JP2015209393A - フィルム状化粧料 - Google Patents

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【課題】環境応答特性を有する化粧料を提供する。【解決手段】(A)キトサン、および、(B)消臭剤、制汗剤、冷感剤および殺菌剤からなる群から選択される一種または二種以上を含む、フィルム状化粧料。【選択図】図1

Description

本発明は、フィルム状化粧料に関する。
シート中に含まれる成分の放出の制御に関する技術として、特許文献1(特開2005−263759号公報)に記載のものがある。同文献には、美容目的の治療における皮膚浸透性シートを提供するという課題を解決する技術として、シート状基材に薬剤または化粧剤を含浸させてなる皮膚浸透性シートが記載されている。そして、シート状基材を、ゲル状、スポンジ状又はフィルム状のいずれかとすることにより、薬剤又は化粧剤の放出性、すなわち、皮膚への薬剤又は化粧剤の浸透性を制御することができるとされている。また、シート状基材に混合しうる成分の一つとして、キトサンが挙げられている。
また、技術分野は異なるが、シート状の化粧料に関する技術として、特許文献2および3に記載のものがある。
特許文献2(特開2008−69116号公報)には、水または化粧水で溶かして肌に適用するシート状化粧品、それを応用した種々の形態の商品を提供するという課題を解決する技術として、キトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子を含む組成物から形成される水溶性シートからなり、その水溶性シートを水で溶かしてその水溶性高分子の皮膚に付着させて皮膚平滑性を向上させる等の機能を利用するシート状化粧料について記載されている。
特許文献3(特開2007−45710号公報)には、シート基材にキトサン、ヒアルロン酸、及び界面活性剤を必須成分として含有するシート化粧料に関する技術が記載されている。そして、同文献に記載のシート化粧料によれば、べたつかずさっぱりとした使用感触を有し、肌に対して良好な感触が得られ、さらに剥離後の肌のシットリ感が向上するとされている。
また、特許文献4(特開2011−225461号公報)には、キトサンナノファイバー及び薬物を含むフィルム製剤に関する技術が記載されている。
特開2005−263759号公報 特開2008−69116号公報 特開2007−45710号公報 特開2011−225461号公報
しかしながら、背景技術の項で前述した特許文献1に記載の技術においては、皮膚への薬剤又は化粧剤の浸透性について、たとえば特定の成分の濃度の変化といった環境変化に対する応答性をもたせるという観点からの検討はなされていない。
そこで、本発明は、環境応答特性を有するフィルム状化粧料を提供するものである。
本発明によれば、
(A)キトサン、および、
(B)消臭剤、制汗剤、冷感剤および殺菌剤からなる群から選択される一種または二種以上
を含む、フィルム状化粧料が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明におけるフィルム状化粧料を含む、有機酸濃度応答性化粧料が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明におけるフィルム状化粧料を皮膚または肌着に適用するステップを含み、前記皮膚上の乳酸濃度の変化に応じて前記フィルム状化粧料が溶解する、体臭抑制方法が提供される。
本発明によれば、環境応答特性を有するフィルム状化粧料を提供することができる。
実施形態におけるフィルム化粧料を含む積層体の構成を示す平面図および断面図である。 実施形態におけるフィルム化粧料の構成を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態において、化粧料は、以下の(A)および(B)を含む:
(A)キトサン、
(B)消臭剤、制汗剤、冷感剤および殺菌剤からなる群から選択される一種または二種以上。
本実施形態における化粧料が成分(A)すなわちキトサンを含む構成とすることにより、周囲の環境変化、具体的には周囲の有機酸濃度の変化に応じて化粧料の溶解性を変化させることができる。すなわち、化粧料に環境応答特性を付与できる。このため、化粧料の周囲に存在する乳酸等の有機酸の濃度の変化に応じて成分(B)の溶出を制御することができる。
ここで、人間の汗には、乳酸が8〜40mmol/L程度の濃度で含まれている(小川徳雄、「新・汗の話」、p.117、アドア出版(1994年))。このため、化粧料を皮膚に適用した後、皮膚からの発汗量が増えて汗が肌にたまると、化粧料の周囲の乳酸濃度が増加する。しかし、環境応答特性を有さない消臭剤や制汗剤では、デオドラント関連成分が皮膚への適用直後から放出されていく。このため、消臭や制汗が不要なときにもデオドラント関連成分が放出されてしまい、また、その結果として、発汗量が増えた段階ではデオドラント効果が充分でない場合があった。
これに対し、本実施形態においては、化粧料が環境応答特性を有するために、発汗量の増加に伴う乳酸濃度の上昇に応じて化粧料の少なくとも一部が溶解し、デオドラント関連成分として機能する成分(B)が溶出する構成とすることができる。このため、本実施形態の化粧料は汗に対する消臭や制汗のために好適である。
また、化粧料の周囲が有機酸濃度の低い液体の場合、より具体的には水等の場合には応答性がないために、デオドラント成分が化粧料に保持されるため、化粧料からのデオドラント関連成分の減少が抑制され、デオドラント効果の持続性を向上させることも可能となる。
さらに、フィルム状化粧料にした場合であっても、適度な皮膜強度を有するために、使用性も良好である。
以下、化粧料の形状がフィルム状である態様を例に挙げて説明する。
本実施形態におけるフィルム状化粧料は、(A)キトサン、および、(B)消臭剤、制汗剤、冷感剤および殺菌剤からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
はじめに、成分(A)のキトサンについて説明する。
キトサンは、(1→4)−2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するアミノ多糖であり、構成糖であるグルコースの2位の水酸基がアミノ基で置換された構造を有している。また、キトサンは、(1→4)−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するキチンの脱アセチル化物であって、たとえばキチンを加水分解(脱アセチル化)することにより製造される。
また、本実施形態において、成分(A)のキトサンとして、脱アセチル化されたアミノ基の一部、または同一分子内にある水酸基の一部がアシル化反応、エーテル化反応、エステル化反応、その他反応によって化学修飾されたキトサン誘導体も含まれる。
また、成分(A)のキトサンの由来に制限はなく、動物由来のものであってもよいし、植物由来のものであってもよい。動物由来のキトサンの具体例として、エビ、カニ等の甲殻類由来のもの;イカ等の軟体動物由来のもの;昆虫由来のものが挙げられる。また、植物由来のキトサンの具体例として、菌類由来のものが挙げられる。使用した際のアレルギーを抑制する観点からは、植物由来のキトサンを用いることが好ましい。
成分(A)のキトサンとして、入手のしやすさから、一般工業用キトサンを用いることができる。キトサンの市販品の具体例として、「ダイキトサン」シリーズ(大日精化工業社製)、「コーヨーキトサン」シリーズ(甲陽ケミカル社製)等が挙げられる。
また、成分(A)のキトサンをフィルム状基材に成膜した際に、周囲の有機酸濃度、たとえば乳酸濃度に応じてフィルムの溶解性が変化する構成となるように、キトサンの原料を選択して用いる。
フィルム状基材の溶解性に影響を与える因子として、キトサンの分子量、脱アセチル化度、および、後述するキトサンの大きさ等が挙げられる。
このうち、成分(A)のキトサンの重量平均分子量は、化粧料の保形性をより安定的に得る観点から、たとえば5×104以上であり、好ましくは1×105以上であり、より好ましくは1.5×105以上であり、さらに好ましくは2×105以上である。
また、化粧料の溶解性について、有機酸濃度に対する応答性をより安定的に得る観点からは、成分(A)のキトサンの重量平均分子量はたとえば7×106以下であり、好ましくは6×106以下であり、より好ましくは4×106以下であり、さらに好ましくは3×106以下である。
なお、成分(A)のキトサンの重量平均分子量は、キトサンの0.5%酢酸水溶液について、プルランを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(gel permeation chromatography:GPC)により測定される値である。重量平均分子量の測定条件については、実施例の項にてさらに具体的に説明する。
成分(A)のキトサンの脱アセチル化度は、フィルム状基材の溶解性にpH応答性を安定的に付与する観点から、たとえば50%以上であり、好ましくは80%以上、さらに好ましくは89%以上である。
また、成分(A)のキトサンの脱アセチル化度は100%以下である。
なお、成分(A)のキトサンの脱アセチル化度は、たとえばコロイド滴定法により測定される。
次に、成分(B)について説明する。
成分(B)は、消臭剤、制汗剤、冷感剤および殺菌剤からなる群から選択される一種または二種以上である。以下、成分(B)を「デオドラント関連成分」ともいう。化粧料中に成分(B)として含まれる物質は、上記一または二以上の上記剤としての性質を有する。また、成分(B)が、上記各剤としての機能に加えて他の機能を有するものであってもよく、たとえば、冷感剤が香料としても機能してもよい。
本実施形態におけるフィルム状化粧料が、成分(B)のデオドラント関連成分を含む構成とすることにより、発汗により乳酸濃度が高まった際に、フィルム状化粧料が溶解してデオドラント関連成分が溶出する構成とすることができる。
発汗による周囲の乳酸濃度の変化に応じて体臭抑制をする観点から、成分(B)が、制汗剤および殺菌剤からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
成分(B)のうち、消臭剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、グリシンアミド、セリンアミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミドおよびそれらの塩等のアミン類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、δトコフェロールなどのビタミンEおよびその誘導体、チオタウリン、メマツヨイグサ抽出液、βカロチン、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物、キハダエキス、L−メントール等を用いることができる。
これらの中で、消臭効果の即効性を向上させる観点から、アミン類から選ばれる消臭成分が好ましく、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)が使用性が容易である点で好ましい。
成分(B)のうち、制汗剤としては、アルミニウムクロルハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム等のアルミニウム化合物;
アルミニウムジルコニウムオクタクロルハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロルハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロルハイドレート等のアルミニウム・ジルコニウム化合物;
ジルコニウムクロルハイドレート等のジルコニウム化合物;および
パラフェノールスルホン酸亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。
成分(B)のうち、冷感剤としては、1−メントールや、メンチルアセテート、乳酸メンチル、l−メンチルグリセリルエーテル、メンチルピロリドンカルボン酸等のメントール誘導体のほか、N−エチル−p−メンタンカルボキシアミド等のメントール類縁体、dl−カンファー、イソプレゴール、シネオール、ボルネオール、チモールおよびこれらの誘導体や、3−l−メトキシプロパンジオールや、ハッカ油、ペパーミント油等のメントールを含有した精油等が挙げられ、これらは一種または二種以上を用いることができる。
成分(B)のうち、殺菌剤としては、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、塩化リゾチーム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム(CPC)、3,4,4'−トリクロロカルバニリドからなる群から選ばれる一種または二種以上を用いることができる。この中でも、さらさら感の持続性を得る観点およびぬるつきを低減させる観点から、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、塩化ベンザルコニウムが好ましい。
フィルム状化粧料中の成分(B)の含有量は、成分(B)の効能を効果的に発現する観点から、たとえば0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上とする。また、フィルム状基材の保形性を向上させる観点から、フィルム状化粧料中の成分(B)の含有量は、たとえば10.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下とする。
なお、本実施形態において、成分(B)として抽出物等を利用する場合、その含有量は乾燥質量である。
次に、フィルム状化粧料の製造方法を説明する。
本実施形態におけるフィルム状化粧料の製造方法は、たとえば、キトサンおよび成分(B)を溶媒に分散または溶解させてキトサン含有液を得る工程と、キトサン含有液を成膜することにより、フィルム状化粧料を得る工程と、を含む(第1の製造方法)。
また、本実施形態におけるフィルム状化粧料の製造方法は、たとえばキトサンを溶媒に分散または溶解させてキトサン含有液を得る工程と、キトサン含有液を成膜することによりフィルム状基材を形成する工程と、フィルム状基材に成分(B)を担持させる工程と、を含む方法とすることもできる(第2の製造方法)。
第1の製造方法は、キトサンと、成分(B)を一体としてフィルム状化粧料を得る方法であり、第2の製造方法は、キトサンを含むフィルム状基材を形成後、その基材に成分(B)を担持させる方法であるが、いずれの製造方法によっても、得られる化粧料は、(A)キトサンを含むフィルム状基材、および、(B)消臭剤、制汗剤、冷感剤および殺菌剤からなる群から選択される一種または二種以上とを含む、フィルム状化粧料である。
なお、これらの方法において、成膜後、乾燥工程を設けてもよい。
キトサン含有液の調製工程において、溶媒に分散または溶解させるキトサンとして、たとえばキトサンを、粒状物またはナノファイバーとして用いることができる。
キトサンの粒状物としては、たとえば所定の大きさに粉砕されたものが挙げられる。キトサンの粒状物の大きさは、有機酸濃度が高い環境でのフィルム状化粧料の溶解性を向上させる観点から、たとえば、粒状物中の目開き3cmの篩下の粒状物の含有量が99質量%以上とし、好ましくは、粒状物中の目開き3.35mm(JIS5.5メッシュ)の篩下の粒状物の含有量が99質量%以上とし、より好ましくは、粒状物中の目開き212μm(JIS70メッシュ)の篩下の粒状物の含有量が99質量%以上とする。
また、キトサンのナノファイバーは、ナノメートルオーダーの繊維径を有するキトサン繊維である。キトサンのナノファイバーの繊維径は、ナノファイバーの製造安定性に優れる点で、たとえば4nm以上とし、好ましくは10nm以上とする。また、有機酸濃度が高い環境でのフィルム状化粧料の溶解性を向上させる観点から、キトサンのナノファイバーの繊維径は、たとえば50nm以下とし、好ましくは40nm以下とする。
なお、キトサンナノファイバーの作製方法として、たとえば特許文献4に記載の方法を用いることができる。
ここで、第2の製造方法で使用されるフィルム状基材について説明する。
フィルム状基材は、成分(A)のキトサンを含む。フィルム状基材中のキトサンの含有量は、フィルム状基材の溶解性についてpH応答性を安定的に得る観点から、たとえば50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上である。
また、本実施形態において、フィルム状基材はキトサンから構成されていてもよく、フィルム状基材中のキトサンの含有量は、100質量%以下である。または、フィルム状基材がキトサン以外の物質を含む構成として、フィルム状基材の物性を調整してもよい。このとき、たとえば、フィルム状基材中のキトサンの含有量を90質量%以下としてもよい。
フィルム状基材の厚さは、フィルム状化粧料の保形性を向上させる観点から、たとえば0.2μm以上であり、好ましくは1μm以上である。また、フィルム状化粧料の使用感を向上させる観点からは、フィルム状基材の厚さは、たとえば2mm以下であり、好ましくは1mm以下である。
また、第2の製造方法で得られるフィルム状化粧料は、具体的には、成分(A)を含むフィルム状基材と前記成分(B)とを含み、フィルム状基材が成分(A)のナノファイバーを分散または溶解させたキトサン含有液を用いて得られるものである。
本実施形態において得られるフィルム状基材またはフィルム状化粧料は、環境応答特性、具体的には汗に対する応答性を有するものである。さらに、汗以外への応答性を低減する観点から、たとえば、水に溶けにくい構成とする観点、すなわち難水性を高める観点からは、成膜に用いられるキトサン含有液が有機酸を実質的に含まない構成とすることが好ましい。これにより、本実施形態におけるフィルム状化粧料を皮膚に適用後のデオドラント効果の持続性を向上させることができる。
したがって、キトサン含有液中の有機酸の含有量は、15質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、有機酸を実質含まないことがことさら好ましい。
なお、キトサン含有液が有機酸を実質的に含まないとは、キトサン含有液に有機酸が意図的に添加されていないことをいい、たとえばキトサン含有液中の有機酸濃度が0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下である。
キトサン含有液を成膜する際の成膜方法に制限はなく、たとえばキャスト法、スピンコート法、スリットコート法、プリント法等の塗布法が挙げられる。
また、成膜後のフィルムを乾燥するとき、乾燥方法に制限はなく、たとえば静置、風乾等とする。
以上により得られるフィルム状化粧料の厚さは、フィルム状化粧料の保形性を向上させる観点から、その厚さはたとえば0.2μm以上であり、好ましくは1μm以上である。また、フィルム状化粧料の使用感を向上させる観点からは、その厚さはたとえば2mm以下であり、好ましくは1mm以下である。
本実施形態で得られるフィルム状化粧料は、成分(A)および(B)を含むため、環境応答特性を有し、さらに具体的には、周囲の環境の有機酸濃度の変化に応じて溶解性が変化して成分(B)が溶出する特性を有する。たとえば、本実施形態において、皮膚からの発汗に応じてフィルム状化粧料が溶解する性質を安定的に得る観点から、フィルム状基材が0.2%乳酸水溶液に溶解する構成とすることが好ましい。さらに具体的には、フィルム状基材を0.2%乳酸水溶液に浸漬するとき、目視にて1分以内に溶解する構成とすることができる。
成分(B)の溶出は、化粧料周囲の有機酸濃度が特定の範囲になった際に不連続的に起こってもよいし、有機酸濃度の増加に伴い徐々に起こってもよい。
また、本実施形態におけるフィルム状化粧料は、肌着の上や皮膚等の所定の部位に適用される前後において、フィルム状基材に保持される成分(B)の量が変化するものであってもよい。これにより、使用前の段階ではフィルム中に成分(B)をより一層安定的に保持しておくとともに、所定の部位への適用後においては、たとえば汗由来の乳酸濃度の変化に応じた所定のタイミングで成分(B)が放出されて効果的に作用する構成とすることができる。
また、本実施形態におけるフィルム状化粧料は、キトサンを含むフィルム状基材を含むため、皮膚に適用する際のべたつきをおさえて使用感をさらに向上させるため、不溶性フィルムを積層して使用することができる。
また、本実施形態により、上記のフィルム状化粧料を含む有機酸濃度応答性化粧料が得られる。さらに具体的には、成分(B)の種類に応じて、消臭剤用組成物、制汗剤用組成物、殺菌用組成物または冷感組成物として好適に用いることができる。
また、フィルム状化粧料がさらに香料を含む構成とすることにより、フィルム状化粧料を適用した後、適用部位の有機酸濃度が増加した際に、香料が放出される構成とすることもできる。
次に、フィルム状化粧料の使用方法を説明する。
本実施形態におけるフィルム状化粧料は、フィルム状化粧料を肌または肌着等の衣類に適用して使用することができる。皮膚等へのフィルム状化粧料の適用方法として、たとえば貼付が挙げられる。
また、本実施形態におけるフィルム状化粧料を用いて、皮膚または肌着上の有機酸濃度に応じて成分(B)を溶出させることにより、たとえば体臭を抑制することもできる。このとき、本実施形態における体臭抑制方法は、フィルム状化粧料を皮膚または肌着に適用するステップを含み、皮膚上の乳酸濃度の変化に応じてフィルム状化粧料が溶解する。
次に、本実施形態におけるフィルム状化粧料の形状について説明する。
図1(a)および図1(b)は、本実施形態のフィルム状化粧料を含む積層体の構成を示す図である。図1(a)は積層体100の平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A'断面図である。
図1(a)および図1(b)に例示した態様において、積層体100は、台紙103、フィルム状化粧料101および剥離紙105が下からこの順に積層されてなる。
フィルム状化粧料101の厚さは、フィルム状基材107(図2)の厚さに応じて決めることができる。フィルム状化粧料101の保形性を向上させる観点から、その厚さはたとえば0.2μm以上であり、好ましくは1μm以上である。また、フィルム状化粧料101の使用感を向上させる観点からは、その厚さはたとえば2mm以下であり、好ましくは1mm以下である。
台紙103としては、たとえばコロナ放電二軸延伸ポリプロピレン(Oriented Polypropylene:OPP)フィルム(厚み20〜120μm)が用いられる。
また、剥離紙105としては、たとえば低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene:LDPE)フィルム(厚み5〜100μm)が用いられる。
本実施形態において、フィルム状化粧料101はたとえば積層体100の態様で提供される。フィルム状化粧料101を使用する際には、使用者は、たとえば剥離紙105のついたフィルム状化粧料101を積層体100から剥離して皮膚等の所望の場所に貼付した後、剥離紙105を除去する。
フィルム状化粧料101は、たとえばフィルム状基材107およびこれに保持される成分(B)から構成されるが、図2(a)および図2(b)に示すように、フィルム状基材107以外の層を設けることもできる。
図2(a)および図2(b)は、フィルム状化粧料101の他の構成例を示す断面図である。
図2(a)では、成分(B)(不図示)が保持されたフィルム状基材107の一方の面に接してフィルム状の粘着剤109が設けられている。
また、図2(b)では、図2(a)に示した構成に加えて、フィルム状基材107の他方の面に難水溶性フィルム111が設けられている。
粘着剤109の材料として、たとえばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤が挙げられる。
アクリル系粘着剤の具体例としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の一種単独または二種以上の組合せのポリマーおよびオリゴマーが挙げられる。
また、シリコーン系粘着剤の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンゴムとシリコーンレジンとの組成物を必要により架橋させた粘着剤が挙げられる。
さらに、ゴム系粘着剤の具体例としては、天然ゴム系、スチレン−ブタジエンゴム系、イソブチレンゴム系、イソブレンゴム系、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等が挙げられる。
その他、ポリビニルアルコール系粘着剤としては、ポリビニルアルコールを主成分としたウエットタイプの粘着剤が挙げられる。
粘着剤109の厚さは、皮膚への密着性を確保する観点から、たとえば10μm以上であり、好ましくは15μm以上である。また、フィルム状化粧料の使用感を向上させる観点からは、粘着剤109の厚さはたとえば100μm以下であり、好ましくは50μm以下である。
また、難水溶性フィルム111の材料として、たとえばエチルセルロースが挙げられる。
難水溶性フィルム111の厚さは、フィルムの強度を確保する観点から、たとえば0.1μm以上であり、好ましくは0.4μm以上である。また、フィルム状化粧料の使用感を向上させる観点からは、難水溶性フィルム111の厚さはたとえば1mm以下であり、好ましくは0.5mm以下である。
また、フィルム状基材107と難水溶性フィルム111の厚さの合計は、フィルム状化粧料の使用感を向上させる観点から、たとえば2mm以下、好ましくは1mm以下である。
フィルム状化粧料101が粘着剤109を含むとき、粘着剤109の側が皮膚と接触するようにして用いられる。こうすることにより、皮膚への密着性が増し、使用感をさらに向上させることができる。
また、フィルム状化粧料101が難水溶性フィルム111をさらに含む構成とすることにより、フィルム状基剤107が溶解した後の適用箇所のべたつき等の不快感を軽減することができるため、使用感をよりいっそう高めることができる。
本実施形態において、フィルム状化粧料が、以上の成分に加え、化粧料の環境応答特性を害さない範囲で、香料、酸化防止剤、温感剤、保湿剤、油剤、アルコール類、抗炎症剤、美白剤、pH調整剤、可塑剤等、必要に応じて通常化粧料に配合される他の成分を配合してもよい。
このうち、香料の具体例として、特開2012−1551号公報に記載のものが挙げられる。具体的には、アセトナフトン、l−カルボン、シス−3−ヘキセノール、シトラール、ディメトール、ユーカリプトール、リナロールオキサイド、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸スチラリル、酪酸エチル、アネトール、アリルアミルグリコレート、カローン、ゲラニルニトリル、デシルアルデヒド、トリプラール、フルーテート、ベンズアルデヒド、ポアレネート、グレープフルーツベース、α−ピネン、酢酸イソボルニル、ダイナスコン、ドデシルアルデヒド、フロロパール、ヘリオナール、メチルノニルアセトアルデヒド、ノニルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ポレナールII、ウンデシルアルデヒド、ウンデシレンアルデヒド、ベルガモットベース、レモンベース、ダマスコン、アンブロキサン、ダマセノン、カラナール、リナロール、リリアール、リラール、シトロネロール、ゲラニオール、シスジャスモン、ムセノン、アセチルセドレン、イソ・イー・スーパー、ジヒドロジャスモン酸メチル、ジヒドロミルセノール、ローズオキサイド、酢酸リナリル、α−iso−メチルイオノン、α−イオノン、β−イオノン、γ−イオノン等のイオノン類、γ−ウンデカラクトン、p−クレゾール、アンスラニル酸メチル、イソブチルキノリン、オイゲノール、メチルフェニルグリシド酸エチル、ラズベリーケトン、サンダルマイソルコア、バクダノール、バニリン、クマリン、メントール、リモネン、ハバノライド、マグノール、酢酸ベンジル、ガラクソライド、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、マルトール、フェニルエチルアルコール等が挙げられ、これらは一種または二種以上を用いることができる。
また、上記成分を含有する抽出油やフレーバー、ローズマリー油、グレープフルーツ油、ライム油、ベルガモット油、レモン油、マンダリン油、バジル油、ラベンダー油、クミン油、パチュリ油等を使用してもよい。
なお、上記のうち、レモンベースはレモン油の代替物として人工的に再現されたものである。同様に、ベルガモットベース、グレープフルーツベースはそれぞれ対応するベルガモット油、グレープフルーツ油の代替物である。
ここで、本実施形態においては、適度な油溶性を有する香料が好ましく、かかる観点から、香料のlogPは、たとえば1.5以上、好ましくは2.8以上、さらに好ましくは3以上であって、たとえば5以下、好ましくは3.5以下である。
ここでlogPとは、25℃におけるオクタノール−水−分配係数であり、オクタノール相と水相の間での物質の分配のための尺度であって下式で定義されるものをいい、A.レオ,C.ハンシュ,D.エルキンス,ケミカルレビューズ,71巻,6号(1971)にその計算値の例が記載されている。なお、本明細書では、25℃において、化審法化学物質改定第4版「化学物質の分配係数(1−オクタノール/水)測定法について<その1>」(化学工業日報社刊)記載の方法で測定した値を意味する。
logP=log([物質]Octanol/[物質]Water)
(上記式中、「[物質]Octanol」はオクタノール相中の物質のモル濃度を示し、「[物質]Water」は水相中の物質のモル濃度を示す。)
また、香料の25℃における蒸気圧は、香料が適度な蒸散性を有する観点から、たとえば0.0001mmHg以上、好ましくは0.003mmHg以上であり、たとえば2mmHg以下、好ましくは0.1mmHg以下である。
また、香料の臭閾値が低いほど、低濃度においても香料のニオイが知覚される点で好ましい。
logP、蒸気圧および閾値のバランスに優れる観点から、好ましい香料として、アセトナフトン(logP=2.85、蒸気圧0.0019mmHg)、クマリン(logP=1.51、蒸気圧0.00098mmHg)、メントール(logP=3.38、蒸気圧0.0637mmHg)、リモネン(logP=4.83、蒸気圧1.45mmHg)、ゲラニオール(logP=3.47、蒸気圧0.03mmHg)およびダマスコン(logP=4.29、蒸気圧0.01mmHg)ならびにこれらの誘導体からなる群から選択される一種以上が挙げられる。
また、酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、δトコフェロールなどのビタミンEおよびその誘導体、チオタウリン、メマツヨイグサ抽出液、βカロチン、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物等の消臭機能を有するものや、その他の酸化防止剤が挙げられる。使用感を向上させる観点から、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、またはδトコフェロールが好ましい。
温感剤としては、炭素数1〜6のアルキル基を有するバニリルアルキルエーテル、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルノナンアミド、カプサイシン、トウガラシチンキ等が挙げられ、これらは一種または二種以上を用いることができる。
保湿剤としては、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール類、グリセリン、ソルビトール、セラミド、コレステリルエステル等が挙げられる。
油剤としては、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素油;セチルジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油;ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリオクタノイン、安息香酸アルキルエステル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油;パーフルオロアルキルエチルリン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンリン酸、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系油などが挙げられる。
可塑剤として、たとえばフィルム状基剤の皮膚への追随性を向上させる物質が用いられ、具体例としては、ポリビニルアルコール等のポリオール類、エチレングリコールなどの魏リコール類が挙げられる。
なお、以上においては、化粧料がキトサンを含むフィルム状基材を有する構成を例に説明したが、キトサンを含む基材の態様として、ほかに、カプセル状等が挙げられる。
化粧料が、キトサンを含むカプセル中に成分(B)が包接された粒子を含む組成物とする場合にも、化粧料が適用される周囲の有機酸濃度の変化に応じてカプセルが溶解し、成分(B)がカプセル外に放出されるため、フィルム状化粧料について前述した場合と同様の効果が得られる。
はじめに、以下の実施例で用いた試料の特性およびその測定方法を説明する。
以下の例では、フィル状基材の原料として、以下のキトサン、セルロースおよびキチンを用いた。
また、以下において、フィル状基材の原料の粉砕粒度は、篩の目開きの大きさによる。具体的には、フィル状基材の原料が100%通過する篩の中で、目開きのもっとも小さい篩の目開き(規格)を、フィル状基材の原料の粉砕粒度とする。
試料は数値の目開きのメッシュパス100%の粉砕物である。
キトサンA:大日精化工業社製、ダイキトサンVLA(粉砕粒度2.5cm、脱アセチル化度80%)
キトサンB:大日精化工業社製、ダイキトサンPVL(粉砕粒度2.5cm、脱アセチル化度80%)
キトサンC:大日精化工業社製、ダイキトサン100D(VL)(粉砕粒度2.5cm、脱アセチル化度98%)
キトサンD:甲陽ケミカル社製、SK−50(粉砕粒度3mm、脱アセチル化度80%)
キトサンE:大日精化工業社製、ダイキトサン100D(粉砕粒度2.5cm、脱アセチル化度98%)
キトサンF:Aldrich社製、Chitosan(粉砕粒度2.5cm、脱アセチル化度98%)
キトサンG:甲陽ケミカル社製、SK−200(粉砕粒度3mm、脱アセチル化度80%)
キトサンH:大日精化工業社製、ダイキトサンM(粉砕粒度2.5cm、脱アセチル化度80%)
キトサンI:大日精化工業社製、ダイキトサンH(粉砕粒度2.5cm、脱アセチル化度80%)
キトサンJ:大日精化工業社製、ダイキトサン80M(粉砕粒度0.2mm、脱アセチル化度80%)
キトサンK:大日精化工業社製、ダイキトサン320M(粉砕粒度0.04mm、脱アセチル化度80%)
キトサンL:大日精化工業社製、ダイキトサンFP(粉砕粒度0.005mm、脱アセチル化度80%)
キトサンM:スギノマシン社製、EFo−08002(ナノファイバー、繊維径40nm、脱アセチル化度89%)
セルロースA:アイエスピージャパン社製、微結晶セルロース102QD(粉砕粒度0.09mm)
セルロースB:アイエスピージャパン社製、微結晶セルロース105QD(粉砕粒度0.02mm)
セルロースC:スギノマシン社製、Ama−10002(ナノファイバー、繊維径40nm)
キチンA:大日精化工業社製、キチンP−DL(粉砕粒度2.5cm)
キチンB:スギノマシン社製、SFo−20002(ナノファイバー、繊維径40nm)
粘度が5、7、8、100、200、300、400、500および600mPa・sのキトサン標準試料の粘度と重量平均分子量についての検量線を作成し、その検量線にしたがい、試料の粘度から重量平均分子量(以下、「換算分子量」ともいう。)を求めた。粘度から分子量への換算式を以下に示す。
y = 3E-07x3 - 0.0007x2 + 1.1627x + 2.9517 (y:分子量 x:粘度)
また、キトサン標準試料の重量平均分子量の測定方法は以下の通りである。
(重量平均分子量)
プルランの酢酸水溶液(プルラン濃度0.5質量%、酢酸濃度0.5質量%)を調製し、粘度測定及びGPCにて、重量平均分子量を測定した。キトサンの酢酸水溶液(キトサン濃度0.5質量%、酢酸濃度0.5質量%)を調製し、粘度測定値からプルラン換算値として重量平均分子量を測定した。GPC測定の条件は、以下の通りである。
カラム:Shodex Ohpak SB−G+SB−806HG+SB−805HG
溶離液:0.5M酢酸/酢酸ナトリウム バッファー
流速:1mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
標準物質:Shodex Pullulan P−5,P−10,P−20,P−50,P−100、P−200,P−400.P−800プルラン
(粘度)
キトサンまたはプルラン純分0.5質量%、酢酸0.5質量%水溶液を調製し、20℃にてB型粘度計(東機産業社製、TVB−10)により測定した。
Figure 2015209393
(フィルム状化粧料の製造方法)
以下の各例では、上述した試料を用いてキトサン、セルロースまたはキチンと殺菌成分とを含むフィルム状化粧料を作製した。なお、いずれの例においても、フィルムの形成はバランスディッシュ(44×44×15(mm))に流し込み、風乾させることで作成した。
(実施例1〜9)
以下の方法でキトサンキャストフィルムを含むフィルム状化粧料を作製した。すなわち、表2に示したキトサン粉砕品0.1gを用いて、1質量%酢酸溶液に溶解したキトサン溶液を調製した。得られたキトサン溶液を、透析チューブ(Viskase社製)を用いて72時間透析処理した。キトサンの固形分質量100質量%に対して0.1質量%相当の塩化ベンザルコニウムを透析後のキトサン溶液に溶解した後に、バランスディッシュ(44×44×15(mm))に流し込み、風乾させることで、厚さ0.2mmのキャストフィルムを得た。
(実施例10〜13)
以下の方法でキトサンキャストフィルムを含むフィルム状化粧料を作製した。すなわち、表3に示したキトサン粉砕品0.1gをイオン交換水(キトサン濃度2質量%)に分散し、キトサン固形分質量100質量%に対して0.1質量%相当のイソプロピルメチルフェノールを分散した後に、バランスディッシュ(44×44×15(mm))に流し込み風乾させることで、厚さ0.1mmのキャストフィルムを得た。
(実施例14)
以下の方法でキトサンキャストフィルムを含むフィルム状化粧料を作製した。すなわち、表3に示したキトサンナノファイバー5gの分散液(キトサン濃度2質量%、溶媒:水)に、キトサンの固形分質量100質量%に対して0.1質量%相当のイソプロピルメチルフェノールを分散した後に、バランスディッシュ(44×44×15(mm))に流し込み風乾させることで、厚さ0.1mmのキャストフィルムを得た。
(比較例1〜5)
以下の方法でセルロースキャストフィルムまたはキチンキャストフィルムを含むフィルム状化粧料を作製した。すなわち、表4に示したセルロースまたはキチン0.1gを用いてセルロースまたはキチンの分散液(セルロースまたはキチン濃度2%、溶媒:水)、セルロースまたはキチンの固形分質量100質量%に対して0.1質量%相当のイソプロピルメチルフェノールを分散した後に、バランスディッシュ(44×44×15(mm))に流し込み風乾させることで、厚さ0.1mmのキャストフィルムを得た。
(フィルム状化粧料の評価)
各例で得られたキャストフィルムについて、フィルム状化粧料としての強度および溶解性を評価した。評価基準を以下に示す。また、評価結果を表2〜表4に示す。
(皮膜の強度)
◎:台紙から剥がす時、及び肌に貼る時に、十分な強度を保っているフィルムである。
○:台紙から剥がす時に気を付けないと破れてしまうが、肌に貼る時に、十分な強度を保っているフィルムである。
△:台紙から剥がす時、及び肌に貼る時に、気を付けないと破れてしまう強度のフィルムである。
×:台紙から剥がす時、または肌に貼る時に破れてしまう強度のフィルムである。
(難水溶性)
イオン交換水に対する溶解性を、以下の基準で目視にて評価した。
◎:1時間以上イオン交換水に浸しても溶解しない。
○:イオン交換水に浸すと10分超1時間以内に溶解する。
△:イオン交換水に浸すと1分超10分以内に溶解する。
×:イオン交換水に浸すと1分以内に溶解する。
イオン交換水に対する難水溶性に乏しい、すなわち溶解性が早いことは、消臭や制汗が不要なときにもデオドラント成分が放出されてしまうことを示す。
(溶解性)
0.2%乳酸水溶液に対する溶解性を、以下の基準で目視にて評価した。
◎:溶媒に浸すと1分以内に溶解する。
○:溶剤に浸すと1分超10分以内に溶解する。
△:溶剤に浸すと10分超1時間以内に溶解する。
×:1時間以上溶剤に浸しても溶解しない。
乳酸に対する溶解性が強いほど、環境応答性に優れることを示す。
Figure 2015209393
Figure 2015209393
Figure 2015209393
表2〜表4より、各実施例におけるフィルム状化粧料では、いずれも、使用に耐えうる皮膜強度が充分に確保されていた。そして、各実施例におけるフィルム状化粧料は、いずれも、イオン交換水には不溶である一方、汗のモデル溶液として用いた0.2%乳酸水溶液に対しては可溶であった。このため、周囲の乳酸濃度に応じて溶解性が変化する化粧料として好適に用いることができる。一方、各比較例で得られたフィルム状化粧料は、イオン交換水および0.2%乳酸水溶液のいずれに対しても不溶であった。また、皮膜の強度の点でも不充分な場合があった。
(実施例15〜18、比較例6〜8)
実施例6、8、10および14、ならびに、比較例2、3および5にて作製したキャストフィルム(2cm×2cm)を台紙から剥離し、大腸菌を植菌した寒天培地(クリーンスタンプ「ニッスイ」(日水製薬社製))の中央に置き、0.2%乳酸水溶液を霧吹きにて吹きかけた後に、38℃の恒温槽にて24時間培養し、菌数の変化を判定した。判定基準を以下に示す。
殺菌能評価
◎:菌なし
○:植菌数より明らかに減少
△:植菌数よりやや減少
×:植菌数と同等
評価結果を表5に示す。
Figure 2015209393
表5より、実施例15〜18においては菌数減少効果が得られた。これは、汗のモデル溶液として用いた乳酸水溶液の噴霧により、フィルム状化粧料が溶解して殺菌成分が溶出したためであると考えられる。一方、比較例6〜8においては、乳酸水溶液の噴霧によってフィルム状化粧料が溶解しないため、殺菌成分が溶出せずに菌数減少効果が得られなかったものと考えられる。
100 積層体
101 フィルム状化粧料
103 台紙
105 剥離紙
107 フィルム状基材
109 粘着剤
111 難水溶性フィルム

Claims (5)

  1. (A)キトサン、および、
    (B)消臭剤、制汗剤、冷感剤および殺菌剤からなる群から選択される一種または二種以上
    を含む、フィルム状化粧料。
  2. 前記成分(B)が、前記制汗剤および前記殺菌剤からなる群から選択される一種または二種以上である、請求項1に記載のフィルム状化粧料。
  3. 前記成分(A)を含むフィルム状基材と前記成分(B)とを含み、
    前記フィルム状基材が、前記成分(A)のナノファイバーを分散または溶解させたキトサン含有液を用いて得られる、請求項1または2に記載のフィルム状化粧料。
  4. 前記キトサン含有液が有機酸を実質的に含まない、請求項3に記載のフィルム状化粧料。
  5. 請求項1乃至4いずれか一項に記載のフィルム状化粧料を皮膚または肌着に適用するステップを含み、
    前記皮膚上の乳酸濃度の変化に応じて前記フィルム状化粧料が溶解する、体臭抑制方法。
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