JP2017145196A - 根管充填用シーラー組成物 - Google Patents

根管充填用シーラー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】歯質に対する濡れ性が良く、不快臭や刺激、為害作用が少なく生体親和性に優れ、根管充填に適した充分な操作余裕時間を有し、且つ硬化後の寸法変化が少なく、さらに再根管治療時に硬化物を容易に除去可能である、根管充填用シーラー組成物の提供。【解決手段】(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体、及び(b)水を含み、pHが3.5〜5.5の範囲にある液材と、(c)酸反応性無機粉末を含む粉材からなる根管充填用シーラー組成物。液材と粉材を練和して得られた硬化物が、(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体:3〜20重量%、(b)水:10〜60重量%、(c)酸反応性無機粉末:30〜85重量%の範囲である、根管充填用シーラー組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、抜髄後や感染根管治療後の根管に充填し、根管への細菌の侵入を防ぐための根管充填用シーラー組成物に関するものである。さらに詳しくは、親水性で歯質に対する濡れ性が良く、不快な臭気や刺激、為害作用が少なく生体親和性に優れ、根管充填に適した充分な操作余裕時間を有し、且つ硬化後の寸法安定性に優れ、さらに術後に硬化物を除去する必要が生じた場合に歯質を傷めずに容易に除去可能な根管充填用シーラー組成物に関するものである。
歯内療法において、抜髄後や感染根管の治療後、根管内への細菌の侵入を防ぎ、感染を防止するために根管充填が行われる。根管充填はガッタパーチャと酸化亜鉛からなるガッタパーチャポイントと根管充填用シーラーを併用して、根管を封鎖する手法が一般的に行われている。根管充填用シーラーに求められる要件としては、水分を多く含む根管歯質に対して濡れ性又は密着性が良く、且つ根尖歯周組織に対して為害作用が少ないなど生体親和性に優れること、根管充填に適した流動性と充分な操作余裕時間を有すること、硬化時の収縮が少なく且つ硬化後の寸法安定性に優れること、高いX線造影性を有すること、再根管治療時に硬化物を容易に除去可能であること等が挙げられる。さらに複数の根管を有する歯を治療する際は、特に治療に時間を要するため、根管充填用シーラーに不快臭があると患者に負担を強いることとなるため、臭気が少ないことも求められている。
一方、これまでに様々な根管充填用シーラーが提案されてきたが、以下に示した課題をそれぞれ残している。すなわち、酸化亜鉛を主成分とする粉材とユージノールを主成分とする液材からなる、酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーは臨床において最も一般的に用いられているが、ユージノール特有の強い不快臭があり、疎水性であるため歯質に対する濡れ性が悪く、さらにユージノールに基因した生体に対する為害作用が懸念されている。
酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーの課題を改良し、臭気と生体に対する為害作用を低減させたものとして、酸化亜鉛を主成分とする粉材と有機不飽和脂肪酸、有機飽和脂肪酸および多価アルコールを主成分とする液材からなる、脂肪酸系根管充填用シーラーが提案されている(特許文献1 特開昭60−181004)。しかし、該シーラーも特有の臭気を有しており、また疎水性であるために歯質に対する濡れ性も悪い。
生体親和性に優れる根管充填用シーラーとして、α−TCP、ハイドロキシアパタイトを主成分とする粉材とポリカルボン酸水溶液を主成分とする液材からなる、リン酸カルシウム/アパタイト系根管充填用シーラー(特許文献2 特開昭62−19508)や、リン酸四カルシウム、第二リン酸カルシウムを主成分とする粉材とポリカルボン酸水溶液を主成分とする液材からなる、リン酸カルシウム系根管充填用シーラー(特許文献3 特開平2−250811)が提案されている。それらシーラーは、親水性で歯質に対する濡れ性が良いものの、X線造影性が低く、さらにポリカルボン酸による酸臭を有しているとともに、練和直後は強い酸性を示すために根尖歯周組織に対する刺激を有する。
適度な流動性、長い操作余裕時間を有し、且つX線造影性と封鎖性に優れた根管充填用シーラーシステムとして、酸性基を有する重合性単量体を含む単官能重合性単量体、重合開始材、X線造影性フィラーおよび単官能重合性単量体により膨潤する重合体を主成分とするレジン系根管充填用シーラーと、該レジン系根管充填用シーラーとの組み合わせに適した歯質表面処理剤からなる歯科根管充填用シーラーキット(特許文献4 特許第3638615号)が提案されている。しかし、該シーラーは歯面処理が必要で操作が煩雑である上、未重合の重合性単量体の溶出による生体に対する為害作用や重合収縮によるシーラーと歯質間のギャップの形成が懸念され、さらに硬化物の強度が高いために再根管治療時に除去が困難である。
封鎖性と生体適合性に優れ、再根管治療時に硬化物を容易に除去可能な根管充填用シーラーとして、フルオロアルミノシリケートガラス粉末、ポリカルボン酸と反応しない充填材を含む粉材とポリカルボン酸水溶液を練和して用いるグラスアイオノマー系根管充填用シーラー(特許文献5 特開2002−220314号)が提案されている。しかし、該シーラーは、硬化が速く根管充填に必要な操作余裕時間を有しておらず、さらにポリカルボン酸による酸臭を有しているとともに、練和直後は強い酸性を示すために根尖歯周組織に対する刺激を有する。
特開昭60−181004号公報 特開昭62−19508号公報 特開平2−250811号公報 特許第3638615号公報 特開2002−220314号公報
本発明は、上記した従来技術の課題を解消し、歯質に対する濡れ性が良く、不快臭や刺激、為害作用が少なく生体親和性に優れ、根管充填に適した充分な操作余裕時間を有し、且つ硬化後の寸法変化が少なく、さらに再根管治療時に硬化物を容易に除去可能である、根管充填用シーラー組成物を提供することを課題とする。
酸反応性無機粉末である酸化亜鉛粉末とポリカルボン酸水溶液を練和して用いるカルボキシレートセメントや、酸反応性無機粉末であるフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸水溶液を練和して用いるグラスアイオノマーセメントは、長年の実績があり臨床において裏層(装)材、合着材、充填材等として幅広く用いられているものの、酸臭を有すること、硬化が速く充分な操作余裕時間を有していないこと、練和直後はpHが低いために根尖歯周組織に対する刺激を有すること、硬化物の強度が高いために再根管治療時に除去しにくいこと等から根管充填に用いるには適していなかった。そこで本発明者らは、ポリカルボン酸水溶液の代わりに酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体と水を含み、且つpHを3.5〜5.5とした液材と、酸反応性無機粉末を含む粉材からなる組成物は、練和物のpHが高いために酸臭と刺激が少なく、且つ根管充填に適した操作余裕時間を確保することができ、さらに再根管治療時に硬化物を容易に除去可能な、適度な機械的強度を示すことを見出した。特に酸反応性無機粉末として、酸化亜鉛を特定の割合で含有させた場合は、充分な操作余裕時間を維持しつつ、より硬化物の除去性に優れることを見出した。さらに酸化亜鉛に加え酸反応性元素含有ガラス粉末を特定の割合で含有させた場合は、充分な操作余裕時間と優れた硬化物の除去性を維持しつつ、練和物のpHが早期に中性に移行するため、より刺激が少なくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体、および(b)水を含み、pHが3.5〜5.5の範囲にある液材と、(c)酸反応性無機粉末を含む粉材からなることを特徴とする根管充填用シーラー組成物であり、
(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体が、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成しているα−β不飽和カルボン酸の重合体であることが好ましく、
(c)酸反応性無機粉末が酸化亜鉛を含むこと、又は酸化亜鉛と酸反応性元素含有ガラス粉末を含むことがより好ましく、
23℃における操作余裕時間が10分以上であることがさらに好ましい根管充填用シーラー組成物に関する。
本発明の根管充填用シーラー組成物は、不快臭の低減により治療中における患者の負担を低減することができるとともに、刺激や為害性が少なく生体親和性に優れるため、生体に対する安全性が向上している。また、充分な操作余裕時間を有することから、根管充填を的確に行うことができる。さらに硬化後の寸法変化も少ないため、良好な予後の経過が期待でき、再根管治療が必要となった際も硬化物を容易に除去可能であるために歯質を傷つける危険が少ない等、歯内療法に大きく貢献できるものである。
以下、本発明の根管充填用シーラー組成物における各成分について詳細に説明する。
本発明の根管充填用シーラー組成物の液材に用いる(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体は、後述する酸性基含有重合性単量体の重合体において、その酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成しているものであれば何等制限なく用いることができる。
酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体を得るために用いる酸性基含有重合性単量体は、その酸性基の種類を特に限定することなく、いずれの酸性基を有する酸性基含有重合性単量体であっても用いることができる。また、この酸性基含有重合性単量体が有するラジカル重合可能な不飽和基の数(単官能性または多官能性)やその種類においても何等制限なく用いることができる。
酸性基含有重合性単量体が有する酸性基を具体的に例示すると、リン酸基、ピロリン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、チオリン酸基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酸性基含有重合性単量体が有する不飽和基を具体的に例示すると、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、これら不飽和基の中でも(メタ)アクリロイル基を有している酸性基含有重合性単量体であることが好ましい。
さらにこれらの酸性基含有重合性単量体は、分子内にアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基および/または水酸基等のその他の官能基を併せて有することもできる。
酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体を得るために用いることができ、不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有する酸性基含有重合性単量体を具体的に例示する。
リン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、(メタ)アクリロイルオキシメチルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ピロリン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、ピロリン酸ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ピロリン酸ビス[3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル]、ピロリンビス[4−(メタ)アクリロイルオキシブチル]、ピロリン酸ビス[5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル]、ピロリン酸ビス[6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル]、ピロリン酸ビス[7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチル]、ピロリン酸ビス[8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル]、ピロリン酸ビス[9−(メタ)アクリロイルオキシノニル]、ピロリン酸ビス[10−(メタ)アクリロイルオキシデシル]、ピロリン酸ビス[12−(メタ)アクリロイルオキシドデシル]、ピロリン酸トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル] 等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ホスホン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネ−ト、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、カルボキシル基を有する酸性基含有重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、2−クロロアクリル酸、3−クロロ(メタ)アクリル酸、2−シアノアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ウトラコン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、1−ブテン−1,2,4−トリカルボン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネ−ト、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエ−ト、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸およびこれらの酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘキサンジカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−オクタンジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、スルホン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ) アクリレ−ト、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、チオリン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上に示した酸性基含有重合性単量体は、単独で又は数種を組み合わせて酸性基含有重合性単量体の重合体を合成するのに用いても何等問題はない。さらに、少なくとも分子内に一つ以上の酸性基を有した酸性基含有重合性単量体と酸性基を有していない重合性単量体とを共重合させて酸性基含有重合性単量体の重合体を合成しても何等問題はない。
これらの酸性基含有重合性単量体の中でも、α−β不飽和カルボン酸系の酸性基含有重合性単量体を用いることが好ましい。このときに用いるα−β不飽和カルボン酸系の酸性基含有重合性単量体は特に限定されず、また分子内に有するカルボキシル基の数やカルボン酸無水物または他の置換基等の有無に何等関係なく用いることができる。
これらのα−β不飽和カルボン酸系の酸性基含有重合性単量体を具体的に例示すると、(メタ)アクリル酸、2−クロロアクリル酸、3−クロロ(メタ)アクリル酸、2−シアノアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ウトラコン酸、1−ブテン−1,2,4−トリカルボン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸のみを出発原料として合成した酸性基含有重合性単量体の重合体、或いはアクリル酸とマレイン酸、アクリル酸と無水マレイン酸、アクリル酸とイタコン酸、アクリル酸と3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸等、2種類以上を出発原料として合成した酸性基含有重合性単量体の重合体を用いることがより好ましい。
各種重合性単量体を重合させる方法は特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のいずれの方法で重合させたものでも何等制限なく用いることができる。また、重合体の合成時に用いる重合開始剤や連鎖移動剤は、所望の重合体を得るために適宜選択すればよい。
これらの酸性基含有重合性単量体の重合体が有する重量平均分子量は特に定めないが、10,000〜200,000の範囲にあることが好ましく、10,000〜100,000の範囲にあることがより好ましい。
酸性基含有重合性単量体の重合体の重量平均分子量が10,000未満になると硬化物の機械的強度が低くなりすぎて、耐久性に問題が生じる。一方、重量平均分子量が200,000を超えると根管充填用シーラー組成物を構成する液材と粉材とを練和した際に練和物の粘度が高くなり、根管への填入性に問題が生じる。
得られた酸性基含有重合性単量体の重合体は、次いで水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、または炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩、或いは炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩等と反応させて、その酸性基の一部又は全部をアルカリ金属塩とする。これにより酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体が得られる。酸性基と塩を形成するアルカリ金属は単独でまたは数種を組み合わせて酸性基と塩を形成していても何等問題はない。さらに、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体は、部分的にマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛等の2価の金属、アルミニウム、ランタン、クロム、イッテルビウム等の3価の金属、またはチタン、ジルコニウム等の4価の金属と塩を形成していても何等問題はない。また、塩を形成する金属はこれらに限定されず、さらに単独でまたは数種を組み合わせて酸性基と塩を形成していても何等問題はない。
なお、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体の分子量は特に定めないが、前記したアルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、またはアルカリ金属の炭酸水素塩等と反応させる前の酸性基含有重合性単量体の重合体と同じ範囲の分子量を有していれば良い。
さらに、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体は、少なくとも分子内に一つ以上の酸性基を有した酸性基含有重合性単量体と前記したアルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、またはアルカリ金属の炭酸水素塩等を反応させて、あらかじめ酸性基の一部又は全部をアルカリ金属塩とした後、それを単独で重合、又は2種類以上或いは酸性基を有していない重合性単量体と共重合させることでも合成することができる。
また、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体は、合成する際に溶媒として用いた水と共存した状態で供給されてもよい。さらに、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体は、粉末の状態で本発明の根管充填用シーラー組成物の粉材に構成成分として供給されてもよい。
本発明の根管充填用シーラー組成物の液材に用いる(b)水は、根管充填用シーラー組成物の硬化性や機械的強度に悪影響を及ぼすような不純物を含有していないものであれば何等制限なく使用することができる。具体的には蒸留水またはイオン交換水を使用することが好ましい。
酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体と水を含む本発明の根管充填用シーラー組成物の液材は、そのpHが3.5〜5.5の範囲にあることが必須であり、より好ましい範囲は3.5〜5.0である。pHが3.5より低いと酸臭が強くなるとともに、根尖歯周組織に対する刺激を有する。また、硬化が速くなり根管充填に適した充分な操作余裕時間が確保できないことに加え、さらに硬化物の機械的強度が高くなり再根管治療時に除去が困難となる。一方、pHが5.5より高いと硬化物の機械的強度が低くなりすぎて、耐久性に問題が生じる。
本発明の根管充填用シーラー組成物の粉材に用いる(c)酸反応性無機粉末は、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体が有する酸性基または酸性基のアルカリ金属塩とキレート結合する元素を含んでいるものであれば、特に制限なく用いることができる。すなわち酸反応性無機粉末中に周期律表第1〜16族に属する金属元素、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、イッテルビウム等を含んでいる必要があるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、亜鉛等、2価の金属元素を含んでいる酸反応性無機粉末を用いることがより好ましい。
酸反応性無機粉末は、これらの金属元素の1種類または2種類以上を含むことができ、その含有量は特に限定されない。さらにこれら金属元素以外の酸反応性無機粉末に含まれるその他の元素については特に制限はなく、本発明における酸反応性無機粉末は様々な元素を含むことができる。
つまり、本発明の根管充填用シーラー組成物の粉材に含まれる酸反応性無機粉末は前述の金属元素を含むものであれば、その酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硅酸塩、フッ化物、窒化物、鉱物、ガラス等であっても何等制限されることなく用いることができる。これらの酸反応性無機粉末を具体的に例示すると、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムシリケート、酸反応性元素含有ガラス(溶融法によるガラス、気相反応により生成したガラス、ゾル−ゲル法による合成ガラスなどを含む)、フッ化ストロンチウム、炭酸カルシウム、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、水酸化ストロンチウム、フッ化亜鉛、フッ化イッテルビウム、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、チッ化アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの酸反応性無機粉末は単独でまたは数種を組み合わせて用いることができる。なお、これらの酸反応性無機粉末は水に対して不溶性、難溶性、易溶性等のいずれの性質を示すものであっても何等問題なく用いることができる。また酸反応性無機粉末の形状も特に限定されずに球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状のものやそれらの凝集体であってもよく、何等制限なく用いることができる。
さらに、液材と粉材の反応に悪影響を及ぼさない範囲であれば、本発明の根管充填用シーラー組成物に優れた諸特性を付与する目的または他の目的で、酸反応性無機粉末に2次加工を施して、反応性を調整したり、或いは多機能性を付与することができる。2次加工の具体例としては、電気炉等を用いて高温で酸反応性無機粉末を加熱する加熱処理、様々な方法により酸反応性無機粉末を2種類以上、或いは酸反応性無機粉末及びその他の無機粉末等を2種類以上、混合・反応・解砕・分散させて複合化する複合酸化物化処理、粉砕機を用いて酸反応性無機粉末を微細化する粉砕処理、或いは表面処理剤の使用、またはその他の方法により酸反応性無機粉末表面を改質する表面改質処理等が挙げられる。
前記の表面処理剤を具体的に例示すると、例えば、界面活性剤、有機酸、無機酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ポリシロキサン等が挙げられる。
さらに前記の表面改質処理方法を具体的に例示すると、酸反応性無機粉末を液相中または気相中等で凝集させ、その後熱処理する凝集処理、酸反応性無機粉末表面を有機物で包含するマイクロカプセル化、酸反応性無機粉末表面を有機物で機能化するグラフト化等が挙げられる。
なお、加熱処理、複合酸化物化処理、粉砕処理、或いは表面改質処理等の2次加工処理はそれぞれ単独でまたは複合的に組み合わせて用いることができる。
一方、根管充填用シーラーには、その根管への填入状態の確認や予後の経過観察を的確に行うために高いX線造影性が求められる。そのため、酸反応性無機粉末にはX線を遮断する元素として亜鉛、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、ランタン、チタン、イットリウム、イッテルビウム、タンタル、錫、テルル、タングステンおよびビスマス等を含んでいることが好ましい。具体的には、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化イッテルビウム、酸化ビスマス、硫酸バリウム、フッ化イッテルビウム、フッ化ランタン、フッ化イットリウム、フッ化チタン、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、並びに前記したX線を遮断する元素を含んだアルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、アルミノボレートガラス、ボロアルミノシリケートガラス、リン酸ガラス、ホウ酸ガラスおよびシリカガラス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酸反応性無機粉末の平均粒子径は0.05〜30.0μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜20.0μmの範囲にあることがより好ましく、0.05〜10.0μmの範囲にあることがさらに好ましい。酸反応性無機粉末の平均粒子径が0.05μm未満になると、表面積が増大するために、液材との馴染みが悪くなり練和性が低下するとともに、練和物の粘度が高くなり、根管への填入性に問題が生じる。さらに反応性も高くなるために充分な操作余裕時間が確保できなくなる。また、酸反応性無機粉末の平均粒子径が30.0μmを超えると、硬化物の機械的強度が高くなり再根管治療時に除去が困難となる。
以上に示した酸反応性無機粉末の中でも酸化亜鉛を用いた場合は、充分な操作余裕時間を有しつつ硬化物の除去性により優れるため好ましい。酸化亜鉛は、酸反応性無機粉末全量に対して50重量%以上含むことが好ましい。なお、酸化亜鉛を複合酸化物として含ませた場合は、複合酸化物中の他の金属酸化物の含有量を除いて計算したとき、酸化亜鉛が酸反応性無機粉末全量に対して50重量%以上含まれていればよい。酸反応性無機粉末全量に対して酸化亜鉛の含有量が50重量%より少ないと硬化物の機械的強度が高くなり、硬化物の除去性が低下する。
さらに酸反応性無機粉末として酸化亜鉛に加え、酸反応性元素含有ガラス粉末を含有させると、練和物のpHが早期に中性に移行し、より刺激が少なくなるため好ましい。酸反応性元素含有ガラス粉末は、酸反応性無機粉末全量に対して5〜40重量%含まれることが好ましく、10〜30重量%含まれることがより好ましい。酸反応性無機粉末全量に対する酸反応性元素含有ガラス粉末の含有量が5重量%未満では、練和物のpHが中性に移行する速度が充分に速くならない。また酸反応性元素含有ガラス粉末の含有量が40重量%を超えると、操作余裕時間が短くなる。
ここで、酸反応性元素含有ガラス粉末の製造方法は特に限定されず、溶融法、気相法およびゾル−ゲル法等のいずれの製造方法で製造されたものでも問題なく使用することができる。その中でも、酸反応性元素含有ガラス粉末中に含まれる元素の種類やその含有量を制御しやすい溶融法またはゾル−ゲル法により製造された酸反応性元素含有ガラス粉末を用いることが好ましい。
酸反応性元素含有ガラス粉末は、一般に販売されているものを粉砕等の加工をすることなく使用することもできるが、本発明の根管充填用シーラー組成物の反応性を制御するために、所望の平均粒子径に粉砕して用いることが好ましい態様である。粉砕方法に関しては特に限定されず、湿式法または乾式法のいずれの粉砕方法を用いて粉砕したものでも使用することができる。具体的には、ハンマーミルやターボミル等の高速回転ミル、ボールミルや振動ミル等の容器駆動媒体ミル、サンドグラインダーやアトライター等の媒体撹拌ミル、ジェットミル等を用いて、所望の平均粒子径を得ることができる。
また酸反応性元素含有ガラス粉末は、本発明の根管充填用シーラー組成物の反応性を制御するために、表面をポリシロキサンによりコーティングするポリシロキサン処理を施して用いることが好ましい態様である。すなわち、ポリシロキサン処理によって、本発明の根管充填用シーラー組成物を構成する液材と粉材との練和後における操作余裕時間や硬化時間を任意に制御することができる。
このポリシロキサン処理に用いることができるシラン化合物を具体的に例示すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリイソプロポキシクロロシラン、トリメトキシヒドロキシシラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシラン、水酸化ケイ素(酸化ケイ素水和物)およびそれらシラン化合物の低縮合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのシラン化合物の中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランおよびそれらのシラン化合物の低縮合体が好ましく、より好ましくはテトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランの低縮合体である。これらのシラン化合物は単独でまたは数種を併用して使用することができる。
本発明の根管充填用シーラー組成物は(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体、および(b)水を含む液材と、(c)酸反応性無機粉末を含む粉材を練和することで硬化物が得られる。
(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体は、液材と粉材を練和して得られた硬化物に3〜20重量%含まれることが好ましい。酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体の含有量が3重量%未満では、硬化物の機械的強度が低くなりすぎて、耐久性に問題が生じる。また20重量%を超えると液材と粉材とを練和した際に練和物の粘度が高くなり、根管への填入性に問題が生じるとともに、充分な操作余裕時間が得られなくなる。
(b)水は、液材と粉材を練和して得られた硬化物に10〜60重量%含まれることが好ましい。水の含有量が10重量%未満では、液材と粉材とを練和した際に練和物の粘度が高くなり、根管への填入性に問題が生じる。また、硬化が速くなり根管充填に適した充分な操作余裕時間が確保できないことに加え、さらに硬化物の強度が高くなり再根管治療時に除去が困難となる。60重量%を超えると硬化物の機械的強度が低くなりすぎて、耐久性に問題が生じる。
(c)酸反応性無機粉末は、液材と粉材を練和して得られた硬化物に30〜85重量%含まれることが好ましい。酸反応性無機粉末の含有量が30重量%未満では、硬化物の機械的強度が低くなりすぎて、耐久性に問題が生じる。また、85重量%を超えると液材と粉材とを練和した際に練和物の粘度が高くなり、根管への填入性に問題が生じる。
一方、臨床において根管充填用シーラーは、その練和物が流動性のあるペースト状を維持している間に、一般的に複数のガッタパーチャポイントと共に根管内に充填される。具体的な充填方法は次に示す通りである。先ず根管充填用シーラーを練和し、練和物を準備した後、適量の練和物を根管内に填入する。次いで練和物を塗布したガッタパーチャポイントを準備し、そのガッタパーチャポイントを1本ずつ順次、根管内に挿入する。最終的に根管内は練和物と複数本のガッタパーチャポイントで満たされる。
この根管充填が的確に行われるために、本発明の根管充填用シーラー組成物は、23℃における操作余裕時間が10分以上であることが好ましい。本発明で言う操作余裕時間とは、根管充填用シーラー組成物における液材と粉材の練和開始から、練和物の流動性がなくなるまでの時間を意味する。ここで「練和物の流動性がなくなる」とは、練和物が流動性のあるペースト状からパテ状に変化し、臨床において根管充填用シーラーと共に根管内に充填されるガッタパーチャポイント上に練和物が容易に塗布できなくなる状態を意味する。操作余裕時間が10分より短い場合は、治療中に練和物の粘度が増加してしまい、練和物を根管内に緊密に充填できなくなる危険が生じる。また、複数の根管を有する歯を治療する際は、全ての根管の充填操作が完了する前に練和物の粘度が増加して充填できなくなり、練和物を再度準備する必要が生じるため操作が煩雑となる。
本発明の根管充填用シーラー組成物の粉材には、酸反応性無機粉末以外に第2の粉末を含ませることができる。第2の粉末としては、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体が有する酸性基または酸性基のアルカリ金属塩がキレート結合する元素を含有しないものであれば特に限定されることなく用いることができる。第2の粉末としては歯科用充填材として公知なもの、例えば、無機充填材、有機充填材および有機−無機複合充填材等が挙げられ、これらは単独でまたは数種を組み合わせても何等制限なく用いることができる。また、これら第2の粉末の形状は特に限定されず、球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状のものやそれらの凝集体であってもよく、これらに限定されるものではない。
無機充填材を具体的に例示すると、石英、無定形シリカ、超微粒子シリカ、酸性基または酸性基のアルカリ金属塩がキレート結合する元素を含まない種々のガラス(溶融法によるガラス、ゾル−ゲル法による合成ガラス、気相反応により生成したガラスなどを含む) 、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これら無機充填材の平均粒子径は特に制限はないが、0.001〜30μmの範囲にあることが好ましい。
また、有機充填材としては、重合性基を有する単量体を重合することによって得ることができるものであれば何等制限なく使用することができ、その種類は特に限定されない。
有機充填材を具体的に例示すると、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン等の不飽和芳香族類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、ブタジエン、イソプレン等の重合性単量体等を単独で重合または数種を共重合させたものが挙げられる。特に好ましくは、歯科分野で既に公知として用いられている種々の重合性単量体を重合させたものである。
有機充填材の製造方法も特に制限はなく、重合性単量体の乳化重合、懸濁重合および分散重合等のいずれの方法でもよく、また、予め生成した重合体バルクを粉砕する方法で行なう事もできる。
これらの有機充填材の平均粒子径は、1〜100μmの範囲にあることが好ましく、3〜50μmの範囲にあることがより好ましく、5〜30μmの範囲にあることがさらに好ましい。
また、無機充填材が有機重合体中に包含された構造を有する有機−無機複合充填材を用いることもできる。有機重合体中に包含させる無機充填材としては、特に制限はなく公知のものが使用でき、例えば、前述した第2の粉末として用いることができる無機充填材等を用いることができる。
さらに有機−無機複合充填材においては、無機充填材は有機重合体により包含されているので、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体が有する酸性基または酸性基のアルカリ金属塩がキレート結合しないかぎり、有機−無機複合充填材に含有させる無機充填材として、上記の酸反応性無機粉末を用いることもできる。
有機−無機複合充填材の製造方法にも特に制限はなく、いずれの方法も採用することができる。例えば、無機充填材の表面を有機物でのマイクロカプセル化やグラフト化する方法、無機充填材の表面に重合性官能基や重合開始基を導入後、表面上で有機単量体をラジカル重合させる方法、予め生成した無機充填材を含む有機重合体バルクを粉砕する方法等が挙げられる。
これらの有機−無機複合充填材の平均粒子径は、1〜100μmの範囲にあることが好ましく、3〜50μmの範囲にあることがより好ましく、5〜30μmの範囲にあることがさらに好ましい。
これらの第2の粉末は単独でまたは数種を組み合わせて用いることができる。
第2の粉末として用いる無機充填材、有機充填材、有機−無機複合充填材等は、その表面を表面処理剤の使用や、その他の表面処理方法によって表面処理することで、水との濡れ性等を向上させたり、或いは多機能化することができる。
表面処理に用いることができる表面処理剤を具体的に例示すると、例えば、界面活性剤、有機酸、無機酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、表面処理に用いることができる表面処理方法も特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
これらの表面処理剤や表面処理方法はそれぞれ単独でまたは複合的に組み合わせて用い
ることができる。
本発明の根管充填用シーラー組成物の粉材に含まれる第2の粉末は、本発明の根管充填用シーラー組成物に求める材料特性の要求に応じてその含有量を任意に設定することができるが、液材と粉材を練和して得られた硬化物に1.0〜20.0重量%の範囲で含まれることが好ましい。
本発明の根管充填用シーラー組成物には、操作余裕時間や硬化時間を調整する目的で、液材及び/又は粉材に多塩基性カルボン酸、リン酸、ピロリン酸、又はトリポリリン酸を含ませることができる。本発明の根管充填用シーラー組成物に用いる多塩基性カルボン酸を具体的に例示すると、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、アコニット酸、トリカルバリール酸、イタコン酸、1−ブテン−1,2,4−トリカルボン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸等が挙げられる。以上に記載した多塩基性カルボン酸は、これらに限定されるものではなく、何等制限なく用いることができる。またこれらの多塩基性カルボン酸、リン酸、ピロリン酸及び/又はトリポリリン酸は、単独でまたは数種を組み合わせて用いることができる。多塩基性カルボン酸、リン酸、ピロリン酸及び/又はトリポリリン酸は、液材と粉材を練和して得られた硬化物に0.1〜15.0重量%の範囲で含まれることが好ましい。
さらに本発明の根管充填用シーラー組成物の液材には、諸特性に影響を与えない程度であれば、液材と粉材の練和性を向上させる目的で、界面活性剤を含ませることができる。
本発明の根管充填用シーラー組成物の液材に用いることができる界面活性剤は、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれでもよい。
イオン性界面活性剤として具体的に例示すると、アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪族カルボン酸金属塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の硫酸化脂肪族カルボン酸金属塩類、ステアリル硫酸エステルナトリウム等の高級アルコール硫酸エステルの金属塩類等が挙げられる。また、カチオン性界面活性剤としては、高級アルキルアミンとエチレンオキサイドの付加物、低級アミンからつくられるアミン類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩類等が挙げられる。さらに両性界面活性剤としては、ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム等の高級アルキルアミノプロピオン酸の金属塩類、ラウリルジメチルベタイン等のベタイン類等が挙げられる。
また、非イオン性界面活性剤としては、高級アルコール類、アルキルフェノール類、脂肪酸類、高級脂肪族アミン類、脂肪族アミド類等にエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加させたポリエチレングリコール型あるいはポリプロピレングリコール型、または多価アルコール類、ジエタノールアミン類、糖類と脂肪酸がエステル結合した多価アルコール型等を挙げることができる。
以上に記載した界面活性剤はこれらに限定されるものではなく、何等制限なく用いることができる。またこれらの界面活性剤は単独でまたは数種を組み合わせて用いることができる。
本発明の根管充填用シーラー組成物の液材に含まれる界面活性剤は、液材と粉材を練和して得られた硬化物に0.001〜5.0重量%の範囲で含まれることが好ましい。
また、本発明の根管充填用シーラー組成物は、防腐剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を必要に応じて任意に含むことができる。
以下に本発明の実施例及び比較例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例にて調製した根管充填用シーラー組成物について、その性能を評価した試験方法は次の通りである。
〔臭気〕
目的:根管充填用シーラー組成物の練和物における臭気を評価する。
方法:本発明の根管充填用シーラー組成物を表3に記載の割合で練和した直後、得られた練和物の臭気を確認した。なお、臭気は以下の3段階にて評価した。
○・・・臭気がない。
△・・・わずかに臭気を有する。
×・・・強い臭気を有する。
〔練和物のpH〕
目的:根管充填用シーラー組成物の練和物におけるpHを評価する。
方法:23℃湿度50%環境下において、本発明の根管充填用シーラー組成物を表3に記載の割合で練和した直後、練和物上に蒸留水2mLを滴下した。滴下後、直ぐにスポイドを用いて滴下した蒸留水の上澄みを回収し、そのpHを卓上型水質分析計LAQUA(HORIBA社製)を用いて測定した。
〔操作余裕時間〕
目的:根管充填用シーラー組成物の操作余裕時間を評価する。
方法:23℃湿度50%環境下において、本発明の根管充填用シーラー組成物を表3に記載の割合で練和した後、ガッタパーチャポイント(.06テーパー、#40)上に練和物を塗布し、塗布性を確認した。練和物の流動性が無くなるまでこの操作を繰り返し、練和開始から、練和物の流動性が無くなり、ガッタパーチャポイント上に練和物が容易に塗布できなくなるまでの時間を操作余裕時間とした。
〔硬化時間〕
目的:根管充填用シーラー組成物の硬化時間を評価する。
方法:ISO 6876:2012に従って、以下の手順により硬化時間を測定した。23℃湿度50%環境下において、本発明の根管充填用シーラー組成物を表3に記載の割合で練和した後、得られた練和物をガラス板の上に載せたステンレス製金型(10φ×2mm:円柱状)に充填した。練和終了から120±10秒後に、37℃湿度100%の恒温恒湿槽中の金属ブロック(最小寸法:8mm×20mm×10mm)上に練和物を填入したステンレス製金型を載せた。練和物の水平面に対して垂直にビカー針(質量:100.0±0.5g、末端径2.0±0.1mm)を下ろし、ビカー針の痕跡を目視にて確認した。ビカー針の痕跡が残らなくなるまでこの操作を繰り返し、練和終了から痕跡が残らなくなるまでの時間を硬化時間とした。
〔圧縮強さ〕
目的:根管充填用シーラー組成物の圧縮強さを評価する。
方法:本発明の根管充填用シーラー組成物を表3に記載の割合で練和した後、得られた練和物をステンレス製金型(4φ×6mm:円柱状)に充填し、37℃湿度100%の恒温恒湿槽に3日間静置した。3日後に金型から試験体を取り外し、インストロン万能試験機(型式:5567A)を用い、クロスヘッドスピード1mm/min.にて圧縮強さを測定した。
〔除去性〕
目的:根管充填用シーラー組成物の硬化物における除去性を評価する。
方法:本発明の根管充填用シーラー組成物を表3に記載の割合で練和した後、得られた練和物をガッタパーチャポイントに塗布し、それを根管形成後のヒト抜去上顎第一小臼歯の根管に側方加圧充填法にて充填した。充填後、37℃湿度100%の恒温恒湿槽に7日間静置した。7日後、手用ファイルを用いて根管内のガッタパーチャポイント、及び根管充填用シーラー組成の硬化物を除去し、その除去性を以下の4段階にて評価した。
◎・・・容易に除去可能である。
○・・・除去可能である。
△・・・やや除去しにくい。
×・・・除去しにくい。
本発明の実施例及び比較例に使用した成分及びその略号を以下に示す。
(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体
液材の調製において、(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体は以下に記載した水溶液(PCA1水溶液〜PCA7水溶液)の状態で配合した。
PCA1水溶液:アクリル酸ホモポリマーナトリウム塩水溶液(重量平均分子量:5万、固形分濃度:20重量%、pH=4.2)
PCA2水溶液:アクリル酸−トリカルボン酸コポリマーナトリウム塩水溶液(重量平均分子量:7万、固形分濃度:40重量%、pH=5.5)
PCA3水溶液:アクリル酸ホモポリマーナトリウム塩水溶液(重量平均分子量:5万、固形分濃度:60重量%、pH=4.5)
PCA4水溶液:アクリル酸−トリカルボン酸コポリマーナトリウム塩水溶液(重量平均分子量:7万、固形分濃度:12重量%、pH=5.3)
PCA5水溶液:アクリル酸ホモポリマーナトリウム塩水溶液(重量平均分子量:5万、固形分濃度:40重量%、pH=3.0)
PCA6水溶液:アクリル酸−トリカルボン酸コポリマーナトリウム塩水溶液(重量平均分子量:7万、固形分濃度:20重量%、pH=6.2)
PCA7水溶液:アクリル酸−トリカルボン酸コポリマーナトリウム塩水溶液(重量平均分子量:7万、固形分濃度:5重量%、pH=5.5)
※固形分濃度:酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体の含有量
(c)酸反応性無機粉末
G1:酸反応性無機粉末1(酸化亜鉛−酸化マグネシウム−次硝酸ビスマス複合酸化物、50%平均粒子径:3.7μm)
G2:酸反応性無機粉末2(フルオロアルミノシリケートガラス、50%平均粒子径:4.5μm)
G3:酸反応性無機粉末3(フッ化ストロンチウム、50%平均粒子径:15.7μm)
その他成分
PAA:アクリル酸ホモポリマー粉末(重量平均分子量:5万、固形分濃度20重量%の水溶液におけるpH<1.0)
※固形分濃度:ポリアクリル酸ホモポリマー粉末の含有量
シリカ粉末(50%平均粒子径:3.2μm)
酒石酸
リン酸
[G1:酸反応性無機粉末1の製造]
酸化亜鉛、酸化マグネシウム、次硝酸ビスマスの各種原料(酸反応性無機粉末の組成:酸化亜鉛 87.5重量%、酸化マグネシウム 10.0重量%、次硝酸ビスマス 2.5重量%)を混合した後、電気炉を用いて1240℃にて焼成した。得られた焼成品を粉砕し、酸反応性無機粉末1を得た。この酸反応性無機粉末1の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、3.7μmであった。
[G2:酸反応性無機粉末2の製造]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料(ガラス組成:SiO 23.8重量%、Al 16.2重量%、SrO 35.6重量%、NaO 2.3重量%、F 11.6重量%)を混合した後、その原料混合品を溶融炉中で1400℃にて溶融した。その融液を溶融炉から取り出し水中で冷却してガラスを生成した。得られたガラスを粉砕し、酸反応性無機粉末2を得た。この酸反応性無機粉末2の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、4.5μmであった。
(粉材、及び液材の調製)
表1に示す割合にて各成分を混合することにより液材L1〜10を調製した。また表2に示す割合にて各成分を混合することにより粉材P1〜14を調製した。これら液材、及び粉材を表3、4に示す組合せ、及び粉/液比にて練和した根管充填用シーラー組成物(実施例1〜24、比較例1〜8)について、上記の方法に従い、臭気、練和物のpH、操作余裕時間、硬化時間、圧縮強さ、及び除去性を評価した。さらに市販の根管充填用シーラー4製品(比較例9〜12)も同様に評価した。それらの試験結果を表5に示す。






<実施例1〜24>
実施例1〜24の根管充填用シーラー組成物は、臭気がない上に練和物のpHが高かった。また根管充填に適した充分な操作余裕時間を有し、さらに圧縮強さが適度に低く、硬化物の除去性に優れていた。特に、実施例3〜10、及び実施例13〜24の根管充填用シーラー組成物は、(c)酸反応性無機粉末に酸化亜鉛を50重量%以上含むため、硬化物の機械的強度が適度に低く、非常に除去性に優れていた。その中でも実施例6〜10、及び実施例13〜24の根管充填用シーラー組成物は、さらに(c)酸反応性無機粉末に酸反応性元素含有ガラスを5〜40重量%の範囲で含むため、練和物のpHが早期に中性に移行した。
<比較例1>
比較例1の根管充填用シーラー組成物は、硬化物における(c)酸反応性無機粉末の含有量が30重量%未満である点で本発明の要件を満たしていない。その結果、比較例1の根管充填用シーラー組成物は、硬化物の機械的強度が低くなりすぎており、耐久性の不足が懸念される。
<比較例2>
比較例2の根管充填用シーラー組成物は、硬化物における(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体の含有量が20重量%を超える点で本発明の要件を満たしていない。その結果、比較例2の根管充填用シーラー組成物は、硬化が速くなり根管充填に適した充分な操作余裕時間が確保できなかった。
<比較例3>
比較例3の根管充填用シーラー組成物は、硬化物における(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体の含有量が3重量%未満である点で本発明の要件を満たしていない。その結果、比較例3の根管充填用シーラー組成物は、硬化物の機械的強度が低くなりすぎており、耐久性の不足が懸念される。
<比較例4>
比較例4の根管充填用シーラー組成物は、液材のpHが3.5より低い点で本発明の要件を満たしていない。その結果、比較例4の根管充填用シーラー組成物は、臭気を有し、且つ練和物のpHが低かった。また硬化が速くなり根管充填に適した充分な操作余裕時間が確保できなかった。さらに硬化物の機械的強度も高くなりすぎており、除去性が悪かった。
<比較例5>
比較例5の根管充填用シーラー組成物は、液材のpHが5.5より高い点で本発明の要件を満たしていない。その結果、比較例5の根管充填用シーラー組成物は、硬化物の機械的強度が低くなりすぎており、耐久性の不足が懸念される。
<比較例6>
比較例6の根管充填用シーラー組成物は、硬化物における(b)水の含有量が10重量%未満である点で本発明の要件を満たしていない。その結果、比較例6の根管充填用シーラー組成物は、硬化が速くなり根管充填に適した充分な操作余裕時間が確保できなかった。さらに硬化物の機械的強度も高くなりすぎており、除去性が悪かった。
<比較例7>
比較例7の根管充填用シーラー組成物は、硬化物における(b)水の含有量が60重量%を超える点で本発明の要件を満たしていない。その結果、比較例7の根管充填用シーラー組成物は、硬化物の機械的強度が低くなりすぎており、耐久性の不足が懸念される。
<比較例8>
比較例8の根管充填用シーラー組成物は、本発明の要件である(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体を含まず、その代わりにアクリル酸ホモポリマー粉末(酸性基含有重合性単量体の重合体)を含んでいる。さらに液材のpHが3.5より低い点でも本発明の要件を満たしていない。その結果、比較例8の根管充填用シーラー組成物は、臭気が強く、且つ練和物のpHが低かった。また硬化が速くなり根管充填に適した充分な操作余裕時間が確保できなかった。
<比較例9>
比較例9の根管充填用シーラー組成物は、市販の酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラー(キャナルス/昭和薬品化工株式会社)である。試験の結果、比較例9の根管充填用シーラー組成物は、ユージノール特有の強い不快臭があった。
<比較例10>
比較例10の根管充填用シーラー組成物は、市販の脂肪酸系根管充填用シーラー(キャナルスN/昭和薬品化工株式会社)である。試験の結果、比較例10の根管充填用シーラー組成物は、脂肪酸特有の臭気があった。
<比較例11>
比較例11の根管充填用シーラー組成物は、市販のリン酸カルシウム/アパタイト系根管充填用シーラー(サンキンアパタイトルートシーラータイプI/デンツプライ三金株式会社)である。試験の結果、比較例11の根管充填用シーラー組成物は、臭気を有し、且つ練和物のpHが低かった。また根管充填に適した充分な操作余裕時間を有していなかった。
<比較例12>
比較例12の根管充填用シーラー組成物は、市販のレジン系根管充填用シーラー(スーパーボンド根充シーラー/サンメディカル株式会社)である。試験の結果、比較例12の根管充填用シーラー組成物は、レジン特有の臭気があり、また根管充填に適した充分な操作余裕時間を有していなかった。さらに硬化物の機械的強度も高くなりすぎており、除去性が悪かった。

Claims (6)

  1. (a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体、および(b)水を含み、pHが3.5〜5.5の範囲にある液材と、(c)酸反応性無機粉末を含む粉材からなることを特徴とする根管充填用シーラー組成物。
  2. 液材と粉材を練和して得られた硬化物が、(a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体:3〜20重量%、(b)水:10〜60重量%、(c)酸反応性無機粉末:30〜85重量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の根管充填用シーラー組成物。
  3. (a)酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成している酸性基含有重合性単量体の重合体が、酸性基の一部又は全部がアルカリ金属と塩を形成しているα−β不飽和カルボン酸の重合体であることを特徴とする請求項1〜2に記載の根管充填用シーラー組成物。
  4. (c)酸反応性無機粉末が、酸反応性無機粉末全量に対して酸化亜鉛を50重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜3に記載の根管充填用シーラー組成物。
  5. (c)酸反応性無機粉末が、さらに酸反応性無機粉末全量に対して酸反応性元素含有ガラス粉末を5〜40重量%含むことを特徴とする請求項4に記載の根管充填用シーラー組成物。
  6. 23℃における操作余裕時間が10分以上であることを特徴とする請求項1〜5に記載の根管充填用シーラー組成物。

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