JP2015218154A - 有機金錯体 - Google Patents

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Abstract

【課題】、無電解及び電解めっき液の金供給源として有用なシアンを含まない有機金錯体を提供することを目的とする。
【解決手段】下記の一般式(1)
【化1】

(1)

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、−CH、−OCH、−NOである)で表される金イオンに2−ベンズイミダゾールチオール類を配位させてなる有機金錯体。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子部品等への電解めっき及び無電解めっきの原料として用いられるシアンを含まない有機金錯体に関する。
従来、一般に電解めっき、無電解めっき法で用いられる金めっき用金塩としては、NaAu(CN)(シアン化第一金ナトリウム)、NaAu(CN)(シアン化第二金ナトリウム)、KAu(CN)(シアン化第一金カリウム)、KAu(CN)(シアン化第二金カリウム)及びNH4Au(CN)(シアン化第一金アンモニウム)等のアルカリ金属のシアン化金塩やシアン化金アンモニウム塩が用いられている。
これらシアン化金塩の中でも溶解度の関係で金めっき液用としては、シアン化第一金カリウムが多用されている。
しかし、シアン化第一金カリウム等のシアン系金塩は毒性が強いことから作業安全、排水処理の観点から好ましくないという問題がある。また、シアン系金めっき液を使用した場合、めっき液中に存在するシアンイオンが各種金めっき反応に影響を及ぼす可能性がある。
金めっき浴中へ配合するシアン化カリウムの添加量を減らす手段として例えば、シアン化第一金カリウムを使用して金めっき液を調製する際に通常使用されるクエン酸カリウムとクエン酸の粉末を混合することによって粉末状のクエン酸酸性カリウム塩を生産し、これに水を加えた粉末状シアン化第一金カリウムと混合し、シアン化第一金カリウムとクエン酸酸性カリウムとの混合結晶とされるクエン酸金カリウムを製造し、得られたクエン酸金カリウムである金塩を金めっき液の金塩として使用することが知られている(例えば、特許文献1)。
また、塩化第二金溶液を80〜85℃に維持し、これにクエン酸カリウム溶液を滴下し、さらにエチレンジアミン四酢酸溶液を添加し、残りのクエン酸カリウム溶液とマロノ二トリル溶液を滴下し溶液のpHを8〜9に調製して合成反応を終了後、冷却して得られた白色沈殿をろ過、乾燥し、めっき用クエン酸金カリウムの製造方法も知られている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、これらクエン酸金カリウムを用いた金めっき液は、金めっき特性で従来のシアン化第一金カリウムに劣っていたり、大量製造が困難であったりと満足されるものではなかった。
CN101781784 A 公報 CN101172946 B 公報
本発明は、無電解及び電解めっき液の金供給源として有用なシアンを含まない有機金錯体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するためシアンを含まない有機金錯体について鋭意検討を行なった結果、塩化金酸から合成される塩化第一金、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩化物および2−ベンズイミダゾールチオール類を水溶液中に懸濁後、アルゴンガス又は窒素ガス等の不活性ガスの存在下、pH7.0〜13.5、温度10℃〜90℃の条件にて反応させ、反応終了後、析出した結晶をアルコールにてカラム精製することにより得られた白色粉末状結晶は、シアンを含まない有機金錯体であり、これを金めっき液の金塩として使用した結果めっき浴中にシアンイオンが全く含まれず、めっき特性に優れた金被膜が得られることを知見し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の内容をその発明の要旨とするものである。
(1)下記の一般式(1)
(1)

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、−CH、−OCH、−NOである)で表される金イオンに2−ベンズイミダゾールチオール類を配位させてなる有機金錯体。
(2)2−ベンズイミダゾールチオール類が2−ベンズイミダゾールチオールである請求項1に記載の有機金錯体。
本発明の一般式(1)で表される有機金錯体は、無電解及び電解めっき法の金めっき浴の金源として使用すると、めっき浴中に全くシアンイオンを含まないので作業時の危険性が大幅に改善される。また、排液にシアンイオンが全く含まれない為、環境負荷の少ない金めっき液の作製が可能であるのでその工業的利用価値大である。
以下、本発明の有機金錯体について詳細に説明する。
本発明において用いられる塩化第一金を製造する方法としては、金を王水にて溶解し、加熱濃縮後、加熱したまま塩酸を添加して脱硝酸をする。その後、濃縮して塩化金酸を得る。これを高真空中の条件下で100℃に加熱し、完全に水分を除去後、160℃以上加熱して分解させる事により製造する。
上記の方法により得られた淡黄色結晶の塩化第一金を純水に添加して攪拌する。そこに、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩と2−ベンズイミダゾールチオール類を加え攪拌して混合液とする。
上記の2−ベンズイミダゾールチオール類としては、例えば、2−ベンズイミダゾールチオール、5−メチルベンズイミダゾールチオール、5−ニトロベンズイミダゾールチオールおよび5−メトキシ2−ベンズイミダゾールチオール等が挙げられる。
この混合液に窒素ガス又はアルゴンガスなどの不活性ガスをバブリングしながら水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加してpHを7.0〜13.5に調整する。更に不活性ガスのバブリングおよび攪拌を継続しながら反応系を10℃〜90℃好ましくは75℃〜90℃に数時間保ち反応を促進する。
結晶が析出したら反応系を30℃以下に冷却し、濾別して析出した結晶を得る。得られた結晶は120℃以下で乾燥する。次いで、結晶をエタノール等のアルコールにて溶解し、カラムにて分離後、真空濃縮にて結晶を析出させることにより精製を行なう。更に精製した結晶を120℃以下で乾燥して有機金錯体の結晶を得る。
本発明の有機金錯体の生成反応は、下記反応式によって進行するものと考えられる。


















上記の方法で2−ベンズイミダゾールチオール類として2−ベンズイミダゾールチオールを用いて合成して得られた白色結晶を成分分析した結果、理論値と略一致する Au:56.8%(計算値:56.90%)、C:24.2%(計算値:24.29%)、N:8.0%(計算値:8.09%)、S:9.2%(計算値:9.26%)であった。また、全シアン濃度の測定結果は0.00%であり、検出されなかった。したがって、本発明の有機金錯体は、上記一般式(1)で表される結晶であることを確認した。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
塩化金酸四水和物250.0gを高真空中の条件下で100℃に加熱し、完全に水分を除去する。次いで、間接加熱にて160℃〜180℃を保ちながら結晶化するまで分解を促進して反応を進める。反応終了後、冷却して淡黄色結晶の塩化第一金126.3gを得た。
得られた塩化第一金100.0gに純水1000mlを添加して攪拌する。そこに、塩化ナトリウム30.2gと2−ベンズイミダゾールチオール67.9gを加え、窒素ガスをバブリングする。次いで、水酸化ナトリウム溶液を添加してpH11.5に調整する。この時、窒素ガスのバブリングおよび攪拌を継続する。pH調整後の反応系を80℃にし、窒素ガスのバブリングおよび攪拌を継続したまま8時間保ち反応を促進する。
反応終了後、反応系を30℃以下に冷却する。次いで、析出した結晶を濾過、純水で洗浄した後、100℃で乾燥する。得られた結晶をエタノールで溶解し、エタノールを展開溶媒としてカラムにて分離する。分離したエタノール溶液を真空濃縮した後、100℃で乾燥する事により、60.8gの白色粉末状有機金錯体の結晶を得た。
得られた有機金錯体の分析結果は下記の如くであった。
Au:56.8%(計算値:56.90%)、C:24.2%(計算値:24.29%)、N:8.0%(計算値:8.09%)、S:9.2%(計算値:9.26%)
塩化金酸四水和物200.0gを高真空中の条件下で100℃に加熱し、完全に水分を除去する。次いで、間接加熱にて160℃〜180℃を保ちながら結晶化するまで分解を促進して反応を進める。反応終了後、冷却して淡黄色結晶の塩化第一金99.8gを得た。
得られた塩化第一金80.0gに純水800mlを添加して攪拌する。そこに、塩化カリウム30.8gと2−ベンズイミダゾールチオール54.3gを加え、窒素ガスをバブリングする。次いで、水酸化カリウム溶液を添加してpH11.5に調整する。この時、窒素ガスのバブリングおよび攪拌を継続する。pH調整後の反応系を80℃にし、窒素ガスのバブリングおよび攪拌を継続したまま8時間保ち反応を促進する。
反応終了後、反応系を30℃以下に冷却する。次いで、析出した結晶を濾過、純水で洗浄した後、100℃で乾燥する。得られた結晶をエタノールで溶解し、エタノールを展開溶媒としてカラムにて分離する。分離したエタノール溶液を真空濃縮した後、100℃で乾燥する事により、45.8gの白色粉末状有機金錯体の結晶を得た。
得られた有機金錯体の結晶の分析結果は下記の如くであった。
Au:56.6%(計算値:56.90%)、C:23.9%(計算値:24.29%)、N:7.8%(計算値:8.09%)、S:9.0%(計算値:9.26%)
実施例1及び実施例2で得られた有機金錯体を用い、金として50g/Lの水溶液を調整し、フリーシアンメーターにより水溶液中のフリ−シアン濃度を測定した。また、結晶中の全シアン濃度も併せて測定した。その結果を表1に示す。
一方、比較のため市販品のシアン化金カリウムを用い、金として50g/Lの水溶液を調整し、フリーシアンメーターにより水溶液中のフリ−シアン濃度を測定した。また、結晶中の全シアン濃度も併せて測定した。その結果を表1に示す。
結晶中の全シアン濃度を測定した結果、実施例1及び実施例2の有機金錯体を用いた場合、定量下限値(0.1ppm)以下の全シアン濃度であった。シアン化金カリウムを使用した場合、全シアン濃度値は17.9%であった。
また、金水溶液中のフリ−シアン濃度を測定した結果、実施例1及び実施例2の有機金錯体を用いた場合、定量下限値(0.1ppm)以下のフリ−シアン濃度であった。シアン化金カリウムを使用した場合、フリ−シアン濃度値は0.3ppmであった。本発明の有機金錯体を使用した場合、シアンを全く含まないことを確認した。
(参考例1)
置換型無電解金めっきテスト基板上に、市販の無電解金めっきプロセス(上村工業株式会社製)を用い、酸性脱脂⇒エッチング⇒酸浸漬⇒パラジウム触媒付与⇒無電解ニッケルめっきを施した後、実施例1で得た有機金錯体を用いた置換金めっき液を使用し、銅電極上に無電解金(約0.04μm)/ニッケル皮膜(約5μm)を形成した。また、実施例2も実施例1と同様に実施した結果、銅電極上に無電解金(約0.04μm)/ニッケル皮膜(約5μm)を形成した。
置換型無電解金めっきは、純水1.2Lを投入したビ−カ−へ市販の置換型無電解金めっき薬品(商品名:TKK−51上村工業社製品)0.2L配合し、次いで実施例1又は実施例2で得た有機金錯体の必要量を10%水酸化ナトリウム溶液0.6Lに溶解した溶液を投入し、置換型無電解金めっき液を建浴した。金めっき液の基本操作条件は、金濃度を1.0g/L、めっき温度を85℃、めっき時間を10分間とした。
上記した実施形態に対する比較として、実施例1又は実施例2で得た有機金錯体に替えシアン化金カリウムを金属塩に用い、上記と同様にして置換型無電解金めっき液を建浴した。また、操作条件も同様とした。
上記の工程で、無電解ニッケルめっき皮膜上に置換型無電解金めっき皮膜形成を行なった。その結果、析出速度約0.05μm/10分でレモンイエロ−の色調を有する金めっきが析出した。セロハン粘着テ−プを用い、金皮膜の密着性をJIS Z 1522に基づいて実施した。その結果、良好な密着性を示した。また、この金めっき液を連続使用した場合でも、金めっき液の分解は生じないことが確認された。
本めっき液を用い連続金めっきテストを行なった。不足する金属塩は、実施例1又は実施例2で得られた有機金錯体を補充した。連続使用(MTO)の進行に伴い、析出速度が低下する傾向を示した。これは、シアン化金カリウム使用時と同じ、析出挙動であった。また、表2及び表3に示すように、長期間使用した場合(2MTO)でも、レモンイエロ−の色調を有し、密着性に優れた金めっき皮膜が得られることが確認された。







(参考例2)
電解金めっきテスト基板上に、脱脂⇒エッチング⇒酸浸漬⇒電解ニッケル(約5μm)を施し、市販の電解金めっき薬品(商品名:K−710ピュアゴ−ルド 小島化学薬品社製品)を用い0.3μmの金めっき皮膜を析出させた。電解金めっき薬品2Lに実施例1又は実施例2の有機金錯体の必要量を10%水酸化ナトリウム溶液に溶解した溶液を投入し、金めっき液を建浴した。金めっき液の基本操作条件は、金濃度を3.0g/L、めっき温度を60℃、電流密度を0.2A/dm、めっき時間を140秒間とし、電解金めっきテストを行なった。
上記した実施形態に対する比較として、シアン化第一金カリウムを金属塩に用い、上記と同様に電解金めっき液を建浴した。また、操作条件も同様とした。
その結果、シアン化第一金カリウムを使用した場合と同様に、有機金錯体を用いた場合も、レモンイエロ−の色調で、密着性に優れた金めっきが析出した。析出速度および析出皮膜状態も同じような傾向を示した。
(参考例3)
電解金めっきテスト基板上に、脱脂⇒エッチング⇒酸浸漬⇒電解ニッケル(約5μm)を施し、市販の硬質電解金−コバルトめっき薬品(商品名:K−750ハードゴールド 小島化学薬品社製品)を用い、0.3μmの金めっき皮膜を析出させた。電解金めっき薬品2Lに実施例1又は実施例2の有機金錯体の必要量を10%水酸化ナトリウム溶液に溶解した溶液を投入し、金めっき液を建浴した。金めっき液の基本操作条件は、金濃度を5.0g/L、めっき温度を55℃、電流密度を2.0A/dm、めっき時間を80秒間とし、硬質電解金−コバルトめっきテストを行なった。
上記した実施形態に対する比較例として、シアン化第一金カリウムを金属塩に用い、上記と同様にして電解金めっき液を建浴した。また、操作条件も同様とした。
その結果、シアン化第一金カリウムを使用した場合と同様に、本発明の有機金錯体を用いた場合も、レモンイエロ−の色調で、密着性に優れた金めっきが析出した。析出速度も同じような傾向を示した。












Claims (2)

  1. 下記の一般式(1)
    (1)

    (式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、−CH、−OCH、−NOである)で表される金イオンに2−ベンズイミダゾールチオール類を配位させてなる有機金錯体。
  2. 2−ベンズイミダゾールチオール類が2−ベンズイミダゾールチオールである請求項1に記載の有機金錯体。












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