応は、ケイ酸三カルシウムよりも遥かに早く、水と接すると瞬時に凝結が起こる。
カルシウムアルミノフェライトを配合する目的は、ケイ酸三カルシウムの生成温度を低下させることである。すなわち、これを添加することにより、前記セメントクリンカーの焼成温度を低く抑えることができ、経済的にポルトランドセメントを製造することができる。
MTA製材の硬化反応の主体はこれら無機質酸化物の水和反応であり、この過程でケイ酸カルシウム水和物(3CaO・2SiO2・3H2O)と水酸化カルシウムの結晶が生成する。
水酸化カルシウムが生成することにより、MTA製材は、完全硬化後も強アルカリ性物質である。したがって、硬化体を水中浸漬した際には、カルシウムイオンと水酸化物イオンの持続的溶出が生じるとともに、浸漬液の液性もアルカリ側に維持される。また、体組織液などの水溶液中では、存在するリン酸イオンと溶出したカルシウムイオンが反応し、結晶構造が近いケイ酸カルシウム水和物の表面を結晶核として、ハイドロキシアパタイトの結晶が生成する。これらの現象により、MTA製材は抗菌作用と新生硬組織誘導能を有することが知られている。
市販のMTA製材は、以下のような経過をたどって硬化が進行する。
(1)粉と液を接触させて良く混合し、均一なペーストとする。このために要する時間を練和時間とする。MTA製材の練和時間は約1分である。
(2)練和開始から、均一になったペーストの粘度は徐々に上昇し、ある時間が経過するともはや窩洞への充填操作が不可能となる。この時点までの時間を操作時間とする。
操作時間終了直後、即ち窩洞填塞直後のペーストはまだ柔らかく、加圧により容易に変形してしまうため、静置しておくことが重要である。MTA製材の操作時間は概ね5分前後である。
(3)窩洞に填塞後、更にペーストの硬化が進み、流動性を完全に失って、変形や、修復物の移動などが起こらなくなる。この見かけの硬化状態を初期硬化と呼び、練和開始から初期硬化までに要する時間を初期硬化時間とする。MTA製材の初期硬化時間は数時間である。
初期硬化の段階では、まだペーストは完全に硬化していないので、過度の力をかけると亀裂、割れ、破砕などが起こる。この時点では、大きな荷重を与えないようにすることが肝要である。施術を成功させるためには、形成窩洞に填塞した後、なるべく早期に唾液、組織液や血液に接触した状態でも硬化物が崩壊や溶解を起こさなくなることが非常に重要となる。臨床的にはこの時間が充填操作完了後(すなわち操作時間終了から)30分以内である。
(4)初期硬化から更に硬化が進行し、圧縮強度が上がり続けてやがて極大値を示す。この状態を完全硬化とし、練和開始からこの状態までに要する時間を完全硬化時間とする。MTA製材の完全硬化時間は約一週間である。
歯科用の目的には、一般的に硬化の速い水硬性セメントが要求される。しかしながら、現在市販されているMTA製材は、初期硬化時間が数時間であり、完全硬化までには約一週間を要する。このため、施術中に浸出液や血液などに接触すると、充填したペーストの表面から粉末が遊離し、ペーストが崩壊する等の恐れがあり、施術直後の封鎖性の低下や成分の漏出が臨床では懸念されている。
また、市販されているMTA製材は、ほとんど粉―液タイプであり、液成分は同梱されているか用時調達するかの違いがあるものの、精製水もしくは生理食塩水が大半である。使用時には、土に水を加えた泥状のものとなり、臨床使用上操作性が悪いといわれている。現実には、指定された粉液比で用いるのみでなく、泥水〜固練りの土隗までさまざまな固さ=水分量で用いられており、施術部への移送・充填などが既存の歯科用インスツルメントでは困難である。このため、MTA製材の移送・充填には、ペレット成形ブロックやMTAガンと呼ばれる特殊な器具が用いられており、操作も充分な注意を払う必要がある。
米国特許第5,769,638号公報 特表2005−538145号公報
Zhao W et al., J Biomed Mater Res, 85A, 336-344, 2008 Huan Z et al., J Biomed Mater Res, 87B, 387-394, 2008
上記のような状況に鑑みると、歯科用水硬性セメントには、少なくとも以下の性質が求められる。(1)一般的な歯科用器具で操作可能な練和物性状とし、(2)充分且つ最適な操作時間を確保するため、初期硬化時間が数分〜数十分であり、(3)初期硬化直後の硬化物が、組織液中あるいは水中で崩壊することなく、(4)硬化後の強度、封鎖性など物理的性質に優れていることである。
本発明者らは、ポルトランドセメントを精製して製造される市販のMTA製材を初期硬化直後に水中浸漬すると、表面から硬化途中の粉成分が遊離し、崩壊してしまうことを予備実験で確認している。ポルトランドセメントには、カルシウムアルミネートや硫酸塩などが通常含まれており、硫酸塩はカルシウムアルミネートの表面に水和物被膜を形成し、硬化を抑制する働きがある。このため、ポルトランドセメントを基本としたMTA製材に対して、更に硫酸塩を添加するのみでは、硬化促進は起こらず逆に硬化遅延する場合があり、臨床的に理想的な特性である短時間での初期硬化や、充填操作後の耐崩壊性を達成し得るものではない。
これに対し、ポルトランドセメントを出発原料とせずにケイ酸二カルシウムおよびケイ酸三カルシウムを合成したものを使用し、水和反応させても同じ特性の生成物を得ることができるが、ケイ酸二カルシウムおよびケイ酸三カルシウムの単独または混合物からなる水和反応物も、市販MTA製材と同様、初期硬化直後に水中浸漬すると、表面から継続的に崩壊することを確認している。
また、特許文献2には、MTA製材の主要成分であるケイ酸二カルシウム及びケイ酸三カルシウムに、硬化促進のため、炭酸カルシウム及び塩化カルシウム(ポルトランドセメントの急結剤として知られている。)を配合し、硬化体の最終的な強度を向上させる手法が示されている。
この組成物での硬化特性を検証したところ、(1)初期硬化時間を数時間から十数分程度に短縮できること、(2)数週間に及ぶ水中浸漬で徐々に強度が向上することは確認できた。しかしながら、初期硬化直後の水中崩壊が著しいことから、組織液に触れるa)直接覆髄、b)断髄、特に外科処置を伴うc)穿孔封鎖、d)アぺキシフィケーション、e)逆根管充填の場合、求められる特性を有しているとは、到底言えない。
また、特許文献2で開示されたケイ酸カルシウム類に炭酸カルシウムを配合した製材では、前記の通り水中での耐崩壊性が劣るが、これに硫酸塩を数%添加した場合でも、耐崩壊性の改善は起こらなかった。
したがって、ケイ酸カルシウム類の硬化促進及び水中崩壊の抑制を目的として、硫酸塩類を配合する際には、ポルトランドセメント由来のカルシウムアルミネートや、炭酸塩類を含まない粉材組成とする必要がある。
また、市販のMTA製材は、調製時には泥状〜塊状のペーストとなり、特殊な器具を用いて移送・充填する必要がある。このため、練和感の向上や施術の際の操作性を上げることにより、歯科で一般的に使用される移送器具が使用可能となれば、臨床上非常に有意義となる。
非特許文献1及び2には、半水石膏を配合したインジェクタブル骨セメントに関する報告がある。
ほぼ1世紀の間、骨補填材として用いられてきた半水石膏を用いて、ケイ酸三カルシウム(非特許文献1)やケイ酸二カルシウム(非特許文献2)中に50質量%まで配合し、無添加と比べて硬化時間が短縮し、圧縮強度も向上したことを報告している。
練和したペーストを、直径2mmのノズルをつけた注射器(容量10mL)に充填して用いる注入可能な骨セメントであるため、液/粉の配合比は0.8〜1.0、即ちペースト中の粉の配合率は50〜55.6質量%であり、流動性の高いペーストである。
非特許文献1および2の中で最も硬化時間の速い処方(半水石膏の配合量=50質量%、液/粉の配合比=0.8)について、初期硬化時間を測定したところ、ケイ酸三カルシウム(平均粒子径=4.6μm)で18〜20分、ケイ酸二カルシウム(平均粒子径=3.5μm)で20〜23分であり、短時間(数十分)で初期硬化する。しかしながら、初期硬化直後(充填操作後)の崩壊は著しかった。
そこで、直接・間接覆髄・断髄、穿孔封鎖、アぺキシケーション、逆根管充填など様々な臨床応用に適した歯科用水硬性セメントを提供するに際し、本発明が解決しようとする課題は、以下の通りである。
(1)簡単に練和でき、施術の際に移送・充填・形態付与が容易になるように滑らかな練和物性状とする。
(2)臨床的に充分な操作時間と初期硬化時間の短縮を両立させる。
(3)施術直後(初期硬化直後)の唾液、組織液や血液中での耐崩壊性に優れる。
(4)硬化後の辺縁封鎖性、圧縮強さなど物理的性質を有する
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意研究の結果、粉材(A)を、ポルトランドセメントを原料とせず、(イ)ケイ酸三カルシウム単独、又はケイ酸三カルシウムとケイ酸二カルシウムとの混合物、(ロ)酸化カルシウム及び/又は水酸化アルミニウム、(ハ)硫酸塩、並びに(ニ)粉材全量に対して0〜5質量%未満のカルシウムアルミネートを配合したものとし、液剤(B)を、イオン濃度の上昇によって増粘する性質を持つ水溶性高分子化合物の水溶液とし、この粉材と液剤とを、用時に練和して得られる歯科用水硬性セメント組成物が、上記課題解決に有効であることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下(1)〜(8)のとおりである。
(1)(A)以下の(イ)〜(ニ)成分を含有する粉材と、
(イ)ケイ酸三カルシウム、又はケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウム、
(ロ)酸化カルシウム、及び/又は水酸化アルミニウム、
(ハ)硫酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ土類金属塩又は硫酸遷移金属塩から選ばれる1種又は2種以上の硫酸塩、
(ニ)粉材全量に対して0〜5質量%未満のカルシウムアルミネート
(B)水溶性高分子化合物の水溶液からなる液材とを、
用時に練和して得られる、歯科用水硬性セメント組成物。
(2)カルシウムアルミネートを含有しない、(1)に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
(3)硫酸アルカリ土類金属塩が、CaSO、CaSO・1/2HO、又はCaSO・2HOから選ばれる1種又は2種以上である、(1)又は(2)に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
(4)水溶性高分子化合物が、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒアルロン酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上である、(1)〜(3)に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
(5)保存療法に使用する、(1)〜(4)に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
(6)歯内療法に使用する、(1)〜(4)に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
(7)外科処置を伴う歯内療法に使用する、(1)〜(4)に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
(8)(A)以下の(イ)〜(ニ)成分を含有する粉材と、
(イ)ケイ酸三カルシウム、又はケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウム、
(ロ)酸化カルシウム、及び/又は水酸化アルミニウム、
(ハ)硫酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ土類金属塩又は硫酸遷移金属塩から選ばれる1種又は2種以上の硫酸塩、
(ニ)粉材全量に対して0〜5質量%未満のカルシウムアルミネート
(B)水溶性高分子化合物の水溶液からなる液材との組み合わせからなる、
(1)〜(7)に記載の歯科用水硬性セメント組成物の調整用キット。
本発明の歯科用水硬性セメント組成物は、一般的な歯科用器具で操作可能な、練和感が非常に良好かつ移送・充填・形態付与の容易な、滑らかなペースト性状であり、また、硬化体は、従来のMTA製材と同じく、水中浸漬すると水酸化カルシウムを持続的に溶出する。さらにリン酸緩衝液中に浸漬すると、溶出するカルシウムイオンが液中のリン酸イオンと反応し、その表面にアパタイト構造を持つリン酸カルシウム結晶が析出することを実験的に確認した。このため、本発明の組成物は、(1)従来のMTA製材よりも迅速に硬化すると共に、硬化体は、耐崩壊性に優れ、(2)従来のMTA製材と同様、又はそれ以上の優れた封鎖性、抗菌性および硬組織誘導能を有し、(3)従来のMTA製材と同様、又はそれ以上の優れた辺縁封鎖性、圧縮強さなど物理的性質を有する。
(1)、(2)、(3)の優位性から、露髄面の直接覆髄、断髄面の直接覆髄、穿孔封鎖、アぺキシフィケーション、逆根管充填など、組織液に触れやすい処置に適している。また、間接覆髄においても、硬化時間が短く、圧縮強度が優れており、次の操作で圧を加えても変形が起きないことから、単に歯内療法材の範疇を超えて、裏装材、欠損部の充填剤の機能を果たし、様々な症例に安定的に用いることができる。
従来のMTA製材は、(1)、(2)、(3)を同時に満たすものはなかったが、本発明の歯科用水硬性セメント組成物は、(1)、(2)、(3)を同時に満たすものであるので、保存療法、歯内療法、外科処置を伴う歯内療法に、極めて有用である。
本発明の歯科用水硬性セメント組成物は、粉材と液材とを、用時に練和して得られるものであり、粉材は、以下の(イ)〜(ニ)成分を含有する。(イ)ケイ酸三カルシウム、又はケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウム、(ロ)酸化カルシウム、及び/又は水酸化アルミニウム、(ハ)硫酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ土類金属塩又は硫酸遷移金属塩から選ばれる1種又は2種以上の硫酸塩、(ニ)粉材全量に対して、0〜5質量%未満のカルシウムアルミネート。
ケイ酸三カルシウム、又はケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウムは、粉材全量の50〜99質量%を配合し、好ましくは50〜95質量%である。ケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウムの混合物の配合比率は、1:0〜1:2が、操作時間の確保と迅速な初期硬化を両立させるために好ましい。
ケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウムは、酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどのカルシウム塩と二酸化ケイ素などのケイ酸塩を、所定の割合で混合し、大気雰囲気中1200℃以上の温度で焼成し、粉砕して得ることができる。
酸化カルシウム及び/又は水酸化アルミニウムの配合量は、粉材全量の0〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。ただし、酸化カルシウムと水酸化カルシウムが、共に0となることはない。
硫酸塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩が有効であるが、好ましくはNa、Mg、Al、K、Ca塩である。特に好ましいのは、CaSO、CaSO・1/2HO、CaSO・2HO等のCa塩である。硫酸塩は、無水物あるいは水和物の何れでも使用できるが、初期硬化物の水中崩壊抑制効果は、無水物の方が高く、添加量を抑えることができるため好ましい。硫酸塩の配合量は、粉材全量の1〜50質量%、好ましくは3〜30質量%である。
カルシウムアルミネートの配合量は、粉材全量に対して0〜5質量%未満、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜2質量%であり、できる限り含まない方が好ましい。
粉材として、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、硫酸バリウムなどのX線造影剤を5〜40質量%配合してもよく、好ましくは10〜30質量%である。
液材は、精製水や蒸留水を用いることができるが、練和感の向上や施術の際の操作性を上げるには、水溶性高分子化合物を添加することが必要である。水溶性高分子化合物としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムなどが挙げられるが、粉成分の溶出によるイオン濃度の上昇により、極端に溶解度が下がって、水溶性高分子化合物が凝集析出すると、操作が困難となるので、適度に増粘するか、ほとんど増粘しないものが好適である。具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウムなどが好ましい。液材には、製品としての長期安定性を考慮し、防腐剤などを含んでいてもよい。
硬化時間の調整や、練和物中の水分量を減少させ、硬化体の物性を向上させるために、粉材または液材中に、酸化マグネシウム等の金属酸化物、塩化カルシウム等の塩化物、ケイ酸ナトリウム水溶液、アミノスルフォン酸、ナフタレンスルホン酸、ポリカルボン酸、メラミンスルホン酸およびそのエーテル、アルキルアリルスルホン酸、リグニンスルフォン酸、マレイン酸共重合物または天然樹脂酸など、工業用セメントに一般的に用いられる硬化促進剤、減水剤や急結剤を配合してもよい。
それぞれの粉成分の平均粒径は、練和ペーストの操作性、硬化挙動や硬化体の耐水中崩壊性に大きく影響する。通常、粉成分の平均粒径が小さいほど操作時間に余裕があり、表面積が大きいため反応は早くなるが、充分な操作時間を確保し、練和操作を容易にするためには、粒径は、0.01〜20μmであることか好ましく、より好ましくは0.1〜10μmである。
本発明では、これらの処方で配合した粉材と液材を、練和して、ケイ酸カルシウムを主成分とするMTA系水硬性セメントとするが、初期硬化及び完全硬化後の強度を確保するため、粉材の配合率は60質量%以上であることが好ましい。また、強度を要するような用途に使用する場合、例えば完全硬化体の圧縮強度として30〜150MPaを得るには、粉材の配合率が70質量%〜90質量%の範囲であることが好ましい。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例において、「%」は、「質量%」を示す。
実施例および比較例において使用した原材料は下記の通りである。
3CaO・SiO:ケイ酸三カルシウム
2CaO・SiO:ケイ酸二カルシウム
3CaO・SiO+2CaO・SiO(1:1)
:ケイ酸三カルシウムーケイ酸二カルシウム 1:1混合物
3CaO・Al:アルミン酸三カルシウム(カルシウムアルミネート)
CaO:酸化カルシウム
CaSO:無水石膏(無水硫酸カルシウム)
CaSO・1/2HO:半水石膏(硫酸カルシウム1/2水和物)
CaSO・2HO:二水石膏(硫酸カルシウム二水和物)
Al(OH):水酸化アルミニウム
MC:メチルセルロース(信越化学工業株式会社製 メトロース SM 粘度グレード4000)
HEC:ヒドロキシエチルセルロース(和光純薬株式会社製 試薬一級)
ヒアルロン酸ナトリウム(マルハニチロ食品株式会社製 外原規ヒアルロン酸Na「マルハ」)
CaCl:塩化カルシウム
精製水
工業用ポルトランドセメント(急結剤含有):トーヨーマテラン株式会社製 トーヨー瞬間急硬セメント(NET 500g)
市販MTA製材:デンツプライ三金株式会社製 プロルートMTA
擬似体液:体組織液を模して、表1の組成で配合した溶液。ISO 23317:2012に則って調製した。
Figure 2015221754
実施例および比較例に用いたケイ酸三カルシウムおよびケイ酸二カルシウムは、酸化カルシウムと二酸化ケイ素を混合・焼成して合成した。その他の原材料は市販品(生化学用試薬もしくは特級試薬)を用いた。
実施例および比較例において検討した試験項目と方法は下記の通りである。
[操作時間]
(1)粉0.18gと液0.07gを同一練和紙上に計り取り、60秒間練和した。
(2)直ちに練和ペーストを70mm×70mm×5mmのガラス板状に乗せ、同一寸法のガラス板で挟み、剪断力を加えながら圧接した。
(3)継続的に剪断力を加え続け、広がったペーストに亀裂が生じた時点の、練和開始からの時間を記録した。
(4)同一操作を5回繰り返し、5回の平均値を操作時間とした。
[初期硬化時間]
(1)練和ペーストをJIS T6609−1:2005 歯科用ウォーターベースセメント−第1部:粉液型酸-塩基性セメントで規定された圧縮試験用金型(直径4mm、高さ6mm)に填入して37℃100%RHの恒温恒湿器中に静置した。
(2)硬化体の割れ、欠け、変形などが発生せず、寸法を維持したまま金型から取り出すことができるまでの時間を概算で計測した。
n数は5とし、5回の平均値を初期硬化時間とした。
[初期硬化時の水中崩壊の有無]
(1)練和ペーストをJIS T6609−1:2005 歯科用ウォーターベースセメント−第1部:粉液型酸-塩基性セメントで規定された圧縮試験用金型(直径4mm、高さ6mm)に填入して37℃100%RHの恒温恒湿器中に保管した。
(2)前記の方法で計測した初期硬化時間の直後に硬化体を取り出し、試験管に入れて精製水を加えた。
(3)試験管ミキサーで10秒間撹拌した後に静置し、表面からの粉末の遊離あるいは崩壊の有無を目視で判定した。
[圧縮強度]
JIS T6609−1:2005 歯科用ウォーターベースセメント−第1部:粉液型酸-塩基性セメントに記載された方法に則って行った。
[擬似体液浸漬中の表面析出物の確認]
(1)アクリル樹脂で縦横とも15mm、深さ1mmの凹部を持つ型を作製し、練和ペーストを充填してPETフィルムで圧接し、37℃100%RHで24時間硬化させた。
(2)前記の組成で調合した擬似体液50mlをポリプロピレン製シール容器に入れ
(1)の硬化体からPETフィルムを除去し、アクリル型から外さずに、そのまま表面が上になるように浸漬して密封後、37℃で7日間静置した。
(3)硬化体を水洗し、目視で析出物の有無を確認し、光学顕微鏡または電子顕微鏡で表面析出物の形態を観察した。また、表面析出物は粉末X線回折装置で分析を行い、析出した結晶の物質特定を行った。
表2及び表3に、実施例1〜25の処方、及び評価結果を示す。
Figure 2015221754

Figure 2015221754

表4及び表5に、比較例1〜22の処方、及び評価結果を示す。
Figure 2015221754

Figure 2015221754

実施例1〜3は、主材をケイ酸三カルシウムとし、酸化カルシウム、無水硫酸カルシウムを所定比率で配合・粉砕した粉材に、増粘材としてメチルセルロースを配合した液材を組み合わせた例である。
練和感および操作性は上市されているMTA製材と明らかに異なり、垂れのない滑らかなクリーム状となって一般的な歯科用器具で移送・充填が容易に行えた。
初期硬化時間は数分〜二十数分と大幅に短縮され、この時点で硬化体を水中に投入、振盪した場合は、既存MTA製材のように溶解や崩壊をすることはなく、形態を保っていた。
この硬化体を37℃の水中に24時間浸漬した後の圧縮強度は、既存MTA製材と同等以上の数値となった。またこの硬化体を擬似体液に浸漬したところ、数分のうちに擬似体液中に沈殿物が現れ、数十分の内にヒドロキシアパタイト類の結晶構造を持つ析出物が表面に現れた。
実施例4と5は、実施例3で用いた無水石膏の変わりに半水石膏および二水石膏を用いた場合である。いずれも実施例3と同じく、良好な練和感・操作性と初期硬化時間の短縮および水中崩壊の抑制が達成できる。
実施例6と7は、実施例1〜3で用いた主材をケイ酸三カルシウム−ケイ酸二カルシウム 1:1混合物としたものであり、実施例1〜3と同じく、良好な練和感・操作性と初期硬化時間の短縮および水中崩壊の抑制が達成できる。
比較例1〜6は、実施例1〜3、実施例6と7に対して、酸化カルシウムと硫酸塩の双方あるいは片方を配合しなかった例である。この場合、良好な練和感・操作性があるが、初期硬化時間の短縮は見られず、また初期硬化直後の水中崩壊は抑えられなかった。
実施例8と9は、実施例1〜3で用いた液材の成分を、MCからHECに変更した例である。この場合、練和ペーストは滑らかかつ曳糸性があり、根管充填に用いる歯科充填用シーラーに類する性状となる。
実施例10は、実施例1〜3で用いた液材の成分を、MCからヒアルロン酸ナトリウムに変更した例である。この場合、練和ペーストの曳糸性が著しく、歯科充填用シーラーに極めて近い性状となった。
比較例7は、実施例3で用いた液材の成分から、MCを除いた例である。この場合、粉と液が接触した時点から硬化が始まるため、ぼそぼそとした凝集物となり、実質的には全く操作時間がない。また、得られた硬化物は空隙が多く、水中崩壊が著しい。
比較例8〜21及び実施例11と12は、粉材にアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al)が含まれる例である。
比較例8と9は、工業用ポルトランドセメントを粉材とした場合である。
使用したポルトランドセメントは急結剤がプレミックスされており、初期硬化時間が短い。精製水のみで練和した場合は初期硬化直後に水中崩壊し、液成分にMCを添加した場合は水中崩壊が抑えられる。しかしながら成分が均一に粉砕混合されておらず、ペースト性状がざらざらの泥状となり、練和感・操作性に劣る。
比較例10と11は、精製ポルトランドセメントを含有する市販MTA製材の粉材を
用いた場合である。これらはひ素、重金属類の除去の際、アルミン酸三カルシウムが変性・失活しているようであり、初期硬化に数時間を要する。また、硬化が遅いため液成分にMCを添加した場合でも初期硬化直後の水中崩壊が著しい。また、ペースト性状が泥状であり練和感・操作性に劣る。
比較例12〜14はケイ酸三カルシウムとケイ酸二カルシウムの混合物にアルミン酸三カルシウムを混合した場合である。アルミン酸三カルシウムの配合量が0.1%あるいは1%の場合は操作時間、初期硬化時間共長いが、5%だと液材に触れると瞬時に硬化し、操作不可能であった。また、いずれも初期硬化直後の水中崩壊が著しかった。
比較例15〜17はケイ酸三カルシウムとケイ酸二カルシウムの混合物にアルミン酸三カルシウムと無水石膏を混合し、工業用ポルトランドセメントあるいは精製ポルトランドセメントを含有する市販MTA製材を模した粉材組成とした場合である。比較例15、16でアルミン酸三カルシウムの配合量が0.1%あるいは1%の場合は、操作時間、初期硬化時間共長く、無水石膏を添加した効果はあまりない。比較例17のアルミン酸三カルシウム5%の場合、無水石膏を添加したため若干硬化が遅くなったが、実質的に操作不可能であった。また、得られた硬化物は空隙が多く、水中崩壊が著しかった。
比較例18〜20はケイ酸三カルシウムとケイ酸二カルシウムの混合物にアルミン酸三カルシウムと無水石膏を混合し、液成分にMCを添加した場合である。比較例18、19において、練和ペーストはクリーム状となり、操作性は大幅に改善され、操作時間、初期硬化時間は短縮されるが、水中崩壊を抑えることはできなかった。比較例17に対し、比較例20は液材にMCを加えることで見かけ上硬化が遅くし、若干の操作時間が確保できるものの、初期硬化直後の水中崩壊を抑えることはできなかった。
実施例11と12、比較例21は、ケイ酸三カルシウムとケイ酸二カルシウムの混合物にアルミン酸三カルシウムと酸化カルシウムおよび無水石膏を混合し、液成分にMCを添加した場合である。実施例11、12において、アルミン酸三カルシウム0.1%あるいは1%の場合は、練和ペーストの操作性が良好であり、初期硬化時間は数分であり、初期硬化直後の水中崩壊は起こらなかった。比較例21において、アルミン酸三カルシウム5%の場合、硬化が著しく速く、得られた硬化物は空隙が多く、水中崩壊が著しかった。
比較例22は、市販MTA製材の粉成分に、塩化カルシウムを配合した液材を組み合わせたものである。この場合、初期硬化時間は30分と大幅に短縮されるが、30分時点での水中崩壊が著しかった。
実施例13〜25は、粉材に硬化促進剤として水酸化アルミニウムを添加した例である。
実施例13および17において、酸化カルシウムを添加せず、代わりに水酸化アルミニウムを添加したところ、著しく硬化が早いものとなった。実施例13に対し実施例14〜16は、さらに酸化カルシウムを配合したものであるが、本来は硬化促進剤である酸化カルシウムの配合量が増すにつれ、操作時間、硬化時間は逆に延長した。この理由として、二価のCaイオンによる溶出イオンのゲル化=硬化促進作用は、三価のAlイオンより大きくはなく、硬化に際し酸化カルシウムと水酸化アルミニウムが共存すると、CaイオンがAlイオンによるゲル化を一部阻害するものと考えている。実施例17に対し実施例18〜20も同様の傾向を示した。
実施例21〜25は、酸化カルシウムの配合量を一定とし、水酸化アルミニウムの配合量を増加させたものである。水酸化カルシウムの配合量が増すにつれ、操作時間、硬化時間共に短くなる傾向があった。
特筆すべきは、実施例14〜16、21〜25では、操作時間終了から硬化までの時間が非常に短いシャープな硬化特性を持つことである。これは、充填直後から即時に硬化することで、液中での崩壊の影響が非常に小さいことを示し、臨床的にも非常に有用な可能性を持つ特性と言える。
また、実施例は、すべて、従来のMTA製材と同様、又はそれ以上の優れた圧縮強度を有しているが、比較例4、5、6、8、9、10、及び11は、実施例と比べると、圧縮強度が劣っている。

Claims (8)

  1. (A)以下の(イ)〜(ニ)成分を含有する粉材と、
    (イ)ケイ酸三カルシウム、又はケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウム、
    (ロ)酸化カルシウム、及び/又は水酸化アルミニウム、
    (ハ)硫酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ土類金属塩又は硫酸遷移金属塩から選ばれる1種又は2種以上の硫酸塩、
    (ニ)粉材全量に対して0〜5質量%未満のカルシウムアルミネート
    (B)水溶性高分子化合物の水溶液からなる液材とを、
    用時に練和して得られる、歯科用水硬性セメント組成物。
  2. カルシウムアルミネートを含有しない、請求項1に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
  3. 硫酸アルカリ土類金属塩が、CaSO、CaSO・1/2HO、又はCaSO・2HOから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
  4. 水溶性高分子化合物が、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒアルロン酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
  5. 保存療法に使用する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
  6. 歯内療法に使用する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
  7. 外科処置を伴う歯内療法に使用する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用水硬性セメント組成物。
  8. (A)以下の(イ)〜(ニ)成分を含有する粉材と、
    (イ)ケイ酸三カルシウム、又はケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウム、
    (ロ)酸化カルシウム、及び/又は水酸化アルミニウム、
    (ハ)硫酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ土類金属塩又は硫酸遷移金属塩から選ばれる1種又は2種以上の硫酸塩、
    (ニ)粉材全量に対して0〜5質量%未満のカルシウムアルミネート
    (B)水溶性高分子化合物の水溶液からなる液材との組み合わせからなる、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科用水硬性セメント組成物の調整用キット。
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