以下、本発明の実施の形態に係る連動引戸用開閉装置及びこれを備える連動引戸を、図面に基づいて説明する。ただ、以下に示す例は、本発明の技術思想を具体化するための連動引戸用開閉装置及びこれを備える連動引戸を例示するものであって、連動引戸用開閉装置及びこれを備える連動引戸を以下のものに限定するものではない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る連動引戸用開閉装置1が設けられた連動引戸2を、図1〜図15に示す。各図において、図1は本発明の実施の形態1に係る連動引戸用開閉装置1が設けられた連動引戸2の正面図、図2は図1の連動引戸の全閉の状態の上枠を外した平面図、図3は図2の連動引戸の全閉の状態を示す垂直断面図、図4は連動引戸用開閉装置1の正面図、図5は連動引戸用開閉装置1の上枠を外した平面図、図6は図3の連動引戸用開閉装置1の要部拡大断面図、図7はテンショナ32の断面図、図8はロック機構の動作を示す概略図、図9はロック機構の動作を示す概略図、図10はロック機構の動作を示す概略図、図11はロック機構の動作を示す概略図、図12は連動引戸を一部開けた状態の正面図、図13は連動引戸を一部開けた状態の上枠を外した平面図、図14は連動引戸を全開にした状態の正面図、図15は連動引戸を全開にした状態の上枠を外した平面図を、それぞれ示している。また各平面図や断面図については、特に断りの無い限り図の右側を戸枠10の内側、左側を戸枠10の外側として説明する。
(連動引戸2)
連動引戸2は、例えば食器棚等の引戸として用いられる。連動引戸2は、第一引戸3と第二引戸4と第三引戸5との3枚の引戸を備えている。図1〜図2の例では、第一引戸3を中央にして、第一引戸3の前方(図において左側)に第二引戸4が配置され、第一引戸3の後方(図において右側)に第三引戸5が配置される。第一引戸3と第二引戸4と第三引戸5とは、上枠6と下枠7と左右の縦枠8,9とで形成された戸枠10に収容される。
第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5の下面の両側には各々キャスタ11が取り付けられている。また下枠7には、図3の断面図に示すように、第一引戸3と第二引戸4と第三引戸5の各キャスタ11が走行するトラックとして3条の溝部12が形成されている。さらに上枠6には、第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5の各上端側部を支持する3条の溝部13が形成されている。
第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5が閉じられた閉状態では、第一引戸3の一方側の側部と第二引戸4の側部とが重なり、第一引戸3の他方側の側部と第三引戸5の側部とが重なり、左右方向に連なっている。第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5が開けられた開状態では、第一引戸3と第二引戸4と第三引戸5とが重なった状態で、縦枠8側あるいは縦枠9側に移動される。
(連動引戸用開閉装置1)
連動引戸用開閉装置1は、第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5のうち中央に位置する第一引戸3の上面18に形成される。この連動引戸用開閉装置1は、第一プーリと、第二プーリ21と、無端状ワイヤ31と、第一係合部材34と、テンショナ32を備える。第一プーリは、第一サブプーリ22,23で構成される。第一サブプーリ22と第一サブプーリ23とは、図4の断面図に示すように同軸で上下方向に並べて設けられる。また第一サブプーリ22、23は同じ径に形成された同一の部材で構成することが好ましい。第二プーリ21と第一サブプーリ22,23とは、第一引戸3の上面18の長手方向に設けられる。第一引戸3の上面18は、第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5の移動方向に沿って延長されている。
第二プーリ21は、図4の垂直断面図に示すように第二ブラケット25に取り付けられる。第二ブラケット25には垂直方向に延長された回転軸29が設けられており、第二プーリ21は回転軸29に回転自在に支持される。第二プーリ21が取り付けられた第二ブラケット25は、第一引戸3の上面18にねじ止めされる。
一方第一サブプーリ22、23は、第二ブラケット26に取り付けられる。第二ブラケット26には垂直方向に延長された回転軸30が設けられている。第一サブプーリ22と第一サブプーリ23とは、同一の軸心である回転軸30に回転自在に支持される。第一サブプーリ22と第一サブプーリ23とが取り付けられた第二ブラケット26は、第一引戸3の上面18にねじ止めされる。
このように第一サブプーリ22,23で構成される第一プーリと、第二プーリ21を含む連動引戸用開閉装置1は、第一引戸3の上面18の長手方向に沿って離間して設けられている。好ましくは、第一引戸3の上面18の端部であって、図2、図5等に示すように、第一引戸、第二引戸4、第三引戸5でもって戸枠を閉塞した状態(閉状態)において、第一引戸と第二引戸4の重なる位置、及び第一引戸と第三引戸5の重なる位置に、第二プーリ21と第一プーリをそれぞれ配置する。これによって、第一引戸の上面に連動引戸用開閉装置1を配置しつつ、第二引戸4及び第三引戸5を無端状ワイヤ31に第一係合部材34、第二係合部材38でもってそれぞれ接続できる。なお図2の例では、図において第一引戸の左側に第二引戸4を、右側に第三引戸5を、それぞれ配置しているが、本発明はこの構成に限らず、第二引戸と第三引戸を入れ替えて配置することも可能であることはいうまでもない。
また図6の垂直断面図等に示すように、第二プーリ21,第一サブプーリ22と第一サブプーリ23の外径を第一引戸3の奥行き、すなわち厚みよりも小さくすることで、連動引戸用開閉装置1を第一引戸3の上面18に収めることができる。
(無端状ワイヤ31)
第二プーリ21と第一サブプーリ22、23との間には無端状ワイヤ31がオープン掛けされる。第一プーリと第二プーリ21の間に掛け渡された無端状ワイヤ31は、第一プーリと第二プーリ21との間で、一対の直線部分33、38を構成する。さらにこの無端状ワイヤ31は、テンショナ32によって、第二プーリ21と第一プーリとの間で滑りや脱落を生じ難いよう、適切な張力を付与されている。これにより、直線部分33,38がピンと張られた状態に維持される。
無端状ワイヤ31の一方の直線部分33には、第二引戸4を無端状ワイヤ31に係合するための第一係合部材34が取り付けられる。第一係合部材34は、第二引戸4に連結するための引戸連結部35と、無端状ワイヤ31に連結するためのワイヤ連結部36とを備える。引戸連結部35とワイヤ連結部36とは一体に形成でき、例えば第一係合部材34は、金属製の平板を折り曲げて引戸連結部35とワイヤ連結部36とを形成できる。第一係合部材34の引戸連結部35が第二引戸4に取り付けられ、第一係合部材34のワイヤ連結部36が無端状ワイヤ31の一方の直線部分33にかしめて固定される。
無端状ワイヤ31の他方の直線部分37には、第三引戸5を無端状ワイヤ31に係合する第二係合部材38が取り付けられる。第二係合部材38は金属製の平板を折り曲げて形成される。第二係合部材38の引戸連結部39が第三引戸5に取り付けられ、第二係合部材38のワイヤ連結部40が無端状ワイヤ31の他方の直線部分37にかしめて固定される。
なお、第一係合部材34,第二係合部材38は無端状ワイヤ31にかしめて固定されているが、本発明は係合部材と無端状ワイヤとの連結構造をかしめ構造に限定しない。例えば、無端状ワイヤを金属板で挟み込んで固定することもできる。
第一係合部材34と第二係合部材38とは、好ましくはトラック状に張られた無端状ワイヤ31の点対称な位置に固定される。このような構成によって、第二引戸4又は第三引戸5が第一引戸3に対して相対的に移動すると、無端状ワイヤ31が第一プーリ、第二プーリ21で形成されたトラック状の軌道に沿って移動し、この結果第三引戸5又は第二引戸4も、第一引戸3に対して相対的に同じ距離だけ移動する。
第二プーリ21と第一プーリとを第一引戸の上面18の両側の端部近傍に設置して、第二プーリ21と第一プーリとの間の距離を長く取ることによって、無端状ワイヤ31にかしめられたワイヤ連結部36,40が移動する距離を、第一引戸の上面18の長手方向のほぼ全域とすることができる。これによって、連動引戸2を閉じた状態から開いた状態まで、第二引戸4と第三引戸5を移動させる範囲の全体にて、第一引戸と第二引戸4、第三引戸5とを連動させた開閉移動を実現できる。
(テンショナ32)
テンショナ32は、第一プーリと第二プーリ21との間に掛け渡された無端状ワイヤ31で形成される無限軌道の一部にさらに掛け渡されて、張力を付加するための部材である。具体的には、テンショナ32は無端状ワイヤ31を第一サブプーリ22と第一サブプーリ23との間で、第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5の移動方向に沿って第二プーリ21側に引っ張って無端状ワイヤ31のたわみを防止している。テンショナ32を図7の垂直断面図に示す。この図に示すテンショナ32は、無断状ワイヤを掛けるテンショナプーリ45と、このテンショナプーリ45の位置を調整する位置調整機構とを備える。
(テンショナプーリ45)
無端状ワイヤ31は、一方の第一サブプーリ22からテンショナプーリ45を経て他方の第一サブプーリ23に掛け渡されている。またテンショナプーリ45は、後述する位置調整機構でもって位置を調整できるよう構成されている。この構成によれば、位置調整機構でテンショナプーリ45の位置を調整することでもって、無端状ワイヤ31の張力を調整できる。
さらに無端状ワイヤ31は、第一サブプーリ22、23とテンショナプーリ45との間で十字掛け(クロスベルト)で掛け渡されている。このようにすることで、無端状ワイヤを平行掛け(オープンベルト)する場合に比べて、無端状ワイヤがテンショナ32から外れることを効果的に防止することができる。このテンショナプーリ45は、第一サブプーリと十字掛けされているため、第一サブプーリ22,23とは逆方向に回転する。一方第一サブプーリ22、23は同じ方向に回転する。またテンショナプーリ45は、図5の水平断面図に示すように、平面視において第一プーリ及び第二プーリ21の間に張られた無端状ワイヤ31で形成される一対の直線部分31、37の間に位置するよう配置される。これによって、テンショナプーリ45を付加したことによるテンショナ32の大型化を回避できる。ここでテンショナプーリ45は、第一プーリ及び第二プーリ21よりも小径に形成することが好ましい。
さらにテンショナプーリ45は、図4の垂直断面図に示すように、高さ方向においても無端状ワイヤ31の一対の直線部分の間に位置するよう配置される。具体的には、テンショナプーリ45は、第二プーリ21と第一サブプーリ22との間に張られた無端状ワイヤ31の直線部分33よりも低く、かつ第二プーリ21と第一サブプーリ23との間に張られた無端状ワイヤ31の直線部分37よりも高い位置に配置されている。このような配置によって、付加されたテンショナプーリ45が無端状ワイヤ31と抵触することを回避し、安定的な動作が実現される。
(位置調整機構)
さらにテンショナ32に、位置調整機構を付加することもできる。位置調整機構は、テンショナプーリ45の位置を、第一プーリと第二プーリ21との間で、第二プーリ21側に近付けることで無端状ワイヤ31に張力を付加するよう構成されている。この位置調整機構は、図7に示すように、平板をL字状に折り曲げられた第一テンショナブラケット43と、第二テンショナブラケット44と、これら第一テンショナブラケット43と、第二テンショナブラケット44との間で無端状ワイヤ31に張力を付加する弾性体を備えている。また第二テンショナブラケット44には、テンショナプーリ45が回転自在に取り付けられている。第一テンショナブラケット43と第二テンショナブラケット44とは、それぞれ、平板部分43a、44aと、一方の端部をL字状に折曲させた折曲片43b、44bを有している。第一テンショナブラケット43と、第二テンショナブラケット44は、平板部分同士を重ね合わせて、相対的に摺動自在に配置している。
(弾性体)
また弾性体は、第一テンショナブラケット43と、第二テンショナブラケット44の折曲片43b、44bの間に配置される。具体的には、各折曲片43b、44bにはねじ穴が開口され、このねじ穴に丸棒47を挿通させると共に、この丸棒47の周囲に弾性体を配置する。この丸棒47は、第一テンショナブラケット43と第二テンショナブラケット44との間隔を調整する際のガイドとして使用される。また弾性体にはコイルばね48が使用できる。コイルばね48の空洞に丸棒47を挿通し、コイルばね48の各端縁を、第一テンショナブラケット43の折曲片43bと、第二テンショナブラケット44の折曲片44bにそれぞれ固定し、折曲片43b、44b同士の間隔を狭くするように付勢している。ここでは、第一テンショナブラケット43側を固定することで、第二テンショナブラケット44側を押し出すように、図7において折曲片44bを左側に付勢するように配置している。この状態で、連動引戸用開閉装置1を連動引戸に固定する際、位置調整機構でもって第二テンショナブラケット44に装着されたテンショナプーリ45の位置を変更することで、無端状ワイヤ31の張力を、第一プーリと第二プーリ21の間で外れ難い張力に調整する。なお、上記の構成は一例であり、例えば第二テンショナブラケット44側を固定し、テンショナプーリ45を装着した第一テンショナブラケット43側を摺動自在として、コイルばね48でもって折曲片43bを折曲片44bに引っ張るように付勢しても同様の効果が得られる。さらに、第一テンショナブラケット43と、第二テンショナブラケット44とを重ね合わせる平板部分には、いずれか一方にねじ穴を、他方には第一テンショナブラケット43と第二テンショナブラケット44とを摺動させる方向に延長された長穴を、それぞれ形成している。これにより、無端状ワイヤ31の張力を最適に調整した位置にて、第一テンショナブラケット43と第二テンショナブラケット44とを、第一引戸の上面18にねじ止めで固定する。これにより、無端状ワイヤ31の張力を、戸枠毎に個別に適切に調整できるので、連動引戸用開閉装置1や戸枠の個体差によらず、連動引戸を一定の精度で適切に機能させることができる。また、戸枠のサイズが異なる場合であっても、連動引戸用開閉装置でもってテンショナプーリ45の固定位置を変更することにより対応できるので、異なるサイズの戸枠毎に連動引戸用開閉装置を個別に用意することなく、共通の連動引戸用開閉装置を用意することで足り、管理や製造コストの削減が実現される。
なお、この例ではテンショナプーリを固定式としているが、テンショナプーリを固定せず、常時付勢した状態とすることもできる。この場合は、連動引戸を使用するにつれて、無端状ワイヤの張力が低下するなど、変動した場合でも、このような張力の変化に応じて弾性体でもって一定の張力に調整できる利点が得られる。
また、丸棒47は第一テンショナブラケット43と第二テンショナブラケット44との間隔を調整する際のガイドとして使用されているが、丸棒は必ずしも必須でなく、これを省略してもよい。
テンショナプーリ45に張力を与えるコイルばね48の軸心は、第一引戸3と第二引戸4と第三引戸5との移動方向に向いているので、テンショナ32の幅を幅狭に形成することができる。これによって、テンショナ32を無端状ワイヤ31の直線部分33,37間に設置することができ、テンショナ32を設けるために連動引戸用開閉装置1が大型化することを防止することができる。
テンショナ32は、第一サブプーリ22、23間に掛け渡された無端状ワイヤ31をクロス掛けした状態で引っ張るので、オープン掛けする場合に比べて、無端状ワイヤ31を安定した状態で張ることができ、無端状ワイヤ31がテンショナ32から外れることを防止できる。
この連動引戸用開閉装置1では、一定の長さの無端状ワイヤ31を使用して、引戸の幅方向の長さに応じて決まる第二プーリ21と第一サブプーリ22、23との間の距離に応じて、無端状ワイヤ31の余剰分の長さをテンショナ32の設置位置で吸収することができる。いいかえると、無端状ワイヤ31の長さを、予め引戸の長さの長い場合に合わせておき、これよりも小さい引戸に対しては、テンショナプーリ45自体の設置位置を変更することで、無端状ワイヤ31の余剰分の長さを吸収する。さらに、位置調整機構を付加することで、無端状ワイヤ31の張力を適切に調整することも容易となる。なお、引戸の幅方向の長さは、戸枠の大きさによって様々なものが考えられる一方、引き戸の厚さについては、概ね一定であることから、薄い肉厚の引戸に設置可能な連動引戸用開閉装置となるよう予め設計しておくことで、共通の連動引戸用開閉装置でもって、多くのタイプの引戸に対して連動機能を付加することが可能となる。このようにして、第二プーリ21と第一サブプーリ22、23との間の距離、すなわち引戸の長さに関わらず、一定の長さの無端状ワイヤ31を共通して使用することができる。これによって、一つのタイプの連動引戸用開閉装置でもって、異なる幅寸法の引戸に対応することができる。
本実施の形態に係る連動引戸用開閉装置1は、第一引戸3の上面18にコンパクトに設置することができる。連動引戸用開閉装置1は、上枠6の溝部13に外部から見えない状態で設置されるので、第一引戸3の外観をすっきりとさせることができる。例えば、第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5にガラス窓を設けて食器棚等として使用することができる。
第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5は、下面に設置されたキャスタ11が、下枠7の3条の溝部12を転がって移動し、連動引戸用開閉装置1は第一引戸3、第二引戸4、第三引戸5の上面18に設置されるが、これに限定されるものではなく、例えば第一引戸、第二引戸、第三引戸の上面側を上枠に吊り下げた状態で移動可能として、連動引戸用開閉装置を第一引戸、第二引戸、第三引戸の下面側に設置することもできる。
以上の構成の連動引戸用開閉装置1によれば、無端状ワイヤ31の張力の調整を容易にできる利点が得られる。従来の連動引戸用開閉装置によれば、図32に示すように、上レール102の奥行き方向の中央に位置する摺動溝101bに摺動部材104bが配置される。この摺動部材104bのプーリ105に掛けられる無端状ワイヤ106に弛みや滑りが生じないように、無端状ワイヤ106に適度な張力を与えた状態で取り付けなければならない。このため、プーリ105の取り付け位置を調整することで無端状ワイヤ106の張力を調整しなければならないところ、このようなプーリ105の取り付け位置の調整作業が難しく、手間がかかるという問題があった。また、一旦プーリ105を取り付けた後に、無端状ワイヤ106が弛んで、無端状ワイヤ106がプーリ105から外れることがある。この場合には、再度無端状ワイヤ106をプーリ105に掛け直す必要があり、この作業も容易でない。
これに対して、本発明の実施の形態に係る連動引戸用開閉装置1によれば、位置調整機構でもってテンショナプーリ45の位置を移動させることで無端状ワイヤ31の張力を容易に調整でき、また調整後のテンショナプーリ45の位置にて容易に固定できるため、取り付け作業も簡略化できる。
(ストッパ)
なお、第一引戸3に対して第二引戸4、第三引戸5を移動させるとき、第二引戸4、第三引戸5がオーバーランして、第二引戸4、第三引戸5を無端状ワイヤ31にそれぞれ係合している第一係合部材34,第二係合部材38が第二プーリ21,第一サブプーリ23に乗り上がることを防止するために、第一引戸3の前面側に第二引戸4のオーバーランを防止する不図示のストッパを設け、第一引戸3の後面側に第三引戸5のオーバーランを防止する不図示のストッパを設けることもできる。
(ロック機構)
第二引戸4が閉じられた状態で第二引戸4をロックし、あるいは、第三引戸5が閉じられた状態で第三引戸5をロックするロック機構が設けられている。以下、第三引戸5をロックするロック機構について図8〜図11に基づいて説明する。第三引戸5の上面56の戸先側には係合凸部57が設けられており、上枠6の溝部13には回動部材59が設けられている。回動部材59は、下方にばねで付勢された状態で水平方向の軸心を中心として上下に回動可能である。
図8に示すように、第三引戸5を閉じて行くと、上面56の戸先側に設けた係合凸部57が、ばね付勢されて下方に回動している回動部材59に当接する。係合凸部57は、ばね力に抗して回動部材59を上方に押し上げる。第三引戸5がさらに閉方向に移動して縦枠9に当接すると、回動部材59は係合凸部57から離れて、ばね力によって元の下方に回動した位置に戻る。このとき、回動部材59の端面60が係合凸部57の背面61に当接して係合凸部57は固定される。このときの状態を図9に示す。これによって第三引戸5は閉じた状態でロックされる。
次に、第三引戸5のロックを解除する手順について説明する。第三引戸5の戸先には、縦方向に細長で、上下方向の軸心を中心として回動可能なハンドルバー62が設けられている。第三引戸5の上面に設けられた係合凸部57の内部には、ハンドルバー62に連結されたガイド部材63が設けられている。ハンドルバー62を回動させると、図10に示すように、係合凸部57の端部からガイド部63が突出する。ガイド部63の端面には傾斜面64が形成されており、第三引戸5を開方向に移動させると、この傾斜面64が回動部材59の傾斜面65に当接して、回動部材59を上方に押し上げる。係合凸部57の背面61と回動部材59の端面60との当接が解除されて、係合凸部57は開方向に移動可能となる。これによって、図11に示すように、第三引戸5を開方向に移動させることができる。
図12は、第二引戸4をロックした状態で、各引戸を閉塞した閉状態から第三引戸5を開方向に少し移動させた連動引戸2の正面図である。図13は、このときの連動引戸2の平面図である。第二引戸4が縦枠8側にロックされた状態で、第三引戸5を第二引戸4側に移動すると、第三引戸5に取り付けられた第二係合部材38を介して、連動引戸用開閉装置1の無端状ワイヤ31が動かされる。これによって、無端状ワイヤ31の一方の直線部分33に固定された係合部材33と、無端状ワイヤ31の他方の直線部分37に固定された第二係合部材38とが第一引戸3の中央部に向かって移動する。第三引戸5が第一引戸3の後面側に移動し、第二引戸4が第一引戸3の前面側に移動する。
そして、無端状ワイヤ31の一方の直線部分33に固定された係合部材33と、無端状ワイヤ31の他方の直線部分37に固定された第二係合部材38とが第一引戸3の中央部ですれ違い、逆方向に移動する。第三引戸5が第一引戸3の後面側に重なり、第二引戸4が第一引戸3の前面側に重なって全開となる。図14は、全開にした連動引戸2の正面図であり、図15は、全開にした連動引戸2の平面図である。
(実施の形態2)
以上説明した連動引戸用開閉装置1では、プーリを水平姿勢に、すなわち回転軸が鉛直方向となる姿勢に保持して配置した例を説明した。ただ、本発明はこの構成に限らず、例えばプーリを垂直姿勢、すなわち回転軸が水平方向となる姿勢に保持して配置することもできる。このような例を実施の形態2に係る連動引戸用開閉装置71として、図16〜図25に基づいて説明する。これらの図において、図16は実施の形態2に係る連動引戸の背面図、図17は連動引戸を閉じた状態の上枠を外した平面図、図18は連動引戸を閉じた状態の垂直断面図、図19は連動引戸用開閉装置71の背面図、図20は連動引戸用開閉装置71の上枠を外した平面図、図21は図18の連動引戸用開閉装置71の要部拡大断面図、図22は連動引戸を一部開けた状態の背面図、図23は連動引戸を一部開けた状態の上枠を外した平面図、図24は連動引戸を全開にした状態の背面図、図25は連動引戸を全開にした状態の上枠を外した平面図を、それぞれ示している。なお、本発明の実施の形態1の説明と重複する部分については説明を省略し、同一の参照符号にBを付して用いることとする。
(連動引戸用開閉装置71)
連動引戸用開閉装置71は、図16〜図18に示すように、戸枠10Bに第一引戸3B、第二引戸4B、第三引戸5Bが挿入されている。このうち、中央に位置する第一引戸3Bの背面側の上部に段付き状の凹面73が形成されており、連動引戸用開閉装置71は、この凹面73に設置される。
(プーリ)
図19〜図21に示すように、連動引戸用開閉装置71は、第二プーリを構成する第二サブプーリ76,77と、第一プーリを構成する第一サブプーリ78,79とを備える。第二サブプーリ76と第二サブプーリ77とは上下方向に並べて設けられ、また第一サブプーリ78と第一サブプーリ79も上下方向に並べて設けられる。第二サブプーリ76,77と第一サブプーリ78,79とは、第一引戸3Bと第二引戸4Bと第三引戸5Bとの移動方向に沿って設けられる。
第二サブプーリ76と第二サブプーリ77とは第二ブラケット80に取り付けられる。第二ブラケット80には水平方向に向いた回転軸81,82が設けられており、第二サブプーリ76と第二サブプーリ77とはこの回転軸81,82に回転自在に支持される。一方、第一サブプーリ78と第一サブプーリ79は、第一ブラケット83に取り付けられる。第一ブラケット83には水平方向に向いた回転軸84,85が設けられており、第一サブプーリ78と第一サブプーリ79とはこの回転軸84,85に回転自在に支持される。第二サブプーリ76と第二サブプーリ77とが取り付けられた第二ブラケット80と、第一サブプーリ78と第一サブプーリ79とが取り付けられた第一ブラケット83とは第一引戸3の背面側で上部の凹面73にねじ止めされる。
(無端状ワイヤ87)
第二サブプーリ76,77と第一サブプーリ78,79との間には無端状ワイヤ87がオープン掛けされる。この無端状ワイヤ87はテンショナ32Bによって張力を付与されている。無端状ワイヤ87の一方の直線部分88には、第二引戸4を無端状ワイヤ87に係合する第一係合部材89が取り付けられる。
(第一係合部材89)
第一係合部材89は、図19、図20等に示すように引戸連結部90とワイヤ連結部91を備える。第一係合部材89の引戸連結部90は、第二引戸4に取り付けられる。また第一係合部材89のワイヤ連結部91は、無端状ワイヤ87の一方の直線部分88にかしめて固定される。この第一係合部材89は、金属製の平板を折り曲げる等して形成される。
(第二係合部材95)
無端状ワイヤ87の他方の直線部分94には、第三引戸5Bを無端状ワイヤ87に係合する第二係合部材95が取り付けられる。第二係合部材95は、図19、図20等に示すように引戸連結部96とワイヤ連結部97を備える。第二係合部材95の引戸連結部96は、第三引戸5に取り付けられる。また第二係合部材95のワイヤ連結部97は、無端状ワイヤ87の他方の直線部分94にかしめて固定される。この第二係合部材95も、金属製の平板を折り曲げて形成される。
上述した実施の形態1においては、第一係合部材34と第二係合部材38は同一の形状の部材を利用できたが、実施の形態2においては、第一係合部材89と第二係合部材95は異なる形状としている。すなわち第一係合部材89は、無端状ワイヤ87の一方の直線部分88と連結されるところ、図19、図20に示すように連動引戸用開閉装置71を設けたのは、第一引戸3Bの背面側であり、一方第二引戸4Bは第一引戸3Bの正面側に位置する。そこで、第一係合部材89は、第一引戸3Bの上面18Bを跨いで、第一引戸3Bと無端状ワイヤ87の一方の直線部分88と連結している。このため第一係合部材89のワイヤ連結部91は、鉛直姿勢に固定される引戸連結部90から断面視コ字状に折曲される。また水平姿勢に折曲されたワイヤ連結部91は、第一引戸3Bの上面18Bから上方に離間される。これにより、第二引戸4Bを第一引戸3Bに対して移動させても、ワイヤ連結部91が第一引戸3Bに接触することなく、スムーズな開閉動作が維持される。なお、この例では第一係合部材89、第二係合部材95はかしめて無端状ワイヤ87に固定されているが、本発明は固定構造をこの構造に限定するものでなく、例えば無端状ワイヤを金属板で挟み込んで固定することもできる。
第一係合部材89と第二係合部材95とは、無端状ワイヤ87の対称な位置に固定される。これによって、第二引戸4Bと第三引戸5Bとの第一引戸3Bに対する移動距離を等しくすることができる。第二サブプーリ76,77と第一サブプーリ78,79とを第一引戸3Bの背面側の上部に形成された凹面73の両側部に設置して、第二サブプーリ76,77と第一サブプーリ78,79との間の距離を長く取ることによって、無端状ワイヤ87にかしめられた第一係合部材89、第二係合部材95が移動する距離を長く取ることができる。これによって、連動引戸72が閉じた状態から開いた状態までの間に移動する第二引戸4Bと第三引戸5Bとの距離を長く取ることができる。
(テンショナ32B)
テンショナ32Bは、図19に示すように第一サブプーリ78と第一サブプーリ79との間で、第一引戸3B、第二引戸4B、第三引戸5Bの移動方向に沿って、無端状ワイヤ87を第二サブプーリ76,77側に引っ張って、無端状ワイヤ87のたわみを防止している。このテンショナ32Bは、平板をL字状に折り曲げられた第一テンショナブラケット43Bと、第二テンショナブラケット44Bとを備えている。上述した図7と同様、第一テンショナブラケット43Bと第一引戸3Bの凹面73との間に第二テンショナブラケット44Bを摺動可能に挟み込んだ状態で、第一テンショナブラケット43Bが第一引戸3Bの凹面73に取り付けられる。第一テンショナブラケット43Bにはテンショナプーリ45Bが回転自在に取り付けられている。また第二テンショナブラケット44Bの折曲片44Bbに取り付けられた丸棒47Bにコイルばね48Bが装着される。
テンショナプーリ45Bに張力を与えるコイルばね48Bの軸心は、第一引戸3Bと第二引戸4Bと第三引戸5Bとの移動方向に向いているので、第一引戸3B、第二引戸4B、第三引戸5Bの移動方向と直交する方向のテンショナ32Bの幅を幅狭にすることができる。テンショナ32Bを無端状ワイヤ87の直線部分88,94間に設置することができるので、テンショナ32Bを設けるために連動引戸用開閉装置が大型化することを避けることができる。
図22は、第二引戸4Bをロックした状態で、閉状態から第三引戸5Bを開方向に少し移動させた連動引戸2の背面図である。図23は、このときの連動引戸72の平面図である。第二引戸4Bが縦枠8側にロックされた状態で、第三引戸5Bを第二引戸4B側に移動すると、第三引戸5に取り付けられた第二係合部材95を介して、連動引戸用開閉装置71の無端状ワイヤ87が動かされる。これによって、無端状ワイヤ87の一方の直線部分88に固定された第一係合部材89と、無端状ワイヤ87の他方の直線部分94に固定された第二係合部材95とが第一引戸3Bの中央部に向かって移動する。図22、図24の背面図において、第三引戸5Bが第一引戸3Bの後面側に移動し、第二引戸4Bが第一引戸3Bの前面側に移動する。
そして、無端状ワイヤ87の一方の直線部分88に固定された第一係合部材89と、無端状ワイヤ87の他方の直線部分94に固定された第二係合部材95とが第一引戸3Bの中央部ですれ違い、逆方向に移動する。第三引戸5Bが第一引戸3Bの後面側に重なり、第二引戸4Bが第一引戸3Bの前面側に重なって全開となる。図24は、全開にした連動引戸72の背面図であり、図25は、全開にした連動引戸72の平面図である。
この構成によれば、第二サブプーリ76,77と第一サブプーリ78,79との間の距離に関わらず、一定の長さの無端状ワイヤ87を使用することができる。一定の長さの無端状ワイヤ87を使用すると、定められた第二サブプーリ76,77と第一サブプーリ78,79との間の距離に応じてテンショナ32Bの設置位置が変化するものの、テンショナ32Bは、第二サブプーリ76,77と第一サブプーリ78,79との間の任意の位置に設置することができるので対応可能となる。
実施の形態2に係る連動引戸用開閉装置71は、第一引戸3Bの背面側に設置されているので、正面側からは見えず、外観が悪くなる事態を回避できる。その一方で、背面側では、第一引戸3B、第二引戸4B、第三引戸5Bを外さずに連動引戸用開閉装置71を目視することができ、保守点検が容易となる。例えばテンショナ32Bのコイルばね48Bを交換してテンション調整することも容易となる。
また、この連動引戸用開閉装置71では、無端状ワイヤ87は同一平面上に設置された第二サブプーリ76,77,第一サブプーリ78,79,テンショナプーリ45Bに掛けられているので、無端状ワイヤ87が受ける摩擦抵抗が小さくなる。これによって、使用者は第一引戸3B、第二引戸4B、第三引戸5Bをスムーズに開閉することができる。
このように実施の形態2に係る連動引戸用開閉装置71においては、プーリを水平姿勢でなく垂直姿勢に配置したことで、連動引戸用開閉装置71の設置スペースの奥行きを薄くできるので、厚さの薄い引戸に対しても適用できる。このように、引戸の厚さによらず連動引戸用開閉装置71を適用可能とできる利点が得られる。例えば図32に示す従来の連動引戸用開閉装置では、プーリ105を水平姿勢として無端状ワイヤ106を掛けていることから、ある程度の奥行きが必要となり、引戸の厚さが十分な場合にしか適用できないという問題があった。引戸の用途によっては、例えば食器棚のような厚みの薄い引戸に対しても、引戸の連動機能を付加させたいこともある。そこで、実施の形態2に示すようにプーリを垂直姿勢に配置したことで、連動引戸用開閉装置71を狭幅なスペースに取り付け可能とし、、引戸の厚さが薄い場合でも適用することができる。
特に図16等に示すように、2つのプーリを横並びに配置する態様では、これらのプーリを水平に並べると奥行きが増し、第二引戸と第三引戸の間隔を広く取る必要が生じる。いいかえると、引戸の厚さが薄い場合には適用し難い。これに対して実施の形態2に係る連動引戸用開閉装置71では、プーリを縦置き、すなわち垂直姿勢に配置することで、その設置スペースの奥行きを薄くすることができ、肉厚の薄い引戸、例えば食器棚のような用途にも適用できる。
なお、引き戸が厚い場合、あるいは第二引戸と第三引戸の間隔が広いような用途においては、上述した実施の形態2に係る連動引戸用開閉装置71を、実施の形態1と同様に水平姿勢に配置することも可能であることはいうまでもない。特に実施の形態1においては、連動引戸用開閉装置1の設置スペースの高さを低く抑えることができるという利点が得られる。
(変形例)
また上述した実施の形態1、2では、位置調整機構に第一テンショナブラケットと第二テンショナブラケットを重ねて摺動式とした例を説明したが、本発明は位置調整機構をこの構成に限定しない。限られない。例えば図26の変形例に係る連動引戸用開閉装置に示すように、第一テンショナブラケット43Cと第二テンショナブラケット44Cを離間して設けてもよい。この図に示す位置調整機構は、第二テンショナブラケット44Cの平板部分を、第一テンショナブラケット43Cの平板部分と重ねるのでなく、断面視L字状に折曲された折曲片同士を対向させる姿勢に離間させて配置し、この折曲片同士の間に弾性体を配置している。また、第二テンショナブラケット44C側を固定し、第一テンショナブラケット43C側を第一引戸の上面の長手方向に沿って摺動式とすると共に、弾性体であるコイルばね48Cによって第二プーリ21C側に引き寄せるよう付勢している。この状態で、連動引戸用開閉装置を連動引戸に設置する際、テンショナプーリ45Cを設けた第一テンショナブラケット43Cの位置が、第一プーリ22Cと第二プーリ21Cと間に張られた無端状ワイヤ31Cの張力が最適となる位置にコイルばね48Cによって調整される。この構成であれば、第一テンショナブラケット43Cと第二テンショナブラケット44Cの折曲片同士の間に渡す丸棒を不要にできる。また第一テンショナブラケット43Cと第二テンショナブラケット44Cを重ねる必要がないため、第二テンショナブラケット44Cの長さを短くでき、さらにテンショナブラケットの厚さ分だけ位置調整機構の高さを抑制できる。一方上述した実施の形態1、2の構成では、位置調整機構の横幅をコンパクトにできる利点が得られる。
さらに上述した実施の形態1、2では、連動引戸用開閉装置に無端状ワイヤを用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、無端状ワイヤとプーリ間の滑りを防止するために、無端状ワイヤに代えて、あるいはこれに加えて、例えばタイミングベルトを使用することもできる。
次に、第二引戸4、第三引戸5を、それぞれ第一係合部材34、第二係合部材38でもって無端状ワイヤ31に連結構造を示す垂直拡大図(図6の拡大図)を、図27に示す。この図に示す構成では、第一引戸3を中心として、外側(図において左側)に第二引戸4を、内側(図において右側)に第三引戸5を、それぞれ配置している。また無端状ワイヤ31には、第一係合部材34と第二係合部材38がそれぞれ係止されている。第一係合部材34は、ワイヤ連結部36と引戸連結部35で構成される。第一係合部材34の引戸連結部35は、第二引戸4に固定される。また第一係合部材34のワイヤ連結部36は、無端状ワイヤ31の一方の直線部分33にかしめて固定される。ここで第一係合部材34の引戸連結部35は、ねじ穴35bを2つ開口しており、第二引戸4にねじ止めにより固定されている。
さらに図28の斜視図に示すように、引戸連結部35は側面を折曲されて、この側面折曲片35cを第二引戸4の端面に沿わせると共に、この部分にもねじ孔を開口し、ねじ止めにより第二引戸4に固定することもできる。同様に第二係合部材38も、ワイヤ連結部40と引戸連結部39で構成され、引戸連結部39は第三引戸5にねじ止めにより固定され、ワイヤ連結部40は無端状ワイヤ31の他方の直線部分37にかしめて固定されている。
この構成では、第二引戸4と第三引戸5は、それぞれ第一係合部材34、第二係合部材38を介して、無端状ワイヤ31に固定されいる。このため、修理や補修の際に、第二引戸4や第三引戸5を、戸枠から脱離することが困難となる。また、図28の斜視図に示すように、引戸の端面に係合部材の側面折曲片35cやこれを固定するためのねじ頭が露出するため、引戸の開閉時にはこれらの係合部材が目立ち、見栄えも悪くなる。
(係合側着脱機構)
そこで、第二引戸や第三引戸を、第一係合部材、第二係合部材から着脱式として、補修や交換作業を容易にする。このような構成を変形例に係る連動引戸用開閉装置として図29の垂直断面図に示す。この図に示す第一係合部材34’は、図30の斜視図に示すように、引戸連結部35’と、この上端で折曲されたワイヤ連結部36’を備える。ワイヤ連結部36’は、無端状ワイヤ31’の一方の直線部分33’をかしめて固定する。引戸連結部35’は平板状で、第二引戸4’との着脱機構を備える。具体的には、係合側着脱機構として引戸連結部35’に磁石50を固定している。磁石50にはネオジム磁石のような磁力の強い希土類焼結磁石が好適に利用できる。また図30の例では、中央を開口した円形の磁石50を用いており、ねじ穴35b’を開口した引戸連結部35’とねじ止めにより容易に固定できる。この例では、縦方向に延長された引戸連結部35’に二箇所、磁石50を固定している。
(引戸側着脱機構)
さらに第二引戸4’にも、第一引戸3’側の第一係合部材34’との引戸側着脱機構を設けている。引戸側着脱機構には、係合側着脱機構と対応して、例えば金属板が利用できる。具体的には、図31の斜視図に示すように、金属板52を固定している。金属板52は、第二引戸4’の、第一係合部材34’との接合部分に形成された凹部54に埋設されている。凹部54は、第一係合部材34’の引戸連結部35’よりも大きく開口され、好ましくは引戸連結部35’の外形に沿ってほぼ同じ大きさとする。これにより、第二引戸4’を操作する際、第一係合部と第二引戸4’とのがたつきを回避できる。図31の例では、凹部54を垂直方向に延長し、かつ端縁を面取りしたトラック形状としている。この形状であれば、円形の磁石50とのクリアランスを調整し易くできる。また必要に応じて引戸連結部35’に形成するねじ穴の少なくとも一方を長孔として、磁石50の取り付け位置の微調整を可能とすることで、係合側着脱機構である磁石50を、第二引戸4’の凹部54に隙間なく挿入できる。さらに凹部54の深さは、図29の垂直断面図に示すように、金属板52と磁石50の厚さの和とほぼ等しくする。これにより、引戸連結部35’の取り付け位置が第二引戸4’の表面とほぼ同一平面となり、上述した図27と同様のスムーズな開閉動作が可能となる。
以上のように、第一係合部材34’と第二引戸4’とを着脱式とすることで、第二引戸4’を戸枠に装着する際、着脱機構でもって装着するのみで足り、図27のようなねじ止め等の作業をなくして、取り付け作業を大幅に簡略化できる。また同様に、メンテナンス時や修理時においても、第二引戸4’を戸枠から取り外す際の作業性が向上する。加えて、図30に示す第一係合部材34’は、図28の斜視図の例と異なり、第二引戸4’の端面に表出しないので、使用時の見栄えも向上できる利点が得られる。一方で、通常の使用時においては、着脱機構でもって第二引戸4’と第一係合部材34’との連結状態が維持され、無端状ワイヤ31’を介した連続開閉動作も実現される。特にネオジム磁石のような磁力の強い磁石は、保持力が強く、長期に渡って安定して使用できる。一方で、第二引戸4’から第一係合部材34’を分離する際には、第一係合部材34’と第二引戸4’との間にマイナスドライバの先端を挿入するなどして、こじ開けるようにして分離することができる。
また上述した第一係合部材34’と第二引戸4’との着脱機構は、第二係合部材38’と第三引戸5’との着脱機構にも同様に適用できる。すなわち図29の垂直断面図に示すように、第二係合部材38’は、引戸連結部39’とワイヤ連結部40’を備える。ワイヤ連結部40’は、無端状ワイヤ31’の他方の直線部分37’をかしめて固定する。引戸連結部39’に係合側着脱機構として磁石50を固定すること、また第三引戸5’に引戸側着脱機構として金属板52及び凹部54を備えることも、上述の通りである。
なお以上の例では、係合側着脱機構に磁石を、引戸側着脱機構に金属板を用いた例を説明したが、逆に係合側着脱機構に金属板を、引戸側着脱機構に磁石を用いてもよいことはいうまでもない。また本発明は着脱機構を磁石を用いた構成に限定せず、十分な連結力を維持しつつ、着脱可能な既存の連結機構が適宜利用できる。例えば面ファスナを使用したり、フックやホックといった連結部材を利用してもよい。
以上の例では、引戸の上面側に連動引戸用開閉装置を設ける例について説明した。この構成は、例えば引戸の底面をレール上に載置して摺動させるような、引戸の上面側に空間のある構成において好適に利用できる。ただ本発明は、連動引戸用開閉装置を引戸の上面側に設ける例に限られず、引戸の下面側に設けることも可能である。例えば、引戸の上端を上枠で懸吊した状態でスライドさせる態様においては、下面側に空間が設けられるために、この部分に連動引戸用開閉装置を設けることが可能となる。
さらに、以上の例では第一引戸と第二引戸と第三引戸の3枚の引戸で構成した連動引戸について説明したが、本発明は引戸の枚数を3枚に限定するものでなく、4枚以上とすることもできる。あるいは、第一引戸と第二引戸のみで構成することもできる。