JP2015211687A - プロセスチーズ類 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱溶融後に、高温保持もしくはエージングを必要とせず、適度な耐熱保形性を有し、かつ、冷蔵保存中における耐熱保形性の経時変化が少ない、プロセスチーズ類の提供。【解決手段】原料チーズ100重量%に対してに、ピロリン酸塩を含む溶融塩0.1〜5.0重量%とホエイタンパク質とを0.1〜4.0重量%添加して加熱溶融することで、エージングを必要とせず、かつ、適度な耐熱保形性が付与され、かつ、冷蔵保存中における耐熱保形性の経時変化が少ない特徴を有する、プロセスチーズ類。前記溶融塩が、ピロリン酸塩と他の溶融塩の配合比率が1:4〜3:2であるプロセスチーズ類。【選択図】なし

Description

本発明は、適度な耐熱保形性を有する優れたプロセスチーズ類に関する。
プロセスチーズは、ナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化したものである。一般に、粉砕したナチュラルチーズに、溶融塩および水を混合し、加熱しながら混練し、溶融した乳化物を充填し、冷却・成型することで製造される。プロセスチーズ類は、風味が穏やかで、成型性に優れ、加熱殺菌されることにより保存性も良く、ナチュラルチーズにはない利点を持っていることから、世界中で生産・消費されており、我が国においても広く普及している。
プロセスチーズ類は、調理用途に応じて様々な機能性を求められる。例えば、ピザへのトッピング用では加熱溶融性と糸曳き性などが求められ、水産練り製品や製パン用では耐熱性などが求められる。これらの機能性は、製造方法を工夫することでプロセスチーズ類に付与できる。そしてこれらの機能性は、プロセスチーズ類の保存中に変化が少なく安定的に維持されることが重要である。
プロセスチーズ類に耐熱性を付与する技術として、ナチュラルチーズを常法により、加熱溶融し、限定した条件のもとでエージングする方法(特許文献1)や、乳化したプロセスチーズ類を冷却せずに高温で保持する方法(特許文献2)や、チーズに卵白タンパク質および乳清タンパク質を添加する方法(特許文献3)や、溶融塩にクリーミング効果が高い、ピロリン酸塩などを使用する方法(非特許文献1)が公知である。
しかし、特許文献1の方法では、個別包装したチーズをエージングする必要があるため、包装したチーズを保温する施設が必要となり、製造の簡略化という観点で好ましくない。また、室温以上の高温度帯で保存する場合は、細菌増殖の危険性があり、熱によりチーズの風味が劣化するという観点からも好ましくない。特許文献2の方法では、高温で保持することにより、溶融したチーズの粘性が高くなり、送液や充填などが困難となり、送液ラインの目詰まりなどの製造トラブルや充填量のばらつきが大きくなるなどの品質上のトラブルが起きるため好ましくない。また、スライスチーズの製造設備などで一般に用いられている、加熱溶融したチーズを充填後に冷水で急速に冷却する設備においての製造が困難である。特許文献3の方法では、チーズに乳製品以外の添加物を添加する必要があり、アレルギー物質の混入および卵白由来の風味悪化がある。また、耐熱性を付与するために卵白の添加量を上げると、特許文献2の方法と同様に溶融したチーズの粘性が高くなり、送液や充填などが困難となる。
非特許文献1の方法では耐熱性は付与できるが、特許文献2の方法と同様に溶融チーズの粘性が高くなり、送液や充填などが困難となる。またチーズ保存中の耐熱性の経時変化が非常に大きく、本発明の様な適度な耐熱保形性を付与するためのコントロールが非常に困難である。
またαsカゼイン比率が25重量%以上の原料チーズを使用し、かつ、安定剤、溶融塩、油脂を含み、加熱乳化されてなる展延性および耐熱保形性を有するチーズ(特許文献4)、αsカゼイン比率が5〜50重量%であるチーズ、溶融塩、乳化剤および増粘多糖類を含有し、加熱調理時の耐熱保形性と加熱調理後の加熱調理器具に対する剥離性を有するプロセスチーズ類(特許文献5)、脂肪中に、炭素数が指定された、モノグリセリド、ジグリセリドを含有する、加熱冷却後も硬くならず耐熱保形性が良好なチーズ(特許文献6)などが公知である。これら特許文献4〜6は、チーズに展延性、加熱調理後の軟らかさおよび加熱調理器具に対する剥離性を付与することが目的である点や安定剤と油脂の添加や脂肪組成の条件が必要である点などで、本発明とは異なるものである。
この様に従来技術では、加熱溶融することにより乳化したチーズ原料を高温保持もしくはエージングをしない簡便な方法で、50〜90%の適度な耐熱保形性を安定的に維持するプロセスチーズ類を得ることはできなかった。
特公昭57-55380号公報 特開2001-149008号公報 特許第3408889号公報 特許第3103331号公報 特許第3410401号公報 特許第4125850号公報
現代チーズ学(2008)、p219〜221
本発明は、このような技術背景のもと、加熱溶融後に、高温保持もしくはエージングを必要とせず、適度な耐熱保形性を有し、かつ、冷蔵保存中における耐熱保形性の経時変化が少ない、プロセスチーズ類を提供するものである。
一般に、プロセスチーズ類に耐熱保形性を付与するには、加熱溶融したプロセスチーズ類を高温で保持する方法、溶融塩にピロリン酸塩を使用する方法などがあるが、これらの方法は、製造方法が複雑である上に、得られたチーズの耐熱保形性が適度ではなく、また、冷蔵保存下における耐熱保形性の経時変化も大きかった。
本発明者らは、鋭意検討の結果、原料チーズに、ピロリン酸塩を含む溶融塩とホエイタンパク質を添加して加熱溶融することで、エージングを必要とせず、かつ、適度な耐熱保形性が付与され、かつ、冷蔵保存中における耐熱保形性の経時変化が少ない、プロセスチーズ類を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下からなる。
〔1〕原料チーズに、溶融塩とホエイタンパク質を添加して加熱溶融することを特徴とし、耐熱保形性が50〜90%であるプロセスチーズ類。
〔2〕原料チーズ100重量%に、ピロリン酸塩を含む溶融塩を0.1〜5.0重量%とホエイタンパク質を0.1〜4.0重量%添加することを特徴とし、かつ、溶融塩のうち、ピロリン酸塩とその他の溶融塩の配合比率が1:4〜3:2である前記〔1〕に記載のプロセスチーズ類。
〔3〕前記〔1〕〜〔2〕いずれか1つに記載のプロセスチーズ類を、10℃以下で保存した時に、冷蔵保存後も耐熱保形性が50〜90%であり、保存開始時の耐熱保形性と保存後の耐熱保形性の差が35%以内であるプロセスチーズ類。
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕いずれか1つに記載のプロセスチーズ類を含有すること、を特徴とする食品。
〔5〕加熱溶融したチーズ原料を、高温保持せず及び/又はエージングしないことを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕いずれか1つに記載のプロセスチーズ類の製造方法。
〔6〕加熱溶融したチーズ原料を冷却開始から20分以内にチーズ原料が60℃以下になるように急速に冷却することを特徴とする前記〔5〕に記載の方法。
本発明により、加熱溶融後の高温保持もしくはエージングを行わずに適度な耐熱保形性を有し、かつ、冷蔵保存中における耐熱保形性の経時変化が少ない、プロセスチーズ類を提供することができる。
実施例1における、試作品No.1〜No.7の保存期間(月)における耐熱保形性(%)を示すグラフである。 実施例4における、試作品No.3(左)、試作品No.6(中)及び試作品No.7(右)のパン焼成後の画像(パン上部より撮影)。 実施例4における、試作品No.3(左)、試作品No.6(中)及び試作品No.7(右)のパン焼成後の画像(パン断面を撮影)。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に述べる個々の形態には限定されない。
本発明における「プロセスチーズ類」とは、乳等省令及び公正競争規約に定められるプロセスチーズ及びチーズフード、および、加熱溶融の工程を経て得られるその他のチーズなどを意味し、チーズスプレッドを含むものとして定義される。
本発明に使用される原料チーズとしては、一般的にプロセスチーズ類の原料として使用される、ゴーダチーズ、チェダーチーズ、モッツァレラチーズ、パルメザンチーズ、エメンタールチーズ、エダムチーズ、クリームチーズなどのナチュラルチーズやこれらを低脂肪化したもの、脱脂チーズなどを1種類または2種類以上組み合わせて使用することができる。
ピロリン酸(二リン酸ともいう)とは、2分子のオルトリン酸から1分子の水が脱水してできた四塩基酸である。本発明でいうピロリン酸塩とは、通常のプロセスチーズなどの製造に使用される溶融塩の一種であり、2分子のオルトリン酸から1分子の水が脱水してできた四塩基酸からなる限り、化合物塩や水和物などのいかなる化合物であっても良い。例えば、ピロリン酸四ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム(ピロリン酸二水素二ナトリウムともいう)、ピロリン酸水素三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム10水和物、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸二水素カルシウムなどが挙げられる。より好ましいピロリン酸塩としては、ピロリン酸四ナトリウム及び酸性ピロリン酸ナトリウムがあげられる。また、本発明では、これらピロリン酸塩を1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ピロリン酸塩以外のその他の溶融塩としてはリン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ポリリン酸塩など、通常のプロセスチーズなどの製造に用いられている溶融塩を使用することができる。溶融塩の化合物の種類としては、特に限定されないが、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カルシウムなどが挙げられ、これらを1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
下記、ピロリン酸塩およびその他の溶融塩の添加量は特に断りがない限り、無水物換算の添加量である。ピロリン酸塩およびその他の溶融塩の添加量は、合計量として、原料チーズの合計量(100重量%)に対して、通常0.1〜5.0重量%が良く、0.5〜4.0重量%が好ましく、1.5〜3.5重量%がより好ましく、1.5〜2.5重量%がさらに好ましい。添加量が0.1重量%未満では、乳化が良好に行われず、チーズから油が分離することがある。添加量が3.5重量%を超えると、溶融塩の組み合わせによっては、溶融塩由来のえぐみなどが生じ、風味へ悪影響を及ぼすことがある。
ピロリン酸塩とその他の溶融塩の添加比率は、1:4〜3:2(溶融塩の合計量に対して、ピロリン酸塩の添加比率で20〜60重量%)が好ましく、3:7〜1:1(溶融塩の合計量に対して、ピロリン酸塩の添加比率で30〜50重量%)がより好ましい。すなわちピロリン酸塩の合計量としては、原料チーズの合計量(100重量%)に対して、通常0.02〜3.0重量%が良く、0.1〜2.4重量%が好ましく、0.3〜2.1重量%がより好ましく、0.3〜1.5重量%がさらに好ましい。ピロリン酸塩とその他の溶融塩の添加比率が1:4(溶融塩の合計量に対して、ピロリン酸塩の添加比率で20%)を下回ると、チーズに十分な耐熱保形性を付与できず、添加比率が7:3(溶融塩の合計量に対して、ピロリン酸塩の添加比率で70%)を超えると、製造直後の耐熱保形性が90%を超えてしまう、もしくは、製造直後の耐熱保形性が50〜90%の範囲に入っていても、冷蔵保存時における耐熱保形性の経時変化が大きく、保存中に耐熱保形性が90%を超えてしまう。
本発明における耐熱保形性は、10mm×10mm×10mmに切り出したチーズをオートクレーブを用いて120℃、10分で湿熱処理した後、以下の式を用いて算出される。

耐熱保形性(%)= 加熱後のダイスの高さ/加熱前のダイスの高さ × 100

耐熱保形性は、チーズをパン生地で内包し、パン上部に切れ目を入れて焼成した際の焼成後のチーズのパン内部での溶け程度およびパン上部の切れ目からのチーズの流れ出し程度と相関がある。パンの生地に包まれたチーズは焼成の際に湿熱な状態にあり、この状態はオートクレーブを用いた120℃、10分の処理と同等といえる。耐熱保形性が50%未満では、焼成した際に溶融したチーズがパン上部の切れ目から噴出し、流れ出てしまう。耐熱保形性が50〜90%では、溶融したチーズがパン上部の切れ目から流れ出ることなく、内包されているチーズが適度に溶融している状態となり、本発明品の目的を達した品質となる。耐熱保形性が90%以上では、内包されているチーズが殆ど溶融せず、食感、風味、見栄えなどが悪い。
本発明に使用されるホエイタンパク質は、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)やホエイタンパク質濃縮物(WPC)などの下記するホエイやホエイ関連製品を応用したホエイタンパク質を用いることができる。本発明に使用されるホエイタンパク質は、ナチュラルチーズ製造時に生成するチーズホエイ中に含まれるホエイタンパク質が望ましく、限外ろ過やイオン交換クロマトグラフィーを用いてチーズホエイ中のタンパク質を単離・精製したホエイタンパク質単離物(WPI)やホエイタンパク質濃縮物(WPC)などを使用することができる。
ホエイとは、例えば牛乳から脂肪、カゼイン、脂溶性ビタミンなどを除去した際に残留する水溶性成分である。ホエイは一般的に、ナチュラルチーズやレンネットカゼインを製造した際に、副産物として得られるチーズホエイやレンネットホエイ(またはスイート(甘性)ホエイともいう)、脱脂乳から酸カゼインやクワルクを製造した際に得られるカゼインホエイ、クワルクホエイ(またはアシッド(酸)ホエイともいう)のことである。ホエイの主成分は、タンパク質(β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミンなど)、乳糖、水溶性ビタミン、塩類(ミネラル成分)であり、それぞれの特徴は、ホエイの成分としての研究よりも牛乳の成分としての研究で明らかにされている。
「ホエイ関連製品」には、ホエイを濃縮処理した濃縮ホエイ、ホエイを乾燥処理したホエイパウダー、ホエイの主要なタンパク質などを限外濾過(Ultrafiltration:UF)法などで濃縮処理した後に乾燥処理したホエイタンパク質濃縮物(Whey Protein Concentrate:以下、「WPC」ともいう)、ホエイを精密濾過(Microfiltration:MF)法や遠心分離法などで脂肪を除去してからUF法で濃縮処理した後に乾燥処理した脱脂WPC(低脂肪・高タンパク質)、ホエイの主要なタンパク質などをイオン交換樹脂法やゲル濾過法などで選択的に分画処理した後に乾燥処理したホエイタンパク質分離物(Whey Protein Isolate:以下、「WPI」ともいう)、ナノ濾過(Nanofiltration:NF)法や電気透析法などで脱塩処理した後に乾燥処理した脱塩ホエイ、ホエイ由来のミネラル成分を沈殿処理してから遠心分離法などで濃縮処理したミネラル濃縮ホエイなどを挙げられる。これらのうち、乳タンパク質を乾燥重量として(固形分の)15%〜80%で含むWPCは、タンパク質濃縮ホエイパウダーとして、平成10年3月30日に、乳等省令の一部改正により、乳製品に定義された(濃縮ホエイ、ホエイパウダー、WPC、ホエイタンパク質濃縮パウダーについて、乳等省令に規定する製造工程を経たものであれば脱塩工程の有無にかかわらない)。
ホエイタンパク質濃縮物(WPC)は、ホエイの主要なタンパク質などを限外濾過(Ultrafiltration:UF)法などで濃縮処理した後に乾燥処理して得られるものである。一般的に、固形分の約25%以上がホエイ(乳清)タンパク質であるものの総称である。ホエイから乳糖や塩類などを低減し、ホエイタンパク質を相対的に増強して、固形分の約25%〜約80%にすることで得られる。特に、乳タンパク質を乾燥重量として15%〜80%で含むWPCは、乳等省令により、タンパク質濃縮ホエイパウダーと定義されている。
ホエイタンパク質濃縮物(WPC)の標準的な製造方法は、以下のとおりである。
(1)ホエイを膜分離した後に、濃縮する段階。または
(2)ホエイを膜分離した後に、濃縮、乾燥する段階。
なお、濃縮処理には、一般的な装置や方法を用いることができ、例えば真空蒸発缶(エバポレーター)、真空釜、薄膜垂直上昇管状型濃縮機、薄膜垂直下降管状型濃縮機、プレート型濃縮機などを用いて、減圧下で加熱する方法を用いることができる。そして、乾燥処理にも、一般的な装置や方法を用いることができ、例えば噴霧乾燥(スプレードライヤー)法、ドラム乾燥法、凍結真空乾燥(フリーズドライヤー)法、真空(減圧)乾燥法などを用いることができる。
ホエイタンパク質分離物(WPI)は、ホエイの主要なタンパク質などをイオン交換樹脂法や電気透析法などで濃縮処理した後に乾燥処理して得られるものである。一般的に、固形分の約85%〜約95%がホエイ(乳清)タンパク質であるものの総称である。ホエイから乳糖や塩類などを低減し、ホエイタンパク質を相対的に増強して、固形分の約90%(85%〜95%)にすることで得られる。
ホエイタンパク質分離物(WPI)の標準的な製造方法は、以下のとおりである。
(1)ホエイを膜分離又はイオン交換樹脂処理又は電気透析処理した後に、濃縮する段階。または
(2)ホエイを膜分離又はイオン交換樹脂処理又は電気透析処理した後に、濃縮、乾燥する段階。
なお、濃縮処理には、一般的な装置や方法を用いることができ、例えば真空蒸発缶(エバポレーター)、真空釜、薄膜垂直上昇管状型濃縮機、薄膜垂直下降管状型濃縮機、プレート型濃縮機などを用いて、減圧下で加熱する方法を用いることができる。そして、乾燥処理にも、一般的な装置や方法を用いることができ、例えば噴霧乾燥(スプレードライヤー)法、ドラム乾燥法、凍結真空乾燥(フリーズドライヤー)法、真空(減圧)乾燥法などを用いることができる。
本発明で使用されるホエイタンパク質の配合量は、純粋なホエイタンパク質の量を指す。その添加量は、原料チーズの合計量(100重量%)に対して、0.1〜4.0重量%が良く、0.5〜2.5重量%が好ましく、1.0〜2.0重量%がより好ましい。添加量が0.1重量%未満ではチーズに十分な耐熱保形性が付与できず、添加量が4.0重量%以上では耐熱保形性が付与できるが、溶融したチーズ乳化物の粘性が高くなり、送液や充填などが困難となり、製造や品質に支障をきたす。
さらに、必要に応じて、上記原料の他に、粉乳、バター、バターオイルなどの乳製品や物性調整のためのグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール酸エステル、ポリソルベートなどの乳化剤、澱粉、(加工澱粉を含む)、ゼラチン、寒天、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、CMC、トラガントガム、タマリンドガムなどの安定剤、炭酸ナトリウム、クエン酸、乳酸などのpH調整剤、ペッパー、バジル、ガーリック、唐辛子、サンショウ、シナモン、クローブ、ペパーミント、ベイリーフ、ジンジャー、マスタード、ターメリックなどの風味付けのための香辛料などの各種食品を添加することができ、これらを添加して作られたものもプロセスチーズ類である。
本発明における冷却とは、加熱溶融の際にチーズ原料が達した到達温度を、到達した温度以下に下げることをいう。この温度は、好ましくは65℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。
急速冷却(急速な冷却)とは加熱溶融したチーズ原料を、通常20分以内に60℃以下に、40分以内に40℃以下に、60分以内に10℃以下となるようにすること、好ましくは20分以内に40℃以下に、30分以内に10℃以下となるようにすること、さらに好ましくは20分以内に10℃以下にとなるようにすること、より好適には2分以内に65℃以下になるように冷却することをいう。または、急速(急速な)冷却とは加熱溶融したチーズ原料を、加熱溶融により到達した温度から、通常20分以内に30℃以上、好ましくは20分以内に40℃以上、さらに好ましくは20分以内に50℃以上の温度を低下させることをいう。
冷却方法の一例として、フィルムに充填したチーズ乳化物をチルド水、氷水などに浸漬する方法が挙げられる。チルドとは、JAS法により5℃以下とされている。
本発明における冷蔵とは、当該品が凍らない程度の低温に冷却して保存することをいう。この温度は、15℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましい。また、5℃以下でも良い。
本発明における高温保持とは、加熱溶融後に一度も冷却されることなしに、加熱溶融後も当該品の温度が保持されることをいう。この際の温度は、通常80〜120℃、好ましくは90〜120℃、より好ましくは95〜115℃である。また、この際の保持時間は、通常90分以下、好ましくは1分〜60分、より好ましくは2分〜20分である。
本明発明におけるエージングとは、加熱溶融し冷却された後に一定の時間一定の温度で保持されることをいう。この際の温度は、通常40〜120℃、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜85℃である。また、この際の保持時間は、通常72時間以下、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下である。
本発明における、より好適なエージングとは、チーズ原料に溶融塩を添加し、加熱溶融し、常法により成型、包装した後に、低下した製品本体の温度を、乾熱もしくは湿熱で40〜100℃の温度下に一定の時間置くことをいい、特許文献1(特公昭57-55380号)の請求項1にしめされる。例えば、50℃で48時間、70℃で12時間、98℃で1時間などが挙げられる。
加熱溶融とは、原料チーズを乳化させる目的で溶融塩を加えて加熱することをいう。
本発明における、より好適な原料チーズの加熱溶融は、撹拌しながら通常、65〜120℃、好ましくは70〜100℃、より好ましくは85〜100℃まで加熱することにより行う。本発明において原料チーズを加熱溶融して乳化する装置としては、ケトル型チーズ乳化釜、横型クッカー、高速剪断乳化釜、および連続式熱交換機(ショックステリライザー、コンビネーターなど)など、いずれも使用可能である。また、溶融装置と、ホモゲナイザー、インラインミキサー、コロイドミルなどの乳化機を組み合わせることも可能である。原料チーズを加熱溶融した後は、高温(65〜90℃程度)の状態で充填されるホッパック方式(ポーション、個包装スライス、カルトンなど)や、低温(15〜35℃程度)まで冷却しながら成型し、その後、さらに冷却して包装するコールドパック方式(キャンディー包装チーズ、スライス・オン・スライスなど)により充填・包装することができる。また、容器に充填してから冷却する方法、一旦仮容器に充填してから冷却成形した後に取り出してカット包装する方法、など、いずれの方法でも目的の製品(プロセスチーズ類)を製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。とくに断りがない限り、%は重量%である。
[実施例1]
表1の配合でプロセスチーズを試作した。
粉砕したチェダーチーズ2kgをケトル型溶融釜に投入し、表1に記載の配合比で溶融塩およびホエイタンパク質を添加し、最終製品(プロセスチーズ)の水分含有率が42.5重量%になるように水を加え、攪拌しながら90℃まで加温して溶融した。ホエイタンパク質には、ホエイタンパク質単離物(WPI、Davisco Foods International社製、 WPIのタンパク質含量は、93.0%であった。)を使用した。ピロリン酸塩は、ピロリン酸四ナトリウム(関東化学社製)を用いた。その他の溶融塩は、ポリリン酸ナトリウム(関東化学社製)を用いた。
試作No.1では、90℃達温後、パラフィルムとカルトンを使用して110mm×55mm×33mmの直方体に225gずつ包装し、一晩室温で放冷した(緩慢冷却)。その後、40℃で2日間静置(エージング処理)後、3日間冷蔵し、十分に冷却した。試作No.2、3、4、5、6では、90℃達温後、フィルムに225gずつ充填し、180mm×127mm×10mmのシート状に成型した後に、氷水中で速やかに冷却し(急速冷却)、3日間冷蔵した。冷蔵保存後、それぞれの試作品を10℃に保存し、耐熱保形性の経時的変化(9ヶ月目まで)を測定した。評価結果を図1に示した。
<耐熱保形性の測定方法>
10mm×10mm×10mmに切り出したチーズをオートクレーブを用いて120℃、10分で湿熱処理した後、以下の式を用いて算出した。

耐熱保形性(%)= 加熱後のダイスの高さ(mm)/加熱前のダイスの高さ (mm)× 100
試作品を評価した結果、試作No.3およびNo.4などの溶融塩にピロリン酸四ナトリウムを単独で使用したものは、保存開始時で耐熱保形性が95%以上であり、目標とする適度な耐熱保形性を付与することはできなかった。溶融塩としてピロリン酸四ナトリウムとポリリン酸ナトリウムを併用した試作品No.5は、保存開始時においては、目標とする耐熱保形性を付与することができたが、冷蔵保存中の経時変化が大きく、冷蔵保存1ヶ月目では90%以上となった。溶融塩にポリリン酸ナトリウムを使用した試作No.2およびさらにホエイタンパク質を添加した試作No.6では、保存開始時において目標とする耐熱保形性を付与することができなかった。エージングを行った試作No.1および溶融塩にピロリン酸四ナトリウムとその他溶融塩を使用し、ホエイタンパク質を添加した試作No.7のみが、保存開始時において目標とする耐熱保形性を付与することができ、9ヶ月間の冷蔵保存(10℃以下)において、耐熱保形性が50〜90%に維持された。チーズ乳化物を急速冷却した条件で目標品質のプロセスチーズを製造できたのは、試作No.7のみであった。
また、目標とする耐熱保形性を付与できた、試作品No.1および試作No.7の保存開始時について、風味および食感の滑らかさを評価した。風味および食感の評価は、熟練パネラー5名による評価点を平均して試験結果とした。評価点は、5点が最も良好で、1点が最も不良であるとした。結果を表2に示した。
エージングを行っている試作No.1では、加熱の影響で粉っぽい食感と風味の劣化が認められた。一方、試作No.7では、滑らかな食感と良好な風味を有していた。
[実施例2]
表3の配合でプロセスチーズを試作した。
粉砕したチェダーチーズ2kgをケトル型溶融釜に投入し、表3に記載の配合比で溶融塩およびホエイタンパク質を添加し、最終製品(プロセスチーズ)の水分含有率が42.5重量%になるように水を加え、攪拌しながら90℃まで加温して溶融した。ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ホエイタンパク質については、実施例1と同様のものを用いた。90℃達温後、実施例1同様に、225gずつフィルムに充填し、180mm×127mm×10mmのシート状に成型した後に、氷水中で速やかに冷却し(急速冷却)、3日間冷蔵した。冷蔵保存後に試作品の耐熱保形性を測定した。測定結果を表4に示した。
溶融塩全量に対するピロリン酸四ナトリウムの占める割合が10%である試作No.8においては、目標とする耐熱保形性を付与することができなかった。溶融塩全量に対するピロリン酸四ナトリウムの占める割合が70%である試作No.11においては、耐熱保形性が90.7%であり、目標とする50〜90%よりも大きい値であった。溶融塩全量に対するピロリン酸四ナトリウムの占める割合が30%、50%である試作No.9および試作No.10において、目標とする耐熱保形性を付与することができた。
[実施例3]
表5の配合でプロセスチーズを試作した。
粉砕したチェダーチーズ2kgをケトル型溶融釜に投入し、表5に記載の配合比で溶融塩およびホエイタンパク質を添加し、最終製品(プロセスチーズ)の水分含有率が42.5%になるように水を加え、攪拌しながら90℃まで加温して溶融した。ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ホエイタンパク質については、実施例1と同様のものを用いた。90℃達温後、実施例1同様に225gずつフィルムに充填し、180mm×127mm×10mmのシート状に成型した後に、氷水中で速やかに冷却し(急速冷却)、3日間冷蔵した。充填時にチーズ乳化物の粘度を測定し、冷蔵保存後に試作品の耐熱保形性を測定した。測定結果を表6に示した。
<粘度の測定方法>
90℃に達温したチーズ乳化物をステンレス製カップ(3号カップ、リオン社製)に100g充填し、粘度計(VISCOTESTER VT-04、リオン社製)で測定した。ローターには、2号ローター(リオン社製)を使用した。
ホエイタンパク質の添加量が0.3%の試作No.12においては、目標とする耐熱保形性を付与することができなかった。ホエイタンパク質の添加量が4.0%の試作No.13においては、耐熱保形性が99.6%であり、目標とする50〜90%よりも大きい値であった。また、90℃達温後のチーズ乳化物の粘度測定において、高粘度となり、フィルムへの充填が極めて困難であった。試作No.14において、目標とする耐熱保形性を付与でき、フィルムへの充填適性も良好であった。
[実施例4]
以下の手順で試作チーズのパン焼成テストを実施した。小麦粉1500g、イースト9g、麦芽糖4.5g、食塩30gおよび水1020gを、縦型ミキサー(AM-30、愛工製作所製)により低速回転で5分間、さらに中速回転で5分間混合した。得られたパン生地の温度は、24〜25℃であった。このパン生地を27℃で90分間発酵させた後にパンチ(空気抜きのために生地をたたく)を行い、さらに30分間発酵させた。発酵後の生地を50gずつに分割し、ベンチタイム(丸めた生地は乾かないように、また寒い時期であれば、冷えないようにして休ませる)を25分間とった。この生地で実施例1において作製した試作No.3、No.6、No.7のチーズ(10mm×10mm×10mmサイズに切り出したもの)30gをパン生地で包み、50分間の最終発酵(整形・型詰めしてから最終の熟成段階)を行った。最終発酵後にパン生地上部に十字に切れ目(長さ40mm)を入れ、220℃のオーブン内で20分間焼成した。焼成後のチーズ入りパンについて、内包しているチーズの溶けおよびパン上部の切れ目からのチーズの噴出しを評価した。溶融したチーズがパン上部の切れ目から流れ出ることなく、内包されているチーズが適度に溶融している状態を良好とした。パン焼成後の写真を図2及び図3に、評価結果を表7に示した。
本発明に基づき、原料チーズに溶融塩とホエイタンパク質を添加して加熱溶融した後に冷却するという簡便な方法により、適度な耐熱保形性が付与され、かつ、冷蔵保存中における耐熱保形性の経時変化が少ないプロセスチーズ類を提供することができ、製菓・製パンやあらゆる食品に応用することができる。

Claims (6)

  1. 原料チーズに、溶融塩とホエイタンパク質を添加して加熱溶融することを特徴とし、耐熱保形性が50〜90%であるプロセスチーズ類。
  2. 原料チーズ100重量%に、ピロリン酸塩を含む溶融塩を0.1〜5.0重量%とホエイタンパク質を0.1〜4.0重量%添加することを特徴とし、かつ、溶融塩のうち、ピロリン酸塩とその他の溶融塩の配合比率が1:4〜3:2である請求項1記載のプロセスチーズ類。
  3. 請求項1〜2いずれか1項に記載のプロセスチーズ類を、10℃以下で保存した時に、冷蔵保存後も耐熱保形性が50〜90%であり、保存開始時の耐熱保形性と保存後の耐熱保形性の差が35%以内であるプロセスチーズ類。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載のプロセスチーズ類を含有すること、を特徴とする食品。
  5. 加熱溶融したチーズ原料を、高温保持せず及び/又はエージングしないことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のプロセスチーズ類の製造方法。
  6. 加熱溶融したチーズ原料を冷却開始から20分以内にチーズ原料が60℃以下になるように冷却することを特徴とする請求項5に記載の方法。
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