以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態に係る打ち抜き装置は、打ち抜き型と、カッティングプレートと、面版とを有している。
図1は、本実施の形態に係る打ち抜き型の概略構成を示す平面図である。打ち抜き型10は、木製の基台11の一面に帯状の打ち抜き刃12、帯状の折り罫部材13、及び帯状の押し罫部材141、142、143、144、145が配置されて構成されている。
基台11の表面は平坦面であり、この表面に打ち抜くべき形状の溝(図示せず)がレーザ加工によって形成され、当該溝に帯状の打ち抜き刃12が嵌合される。折り罫部材13及び押し罫部材141、142、143、144、145も同様に、基台11の表面にレーザ加工により形成された折り罫線及び押し罫線の形状の溝に嵌合される。こうして、打ち抜き型10が構成される。
本実施の形態に係る打ち抜き型10は、紙箱の製作に用いられるものである。このため、紙箱として組み立てる前(展開された状態)のシート材の縁の形状に、打ち抜き刃12が配置される。また、材料のシート材に対し、紙箱の稜線に相当する部分に折り罫が刻印されるよう、折り罫部材13が配置され、シート材の基準面に対して凸状部又は凹状部が形成されるよう、押し罫部材141、142、143、144、145が配置される。ここで、「基準面」とは、平坦なシート材の表側の面のことをいう。
具体的には、打ち抜き型10は、次のような紙箱の製作に用いられる。図2は、製作される紙箱の構成を示す斜視図である。図2に示すように、紙箱100は、直方体形状をなし、平面に四角形の凸状部111が、正面にひし形の凸状部112の一部112aが、右側面に前記凸状部112の他部112bが、それぞれ形成されたものである。凸状部112は、紙箱100の正面と右側面との間の稜線を跨いで設けられる。また、図には示していないが、紙箱100の左側面には、平行な2本の直線で挟まれた帯型の凸状部が形成される。
上記のような紙箱100を製作するために、打ち抜き型10は、展開された紙箱100の外形に沿って打ち抜き刃12が配置され、紙箱100の折り目(各面間の稜線)に沿って折り罫部材13が配置される。
また、紙箱100の平面を形成するために打ち抜き刃12及び折り罫部材13によって囲まれた範囲15aには、四角形にかたどられた押し罫部材141が配置される。この押し罫部材141によって、基準面に対して突出した図2に示す凸状部111が形成される。紙箱100の平面(上端面)の場合、紙箱100の上端の四隅の角を繋ぐ平面が基準面となり、凸状部111は、この基準面に対して突出する。紙箱100の上端面以外の面についても同様に、四隅の角を繋ぐ平面が基準面となる。
紙箱100の正面を形成するために打ち抜き刃12及び折り罫部材13によって囲まれた範囲15bには、ひし形の一部にかたどられた押し罫部材142が配置され、紙箱100の右側面を形成するために打ち抜き刃12及び折り罫部材13によって囲まれた範囲15cには、前記ひし形の他の部分にかたどられた押し罫部材143が配置される。つまり、押し罫部材142及び143は、紙箱100の正面と右側面との間の折り罫線を形成するための折り罫部材13を跨ぐように設けられている。押し罫部材142によって基準面に対して突出した図2に示す凸状部112の一部112aが、押し罫部材143によって基準面に対して突出した凸状部112の他部112bが、それぞれ形成される。
紙箱100の左側面を形成するために打ち抜き刃12及び折り罫部材13によって囲まれた範囲15dには、互いに平行な直線状に延びた押し罫部材144、145が配置される。これらの押し罫部材144,145によって、基準面に対して突出した帯型の凸状部が形成される。
図3は、本実施の形態に係る面版の概略構成を示す平面図である。面版20は、合成樹脂板の一面に折り罫溝23及び押し罫溝241、242、243、244、245が設けられて構成されている。かかる面版20の外形は、上述した打ち抜き刃12が干渉しないように、環状の打ち抜き刃12の内側に収まるものとされる。
面版20の材料となる合成樹脂板の表面が切削加工されて、折り罫溝23及び押し罫溝241、242、243、244、245が形成される。合成樹脂は金属に比べて柔らかく切削性がよいため、加工コストを抑制することが可能であるという利点がある。また、面版20の裏面には接着剤が塗布され、金属製のカッティングプレート30の平坦な表面に面版20が接着される。
本実施の形態に係る面版20は、上述した打ち抜き型10と共に紙箱100の製作に用いられる。このため、紙箱として組み立てる前(展開された状態)のシート材に対し、紙箱の稜線に相当する部分に折り罫が刻印されるよう、折り罫溝23が設けられ、凸状部又は凹状部が形成されるよう、押し罫溝241、242、243、244、245が設けられる。かかる押し罫溝241、242、243、244、245のそれぞれは、押し罫部材141、142、143、144、145に一対一に対応して設けられている。
図4は、図3におけるA−A線による断面矢視図である。図4に示すように、押し罫溝241の一方の側縁は面版20の主面に対して垂直に立ち上がる壁面241aを有しており、他方の側縁は面版20の主面に対して傾斜した傾斜面241bを有している。後述するように、面版20は打ち抜き型10に正対するように配置される。このため、壁面241aは打ち抜き型10側に立ち上がっている。また、傾斜面241bは、打ち抜き型10側を向くように傾斜している。
なお、壁面241aを面版20の主面に対して垂直に立ち上がるものとしたが、ここでいう「垂直」とは厳密な意味での垂直だけではなく、実質的な意味での垂直をも含むものである。例えば加工精度の理由により、面版20の主面に対する壁面241aの角度に誤差が含まれていても、ここでいう「垂直」に含まれるものとする。
壁面241aは、環状の押し罫溝241の内側縁全周に渡って設けられており、傾斜面241bは、押し罫溝241の外側縁全周に渡って設けられている(図3参照)。
同様に、押し罫溝242の一方の側縁(一部が欠落したひし形の内側縁)の全体に渡って、垂直に立ち上がる壁面242aが設けられており、押し罫溝242の他方の側縁(一部が欠落したひし形の外側縁)の全体に渡って、緩やかに立ち上がる傾斜面242bが設けられている。
また、押し罫溝243の一方の側縁(前記ひし形の欠落した部分の内側縁)の全体に渡って、垂直に立ち上がる壁面243aが設けられており、押し罫溝243の他方の側縁(前記ひし形の欠落した部分の外側縁)の全体に渡って、緩やかに立ち上がる傾斜面243bが設けられている。
また、押し罫溝244の一方の側縁(押し罫溝245に近い方の側縁)の全体に渡って、垂直に立ち上がる壁面244aが設けられており、押し罫溝244の他方の側縁(押し罫溝245から遠い方の側縁)の全体に渡って、緩やかに立ち上がる傾斜面244bが設けられている。
また、押し罫溝245の一方の側縁(押し罫溝244に近い方の側縁)の全体に渡って、垂直に立ち上がる壁面245aが設けられており、押し罫溝245の他方の側縁(押し罫溝244から遠い方の側縁)の全体に渡って、緩やかに立ち上がる傾斜面245bが設けられている。
次に、本実施の形態に係る打ち抜き装置1の動作について説明する。打ち抜き型10は、カッティングプレート30に正対するように設置され、カッティングプレート30の表面には面版20が位置決めされた上で接着される。
加工対象のシート材が、打ち抜き型10とカッティングプレート30との間に挿入される。このとき、シート材の表面が打ち抜き型10側に、シート材の裏面が面版20側になるようにシート材が配置される。つまり、本実施の形態に係る打ち抜き装置1では、シート材を表側から打ち抜き刃12で切断される。以下、このような切断方法を「表抜き」という。また、シート材を裏側から打ち抜き刃で切断する方法を「裏抜き」という。
図5は、シート材の打ち抜き加工を実施しているときの打ち抜き装置1の側面断面図である。シート材Sを打ち抜き加工するときには、打ち抜き型10とカッティングプレート30とが近接するように相対移動される。
打ち抜き型10は、打ち抜き刃12の刃先がカッティングプレート30に当接するまでカッティングプレート30と相対的に近接する。これにより、打ち抜き刃12がシート材Sを表側から切断する。
折り罫部材13の先端は打ち抜き刃12のように尖っておらず、丸みを帯びた形状とされている。この折り罫部材13の先端がシート材Sを表面側から押圧し、シート材Sを折り罫溝23に挿入する。これにより、シート材Sの表面に折り罫線が形成される。
折り罫部材13の基台11からの高さは、打ち抜き刃12の基台11からの高さよりも所定距離分だけ低くされており、打ち抜き刃12がカッティングプレート30に当接した状態において、折り罫部材13の先端は面版20の表面と概ね同一の高さに位置するようになっている。このため、打ち抜き刃12がカッティングプレート30に当接したときには、折り罫部材13の先端によって押されたシート材Sが、折り罫溝23に挿入され、シート材Sに折り罫線が刻印されることとなる。
押し罫部材141乃至145の先端は、折り罫部材13と同様に丸みを帯びた形状とされている。かかる押し罫部材141乃至145の先端はシート材Sを表面側から押圧し、シート材Sを対応する押し罫溝241乃至245に挿入する。これにより、シート材Sに凸状部分が形成される。
押し罫部材141乃至145の基台11からの高さは、打ち抜き刃12の基台11からの高さよりも所定距離分だけ低くされており、打ち抜き刃12がカッティングプレート30に当接した状態において、押し罫部材141乃至145の先端は面版20の表面と概ね同一の高さに位置するようになっている。このため、打ち抜き刃12がカッティングプレート30に当接したときには、押し罫部材141乃至145の先端によって押されたシート材Sが、押し罫部材141乃至145に挿入され、シート材Sに押し罫線が刻印されることとなる。
押し罫部材141によるシート材Sの加工について説明する。図5に示すように、面版20の主面と押し罫溝241の壁面241aとに挟まれた角部は直角であり、エッジが立っている。このため、押し罫部材141によって押され、押し罫溝241に挿入されたシート材Sは、面版20の主面に沿った部分が当該主面と平行となり、前記主面と壁面241aとに挟まれた角部に当接する部分が先鋭な山形に屈曲され、塑性変形する。その一方で、押し罫部材141の底部に当接した部分は、押し罫部材141の底部に沿って丸みを帯びた谷形に湾曲し、塑性変形する。
図6は、加工後のシート材Sの構成を示す側面断面図である。打ち抜き型10と面版20及びカッティングプレート30とが離反された後も、上述した山形の角部及び谷形の湾曲部は保持される。このため、押し罫部材141と押し罫溝241により、シート材Sに段部Dが形成される。押し罫部材141及び壁面241aは環状に設けられているので、環状の段部Dが形成され、段部Dに囲まれた内側は基準面に対して突出した凸状部111となる。シート材Sの表側において凸状部111の全周に亘って山形の角部が形成されるので、凸状部111の輪郭が明瞭になる。
図5を参照して、押し罫溝241の傾斜面241bの機能について説明する。シート材Sに押し罫部材141が押し当てられているとき、押し罫部材141を挟んで上述した段部Dと反対側のシート材Sの部分は、傾斜面241bに沿うか、傾斜面241bから離隔して、押し罫部材141の底部に沿って丸みを帯びて谷形に湾曲した部分から自然に繋がるように延びる。また、傾斜面241bに続く面版20の主面に沿う部分は、面版20の主面と平行となる。
ここで、傾斜面241bと面版20の主面とに挟まれた角は鈍角であり、またこの角部は押し罫部材141から離隔している。このため、シート材Sが押し罫溝241に挿入されても、この角部によっては屈曲されることがないか、屈曲されたとしてもその角度は非常に小さいものとなる。したがって、段部Dの外側においては、押し罫部材141の底部に沿って丸みを帯びて谷形に湾曲した部分と、面版20の主面に沿った部分とが自然に繋がるように僅かに湾曲する。この湾曲部は塑性変形されない。
図6に示すように、打ち抜き型10と面版20及びカッティングプレート30とが離反されると、傾斜部241bに沿って湾曲した部分は弾性変形して元の平坦な状態に復帰する。つまり、傾斜面241bによっては段部が形成されることがない。
上記のようにして、紙箱100に四角形の凸状部111が形成される(図2参照)。
押し罫部材142と押し罫溝242とによっても、ひし形の凸状部112の一部112aが形成される。ここで、押し罫部材142は環状ではなく、両端が折り罫部材13に接続されており、押し罫溝242は環状ではなく、両端が折り罫溝23に接続されているので、押し罫部材142と押し罫溝242とによって形成される段部Dは、環状とはならない。しかし、折り罫部材13と折り罫溝23とによっても折り罫線の段部が形成されるため、上記の段部Dの両端が折り罫線の段部と繋がり、全体としては環状の段部が形成される。したがって、ひし形の一部の凸状部112aが形成されることとなる。
同様にして、押し罫部材143と押し罫溝243とによって、ひし形の凸状部112の他部112bが形成される。
また、押し罫部材144及び145と、押し罫溝244及び245とによって、帯状の凸状部が形成される。ここで、押し罫部材144及び145は環状ではなく、一端が紙箱100の正面と左側面との間の折り罫線を形成するための折り罫部材13に接続されており、他端が紙箱100の背面と左側面との間の折り罫線を形成するための折り罫部材13に接続されている。また、押し罫溝244及び245も環状ではなく、一端が紙箱100の正面と左側面との間の折り罫線を形成するための折り罫溝23に接続されており、他端が紙箱100の背面と左側面との間の折り罫線を形成するための折り罫溝23に接続されている。このため、押し罫部材144と押し罫溝244とによって形成される段部D、及び、押し罫部材145と押し罫溝245とによって形成される段部Dのそれぞれは、環状とはならない。しかし、折り罫部材13と折り罫溝23とによっても折り罫線の段部が形成されるため、上記の段部Dの両端が折り罫線の段部と繋がり、全体としては環状の段部が形成される。したがって、帯状(平行四辺形)の凸状部が形成されることとなる。
上述のように、本実施の形態に係る打ち抜き装置1は、平坦な面版20に垂直な壁面と傾斜面とを有する押し罫溝241乃至245を設けることによって、シート材Sに凸状部を形成することが可能となる。また、面版20が加工性に優れた合成樹脂製であるので、上記のような押し罫溝241乃至245を容易に形成することが可能となる。また、打ち抜き加工及び折り罫線の形成に用いられる打ち抜き型10に押し罫部材141乃至145を設け、折り罫線を形成するための面版20に押し罫溝241乃至245を設けることで、凸状部を形成することが可能となる。
また、押し罫溝241、242、243、244、245のそれぞれを、押し罫部材141、142、143、144、145に一対一に対応して設ける構成としたので、1つの押し罫溝を複数の押し罫部材で共有する場合に比べて、各押し罫溝241、242、243、244、245の溝幅を小さくすることができる。このため、面版20を切削加工して押し罫溝241、242、243、244、245を形成する場合に、加工量が少なくてすむ。また、押し罫部材に一対一に対応する押し罫溝を設けるように面版を設計すればよいので、面版設計の作業負担を軽減することが可能となる。さらに、押し罫溝の大きさを最小限にすることができるため、押し罫部材及び押し罫溝の配置の自由度が向上し、多種多様なデザインに対応することができる。
また、本実施の形態に係る打ち抜き装置1にあっては、打ち抜き型10に押し罫部材141を環状に配し、面版20に押し罫溝241を環状に配し、押し罫部材141によってシート材Sを押し罫溝241の内側縁の壁面241aに押し付けたので、表抜きによってシート材Sの表面側に凸状部111を形成することができる。また、打ち抜き型10に押し罫部材142と折り罫部材13とを環状に配し、面版20に押し罫溝242と折り罫溝23とを環状に配し、押し罫部材142によってシート材Sを押し罫溝242の内側縁の壁面241aに押し付け、折り罫部材13によってシート材Sを折り罫溝23に挿入するようにしたので、表抜きによってシート材Sの表面側に凸状部112aを形成することができる。凸状部112b及び113についても同様である。
上記のように、帯状の押し罫部材141乃至145を湾曲させて打ち抜き型10に取り付けることで、金型の雄型に比べて、容易且つ低コストに凸状部を形成する雄型を作成することができる。また、このような押し罫部材141乃至145は曲げ加工が容易であるし、押し罫溝241乃至245を設ける合成樹脂製の面版20も加工が容易であるので、様々な形状の凸状部に対応することができる。
美粧ケース等では、表側に凸状部を設けることが多い。本実施の形態に係る打ち抜き装置1では、表抜きによって表側に凸状部を設けることで凸状部の輪郭が明瞭となるので、美観に優れた凸状部を形成することができる。また、紙箱100に形成されるのは表側への凸状部であるため、紙箱100の内部が狭められることがなく、かかる凸状部が収容物に干渉することがない。
(実施の形態2)
本実施の形態に係る打ち抜き装置201は、表抜きによってシート材Sに凹状部を形成するものである。
図7は、本実施の形態に係る打ち抜き装置201の一部の構成を示す断面図である。図7に示すように、打ち抜き型40及び面版50は互いに正対するように配置される。打ち抜き型40には、四角環状(図示せず)の押し罫部材401が設けられている。その一方、面版50には、前記押し罫部材401に対応する四角環状(図示せず)の押し罫溝501が設けられている。
押し罫溝501の一方の側縁は面版50の主面に対して垂直に立ち上がる壁面501aを有しており、他方の側縁は面版50の主面に対して傾斜した傾斜面501bを有している。
壁面501aは、環状の押し罫溝501の外側縁全周に渡って設けられており、傾斜面501bは、押し罫溝501の内側縁全周に渡って設けられている。
本実施の形態に係る打ち抜き装置201のその他の構成は、実施の形態1に係る打ち抜き装置1の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
次に、本実施の形態に係る打ち抜き装置201の動作について説明する。打ち抜き型40は、カッティングプレート30に正対するように設置され、カッティングプレート30の表面には面版50が位置決めされた上で接着される。
図8は、シート材の打ち抜き加工を実施しているときの打ち抜き装置201の側面断面図である。シート材Sを打ち抜き加工するときには、打ち抜き型40とカッティングプレート30とが近接するように相対移動される。
打ち抜き型40は、打ち抜き刃12の刃先がカッティングプレート30に当接するまでカッティングプレート30と相対的に近接する。これにより、打ち抜き刃12がシート材Sを表側から切断する。また、折り罫部材13の先端がシート材Sを表面側から押圧し、シート材Sを折り罫溝23に挿入する。これにより、シート材Sの表面に折り罫線が形成される。
押し罫部材401の先端は、折り罫部材13と同様に丸みを帯びた形状とされている。かかる押し罫部材401の先端はシート材Sを表面側から押圧し、シート材Sを対応する押し罫溝501に挿入する。これにより、シート材Sに基準面に対して窪んだ凹状部分が形成される。
押し罫部材401の基台11からの高さは、打ち抜き刃12の基台11からの高さよりも所定距離分だけ低くされており、打ち抜き刃12がカッティングプレート30に当接した状態において、押し罫部材401の先端は面版20の表面と概ね同一の高さに位置するようになっている。このため、打ち抜き刃12がカッティングプレート30に当接したときには、押し罫部材401の先端によって押されたシート材Sが、押し罫部材401に挿入され、シート材Sに押し罫線が刻印されることとなる。
押し罫部材401によるシート材Sの加工について説明する。図8に示すように、面版20の主面と押し罫溝501の壁面501aとに挟まれた角部は直角であり、エッジが立っている。このため、押し罫部材401によって押され、押し罫溝501に挿入されたシート材Sは、面版20の主面に沿った部分が当該主面と平行となり、前記主面と壁面241aとに挟まれた角部に当接する部分が先鋭な山形に屈曲され、塑性変形する。その一方で、押し罫部材401の底部に当接した部分は、押し罫部材401の底部に沿って丸みを帯びた谷形に湾曲し、塑性変形する。
図9は、加工後のシート材Sの構成を示す側面断面図である。打ち抜き型40と面版50及びカッティングプレート30とが離反された後も、上述した山形の角部及び谷形の湾曲部は保持される。このため、押し罫部材401と押し罫溝501とにより、シート材Sに段部D2が形成される。押し罫部材401及び壁面501aは四角環状に設けられているので、四角環状の段部D2が形成される。
実施の形態1と同様に、シート材Sに押し罫部材401が押し当てられているとき、押し罫部材401を挟んで上述した段部D2と反対側のシート材Sの部分は、傾斜面501bに沿うか、傾斜面501bから離隔して、押し罫部材401の底部に沿って丸みを帯びて谷形に湾曲した部分から自然に繋がるように延びる。段部D2の外側においては、押し罫部材401の底部に沿って丸みを帯びて谷形に湾曲した部分と、面版20の主面に沿った部分とが自然に繋がるように僅かに湾曲する。この湾曲部は、実施の形態1において説明したように、塑性変形することがない。このため、打ち抜き型40と面版50及びカッティングプレート30とが離反されると、傾斜部501bに沿って湾曲した部分は弾性変形して元の平坦な状態に復帰する。
段部D2は、四角環状の外側縁に形成され、この段部D2の内側では、上記のように平坦面となる。このため、段部D2に囲まれた内側は基準面に対して窪んだ凹状部Nとなる。シート材Sの表側において凹状部Nの全周に亘って山形の角部が形成されるので、凹状部Nの輪郭が明瞭になる。
上述のように、本実施の形態に係る打ち抜き装置201は、平坦な面版50に垂直な壁面と傾斜面とを有する押し罫溝501を設けることによって、シート材Sに基準面に対して窪んだ凹状部を形成することが可能となる。また、面版50が加工性に優れた合成樹脂製であるので、上記のような押し罫溝501を容易に形成することが可能となる。
(実施の形態3)
本実施の形態に係る打ち抜き装置は、表抜きによってシート材Sに二重の凸状部を形成するものである。
図10は、本実施の形態に係る打ち抜き装置301の一部の構成を示す断面図である。図10に示すように、打ち抜き型60及び面版70は互いに正対するように配置される。打ち抜き型60には、四角環状(図示せず)の押し罫部材601と、当該押し罫部材601の内側に、四角環状(図示せず)の押し罫部材602とが設けられている。その一方、面版70には、前記押し罫部材601に対応する四角環状(図示せず)の押し罫溝701と、当該押し罫溝701の内側に、前記押し罫部材602に対応する四角環状(図示せず)の押し罫溝702とが設けられている。
押し罫溝701の一方の側縁は面版70の主面に対して垂直に立ち上がる壁面701aを有しており、他方の側縁は面版70の主面に対して傾斜した傾斜面701bを有している。同様に、押し罫溝702の一方の側縁は面版70の主面に対して垂直に立ち上がる壁面702aを有しており、他方の側縁は面版70の主面に対して傾斜した傾斜面702bを有している。
壁面701aは、環状の押し罫溝701の内側縁全周に渡って設けられており、傾斜面701bは、押し罫溝701の外側縁全周に渡って設けられている。また、壁面702aは、環状の押し罫溝702の内側縁全周に渡って設けられており、傾斜面702bは、押し罫溝702の外側縁全周に渡って設けられている。
本実施の形態に係る打ち抜き装置201のその他の構成は、実施の形態1に係る打ち抜き装置1の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
次に、本実施の形態に係る打ち抜き装置301の動作について説明する。打ち抜き型60は、カッティングプレート30に正対するように設置され、カッティングプレート30の表面には面版70が位置決めされた上で接着される。
図11は、シート材の打ち抜き加工を実施しているときの打ち抜き装置301の側面断面図であり、図12は、加工後のシート材の構成を示す側面断面図である。シート材Sを打ち抜き加工するときには、打ち抜き型60とカッティングプレート30とが近接するように相対移動される。
打ち抜き型60は、打ち抜き刃の刃先がカッティングプレート30に当接するまでカッティングプレート30と相対的に近接する。これにより、打ち抜き刃がシート材Sを表側から切断する。また、折り罫部材の先端がシート材Sを表面側から押圧し、シート材Sを折り罫溝に挿入する。これにより、シート材Sの表面に折り罫線が形成される。
押し罫部材601及び602の先端は、折り罫部材と同様に丸みを帯びた形状とされている。かかる押し罫部材601及び602の先端はシート材Sを表面側から押圧し、押し罫部材601がシート材Sを押し罫溝701に挿入し、押し罫部材602がシート材Sを押し罫溝702に挿入する。これにより、シート材Sに二重の凸状部分が形成される。
押し罫部材601及び602の基台11からの高さは、打ち抜き刃の基台11からの高さよりも所定距離分だけ低くされており、打ち抜き刃がカッティングプレート30に当接した状態において、押し罫部材601及び602の先端は面版20の表面と概ね同一の高さに位置するようになっている。このため、打ち抜き刃12がカッティングプレート30に当接したときには、押し罫部材601の先端によって押されたシート材Sが、押し罫溝701に挿入され、シート材Sに押し罫線が刻印されることとなる。また、シート材Sは、押し罫部材602の先端によっても押動され、押し罫溝702に挿入されて、シート材Sに押し罫線が刻印される。
押し罫溝701は、内側縁に壁面701aが設けられ、外側縁に傾斜面701bが設けられている。このような押し罫溝に701に、シート材Sが押し罫部材601によって挿入されることで、四角形の凸状部311がシート材Sに形成される(図12参照)。
また、押し罫溝702は、内側縁に壁面702aが設けられ、外側縁に傾斜面702bが設けられている。このような押し罫溝に702に、シート材Sが押し罫部材602によって挿入されることで、同様に四角形の凸状部312がシート材Sに形成される(図12参照)。
押し罫部材602は、環状の押し罫部材601の内側に配置され、押し罫溝702は、環状の押し罫溝701の内側に設けられる。このため、押し罫部材601及び押し罫溝701によって形成される大型の四角形の凸状部311の内部に、小型の四角形の凸状部312が入れ子状に形成される(図12参照)。凸状部311は、基準面に対して突出しており、凸状部312は、凸状部311に対して突出している。
図13は、製作される紙箱の構成を示す斜視図である。図13に示すように、紙箱300は、直方体をなしており、平面に2つの四角形の凸状部311及び312が入れ子状に形成されたものである。本実施の形態に係る打ち抜き装置301によって、このような紙箱300を組み立てるためのシート材を形成することができる。
上述のように、本実施の形態に係る打ち抜き装置301は、平坦な面版70に垂直な壁面と傾斜面とを有する2つの押し罫溝701及び702を入れ子状に設けることによって、シート材Sに二重の凸状部311及び312を形成することが可能となる。つまり、二重の凹状部をシート材に形成するために、二段の深さの凹部を面版に設ける必要がなく、また、押し罫部材601及び602の高さも異ならせる必要がない。また、面版70が加工性に優れた合成樹脂製であるので、上記のような押し罫溝701及び701を容易に形成することが可能となる。
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態1乃至3においては、押し罫溝の一方の側縁がシート材の主面に垂直な壁面を有し、他方の側縁が前記壁面よりも打ち抜き型側に向いた傾斜面を有する構成について述べたが、これに限定されるものではない。押し罫溝の両側縁がシート材の主面に対して垂直な壁面をそれぞれ有し、押し罫部材が押し罫溝に挿入されたときに、押し罫部材が一方の側縁よりも他方の側縁に近接する構成とすることができる。この場合、一方の側縁は、シート材が押し罫部材によって押し罫溝に押しつけられたときにも、シート材に段部を形成しない程度に押し罫部材から離隔させればよい。これにより、一方の側縁によっては段部が形成されず、他方の側縁によっては段部が形成されることになり、シート材に凸状部又は凹状部を形成することが可能となる。
また、上述した実施の形態1乃至3においては、表抜きによってシート材を打ち抜き加工する打ち抜き装置について述べたが、これに限定されるものではない。裏抜きによってシート材を打ち抜き加工する構成とすることも可能である。
また、上述した実施の形態1においては、折り罫部材13を跨ぐように押し罫部材143及び144を設け、折り罫溝23を跨ぐように押し罫溝243及び244を設けて、押し罫部材143及び144並びに押し罫溝243及び244によって、折り罫線を跨いで凸状部112を形成する構成について述べたが、これに限定されるものではない。折り罫部材が帯状に延びる方向に対して交差する方向に押し罫部材を延設させ、折り罫部材の一方側において押し罫部材が終端し、他方側には押し罫部材が設けられない構成とすることも可能である。このようにすることで、折り罫線の一方側において終端する凸状部又は凹状部をシート材に形成することが可能となる。ここで、押し罫部材が折り罫部材において終端するとは、押し罫部材が折り罫部材に接して終端する場合だけでなく、押し罫部材が折り罫部材との間に若干の間隙を有して終端する場合も含む。つまり、押し罫部材は、折り罫部材に接して終端していてもよいし、折り罫部材との間に間隙を有して終端していてもよい。また、面版においては、折り罫溝の一方側において、押し罫溝が終端するものとする。つまり、押し罫部材が折り罫部材に接して終端している場合には、押し罫溝が折り罫溝に接して終端するようにし、押し罫部材が折り罫部材と間隙を有して終端している場合には、押し罫溝が折り罫溝と間隙を有して終端するようにする。
また、打ち抜き刃が帯状に延びる方向に対して交差する方向に押し罫部材を延設させ、押し罫部材を打ち抜き刃に接して終端させるように構成することも可能である。図14は、押し罫部材が打ち抜き刃に接して終端する構成の打ち抜き型を示す部分平面図である。この打ち抜き型では、一部が欠落したひし形状に配置された押し罫部材801が、打ち抜き刃12に接して終端している。このようにすることで、シート材の端縁に接するように凸状部又は凹状部を形成することが可能となる。
また、押し罫部材を打ち抜き刃との間に間隙を有するように終端させる構成とすることも可能である。図15は、押し罫部材が打ち抜き刃と間隙を有して終端する構成の打ち抜き型を示す部分平面図である。この打ち抜き型では、一部が欠落したひし形状に配置された押し罫部材901が、打ち抜き刃12の近傍において、打ち抜き刃12との間に間隙を有して終端している。面版は打ち抜き刃と干渉しないように、打ち抜き刃がカッティングプレートに当接した状態において、打ち抜き刃との間に間隙を有する位置に配置されることが多い。このため、上記のようにすることで、面版の端縁において終端するように押し罫溝が設けられている場合に、当該押し罫溝に対応した位置で押し罫部材を終端させることができる。また、間隙の大きさは1mm以下まで小さくすることが可能であるので、凸状部又は凹状部を、シート材の端縁にあたかも接しているかの如く見えるように形成することができる。
また、上述した実施の形態2においては、押し罫部材401と押し罫溝501とを一対一に設け、押し罫部材401によりシート材Sを押し罫溝501に挿入することによって、表抜きにより凹状部Nを形成する構成について述べたが、これに限定されるものではない。2つの押し罫部材を1つの押し罫溝に対応させ、一方の押し罫部材と押し罫溝の一方の側縁とによって1つの段部を形成し、他方の押し罫部材と押し罫溝の他方の側縁とによってもう1つの段部を形成することで、表抜きにより凹状部を形成することも可能である。
また、上述した実施の形態3においては、垂直な壁面701aを内側縁に有し、傾斜面701bを外側縁に有する環状の押し罫溝701の内側に、垂直な壁面702aを内側縁に有し、傾斜面702bを外側縁に有する環状の押し罫溝702を設けることで、シート材Sに二重の凸状部を形成する構成について述べたが、これに限定されるものではない。3以上の押し罫部材を入れ子状に打ち抜き型に配し、3以上の押し罫溝を入れ子状に面版に設けることによって、シート材に3以上の凸状部を入れ子状に形成する構成とすることも可能である。また、入れ子状に形成される複数の凸状部又は凹状部は、相似の形状(例えば、縦の辺と横の辺の長さの比率が同一の長方形)に限られず、相似以外の形状とすること(例えば、円形の凸状部の中に正三角形の凸状部が形成される等)も可能である。
また、傾斜面を内側縁に有し、垂直な壁面を外側縁に有する環状の押し罫溝を複数入れ子状に面版に設けることで、シート材に複数の凹状部を入れ子状に形成する構成とすることも可能である。
また、垂直な壁面を内側縁に有し、傾斜面を外側縁に有する環状の押し罫溝と、傾斜面を内側縁に有し、垂直な壁面を外側縁に有する環状の押し罫溝とを入れ子状に設けることで、シート材Sに凸状部又は凹状部の内部に凹状部又は凸状部を形成する構成とすることも可能である。
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の打ち抜き装置は、シート材を切断するための帯状の打ち抜き刃と、前記シート材を押圧することで押し罫線を形成するための帯状の押し罫部材とを有する打ち抜き型と、前記打ち抜き型に対向配置され、前記打ち抜き型と近接することにより前記打ち抜き刃を受けるカッティングプレートと、前記カッティングプレートに取り付けられており、前記押し罫部材を受ける押し罫溝が設けられた面版と、を備え、前記打ち抜き型と前記カッティングプレートとが近接されたときに、前記打ち抜き型と前記カッティングプレートとの間に配置されたシート材を前記押し罫部材と前記押し罫溝とで挟み込み、前記押し罫部材と前記押し罫溝の一方の側縁とによって前記シート材に段部を形成し、前記押し罫溝を横切る方向への前記面版の断面において、一の箇所に設けられた押し罫溝によって形成された段部と、他の箇所に設けられた押し罫溝によって形成された段部とが縁となった凸状部又は凹状部を形成するように構成されている。
また、本発明の他の態様のシート材の加工方法は、シート材を切断するための帯状の打ち抜き刃と、前記シート材を押圧することで押し罫線を形成するための帯状の押し罫部材とを有する打ち抜き型を、前記打ち抜き型に対向配置されたカッティングプレートと相対的に近接させ、前記打ち抜き型と前記カッティングプレートとの間に配置されたシート材を前記打ち抜き刃によって切断するとともに、前記シート材を前記押し罫部材と前記カッティングプレートに取り付けられた面版に設けられた押し罫溝とで挟み込み、前記押し罫部材と前記押し罫溝の一方の側縁とによって前記シート材に段部を形成し、前記押し罫溝を横切る方向への前記面版の断面において、一の箇所に設けられた押し罫溝によって形成された段部と、他の箇所に設けられた押し罫溝によって形成された段部とが縁となった凸状部又は凹状部を形成する。
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の打ち抜き装置は、シート材を切断するための帯状の打ち抜き刃と、前記シート材を押圧することで押し罫線を形成するための帯状の押し罫部材とを有する打ち抜き型と、前記打ち抜き型に対向配置され、前記打ち抜き型と近接することにより前記打ち抜き刃を受けるカッティングプレートと、前記カッティングプレートに取り付けられており、前記押し罫部材を受ける押し罫溝が設けられた面版と、を備え、前記打ち抜き型と前記カッティングプレートとが近接されたときに、前記打ち抜き型と前記カッティングプレートとの間に配置されたシート材を前記押し罫部材と前記押し罫溝とで挟み込み、前記押し罫部材と前記押し罫溝の一方の側縁とによって前記シート材に塑性変形を与えることにより段部を形成する一方、前記押し罫部材と前記押し罫溝の他方の側縁とによっては前記シート材に塑性変形を与えることなく湾曲部を形成し、前記打ち抜き型と前記カッティングプレートとが離反されたときに、前記湾曲部が元の状態に復帰することにより、前記押し罫溝を横切る方向への前記面版の断面において、一の箇所に設けられた押し罫溝によって形成された段部と、他の箇所に設けられた押し罫溝によって形成された段部とが縁となった凸状部又は凹状部を形成するように構成されている。
また、本発明の他の態様のシート材の加工方法は、シート材を切断するための帯状の打ち抜き刃と、前記シート材を押圧することで押し罫線を形成するための帯状の押し罫部材とを有する打ち抜き型を、前記打ち抜き型に対向配置されたカッティングプレートと相対的に近接させ、前記打ち抜き型と前記カッティングプレートとの間に配置されたシート材を前記打ち抜き刃によって切断するとともに、前記シート材を前記押し罫部材と前記カッティングプレートに取り付けられた面版に設けられた押し罫溝とで挟み込み、前記押し罫部材と前記押し罫溝の一方の側縁とによって前記シート材に塑性変形を与えることにより段部を形成する一方、前記押し罫部材と前記押し罫溝の他方の側縁とによっては前記シート材に塑性変形を与えることなく湾曲部を形成し、前記打ち抜き型と前記カッティングプレートとを離反させ、前記湾曲部を元の状態に復帰させることにより、前記押し罫溝を横切る方向への前記面版の断面において、一の箇所に設けられた押し罫溝によって形成された段部と、他の箇所に設けられた押し罫溝によって形成された段部とが縁となった凸状部又は凹状部を形成する。