JP2012167033A - 歯科治療用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
(1)根未完成歯又は根尖孔が拡大している根管に長期間適用しても、ペーストが根尖孔外に流れ出ず、根管内に滞留し、(2)乾綿球等で圧接してもべた付きがなく、(3)貼薬剤として賦形性に優れ、(4)シリンジ容器から強圧をかけずに押し出せ、(5)シリンジ容器内で固化することなく安定である、ワンペーストタイプの水酸化カルシウム又は酸化カルシウム系歯科治療用組成物を提供する。
【解決手段】
水酸化カルシウム又は酸化カルシウム、炭素数7〜28の脂肪酸又はその塩又はそのエステル、及び多価アルコール又はその水溶液を含有する、歯科治療用組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、露髄・断髄面の覆髄や裏装、さらに根管内に暫間充填することにより、乳歯・根未完成歯の感染根管治療時の炎症症状を抑制し、若しくは根未完成歯及び歯根吸収を生じた歯牙の根尖の封鎖、又は穿孔封鎖に優れた効果を発揮する、覆髄材、根管貼薬剤、及び根管充填材組成物等の水酸化カルシウム又は酸化カルシウム系歯科治療用組成物に関する。
従来から、歯内療法時における根管貼薬には、抜髄後、根管内の殺菌、消毒を目的として、ホルマリンクレゾール(FC)、ホルマリングアヤコール(FG)のようなホルムアルデヒドを主成分とする根管消毒薬が用いられてきた。
この根管消毒薬の主成分であるホルムアルデヒドは、蛋白質を凝固させる作用を有しており、抜髄後の根管にFCを貼薬すると残存歯髄の表層にホルムアルデヒドによる凝固壊死層を形成し、種々の刺激から直下の生活組織を保護し、創傷治癒を促進させる。
このようにFCは強力な感染根管消毒薬として、その治療に有効であるが、ホルムアルデヒドの使用そのものに不都合な場合があるといわれている。
例えば、急性化膿性根尖性歯周炎と診断され、拍動性の自発痛を伴い、多くの排膿がみられる症例では、蛋白質の凝固により排膿が阻止され、内圧が上昇し、症状が悪化する可能性がある。また、近年、ホルムアルデヒドは組織剌激性が強く、歯根膜炎を起こすことがあるという報告や、抗原性があり細胞性免疫応答を活発化するという報告もあり、それの生体への使用が問題視されている。
こうした問題に対応して、欧米では40年以前から感染根管治療薬として水酸化カルシウム貼薬が多用されており、現在、日本でも感染根管治療薬としての応用が普及している。
水酸化カルシウム貼薬は、1920年にHermannによって根管治療の目的に応用されてから、現在までに各種の歯内療法処置において多岐にわたり応用されている。
水酸化カルシウムは白色粉末で、その水溶液はpH12.6の強アルカリ性を示し、歯内療法には滅菌精製水、生理食塩水、又はプロピレングリコール(PG)やポリエチレングリコール(PEG)などで練和して応用されていた。
用途としては、とくに硬組織添加促進効果を期待する症例、例えば覆髄材、生活歯髄断髄材、根未完成歯の根尖封鎖(アペキシフィケーション)や穿孔部の封鎖などに応用されている。また、感染根管治療時の炎症症状を抑えるために短期間適用する根管貼薬剤として使用されている。
広義の意味で感染根管と解釈される抜髄症例にも、勿論、積極的に適用されている。
この水酸化カルシウムを根管治療薬として貼薬した場合、組織剌激性が少ないほかに、強アルカリによる殺菌作用、軟組織溶解作用、鎮痛作用、治癒促進作用、浸出液停止作用、歯根吸収抑制作用、硬組織形成誘導作用などがあるといわれている。水酸化カルシウムのほか酸化カルシウムも水と接触すると水酸化カルシウムとなるため、同様の作用を示す。
このように水酸化カルシウムは単なる殺菌剤でなく、炎症を起こした根管−根尖歯周組織系の治癒改善をもたらす薬剤と考えられており、一般に、根管治療薬として水酸化カルシウムを貼薬する場合も同様に、滅菌精製水や生理食塩水で練和してペースト状にして使用されてきた。
水酸化カルシウムを主成分とする乳歯の根管充填材として、商品名:ビタペックス(ネオ製薬工業株式会社)が知られているが、その組成はシリコンオイル(油性基材)、ヨードホルム(X線造影剤、殺菌剤)、水酸化カルシウム(硬組織誘導剤)からなる。
しかし、油性基材の水酸化カルシウム系ペースト材は根管内で吸水しにくいため、直ちに強アルカリ性を示さず、即効的な水酸化カルシウムの貼薬効果は期待できない。
また、この油性基材であるシリコンオイルは、水酸化カルシウムと混合して安定で流れないペーストが維持できる利点を有するものの、生体内で非吸収性であるため正常な新生骨の形成を阻害する欠点が知られている。また、ヨードホルムは長期的に根管内で加水分解を受け、気化性のヨードホルムとホルマリンとなり生体内に蓄積するという全身への問題点もあった。
感染根管治療時の炎症症状を抑えるために短期間充填する水酸化カルシウム系根管貼薬剤としては、生体親和性の成分からなる親水性又は水性ペーストであることが要件となる。
最近では、製剤化した水酸化カルシウム系根管貼薬剤の操作性の向上のために、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの水溶性多価アルコールを基材として配合し、水酸化カルシウム水溶液のペースト化の研究も行われており、さらに、欧米ではメチルセルロースを添加したペースト製剤がシリンジ容器に入れて市販されるようになった。
日本では、特許文献1に記載されている根管治療用の水酸化カルシウム水性ペーストが市販され(商品名:カルシペックスII(日本歯科薬品株式会社))、製剤中で固液分離がなく、根尖狭窄部にまで浸透できる流動性の良い根管貼薬剤として汎用されている。
特許文献1の技術は、通常の根管に適用される流動性の良い水酸化カルシウム水性ペーストであって、長期保管した後にペーストがシリンジ容器内で固液分離を起こし固化するなど、ペーストがシリンジ容器から容易に出なくなる問題点を解消する技術であった。
すなわち、流動性の良いペーストを表現すべく、「予め各成分を真空脱泡攪拌器で充分に練和して、均一のペースト状にした後、シリンジ容器中に充填し、充填して1日後の前記組成物の稠度が、その0.1gをガラス板に採り、その上に重さ6.5gのガラス板を静かにのせ、90秒間放置し、広がったペーストの平行接線間の最大部と最少部の寸法を測定した際、その拡がり平均値が5〜50mmであることを特徴とする」と説明されている。
しかし、乳歯の根管貼薬剤として適用する場合には、歯根吸収により根尖孔が拡大しているため、流動性の良い水性ペーストは根尖孔外に溢出しやすく欠点となるため、逆に流れ出ないペーストを目指した更なる改良が求められていた。
流動性のある水酸化カルシウムペーストを根尖孔外に多量に溢出させた症例では、後継永久歯の形成不全や、重篤な場合は萌出障害を引き起こすことがあるため、乳歯の根管貼薬剤には適さず、むしろ流動性のないペーストが望まれていた。
また水酸化カルシウムの確実な抗菌効果を期待するには2週間程度の経過が必要であり、この期間中、根尖孔外に流れ出ることなく根管内に滞留することが重要となる。
一方、幼若永久歯においては重症齲蝕、外傷あるいは中心結節の破折による歯髄感染から感染根管になることが多い。幼若永久歯は歯根が未完成であり、歯髄が失活した場合は歯根の継続的な生理的形成は期待できない。
したがってこの場合は水酸化カルシウムを長期間の根管貼薬剤として用いることにより、アペキシフィケーションと呼ばれる、根尖孔部を硬組織により閉鎖するような治療方法が行われる。通常アピカルバリアーの形成は平均約6ヶ月後に観察されるといわれている。
水酸化カルシウムが根尖組織と接することが大切であるため、ペーストを根尖部まで過不足なく挿入する注意が必要である。またアペキシフィケーションにおける長期間の根管貼薬剤としての水酸化カルシウムの交換は、アピカルバリアーの形成まで、約1ヶ月後とその後約3ヶ月毎に行うことが推奨されている。但し、根尖病巣が大きく水酸化カルシウムの吸収が早い場合は、交換の間隔を短縮することがある。
また、根未完成歯の症例では、長期間の根管貼薬期間中、ペーストが根尖孔外に流れ出ず、根管内に滞留していることが重要であるため、全く流動しないペーストが必要とされる。
また、覆髄とは歯髄保護の手法であり、間接覆髄と直接覆髄に分類される。間接覆髄は象牙質を介して、外来刺激の遮断や歯髄の炎症を鎮めたり、第三象牙質の形成を促したりすることにより歯髄保護を目的とする。直接覆髄は、感染象牙質除去後の窩洞で偶発的に露髄したもののうち、露髄が小さくかつ細菌感染がないものに対して歯髄保護とデンティン・ブリッジ(硬組織からなる象牙橋)形成誘導のために試みられる。この覆髄にも水酸化カルシウム製剤が用いられている(商品名:カルビタール(ネオ製薬工業株式会社)、ダイカル(デンツプライ三金株式会社)等)が、従来の水酸化カルシウム製剤は、ペーストがべた付きやすく、乾綿球等による賦形性が必ずしも良好でないなど、操作性が必ずしも満足のいくものではないため、覆髄においても全く流動しないペーストが求められている。
流れ出ないペーストは、水酸化カルシウム、増粘材成分(酸化アルミニウム又は酸化チタンの超微粒子)或いはX線造影剤成分などの粉成分の配合比率を上げることで容易に作製することができるが、ペーストが硬くなるため、シリンジ容器から押し出せない、又はシリンジプランジャーが変形・破折するほどの強圧をかけないと押し出せなくなるという問題点があった。
特許文献1の段落[0075]には、水酸化カルシウムや増粘材成分を増量した組成物は、6ヶ月後にはシリンジ容器中で固まっており、シリンジ容器から押し出せなかったと、記載している。
したがって根管内に填入時は、シリンジ容器から強圧をかけずに押し出せるペーストであって、充填直後には拡大している根尖孔から外に流れ出ないペースト特性が必要とされ、シリンジ容器内で長期保管中も固まることがないペースト特性が要求されていた。
特許文献2は、「植物油と、カルシウム又はマグネシウムの酸化物と、X線造影剤あるいは不透過剤を含有するワンペーストタイプの歯科用根管充填材組成物」が記載されている。
その明細書の段落[0021]には、「長期安定性試験の結果、カルシウム又はマグネシウムの化合物としては水酸化物ではなく、酸化物に特定することで長期間安定なペースト製剤とすることが可能となった。」と記載され、比較例として、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを植物油に配合したペーストが、25℃、1年間放置後、シリンジ容器内で固化したことが示されている(比較例1及び2)。
当該比較例の結果は、プラスチックシリンジ容器に充填後のペーストが、シリンジ容器内で吸水し、ケン化反応を起こして根管内又はシリンジ容器内で固化することを示している。
特許文献2に示される技術を利用し、酸化カルシウムを使用して安定なペーストが得られたとしても、覆髄目的として使用した場合には、乾綿球等での賦形性が悪く、操作性に劣るものしか得られない。
特許第3473879号公報 特開2002−173409号公報
そこで、本発明が解決しようとする課題は、(1)根未完成歯又は根尖孔が拡大している根管に長期間適用しても、ペーストが根尖孔外に流れ出ず、根管内に滞留し、(2)乾綿球等で圧接してもべた付きがなく、(3)貼薬剤として賦形性に優れ、(4)シリンジ容器から強圧をかけずに押し出せ、(5)シリンジ容器内で固化することなく安定である、ワンペーストタイプの水酸化カルシウム又は酸化カルシウム系歯科治療用組成物を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究の結果、予め過飽和の水酸化カルシウム又は酸化カルシウムを均一分散させた多価アルコール又はその水溶液(又は水性ペースト)と、脂肪酸又はその塩又はそのエステルを混合し、ペースト製造時にケン化反応を完結させることによって、上記課題を解決した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)水酸化カルシウム又は酸化カルシウム、炭素数7〜28の脂肪酸又はその塩又はそのエステル、及び多価アルコール又はその水溶液を含有する、歯科治療用組成物。
(2)脂肪酸が、炭素数15〜22の脂肪酸である、(1)に記載の歯科治療用組成物。
(3)脂肪酸の塩が、カルシウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、バリウム、及び亜鉛の塩から選ばれる1種又は2種以上である、(1)又は(2)に記載の歯科治療用組成物。
(4)脂肪酸のエステルが、脂肪酸アルキルエステル又は脂肪酸のグリセリンエステルである、(1)又は(2)に記載の歯科治療用組成物。
(5)脂肪酸のグリセリンエステルが植物油である、(4)に記載の歯科治療用組成物。
(6)組成物全量に対し、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムを2〜70質量%、脂肪酸又はその塩又はそのエステルを0.1〜48質量%、多価アルコールを5〜50質量%含有する(1)〜(5)のいずれかに記載の歯科治療用組成物。
(7)さらに、カルシウムシリケートガラス、MTA(Mineral Trioxide Aggregate)、又はケイ酸カルシウムから選ばれる1種又は2種以上を含有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の歯科治療用組成物。
(8)歯内療法に使用する、(1)〜(7)のいずれかに記載の歯科治療用組成物。
(9)歯内療法が、露髄面又は断髄面の覆髄又は裏装、根分岐部又は歯根部における穿孔封鎖、根管充填又は逆根管充填、又はアペキシフィケーションである、(8)に記載の歯科治療用組成物。
(10)乳歯又は根未完成歯の治療に使用する、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の歯科治療用組成物。
(11)水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの多価アルコール分散液と、脂肪酸又はその塩又はそのエステルを混練し、ケン化反応が完結するまで放置することからなる、(1)〜(6)のいずれかに記載の歯科治療用組成物の製造方法。
本発明の歯科治療用組成物のペーストは、(1)根未完成歯又は根尖孔が拡大している根管に長期間適用しても、ペーストが根尖孔外に流れ出ず、根管内に滞留し、(2)乾綿球等で圧接してもべた付きがなく、(3)貼薬剤として賦形性に優れ、(4)シリンジ容器から強圧をかけずに押し出せ、(5)シリンジ容器内で固化することなく安定な優れた性質を有している。そのため、小児歯科の診療において、乳歯の感染根管治療時の炎症症状を抑えたり、又は根未完成歯及び歯根吸収を生じた歯芽の根尖の封鎖や、アペキシフィケーションを図ったりするのに有効であり、また、露髄・断髄面の覆髄や裏装、又は穿孔を封鎖するための歯科治療用組成物に適している。また、歯内療法全般において、露髄・断髄面の覆髄や裏装、若しくは根管充填材として利用することができ、特に外傷性も含め、高度のう蝕による穿孔、加えて何らかの障害により根尖が未完成で根尖孔が開いた永久歯の根管充填材としても優れた性質を有する。
以下、本発明について詳細に説明する。
組成物の主成分である水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの量は、組成物全量に対し2〜70質量%、2質量%以下では、根管内浸出液と反応し、不活性化されるため、十分な治療効果が得られず、70質量%以上ではペーストが硬くなりすぎ、シリンジ容器から出にくくなるため貼薬として好適でない。
炭素数7〜28の脂肪酸としては、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムとケン化反応を起こすものであれば何でもよいが、炭素数15〜22であり、かつ室温付近にて液体であるものが好ましい。炭素数7〜14までであれば、製剤上の問題はないものの、脂肪酸自体の独特で不快な鼻を突く刺激臭があるために好ましくない。
炭素数15〜22の脂肪酸としては、飽和の脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、セロチン酸などが挙げられ、その中でも分岐脂肪酸が好ましく、イソステアリン酸が最も好ましい。不飽和の脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、アラキドン酸、クルパノドン酸などが好ましい。
さらに、これらの遊離酸に限定されることなく、水酸化カルシウム又は酸化カルシウム存在下でカルシウムイオンとイオン交換可能なリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、バリウム、亜鉛等の金属塩、又は脂肪酸のエステルも使用することが可能である。
脂肪酸のエステルとしては、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムとケン化反応を起こすものであれば何でもよいが、例えば、脂肪酸アルキルエステル又は脂肪酸のグリセリンエステル等が挙げられる。
脂肪酸アルキルエステルとしては、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸プロピルエステル、脂肪酸ブチルエステル等が挙げられる。
脂肪酸のグリセリンエステルは、植物油であってもよく、植物油としては、天然物由来成分であれば何でもよく、オリブ油、落花生油、ナタネ油、大豆油、ベニバナ油、綿実油、コーン油、月見草油等が挙げられる。
例えば、根管充填材としての理想的なペースト稠度は、シリンジ容器に充填し鈍針を装着して押し出すとき、その抵抗値が高すぎず、根管内で流れない稠度であり、これを満足するための脂肪酸又はその塩又はそのエステルの含有量は、0.1〜48質量%であることが好ましい。脂肪酸が液体の場合、多量に使用すると分離するので、0.1〜10.0質量%程度とすることが好ましい。
多価アルコールは、組成物全体を親水化するための成分であり、組成物が吸水したときに水酸化カルシウム又は酸化カルシウムが解離して強アルカリを呈することができるように配合されるものであって、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムをペースト状に調製するための基材でもある。多価アルコールとしては、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの効果を阻害しないものであれば何でもよく、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示され、含有量は5〜50質量%である。
本発明の歯科治療用組成物には、その他の添加剤として、水、増粘材、X線造影剤、及び生理活性物質等、通常の添加剤を配合してもよい。
水を添加すれば、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムが解離して強アルカリを呈するため、ペースト自体を最初からアルカリ性に調整することができる。長期保管時の乾燥を懸念した必要な水分量として、30質量%までの範囲で添加することができる。
増粘材としては、超微粒子の酸化アルミニウム、酸化チタンあるいは二酸化ケイ素の何れか一つ、又は、複数選択して前記組成物に20質量%まで添加することができる。
また、X線造影剤としては、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、ジルコニア、酸化亜鉛、またはX線造影性を有する成分を含有する粉末ガラス(例えばランタンガラス、バリウムガラス、ジルコニアガラス)等が例示される。通常、X線造影剤は、根管充填材の組成には必須成分である。さらには、生理活性ガラス、生物活性セラミック/セメント(例えばカルシウムシリケートガラス、MTA(Mineral Trioxide Aggregate)、ケイ酸カルシウム)等を添加することができる。これら生理活性物質は充填後、接触した組織液のリン酸イオン成分と徐々に反応し、接触界面に硬組織様の結晶(ハイドロキシアパタイト)を生成して封鎖性を向上することを、擬似体液を使用して確認している。したがって歯髄細胞や歯根膜細胞などにも害がなく、覆髄、穿孔封鎖、根管充填、逆根管充填、アペキシフィケーションなどの適用界面に好ましい封鎖性を付与することができる。これら生理活性物質の組成物への添加量は、15〜40質量%であり、20〜30質量%が好ましい。
本発明の歯科治療用組成物は、予め過飽和の水酸化カルシウム又は酸化カルシウムを均一分散させた多価アルコール又はその水溶液(又は水性ペースト)と、脂肪酸又はその塩又はそのエステルを自動乳鉢で均一に混練し、40〜60℃下24時間放置してケン化反応を完結させた後、再度、均一に混練し、全く流れない稠度のペーストとして調製することができる。
本発明のペーストはシリンジ容器から直接、根管内に楽に注入できる稠度を有し、乾綿球で圧接してもべた付きがない良好な一剤型ペーストである。
またこのペーストは、根尖部が拡大した根管に適用しても、全く流れ出ないペースト稠度を維持している。
本発明の歯科治療用組成物は、上記のとおりに作製したペースト状の練和物であり、これをシリンジ容器に充填し、製品として提供する。適用時には、18〜20ゲージの鈍針を装着し、直接根管内に充填する。根尖部が拡大した症例に適用する場合には、鈍針は細い針を用いる必要はない。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
表1に、実施例1〜20及び比較例1〜5の組成を示す。これらの各成分を混練して得られたペーストを1mlプラスチックシリンジ容器に充填し、下記のような試験を行い評価した。
《ペーストの流れ出し試験》
プラスチック製円柱チューブ(内径:2mm)にペーストを充填し、上下がペースト面になる状態で温度37℃、相対湿度100%にて24時間放置し、ペースト面が下降するかどうか確認した(○:流れ出ない、×:流れ出る)。
《シリンジ容器からの押し出し試験》
プラスチックシリンジ容器の先端に21ゲージの鈍針を装着して、小型卓上精密万能試験機を用いてクロスヘッドスピード20mm/minで10mmまで変位させることで、ペーストがシリンジ容器から容易に出るかどうか確認した(○:可能、×:不可能)。
《乾綿球による圧接時のべた付き試験》
少量のペーストを乾綿球で圧接し、ペーストのべた付きがあるかどうか確認した(○:べた付かない、×:べた付く)。
《ペーストの安定維持試験》
プラスチックシリンジ容器に充填したペーストを40℃下30日間保管した後、ペースト性状を目視により確認した(○:安定、×:不安定)。
《擬似体液浸漬による硬組織様結晶の析出確認》
アクリル樹脂製の板(15mm×15mm)に深さ0.5mmの凹部を作製し、ペーストを充填してPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムで圧接を行った。PETフィルムを除去後、下記の組成で調合した擬似体液30mlを入れたポリプロピレン製シール容器に、アクリル型から外さずに、そのままペースト面が上になるように静かに浸漬して密封し、温度37℃で30日間静置した。その後、新鮮な水に浸して引き上げる操作を3回繰り返して行った後、目視で析出物の有無を確認し、光学顕微鏡または電子顕微鏡で表面析出物の形態を観察した。また、表面析出物は粉末X線回折装置で分析を行い、析出した結晶の物質特定を行った(○:析出あり、×:析出なし)。なお、この試験は生理活性物質を含む実施例16〜18の組成物に対してのみ実施した。
擬似体液は、体組織液を模して表3の組成で調合した。
表2に各試験結果を示す。同表に示すように、実施例1〜20においては、ペーストは流れ出すことがなく充填直後の状態を維持しており、同時にシリンジ容器からの押し出し、乾綿球による圧接操作、ペーストの安定維持についてすべて満足できるものであった。また、実施例16〜18では、表面に硬組織様の結晶が析出しており、粉末X線回折装置による分析の結果、その結晶はハイドロキシアパタイトであることを確認した。
これに対して比較例1は稠度が低すぎてペーストが流れ出し、乾綿球で圧接することはできなかった。脂肪酸又はその塩又はそのエステルを配合していないために、水酸化カルシウムとのケン化反応が起こらない結果であると思われる。
比較例2では、水酸化カルシウムが多すぎるために、ペースト状態に調製できなかった。
また、比較例3は多価アルコールが少なすぎるために、ペースト稠度が高すぎて、鈍針を取り付けたプラスチックシリンジ容器から押し出すことは困難であった。
比較例4は、流れ出すことはないものの、多価アルコールが多すぎるために、軟らかくべた付きが大きいペーストであった。
さらに、比較例5では脂肪酸塩が多すぎるために、鈍針を取り付けたプラスチックシリンジ容器から押し出すことは不可能であった。
このように各比較例で挙げた歯科治療用組成物は、それぞれ本発明の実施例のように、全く流れないペースト稠度で根尖孔外に流れ出すことがなく、シリンジ容器から強圧をかけずに押し出すことができ、乾綿球で圧接してもべた付かず、賦形性に優れ、さらに、プラスチックシリンジ容器に充填した状態で長期間放置しても安定したペースト状態を維持できるものではなかった。
Figure 2012167033
Figure 2012167033
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Claims (11)

  1. 水酸化カルシウム又は酸化カルシウム、炭素数7〜28の脂肪酸又はその塩又はそのエステル、及び多価アルコール又はその水溶液を含有する、歯科治療用組成物。
  2. 脂肪酸が、炭素数15〜22の脂肪酸である、請求項1に記載の歯科治療用組成物。
  3. 脂肪酸の塩が、カルシウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、バリウム、及び亜鉛の塩から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の歯科治療用組成物。
  4. 脂肪酸のエステルが、脂肪酸アルキルエステル又は脂肪酸のグリセリンエステルである、請求項1又は2に記載の歯科治療用組成物。
  5. 脂肪酸のグリセリンエステルが植物油である、請求項4に記載の歯科治療用組成物。
  6. 組成物全量に対し、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムを2〜70質量%、脂肪酸又はその塩又はそのエステルを0.1〜48質量%、多価アルコールを5〜50質量%含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯科治療用組成物。
  7. さらに、カルシウムシリケートガラス、MTA(Mineral Trioxide Aggregate)、又はケイ酸カルシウムから選ばれる1種又は2種以上を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科治療用組成物。
  8. 歯内療法に使用する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科治療用組成物。
  9. 露髄面又は断髄面の覆髄又は裏装、根分岐部又は歯根部における穿孔封鎖、根管充填又は逆根管充填、又はアペキシフィケーションに使用する、請求項8に記載の歯科治療用組成物。
  10. 乳歯又は根未完成歯の治療に使用する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯科治療用組成物。
  11. 水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの多価アルコール分散液と、脂肪酸又はその塩又はそのエステルを混練し、ケン化反応が完結するまで放置することからなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科治療用組成物の製造方法。















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