JP2013067599A - 歯科治療用組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ペーストA剤とペーストB剤を混合して得られる歯科治療用組成物であって、ペーストA剤は、ユージノール、グアヤコール、高級脂肪酸、ポリアクリル酸、リン酸から選ばれる成分を含有し、ペーストB剤は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミノシリケートガラスから選ばれる成分を含有し、かつ、ペーストA剤及びペーストB剤のいずれか一方又は両方に、酸化カルシウムと二酸化ケイ素を含有するガラス粉末を配合した、歯科治療用組成物。
【選択図】なし
Description
抜髄は、歯髄炎、う蝕や外傷などによる露髄、便宜抜髄に適応される。感染根管治療の適応歯は、多くはa)〜c)の治療が既に為されていて、充填材等が充填されているが、根管内に失活歯髄が残存している症例をも含む。
抜髄、感染根管治療とも、術式に大差はなく、まず、歯髄腔の天蓋を除去し、髄腔の歯髄または充填物を切除または除去した後、根管内を探り、ファイルで根管歯髄組織または充填物を除去する。抜髄の場合は、根尖方向の歯髄は生活しているため、神経刺激性を有する薬剤の貼付、処置は避け、歯髄組織の適切な創傷治癒、再生誘導を発揮する材料を貼付することが好ましい。感染根管治療では、根尖狭窄部まで、根管形成するのが通例であり、根管内には生活歯髄が残存していることは殆どなく、根尖を封鎖、密閉性を高めることが重要になる。すなわち、根管内の成分が根尖に漏出しないようにすること、また、根尖周囲の組織液、浸出液などが根管内に侵入しないようにすることが必要となる。しかしながら、乳歯、根尖が完成していない幼若永久歯に加え、根尖病巣により、根尖が吸収し歯牙、歯根端切除が行われた歯牙などは、アピカルシートの形成が困難なため、上述の様な、根管内と根尖周囲との交通が生じることもある。
このような基礎的知見、共通認識を基に、a)、b)では窩洞の空隙を安全な材料で封鎖し、高い密閉性を実現することで、歯髄の保護を図りつつ、第三象牙質の形成またはデンティン・ブリッジ形成を誘導する治療が行われる。c)、d)では治療の最終段階として、根管内の空隙を、同じように、生体に安全な材料で封鎖し、高い密閉性を実現することで、
根尖孔、穿孔部等、歯周組織からの細菌による二次感染を防止する目的で根管充填が広く行なわれなくてはならない。そのため、生体為害性のない材料からなる覆髄材、根管充填材を使用し、できるだけ緊密に窩洞、根管を充塞できることが重要となる。さらに、残存歯髄及び歯周組織、主に歯槽骨など、生体組織の適切な創傷治癒、再生誘導を発揮する材料が好ましい。
しかしながら、これらの歯内療法材は現状多く用いられてはいるものの、完全に理想的な封鎖性を示しているとは言い難い。なぜならば上述の歯内療法材と歯質とは完全に接着することは材料的に不可能であり、材料−歯質間の微小な間隙は避けられないためである。近年ではこの歯質接着性に焦点を当て、窩洞の修復に用いるレジン系歯内療法材(非特許文献1)も市販されてはいるが操作性は悪く、根管内など、器具が到達しにくく、操作が困難な部位では接着性材料に不可欠な被着体のエアー乾燥が行えないため、湿潤環境になりがちで接着性の低下が指摘されている。
FILLAPEX、伯angelus社)。
該製剤は、歯内療法用の材料にふさわしい操作性などの物性は備えているものの、レジンをベースとした組成であり、MTA成分(ケイ酸カルシウムなど)は製材の13%程度しか含まないため、上述のMTA製材同様に硬化体表面から骨類似結晶を生じて充填物と歯質の間に生じた間隙を封鎖する特性は有するものの、ややその能力に乏しい。
(1)ペーストA剤とペーストB剤を混合して得られる歯科治療用組成物であって、ペーストA剤は、ユージノール、グアヤコール、高級脂肪酸、ポリアクリル酸、リン酸から選ばれる1種又は2種以上の成分を、ペーストA剤全量に対し5質量%以上含有し、ペーストB剤は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミノシリケートガラスから選ばれる1種又は2種以上の成分を、ペーストB剤全量に対し5質量%以上含有し、かつ、ペーストA剤及びペーストB剤のいずれか一方又は両方に、酸化カルシウムと二酸化ケイ素を、質量比が6:4〜3:7の範囲で、ガラス粉末全量に対し50〜100質量%含有するガラス粉末を、各ペーストに対し70質量%以下、組成物全量に対し40質量%以上配合した、歯科治療用組成物。
(2)ガラス粉末として、さらにアルカリ金属酸化物を0〜40質量%、及びリン酸を0〜10質量%含有する、(1)に記載の歯科治療用組成物。
(3)歯科充填に使用する、(1)又は(2)に記載の歯科治療用組成物。
(4)歯内療法に使用する、(1)又は(2)に記載の歯科治療用組成物。
(5)歯内療法が、直接覆髄、間接覆髄、断髄、抜髄、感染根管治療、又は穿孔部封鎖である、(1)、(2)、又は(4)に記載の歯科治療用組成物。
(6)(1)に記載のペーストA剤とペーストB剤を含む、歯科治療用組成物用のキット。
すなわち、本発明の歯科充填用及び歯内療法用組成物は、長年歯科医師に望まれてきた、採取時の操作性、貼付・充填時の操作性、貼付・充填後の良好な封鎖性を合わせ持ち、且つバイオガラスの特性である生体組織の適切な創傷治癒・再生誘導を発揮することにより、高い治療効果を期待できる歯科充填用及び歯内療法用組成物である。
本発明の歯科充填用及び歯内療法用組成物は、ペーストA剤とペーストB剤によって構成され、使用時にペーストA剤とペーストB剤を練和して適用される。ペーストA剤のユージノール、グアヤコール、高級脂肪酸、ポリアクリル酸、リン酸から成る群から選ばれる、1つあるいは2つ以上の成分、ペーストB剤の酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミノシリケートガラスから成る群から選ばれる、1つあるいは2つ以上から選ばれる成分は、練和して硬化する特性を与えるために必須の成分であり、その配合量は、フィラーとして添加する粉末ガラスの配合量との関係で定まる。すなわち、その配合量は、両剤を練和した時に硬化するのに必要な量であると同時に、粉末ガラスの骨類似結晶を析出する性質を確保して良好な封鎖性を維持するのに適した量であることが必要であり、配合量もその観点から定められる。具体的には、ペーストA剤のユージノール、グアヤコール、高級脂肪酸、ポリアクリル酸、リン酸から成る群から選ばれる1つあるいは2つ以上の成分の量は、5質量%以上、ペーストB剤の酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミノシリケートガラスから成る群から選ばれる1つあるいは2つ以上の成分の量は、5質量以上である。なお、ペーストB剤の配合成分としての選択肢であるアルミノシリケートガラスは、本発明の粉末ガラスとは異なり、生体内で骨類似結晶を生成する機能はないが、ポリアクリル酸やリン酸と混合して硬化する特性がすでに歯科領域で実績のある硬化性素材であり、練和して硬化する特性を与えるものとして選択できる。
ペーストA剤及びペーストB剤は、常法によって調製することができる。
粉末ガラスは、常法によって調製できるが、市販のものを使用することもできる。
表1に本実施例に用いた粉末ガラスの組成を、表2にペーストA剤の組成A1〜A12を、表3にペーストB剤の組成B1〜B14の組成を示す。A剤及びB剤の各原料をそれぞれ磁性乳鉢にて混合してサンプルを調製した。調製されたペーストは、表4に示す組合せでペーストA材、ペーストB材それぞれ等量採取、練和し、下記の試験項目により評価した。
ペーストの操作性の指標として、歯科用根管充填シーラーのJIS(JIS−T6522)に規定される試験方法を参考とした。すなわち、ペーストA材とペーストB材を等容量採取して練和し、3分後にその0.05mL相当の量をガラス板に挟む。23℃、相対湿度50%の環境下で、120gf(ガラス板の重量含む)の加重を7分間かけ、試料の広がり径を計測し、ペースト稠度が20〜35mmを合格(○判定)とし、逸脱した稠度を不合格(×判定)とした。なお、JIS−T6522による稠度の試験結果は、粘稠性の高いペーストに対しては小さな実測値を、粘稠性の低いペーストに対しては大きな実測値で観測される。
ペーストA材とペーストB材を等容量採取して練和した練和物の性状をスパチュラで引き上げ、練和物が糸を引く様子を目視で確認した。
ペーストA材とペーストB材を等容量採取して練和し、練和物を塗布したガッタパーチャポイント(ジーシー社製、マスターポイント#35)をパスツールピペットの先端部に充填する。練和から2分後から37℃、相対湿度95%以上の環境におき、所定の時間が経過した時点で引き抜き荷重30gfをガッタパーチャポイントにかけ、抜けないことを確認した。ガッタパーチャポイントが抜けないことを合格(○判定)とし、抜けてしまったものを不合格(×判定)とした。
ペーストA材とペーストB材を等容量採取して練和し、練和物をポリエチレン製メッシュに絡め試験片を作成する。この試験片をSBF中に4日間浸漬静置した後、フィールドエミッション走査型電子顕微鏡(日本電子社製JSM−7000F)にて表面観察した。併せて粉末X線回折装置(理学機器社製RINT−2500HF)で生成した結晶構造の解析を行い、結晶がハイドロキシアパタイトに属する構造であることを確認した。なお、このとき用いたSBFは、動物実験を行うことなしに本発明品のアパタイト様結晶生成能を予備的に判断することができるものとされており、生体内における人工材料表面のアパタイト形成能を評価する標準溶液(ISO 23317)として国際標準化機構に登録されるものを使用した。
ペーストA材の組成A1〜A9と、ペーストB材の組成B1〜B9と組み合わせて使用した実施例1〜9は、操作性、硬化性、結晶生成能について、いずれも良好な操作性、硬化特性、充填後の良好な封鎖性を合わせ持った特性をすべて満足できるものであった。骨類似結晶生成能の確認結果の例として、図1には実施例6におけるフィールドエミッション走査型電子顕微鏡の観察結果を、図2には粉末X線回折で析出した結晶に由来する回折パターンを示す。
走査顕微鏡観察の結果、擬似体液(SBF)に浸漬した試験片の表面には、網状の結晶構造が析出しているのが観察された。網状結晶構造は、粉末エックス線回折による解析結果からハイドロキシアパタイト(HAP)と同等のものが同定された。
pHについて、本願発明のペーストを練和し、精製水に浸漬するとpH10.1と高アルカリ性を示すものの、予め擬似体液(SBF)中に7日間浸漬しておいた硬化体については、中性に近い値を示すことが明らかとなった。
さらに、象牙芽細胞様細胞株(KN−3細胞)へのセメントの影響を位相差顕微鏡で観察したところ、セメントに直接接触する位置まで細胞が増殖しているのが観察された。また、セメントの存在しない場合と比較して細胞突起が伸長している細胞も観察された。
このことから、本願発明品の表層に析出した結晶がHAPと同等のものであること、セメント硬化後のpHが中性域で安定すること、またセメントが細胞に為害性を与えず良好な影響を示すことが明らかとなった。即ち、この結果は、本願発明品が生体親和性の非常に高いセメントであることを示している。pHが中性域に留まることで、歯髄及び歯周組織を刺激することなく、覆髄、断髄では、歯髄を保護する一層または数層のデンティンブリッジを形成すること、根管治療、穿孔部封鎖などにおいては、骨類似結晶を生成して封鎖性を高めることが分かった。
走査顕微鏡観察の結果、擬似体液(SBF)に浸漬した試験片の表面には、網状の結晶構造の析出は観察されなかった。即ち、試験片の表面には、ハイドロキシアパタイト(HAP)は析出せず、従来の材料と同様に材料−歯質間の微小な間隙を生じることは避けられず、創傷治癒、再生誘導などの作用は期待できないことが分かった。
Claims (6)
- ペーストA剤とペーストB剤を混合して得られる歯科治療用組成物であって、ペーストA剤は、ユージノール、グアヤコール、高級脂肪酸、ポリアクリル酸、リン酸から選ばれる1種又は2種以上の成分を、ペーストA剤全量に対し5質量%以上含有し、ペーストB剤は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミノシリケートガラスから選ばれる1種又は2種以上の成分を、ペーストB剤全量に対し5質量%以上含有し、かつ、ペーストA剤及びペーストB剤のいずれか一方又は両方に、酸化カルシウムと二酸化ケイ素を、質量比が6:4〜3:7の範囲で、ガラス粉末全量に対し50〜100質量%含有するガラス粉末を、各ペーストに対し70質量%以下、組成物全量に対し40質量%以上配合した、歯科治療用組成物。
- ガラス粉末として、さらにアルカリ金属酸化物を0〜40質量%、及びリン酸を0〜10質量%含有する、請求項1に記載の歯科治療用組成物。
- 歯科充填に使用する、請求項1又は2に記載の歯科治療用組成物。
- 歯内療法に使用する、請求項1又は2に記載の歯科治療用組成物。
- 歯内療法が、直接覆髄、間接覆髄、断髄、抜髄、感染根管治療、又は穿孔部封鎖である、請求項1、2、又は4に記載の歯科治療用組成物。
- 請求項1に記載のペーストA剤とペーストB剤を含む、歯科治療用組成物用のキット。
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