JP2015220359A - 半導体ウェーハの温度制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の温度調整手段により半導体ウェーハの温度調整するために、前記複数の温度調整手段の温度制御を行う半導体ウェーハの温度制御装置において、マスターループML及びスレーブループSLに操作量を与える操作量演算手段30は、マスターループMLの目標温度に対して、温度勾配を持たせてスレーブループSLの目標温度が設定された際、マスターループML及びスレーブループSLを切り替えるマスタースレーブ切り替え手段37と、マスターループML及びスレーブループSLの設定を解除するマスタースレーブ解除手段37を備えている。
【選択図】図3
Description
このため、それぞれ温度調整手段に対して独立した制御ループを設け、複数の温度調整手段によって半導体ウェーハを同時に温度制御する方法が知られている。
このような半導体ウェーハの温度制御では、それぞれの制御量を基準となる制御量に対して一定の偏差を維持しながら、目標値に到達させるとともに、外乱下においても目標値を維持することが必要であり、従来、マスタースレーブ制御法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
マスタースレーブ制御法は、複数の制御ループの内の一つをマスターとして制御し、残りのループはマスターループの制御量に追従するように、マスターループの制御量を目標値としてスレーブの制御量との偏差を算出して制御する方法である。
マスターループは、最も応答の遅い制御ループとし、他の制御ループをこれに追従させるスレーブループとするのが通常である。
この場合、プレート中央のゾーンの目標温度を高く設定し、プレート端部のゾーンの目標温度を低く設定する必要があるが、マスターループの温度調整手段の温度の目標値に対して、スレーブ側の温度調整手段に適切なオフセット温度を設定して、加減してやればよい。
すなわち、加熱の際にマスターループが最も高い目標温度に設定された場合、スレーブループは、マスターループの目標温度に対して一定のオフセットを持たせた目標温度に設定されるので、加熱開始時、マスターループが加熱方向に動き始めた際、スレーブループは一定のオフセットを持たせようとして、マスターループに対して一時的に冷却方向に作用するという問題がある。
また、例えば、3つのゾーンの温度がそれぞれの目標温度(SV1,SV2,SV3)=(10℃,20℃,30℃)で整定し定常となった後目標温度を(SV1,SV2,SV3)=(30℃,20℃,10℃)と反転させた場合、真ん中のゾーンの温度は目標温度SV2が変わらないにも拘わらず、切り替えた瞬間にぶれが生じてしまうという問題がある。これらの問題は、目標温度への整定により多くの時間がかるため、スループットに悪影響を及ぼす事となる。
基準となる温度調整手段の温度制御を行うマスターループと、
このマスターループに追従するように他の温度調整手段の温度制御を行うスレーブループと、
前記マスターループの温度調整手段で温度調整された半導体ウェーハの温度を検出するマスター温度検出手段と、
前記スレーブループの温度調整手段で温度調整された半導体ウェーハの温度を検出するスレーブ温度検出手段と、
前記マスター温度調整手段で検出された温度、及び、前記スレーブ温度検出手段で検出された温度に基づいて、前記マスターループの温度調整手段に与える操作量、及び、前記スレーブループに与える操作量を演算する操作量演算手段とを備え、
前記操作量演算手段は、
目標温度変更時の前後の目標温度設定の状況に応じて、前記マスターループ及び前記スレーブループの切り替えを行うマスタースレーブ切り替え手段と、
前記マスターループ及び前記スレーブループの設定を解除するマスタースレーブ解除手段とを備えていることを特徴とする。
前記マスタースレーブ切り替え手段は、
加熱制御においては、目標温度の最も低いループをマスターループに切り替え、冷却制御においては、目標温度の最も高いループをマスターループに切り替えることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、
前記スレーブループを2以上有し、前記マスターループ及び2つの前記スレーブループ間には3段階以上の温度勾配が設定され、
前記マスタースレーブ解除手段は、設定された3段階以上の温度勾配が温度制御中に反転した際、マスターループの設定を解除することを特徴とする。
[1]温度調整装置1の構成
図1には、本発明の第1実施形態に係る温度調整装置1が示されている。温度調整装置1は、プレート状のステージ2上に載置されたシリコンウェーハWの温度を目標温度に制御し、シリコンウェーハWの面内の温度分布を制御するための装置である。この温度調整装置1は、たとえばドライプロセスに使用される。
温度調整装置1は、プレート状のステージ2であり、温度調整手段3を備えている。尚、温度調整手段3としては、加熱冷却制御を行う場合は、チラー装置や熱電素子を採用するのが好ましく、専ら加熱制御だけの場合は、加熱用ヒータを採用することができる。
ドライプロセス時には、真空チャンバー4内は真空引きされ、所定の低圧状態に維持される。
ステージ2内には、図2(A)、(B)に示されるように、ステージ2上に載置されたシリコンウェーハWの面内温度分布を調整できるように、複数の温度調整手段3が配置されている。
図2(B)は、ステージ2の平面図であり、ステージ2は、同心円状に3つのゾーン2A、2B、2Cに分割され、各領域に温度調整手段3が配置される。また、プレート5内の温度センサ6は、温度調整手段3に応じた位置に配置される。
コントローラ24は、前述したように、温度センサ6で検出された温度に基づいて、温度調整手段3(マスター側3M、スレーブ側3S)を制御し、図3に示されるブロック図のように機能的に構成されている。
また、マスタースレーブ制御系においては、マスター側の制御量に対してスレーブ側の制御量を追従させることにより、温度分布制御を行うことが目的となる。従って、通常、最も応答が遅いループによって制御系の最大応答速度の制約を受けるため、各ゾーン2A、2B、2Cの温度を同じ目標温度に対して均一に制御する場合、最も応答の遅いループをマスターループMLに設定する。
この操作量演算手段30は、マスター偏差算出部31M、スレーブ偏差算出部31S、マスター制御演算部32M、スレーブ制御演算部32S、操作量変換部33、マスター操作量制限部34M、スレーブ操作量制限部34S、ゾーン2Bの目標値設定部35、ゾーン2Aの目標値設定部36、マスタースレーブ解除部、マスタースレーブ切り替え部、及び内部目標温度計算部としてのスーパーバイザー37を備える。ここで内部目標温度とは目標温度設定部で設定される各ゾーンの目標温度を使用してスーパーバイザー37で計算されるマスタースレーブ制御用の目標温度である。マスタスレーブが解除された状態では目標温度と内部目標温度は同じになる。
スレーブ制御演算部32Sも同様に、演算結果Usを、操作量変換部33に出力する。
同様に、スレーブ操作量制限部34Sは、温度調整手段3Sが最小出力及び最大出力を超えないように、操作量を制限させる部分であり、操作量が飽和したと判定されたら、その旨の判定信号awsをスレーブ制御演算部32Sに出力する。スレーブ操作量制限部34Sの出力は、温度調整手段3Sに操作量MVsとして出力される。判定信号awm及びawsはそれぞれの制御演算部でアンチワインドアップ起動信号として用いられる。
このスーパーバイザー37は、後述するフローチャートにもあるように、内部目標温度を偏差算出部31M、31Sに出力する前に、マスタースレーブ切り替え及び解除処理、変換行列切り替え処理を終了しておく。制御演算部32M、32Sでは、偏差算出部31M、31Sで計算された偏差に基づいて通常の出力計算を行うが、マスタースレーブの切り替え、及び解除指令に従ってバンプレスに切り替える処理を加える。
H=S×D
すなわち、スーパーバイザー37は、変換行列Sを切り替えることとなる。例えば3ゾーンの場合、以下のようになる。
3入力3出力系の操作量変換部33の出力は、図4(A)のように、マスターループをゾーン1、スレーブループをゾーン2及びゾーン3とし、切り替え前の定常状態での各コントローラの出力をU1、U2、U3とすると、操作量変換部33の出力は、変換行列Hの内部で状態変換後、非干渉化行列Dによって非干渉化される。切り替え前の操作量変換部33の出力U1、U2、U3が状態変換されると、各ゾーンの出力は以下のようになる。
ゾーン1:U1
ゾーン2:U2+U1・・・・(5)
ゾーン3:U3+U1
ゾーン1:V1+V3
ゾーン2:V2+V3・・・・(6)
ゾーン3:V3
V3=U3+U1
となる。
ゾーン1は、V1+V3=U1より、
V1=U1―V3=U1―(U3+U1)=−U3・・・(7)
となる。
また、ゾーン2は、V2+V3=U2+U1より、
V2=U2+U1−V3=U2+U1−(U3+U1)=U2−U3・・・(8)
と表すことができる。他の切り替えについても同様の考え方でバンプレス切り替えが実現できる。
以下のPIDアルゴリズムにおける各記号は、以下を意味する。
MV1k_1、Kp_1、errk_1:ゾーン1の比例項の値、比例ゲイン、偏差
MV1k_2、Kp_2、errk_2:ゾーン2の比例項の値、比例ゲイン、偏差
MV1k_3、Kp_3、errk_3:ゾーン3の比例項の値、比例ゲイン、偏差
MV2k_1、MV3k_1、Ki_1:ゾーン1の今回の積分項の値、前回の積分項の値、積分時間
MV2k_2、MV3k_2、Ki_2:ゾーン2の今回の積分項の値、前回の積分項の値、積分時間
MV2k_3、MV3k_3、Ki_3:ゾーン3の今回の積分項の値 前回の積分項の値 積分時間
istop1、istop2、istop3:各ゾーンのアンチワインドアップ指令
buf:バッファ(一時退避)
MVfinal_1:ゾーン1操作量
MVfinal_2:ゾーン2操作量
MVfinal_3:ゾーン3操作量
% P項の計算
MV1k_1 = Kp_1*errk_1;
MV1k_2 = Kp_2*errk_2;
MV1k_3 = Kp_3*errk_3;
% I項の計算
MV2k_1 = MV3k_1+Kp_1*Ki_1*errk_1;
MV2k_2 = MV3k_2+Kp_2*Ki_2*errk_2;
MV2k_3 = MV3k_3+Kp_3*Ki_3*errk_3;
% アンチワインドアップ
if(istop_1==1 )
MV2k_1 = MV3k_1;
end
if(istop_2==1 )
MV2k_2 = MV3k_2;
end
if(ゾーン3のマスタースレーブを解除する場合)
MV2k_1 = MV3k_1+MV3k_3;
MV2k_2 = MV3k_2+MV3k_3;
MV2k_3 = MV3k_3;
MVfinal_1 = MV2k_1;
MVfinal_2 = MV2k_2;
MVfinal_3 = MV2k_3;
if(ゾーン1のマスタースレーブを解除する場合)
MV2k_1 = MV3k_1;
MV2k_2 = MV3k_2+MV3k_1;
MV2k_3 = MV3k_3+MV3k_1;
MVfinal_1 = MV2k_1;
MVfinal_2 = MV2k_2;
MVfinal_3 = MV2k_3;
MV2k_1 = MV3k_1-MV3k_3;
MV2k_2 = MV3k_2-MV3k_3;
MV2k_3 = MV3k_3;
MVfinal_1 = MV2k_1;
MVfinal_2 = MV2k_2;
MVfinal_3 = MV2k_3;
else if(解除状態からゾーン1をマスターとする場合)
MV2k_3 = MV3k_3-MV3k_1;
MV2k_2 = MV3k_2-MV3k_1;
MV2k_1 = MV3k_1;
MVfinal_1 = MV2k_1;
MVfinal_2 = MV2k_2;
MVfinal_3 = MV2k_3;
buf = MV3k_1;
MV2k_1 = MV3k_1+MV3k_3;
MV2k_2 = MV3k_2-buf;
MV2k_3 = -buf;
MVfinal_1 = MV2k_1;
MVfinal_2 = MV2k_2;
MVfinal_3 = MV2k_3;
else if(ゾーン1からゾーン3をマスターとする場合)
buf = MV3k_3;
MV2k_3 = MV3k_3+MV3k_1;
MV2k_2 = MV3k_2-buf;
MV2k_1 = -buf;
MVfinal_1 = MV2k_1;
MVfinal_2 = MV2k_2;
MVfinal_3 = MV2k_3;
else(切換の無い場合)
MVfinal_1 = MV1k_1+MV2k_1;
MVfinal_2 = MV1k_2+MV2k_2;
MVfinal_3 = MV1k_3+MV2k_3;
end
次に、本実施形態の作用を図5に示されるフローチャートに基づいて説明する。尚、以下の説明では、ゾーン3をマスターループMLとして説明する。
まず、スーパーバイザー37は、ゾーン2Bの目標温度設定部35及びゾーン2Aの目標値設定部36における目標温度を確認し(手順S1)、目標温度の変更があったか否かを判定する(手順S2)。
目標温度に変更がない場合、スーパーバイザー37は、前回の状態を保持する(手順S11)。
目標温度に変更があった場合、スーパーバイザー37は、変更後の目標温度を確認する(手順S3)。
各ゾーンの目標温度の変更パターンが、均一から均一である場合、スーパーバイザー37は、設定を変更することなくゾーン3のマスターループ設定を維持する(手順S5)。
各ゾーンの目標温度の変更パターンが、均一から勾配の状態に、又は勾配から均一の状態に変更されている場合、スーパーバイザー37は、加熱制御であるのか、冷却制御であるのかを判定する(手順S6)。
加熱制御である場合、スーパーバイザー37は、最も低い目標温度に設定されたゾーンをマスターループMLに設定する(手順S7)。一方、冷却制御である場合、スーパーバイザー37は、最も高い目標温度に設定されたゾーンをマスターループMLに設定する(手順S8)。
各ゾーンの目標温度の変更パターンが、勾配の状態から勾配の状態に変更されている場合、スーパーバイザー37は、勾配が反転されているか否かを判定する(手順S9)。
勾配の状態が反転されている場合、スーパーバイザー37は、マスタースレーブの設定を解除する(手順S10)。
一方、勾配の状態が非反転である場合、前回の状態を保持する(手順S11)。
続けて、スーパーバイザー37は、変換行列切り替え指令を操作量変換部33に出力する(手順S13)。
最後にスーパーバイザー37は、それぞれのゾーンにおける内部目標温度を計算し、偏差計算部31、制御演算部32M、32Sに出力する(手順S14)。
各ゾーンの偏差計算部31は、スーパーバイザー37から出力された内部目標温度に基づいて、偏差を計算し(手順S15)、制御演算部32はPID制御におけるP項、I項、D項を計算する(手順S16)。
各ゾーンの制御演算部32は、スーパーバイザー37から出力された指令に基づいて、マスタースレーブの切り替え、解除処理を実行する(手順S17)。
各ゾーンの制御演算部32は、操作量を計算して操作量変換部33に出力する(手順S18)。
操作量変換部33は、スーパーバイザー37から出力された変換行列切り替え指令に基づいて、変換行列の切り替えを行う(手順S19)。
[4-1]シミュレーションにおける制御システムの構成
3入力3出力系のマスタースレーブ制御を、図6に示した制御システムをモデル化したシミュレーション結果を例に説明する。この制御システムは、図7に示されるように、400×150×t4のアルミプレートの温度を制御するシステムであり、アクチュエータとして加熱・冷却可能なサーモモジュールを、3個を使用している。アルミプレートの温度はモジュールの近くに配した3つのK熱電対によって測定する。サーモモジュール及び熱電対はプレート長手方向に対してわざと非対称になるように配置しており図7にその寸法詳細を示す。左からゾーン1、2、3とする。各ゾーンの動特性を表1に示す。ただし、本説明では説明を簡単にするため冷却側のゲインは加熱側ゲインの1/3、時定数、無駄時間は加熱側と同じとする。
従来のマスタースレーブ制御を実現できるコントローラは、図8に示されるように、最も応答の遅い制御ループをマスターループMLとして設定し、他の制御ループをスレーブループSLとして設定し、スレーブループSLをマスターループに追従するように制御している。
これは、すべての目標温度を均一に設定した場合、応答速度の遅い制御ループが他の制御ループに追従できないからである。
この場合スレーブ側の目標値に適切なオフセット温度を加減してやればよいが、従来型のようにマスターループMLを固定して使用すると次のような問題が生じる。
図9(A)には、各ゾーンの目標温度を0℃から、
(SV1,SV2,SV3)=(10℃,20℃,30℃)
と設定した場合のシミュレーションによる目標値応答の結果が示されている。
また、図9(B)には、各ゾーンの目標温度を30℃から、
(SV1,SV2,SV3)=(30℃,20℃,10℃)
と設定した場合のシミュレーションによる目標値応答の結果が示されている。
いずれの場合も加熱(冷却)開始時にゾーン1が逆応答を示しており、その結果立ち上がり時間に無駄を生じている。これは加熱時(冷却時)に目標温度が一番高い(低い)ゾーンをマスターループMLにしているためである。例えば、加熱開始によってマスターループMLが加熱方向に動き始めたときスレーブループSLは、マスターループMLに対して、オフセットを持たせようとするのでマスターループMLに対して、一時的に冷却方向に作用する。通常、マスターループMLは、スレーブループSLより応答が遅いためよりその現象がさらに顕著となる。
図10には、各ゾーンの目標温度が、
(SV1,SV2,SV3)=(30℃,20℃,10℃)
で定常となっている状態で、時刻1000秒に目標温度を、
(SV1,SV2,SV3)=(10℃,20℃,30℃)
切り替え、さらに、時刻2000秒に目標温度を、
(SV1,SV2,SV3)=(30℃,20℃,10℃)
に切り替えた時の応答が示されている。
マスターループMLはゾーン3である。ゾーン2は、目標温度が常に20℃であるにもかかわらず、目標温度を切り替えるたびに大きな変動が生じている。
例えば、マスターループMLがゾーン3で、各ゾーンの目標温度が、
(SV1,SV2,SV3)=(30℃,20℃,10℃)
の場合、ゾーン3の内部目標温度はマスターのため10℃だが、スレーブとなるゾーン2の内部目標温度はゾーン3の内部目標温度に対してオフセット量が+10℃となるため、+10℃、同様にゾーン1の内部目標温度はゾーン3の内部目標温度に対してオフセット量が+20℃となるため+20℃となる。
(SV1,SV2,SV3)=(10℃,20℃,30℃)
に切り替えた場合、ゾーン3の内部目標温度は30℃となるため、上記と同様に考えればゾーン2の内部目標温度は、−10℃、ゾーン1の内部目標温度は、−20℃となる。
このため目標温度切り替え前後でゾーン2の目標温度は20℃のままであるにも拘わらず、内部目標温度は+10℃から−10℃に切り替わっている。すなわち、目標温度が切り替わった瞬間、偏差が+10−(−10)=20℃発生し、操作量として制御対象に影響を与えるのである。
以上説明したとおり、従来型のマスタースレーブ制御ではマスターループ、スレーブループが固定されていることによって、上記のような問題が生じ、実プロセスにおいてはスループットの悪化につながる。
例えば、前記の図9(A)、(B)で説明した例では、図9(A)の加熱制御では、目標温度の一番低い、図9(B)の冷却制御では、目標温度の一番高いゾーン1をマスターループMLに設定する。
これにより、加熱制御の場合はゾーン1が下からゾーン2,3を押し上げるように加熱することになり、また冷却制御の場合も上から押し下げるように冷却することとなる。
すなわち、すべてのゾーンが同じ方向に応答しようとするので、より安定した応答が得られる。
図11(A)、(B)には、図9(A)、(B)と同じ条件でゾーン1をマスターループMLにした結果が示されている。ゾーン3がマスターループMLの場合に比較して、安定した応答となっているのがわかる。
解除することによって目標温度と内部目標温度が一致し、勾配反転時に発生する偏差の急激な変化が緩和され、応答への影響が軽減される。
図9には、図10の場合と同じ条件でマスタースレーブを解除した場合の結果が示されている。ゾーン2のオーバーシュート、アンダーシュートが大幅に緩和されているのがわかる。
以上のように、前述の方法により、目標値応答中の逆応答や応答の乱れが緩和されるので、実プロセスにおいてスループットが向上するということが、シミュレーションによって確認された。
Claims (3)
- 複数の温度調整手段により半導体ウェーハの温度調整するために、前記複数の温度調整手段の温度制御を行う半導体ウェーハの温度制御装置であって、
基準となる温度調整手段の温度制御を行うマスターループと、
このマスターループに追従するように他の温度調整手段の温度制御を行うスレーブループと、
前記マスターループの温度調整手段で温度調整された半導体ウェーハの温度を検出するマスター温度検出手段と、
前記スレーブループの温度調整手段で温度調整された半導体ウェーハの温度を検出するスレーブ温度検出手段と、
前記マスター温度検出手段で検出された温度、及び、前記スレーブ温度検出手段で検出された温度に基づいて、前記マスターループの温度調整手段に与える操作量、及び、前記スレーブループに与える操作量を演算する操作量演算手段とを備え、
前記操作量演算手段は、
目標温度変更時の前後の目標温度設定の状況に応じて前記マスターループ及び前記スレーブループの切り替えを行うマスタースレーブ切り替え手段と、
前記マスターループの目標温度に対して、温度勾配を持たせて前記スレーブループの目標温度が設定された際、前記マスターループ及び前記スレーブループの設定を解除するマスタースレーブ解除手段とを備えていることを特徴とする半導体ウェーハの温度制御装置。 - 請求項1に記載の半導体ウェーハの温度制御装置において、
前記マスタースレーブ切り替え手段は、
加熱制御においては、目標温度の最も低いループをマスターループに切り替え、冷却制御においては、目標温度の最も高いループをマスターループに切り替えることを特徴とする半導体ウェーハの温度制御装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の半導体ウェーハの温度制御装置において、
前記スレーブループを2以上有し、前記マスターループ及び2つの前記スレーブループ間には3段階以上の温度勾配が設定され、
前記マスタースレーブ解除手段は、設定された3段階以上の温度勾配が温度制御中に反転した際、マスターループの設定を解除することを特徴とする半導体ウェーハの温度制御装置。
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