以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態では、吸気弁側に適用したものである。
このバルブタイミング制御装置は、図1及び図2に示すように、内燃機関のクランクシャフトによって回転駆動する駆動回転体であるタイミングスプロケット1と、シリンダヘッド01上に軸受02を介して回転自在に支持され、前記タイミングスプロケット1から伝達された回転力によって回転するカムシャフト2と、タイミングスプロケット1の前方位置に配置されたチェーンカバー49に固定されたカバー部材3と、タイミングスプロケット1とカムシャフト2の間に配置されて、機関運転状態に応じて両者1,2の相対回転位相を変更する位相変更機構4と、を備えている。
前記タイミングスプロケット1は、全体が鉄系金属によって環状一体に形成され、内周面が段差径状のスプロケット本体1aと、該スプロケット本体1aの外周に一体に設けられて、巻回された図外のタイミングチェーンを介してクランクシャフトからの回転力を受けるギア部1bと、前記スプロケット本体1aの前端側に一体に設けられた内歯構成部19と、から構成されている。
また、このタイミングスプロケット1は、スプロケット本体1aと前記カムシャフト2の前端部に設けられた後述する従動部材9との間に、1つの大径ボールベアリング43が介装されており、この大径ボールベアリング43によって、タイミングスプロケット1と前記カムシャフト2が相対回転自在に支持されている。
前記大径ボールベアリング43は、外輪43aと、内輪43b及び該両輪43a、43bの間に介装されたボール43cと、から構成され、前記外輪43aがスプロケット本体1aの内周側に固定されているのに対して内輪43bが従動部材9の外周側に固定されている。
前記スプロケット本体1aは、内周側に、前記カムシャフト2側に開口した円環溝状の外輪固定部60が切欠形成されている。
この外輪固定部60は、段差径状に形成されて、前記大径ボールベアリング43の外輪43aが軸方向から圧入されると共に、該外輪43aの軸方向一方側の位置決めをするようになっている。
前記内歯構成部19は、前記スプロケット本体1aの前端部外周側に一体に設けられ、位相変更機構4の前方へ延出した円筒状に形成されていると共に、内周には波形状の複数の内歯19aが形成されている。
また、前記内歯構成部19の前端側には、後述するモータハウジング5と一体の円環状の雌ねじ形成部6が対向配置されている。
さらに、スプロケット本体1aの内歯構成部19と反対側の後端部には、円環状の保持プレート61が配置されている。この保持プレート61は、金属板材によって一体に形成され、図1に示すように、外径が前記スプロケット本体1aの外径とほぼ同一に設定されていると共に、内径が前記大径ボールベアリング43の外輪43aの内径よりも小さい径に設定されている。
前記保持プレート61の内周部61aは、前記外輪43aの軸方向の外端面に当接配置されている。また、前記内周部61aの内周縁所定位置には、径方向内側、つまり中心軸方向に向かって突出したストッパ凸部61bが一体に設けられている。
このストッパ凸部61bは、図1及び図4に示すように、ほぼ扇状に形成されて、先端縁61cが後述するストッパ溝2bの円弧状内周面に沿った円弧状に形成されている。さらに、前記保持プレート61の外周部には、前記各ボルト7が挿通する6つのボルト挿通孔61dが周方向の等間隔位置に貫通形成されている。
前記スプロケット本体1a(内歯構成部19)及び保持プレート61の各外周部には、それぞれボルト挿通孔1c、61dが周方向のほぼ等間隔位置に6つ貫通形成されている。また、前記雌ねじ形成部6には、各ボルト挿通孔1c、61dと対応した位置に6つの雌ねじ孔6aが形成されており、これらに挿通した6本のボルト7によって前記タイミングスプロケット1と保持プレート61及びモータハウジング5が軸方向から共締め固定されている。
なお、前記スプロケット本体1aと内歯構成部19は、後述する減速機構8のケーシングとして構成されている。
また、前記スプロケット本体1aと前記内歯構成部19、保持プレート61及び雌ねじ形成部6は、それぞれの外径がほぼ同一に設定されている。
前記チェーンカバー49は、図1に示すように、機関本体であるシリンダヘッド01と図外のシリンダブロックの前端側に前記タイミングスプロケット1に巻回された図外のチェーンを覆うよう上下方向に沿って配置固定されている。また、前記位相変更機構4に対応した位置に形成された開口部を構成する環状壁49aの円周方向の4箇所に、ボス部49bが一体に形成されていると共に、環状壁49aから各ボス部49bの内部に亘って雌ねじ孔49cがそれぞれ形成されている。
前記カバー部材3は、図1、図2に示すように、アルミニウム合金材よってカップ状に一体に形成されて、前記モータハウジング5の前端部を覆うように配置され、膨出状のカバー本体3aと、該カバー本体3aの開口側の外周縁に一体に形成された円環状の取付フランジ3bと、を備えている。また、このカバー部材3の内面3fとモータハウジング5の前端部外面との間には、カップ状の空間部32が画成されている。
前記カバー本体3aは、外周部側に円筒壁3cが軸方向に沿って一体に突設されており、この円筒壁3cは、内部軸方向に保持用孔3dが貫通形成されている。
また、カバー本体3aの前記円筒壁3cの下部側には、円筒部34が前記円筒壁3cと平行かつ軸方向に沿って突設されている。この円筒部34は、上端部が前記円筒壁3cの下端部と一体に結合されて、内部軸方向に前記カバー本体3aの外側と前記空間部32との間を連通する連通孔35が貫通形成されていると共に、外端側内部に通気用栓体56が圧入固定されている。
前記連通孔35(円筒部34)は、前記カバー部材3をチェーンカバー49に組み付けた後に、前記従動部材9をカムシャフト2に固定するためのカムボルト10をモータ出力軸13の内部を介して挿通するための作業用孔として機能するものである。
前記通気用栓体56は、有底円環状の本体57と、該本体57の凹溝内に嵌着圧入された円盤状の支持部58と、前記凹溝の底面に配置収容されて、該底面と前記支持部58に挟持状態に保持された円形状のフィルタ59と、を備えている。
前記本体57は、合成樹脂材によって一体に形成され、底面の中央から内部軸方向に沿って貫通された第1通気孔57aが形成されている。この第1通気孔57dは、軸方向のカバー部材3側の内端部は大径に形成されているが、外端側の通気部57bは小径状に形成されて、外部からの水や塵芥などの内部への侵入を抑制するようになっている。
前記支持部58は、弾性変形可能な合成樹脂材によって一体に形成され、中央に前記第1通気孔57bと連通する第2通気孔58aが軸方向に沿って貫通形成されている。
前記フィルタ59は、自由に撓み変形可能な薄い布状の円盤形状に形成され、外径が前記本体底面57cの内径よりも小さく形成されて、全体が前記凹溝の底面上に密着するようになっている。また、このフィルタ59は、支持部58側の表面から本体底面側の裏面側に掛けて空気を透過可能になっていると共に、裏面から表面に掛けては液体や塵芥などを透過しない材質の基材が用いられている。
前記取付フランジ3bは、円周方向のほぼ等間隔位置に4つのボス部3eが周方向のほぼ等間隔位置(約90°位置)に設けられている。この各ボス部3eには、図1に示すように、前記チェーンカバー49に形成された各雌ねじ孔49dに螺着するボルト54が挿通するボルト挿通孔3gがそれぞれ貫通形成されて、前記各ボルト54によってカバー部材3がチェーンカバー49に固定されている。
また、前記カバー本体3aの外周側の段差部内周面と前記モータハウジング5の外周面との間には、大径なオイルシール50が介装されている。この大径オイルシール50は、横断面ほぼコ字形状に形成されて、合成ゴムの基材の内部に芯金が埋設されていると共に、外周側の円環状基部が前記カバー部材3の内周面に設けられた段差円環部3hに嵌着固定されている。この大径オイルシール50は、前記空間部32を液密的に封止して、主として前記タイミングスプロケット1の回転駆動に伴って飛散した潤滑油の前記空間部32内への侵入を阻止するようになっている。
前記モータハウジング5は、図1に示すように、鉄系金属材をプレス成形によって有底筒状に形成されたハウジング本体5aと、該ハウジング本体5aの前端開口を封止する給電プレート11と、を備えている。
前記ハウジング本体5aは、後端側に円板状の隔壁5bを有し、該隔壁5bのほぼ中央に後述する偏心軸部39が挿通される大径な軸挿通孔5cが形成されていると共に、該軸挿通孔5cの孔縁にカムシャフト2の軸方向へ突出した円筒状の延出部5dが一体に設けられている。また、前記隔壁5bの前端面外周側には、前記雌ねじ形成部6が一体に設けられている。
前記カムシャフト2は、外周に図外の吸気弁を開作動させる一気筒当たり2つの駆動カムを有していると共に、前端部に前記フランジ部2aが一体に設けられている。
このフランジ部2aは、図1に示すように、外径が後述する従動部材9の固定端部9aの外径よりも僅かに大きく設定されて、各構成部品の組み付け後に、前端面の外周部が前記大径ボールベアリング43の内輪43bの軸方向外端面に当接配置されるようになっている。また、フランジ部2aの前端面が、従動部材9に軸方向から当接した状態でカムボルト10によって軸方向から結合されている。
また、前記フランジ部2aの外周には、図4に示すように、前記保持プレート61のストッパ凸部61bが係入するストッパ凹溝2bが円周方向に沿って形成されている。このストッパ凹溝2bは、円周方向へ所定長さの円弧状に形成されて、この長さ範囲で回動したストッパ凸部61bの両端縁が周方向の対向縁2c、2dにそれぞれ当接することによって、タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の最大進角側あるいは最大遅角側の相対回転位置を規制するようになっている。
なお、前記ストッパ凸部61bは、前記保持プレート61の大径ボールベアリング43の外輪43aに軸方向外側から対向して固定する部位よりもカムシャフト2側に離間して配置されて、前記従動部材9の固定端部9aとは軸方向で非接触状態になっている。したがって、ストッパ凸部61bと固定端部9aとの干渉を十分抑制できる。
前記カムボルト10は、図1に示すように、頭部10aの端面が小径ボールベアリング37の内輪を軸方向から支持していると共に、軸部10bの外周に前記カムシャフト2の端部から内部軸方向に形成された雌ねじに螺着する雄ねじ10cが形成されている。
前記従動部材9は、鉄系金属によって一体に形成され、図1に示すように、後端側(カムシャフト2側)に形成された円板状の固定端部9aと、該固定端部9aの内周前端面から軸方向へ突出した円筒部9bと、前記固定端部9aの外周部に一体に形成されて、複数のローラ48を保持する円筒状の保持器41と、から構成されている。
前記固定端部9aは、後端面が前記カムシャフト2のフランジ部2aの前端面に当接配置されて、前記カムボルト10の軸力によってフランジ部2aに軸方向から圧接固定されている。
前記円筒部9bは、図1に示すように、中央に前記カムボルト10の軸部10bが挿通される挿通孔9dが貫通形成されていると共に、外周側には軸受部材であるニードルベアリング38が設けられている。
前記保持器41は、図1に示すように、前記固定端部9aの外周部前端から前方へ断面ほぼL字形状に折曲されて、前記円筒部9bと同方向へ突出した有底円筒状に形成されている。
この保持器41の筒状先端部41aは、前記雌ねじ形成部6と前記延出部5dとの間に形成された円環凹状の収容空間44を介してモータハウジング5の隔壁5b方向へ延出している。また、前記筒状先端部41aの周方向のほぼ等間隔位置には、図1及び図2に示すように、前記複数のローラ48をそれぞれ転動自在に保持するほぼ長方形状の複数のローラ保持孔41bが周方向の等間隔位置に形成されている。このローラ保持孔41b(ローラ48)は、その全体の数が前記内歯構成部19の内歯19aの全体の歯数よりも少なくなっている。これによって、減速比を得るようになっている。
前記位相変更機構4は、前記従動部材9の円筒部9bの前端側に配置された前記電動モータ12と、該電動モータ12の回転速度を減速してカムシャフト2に伝達する減速機構8と、から主として構成されている。
前記電動モータ12は、図1及び図2に示すように、ブラシ付きのDCモータであって、前記タイミングスプロケット1と一体に回転するヨークである前記モータハウジング5と、該モータハウジング5の内部に回転自在に設けられたモータ出力軸13と、モータハウジング5の内周面に固定されたステータである半円弧状の一対の永久磁石14,15と、前記給電プレート11と、を備えている。
前記モータ出力軸13は、段差円筒状に形成されてアーマチュアとして機能し、軸方向のほぼ中央位置に形成された段差部13cを介してカムシャフト2側の大径部13aと、その反対側の小径部13bと、から構成されている。前記大径部13aは、外周に鉄心ロータ17が固定されていると共に、後端側に減速機構8の一部を構成する偏心軸部39が一体に形成されている。
一方、前記小径部13bは、外周に円環部材20が圧入固定されていると共に、該円環部材20の外周面に後述するコミュテータ21が軸方向から圧入固定されて前記段差部13cの外面によって軸方向の位置決めがなされている。前記円環部材20は、その外径が前記大径部13aの外径とほぼ同一に設定されていると共に、軸方向の長さが小径部13bよりも僅かに短く設定されている。
前記小径部13bの内周面には、モータ出力軸13や偏心軸部39内に供給されて前記各ベアリング37,38を潤滑するための潤滑油の外部への漏洩を抑制する栓体55が圧入固定されている。
前記鉄心ロータ17は、複数の磁極を持つ磁性材によって形成され、外周側がコイル18のコイル線を巻回させるスロットを有するボビンとして構成されている。
一方、前記コミュテータ21は、導電材によって円環状に形成されて、前記鉄心ロータ17の極数と同数に分割された各セグメントに前記コイル18の引き出されたコイル線の端末が電気的に接続されている。
前記永久磁石14,15は、全体が円筒状に形成されて円周方向に複数の磁極を有していると共に、その軸方向の位置が前記鉄心ロータ17の軸方向の中心に対して前記給電プレート11側にオフセット配置されている。これによって、前記永久磁石14,15の前端部が、径方向で前記コミュテータ21や給電プレート11に設けられた後述する切換用ブラシ25a、25bなどとオーバーラップするように配置されている。
前記給電プレート11は、図1、図5及び図6に示すように、鉄系金属材からなる円盤状の剛性プレート部16(固定プレート)と、該剛性プレート部16の前後両側面にモールドされた円板状の樹脂部22と、から構成されている。なお、前記給電プレート11は、電動モータ12への給電機構の一部として構成されている。
前記剛性プレート16は、前記樹脂部22に覆われていないで露出した外周部16aが前記モータハウジング5の前端部内周に形成された円環状の段差状の凹溝5eにかしめによって位置決め固定されていると共に、中央部にはモータ出力軸13の一端部などが挿通される軸挿通孔16bが貫通形成されている。また、剛性プレート16は、図5及び図6に示すように、前記軸挿通孔16bの内周縁に連続した所定の位置に異形状の2つの保持孔16c、16dが打ち抜きにより形成されており、この各保持孔16c、16dには、後述するブラシホルダ23a、23bが嵌入保持されるようになっている。
なお、前記外周部16aの周方向の所定位置には、前記ハウジング本体5aに対して円周方向の位置決めを、図外の治具を介して行う3つのU字溝16eが形成されている。
また、前記給電プレート11には、図1、図5に示すように、前記剛性プレート16の各保持孔16c、16dの内側に配置されて、前記樹脂部22に複数のリベット40により固定された銅製の一対のブラシホルダ23a、23bと、該各ブラシホルダ23a、23bの内部に径方向に沿って摺動自在に収容配置されて、コイルスプリング24a、24bのばね力で円弧状の各先端面が前記コミュテータ21の外周面に径方向から弾接する整流子である一対の切換用ブラシ25a、25bと、前記樹脂部22の前端部に、それぞれの前端面を露出した状態でモールド固定された内外二重の給電用スリップリング26a,26bと、前記各切換用ブラシ25a、25bと各スリップリング26a,26bを電気的に接続する導線である一対のピグテールハーネス27a、27bと、が設けられている。なお、前記これらの各構成部品と前記給電プレート11によって給電機構が構成されている。
前記内周側の小径なスリップリング26aと、外周側の大径なスリップリング26bは、銅材からなる薄板をプレスによって円環状に打ち抜き形成されていると共に、図5及び図7に示すように、モータハウジング5の内部に臨む後端面の一部26c、26dが樹脂部22から露出している。
前記ピグテールハーネス27a、27bは、図8に示すように、多数の線材27cを結束して全体が断面ほぼ円形状に形成されてなり、前記各スリップリング26a、26bの一部の露出部26c、26dに位置する一端部27d側に接合部材36が固定されている。
この接合部材36は、銅材などの導電性材料によって形成され、図8に示すように、平板を丸めて円筒状に形成されている。すなわち、前記ピグテールハーネス27a、27bの各一端部27d側に固定する際に、予め平板に展開した状態としておき、この上に前記各一端部27d側を載置した状態で所定の治具によって各一端部27dの外周を抱持状態に丸めて円筒状と、さらに外側から圧着力を加えて各一端部27dの外周に締結固定されるようになっている。また、接合部材36は、底面36aが前記露出部26c、26dの上面との接触面積を大きくするために平坦状に形成されている。
なお、接合部材36の軸方向長さLは、前記露出部26c、26dの上面に載置可能な長さに形成されている。
そして、前記ピグテールハーネス26a、26bに固定された接合部材36は、前記各スリップリング26a、26bの各露出部26c、26dの上面に電気的に接合されている。この接合方法としては、一般的な超音波金属接合(超音波溶接)が用いられている。
すなわち、ワーク保持治具のアンビル上に、前記各スリップリング26a、26bの露出部26c、26dと該露出部26c、26d上に載置された接合部材36を固定し、その後、前記接合部材36の上方からホーンによって加圧しながら水平方向の超音波振動を与えていくことによって、両者を強固かつ確実に接合するようになっている。
前記カバー部材3のカバー本体3aには、合成樹脂材によって一体的にモールドされた保持体28が固定されている。この保持体28は、図1、図2に示すように、側面視ほぼクランク形状に形成され、前記カバー部材3の保持用孔3dに挿入されるほぼ有底円筒状のブラシ保持部28aと、該ブラシ保持部28aと反対側に有するコネクタ部28bと、前記ブラシ保持部28aの一側面に一体に突設されて、前記カバー本体3aにボルト固定されるボス部28cと、内部に一部が埋設された一対の給電用端子片31、31と、から主として構成されている。
前記ブラシ保持部28aは、図1及び図2に示すように、ほぼ水平方向(軸方向)に延設されて、内部の上下位置(モータハウジング5の軸心に対して内外周側)に平行に形成された一対の角柱状の固定用孔内に一対の角筒状のブラシホルダ29a、29bがそれぞれ圧入固定されている。この各ブラシホルダ29a、29bの内部に給電用ブラシ30a、30bが軸方向へそれぞれ摺動自在に保持されている。
また、このブラシ保持部28aは、図1及び図6に示すように、基部側外周に形成された円環状の嵌着溝内に前記保持用孔3dの内周面に弾接する前記環状シール部材33が嵌着保持されている。この環状シール部材33によって、前記空間部32とカバー部材3の外部との間を液密的に封止するようになっている。
前記各ブラシホルダ29a、29bは、前後端に開口部が形成されて、前端側の開口部から前記各給電用ブラシ30a、30bの先端部が進退自在になっていると共に、各後端側の開口部を介して図外のピグテールハーネスの一端部が前記各給電用ブラシ30a、30bの後端に半田付けによって接続されている。
前記各給電用ブラシ30a、30bは、角柱状に形成されて所定の軸方向長さに設定されていると共に、平坦な各先端面が前記各スリップリング26a,26bに軸方向からそれぞれ当接するようになっている。
また、前記ブラシ保持部28の各ブラシホルダ29a、29bの内部後端側には、前記各給電用ブラシ30a、30bを各スリップリング26a,26bの方向へ付勢する一対のコイルばね42a,42bが設けられている。
前記一対の給電用端子片31,31は、図1に示すように、上下方向に沿って平行かつほぼクランク状に形成されて、一方側(下端側)の各端子31a、31aが露出状態に配置され、他方側(上端側)の各端子31b、31bが前記コネクタ部28bの雌型嵌合溝28d内に突設されている。
前記一方側の各端子31a、31aは、それぞれが底壁28fの上面に当接配置されていると共に、図外の一対のピグテールハーネスの他端部が半田付けによって接続されている。
前記各ピグテールハーネスは、その長さが前述したように、前記給電用ブラシ30a、30bが前記コイルばね42a、42bのばね力によって押し出されてもブラシホルダ29a、29bから脱落しないような長さに設定されている。
前記コネクタ部28bは、上端部に図外の雄型端子が挿入される前述の嵌合溝28dに臨む前記他方側端子31b、31bが雄型端子を介して図外のコントロールユニットに電気的に接続されている。
前記モータ出力軸13と偏心軸部39は、前記カムボルト10の軸部10b外周面に設けられた小径ボールベアリング37と、前記従動部材9の円筒部9bの外周面に設けられて小径ボールベアリング37の軸方向側部に配置された前記ニードルベアリング38とによって回転自在に支持されている。
前記ニードルベアリング38は、偏心軸部39の内周面に圧入された円筒状のリテーナ38aと、該リテーナ38aの内部に回転自在に保持された複数の転動体であるニードルローラ38bと、から構成されている。このニードルローラ38bは、前記従動部材9の円筒部9bの外周面を転動している。
前記小径ボールベアリング37は、内輪が前記従動部材9の円筒部9bの前端縁とカムボルト10の頭部10aとの間に挟持状態に固定されている一方、外輪が前記偏心軸部39の段差拡径状の内周面に圧入固定されていると共に、前記内周面に形成された段差縁に当接して軸方向の位置決めがなされている。
また、前記モータ出力軸13(偏心軸部39)の外周面と前記モータハウジング5の延出部5dの内周面との間には、減速機構8の内部から電動モータ12内への潤滑油のリークを阻止する小径なオイルシール46が設けられている。このオイルシール46は、電動モータ12と減速機構8とをシール機能をもって隔成するものである。
前記コントロールユニットは、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサなど各種のセンサ類から情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出し、これに基づいて機関制御を行うと共に、前記給電用ブラシ30a、30bや各スリップリング26a,26b、切換用ブラシ25a、25b、コミュテータ21などを介してコイル18に通電してモータ出力軸13の回転制御を行い、減速機構8によってカムシャフト2のタイミングスプロケット1に対する相対回転位相を制御するようになっている。
前記減速機構8は、図1〜図3に示すように、偏心回転運動を行う前記偏心軸部39と、該偏心軸部39の外周に設けられた中径ボールベアリング47と、該中径ボールベアリング47の外周に設けられた前記ローラ48と、該ローラ48を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する前記保持器41と、該保持器41と一体の前記従動部材9と、から主として構成されている。
前記偏心軸部39は、外周面に形成されたカム面39aの軸心Yがモータ出力軸13の軸心Xから径方向へ僅かに偏心している。
前記中径ボールベアリング47は、前記ニードルベアリング38の径方向位置で全体がほぼオーバーラップする状態に配置され、内輪47aと外輪47b及び該両輪47a、47bとの間に介装されたボール47cとから構成されている。前記内輪47aは、前記偏心軸部39の外周面に圧入固定されているのに対して、前記外輪47bは、軸方向で固定されることなくフリーな状態になっている。つまり、この外輪47bは、軸方向の電動モータ12側の一端面がどの部位にも接触せず、また軸方向の他端面がこれに対向する保持器41の内側面との間に微小な第1隙間Cが形成されてフリーな状態になっている。また、この外輪47bの外周面には、前記各ローラ48の外周面が転動自在に当接していると共に、この外輪47bの外周側には、円環状の第2隙間C1が形成されて、この第2隙間C1によって中径ボールベアリング47全体が前記偏心軸部39の偏心回転に伴って径方向へ移動可能、つまり偏心動可能になっている。
前記各ローラ48は、鉄系金属によって形成され、前記中径ボールベアリング47の偏心動に伴って径方向へ移動しつつ前記内歯構成部19の内歯19aに嵌入すると共に、保持器41のローラ保持孔41bの両側縁によって周方向にガイドされつつ径方向に揺動運動させるようになっている。
前記減速機構8の内部には、潤滑油供給手段によって潤滑油が供給されるようになっている。この潤滑油供給手段は、前記シリンダヘッド01の軸受02の内部に形成されて、図外のメインオイルギャラリーから潤滑油が供給される油供給通路と、前記カムシャフト2の内部軸方向に形成されて、前記油供給通路にグルーブ溝51bを介して連通した油供給孔51と、前記従動部材9の内部軸方向に貫通形成されて、一端が該油供給孔51に開口し、他端が前記ニードルベアリング38と中径ボールベアリング47の付近に開口した前記小径なオイル孔52と、同じく従動部材9に貫通形成された図外のオイル排出孔と、から構成されている。
この潤滑油供給手段によって、前記収容空間44内に潤滑油が供給されて滞留し、ここから中径ボールベアリング47や各ローラ48を潤滑すると共に、さらには偏心軸部39とモータ出力軸13の内部に流入してニードルベアリング38や小径ボールベアリング37などの可動部の潤滑に供されるようになっている。なお、前記収容空間44内に滞留した潤滑油は、前記小径オイルシール46によってモータハウジング5内へのリークが抑制されている。
〔本実施形態の作動〕
以下、本実施形態の作動について説明すると、まず、機関のクランクシャフトの回転駆動に伴ってタイミングチェーンを介してタイミングスプロケット1が回転して、その回転力が内歯構成部19と雌ねじ形成部6を介してモータハウジング5に伝達されて、該モータハウジング5が同期回転する。一方、前記内歯構成部19の回転力が、各ローラ48から保持器41及び従動部材9を経由してカムシャフト2に伝達される。これによって、カムシャフト2のカムが吸気弁を開閉作動させる。
そして、機関始動後の所定の機関運転時には、前記コントロールユニットから各端子片31,31、各ピグテールハーネス及び給電用ブラシ30a、30bや各スリップリング26a,26bなどを介して電動モータ12のコイル18に通電される。これによって、モータ出力軸13が回転駆動され、この回転力が減速機構8を介してカムシャフト2に減速された回転力が伝達される。
すなわち、前記モータ出力軸13の回転に伴い偏心軸部39が偏心回転すると、各ローラ48がモータ出力軸13の1回転毎に保持器41の各ローラ保持孔41bで径方向へガイドされながら前記内歯構成部19の一つの内歯19aを乗り越えて隣接する他の内歯19aに転動しながら移動し、これを順次繰り返しながら円周方向へ転接する。この各ローラ48の転接によって前記モータ出力軸13の回転が減速されつつ前記従動部材9に回転力が伝達される。このときの減速比は、前記内歯19aの数とローラ48の数の差によって任意に設定することが可能である。
これにより、カムシャフト2がタイミングスプロケット1に対して正逆相対回転して相対回転位相が変換されて、吸気弁の開閉タイミングを進角側あるいは遅角側に変換制御するのである。
前記タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の正逆相対回転の最大位置規制(角度位置規制)は、前記ストッパ凸部61bの各側面が前記ストッパ凹溝2bの各対向面2c、2dのいずれか一方に当接することによって行われる。
したがって、吸気弁の開閉タイミングが進角側あるいは遅角側へ最大に変換されて、機関の燃費や出力の向上が図れる。
そして、本実施形態では、前記切換用ブラシ25a、25b側のピグテールハーネス27a、27bは、各一端部27d側が従来のような雌雄コネクタを用いて各スリップリング26a、26bの露出部26c、26dに接続されるのではなく、前記各接合部材36,36を介して各露出部26c、26dに直接的に接続されるようになっていることから、接合(接続)強度が大幅に向上する。このため、各給電用ブラシ30a、30bとの摺動時に発生する各スリップリング26a、26bの振動によって、各ピグテールハーネス27a、27bの一端部26c、26dが前記各スリップリング26a、26bとの間で接続不良を起こすことがなくなる。
この結果、各スリップリング26a、26bから各切換用ブラシ25a、25bへの通電性が良好になる。
特に、この実施形態では、前記各接合部材36を、超音波接合により各スリップリング26a、26bに接合したことから、該スリップリング26a、26bに対する接合時の熱的影響が殆どない状態で接合することができる。つまり、前記超音波接合時の接合温度は完全に金属を溶かさない固相溶接であるから、各スリップリング26a、26bに対する熱的影響を与えることがない。
したがって、各スリップリング26a、26bは、熱による変形が十分に抑制されて、特に前端面の平面度が確保されることから、該前端面と前記各給電用ブラシ30a、30bの先端部との常時滑らかな摺動性が得られ、したがって、さらに良好な通電性を確保できる
また、前記接合部材36によってピグテールハーネス27a、27bの各一端部27d、27d側の外周を締め付けることから、各線材27cの結束力が向上する。したがって、単に各スリップリング26a、26bにピグテールハーネス27a、27bを直付けにしてはんだ等により固着する場合と比較して、振動に対する耐久性が向上する。
しかも、各線材27cの結束力を向上させる前記接合部材36を各スリップリング26a、26b超音波により接合させたことから振動等に対する耐久性の向上と各スリップリング26a、26bの平面度の確保を同時に達成することができる。
また、本実施形態では、前記大径オイルシール50や環状シール部材33によって前記空間部32内が密閉状態となるが、前記カバー部材3の円筒部34に通気用栓体56を設けたことから、前記装置の駆動中に、前記各スリップリング26a、26bに各給電用ブラシ30a、30bが摺動してこの摩擦熱などにより前記空間部32内の温度が上昇しても、この空間部32内の空気を、前記フィルタ59を通して速やかに排出することができる。これにより、前記空間部32の内圧の上昇を効果的に抑制することが可能になる。
この結果、例えば、前記大径オイルシール50や環状シール部材33などの部品の変形や脱落を十分に抑制することができる。
しかも、前記フィルタ59は、空間部32内の空気やカバー部材3外の外気を透過させるものの、カバー部材3の外からの水や塵芥などを遮断することができるので、空間部32内への水や塵芥の侵入を抑制することができる。
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば接合部材36と各スリップリング26a、26bを超音波接合法の他に、スポット溶接や半田付けによって接合することも可能であるが、極力温度の影響の少ない低温による接合法が望ましい。
また、ピグテールハーネス27a、27bは、線材を束ねて形成されるものではなく一本状のものであってもよい。